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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1346291
審判番号 不服2016-18833  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-15 
確定日 2018-11-14 
事件の表示 特願2014-535177「溶接と溶断のための電力供給源におけるリアルタイムなインダクタンス監視」拒絶査定不服審判事件〔平成25年4月18日国際公開、WO2013/054182、平成26年11月17日国内公表、特表2014-530106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2012年10月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2011年10月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、
平成27年10月13日に審査請求がなされ、
同年11月2日に手続補正書が提出され、
同年12月15日付けで拒絶理由通知(同年同月22日発送)がなされ、
これに対して平成28年5月20日に意見書が提出され、
同年8月10日付けで上記平成27年12月15日付けの拒絶理由通知書に記載した理由(特許法第29条第2項)によって拒絶査定(同年同月16日謄本発送・送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成28年12月15日付けで審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年12月15日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1における「出力電圧限度」及び「前記出力電圧限度」の記載を、「出力電圧上限」及び「前記出力電圧上限」と補正し、同様に、補正前の請求項15における「出力電圧限度」及び「前記出力電圧限度」の記載を、「出力電圧上限」及び「前記出力電圧上限」と補正するものである。

2 補正の適否
上記補正は内容として、補正前の「出力電圧限度」は、「出力電圧上限」を内容とすることが技術的に明らかであって、限度を上限と補正することにより、その記載を単に直接的に明瞭なものとすることになるから、本件補正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
よって、本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年12月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「 【請求項1】
溶接作業または溶断作業のための電力供給装置であって:
第1の出力端子;
第2の出力端子;
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の各々に対して接続され、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の少なくとも一方を介して出力信号を出力する、電力コンポーネント・モジュール;
前記第1の出力端子に接続されている第1のリード線;
前記第2の出力端子に接続されている第2のリード線;
溶接または溶断作業中に、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子にわたる反射された電圧を検出する電圧検出回路;
前記反射された電圧を閾値電圧と比較する比較回路;および、
前記電力供給装置の利用者のために、前記反射された電圧と前記閾値電圧との間の前記比較の結果を画面表示する利用者用ディスプレイ;
を具備し、
前記反射された電圧は、前記電力供給装置の出力電流が変化するときのインダクタンスによりもたらされ、
前記閾値電圧は、前記電力供給装置の出力電圧上限であり、前記出力電圧上限は、前記電力供給装置の性能に関連する、
電力供給装置。」

第4 引用文献・引用発明
1 引用文献1の摘記事項、図示事項及び引用発明
本願の優先日前に頒布され、上記平成27年12月15日付けの拒絶理由通知において引用した、特開昭64-75176号公報(公開日:平成元年3月20日、以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の事項が記載されている。
(下線は、当審にて付した。)

A
「産業上の利用分野
本発明は、溶接電流の電流制御素子としてサイリスタやトランジスタといった比較的過大電圧に弱い素子を使用したアーク溶接装置に関するものである。」(第1ページ左欄第14行ないし第18行)

B
「従来の技術
一般にアーク溶接装置は、第4図に示すように、アーク溶接装置1に出力ケーブル2を介して溶接用トーチ3に電流を供給している。4は母材である。ここで、溶接電流が急激に変化した場合、出力ケーブル2のインダクタンスにより大きな超電力を発生し、この超電力によりサイリスタやパワートランジスタなどの電流制御素子を破壊することがある。この超電力の大きさは、出力ケーブル2の引き廻し状態により影響され、特に同心状に出力ケーブル2が重ねて巻かれた場合大きくなる。」(第1ページ左欄第19行ないし右欄第9行)

C
「本発明は、上記問題点を解決するもので、アーク溶接機の出力ケーブルのインダクタンスによる超電力によりトランジスタやサイリスタなどの電流制御素子が破壊されるのを未然に防止することのできるアーク溶接装置を提供することを目的とするものである。」(第2ページ左上欄第16行ないし右上欄第1行)

D
「問題点を解決するための手段
上記問題点を解決するために、本発明は、アーク溶接装置の溶接出力端あるいは溶接出力を制御する電流制御素子の両端に出力ケーブルのインダクタンスによる超電力を検出する電圧検出部を接続し、電圧検出部からの信号を受け、その電圧信号があらかじめ設定された電圧より大きくなったときに、異常入力電圧がアーク溶接装置内に浸入したことを外部の作業者に知らせる表示部を設けたものである。」(第2ページ右上欄第2行ないし第11行)

