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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1346361 |
審判番号 | 不服2017-19297 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-26 |
確定日 | 2018-12-04 |
事件の表示 | 特願2013-191692「決済システム及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月30日出願公開、特開2015- 60262、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年9月17日の出願であって、平成29年5月19日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年7月21日付けで手続補正がなされたが、平成29年9月27日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年9月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1、2、4-6に係る発明は、引用文献1、2、4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願請求項3に係る発明は、引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2001-297278号公報 2.特開2002-92497号公報 3.特開2001-216567号公報 4.特開2002-133097号公報 第3 本願発明 本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年12月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 店舗側で管理する店舗携帯端末と、顧客が所持する顧客携帯端末と、決済サーバとからなる決済システムであって、 前記店舗携帯端末と前記顧客携帯端末とは近距離無線通信による通信を行い、 前記店舗携帯端末は、 店舗識別情報及び課金情報を記憶する記憶部と、 前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段と、 を有し、 前記顧客携帯端末は、 前記店舗携帯端末から、前記店舗識別情報及び課金情報を、近距離無線通信により読み取る読取手段と、 前記店舗識別情報、前記課金情報及び顧客に対応する決済用識別情報を含む決済依頼情報を生成する決済依頼情報生成手段と、を備え、 前記決済サーバは、 前記顧客携帯端末が生成した決済依頼情報に基づき決済を行う決済手段を備え、 前記店舗携帯端末又は前記決済サーバは、 前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段を備えることを特徴とする決済システム。」 本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明6は、本願発明1-5に係る店舗携帯端末としてコンピュータを機能させるプログラムの発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2001-297278号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「【0028】以下、本発明の一実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。 【0029】図1は、本実施形態に係る決済システムの構成図である。この決済システムは、携帯電話(顧客携帯装置)10と、業者システム20と、決済サービス機関とから構成されている。・・・(中略)・・・ 【0031】図2は、本実施形態における顧客携帯装置10の構成図である。・・・(中略)・・・ 【0033】制御部15は、CPUを備え、このCPUのプログラム処理によって外線機能151と、内線機能152とを実現する。ここで、外線機能とは、携帯電話回線を介して通信を実現する機能をいい、内線機能とは、携帯電話回線を介さないで通信を実現する機能をいう。・・・(中略)・・・本実施形態において、制御部15は、銀行システム30,40と通信する際には外線機能151を起動し、業者システム20と通信する際には内線機能152を起動するようになっている。