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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J
管理番号 1346287
審判番号 不服2017-13265  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-07 
確定日 2018-12-04 
事件の表示 特願2013- 32930「分光カメラ、及び分光画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-163721、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月22日の出願であって、平成28年12月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月21日付けで手続補正がされ、同年6月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた。
その後、平成29年11月7日付けで前置報告がされ、当審において平成30年9月3日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成30年9月20日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
撮像対象に対して、照射方向が異なる第一光及び第二光を照射する光源部と、
前記撮像対象で反射された光を分光して所定の波長の光を選択する分光素子と、
前記分光素子により選択された波長の光を撮像して、前記撮像対象に前記第一光を照射した際の第一分光画像、及び前記撮像対象に前記第二光を照射した際の第二分光画像を取得する撮像部と、
基準物に前記第一光または第二光を照射した際に得られる基準光量に対する、前記第一分光画像における光量の比が所定値以上となる画素を異常画素として検出する画素検出部と、
前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる画素の光量に置き換える光量補正部と、
を備え、
前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、
を備え、
前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え、
第一の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第一の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられ、
第二の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第二の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられることを特徴とする分光カメラ。」

なお、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。

本願発明2-4は、それぞれ本願発明1を減縮した発明である。

本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2008-304466号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
「【0018】
この画像処理システムは、可視光域において互いに独立して異なる複数の波長帯域の照明光により被写体を照明して被写体分光画像を撮影可能な撮影装置1と、この撮影装置1と接続されていて該撮影装置1から出力される被写体分光画像を処理する処理装置2と、を有して構成されていて、該処理装置2は、必要に応じてネットワーク3に接続することができるように構成されている。
【0019】
上記撮影装置1は、本実施形態においては、6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射して、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込む撮像と、6原色の照明光から1以上の照明光を各選択してRGBの3色の照明光としこれらを順次に照射することにより面順次式の動画として取り込む撮像と、を行うことができるようになっている。
【0020】
上記撮影装置1は、後述する照明光を被写体に投写するとともに被写体からの反射光を入射するための投射口5aを備えた筐体5と、この筐体5の投射口5a側に着脱可能に取り付けられており該投射口5aを介して被写体に投射する照明光に外光が混入することのないように遮光するための柔軟性を有する素材により略筒状に形成された当て付け部4と、上記筐体5内に組み込まれていて点灯されることにより被写体を照明するための照明光を発光する発光素子である第1LED6a?第6LED6fと、上記筐体5内に組み込まれていてこれら第1LED6a?第6LED6fにより照明された被写体像を結像するための撮像光学系7と、この撮像光学系7により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8と、このCCD8から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器9と、このA/D変換器9から出力され後述するバス10を介して伝送される被写体分光画像を一旦記憶するとともに後述するCPU18による作業領域としても用いられるメモリ11と、使用者が分光画像撮影動作の開始を指示入力したり動画像撮影動作の開始や終了を指示入力したりするための各種の操作スイッチや操作ボタンを含んでなる撮影操作部たる操作スイッチ14と、この操作スイッチ14からの指示入力を後述するCPU18に伝達するとともに該CPU18からの指令により上記第1LED6a?第6LED6fの発光制御に関する命令等を行ったりこの撮影装置1の撮像動作に関する制御を行ったりするカメラ制御I/F12と、このカメラ制御I/F12からの指令に基づき上記第1LED6a?第6LED6fの発光開始タイミングや発光終了タイミングなどの発光動作に係る制御を行うLEDドライバ13と、上記CCD8により撮像される動画像や上記メモリ11に記憶された被写体分光画像(静止画像)を後述するLCDモニタ16に表示するための制御を行うモニタI/F15と、このモニタI/F15から出力される画像を表示するためのLCDモニタ16と、上記メモリ11に記憶された被写体分光画像や後述するCPU18からの制御データ等を上記処理装置2に出力しあるいは該処理装置2からの通信データを入力するための外部I/F17と、上記A/D変換器9、メモリ11、カメラ制御I/F12、モニタI/F15、外部I/F17、後述するCPU18等を互いに接続するバス10と、上述した各回路を含むこの撮影装置1を統括的に制御する制御部たるCPU18と、を有して構成されている。」
