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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A47K
管理番号 1345906
異議申立番号 異議2018-700165  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-23 
確定日 2018-11-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6186483号発明「トイレットロール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6186483号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6186483号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年10月13日に特許出願され、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、平成29年8月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年2月23日に特許異議申立人村上清子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、さらに平成30年4月6日に上申書が提出されたところ、当審は、平成30年5月28日付け(平成30年6月5日発送)で取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、平成30年8月6日に意見書を提出し、その後、申立人は平成30年9月14日に上申書を提出したものである。

2 本件発明
「【請求項1】
2プライ積層したトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
前記トイレットペーパーにエンボスパターンを設け、
前記トイレットロールの巻長が63m以上105m以下、巻直径が105mm以上140mm以下、ロール柔らかさが0.4mm以上1.9mm以下であり、
前記エンボスパターンの深さが、0.01mm以上0.40mm以下であるトイレットロール。
【請求項2】
前記エンボスパターンがシングルエンボスパターンである請求項1に記載のトイレットロール。
【請求項3】
前記トイレットペーパーは、クラフトパルプを40質量%以上100質量%以下含有する請求項1又は2に記載のトイレットロール。
【請求項4】
前記トイレットペーパーは、ミルクカートン由来の古紙パルプを0質量%より多く60質量%以下含有する請求項1から3のいずれかに記載のトイレットロール。
【請求項5】
CIE(国際照明委員会)が規定するC光源を前記トイレットペーパーの表面側に照射したときのISO 2470に準拠した白色度UV-inと、波長420nm以下の紫外光をカットするフィルタを介して、前記C光源を前記トイレットペーパーの表面側に照射したときのISO 2470に準拠した白色度UV-cutとの差Δが0.0ポイント以上2.5ポイント以下である請求項1から4のいずれかに記載のトイレットロール。」
(以下、請求項1ないし請求項5に係る発明を、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、全体を「本件発明」という。)

3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし5に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許は、請求項1ないし5に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2014-188342号公報
甲第2号証:特開2006-43458号公報
甲第3号証:特開2003-275128号公報
甲第4号証:再公表特許第2012/043378号
甲第5号証:特許第4914156号公報
甲第6号証:特開2002-69896号公報
甲第7号証:特開2003-199687号公報
甲第8号証:特開2013-13500号公報
(甲第7号証、甲第8号証は、平成30年9月14日付け上申書に添付されたものである。)

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の衛生薄葉紙を重ねた積層体をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールであって、前記衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が13g/m^(2)を超え17g/m^(2)以下、かつ紙厚が0.6mm/10枚を超え1.1mm/10枚以下であり、
当該衛生薄葉紙ロールの巻長が74?93m、巻直径が100?130mmである衛生薄葉紙ロール。」

イ 「【技術分野】
【0001】
この発明は、トイレットティシュー等のロール状をなす衛生薄葉紙ロールに関するものである。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロール製品を構成する紙の坪量を下げると、強度が低下すると共に使用感や嵩高さが低下する。一方、これらの不具合を補うために紙の嵩を高くするため、カレンダー処理を弱めると、柔らかさや滑らかさが劣ったり、ロール径が大きくなってトイレットペーパーホルダーに収まり難くなる問題がある。また、エンボス処理を強めると、紙厚が高くなりすぎたり、紙の表裏の使用感の差が大きくなるなどの問題がある。また、坪量を下げずに、カレンダー処理を強くして紙厚を薄くすると、ロール径を小さくすることはできるが、柔らかさがなく、品質が劣る問題がある。
従って本発明は、坪量を下げずに風合いや使用感に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた衛生薄葉紙ロールの提供を目的とする。」

エ 「【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、坪量を下げずに風合いや使用感に優れると共に1ロール当りの巻長を長くし、持ち運びや保管時の省スペース性に優れた衛生薄葉紙ロールを得ることができる。」