内線機能152の実現にあたっては、ブルートゥース(bluetooth)の採用が考えられる。」 イ.「【0035】図3は、業者携帯装置21の構成図である。業者携帯装置21は、既存の携帯電話に新しい機能を追加したものである。即ち、顧客の顧客携帯装置10と無線データ通信を行う無線送受信部(送受信部)211と、商品一覧や売買取引の内容を表示する表示部212と、制御部215に対し売買取引データ及び命令の入力を行う入力部213と、制御部151が処理に用いるデータを格納する記憶部214と、これら各部の動作を制御する制御部215とを備えている。 【0036】・・・(中略)・・・制御部215は、CPUのプログラム処理により、内線機能2152と、外線機能2153とを実現する。・・・(中略)・・・顧客の顧客携帯装置10との間のデータ通信は、上述のように電波でもよいし、赤外線でもよく、通信経路も内線機能(例えばbluetooth)によって通信してもよいし、携帯電話回線を介して通信してもよい(例えばショートメール機能の利用)。」 ウ.「【0064】次に、本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。本実施形態では、決済サービス機関である第1の銀行30において、ネットバンクDBを設けていない。ただし、第1実施形態又は第2実施形態と同様にネットバンクDB32を備えていてもよい。顧客携帯装置10、業者システム20、第2の銀行40の物理的構成、及び各要素間の接続形態は、第1実施形態と同一である。」 エ.「【0102】[第3実施形態、第6実施形態の変形例] 【0103】次に、上述した第3実施形態又は第6実施形態の変形例を図9を参照しつつ説明する。この変形例は業者システム20が本部装置22を介さず、決済サービス機関である銀行システム40と直接にデータ通信を行うことを前提とする。 【0104】この変形例において、業者携帯装置21の制御部215は、入力部213から入力された取引の金額に基づいてモノ購入明細データ2141を記憶部214に格納し、取引の決済のために、モノ購入明細データ2141を記憶部214から読み出し、送受信部211を介して、顧客の携帯電話(顧客携帯装置10)に送信する。この送信が、顧客に対する支払要求となる。 【0105】この支払要求に対し、顧客携帯装置10の制御部15は、業者携帯装置21から受信した取引金額を表示部12に表示し、顧客に「了承」の入力を求める。「了承」の入力は、所定のパスワードの入力を伴って行われる。操作部13から正しいパスワードと共に「了承」が入力されると、制御部15は、業者携帯装置21から受信したモノ購入明細データに秘密鍵による電子署名を施し、業者携帯装置21に送り返す。このとき、顧客携帯装置10は、当該顧客携帯装置10に与えられた携帯電話としての発信者番号と先のパスワードを業者携帯装置21に送信する。顧客携帯装置10の秘密鍵は、顧客携帯装置10の与信時に予め記憶部14に格納する。この秘密鍵に対応する公開鍵は、決済銀行に管理されている。 【0106】業者携帯装置21の制御部215は、送受信部211を介して顧客携帯装置10から電子署名済みのモノ購入明細データ、顧客携帯装置10の発信者番号、及び所定のパスワードを受信し、これらを記憶部214に格納し、また、供給者の口座識別データ(業者の識別コードなど)を記憶部214に格納する。そして、取引の決済のために、顧客携帯装置10による電子署名済みのモノ購入明細データ、顧客携帯装置10の発信者番号、所定のパスワード、及び業者の口座識別データ(供給者の口座識別データ)を記憶部214から読み出し、送受信部211を介して、決済銀行40の通信装置41に送信する。この際、業者携帯装置21は、業者の口座識別データに自己の秘密鍵による電子署名を施し、対応する電子証明書と共に、決済銀行40の通信装置41に送信し、SSL等による暗号化通信を行う。 【0107】これらの情報を受信した銀行の通信装置41は、顧客携帯装置10の発信者番号と所定のパスワードにより顧客の認証及び顧客の決済口座の特定を行うと共に、銀行が予め管理する公開鍵により電子署名済みのモノ購入明細を復号し、取引の合計金額を得る。また、業者携帯装置21の電子証明書及び電子署名により当該業者携帯装置21の認証と業者の振込口座を特定する。そして、顧客の決済口座から業者の振込口座に取引金額を振替ることにより、決済を完了する。そして、決済銀行の通信装置41は、業者携帯装置21に対し、決済完了通知を送信する。この通知には、決済銀行の秘密鍵により電子署名を施し、対応する電子証明書を添付する。ここで、発信者番号及びパスワードによる認証に変えてチャレンジレスポンス認証を用いてもよい。 