「【0032】
次に、図2(B)は、リング状に発光部6Aを複数配置していて、かつ、各発光部6A内に6種類の原色を包含するように上記第1LED6a?第6LED6fを配置した例を示している。なお、図示の例では、1つの発光部6A内に6原色の全てを配置しているが、これに限らず、3原色ずつを配置するなどの6原色が複数の発光部6Aに分かれるようにしても構わない。」
「【0036】
上述したように、この撮影装置1は、通常のRGB画像としての動画と、高度な色再現を可能とする6原色の被写体分光画像としての静止画と、を撮像することができるようになっており、動画はモニタ用画像取得モードにおいて、静止画は分光画像取得モードにおいて、それぞれ撮像されるようになっている。」
「【0238】
上記撮影装置1Aにおいては、それぞれ異なる分光分布特性を有する複数個のLEDからなるLED群6Xを光源として、その光源により照明される被写体像(この場合、患者59の歯の像)が撮影光学系7を介して取り込まれ、撮像素子であるCCD8によって撮像信号に変換され、メモリ11に画像データとして記憶される。その画像データは、外部I/F17を介して処理装置2Aの画像メモリに転送される。この撮影装置1Aの構成は、前記第1乃至第4の実施形態の画像処理システムに適用された撮影装置1(図1,図17,図21,図37)と略同様の構成を有しており、図44ではそれらの同一構成要素に同一の符号を付して示されている。」
「【0279】
図49は、本実施形態の画像処理システムのブロック構成図である。図50(A),図50(B)は、正反射する被写体を各色のLED光で照明したときの状態を示す図であり、図50(A)は、上記結像時の正反射する被写体と各色のLEDとCCDの配置を示し、図50(B)は、CCDに結像する正反射部分のある画像を示す図である。図51は、CCDの結像面上の各色のLEDの照明による正反射部分が存在する被写体像と、上記画像処理システムの撮影装置で上記被写体像から正反射部分を削除処理した被写体像を示す図である。図52は、上記撮影装置における正反射部分削除処理のフローチャートである。
【0280】
本実施形態の画像処理システムは、図49に示すように正反射の影響のない分光画像を撮影可能である画像撮影部としての撮影装置1Cと、画像メモリを有し、上記撮影装置1Cで撮影された被写体分光画像信号から高精度色再現画像データを求めるための画像処理部である処理装置2Cとを有してなる。
【0281】
上記処理装置2Cは、前記第1の実施形態等の画像処理システムに適用された処理装置2と同様の構成,機能を有しており、パーソナルコンピュータを用いてもよい。
【0282】
上記撮影装置1Cは、図49に示すように前記第1乃至第4の実施形態の画像処理システムに適用された撮影装置1(図1,図17,図21,図37)と略同様の構成を有しているが、特に本撮影装置1Cにおいては、後述するように取得した正反射画像データの処理動作が行われる。なお、撮影装置1Cの各構成要素で上記撮影装置1と同一ものには、同一の符号を付して説明する。
【0283】
上記撮影装置1Cでは、被写体71が正反射するような光沢のある曲面を持つ被写体であった場合でもその画像データからLED群6Xの各LEDからの照明光による正反射した高輝度部分を削除し、正反射部分のない画像データが合成処理により求められる。以下、その画像処理について説明する。
【0284】
例えば、上述した正反射する被写体71に対して、一例としてそれぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1,6a2,6a3,6a4の照明光を照射した場合、上記各LEDから同じ波長の光が発光される。それぞれ被写体71で正反射すると、CCD8の結像面上の異なった位置に色づいた高輝度点が結像される。すなわち、図50(B)の画像Z上、異なった位置にLED6a1,6a2,6a3,6a4に対応する高輝度ポイントPa,Pb,Pc,Pdが生じることになる。
【0285】
撮影装置1Cにおいては、上記正反射による高輝度ポイントPa,Pb,Pc,Pdが正反射部削除処理により除去される。その削除処理について、図51により説明すると、まず、LED6a1の発光光による被写体71の正反射像は、CCD結像面Z1 上で高輝度点Paで示される。同様にLED6a2,6a3,6a4の各発光光による被写体71の正反射像は、CCD結像面Z2 ,Z3 ,Z4 上でそれぞれ高輝度点Pb,Pc,Pdで示される。上記高輝度点Pa,Pb,Pc,Pdの画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化することによって正反射の高輝度部分のない補正された被写体71の分光画像データ(CCD結像面上Z0 )が得られる。
【0286】
上記正反射部削除処理について、図52のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS131でLED6a1を点灯させ、ステップS132でそのときの画像データを取得する。その後、ステップS133?S138において順次LED6a2,LED6a3,LED6a4を点灯させて、各LED発光時の各画像データを取得する。ステップS139において上記各取得画像データから高輝度部分を除いた画像データを生成することによって正反射が除去された分光画像データを得る。なお、上述した例は、LED光源が4つの場合を示しているが他の光源数の場合も同様に処理することができる。
【0287】
本第7の実施形態の画像処理システムにおける撮影装置1Cによれば、被写体71が正反射するような被写体であったとしても取得した画像データに上述した正反射削除処理を施すことによって、正反射部分のない分光画像データを得ることができる。」
【図49】

