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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1346312
審判番号 不服2016-18513  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-08 
確定日 2018-11-12 
事件の表示 特願2013-510015「キャリア結合を有するハンドオーバー」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日国際公開、WO2011/142544、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526794〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月11日 英国)を国際出願日とする出願であって、その出願の経緯は以下のとおりである。

平成26年12月15日付け 拒絶理由通知書
平成27年4月6日 意見書、手続補正書の提出
平成27年10月28日付け 拒絶理由通知書
平成28年2月1日 意見書、手続補正書の提出
平成28年8月1日付け 拒絶査定
平成28年12月8日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成28年12月14日 手続補正書(請求の理由の補充)
平成29年12月13日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成30年3月19日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願発明は、平成30年3月19日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「主コンポネントキャリア(primary component carrier)及び少なくとも1つの副コンポネントキャリア(secondary component carrier)の結合を支援する移動通信ネットワークでソース無線接続ノードがハンドオーバーを支援する方法であって、
端末に測定設定情報を伝送する段階と、
前記端末から前記主コンポネントキャリア及び少なくとも1つの副コンポネントキャリアに関するチャンネル測定情報を受信する段階と、
前記チャンネル測定情報に基づいて前記端末に対するハンドオーバーを決定する段階と、
前記ソース無線接続ノードで、ハンドオーバー後、ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される主コンポネントキャリアのための第1キャリア周波数を選択する段階と、
前記ターゲット無線接続ノードに各周波数のベストセルに対する情報を伝送する段階と
を含み、
ハンドオーバー後、前記ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される副コンポネントキャリアのための第2キャリア周波数は、前記ターゲット無線接続ノードで選択され、
前記測定設定情報に追加情報のための指示子が設定されていれば、前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベスト隣合うセルに対する情報をさらに含むことを特徴とするハンドオーバーを支援する方法。」

第3 拒絶の理由
当審が通知した平成29年12月13日付けの拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由1は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4:Samsung、Handover with CA- stage 2 level issues,3GPP TSG-RAN2 #70 meeting R2-103113,2010年5月3日(利用可能日),URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_70/Docs/R2-103113.zip

第4 引用例に記載された事項及び引用発明、周知事項
1 引用例に記載された事項及び引用発明
当審拒絶理由に引用されたSamsung、Handover with CA- stage 2 level issues([当審仮訳]:CAを伴うハンドオーバー-ステージ2レベルの問題),3GPP TSG-RAN2 #70 meeting R2-103113,2010年5月3日(利用可能日),URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_70/Docs/R2-103113.zip(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「1 Introduction
(中略)
This contribution proposes that the source selects the target cells and selects the PCC, while the target decides which SCC to configure. Furthermore, it is proposed that the source provides measurement information to assist the target with the selection of the SCCs to configure.」(1葉目12?14行)

([当審仮訳]:
1 はじめに
(中略)
この寄書は、ソースはターゲットセルを選択してPCCを選択し、他方ターゲットはどのSCCを設定するべきかを決定することを提案する。さらに、ソースは、ターゲットが設定するべきSCCを選択することを支援するために測定情報を提供することが提案される。)

(2)「2.1 Selection of target cell(s) & allocation of CCs
Role of source & target upon handover with CA
(中略)
Continuing along the traditional lines, the following kind of approach would seem most natural upon handover when CA is configured:
●the source cell selects the target cell on each CC
●the source decides which CC is to be used as PCC
●the target cell decides which frequencies to configure as SCC

Some further considerations:
●Obviously the source eNB has to select the target eNB(s) towards which to initiate handover preparation
○The handover request/required message currently includes a single target cell id. This field could be used to indicate the pCell while additional (measurement) information may be provided within the RRC container
●Selection of the pCell (the target cell on the PCC) by the source seems aligned with the current security procedures in particular those for X2 handover, (後略)」(1葉目18?35行)

([当審仮訳]:
2.1 ターゲットセルの選択と複数のCCの割り当て
CAにおけるハンドオーバーのソースとターゲットの役割
(中略)
従来の方針を継続すると、CAが設定されるとき、次の種類のアプローチはハンドオーバーを行うにあたり最も自然に思われるであろう。
●ソースセルは各CC上でターゲットセルを選択する
●ソースはどのCCがPCCとして使用されるかを決定する
●ターゲットセルはどの周波数がSCCとして設定されるかを決定する