【0108】業者携帯装置21の制御部215は、送受信部211を介して決済銀行40の通信装置41から取引についての決済完了通知(支払通知、入金通知)を受信し、電子証明書から公開鍵を取り出して復号し、記憶部214に格納し、この決済完了の旨を表示部212に表示する。店員は、この決済完了の旨を表示部212で確認すると、商品等を需要者に供給する。業者携帯装置21に蓄積されたモノ購入明細の内容は、店舗のPOS端末等にインポートできるように構成してもよい。この場合、POS端末は、通常のPOS端末の構成に加え、業者携帯装置21との通信手段を備える必要がある。」 前記ア.?エ.によれば、第3実施形態の変形例について、次の事項が記載されているといえる。 ・前記エ.の「【0103】次に、上述した第3実施形態又は第6実施形態の変形例を図9を参照しつつ説明する。この変形例は業者システム20が本部装置22を介さず、決済サービス機関である銀行システム40と直接にデータ通信を行うことを前提とする。」の記載、 前記ウ.の「本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。・・・(中略)・・・顧客携帯装置10、業者システム20、第2の銀行40の物理的構成、及び各要素間の接続形態は、第1実施形態と同一である。」の記載、 前記ア.の「以下、本発明の一実施形態を図1乃至図3に基づいて説明する。」、「図2は、本実施形態における顧客携帯装置10の構成図である。・・・(中略)・・・本実施形態において、制御部15は、銀行システム30,40と通信する際には外線機能151を起動し、業者システム20と通信する際には内線機能152を起動するようになっている。内線機能152の実現にあたっては、ブルートゥース(bluetooth)の採用が考えられる。」の記載、 前記イ.の「図3は、業者携帯装置21の構成図である。・・・(中略)・・・顧客の顧客携帯装置10との間のデータ通信は、上述のように電波でもよいし、赤外線でもよく、通信経路も内線機能(例えばbluetooth)によって通信してもよい」の記載によれば、第3実施形態の変形例は、第3実施形態に対して、業者システム20が本部装置22を介さず、銀行システム40と直接にデータ通信を行う点で異なるものであり、顧客携帯装置10と業者携帯装置21との間の接続形態については、第3実施形態及び第1実施形態と同じである。 したがって、第3実施形態の変形例における、顧客携帯装置10と業者携帯装置21との間の接続形態は、第3実施形態及び第1実施形態と同様、ブルートゥースのような内線機能による接続である。 よって、引用文献1には、第3実施形態の変形例について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「業者携帯装置21は、入力部213から入力された取引の金額に基づいてモノ購入明細データ2141を記憶部214に格納し、取引の決済のために、モノ購入明細データ2141を記憶部214から読み出し、顧客携帯装置10に送信し、この送信は顧客に対する支払要求となり(【0104】)、 顧客携帯装置10は、業者携帯装置21から受信した取引金額を表示部12に表示し顧客に了承の入力を求め、了承が入力されると、モノ購入明細データに秘密鍵による電子署名を施し、業者携帯装置21に送り返し、このとき、顧客携帯装置10は、当該顧客携帯装置10に与えられた携帯電話としての発信者番号を業者携帯装置21に送信し(【0105】)、 業者携帯装置21は、顧客携帯装置10から電子署名済みのモノ購入明細データ、顧客携帯装置10の発信者番号を受信し、記憶部214に格納し、また、業者の口座識別データを記憶部214に格納し、取引の決済のために、顧客携帯装置10から受信した電子署名済みのモノ購入明細データ、顧客携帯装置10の発信者番号、及び業者の口座識別データを決済銀行40の通信装置41に送信し(【0106】)、 銀行の通信装置41は、顧客携帯装置10の発信者番号により顧客の決済口座の特定を行うと共に、電子署名済みのモノ購入明細データを復号して取引の合計金額を得て、顧客の決済口座から業者の振込口座に取引金額を振替ることにより、決済を完了し(【0107】)、 決済銀行の通信装置41は、業者携帯装置21に対し、決済完了通知を送信し(【0107】)、 業者携帯装置21は、決済完了通知を受信し、この決済完了の旨を表示部212に表示し、店員は、この決済完了の旨を表示部212で確認すると、商品を顧客に供給する(【0108】)、 顧客携帯装置10と業者携帯装置21との間の接続形態は、ブルートゥースのような内線機能による接続である、 システム。」 2.引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-92497号公報)には、次の事項が記載されている。 <引用文献2の記載事項> 「店舗での支払い手続きを処理するための店舗用精算システムであって(【0001】)、 商品を購入する際のユーザ側の確認手続きにおいて(【0024】)、 コンビニエンスストア200の中の近距離無線通信システム220が、コンビニエンスストア内の携帯電話機110を探すために探索信号を送信し(【0025】)、 ユーザ100は、自身の携帯電話機110を介して、このコンビニエンスストア200を使用する(商品を購入する、または支払いを行なう予定である)旨の応答をマスタの近距離無線通信システム220に返し(【0026】)、 マスタの近距離無線通信システム220は、スレーブの携帯電話機110に、顧客であるユーザを特定するための情報の送信を要求し(【0027】)、 スレーブの携帯電話機110は、ユーザを特定するための情報をマスタ側へ送信し、ここで、ユーザを特定するための情報としては、コンビニエンスストアにおけるユーザの会員番号、名前、郵便番号、住所、電話番号があり(【0028】【0029】)、 POSシステム210は、ユーザ100がコンビニエンスストア200内のレジスタに持ち込んだ商品の合計金額を算出し(【0030】)、 購入データが、近距離無線通信システム220を介してユーザ100の携帯電話機110に送信され、携帯電話機110は、ディスプレイに送信された購入データを表示し(【0031】)、当該購入データには、商品、商品価格、合計金額、支払う相手先(すなわちコンビニエンスストア200)を特定する情報が含まれ(【0032】)、 ユーザ100は、表示される購入データの項目を確認して、すべての項目に同意する場合には、携帯電話機110を介して支払情報をPOSシステム210側に送信し、当該支払情報には、クレジットカードの種類、クレジットカードの番号、クレジットカードの有効期限が含まれる(【0033】【0034】)、 店舗用精算システム。」 3.引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2001-216567号公報)には、次の事項が記載されている。 <引用文献3の記載事項> 「携帯電話による買上げ商品の代金決済方法であって(【0007】)、 買上げ者が買上げ商品をレジスターに運ぶと、レジスターは、バーコード読取器等の商品読取手段によって、買上げ商品の買上げ情報をPOSシステムに登録し(【0014】)、 POSシステムは、買上げ者が所有する携帯電話に買上げ情報を送信し、携帯電話は、受信した買上げ情報を表示手段に表示し(【0015】)、 買上げ者は、表示された買上げ情報を確認後、代金決済情報を携帯電話に入力して、当該代金決済情報をPOSシステムに送信し(【0016】)、 POSシステムに接続されたレジスターで決済を確認することによって、買上げ商品の代金の決済を完了し、決済確認情報を携帯電話に送信する(【0017】)、 代金決済方法。」 4.引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2002-133097号公報)には、次の事項が記載されている。 <引用文献4の記載事項> 「オンラインによる口座振替契約の認証方法であって(【0001】)、 郵便局の外務員向けに特化された無線式のモバイル型カード決済端末1は、係員カード9や銀行キャッシュカード10からのデータを読み取るためのカードリーダ、現在位置を検出するためのGPSが内蔵され(【0036】)、無線基地局2及びネットワーク3を経由して決済支援サーバ4に接続され(【0037】)、 現在地検出手段としては、GPS以外の構成も採用することができ、決済端末1の通信方式として所謂PHS方式を採用すれば、無線基地局との受信強度による3点測量原理により決済端末の位置を検出することができ、通常の携帯端末の通信方式においても、同様な受信強度に基づく位置検出が可能であり(【0055】)、 決済支援サーバ4は、口座振替契約認証要求が決済端末1から到来した場合、その認証要求データをそれに含まれる顧客口座情報に基づいて該当する銀行サーバ6-1?6-nへ送信する機能を有し(【0039】)、 銀行サーバ6-1?6-nは、各銀行顧客の口座情報を格納し、この口座情報の中で、口座所有者住所が口座振替契約の契約予定場所確認用のデータとして使用され、口座所有者住所以外にも、その口座所有者の職場住所や実家住所、さらには予定される立ち寄り先等を契約予定場所確認用データに加えても良く(【0041】【0042】)、 決済端末1の画面上には、郵便代金引換、郵便貯金、簡易保険の3つのコースからなるメニューが表示され(【0068】)、 