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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1346459
審判番号 不服2018-4849  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2013- 51710「キャップ付き容器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月25日出願公開,特開2014-177288,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年3月14日の出願であって,平成28年12月5日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年2月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成29年6月26日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年8月31日に意見書が提出され,平成29年12月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年6月7日に前置報告がされ,平成30年7月31日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明,引用文献2に記載された発明及び引用文献3,4に例示された周知技術に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2000-109105号公報
引用文献2:特開2007-030945号公報
引用文献3:特開2004-026201号公報
引用文献4:国際公開第2013/027049号

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成30年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であるところ,本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
口径が40mm以上の口部を有する容器と、前記容器の口部に装着される容器用キャップと、を備え、
前記容器用キャップは、上面部と、前記上面部の周縁から垂下する筒状の側面部と、を備え、前記側面部が前記容器の口部と係合することで前記容器の口部に装着され、
前記上面部は、
容器の口部と対向する位置に前記上面部の下面から突き出るように設けられ、該キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部の上面に当接する環状のコンタクトリングと、
前記コンタクトリングの内側位置に前記上面部の下面から突き出るように設けられ、該キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部の内周面と常に間隔をあけて対向する筒状のガイド壁と、を備え、
前記側面部の内周面には、容器の口部の外周面に形成された雄ネジと螺合する雌ネジが形成されており、
前記キャップの前記雌ネジが容器の口部の雄ネジと係合し始めるまでに前記ガイド壁の先端部が容器の口部の上面よりも下方に位置するように、前記ガイド壁の高さが設定されているキャップ付き容器。」

なお,本願発明2-5は,いずれも本願発明1を引用した発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飲料用容器、殊に炭酸飲料用容器に適した合成樹脂製容器蓋に関する。」

(2)「【0011】図1を参照して説明すると、本発明に従って構成された全体を番号2で示す容器蓋2は、高密度ポリエチレン又はポリプロピレンの如き比較的硬質の合成樹脂であるのが好ましい合成樹脂から全体が一体に形成されている。かかる容器蓋2は、円形天面壁4及びこの天面壁4の周縁から垂下する略円筒状のスカート壁6を具備している。スカート壁6には周方向に延びる破断可能ライン8が形成されており、スカート壁6は破断可能ライン8よりも上方の主部10と破断可能ライン8よりも下方のタンパーエビデント裾部12とに区画されている。スカート壁6の内周面には下方を向いた環状肩面14が形成されており、そしてかかる環状肩面14から下方に延びる突条16が周方向に適宜の間隔をおいて複数個形成されている。上記破断可能ライン8は、突条16の軸線方向中間部において、スカート壁6の外周面から切断刃(図示していない)を作用せしめ、突条16の少なくとも一部を残留せしめてスカート壁6を切断することによって形成される。突条16の各々の切断されることなく残留せしめられた部分が所謂橋絡部18を構成し、タンパーエビデント裾部12は橋絡部18を介してスカート壁6の主部10に接続されている。」

(3)「【0012】スカート壁6の主部10の外周面には、その下端部近傍に、下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状部20が形成されている。タンパーエビデント裾部12の外周面も、下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状にせしめられている。主部10の外周面における円錐台形状部20の上方に位置する部分には、そこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸形状22が形成されている。スカート壁6の主部10の内周面には雌螺条24が形成されている。かかる雌螺条24には、周方向に適宜の間隔をおいて軸線方向に延びる切欠26が形成されている。かかる切欠26は容器の口頸部が開封される際の所謂通気路を構成する。」

(4)「【0014】図1と共に図2を参照して説明を続けると、天面壁4の内面の外周縁部には、環状シール片34、環状当接片36及び環状位置付け片38が形成されている。図示の実施形態における環状シール片34は、天面壁4の内面から下方に向かって半径方向内方に傾斜して延出している。更に詳述すると、環状シール片34は、下方に向かって半径方向内方に略20度程度でよい傾斜角αをなして延びている外周面40と、外周面40と実質上平行に延びている上部内周面42と、上部内周面42に続いて実質上鉛直に下方に延びる中間部内周面43と、中間部内周面43に続いて下方に向かって半径方向外方に延びる下部内周面44と、略水平に延びる先端面46とを有する。環状当接片36は、半径方向に見て環状シール片34の直ぐ内側に位置せしめられており、天面壁4の内面から下方に向かって凸状に膨出せしめられている膨出部から形成されている。環状位置付け片38は当接片36から半径方向内方に所要距離離間せしめて配置されており、天面壁4の内面から実質上鉛直に下方に延出せしめられている。この環状位置付け片38は実質上鉛直に延びる上部外周縁48と、下方に向かって半径方向内方に傾斜して延びる下部外周面50と、実質上水平に延びる先端面52と、実質上鉛直に延びる内周面54とを有する。」