いくつかのさらなる考察事項:
●明らかにソースeNBはハンドオーバー準備を開始すべきターゲットeNBを選択しなければならない。
○ ハンドオーバー要求/要請メッセージは現在一つのターゲットセルID を含む。このフィールドは、追加の(測定)情報がRRCコンテナの中で提供されるであろう間に、pCellを示すために使われるかもしれない。
●ソースによるpCell(PCC上のターゲットセル)の選択は、 特にX2 ハンドオーバのための現在のセキュリティ手順と整合するように見える、)

(3)「●For SCCs, the main issue from a protocol perspective is for which cell(s) the source should provide measurement information to the target eNB. Given that the UE should always be on the best cell of the frequency, there does not seem to be a real need for the source to provide measurement information for multiple (including non-best) cells on a frequency. In the following this is represented by the statement that the source decides the target cell on each frequency.
●The actual selection of which frequency to configure as SCC is best left up to the target eNB as it may be based on several factors other than radio link quality e.g. load.
(中略)
Proposal 1 The source cell selects the target cell on each frequency and decides which frequency is to be used as PCC, while the target eNB decides which frequencies to configure as SCC.」(2葉目3?12行)

([当審仮訳]:
●SCCに関して、プロトコルの観点からの主な問題は ソースがどのセルに関する測定情報をターゲットeNBに提供するべきかである。UEが常に周波数のベストセル上にあるべきであるとすれば、ソースがある周波数の複数(非ベストを含めて)のセルに関する測定情報を提供することは本当に必要性があるようには思われない。このことは以下において、ソースが各周波数上でターゲットセルを決定する明文によって表される。
●どの周波数をSCCとして設定するかの実際の選択は、無線リンク品質以外の例えば負荷等のいくつかの要因に基づいて、最適にターゲットeNBに任せられる。
(中略)
提案1 ソースセルは各周波数上でターゲットセルを選択して、そしてどの周波数がPCCとして使用されるかを決定する、他方ターゲットeNBはどの周波数をSCCとして設定するかを決定する。)

(4)「Source assistance regarding SCC configuration

Selection of which additional carriers to configure can be done in different ways:
●The source may indicate target cell on different CCs, ordered based on radio link quality
●The source not only provides the target cell on each of the different CCs, but also provides the available measurement results for the concerned cell

The target eNB may take several factors into account when deciding which frequencies to configure as SCC e.g. radio link quality, load, other. It hence seems desirable for the target eNB to receive the actual measurement result of the best cell on each frequency.

Proposal 2 The source eNB provides the measurement result of the best cell on each frequency for which measurements are available to the target eNB during handover preparation. 」 (2葉目13?22行)

([当審仮訳]:
SCCの設定に関するソースの支援

どの追加のキャリアを設定すべきかについての選択は異なった方法で行われることができる:
・ソースは無線リンク品質に基づいて並べられた異なるCC上でターゲットセルを指示するかもしれない
・ソースは異なる各CC上でターゲットセルを提供するだけではなく、当該セルに利用可能な測定結果を提供する

ターゲットeNBは、どの周波数をSCCとして設定するかを決めるとき、例えば、無線リンク品質、負荷等のいくつかの要因を考慮に入れるかもしれない。それ故、ターゲットeNB が各周波数上のベストセルの実際の測定結果を受信することは望ましく思われる。

提案2 ソースeNBはハンドオーバー準備の間にターゲットeNB にとって利用可能である、各周波数上のベストセルの測定結果を提供する。)

(5)「10.1.2.1 Handover
The intra E-UTRAN HO in RRC_CONNECTED state is UE assisted NW controlled HO, with HO preparation signalling in E-UTRAN: 」(4葉目27?29行)

([当審仮訳]:
10.1.2.1 ハンドオーバー
RRC_CONNECTED状態におけるE-UTRAN内のHOは、E-UTRAN内のHO準備シグナリングを伴う、UEが支援しネットワークが制御するHOである:)

(6)「10.1.2.1.1 C-plane handling
(中略)
The figure below depicts the basic handover scenario where neither MME nor Serving Gateway changes:

Below is a more detailed description of the intra-MME/Serving Gateway HO procedure:
(中略)
1 The source eNB configures the UE measurement procedures according to the area restriction information. Measurements provided by the source eNB may assist the function controlling the UE's connection mobility.