オ 「【0031】
(3)エンボス処理及びロール巻取り加工
図6はロール巻取り加工機150の一例を示す。原反4は、ロール巻取り加工機150にセットされ、エンボスユニット(エンボスロール)151によってエンボス処理された後、巻取り機構153によって巻直径が100?130mmの幅広衛生薄葉紙原ロール10Wに巻き取られる。その後、原ロール10Wを所定幅(114mm等)に切り、衛生薄葉紙ロール10となる。
ロール巻取り加工機150は、大別するとサーフェイス方式とセンター方式の2種類がある。サーフェイス方式は巻取るロールを外側から別の複数の駆動ロールで支持しながら巻取る方法であり、巻取られた衛生薄葉紙ロール10は、巻き径のコントロールがし易く、生産速度がより高速となる。センター方式は巻取りロールの中心に通したシャフトの駆動により巻取る方法で、巻取られた衛生薄葉紙ロール10は、比較的柔らかな製品となり、デリケートなエンボスを施した製品に適している。本発明においては、いずれの方法でも巻き取ることができるが、好ましくはサーフェイス方式である。
なお、ロール巻取り加工機150にマシンワインダー100を組み込み、ロール巻取り加工機にてプライアップ、カレンダー処理、エンボス処理をこの順で行ってもよい。又、1枚ずつの衛生薄葉紙をそれぞれカレンダー処理後にプライアップし、エンボス処理してもよい。
【0032】
ロール巻取り加工機150においてエンボスを施すことで、衛生薄葉紙の1枚当りの坪量が13g/m^(2)を超え17g/m^(2)以下の範囲であっても、嵩を高くして柔らかさと、ほぐれ易さを向上させることができる。
エンボス処理前後の衛生薄葉紙の紙厚の差ΔE(エンボス処理前の紙厚-エンボス処理後の紙厚)を好ましくは-0.20?0.18mm/10枚、より好ましくは-0.10?0.10mm/10枚とする。ΔEが上記範囲を超えると、エンボス処理が十分でなくプライが剥がれたり、柔らかさが劣る場合がある。ΔEが上記範囲未満であると、エンボス処理が強すぎて、滑らかさの表裏差が大きくなる場合がある。ここで、エンボス処理前とは、カレンダー処理後と同じ意味である。
なお、エンボス処理を行うと、エンボス処理後の紙厚は、エンボス処理前より高くなり、ΔEはマイナスになる。しかし、ロール加工機では、紙を引っ張りながら巻き取るため、紙が伸びて紙厚が低くなる。従って、ロール加工機では、エンボスと紙の伸びの影響を考慮しながら、ΔEが-0.20?0.18mm/10枚となるよう、巻き取ることが好ましい。
エンボスの強さは、エンボスロールとゴムロールのニップ幅を適宜調整して制御することができる。ニップ幅は、ロールの特性によっても異なるが、好ましくは20?40mm、より好ましくは20?30mmである。ニップ幅が40mmを超えると、エンボスが強くなりすぎて表裏差が大きくなったり、紙厚が高くなってロールの巻直径DRが大きくなってしまう。一方、ニップ幅が20mm以下であると、エンボスが弱くなり、ふっくら感がなくなったり、プライが剥がれやすくなる。ニップ幅は、カーボン紙を用いて測定することができる。測定方法としては、まず、エンボスロールのニップを逃がし、カーボン紙と一般的なコピー用紙を重ねてセットする。次に、エンボスロールにニップをかける。その後、ニップを逃がし、カーボン紙とコピー用紙を取り外す。エンボスロールでニップがかかっていた部分のカーボン紙の色がコピー用紙に転写されるので、ニップ幅を測定することができる。」

カ 「【0039】
【表1】


【0040】
【表2】




キ 上記アないしカからみて、特に、上記カの表1及び表2における実施例1?8、比較例1,4,6,8の巻長、巻直径の各数値を参照すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「2枚の薄葉紙を重ねた積層体をロール状に巻き取った衛生薄葉紙ロールであって、
エンボス処理されており、
巻長が74m以上91m以下、
巻直径が108mm以上136mm以下、
衛生薄葉紙ロール。」