E
「作用
上記構成により、アーク溶接装置に接続された出力ケーブルが同心状に重ねて巻かれ、通常の電圧と比べて比較にならない程の異常入力電圧が溶接装置の出力端にあるいは電流制御素子の両端に発生した場合、電圧検出部にてこの異常電圧を検出し、表示部に異常入力電圧発生の信号を送り、たとえば表示器を点灯させて、外部の作業者に知らせて、電流制御素子の破壊を未然に防止することができる。」(第2ページ右上欄第12行ないし左下欄第1行)

F
「第2図は本発明の他の実施例を示し、電圧検出部14はアーク溶接装置15の出力端に接続されており、異常入力を検出すると、表示部(図示せず)に表示する。なお、電圧検出部14は出力ケーブル2のインダクタンスにより発生する超電力が加わるところであれば、どこに接続してもよい。
第3図は本発明のさらに他の実施例を示し、電圧検出部と表示部のさらに具体的回路例を示す。第3図において、電圧検出部16はホトダイオード17,抵抗18,定電圧ダイオード19からなり、表示部20は電源21,抵抗22,表示器23,ホトトランジスタ24からなる。
第3図の具体回路では、出力端あるいは電流制御素子の両端に現れた異常入力電圧の値が定電圧ダイオード18の値を越すと、ホトダイオード17が動作し、光によりカップリングされたホトトランジスタ24を動作させ、ホトトランジスタ24が動作すると表示器23が点灯するようになっている。」(第2ページ左下欄第12行ないし右下欄第9行)

G
「発明の効果
以上本発明によると、アーク溶接装置の出力ケーブルのインダクタンスによる超電力が、アーク溶接装置内に使用しているトランジスタなどの比較的過電圧耐量の低い電流制御素子に対して過大であることを一瞬に知ることができ、したがって出力ケーブルの引き廻し状態による電流制御素子の破壊を未然に防ぐことができるため、これらのケーブルの超電力によるトランジスタなどの電流制御素子の破壊を著しく減少させることができる。また、あらかじめ出力ケーブルの超電力の大きさが予測できるので、トランジスタなどに取付けるスナバー回路や出力端に取付けるサージ吸収回路を省略あるいは容量の削減ができ、工業的に安くアーク溶接装置を製作できる利点がある。」(第2ページ右下欄第10行ないし第3ページ左欄第4行)

H
第2図から、溶接用トーチ3への出力ケーブル2がアーク溶接装置15の一方の出力端に接続され、母材4へのケーブルがアーク溶接装置15の他方の出力端に接続されていることが見て取れる。

上記摘記事項A?G及び図示事項Hより、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「アーク溶接作業のための溶接用トーチ3に電流を供給する装置15であって:
一方の出力端;
他方の出力端;
トランジスタやサイリスタなどの電流制御素子;
一方の出力端に接続されている出力ケーブル2;
前記他方の出力端に接続されている母材4へのケーブル;
溶接作業中に、前記一方の出力端と前記他方の出力端にわたる異常入力電圧を検出し、前記異常入力電圧の値を定電圧ダイオードの値と比較する電圧検出部16;および、
前記溶接用トーチ3に電流を供給する装置15の利用者のために、前記異常入力電圧の値が前記定電圧ダイオードの値を超えたときに点灯する表示器23により表示する表示部20;
を具備し、
前記異常入力電圧は、出力ケーブル2のインダクタンスにより発生する超電力によりもたらされる、
溶接用トーチ3に電流を供給する装置15。」

2 引用文献2の摘記事項
本願の優先日前に頒布され、上記平成27年12月15日付けの拒絶理由通知において引用した、特開平9-262670号公報(公開日:平成9年10月7日、以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の事項が記載されている。
(下線は、当審にて付した。)

I
「【0017】図2は、本発明のステイタス表示方法に適用される一例のパイプ円周自動溶接装置の構成を示す。図中において、符号1は電源装置、2は制御装置、3は溶接ヘッド、4はパイプ、5は軌道、6は溶接ワイヤの供給部、7は溶接ワイヤ、8は溶接トーチ、9は送電ケーブルである。まず、開先形状のCAD図面をコンピュータ(図示せず)で作成し、その作成されたデータをフロッピーディスク等に記録する。CADデータの格納されたフロッピーディスクを制御装置2の読み取り手段(図示せず)で読み取る。制御装置2では読み取ったデータを用いて、実際の溶接条件を設定し、設定された条件に対応してロジックテーブルに予め記録されたデータにより各種溶接パラメータを設定する。設定された溶接パラメータは制御データとして制御データテーブルの形でメモリに記録される。このメモリに記録された制御データを用いて、電源装置1、溶接ヘッド3を制御し、パルス電圧波形及びパルス電流波形の計測・解析値を用いてアーク倣い関連補正を行う。図1のリアルタイムステイタス表示画面は制御装置に備えられているCRT(図示せず)に表示される。」