2 UE is triggered to send MEASUREMENT REPORT by the rules set by i.e. system information, specification etc.

3 Source eNB decides based on one or more MEASUREMENT REPORT messages and RRM information to hand off the UE. The source selects the target cell, or in case of carrier aggregation, the target cell on each CC.

4 The source eNB issues a HANDOVER REQUEST message to the target eNB passing necessary information to prepare the HO at the target side(中略).(中略)In case of carrier aggregation, the source selects which CC is used as PCC following the handover while the target eNB decides which CCs will be configured as SCC. To assist the target with the selection of SCCs, the source provides measurement information for each target cell on each CC, if available. 」(5葉目1行?6葉目16行)

([当審仮訳]:
10.1.2.1.1 C-プレーン処理
(中略)
以下の図は、MMEとサービングゲートウェイのいずれも変化しない基本的なハンドオーバーのシナリオを表す。
(図10.1.2.1.1-1は省略)
以下は MME/サービングゲートウェイ内HO手順の更に詳細な記述である:
(中略)
1 ソース eNB は、エリア制限情報に従って、 UE 測定手順を設定する。ソース eNB によって提供される測定がUE の接続移動性を制御する機能を支援するかもしれない。

2 UEはすなわちシステム情報、仕様書等によって定められた規則によって、測定報告の送信をトリガされる。

3 ソースeNB が1つ以上の測定報告メッセージ と RRM情報に基づいてUEをハンドオフすることを決める。ソースはターゲットセルを選択する、あるいは、キャリアアグリゲーションの場合、各CC 上でターゲットセルを選択する。

4 ソースeNBは、ハンドオーバー要求メッセージをターゲット eNBに発行し、HOの準備のためにターゲット側に必要な情報(中略)を渡す。(中略)キャリアアグリゲーションの場合、ターゲットeNBがどの複数のCC(CCs)をSCCとして設定されるであろうかを決定する間、ソースはハンドオーバーの後にどのCCがPCCとして使用されるかを選択する。SCCの選択でターゲットを支援するために、もし利用可能であれば、ソースは各CC上で各ターゲットセルに測定情報を提供する。)

上記(1)?(6)の各摘記事項及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
(a)CA、CC、PCC、SCC、HOがそれぞれ、キャリアアグリゲーション、コンポネントキャリア、主コンポネントキャリア、副コンポネントキャリア、ハンドオーバーの略語であることは当業者に明らかである。
そして、上記(2)の記載によれば、キャリアアグリゲーションは、主コンポネントキャリア及び副コンポネントキャリアのアグリゲーションといえ、上記(2)、(5)及び(6)の記載によれば、E-UTRANにおいて当該キャリアアグリゲーションが設定されているといえる。そして、上記(6)には、当該キャリアアグリゲーションが設定されるE-UTRANにおけるハンドオーバーについて、ソースeNBが行う動作が記載されているといえる。
したがって、引用例には、「主コンポネントキャリア及び副コンポネントキャリアのアグリゲーションが設定されるE-UTRANにおいてソースeNBが行うハンドオーバーの方法」が記載されているといえる。

(b)図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「1」の記載によれば、図10.1.2.1.1-1の1.Measurement Controlの伝送において、ソースeNBがUEに測定手順を設定するための情報を伝送しているといえる。
したがって、引用例には、「UEに測定手順を設定するための情報を伝送する段階」が記載されているといえる。