(5)「【0016】図2には、容器蓋2が適用される容器の口頸部の一部も二点鎖線で図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器は略円筒形状の口頸部58を備えている。この口頸部58の外周面には雄螺条60とこの雄螺条60の下方に位置する環状係止あご部62(図3)が形成されている。雄螺条60よりも上方に位置する上端部は、実質上水平に延在する環状頂面64、実質上鉛直に延在する円筒状外周面66、環状頂面64から円筒状外周面66まで断面図において実質上円弧状に延びる環状境界面68、実質上鉛直に延在する円筒状内周面70、円筒状内周面70と環状頂面64との間を若干の長さに渡って断面図において円弧状に延びている環状境界面72によって規定されている。」

(6)「【0017】図2を参照することによって理解されるとおり、容器蓋2における環状シール片34の最小内径D1は、容器の口頸部58における上端部の外径D2よりも幾分小さく設定されており、D2-D1=0.30乃至1.00mm程度であるのが好適である。D2-D1が過剰に小さいと環状シール片34による口頸部58のシールが不完全になる傾向があり、D2-D1が過剰に大きいと口頸部58に容器蓋2を装着する装着操作が困難になる傾向がある。また、環状位置付け片38の最大外径D3は、容器の口頸部58における上端部の内径D4よりも若干小さく設定されており、D4-D3=0.07乃至0.16mm程度であるのが好ましい。D4-D3が過剰に小さいと容器の口頸部58に容器蓋2を装着する際に環状位置付け片38を口頸部58内に位置せしめるのが相当困難になる傾向があり、D4-D3が過剰に大きいと環状位置付け片38による口頸部58と容器蓋2との整合作用が有効に機能しなくなる傾向がある。」

(7)「【0018】図3は、容器の口頸部58に容器蓋2を所要とおりに装着した状態を図示している。図1及び図2と共に図3を参照して説明を続けると、容器の口頸部58に容器蓋2を装着して口頸部58を密封する際には、口頸部58に容器蓋2を被嵌して閉方向、即ち図3において上方から見て時計方向に回転せしめ、口頸部58の雄螺条60に容器蓋2の雌螺条24を螺合せしめる。この際には、容器蓋2の環状位置付け片38が口頸部58の内周面に沿って下降せしめられ、口頸部58に対して容器蓋2が整合、更に詳しくは口頸部58の中心軸線に対して容器蓋2の中心軸線が整合せしめられる。所要トルクで容器蓋2を閉方向に回転せしめて図3に図示する状態まで雄螺条60に雌螺条24を螺合せしめると、容器蓋2の環状シール片34は口頸部58の上端部の外周面66に密接せしめられて半径方向外方に幾分撓まされ、これによって口頸部58が密封される。また、容器蓋2の環状当接片36は、口頸部58の上端部の環状境界面68に当接せしめられて幾分圧縮される。従来の容器蓋に形成されている環状当接片は容器の口頸部の環状頂面に密接せしめられるが、本発明者等の経験によれば、環状当接片36を口頸部58の環状頂面64ではなくて環状境界面68に密接せしめるように構成することによって、後述する如く天面壁4が変形を被る際に、環状シール片34の変形乃至移動をより一層確実に抑制することができる。容器蓋2のタンパーエビデント裾部12に形成されている係止手段28は半径方向外方に弾性的に変形して口頸部58の環状あご部62を通過し、次いで弾性的に復元して環状あご部62の下面に係止せしめられる。」

記載事項(6)のとおり,環状位置付け片38の最大外径D3は,容器の口頸部58における上端部の内径D4よりも若干小さく設定されているのであるから,環状位置付け片38について,容器蓋2が容器の口頸部58に係合した際に容器の口頸部58の内周面と常に間隔をあけて対向するものであることは明らかである。

記載事項(7)のように容器蓋2を容器の口頸部58に装着する場合,口頸部58を有する容器と,その容器の口頸部58に装着される容器蓋2との組み合わせについて,容器蓋2付き容器として把握されるものであることは明らかである。