J
「【0027】結局、パルス溶接電流波形及びパルス溶接電圧波形を計測・解析し、左右電流値、平均電流、平均電圧、平均アークショート時間、左右端アークショート時間、左中右アークショート時間、左中右電流パルス周期等をステイタスデータとすることにより、積層、ウィービング、開先、溶接電流、溶接電圧、Y軸制御、Z軸制御等をCRTの1画面に表示することが可能となる。したがって、溶接作業中の状況把握ができ、溶接の高品質化、高速化が期待できる。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「アーク溶接作業」は、本願発明の「溶接作業または溶断作業」に相当し、以下同様に、「溶接用トーチ3に電流を供給する装置」は「電力供給装置」に、「一方の出力端」は「第1の出力端子」に、「他方の出力端」は「第2の出力端子」に、「出力ケーブル2」は「第1のリード線」に、「母材4へのケーブル」は「第2のリード線」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「トランジスタやサイリスタなどの電流制御素子」は、電源モジュールを構成し、また、電源として2つの出力端を有し、これらの出力端から溶接トーチ3に、電流を出力するものであることは明らかであるから、本願発明の「前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の各々に対して接続され、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の少なくとも一方を介して出力信号を出力する、電力コンポーネント・モジュール」に相当する。
さらに、引用発明の「異常入力電圧」は、溶接用トーチ3に供給する溶接電流が変化した場合に、溶接用トーチ3から出力ケーブル2を介して出力端へと出力ケーブル2のインダクタンスによる超電力で発生するものであるから、本願発明の「反射された電圧」に相当する。
また、引用発明の「電圧検出部16」は、明細書の「出力端あるいは電流制御素子の両端に現れた異常入力電圧の値が定電圧ダイオード18の値を越すと」(上記摘記事項F参照)との記載によれば、「一方の出力端と他方の出力端にわたる異常入力電圧を検出するものであるから、本願発明の「電圧検出回路」に相当し、さらに、引用発明では、検出された異常入力電圧の値を基準となる定電圧ダイオードの値と比較していることは明らかであるから、引用発明の「定電圧ダイオードの値」は、本願発明の「閾値電圧」に相当し、本願発明では、電圧検出回路と、比較回路とを別の回路とすることも特定されていないから、引用発明の「電圧検出部16」は、本願発明の「前記反射された電圧の値を閾値電圧と比較する比較回路」にも相当する。
そして、引用発明の「前記異常入力電圧の値が前記定電圧ダイオードの値を超えたときに点灯する」ことは、異常入力電圧の値と定電圧ダイオードの値とを比較した結果を点灯により表示することであるから、本願発明の「前記反射された電圧と前記閾値電圧との間の前記比較の結果を表示する」ことに相当する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ相違する。

(一致点)
「溶接作業のための電力供給装置であって:
第1の出力端子;
第2の出力端子;
前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の各々に対して接続され、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子の少なくとも一方を介して出力信号を出力する、電力コンポーネント・モジュール;
前記第1の出力端子に接続されている第1のリード線;
前記第2の出力端子に接続されている第2のリード線;
溶接または溶断作業中に、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子にわたる反射された電圧を検出する電圧検出回路;
前記反射された電圧を閾値電圧と比較する比較回路;および、
前記電力供給装置の利用者のために、前記反射された電圧と前記閾値電圧との間の前記比較の結果を表示する表示装置;
を具備し、
前記反射された電圧は、前記電力供給装置の出力電流が変化するときのインダクタンスによりもたらされる、
電力供給装置。」

(相違点1)
表示装置の表示態様に関し、本願発明では、「画面表示」であるのに対して、引用発明では、「表示器23」による「表示」である点。

(相違点2)
本願発明では、「閾値電圧は、前記電力供給装置の出力電圧上限であり、前記出力電圧上限は、前記電力供給装置の性能に関連する」のに対し、引用発明では、定電圧ダイオードの値(本願発明の「閾値電圧」に相当。)がどのように設定されているのか明らかでない点。