(2)甲第2号証
ア 「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項3】
1プライ乃至3プライのいずれかのトイレットペーパーロールを、中心軸を水平にしつつ水平面上に横置きし、その胴部外周の上面中心に人の指を想定して配した面積2cm^(2)の円形板圧子を、消費者が前記トイレットペーパーロールを手で把持した際の指の押し込み動作を想定した0.5gf/cm^(2)と、前記手にしたトイレットペーパーロールの硬さを調べるために消費者が把持した指をトイレットペーパーロールに押し込む動作を想定した50gf/cm^(2)との二段階の押し込み圧力で鉛直に押し込み、これらの押し込み深さの差を9回連続測定し、全ての測定値の最高値と最低値との差が0.5?1.0mmの範囲であることを特徴とするトイレットペーパーロール。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明はトイレットペーパーロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパーロールは、一般に、1枚(1プライと言う)、2枚重ね(2プライと言う)、または3枚重ね(3プライと言う)のシートを所定巻長さで巻き取って形成され、通常は、複数個のトイレットペーパーロールが袋詰めされ店頭にて陳列販売される。そして、消費者は、このトイレットペーパーロールを手にとってみて、その掴んだ感触によって無意識の内にトイレットペーパーを使用する際の感触を連想して、購入するか否か決めていると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことから、本願出願人は、トイレットペーパーロールを手で掴んだ時の感触、すなわちそのロールを掴んだ時に感じる硬さは、それを購入するか否かを決定する潜在的な購入指標となっていると知見した。例えば、トイレットペーパーロールを掴んだ時にそのロールが硬いと、これを巻きほぐした実際の使用状態たるシート状態でも硬くて使い心地が悪いのではないかと思ったり、あるいはロールが柔らすぎれば、前記シート状態でも柔らか過ぎて使用時に破れ易いのではないかと思ったりして、購入を決めている。
しかしながら、現在市場に流通しているトイレットペーパーロールのロール硬さは、適度な柔らかさを有しておらず、この結果、喪失している売り上げは大きいと推察される。
【0004】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、消費者が手にした時に適度な柔らかさを確実に感じさせることができるトイレットペーパーロールを提供することを目的とする。」

ウ 「【0022】
図1は、本実施形態に係るトイレットペーパーロールのロール硬さの測定方法を示す斜視図であり、以下の手順でトイレットペーパーロール1のロール硬さは定量測定される。
【0023】
(1)先ず、水平な台座5上にトイレットペーパーロール1をその中心軸1aが水平になるように横置きする。
(2)そして、このロールの胴部外周の上面中心に、人の指を想定した、面積2cm^(2)の円形板圧子3を当てる。
(3)この当接状態の前記円形板圧子3の押し込み深さを零として、この円形板圧子3を、押し込み圧力0.5gf/cm^(2)かつ押し込み速度10mm/分で鉛直に押し込む。
(4)前記圧子3の押し込み深さが安定したらその押し込み深さを第1押し込み深さとして記録する。
(5)次いで、この状態から続けて同じ押し込み速度で、押し込み圧力を50gf/cm^(2)に増やして鉛直に前記圧子3を押し込む。
(6)前記圧子3の押し込み深さが安定したらその押し込み深さを第2押し込み深さとして記録する。
(7)第2押し込み深さと第1押し込み深さとの差(押し込み深さの差と記す)をロール硬さとして記録し、前記圧子3の押し込み圧力を抜重する。
【0024】
尚、この2段階の押し込み動作の内、一回目の押し込み(前記(3)の押し込み)は、消費者がトイレットペーパーロールを手で把持した際の指の押し込み動作を想定しており、また、二回目の押し込み(前記(5)の押し込み)は、前記手にしたロールの硬さを調べるために、消費者が把持した指をロールに押し込む動作を想定している。つまり、消費者が
トイレットペーパーロールの硬さを調べる動作は、上記のような二段階の押し込み動作によって近似することができて、消費者がその時感じるロール硬さの感触は、前記押し込み深さの差によって代替表現することができる。」