【図50】

【図51】


【図52】


ここで、引用文献1には、「高輝度ポイント」、「高輝度点」、という用語で記載されているが、「高輝度点」として統一して記載する。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「撮影装置1Cは、
照明光を被写体に投写するとともに被写体からの反射光を入射するための投射口5aを備えた筐体5と、
上記筐体5内に組み込まれていて点灯されることにより被写体を照明するための照明光を発光する発光素子である第1LED6a?第6LED6fと、
上記筐体5内に組み込まれていてこれら第1LED6a?第6LED6fにより照明された被写体像を結像するための撮像光学系7と、
この撮像光学系7により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8と、
この撮影装置1Cを統括的に制御する制御部たるCPU18と、
を備え、
前記第1LED6a?第6LED6fは6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射し、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込み、
正反射する被写体71に対して、一例として第1LED6aは、それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4を含み、前記それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し撮像することで、上記各LED6a1、6a2、6a3、6a4に対応する高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdが生じた正反射画像データが取得され、
前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化することによって正反射の高輝度部分のない補正された被写体71の分光画像データを得る撮影装置1C。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2010/0245832号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0042]
FIG. 1 illustrates an imaging spectrometer according to one embodiment. The object being investigated is marked with the reference number 100. The spectrometer comprises imaging optics 110, the task of which is to collect the desired radiation beam from the object 100 and forward it an interferometer 120. In the Fabry-Perot interferometer of the figure, the surfaces, set opposite to each other, of the optically transparent elements 121 are equipped with semi-transparent mirror surfaces 128. The coating used is typically a dielectric or metallic coating. On the surfaces of the elements 121, there are also measurement electrodes 126 set opposite to each other, with the aid of which the distance of the mirrors from each other (mirror gap, length of the pit) can be measured capacitively. In addition, the interferometer 120 comprises a piezo-actuator ring 124, or corresponding mirror-gap adjusting element fitted between the frame 122 and the frame 122 and one of the optical elements 121. Thus, the mirror gap can be adjusted as desired with the aid of the mutual capacitance measurement of the metallized electrodes 126 made in the surface of the mirror, and the ring-shaped piezo-actuator 124. Alternatively, the mirror gap can be adjusted electrostatically.
(当審訳:図1は画像化分光計の一実施形態を示す。検査される対象物は、参照番号100で示されている。この分光計は結像光学系110を含み、結像光学系は、検査される対象物100からの所望の放射光を収集し、干渉計120にそれを転送するためのものである。図のファブリーペロー干渉計で、光学的に透明な要素121の対向する表面には、光学的に半透明な鏡面128が形成されている。使用されるコーティングは、典型的には、誘電体又は金属性のコーティングである。要素121の表面には、測定電極126も対向して設けられており、それによって静電容量的に鏡面間の距離を測定することができるようになっている。さらに、干渉計120は、ピエゾ素子リング124または、同様の鏡面間距離を調整する素子をフレーム122と光学的に透明な要素121との間に備えている。このように鏡面間距離が、鏡面の表面上にある電極126による静電容量の測定と、ピエゾ素子124とによって、所望の距離に調整される。あるいは、ミラーは静電的に調整することができる。)
[0043]
The radiation beam received from the object can be guided through the interferometer by a collimation stage, which is sufficient to produce a spectrally sliced interference image. The width of the wavelength band of particularly a Fabry-Perot interferometer is strongly dependent on the degree of collimation of the light travelling through it.
(当審訳:対象物から得られる放射光は、コリメーションステージによって干渉計に案内され、そうすることは分光的に分割された干渉画像を得るのに十分である。ファブリーペロー干渉計の波長帯の幅はファブリーペロー干渉計を通る光のコリメーションの度合いに強く依存する。)
[0044]
A semiconductor sensor or similar, which is sensitive to both of the selected wavelength bands separately, is used as the detection element, i.e. the detector 130, in the embodiment illustrated by FIG. 1. In such a sensor, there is a dense matrix of detector elements set either next to each other, or on top of each other in the direction of travel of the light, in which case an electrical response is obtained, from each element of the matrix, from the intensity of the light directed to the element in question, at each selected wavelength band separately. This permits several orders of the interferometer to be exploited in a practical manner.
(当審訳:個別に選択された波長帯に感度がある半導体センサ等、すなわち、図1に示された実施形態における検出器130が検出要素として使用される。このようなセンサでは、検出素子が密に配列されており、このような検出素子の配列は検出素子が互いに隣り合って配置されているか、光の進行方向に対して互いの上部上に配置されているかのどちらかで配列されたものであって、電気的応答は、この配列のそれぞれの要素から、対象となっている要素に向けられた光の強さから、個別に選択されたそれぞれの波長帯ごとに得られる。これによって、干渉計の数桁のオーダーを実際的に利用することが可能になる。)
[0045]
By way of example, a light source 140 is also attached to the spectrometer of FIG. 1, and is in this case a series of LED lights with different emission wavelength bands. Identical series 140 and 142 are placed on different sides of the optical axis of the spectrometer, in order to achieve even illumination. In such a measurement configuration, images of the object are taken using the selected mirror gap of the Fabry-Perot cavity illuminated by LED of each selected wavelength band.
(当審訳:一例として光源140も図1の分光計に取り付けられており、ここでは光源は異なる発光波長帯を有する一連のLED光源である。同一の一連の光源140と142は分光計の光軸に対して互いに異なる側に配置されており、そのように配置することで、均一な照明を行うことができるようになっている。このような構成とすることで、ファブリーペロー共振器の選択された鏡面間の間隔を用いることで、選択された波長帯のLEDで照明された対象物の画像が得られる。)」
Fig.1