以上を総合すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「口頸部58を有する容器と,容器の口頸部58に装着される容器蓋2と,を備え,
容器は飲料用容器に適したものであり,
口頸部58の外周面に雄螺条60が形成され,
口頸部58の雄螺条60よりも上方に位置する上端部は,実質上水平に延在する環状頂面64,実質上鉛直に延在する円筒状外周面66,環状頂面64から円筒状外周面66まで断面図において実質上円弧状に延びる環状境界面68,実質上鉛直に延在する円筒状内周面70,円筒状内周面70と環状頂面64との間を若干の長さに渡って断面図において円弧状に延びている環状境界面72によって規定され,
容器蓋2は,円形天面壁4と,円形天面壁4の周縁から垂下する略円筒状のスカート壁6と,を備え,
円形天面壁4は,
円形天面壁4の内面から下方に向かって半径方向内方に傾斜して延出している環状シール片34と,
半径方向に見て環状シール片34の直ぐ内側に位置せしめられており,円形天面壁4の内面から下方に向かって凸状に膨出せしめられている膨出部から形成され,容器の口頸部58に容器蓋2を装着して口頸部58を密封する際に環状境界面68に密接せしめられる環状当接片36と,
環状当接片36から半径方向内方に所要距離離間せしめて配置されており,円形天面壁4の内面から実質上鉛直に下方に延出せしめられ,容器蓋2が容器の口頸部58に係合した際に容器の口頸部58の内周面と常に間隔をあけて対向する環状位置付け片38と,を備え,
スカート壁6の内周面には,雄螺条60に螺合する雌螺条24が形成されている容器蓋2付き容器。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には,次の事項が記載されている。

(1)「【0024】また、このキャップ10では、広口の容器に対応して全体が大きく形成されても、薄肉状の切断容易部30a、30bおよび30cが切断しやすいので、容器の口部を開封しやすく、たとえば、直径40mm以上の口径を有する広口瓶や胴径と口径との比率が2:1以上の広口瓶などの広口の容器にも対応することができる。」

3.引用文献3について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3には,次の事項が記載されている。

(1)「【0024】合成樹脂製ボトル1は、果汁飲料、コーヒー、ウーロン茶、日本茶等の容器として用いられるものであり、口部2は内径が20?40mm、肉厚が2?5mmの範囲にある。合成樹脂製ボトル1は、前記内容物が90℃前後の温度で熱間充填されたのち、熱結晶化処理により白化された口部2に、プラスチックキャップ6が螺着されて閉蓋される。」

(2)「【0028】このとき、プラスチックキャップ6は、係止部14が口部2のビード部4に係合することにより、抜け止めされている。従って、合成樹脂製ボトル1は、プラスチックキャップ6を回転させて橋絡部12を破断しなければ開栓することができず、橋絡部12の破断により開栓した痕跡が残されるという不正開封表示機能を備えている。」

4.引用文献4について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4には,次の事項が記載されている。翻訳は当審で付したものである。

(1)「For example, a wide mouth container (e.g. wide mouth jar) may utilise a closure of diameter 60-90mm, a common one being 63mm; a first type of bottle may have a closure of about 38mm; and a second bottle type may have a closure of about 28mm.」(第14ページ第1-2行)
(翻訳:例えば,広口容器(例.広口瓶)は直径60-90mm,一般的なものは63mmであるクロージャを利用してもよい。ボトルの第1のタイプは約38mmのクロージャを有してもよく,第2のボトルタイプは約28mmのクロージャを有してもよい。)

(2)「The container may contain a product, for example a consumable, such as a food or beverage. The product may be relatively oxygen sensitive. The amount of oxygen that a product, for example food, can tolerate before it is out of specification with respect to taste, colour, odour etc. is given by an oxygen specification in w/v ppm, wherein the following foods have oxygen specifications in w/v ppm as indicated in brackets: beer (1-3), low acid foods (1-3), fine wine (2-5), coffee (2-5), tomato-based products (3-8), high acid fruit juices (8-20), carbonated soft drinks (10-40), oil and shortening (20-50), salad dressing (30-100), peanut butter (30-100), liquor (50-100+), jams and jellies (50-100+).」(第20ページ第6-13行)
(翻訳:容器は,製品,例えば食品又は飲料のような消耗品を収容してもよい。製品は,比較的酸素感受性であってもよい。製品,例えば食品が,味,色,臭気等に関して規格外となる前に許容できる酸素の量は,酸素仕様 w/v ppmによって与えられ,以下の食品は,括弧内に示される酸素仕様 w/v ppmを有する:ビール(1-3),低酸性食品(1-3),高級ワイン(2-5),コーヒー(2-5),トマトベース製品(3-8),高酸性フルーツジュース(8-20),炭酸清涼飲料(10-40),油及びショートニング(20-50),サラダドレッシング(30-100),ピーナッツバター(30-100),酒(50-100+),ジャム及びゼリー(50-100+)。)