エ 「【0038】
(4)シートにはエンボス加工が施される。このエンボス加工によって、シートの剛性を向上できるので、巻密度の低い条件にあっても適度なロール硬さに仕上げることができる。よって、前記押し込み深さの差に仕上げるための巻密度の範囲を広げることができる。
【0039】
(5)ロールの巻密度が0.68?0.74m/cm^(2)である。ここで、巻密度とは、ロールの巻長さをロール側端面の面積(ロールの中心軸と直交する面の面積)で除した値である。この巻密度の調整は、ロール状に巻き取る際にシートに付与する巻き取り張力を調整することによって行うことができる。」

(3)甲第3号証
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンボス入りのトイレットペーパー、ペーパータオル、ティシュペーパー等の紙製品において、下記のエンボス
1)エンボス個数が50?200個/cm^(2)
2)エンボス深さが0.05?1.0mm
3)エンボス掛け後のウェブの厚さが0.5?2.5mm/10ply
4)縦と横方向の引張り強さ(gf/15mm)の相乗平均(GMT)がトイレットペーパーおよびティシュペーパーでは200gf以下、ペーパータオルでは300gf以下
5)嵩がトイレットペーパーおよびティシュペーパーでは5.0?6.5cm^(3)/g、ペーパータオルでは6.0?9.0cm^(3)/gを施したことを特徴とするエンボス入り紙製品。
【請求項2】 請求項1記載のエンボス入り紙製品を製造するためのエンボスロール。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエンボス入りのトイレットペーパー、ペーパータオル、ティシュペーパー等の紙製品全般に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トイレットペーパーやキッチンタオル等の衛生紙製品には、風合い、吸液性、美粧性、拭き取りやすさ等の要求される特性に応じたエンボス加工が広く施されている。多くの場合にエンボスによりシートは嵩高となるが、この結果、巻取りにおいて大径となり、積層体の場合においては積層体高さが増し、物流コストを引き上げることとなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この対策として、加工時にシートのテンションを高めとしたり、積層後に圧縮処理等を行うなどすると、エンボスの潰れや消えが起き、美粧性が損なわれてしまう。さらに、嵩を出さない様に浅くエンボスを入れる場合には、エンボスの効果が十分発揮されない。加工時にテンションを高めて固巻きとしたり、圧縮処理を行っても、エンボスが潰れにくく、風合いに優れ、かつコンパクトなエンボス入り紙製品の開発がのぞまれている。近年、微少なエンボスを施したトイレットペーパー等も存在するが、上記課題を満足するには到っていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】1プライまたは複数プライの原紙に下記のエンボスを施す。潰れにくく、巻取りあるいは積層後に風合いに優れ且つコンパクトな製品が可能となる。
1)エンボス個数が50?200個/cm^(2)
2)エンボス深さが0.05?1.0mm
3)エンボス掛け後のウェブ厚さが0.5?2.5mm/10plyである
4)GMT(注-1)がトイレットティシュでは200gf以下、ペーパータオルでは300gf以下
5)嵩がトイレットティシュでは5.0?6.5cm^(3)/g、ペーパータオルでは6.0?9.0cm^(3)/gであるようなエンボスが施されたウェブ及びそれを製造するためのエンボスロール。
※注-1 GMT=縦と横方向の引張り強度(gf/15mm)の相乗平均
【0005】
【作用】エンボス個数が、50個/cm^(2)より少ないと凹凸の触感を強く感じる。また200個/cm^(2)より多くても風合いの改善効果が劣り、またエンボスロールの詰まりが発生するなど操業性も悪化する。また、エンボス深さが0.05mmより小さいと美粧効果が得られず、1.0mm以上では、その後の加工によりエンボス潰れが生じてエンボスの効果が失われる。さらに、強度をGMTとしてトイレットペーパーで200gf、ペーパータオルで300gf以下とすることで風合いの良好で且つコンパクトな製品が得られる。
【0006】
【発明の効果】本発明の効果を要約して列記すると次の通りである。
1)肌触りの向上
シートの表面性及び柔軟性が改善される。
2)コンパクト化
ロール製品においては、同径で長尺化が可能となる。また積層体でもコンパクト化が可能で物流コスト等の削減が可能である。
3)美粧性
エンボス処理後の巻き取りや圧縮加工によってもエンボスパターンが失われにくい。
【0007】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、これは例示の目的で掲げたもので、これにより本発明を限定するものではない。
【0008】[実施例1]トイレットティシュ(トイレットペーパーおよびティシュペーパー)
10プライのトイレットティシュ用原紙が図1に示すように本発明の範囲の数密度50?200個/cm^(2)および深さ0.05?1.0mmのエンボスを施し、その結果を表1に実施例1?3として示した。また比較のためエンボスの数密度および深さが本発明の範囲外のものを比較例1、2として示した。尚参考のため数密度100個/cm^(2)および300個/cm^(2)のエンボスを図2および図3として示した。
【0009】
【表1】