(c)図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「1」及び「2」の記載によれば、UEが測定を行い、ソースeNBはUEから測定報告メッセージを受信する。そして、上記(1)及び図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「4」の記載によれば、ソースeNBはターゲットeNBに測定情報を提供し、上記(4)の記載によれば、ソースeNBはターゲットeNBに各周波数上のベストセルの測定結果を提供する。したがって、UEからの測定報告メッセージには、測定情報である各周波数上のベストセルの測定結果が含まれると解することが相当である。
そして、図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「2」と「3」の記載によれば、ソースeNBは、少なくともUEからの測定報告メッセージに基づいてUEのハンドオフを決定し、キャリアアグリゲーションの場合は各コンポネントキャリア上でターゲットセルを選択するものである。そして当該選択を行うためには、測定報告メッセージには各コンポネントキャリアに関する測定情報が含まれていることは明らかである。ここで、ハンドオフとハンドオーバーが同義であることは技術常識である。
したがって、引用例には、「UEから各コンポネントキャリアに関する測定情報を含む測定報告メッセージを受信する段階と、少なくとも前記測定報告メッセージに基づいてUEのハンドオ-バーを決定する段階」及び「前記測定報告メッセージは、各周波数上のベストセルの測定結果を含む」ことが記載されているといえる。

(d)上記(3)の「提案1」によれば、ソースeNBは、それぞれの周波数上でターゲットセルを選択して、どの周波数が主コンポネントキャリアとして使用されるかを決定しており、また、図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「4」によれば、ソースeNBはハンドオーバーの後にどのコンポネントキャリアが主コンポネントキャリアとして使用されるかを選択している。
そして、ソースeNBによって選択され、ハンドオーバーの後に使用される主コンポネントキャリアが、ハンドオーバーの後にターゲットeNBとUEとの通信に利用される主コンポネントキャリアであることは明らかである。
したがって、引用例には、「ソースeNBで、ハンドオーバー後のターゲットeNBとUEとの通信に利用される主コンポネントキャリアとして使用される周波数を選択することにより決定する段階」が記載されているといえる。

(e)上記(4)の「提案2」によれば、引用例には、ソースeNBは、「ターゲットeNBに各周波数上のベストセルの測定結果を提供する段階」が記載されている。
そして、上記(1)、(4)及び図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「4」によれば、ソースeNBがターゲットeNBに測定結果を提供するのは、ハンドオーバー準備の間に、ターゲットeNBが設定するべき副コンポネントキャリアの選択を支援するためであるから、引用例には、「前記測定結果はターゲットeNBが設定するべき副コンポネントキャリアを選択することを支援するためのものであ」ることが記載されているといえる。

(f)上記(3)の「提案1」によれば、ターゲットeNBはどの周波数を副コンポネントキャリアとして設定するかを決定しており、また、図10.1.2.1.1-1についての上記(6)の「4」によれば、ターゲットeNBが副コンポネントキャリアを選択している。
そして、ターゲットeNBによって選択される副コンポネントキャリアが、ハンドオーバーの後にターゲットeNBとUEとの通信に利用される副コンポネントキャリアであることは明らかである。
したがって、引用例には、「ハンドオーバー後のターゲットeNBとUEとの通信に利用される副コンポネントキャリアとして設定される周波数は、ターゲットeNBで選択することにより決定され」ることが記載されているといえる。

以上を総合すると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「主コンポネントキャリア及び副コンポネントキャリアのアグリゲーションが設定されるE-UTRANにおいてソースeNBが行うハンドオーバーの方法であって、
UEに測定手順を設定するための情報を伝送する段階と、
前記UEから各コンポネントキャリアに関する測定情報を含む測定報告メッセージを受信する段階と、
少なくとも前記測定報告メッセージに基づいて前記UEのハンドオ-バーを決定する段階と、
前記ソースeNBで、ハンドオーバー後のターゲットeNBと前記UEとの通信に利用される主コンポネントキャリアとして使用される周波数を選択することにより決定する段階と、
前記ターゲットeNBに各周波数上のベストセルの測定結果を提供する段階と、ここで、前記測定結果は、ハンドオーバー準備の間にターゲットeNBが設定するべき副コンポネントキャリアを選択することを支援するためのものであり、
ハンドオーバー後の前記ターゲットeNBと前記UEとの通信に利用される副コンポネントキャリアとして設定される周波数は、ターゲットeNBで選択することにより決定され、
前記測定報告メッセージは、各周波数上のベストセルの測定結果を含む、ハンドオーバーの方法。」

2 周知事項
本願優先日の前に公知となった3GPP TS 36.300 V9.2.0、2010年1月7日(利用可能日)、URL:http://www.3gpp.org/FTP/Specs/archive/36_series/36.300/36300-920.zip(以下、「周知例1」という。)のP.55の10.1.3 Measurementsには、以下の事項が記載されている。
(1)「10.1.3 Measurements
(中略)
In RRC_CONNECTED state, a UE shall follow the measurement configurations specified by RRC directed from the E-UTRAN (e.g.as in UTRAN MEASUREMENT_CONTOL.)」(55ページ9?11行)