上記引用文献2には、
「検査される対象物100からの所望の放射光を収集し、ファブリーペロー干渉計120にそれを転送する結像光学系110と、
ファブリーペロー干渉計120と、
対象物100を照明する異なる発光波長帯を有する一連のLED光源140、142と、
検出器130と、
を備えた画像化分光計であって、
当該画像化分光計におけるファブリーペロー干渉計120に、対象物から得られる放射光が案内され、分光的に分割された干渉画像が得られる画像化分光計」
が記載されている。

ここで上記引用文献2に記載されている、ファブリーペロー干渉計(120)は対象物からの放射光を分光的に分割するためのものであることからすると、当該干渉計(120)は、対象物からの反射光を分光する分光素子であるといえる。
したがって、上記引用文献2には、対象物からの反射光を分光する分光素子と、当該分光素子で分光された光を検出する検出器とを備えた画像化分光計という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2010-515971号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

「【0015】
まず図2Aは、カメラ131によってキャプチャされた第1の画像200Aの表示を示すものであるが、領域1は、カメラ131によって受信された画像200A内の鏡面反射の領域を示す。図2Bは、カメラ132によってキャプチャされた画像200Bの表示を示す。図2Bの領域4は、カメラ132によって受信された画像200B内の鏡面反射の領域を示す。しかし鏡面反射の領域は2つのカメラに対して異なる。例えば、図2Aの画像200Aの領域2は如何なる鏡面反射も含まないが、図2Bの画像200Bの領域4のような、ディスプレイスクリーンの同じ領域の画像は、まさに鏡面反射を含んでいる。一方、図2Bの画像200Bの領域3は如何なる鏡面反射も含まないが、図2Aの画像200Aの領域1と同様の領域のディスプレイスクリーンの画像は、まさに鏡面反射を含んでいる。
【0016】
図1に戻ると、対話型ディスプレイ100は、2つのカメラ131および132に接続された画像マージ処理装置140を示す。画像マージ処理装置140は、2つのカメラからの画像を重ね合わせる任意の機構またはアルゴリズムであってよい。そのような方法の例300Aを図3に例示する。画像マージ処理装置は、第1のカメラで撮られた第1の画像の部分にアクセスする(行為310)が、たとえ画像の他の部分は鏡面反射を有していても、この第1の部分は鏡面反射がない。画像マージ処理装置は、第2のカメラで撮られた第2の画像の部分にアクセスする(行為320)が、たとえ第2の画像の他の部分は鏡面反射を有していても、この第2の部分もまた鏡面反射がない。画像マージ処理装置は、次に2つの部分をマージする(行為330)。この方法は非常に広範に検討されてきたので、本発明の原理は特定のタイプのマージ処理に限定されない。しかし明確にするために、本発明の原理に使用可能な複数の異なる画像マージ処理装置にたとえ何らの制限がなくとも、画像マージの種々の例をここで説明する。
【0017】
第1の例において、鏡面反射を含んでいる領域1を除いて、第1の画像200Aの全体が撮られるであろう。画像200Bに関しては、領域3のみが撮られる。画像200Aの領域1は、鏡面反射を有さないマージした画像を生成するために、画像200Bの領域3と置き換えられてよい。カメラ131の範囲151はディスプレイの全領域をカバーしていないので、画像200Bの右側の部分も画像200Aに添加されてよいであろう。」
「【0019】
これらの例において、鏡面反射は除去される。しかし、両方のカメラの鏡面反射の領域が重なり合う実施形態もあり得る。例えば、ディスプレイの前部に置かれた対象物は、それが両方のカメラに対する鏡面反射の領域にある場合は、まったく画像化されないことがある。これは好ましいことではないが、本発明の原理は、そのような状況においても鏡面反射を低減するために同様に適用できる。例えば、第2のカメラの画像の部分は、第1のカメラによって受信された鏡面反射の一部分のみを除去するために、使用され得る。」
【図1】