この状態において、郵便局の係員が簡易保険コースを選択すると、案内画面により、簡易保険加入時に必要な取引情報の入力が促され、係員が取引情報を入力すると画面上には簡易保険加入時の請求金額が表示され(【0069】)、 その後、画面上には、デビットカード、現金、その他の3つのコースからなる決済方法メニューが表示され(【0070】)、デビットカードが選択されると、保険料支払は、デビットカードで指定の銀行口座からの自動振替となり(【0071】)、 決済方法メニューにおいて、銀行キャッシュカードが選択されると、顧客は磁気カードリーダ1fにキャッシュカード10を挿入し、キャッシュカード10から顧客の銀行口座情報が読み取られ、また、顧客は顧客パスワードを入力し(【0072】)、さらに、GPS305から現在地点が検出されて、現在地点検出情報が読み込まれ(【0072】)、 決済端末1は、認証要求情報(取引情報、銀行口座情報、顧客パスワード、現在地点情報)を、決済支援サーバ4へ送信し(【0073】【0074】)、 決済支援サーバ4は、認証要求情報の銀行口座情報に基づいて、顧客の銀行口座の存在する銀行を認識し、その銀行サーバ6へ認証要求情報を送信し(【0074】)、 銀行サーバ6は、認証要求情報に含まれる顧客パスワードを予め登録させた当該口座の照合基準パスワードと比較し、両者が一致しない場合には当該認証要求を拒絶し、また、認証要求情報に含まれる現在地点情報を予め登録させた契約予定場所情報と比較し、両者が一致しない場合には当該認証要求を拒絶し(【0075】)、これに対して、顧客パスワード並びに現在地点情報がいずれも照合基準データと一致すると、当該認証要求は許可され、当該顧客の銀行口座から簡易保険加入時の請求金額が引き落とされ、郵便局サーバ7の簡易保険事業者の郵便貯金口座へと振り込まれる(【0076】)、 認証方法。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ・引用発明の業者は、顧客との間で取引金額の決済を行い、顧客が購入した商品を顧客に供給することから、顧客に商品を販売する店舗の業者である。 したがって、引用発明の業者携帯装置21は、本願発明1の「店舗側で管理する店舗携帯端末」に相当する。 ・引用発明の「顧客携帯装置10」は、本願発明1の「顧客が所持する顧客携帯端末」に相当する。 ・引用発明の「銀行の通信装置41」は、顧客の決済口座から業者の振込口座に取引金額を振替ることにより、決済を完了することから、本願発明1の「決済サーバ」に相当する。 ・引用発明の「顧客携帯装置10と業者携帯装置21との間の接続形態は、ブルートゥースのような内線機能による接続である」は、本願発明1の「前記店舗携帯端末と前記顧客携帯端末とは近距離無線通信による通信を行い」に相当する。 ・引用発明のモノ購入明細データは、取引金額の情報を含むといえるから、本願発明1の「課金情報」に相当する。 ・引用発明の業者携帯装置21は、「モノ購入明細データ2141を記憶部214に格納し」、また、「業者の口座識別データを記憶部214に格納」することから、当該記憶部214は、本願発明1の店舗携帯端末における「店舗識別情報及び課金情報を記憶する記憶部」に相当する。 ・引用発明の業者携帯装置21は、「モノ購入明細データ2141を記憶部214から読み出し、顧客携帯装置10に送信」するが、当該送信は、顧客携帯端末側から見れば、業者携帯装置21からモノ購入明細データを、ブルートゥースのような近距離無線通信により読み取ることといえる。 顧客携帯端末の当該読取手段と、本願発明1の「前記店舗携帯端末から、前記店舗識別情報及び課金情報を、近距離無線通信により読み取る読取手段」は、「前記店舗携帯端末から、課金情報を、近距離無線通信により読み取る読取手段」の点で共通する。 ・引用発明の顧客携帯装置10は、「業者携帯装置21から受信した取引金額を表示部12に表示し顧客に了承の入力を求め、了承が入力されると、モノ購入明細データに秘密鍵による電子署名を施し、業者携帯装置21に送り返し、このとき、顧客携帯装置10は、当該顧客携帯装置10に与えられた携帯電話としての発信者番号を業者携帯装置21に送信」するが、電子署名を施したモノ購入明細データと、顧客携帯装置10の発信者番号は、本願発明1の「課金情報及び顧客に対応する決済用識別情報を含む決済依頼情報」に相当する。 したがって、これらの情報を生成して業者携帯装置21に送信する手段と、本願発明1の顧客携帯端末に係る「前記店舗識別情報、前記課金情報及び顧客に対応する決済用識別情報を含む決済依頼情報を生成する決済依頼情報生成手段」は、「前記課金情報及び顧客に対応する決済用識別情報を含む決済依頼情報を生成する決済依頼情報生成手段」の点で共通する。 ・引用発明の「銀行の通信装置41は、顧客携帯装置10の発信者番号により顧客の決済口座の特定を行うと共に、電子署名済みのモノ購入明細データを復号して取引の合計金額を得て、顧客の決済口座から業者の振込口座に取引金額を振替ることにより、決済を完了し」は、本願発明1の「前記決済サーバは、前記顧客携帯端末が生成した決済依頼情報に基づき決済を行う決済手段を備え」に相当する。 ・引用発明の「システム」は、決済を行うシステムであるから、本願発明1の「決済システム」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「店舗側で管理する店舗携帯端末と、顧客が所持する顧客携帯端末と、決済サーバとからなる決済システムであって、 前記店舗携帯端末と前記顧客携帯端末とは近距離無線通信による通信を行い、 前記店舗携帯端末は、 店舗識別情報及び課金情報を記憶する記憶部、 を有し、 前記顧客携帯端末は、 前記店舗携帯端末から、課金情報を、近距離無線通信により読み取る読取手段と、 前記課金情報及び顧客に対応する決済用識別情報を含む決済依頼情報を生成する決済依頼情報生成手段と、を備え、 前記決済サーバは、 前記顧客携帯端末が生成した決済依頼情報に基づき決済を行う決済手段を備える、 決済システム。」 <相違点1> 店舗携帯端末が、本願発明1では「前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段」を備えるのに対し、引用発明では、当該位置情報生成手段を備えていない点。 <相違点2> 店舗携帯端末又は決済サーバが、本願発明1では、「前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段」を備えるのに対し、引用発明は、当該決済場所限定手段を備えていない点。 <相違点3> 顧客携帯端末の読取手段が、本願発明1では「店舗識別情報」を読み取るのに対し、引用発明では、「店舗識別情報」を読み取らない点。 <相違点4> 決済依頼情報が、本願発明1では「店舗識別情報」を含むのに対し、引用発明では「店舗識別情報」を含まない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点1及び2について検討すると、相違点1に係る構成である「前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段」により生成した位置情報に基づいて、相違点2に係る構成である「前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段」により決済の実行の可否を判断する本願発明1の構成については、上記引用文献1-4には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。 したがって、本願発明1は、相違点3及び4を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-5について 本願発明2-5も、本願発明1の「前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段」及び「前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明6について 本願発明6も、本願発明1の「前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段」及び「前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段」に対応するプログラムを備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1-5は「前記顧客携帯端末との決済を行う決済場所の位置情報を、無線通信によりアクセス可能なアクセスポイントの情報に基づき生成する位置情報生成手段」及び「前記位置情報生成手段が生成した位置情報が示す決済場所が所定エリア内の場合に限り、決済の実行を許可する決済場所限定手段」という事項を有し、本願発明6は当該事項に対応するプログラムを有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-19 |
出願番号 | 特願2013-191692(P2013-191692) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
金子 幸一 田中 秀樹 |
発明の名称 | 決済システム及びプログラム |
代理人 | 中村 聡延 |