([当審仮訳]:
10.1.3 測定
(中略)
RRC_CONNECTED状態において、UEはE-UTRANから(例えばUTRAN MEASUREMENT_CONTROLにおいて)指示されたRRCによって規定される測定設定(measurement configurations)に従うべきである。)

また、本願優先日の前に公知となった3GPP TS 36.331 V9.2.0、2010年4月21日(利用可能日)、URL:http://www.3gpp.org/FTP/Specs/archive/36_series/36.331/36331-920.zip(以下、「周知例2」という。)」には、以下の事項が記載されている。
(2)「5.5 Measurements
5.5.1 Introduction
The UE reports measurement information in accordance with the measurement configuration as provided by E-UTRAN. E-UTRAN provides the measurement configuration applicable for a UE in RRC_CONNECTED by means of dedicated signalling, i.e. using the
RRCConnectionReconfiguration message.」 (64ページ25?29行)

([当審仮訳]:
5.5 測定
5.5.1 はじめに
UEはE-UTRANに提供された 測定設定に従って測定情報を報告する。E-UTRANはRRC_CONNECTED状態のUEに適用可能な測定設定を、個別シグナリング、すなわちRRCConnectionReconfigurationを使用することにより提供する。)

(3)「The measurement configuration includes the following parameters:
1. Measurement objects: The objects on which the UE shall perform the measurements.
- For intra-frequency and inter-frequency measurements a measurement object is a single E-UTRA carrier frequency. Associated with this carrier frequency, E-UTRAN can configure a list of cell specific offsets and a list of 'blacklisted' cells. Blacklisted cells are not considered in event evaluation or measurement reporting.
(中略)
2. Reporting configurations: A list of reporting configurations where each reporting configuration consists of the following:
- Reporting criterion: The criterion that triggers the UE to send a measurement report. This can either be periodical or a single event description.
(中略)
3. Measurement identities:(中略)
4. Quantity configurations:(中略))
(中略)」 (64ページ37行?65ページ24行)

([当審仮訳]:
測定設定は以下のパラメータを含む:
1.測定対象:UEが測定を実行するであろう対象。
-周波数内測定及び周波数間測定のための測定対象は1つのE-UTRAキャリア周波数である。このキャリア周波数に関連して、E-UTRANはセル固有のオフセットに関するリストと「ブラックリスト」セルに関するリストを設定できる。ブラックリストセルはイベントの評価や測定報告において考慮されない。
(中略)
2.報告設定:測定設定のリストであって各測定設定は以下に従う:
-報告基準:この基準はUEが測定報告を送信することをトリガする。このことは周期的もしくは1つのイベントの記述で有り得る。
(中略)
3.測定アイデンティティ:(中略)
4.量設定:(中略)
(中略)」

(4)「5.5.4 Measurement report triggering
5.5.4.1 General

(中略)

」(72ページ16?34行)

([当審仮訳]:
5.5.4 測定報告のトリガ
5.5.4.1 一般
UEは、
1 > VarmeasConfigの中のmeasIdListの中のそれぞれのmeasIDについて、
(中略)
3 > もしも対応するmeasObjectがE-UTRAに関する場合であって
4 > もしもue-RxTxTimeDiffPeriodical、event A1又はevent A2が対応するreportConfigの中に設定されている場合、
5 > サービングセルだけが適用可能であると考えるべきである;
4 > そうでない場合、
5 > 関連付けられた周波数上で検出されたどんな隣接セルも、当該セルがこのmeasIDに関して VarMeasConfigの中で定義されたblackCellsToAddModList に含まれていない時は、適用可能であると考えるべきである;)

(5)「5.5.4.2 Event A1 (Serving becomes better than threshold)
(中略)
5.5.4.3 Event A2 (Serving becomes worse than threshold)
(中略)
5.5.4.4 Event A3 (Neighbour becomes offset better than serving)
(中略)
5.5.4.5 Event A4 (Neighbour becomes better than threshold)
(中略)
5.5.4.6 Event A5 (Serving becomes worse than threshold1 and neighbour becomes better thanthreshold2)
(中略)」(74ページ16行?76ページ20行)