【図2】

【図3】


したがって、上記引用文献3には、第1のカメラの鏡面反射のない画像部分にと第2のカメラの鏡面反射のない画像部分とをマージして鏡面反射を除去することが記載されており、一例として、鏡面反射を含んでいる領域1を除いて、第1の画像200Aの全体を撮り、画像200Bに関しては、領域3のみを撮り、画像200Aの領域1は、鏡面反射を有さないマージした画像を生成するために、画像200Bの領域3と置き換えることが記載されている。
すなわち、引用文献3には、画像200Aの鏡面反射領域の画素を画像200Bの対応する位置の画素で置き換えることで鏡面反射を除去する技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
また、前置報告で引用された引用文献3(特開2000-276901号公報、以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

「【0016】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)図1の(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る光源装置の構成を示す側断面図であり、図1の(b)は図1の(a)の上方から見た一部平断面図である。なお、図1において図7と同一な部分には同符号を付してある。
【0017】図1の(a)では、ランプ1の端子部を保持し、これに図示しない電源装置からの電源を電源コード2を介して供給するランプソケット3が、連結部材4にビス5で固定されている。また、ランプ1の発する光を集光し、照明光として特定の方向に出射するコレクターレンズ6と赤外線吸収フィルター7が、間隔部材8により所定の間隔をもって共にレンズ枠9とこれにねじ込まれるリング10により保持されている。
【0018】レンズ枠9は、連結部材4にビス11で固定されており、その向きにより照明光の出射方向が決定される。レンズ枠9は、支持部材12に設けられた穴に嵌合挿入され、図示しない固定ビスによりセットされる。ランプ1を交換する際には、この固定ビスをゆるめレンズ枠9を支持部材12から取り外し、ランプ交換を行なう。
【0019】支持部材12にビスで固定された遮光板13,14及びハウジング15は、ランプ1の発する光を周囲に漏らさないようにランプ1を囲んでおり、これらはランプ1の点灯により暖められた空気が遮光板13,14とハウジング15との間から上方に排出され、より低温の外気が下方から流入するように位置している。
【0020】本光源装置を顕微鏡や検査装置用のマクロ照明として用いる際には、支持部材12に設けられた取付けネジによりスタンド等に固定して利用する。ハウジング15の上下には、ハウジング15内部への異物の進入を防ぐために、格子状の保護カバー23,24がビス25により取り付けられている。
【0021】一方、図1の(b)に示すように、ミラー16がミラー保持金具17aに接着固定されており、このミラー保持金具17aはミラー保持部材18aにツマミ19と軸20により回動自在に保持されている。また、軸20とミラー保持部材18aとの間にバネワッシャー21が押しつぶされるように配置されており、これにより、ミラー保持金具17aは軸20に対して回動可能に保持されている。ミラー保持部材18aは、保持部材12にビス22で固定されている。
【0022】以上のような構成により、ランプ1で発した照明光がコレクターレンズ6から横方向へ出射された後、その方向がミラー保持金具17aを回動することにより調整されたミラー16の反射角度に応じて、下方または斜め下方に変えられ、ミラー保持部材18aの下面部に設けられた空部を通過して試料へ照射される。
【0023】なお、ミラー16により変えられる照明光の方向は下方や斜め下方に限らず、横方向や上方にすることも可能である。この場合、ミラー保持部材18aの上面部と正面部(図1の(a)では左側面)に照明光を通過させるための空部を設ける。そして、コレクターレンズ6から横方向へ出射された照明光がミラー16により横方向や上方へ反射されるよう、ミラー保持金具17aを回動しミラー16の反射角度を調整する。
【0024】上述した構成をなす光源装置によれば、下方や斜め下方等への照明を行なう場合に、光源装置全体を水平に保つことができるため、遮光板13,14内及びハウジング15内のランプ1により暖められた空気を上方へ放出し、より低温の外気を下方から流入させるという放熱効果を損なうことがなくなる。」
「【0036】(第3の実施の形態)図6の(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る光源装置の構成を示す側断面図であり、図6の(b)は図6の(a)の左側から見た正断面図である。なお、図6において図1?図5と同一な部分には同符号を付して説明を省略する。
【0037】図6の(a),(b)では、支持部材12fに回転部材29が2本の軸30により回転自在に保持されている。また、片方の軸30と支持部材12fとの間にバネワッシャー31が押しつぶされるように配置されており、これにより回転部材29は、軸30,30に対して回動可能に保持されている。レンズ枠9は、回転部材29に嵌合挿入され図示しないビスによりセットされている。
【0038】回転部材29に固定された遮光板33、支持部材12fに固定された遮光板32、及びハウジング15fは、上記第1の実施の形態の場合と同様にランプ1の発する光を周囲に漏らさないようにランプ1を囲んでおり、これらはランプ1の点灯により暖められた空気が遮光板32,33とハウジング15fとの間から上方に排出され、より低温の外気が下方から流入するように位置している。この関係は、回転部材29が回転しても保持されるよう位置している。
【0039】以上のような構成により、照明光の出射方向を決定するコレクターレンズ6が回転部材29と共に回動するため、照明光の出射方向を変えることができる。
【0040】上述した構成をなす光源装置によれば、上記第1の実施の形態の効果に加え、ミラーを用いて照明光の向きを変えるのではなく、照明光の出射方向そのものを変えることができるので、より効率の良い照明をすることができる。また、この光源装置を、通常の顕微鏡用光源装置やマクロ照明装置として用いることができる。また、投光管が水平に構成されていない場合でも、光源装置全体を水平に保ち任意の方向へ照射することができるため、放熱効果を損なうことの無い光源装置として使用することができる。」
【図6】