5.その他の文献について
平成30年6月7日付けの前置報告において引用された米国特許出願公開第2007/0175853号明細書(以下,「引用文献5」という。)には,次の事項が記載されている。翻訳は当審で付したものである。

(1)「[0012] A cap closure 1 manufactured by injection molding of plastic has an upper horizontal end wall 2 and a cylindrical side wall 3 that is molded in a downward direction onto the outer edge of the end wall. A tamper-indicating ring may also be molded onto the lower end of the side wall 3 so that it breaks off when the cap is opened. Such a cap 1 may be screwed or pressed onto a cylindrical pour neck 4 of a container, in particular a container neck such as for example a bottle. A screw thread 5 is preferably provided between an inner face of the side wall 3 and an outer face of the neck 4. 」
(翻訳:プラスチックの射出成形によって製造されたキャップクロージャ1は上部水平端壁2と端壁の外縁部上に下向きに成形された円筒状側壁3とを有している。いたずら表示リングが側壁3の下端上に成形されてもよく,キャップが開放されるときに破断するようになっている。このようなキャップ1は,容器の円筒状の注出用首部4,特に例えばボトルの容器首部にねじ止めされるか押圧されてもよい。好ましくは側壁3の内面と首部4の外面との間にねじ山5が設けられている。)

(2)「[0013] An internal annular seal lip 6 is molded coaxial to the cap axis onto an underside of the end wall 2, and extends downward and into the neck 4 when the cap is set in place. The seal lip 6 flares radially outward so that the outer circumference of the seal lip and therefore also the diameter is larger than the outer circumference and the diameter of the seal lip in the region of the attachment point 7 of the seal lip to the end wall 2 than at the lower free end 8. In the illustrated embodiment according to FIG. 1, this radially outward widening of the seal lip 6 is achieved by a crease 9, so that in the sectional view the wall of the seal lip resembles a toggle lever. In the illustrated embodiment according to FIG. 2 the seal lip 6 is outwardly curved, so that the outer face of the seal lip is convex and the inner face is concave.」
(翻訳:内側環状シールリップ6は,キャップ軸線と同軸で端壁2の下側に成形され,キャップが所定位置にセットされると,下方に延び首部4内に延びる。シールリップ6は,シールリップの外周ひいては直径が,シールリップと端壁2との取付点7の領域における外周及び直径より大きくなり,下側自由端8における外周及び直径よりも大きくなるように,半径方向外方に広がっている。図1に示された実施形態では,シールリップ6の半径方向外方への拡開は,折り目9によって達成され,その結果,断面図において,シールリップの壁はトグルレバーに似る。図2に示された実施形態では,シールリップ6は外側に湾曲しており,その結果,シールリップの外面は凸状であり,内面は凹状である。)

(3)「[0014] A coaxial abutment ring 10 is molded onto the inner wall of the neck 4 and projects inward to form an abutment surface 11 for the free lower end 8 of the seal lip 6. Furthermore, the distance A from the stop surface 11 to the upper end of the neck 4 is shorter than the length, i.e. the height, L of the seal lip 6, so that when the cap 1 is attached, in particular screwed, to the neck 4 the end 8 of the seal lip 6 bears against the ring 10 and is thus compressed in such a way that the seal lip 6 is pressed outward, i.e. its diameter and circumference are increased at least in the center region. This compression of the seal lip 6 causes the curvature 12 and/or crease to project outward such that the seal lip is pressed against the inner wall of the neck 4 in a sealing manner. At the same time, the inner face of the neck and/or the outer face of the seal lip may be formed with a raised annular region, in particular an annular bead, as a defined support and a secure seal.」
(翻訳:同軸当接リング10は,首部4の内壁上に成形され,シールリップ6の下側自由端8の当接面11を形成するように内方に突出している。さらに,停止面11から首部4の上端までの距離Aは,シールリップ6の長さL,すなわち高さよりも短く,キャップ1を首部4に取り付ける,特にねじ止めする時に,シールリップ6の端部8がリング10に当接して,シールリップ6が外側に押圧されるように,すなわちその直径及び外周が少なくとも中央領域において増加するように,圧縮される。シールリップ6のこの圧縮により,湾曲部12及び/又は折り目が外側に突出し,シールリップが首部4の内壁に対してシールを形成するように押し付けられる。同時に,首部の内面及び/又はシールリップの外面には,明瞭な支持部及び確実なシール部としての隆起環状領域,特に環状ビードが形成されてもよい。)