([当審仮訳]:
5.5.4.2 Event A1(サービングが閾値よりも良くなる)
(中略)
5.5.4.3 Event A2 (サービングが閾値よりも悪くなる)
(中略)
5.5.4.4 Event A3 (隣接がサービングよりもオフセットだけ良くなる)
(中略)
5.5.4.5 Event A4 (隣接が閾値よりもよくなる)
(中略)
5.5.4.6 Event A5 (サービングが閾値1よりも悪くなり隣接が閾値2よりも良くなる)
(中略))

(6)「5.5.5 Measurement reporting
The purpose of this procedure is to transfer measurement results from the UE to E-UTRAN.

」(78ページ29行?79ページ7行)

([当審仮訳]:
5.5.5 測定報告
この手順の目的はUEからE-UTRANへの測定結果の転送である。
測定報告手順がトリガされたmeasIdについて、以下のように、UEはMeasurementReport メッセージの中にmeasResultsを設定すべきである:
1 > measIdを、測定報告をトリガした測定アイデンティティに設定すべきである;
1 > measResultServCell を、サービングセルの量を含むように設定すべきである;
1 > もしも報告すべき少なくとも1つの適用可能な隣接セルが存在する場合:
2 > measResultNeighCellsを、以下に従ってmaxReportCellsまでのベスト隣接セルを含むように設定すべきである:)

(7)「- ReportConfigEUTRA
The IE ReportConfigEUTRA specifies criteria for triggering of an E-UTRA measurement reporting event. The E-UTRA measurement reporting events are labelled AN with N equal to 1, 2 and so on.
(中略)
Event A3: Neighbour becomes amount of offset better than serving;
Event A4: Neighbour becomes better than absolute threshold;
Event A5: Serving becomes worse than absolute threshold1 AND Neighbour becomes better than another absolute threshold2.
(中略)

(中略)」(184ページ32行?186ページ3行)

([当審仮訳]:
- ReportConfigEUTRA
ReportConfigEUTRAの情報要素は、E-UTRA測定報告イベントをトリガするための基準を特定する。E-UTRA測定報告イベントは、Nが1、2等に等しいANによってラベル付けされる。
(中略)
Event A3 :隣接がサービングよりもオフセット量だけ良くなる;
Event A4:隣接が絶対閾値よりもよくなる;
Event A5:サービングが絶対閾値1よりも悪くなり隣接が絶対閾値2よりも良くなる。
(中略)
・ReportConfigEUTRAフィールドの記述
・eventId
報告基準によってトリガされるE-UTRA eventを選択せよ。)