引用文献4には、
「照明光を発するランプ1が、電源装置からの電源を電源コード2を介して供給するランプソケット3にランプ1の端子部で保持されており、
ランプ1の発する光を集光し、照明光として特定の方向に出射するコレクターレンズ6と赤外線吸収フィルター7が、間隔部材8により所定の間隔をもって共にレンズ枠9とこれにねじ込まれるリング10により保持されており、
前記ランプソケット3及び前記レンズ枠9は連結部材4に固定されており、
回転部材29が支持部材12fに2本の軸30により回転自在に保持されており、
前記回転部材29には前記レンズ枠9がセットされており、回転部材29とともに照明光の出射方向を決定するコレクターレンズ6が回動することにより照明光の出射方向が変更され、
回転部材29に固定された遮光板33、支持部材12fに固定された遮光板32、及びハウジング15fはランプ1を囲んでおり、これらはランプ1の点灯により暖められた空気が遮光板32、33とハウジング15fとの間から上方に排出され、より低温の外気が下方から流入するように位置しており、この関係は回転部材29が回転しても保持されるよう位置している、
光源装置。」
が記載されている。
そして、引用文献4には、当該構成をなす光源装置とすることで、「照明光の出射方向そのものを変えることができるので、より効率の良い照明をすることができる。また、この光源装置を、通常の顕微鏡用光源装置やマクロ照明装置として用いることができる。また、投光管が水平に構成されていない場合でも、光源装置全体を水平に保ち任意の方向へ照射することができるため、放熱効果を損なうことの無い光源装置として使用することができる。」([0040])と記載されている。
したがって、引用文献4には、ハウジング内にランプやレンズを収納した光源装置であって、レンズの向きを変えることで、光源から照射される光の出射方向を変えることができ、その際、光源装置全体は水平に保たれることで、放熱効果を損なうことの無い光源装置という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「一例として第1LED6aは、それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4を含」むことは、「第1LED6a?第6LED6f」のすべてが、それぞれ異なるリング状の位置に配置される4つのLEDを含むことを示すことは明らかである。
そして、「それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4」が、「被写体」に照射方向が異なる光を照射することになることも明らかである。
すると、それぞれ異なるリング状の位置に配置される4つのLEDを含む「第1LED6a?第6LED6f」は、本願発明1の「撮像対象に対して、照射方向が異なる第一光及び第二光を照射する光源部」に相当する。

イ 引用発明の「撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8」は、本願発明1の「撮像部」に、また、引用発明の「前記それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し撮像することで、」「取得され」た「上記各LED6a1、6a2、6a3、6a4に対応する高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdが生じた正反射画像データ」は、「前記撮像対象に前記第一光を照射した際の第一分光画像、及び前記撮像対象に前記第二光を照射した際の第二分光画像」に、それぞれ、相当する。
すると、引用発明の「この撮像光学系7により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する撮像素子部に含まれる撮像素子たるCCD8」であって、「第1LED6a?第6LED6fは6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射し、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込み、」「前記それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し撮像することで、上記各LED6a1、6a2、6a3、6a4に対応する高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdが生じた正反射画像データが取得され」る「CCD8」は、本願発明1の「選択された波長の光を撮像して、前記撮像対象に前記第一光を照射した際の第一分光画像、及び前記撮像対象に前記第二光を照射した際の第二分光画像を取得する撮像部」に相当する。