第6 判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。

(相違点1について)
相違点1に係る本願発明が採用した発明特定事項、すなわち、表示装置を「画面表示する利用者用ディスプレイ」、例えば、「CRT」とする点は、上記「第4 引用文献・引用発明」の「2 引用文献2の摘記事項」の摘記事項I及びJに示されている公知の技術的事項である。
そして、引用文献2は、溶接装置のステイタスを表示するものであって、引用文献1に記載の装置と略一致し、また、引用文献2の摘記事項Jから見て、溶接電圧の変化をリアルタイムで表示することに関する技術であって、引用発明と目的が一致している。
そうすると、引用発明と引用文献2に記載の公知技術とは、同一の技術分野に属し、かつ、溶接電圧の変化をリアルタイムで表示する目的面でも一致することから、当該技術分野の当業者が、引用発明に対して引用文献2に記載の技術を適用を試みようとする十分な動機づけがあるといえる。
そして、引用発明に対して、引用文献2に記載された摘記事項を適用したものは、本願発明の相違点1に係る構成となることから、相違点1に係る相違は、当業者が容易に想到できたものと認められる。

(相違点2について)
引用文献1には、その作用として、明細書に「通常の電圧と比べて比較にならない程の異常入力電圧が溶接装置の出力端にあるいは電流制御素子の両端に発生した場合、電圧検出部にてこの異常電圧を検出し、表示部に異常入力電圧発生の信号を送り、たとえば表示器を点灯させて、外部の作業者に知らせて、電流制御素子の破壊を未然に防止することができる。」(前記摘記事項E参照)と記載されているように、異常入力電圧の発生により電流制御素子の破壊を未然に防止するものである。
そして、引用発明では、異常入力電圧の発生を検出するために定電圧ダイオードを使用しているが、溶接用トーチ3に電流を供給する装置に用いられるトランジスタやサイリスタなどの電流制御素子の破壊を未然に防止するために、明細書に「出力端あるいは電流制御素子の両端に現れた異常入力電圧の値が定電圧ダイオード18の値を越すと、ホトダイオード17が動作し、光によりカップリングされたホトトランジスタ24を動作させ、ホトトランジスタ24が動作すると表示器23が点灯する」(前記摘記事項F参照)と記載されているように、検出された電圧が定電圧ダイオードの値を超えた場合に、表示器23が点灯するものであるから、溶接用トーチ3に電流を供給する装置の性能に応じて定電圧ダイオードの値が決まると言えるから、定電圧ダイオードの値は、溶接用トーチ3に電流を供給する装置の性能に関連するものであると解される。
そもそも、本願発明において、「出力電圧上限」と電力供給装置とがどのような関係にあるか特定されてはいないが、本願発明は、検出された電圧がある電圧を超えた場合に表示ディスプレイ装置127に表示を行うことで装置の劣化を防止するものである以上、引用発明と軌を一つにする。
そして前述のように、引用発明においても、定電圧ダイオードの値は、溶接用トーチ3に電流を供給する装置の性能に関連するものであって、溶接用トーチ3に電流を供給する装置(本願発明の「電力供給装置」に相当)の出力電圧上限を超えれば、電流制御素子を破壊したり、装置が劣化することは明らかである。
そうすると、引用発明においては、電流制御素子の破壊や、装置の劣化を防止するために、表示器23が点灯させるときの定電圧ダイオードの値は明示されてはいないものの、定電圧ダイオードの値として、溶接用トーチ3に電流を供給する装置(本願発明の「電力供給装置」に相当)の出力電圧上限を選択して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

上記で検討したごとく、上記相違点1及び相違点2は格別のものではなく、本願発明の奏する作用効果は、全体としてみても、上記引用発明及び引用文献2に記載の公知の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の公知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものである。

なお、請求人は審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】にて、以下の意見を述べている。
「(2)引用文献1には、引用文献1には、本願請求項1、15に係る発明の「前記閾値電圧は、前記電力供給装置の出力電圧上限であり、前記出力電圧上限は、前記電力供給装置の性能に関連」し、反射された電圧を出力電圧上限である閾値電圧と比較する点の開示や示唆は全くなされていません。また、引用文献2にも、本願請求項1、15に係る発明の「前記閾値電圧は、前記電力供給装置の出力電圧上限であり、前記出力電圧上限は、前記電力供給装置の性能に関連」し、反射された電圧を出力電圧上限である閾値電圧と比較する点の開示や示唆は全くなされていません。 したがって、引用文献1、2に基づいて本願請求項1、15に係る発明を容易に想到できたと論理付けすることは困難であり、本願請求項1、15に係る発明は進歩性を有し、拒絶理由には該当しないものと思量致します。」
しかしながら、請求人の主張は、上記(相違点2について)で説示したとおりであるから、採用することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載の発明及び引用文献2に記載の公知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-13 
結審通知日 2018-06-19 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2014-535177(P2014-535177)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 孔徳  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 西村 泰英
中川 隆司
発明の名称 溶接と溶断のための電力供給源におけるリアルタイムなインダクタンス監視  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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