(4)甲第4号証
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーに代表される水解性衛生薄葉紙に関する。」

イ 「【0005】
これに対して、シングルエンボスは、積層されたクレープ紙に一度にエンボスを付与するため一つのエンボスロールで済むとともに、当該エンボスがクレープ紙同士の積層一体化にも寄与することから糊は不要で水解性に優れる水解性衛生薄葉紙とすることができる利点がある一方、金属製エンボスロールのエンボス凸部の高さ以上に見かけの紙厚を増加させることができないため嵩高さの発現が難しいという欠点がある。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、スチールラバー方式を用いたシングルエンボスの水解性衛生薄葉紙における嵩高さの向上と紙面の滑らかさの向上を図ることにある。」

エ 「【0044】
他方、上記凸エンボスロール60によって形成される水解性衛生薄葉紙X1の凹エンボスについて述べると、凹エンボスの深さは、300?400μmであるのが望ましい。より好ましくは350?375μmである。300μm未満では、嵩高さを向上させ難く、400μmを超える断紙のおそれがある。なお、ここでの凹エンボスの深さは、マイクロスコープにより測定したものである。数値は、ランダムに選択した2個のエンボス部を通る部位の平均値とする。なおこの測定は、例えば、キーエンス社製、マイクロスコープにより測定することができる。
なお、本発明の水解性衛生薄葉紙X1は、特に1プライのものとした場合には、紙面の各面の滑らかさの差が少ないという効果をも奏する。」

5 当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第2項について
(ア)本件発明1について
a 本件発明1と甲1発明を対比すると、
「2プライ積層したトイレットペーパーをロール状に巻き取ったトイレットロールであって、
前記トイレットペーパーにエンボスパターンを設け、
前記トイレットロールの巻長が74m以上91m以下、巻直径が108mm以上136mm以下であるトイレットロール。」で一致し、少なくとも、本件発明1は、ロール柔らかさが0.4mm以上1.9mm以下であるのに対し、甲1発明は、そのような特定がされていない点で相違する。

b ここで、申立人が提示したその他の文献の記載について確認する。
甲第2号証には、二段階の押し込み圧力による押し込み深さの差の数値が記載されているものの、上記相違点に係るロール柔らかさの数値とは定義が異なっており、甲第3号証及び甲第4号証には、ロール柔らかさに関する記載は無い。
さらに、甲第5号証及び甲第6号証に脱墨パルプ及び蛍光染料について記載され、甲第7号証及び甲第8号証に巻密度がトイレットロールの柔らかさと相関することについて記載されている程度であるから、甲第2号証ないし甲第8号証には、上記相違点に係るロール柔らかさの数値が、記載も示唆もされていない。

c また、甲第7号証や甲第8号証に記載されているように、巻密度がロール柔らかさと相関するとしても、「ロール柔らかさ」は「巻密度」だけで決まるものではなく、その他の紙の材質等も影響するものであるから、甲第1号証に記載された巻密度の数値が、本件発明1の巻密度の数値範囲に含まれているとしても、甲1発明のロール柔らかさが、本件発明1のロール柔らかさと同じ0.4mm以上1.9mm以下と認識できるものではなく、かつ、甲第1号証に記載された巻密度の数値から、ロール柔らかさが0.4mm以上1.9mm以下とすることが、当業者が容易になし得たことともいえない。