(4)図1及び図2の記載から,シールリップ6の高さについて,側壁3の内面のねじ山5が首部4の外面のねじ山5に係合し始めるまでに,シールリップ6の先端部が首部4の上面よりも下方に位置するのに十分な大きさであることを見て取れる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「口頸部58」,「容器」,「容器蓋2」,「環状位置付け片38」,「雄螺条60」,「雌螺条24」,「容器蓋2付き容器」は,それぞれ本願発明1における「口部」,「容器」,「容器用キャップ」,「筒状のガイド壁」,「雄ネジ」,「雌ネジ」,「キャップ付き容器」に相当する。

イ 引用発明の「円形天面壁4」は,本願発明の「上面部」に相当する。また,引用発明の「略円筒状のスカート壁6」は,その内周面に形成された雌螺条24が口頸部58の外周面に形成された雄螺条60に螺合するものであり,これにより容器の口頸部58と係合することで容器の口頸部58に装着されるものであることは明らかであるから,本願発明の「筒状の側面部」に相当する。

ウ 引用発明の「環状当接片36」は,円形天面壁4の内面から下方に向かって凸状に膨出せしめられている膨出部から形成され,容器の口頸部58に容器蓋2を装着して口頸部58を密封する際に環状境界面68に密接せしめられるものであるから,本願発明の「環状のコンタクトリング」と,容器の口部と対向する位置に上面部の下面から突き出るように設けられ,キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部に当接するものである限りにおいて一致する。

エ 本願の請求項1の「前記キャップの前記雌ネジが容器の口部の雄ネジと係合し始めるまでに前記ガイド壁の先端部が容器の口部の上面よりも下方に位置するように、前記ガイド壁の高さが設定されている」との記載や,本願明細書の段落【0036】の「キャップ2の雌ネジ5が容器10の口部11の雄ネジ13に係合し始める際、ガイド壁7の先端部70が容器10の口部11の上面より上方に位置していると、ガイド壁7がガイドとして機能する前に雌ネジ5が雄ネジ13と係合してしまい、その結果、キャップ2が傾斜してしまって、キャップ2が傾斜した斜めキャップの状態のまま雌ネジ5と雄ネジ13とが係合する係合不良を起こすおそれがあるからである。」との記載を考慮すると,本願発明1の「上面」は,容器の口部において最も上方に位置して,ガイド壁の先端部がそれより下方に位置する場合はガイド壁がガイドとして機能する一方,ガイド壁の先端部がそれより上方に位置する場合はガイド壁がガイドとして機能しないという,ガイド機能に関する境界を規定し得る面であると解釈するのが自然である。一方,引用発明の「環状境界面68」は,容器の口頸部58において最も上方に位置して,ガイド機能に関する境界を規定し得る面ではないから,本願発明1の「上面」に相当するとはいえない。