ウ 引用発明では、「高輝度点Pa、Pb、Pc、Pd」の「画素データ」を除く処理が行われていることから、「高輝度点Pa、Pb、Pc、Pd」を正常でない画素として抽出していることは自明であり、引用発明の「画素データ」及び「前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素」は、それぞれ、本願発明の「光量」及び「異常画素」に相当する。
そして、引用発明において「高輝度点Pa、Pb、Pc、Pd」を正常でない画素として抽出することが、「撮影装置1Cを統括的に制御する制御部たるCPU18」で行われていることも明らかである。
また、本願発明1の「基準物に前記第一光または第二光を照射した際に得られる基準光量に対する、前記第一分光画像における光量の比が所定値以上となる画素を異常画素として検出する」ことは、基準の光量より相当程度大きい光量である画素を異常画素としていることから、一定以上の高輝度の画素を検出しているといえる。
すると、引用発明の、上記「高輝度点Pa、Pb、Pc、Pd」を抽出している「CPU18」と、本願発明1の「基準物に前記第一光または第二光を照射した際に得られる基準光量に対する、前記第一分光画像における光量の比が所定値以上となる画素を異常画素として検出する画素検出部」とは、「高輝度画素を異常画素として検出する画素検出部」である点で一致する。

エ 引用発明の「前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化することによって正反射の高輝度部分のない補正された被写体71の分光画像データを得る」ことは、「この撮影装置1Cを統括的に制御する制御部たるCPU18」で行われていることは明らかである。
すると、引用発明の「前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化することによって正反射の高輝度部分のない補正された被写体71の分光画像データを得る」「CPU18」と、本願発明1の「前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる画素の光量に置き換える光量補正部」とは、「前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第二分光画像を用いて補正する光量補正部」である点で一致する。

オ 引用発明では「第1LED6a?第6LED6fは6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射し、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込」むのであるから、「6種類の波長帯域の照明光」毎に、「それぞれ異なるリング状の位置に配置される」4つのLED「から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し撮像」して、「前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化することによって正反射の高輝度部分のない補正された被写体71の分光画像データを得る」と認められる。
すると、引用発明の上記構成と、本願発明1の「第一の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第一の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられ、第二の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第二の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられること」とは、「第一の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第一の波長の前記第二分光画像を用いて補正し、第二の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第二の波長の前記第二分光画像を用いて補正する」点で一致する。

カ 引用発明における「被写体71の分光画像データを得る撮影装置1」は、本願発明1における「分光カメラ」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「撮像対象に対して、照射方向が異なる第一光及び第二光を照射する光源部と、
選択された波長の光を撮像して、前記撮像対象に前記第一光を照射した際の第一分光画像、及び前記撮像対象に前記第二光を照射した際の第二分光画像を取得する撮像部と、
高輝度画素を異常画素として検出する画素検出部と、
前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、第二分光画像を用いて補正する光量補正部と、
を備え、
第一の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第一の波長の前記第二分光画像を用いて補正し、
第二の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第二の波長の前記第二分光画像を用いて補正する分光カメラ。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「前記撮像対象で反射された光を分光して所定の波長の光を選択する分光素子」という構成を備え、「分光素子により選択された波長の光を撮像して、」「第一波長の」「第一分光画像」及び「第二分光画像」並びに「第二波長の」「第一分光画像」及び「第二分光画像」を取
得するのに対し、引用発明は「前記第1LED6a?第6LED6fは6種類の波長帯域の照明光(6原色の照明光)を被写体に順次照射し、6枚の被写体分光画像を静止画として取り込」む点。

(相違点2)異常画素検出部の構成に関して、本願発明1は「基準物に前記第一光または第二光を照射した際に得られる基準光量に対する、前記第一分光画像における光量の比が所定値以上となる画素を異常画素として検出する画素検出部」という構成を備えるのに対し、引用発明では「リング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し撮像することで、上記各LED6a1、6a2、6a3、6a4に対応する高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdが生じた正反射画像データが取得され、前記高輝度点Pa、Pb、Pc、Pdの画素データを除」くとあり、高輝度点を異常画素として検出する点。

(相違点3)光量補正部の構成に関して、本願発明1は「前記第一分光画像における前記異常画素の光量を、前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる画素の光量に置き換える」という構成、及び「第一の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第一の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられ、第二の波長の前記第一分光画像における前記異常画素の光量は、前記第二の波長の前記第二分光画像における前記異常画素と同位置となる前記画素の光量に置き換えられる」という構成を備えるのに対し、引用発明では「高輝度点の画素データを除いた残りの画像データを加算、または、平均化する」点。