d 上記相違点について、申立人は、特許異議申立書において、下記(a)?(c)のとおり、平成30年9月14日付け上申書において、下記(d)及び(e)のとおり主張している。
(a)甲第1号証の実施例3は、本件発明と同様に巻長が75m、巻直径117mmで、且つ、柔らかさ(ロール)の評価が5であることから、実施例3のトイレットロールの「ロール柔らかさ」を本件明細書の【0026】?【0028】に記載された測定方法で測定した場合には、0.4mm以上1.9mm以下になる蓋然性が高い。
(b)本件明細書の比較例4と6のロール柔らかさは、2.1mmと2.2mmであって、0.4mm以上1.9mm以下の値とは異なっているが、ロール柔らかさは、いずれも5と評価されている。したがって、0.4mm以上1.9mm以下という値に臨界的な意義はない。
(c)甲第2号証に記載されているように、トイレットペーパーロールを消費者が手にした時に適度な柔らかさを感じさせるようにすることは、従来より周知の課題であるから、甲1発明の「ロール柔らかさ」を、0.4mm以上1.9mm以下とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(d)本件発明1と甲1発明とは、エンボスパターンを設けたこと、並びに実施例レベルの具体的数値でされ一致するものであるので、甲第1号証の実施例7又は実施例6の「ロール柔らかさ」を測定すれば、本件発明の実施例3又は実施例8、13と同じまたは極めて近い値となることは疑う余地はない。
(e)「ロール柔らかさ」が、甲第7号証及び甲第8号証記載のように、「巻密度」と密接な関係にあることは当業者によって良く知られていた技術事項であるところ、本件発明の巻密度が「1.57m/cm^(2)」であるのに対し、甲1発明では「1.6m/cm^(2)」であり、ほぼ同一であることから、「ロール柔らかさ」についてもほど同一の値になる蓋然性が極めて高いものです。

e 上記dの主張について検討すると、上記b及びcのとおり、「ロール柔らかさが0.4mm以上1.9mm以下」とすることは、甲第1号証に記載されておらず、かつ、甲第1号証等の記載に基いて「ロール柔らかさが0.4mm以上1.9mm以下」とすることは、当業者が容易になし得たことではないから、上記主張は採用できない。

f 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(イ)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1を直接または間接的に引用するものであって、本件発明1にさらに構成を加えた発明である。
そうすると、上記(ア)と同様の理由により、本件発明2ないし5は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 特許法第36条第6項第1号について
申立人は、異議申立書において、「『坪量を下げない』という課題について、どのような手段によって、坪量を下げないようにしているのかが不明である。『ロールの柔らかさを良好にする』という他の課題に関しては、請求項1に『ロール柔らかさが、0.4mm以上1.9mm以下』と特定されているものの、『坪量を下げない』という課題に関しては、請求項1に坪量に関する記載が何ら存在せず、本件特許発明の坪量の基準値が不明である。」と主張している。
しかしながら、「坪量を下げない」という課題について、本件明細書の段落【0010】等に記載されているように、本件発明において、巻長、巻直径、エンボスパターン、ロール柔らかさ等を特定することによって、その課題を解決していることは明らかであるから、「坪量を下げない」との課題に関連して、本件発明がその「坪量」まで特定しなければならないものではない。
以上のとおりであるから、本件発明1ないし5は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。

6 むすび
以上のとおり、請求項1ないし5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっ
ては、取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-12 
出願番号 特願2016-202093(P2016-202093)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A47K)
P 1 651・ 537- Y (A47K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渋谷 知子  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 西田 秀彦
住田 秀弘
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6186483号(P6186483)
権利者 日本製紙クレシア株式会社
発明の名称 トイレットロール  
代理人 坂本 加代子  
代理人 矢田 歩  
代理人 大石 敏弘  
代理人 宮本 陽子  
代理人 渡辺 浩司  
代理人 坂本 智弘  
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