周知例1及び2はいずれも3GPPの標準規格であるところ、標準規格に記載されている事項は、当業者にとって技術常識ともいえる周知事項であるといえる。
上記(1)?(3)、(6)の記載によれば、UEがE-UTRANへ測定報告メッセージを送るために、E-UTRANは、測定設定に測定対象と報告設定を含めてUEに送信している。そして、上記(2)の記載によれば、測定対象は、1つのE-UTRAキャリア周波数である。
上記(3)?(4)、(7)の記載によれば、報告設定にはevent IDが含まれ、上記(4)?(5)の記載によれば、報告設定のevent IDに、event A1又はA2が設定されていない場合、すなわち、event A3?A5が設定されている場合、関連付けられた周波数上で検出された隣接セルは適用可能であると考えるべきであるところ、上記(6)の記載によれば、もしも報告すべき少なくとも1つの適用可能な隣接セルが存在する場合:との条件が満たされる場合に、測定報告メッセージにおいて、maxReportCellsまでのベスト隣接セルを含むmeasResultNeighCellsを設定する。
ここで、上記(6)の記載によれば、ベスト隣接セルは、上記条件が満たされる場合に限って、測定報告メッセージに含まれるので、追加情報であるといえ、上記(6)に記載された、もしも報告すべき少なくとも1つの適用可能な隣接セルが存在する場合:との条件は、上記(3)?(5)の記載に基づいて、測定設定に含まれる報告設定のevent IDにevent A3?A5が設定されている場合、と読み替えることができる。ここで、測定設定に含まれる報告設定のevent IDは、測定設定情報といえる。
したがって、「測定設定情報に、event A3?A5がラベル付けされている場合に、測定報告メッセージが、測定対象のキャリア周波数のベスト隣接セルに対する追加情報をさらに含む。」ことは周知事項である。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明の「主コンポネントキャリア」は、本願発明の「主コンポネントキャリア(primary component carrier)」と一致する。また、引用発明の「副コンポネントキャリア」は、1つ又は複数のコンポネントキャリアで構成されるものであるから、本願発明の「少なくとも1つの副コンポネントキャリア(secondary component carrier)」に相当する。
また、引用発明のE-UTRANはキャリアアグリゲーションが設定されるのであるから、E-UTRANがキャリアアグリゲーションをサポート(支援)していることは当業者に明らかである。
そして、引用発明の「E-UTRAN」は、Evolved-Universal Terrestrial Radio Access Networkの略語であり、移動通信ネットワークの一種であるから、本願発明の「移動通信ネットワーク」に相当する。
また、本願明細書の段落[0047]の「無線接続ノードが示され、典型的にLTEシステムでeNB(EUTRAN node B)であり」との記載によれば、引用発明の「eNB」は本願発明の「無線接続ノード」に相当する。
さらに、引用発明のソースeNBは、ハンドオーバー準備の間に、ターゲットeNBに副コンポネントキャリアの選択を支援するための測定結果を提供するので、ソースeNBはハンドオーバーを支援するといえる。
したがって、引用発明の「主コンポネントキャリア及び副コンポネントキャリアのアグリゲーションが設定されるE-UTRANにおいてソースeNBが行うハンドオーバーの方法」は、「主コンポネントキャリア(primary component carrier)及び少なくとも1つの副コンポネントキャリア(secondary component carrier)の結合を支援する移動通信ネットワークでソース無線接続ノードがハンドオーバーを支援する方法」といえる点で本願発明と一致する。

(2)本願明細書の段落[0003]によれば、本願発明の「端末」は「ユーザ装置」を含むところ、引用発明の「UE」はUser Equipmentの略語であることは自明であるから、引用発明の「UE」は本願発明の「端末」に相当する。そして、引用発明の「測定手順を設定するための情報」は、測定を設定するための情報であるから、本願発明の「測定設定情報」に相当する。
したがって、引用発明の「UEに測定手順を設定するための情報を伝送する段階」は、本願発明の「端末に測定設定情報を伝送する段階」に相当する。

(3)本願発明の「チャンネル測定情報」は、本願明細書及び平成30年3月19日に提出された意見書の釈明も考慮すると、「測定報告」ないし「測定情報」に対応し、周波数(「測定客体」)について測定をした結果の情報を含むものといえる。
そして、引用発明の各コンポネントキャリアに関する「測定情報を含む測定報告メッセージ」もまた、測定報告ないし測定情報であって、コンポネントキャリアすなわち周波数(「測定客体」)について測定をした結果を含むものである。よって、引用発明の「測定報告メッセージの測定情報」は、本願発明の「チャンネル測定情報」に相当する。
ここで、引用発明の各コンポネントキャリアが、主コンポネントキャリア及び少なくとも1つの副コンポネントキャリアを含むことは明らかである。
したがって、引用発明の「UEから各コンポネントキャリアに関する測定情報を含む測定報告メッセージを受信する段階」は、本願発明の「端末から主コンポネントキャリア及び少なくとも1つの副コンポネントキャリアに関するチャンネル測定情報を受信する段階」に相当する。
また、引用発明の「少なくとも前記測定報告メッセージに基づいてUEのハンドオーバーを決定する段階」は、本願発明の「前記チャンネル測定情報に基づいて前記端末に対するハンドオーバーを決定する段階」に相当する。

(4)引用発明の「主コンポネントキャリアとして使用される周波数」を「主コンポネントキャリアのための第1キャリア周波数」と称することは任意である。
したがって、引用発明の「前記ソースeNBで、ハンドオーバー後のターゲットeNBと前記UEとの通信に利用される主コンポネントキャリアとして使用される周波数を選択することにより決定する段階」は、本願発明の「前記ソース無線接続ノードで、ハンドオーバー後、ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される主コンポネントキャリアのための第1キャリア周波数を選択する段階」に相当する。