(相違点4)照射方向が異なる光を照射するための構成として、本願発明1は「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部」を備えるのに対し、引用発明は「正反射する被写体71に対して、一例としてそれぞれ異なるリング状の位置に配置される、LED6a1、6a2、6a3、6a4を含み、前記それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED6a1、6a2、6a3、6a4から同じ波長の光を、正反射する被写体71に対して順次照射し」ている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み最初に上記相違点4について検討する。
相違点4に係る本願発明1の「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備える」という構成は、「レンズ角度変更部」がレンズの設置角度を変更することにより、光源部から「撮像対象に対して照射方向が異なる、第二光を照射する」ための構成と解されるものである。
上記引用文献4には、レンズの向きを変えることで、光源から照射される光の出射方向を変えることが記載されているが、上記引用文献4に記載されているのは、ハウジング内にランプやレンズを収納した光源装置であって、レンズの向きを変えることで、光源から照射される光の出射方向を変えることができ、その際、光源装置全体は水平に保たれることで、放熱効果が損われないということであって、上記引用文献4には特定の対象に対し、異なる方向から光を照射するという技術事項は記載されていない。
すると、上記引用文献1に記載の撮影対象を照射する光源部として、「それぞれ異なるリング状の位置に配置されるLED」の構成を、上記引用文献4に記載の光源装置に変更する動機付けはない。
また、本願発明1のレンズ角度変更部は上記引用文献2及び上記引用文献3には記載されていない。
したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、上記引用文献2、上記引用文献3及び上記引用文献4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え」るという同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、引用文献3及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
本願発明1、2、3、4、5はそれぞれ、原査定がされた平成29年2月21日付け手続補正書における請求項1、2、7、8、9に係る発明(以下、それぞれ、「査定発明1」「査定発明2」「査定発明7」「査定発明8」「査定発明9」という。)に対応するものである。
原査定は、査定発明1、2、8、9は上記引用文献1及び2に基づいて、査定発明7は上記引用文献1、2及び3に基づいて、さらに、請求項10に係る発明は引用文献2及び3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本願発明1-5は、それぞれ、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え」るという発明特定事項を有するものであり、上記第4での検討のとおり、引用文献1に記載された発明(引用発明)を主引例として、引用文献2、引用文献3及び引用文献4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないものである。
また、引用文献2に記載された発明を主引例として、引用文献1、引用文献3及び引用文献4に記載された事項を参照したとしても、上記第4での検討からみて、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え」るという発明特定事項を有する本願発明1-5は、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないものである。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では、平成29年9月7日付け手続補正書における請求項3に係る発明は、「照射方向が異なる第一光及び第二光を照射する光源部」であって、「前記光源部は、第一光を照射する第一光源と、第二光を照射する第二光源を備え」、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え」る、分光カメラの発明であるが、本願の発明の詳細な説明には、光源部が二つあるような分光カメラについて、「方向変更部」を用いて異なる方向から撮像対象に対して光を照射することは記載されていないとの拒絶の理由を通知している。
また、請求項4-5に係る発明は、「撮像対象に対して光を照射する光源部と、前記撮像対象により第一方向に反射された光を分光して所定の波長の光を選択する第一の分光素子と、前記撮像対象により前記第一方向とは異なる第二方向に反射された光を分光して前記所定の波長の光を選択する第二の分光素子と、前記第一の分光素子により選択された波長の光を撮像し、第一分光画像を取得する第一撮像部と、前記第二の分光素子により選択された波長の光を撮像し、第二分光画像を取得する第二撮像部と」を備え、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部」を備え、「前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え」る、分光カメラの発明である。しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、第一分光画像を取得する第一撮像部と第二分光画像を取得する第二撮像部を備える分光カメラについて、「方向変更部」を用いて異なる方向から撮像対象に対して光を照射することは記載されていないとの拒絶の理由を通知しており、請求項9も同様との拒絶理由を通知している。
しかしながら、平成30年9月20日にされた補正において、これらの請求項が削除されたため、この拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第2号について
当審では、平成29年9月7日付け手続補正書における請求項8に係る発明は、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備える」、分光画像処理方法の発明であるが、請求項8では、「前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部」や、「レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部」が、分光画像処理方法の各ステップにおいてどのように作用するかが特定されておらず、その結果、請求項8に係る発明は、方法の発明として明確であるとはいえないとの拒絶の理由を通知している。
これに対し、平成30年9月20日にされた補正において、「前記光源部は、発光体と、前記発光体から射出される光の進行方向を変更する方向変更部と、を備え、前記方向変更部は、レンズの姿勢を変更するレンズ角度変更部を備え、

前記方向変更部が備える前記レンズ角度変更部が前記レンズの設置角度を変更することにより」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用発明並びに引用文献2、引用文献3及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、また、引用文献2に記載された発明、並びに、引用文献1、引用文献3及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2013-32930(P2013-32930)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01J)
P 1 8・ 121- WY (G01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塚本 丈二  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 三木 隆
渡戸 正義
発明の名称 分光カメラ、及び分光画像処理方法  
代理人 松岡 宏紀  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 磯部 光宏  
代理人 仲井 智至  

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