(5)引用発明の「副コンポネントキャリアとして設定される周波数」を「副コンポネントキャリアのための第2キャリア周波数」と称することは任意である。
したがって、引用発明の「ハンドオーバー後の前記ターゲットeNBと前記UEとの通信に利用される副コンポネントキャリアとして設定される周波数は、ターゲットeNBで選択されることにより決定され」ることは、本願発明の「ハンドオーバー後、前記ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される副コンポネントキャリアのための第2キャリア周波数は、前記ターゲット無線接続ノードで選択され」ることに相当する。

(6)引用発明の「各周波数上のベストセルの測定結果」は、本願発明の「各周波数のベストセルに対する情報」に含まれる。
したがって、引用発明の「ターゲットeNBに各周波数上のベストセルの測定結果を提供する段階」は、本願発明の「前記ターゲット無線接続ノードに各周波数のベストセルに対する情報を伝送する段階」に含まれる。
また、引用発明の「前記測定報告メッセージは、各周波数上のベストセルの測定結果を含む」ことと、本願発明の「前記測定設定情報に追加情報のための指示子が設定されていれば、前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベスト隣合うセルに対する情報をさらに含む」こととは、「前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベストセルに対する情報を含む」点の限りにおいて一致する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「主コンポネントキャリア(primary component carrier)及び少なくとも1つの副コンポネントキャリア(secondary component carrier)の結合を支援する移動通信ネットワークでソース無線接続ノードがハンドオーバーを支援する方法であって、
端末に測定設定情報を伝送する段階と、
前記端末から前記主コンポネントキャリア及び少なくとも1つの副コンポネントキャリアに関するチャンネル測定情報を受信する段階と、
前記チャンネル測定情報に基づいて前記端末に対するハンドオーバーを決定する段階と、
前記ソース無線接続ノードで、ハンドオーバー後、ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される主コンポネントキャリアのための第1キャリア周波数を選択する段階と、
前記ターゲット無線接続ノードに各周波数のベストセルに対する情報を伝送する段階とを含み、
ハンドオーバー後、前記ターゲット無線接続ノードと前記端末との通信に利用される副コンポネントキャリアのための第2キャリア周波数は、前記ターゲット無線接続ノードで選択され、
前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベストセルに対する情報を含む、ハンドオーバーを支援する方法。」

(相違点)
一致点の「前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベストセルに対する情報を含む」に関し、本願発明は、「前記測定設定情報に追加情報のための指示子が設定されていれば、前記チャンネル測定情報は、前記各周波数のベスト隣合うセルに対する情報をさらに含む」のに対し、引用発明は、「前記測定報告メッセージは、各周波数上のベストセルの測定結果を含む」点、すなわち、引用発明には、「ベストセル」が隣合うセルであるとの明示がなく、また、引用発明には、「前記測定設定情報に追加情報のための指示子が設定されていれば」との条件が満たされる場合に「さらに」含むとの、前記チャンネル測定情報が、前記各周波数のベスト隣合うセルに対する情報を含むための条件についても記載されていない点。

第6 判断
上記相違点について判断する。
ハンドオーバーでは、通常、ターゲットセルはソースセルと隣合うセルであるから、ハンドオーバーにおける測定報告メッセージに含まれる引用発明の「ベストセル」は、本願発明の「ベスト隣合うセル」と実質的な差異はない。仮にそうでないとしても、ハンドオーバーにおける引用発明の「ベストセル」を「ベスト隣合うセル」とすることは、当業者にとって容易である。
そして、「測定設定情報に、event A3?A5がラベル付けされている場合に、測定報告メッセージが、測定対象のキャリア周波数のベスト隣接セルに対する追加情報をさらに含む。」ことが技術常識ともいえる周知事項であることに鑑みれば、前記チャンネル測定情報が、各周波数のベスト隣合うセルに対する情報を含むための条件として、「前記測定設定情報に追加情報のための指示子が設定されていれば」なる条件を付すことは格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-14 
結審通知日 2018-06-18 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2013-510015(P2013-510015)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
羽岡 さやか
発明の名称 キャリア結合を有するハンドオーバー  
代理人 木内 敬二  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  

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