したがって,本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「口部を有する容器と、前記容器の口部に装着される容器用キャップと、を備え、
前記容器用キャップは、上面部と、前記上面部の周縁から垂下する筒状の側面部と、を備え、前記側面部が前記容器の口部と係合することで前記容器の口部に装着され、
前記上面部は、
容器の口部と対向する位置に前記上面部の下面から突き出るように設けられ、該キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部に当接する環状のコンタクトリングと、
前記コンタクトリングの内側位置に前記上面部の下面から突き出るように設けられ、該キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部の内周面と常に間隔をあけて対向する筒状のガイド壁と、を備え、
前記側面部の内周面には、容器の口部の外周面に形成された雄ネジと螺合する雌ネジが形成されているキャップ付き容器。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,口部の口径が40mm以上であると特定されているのに対し,引用発明は,口頸部58の内径D4について40mm以上であると特定されていない点。
(相違点2)本願発明1は,キャップが容器の口部に係合した際に容器の口部の上面に当接するものであるのに対し,引用発明は,環状当接片36が容器の口頸部58に容器蓋2を装着して口頸部58を密封する際に環状境界面68に密接せしめられるものである点。
(相違点3)本願発明1は,キャップの雌ネジが容器の口部の雄ネジと係合し始めるまでにガイド壁の先端部が容器の口部の上面よりも下方に位置するようにガイド壁の高さが設定されているのに対し,引用発明は,環状位置付け片38の高さについてそのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討する。「第4 引用文献,引用発明等」の「2.引用文献2について」の記載事項(1)のとおり,引用文献2には,直径40mm以上の口径を有する広口瓶が記載されている。しかしながら,引用文献2には,直径40mm以上の口径を有する広口瓶が飲料を収容する旨の具体的な記載はないし,これを示唆する記載もない。引用発明の飲料用容器に適した容器と,引用文献2の広口瓶は,飲料用容器という技術分野において関連性を有するものではなく,引用発明の飲料用容器に適した容器に対して,引用文献2の広口瓶の構成を適用する十分な動機付けがあるとはいえない。
なお,「第4 引用文献,引用発明等」の「3.引用文献3について」に示した記載事項(1)及び(2)が仮に周知技術であったとしても,引用発明の飲料用容器に適した容器に対して,引用文献2の広口瓶の構成を適用する動機付けは見いだせない。
また,「第4 引用文献,引用発明等」の「4.引用文献4について」に示した記載事項(1)及び(2)が仮に周知であったとしても,引用文献4には,内容物に炭酸清涼飲料が含まれることと,広口容器に適用される直径60-90mmのキャップとがそれぞれ個別に記載されているだけであると解される上,技術常識に照らしてこのような広口容器に炭酸清涼飲料を収容することが一般的であるとまではいえないことから,引用文献4の記載から,炭酸清涼飲料を収容した広口容器に適用される直径60-90mmのキャップを周知技術として把握することまではできない。なお,仮に,炭酸清涼飲料を収容した広口容器に適用される直径60-90mmのキャップを周知技術として把握することができ,この周知技術を考慮することができたとしても,引用発明の飲料用容器に適した容器に対して,引用文献2の広口瓶の構成を適用する動機付けはやはり見いだせない。
加えて,引用文献1-5のいずれにも,口径40mm以上の口部を有する容器における係合不良や開栓し難さの問題が顕著であることや,口径40mm以上の口部を有する容器とガイド壁を有するキャップとの組み合わせについての直接的な記載はない。一方,本願発明1は,係合不良や開栓し難さの問題が従来顕著であった口径40mm以上の口部を有する容器に対して,ガイド壁を有するキャップを組み合わせることにより,係合不良を防止し,開栓を容易にする点で有利な効果を奏するものである(本願明細書の段落【0005】,【0018】,【0022】参照)。そうすると,例えば「第4 引用文献,引用発明等」の「3.引用文献3について」で示した記載事項(1)から把握されるような口径40mm以上の口部を有する飲料用容器が周知技術であるとしても,上記の有利な効果を参酌すれば,引用発明の飲料用容器に適した容器の口部の口径を40mm以上とすることについて,当業者が容易に想到できたとまではいえない。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討する。「第4 引用文献,引用発明等」の「1.引用文献1について」で示した記載事項(7)から理解されるとおり,引用発明は,環状当接片36を口頸部58の環状境界面68に密接せしめるように構成することによって,環状シール片34の変形ないし移動をより一層確実に抑制することができるようにしたものであるから,引用発明において,環状当接片36を密接せしめる対象を環状境界面68以外の箇所に変更する動機付けは見いだせない。

ウ 相違点3について
上記相違点3について検討する。本願明細書の段落【0036】の「キャップ2の雌ネジ5が容器10の口部11の雄ネジ13に係合し始める際、ガイド壁7の先端部70が容器10の口部11の上面より上方に位置していると、ガイド壁7がガイドとして機能する前に雌ネジ5が雄ネジ13と係合してしまい、その結果、キャップ2が傾斜してしまって、キャップ2が傾斜した斜めキャップの状態のまま雌ネジ5と雄ネジ13とが係合する係合不良を起こすおそれがあるからである。」との記載や,段落【0039】の「また、キャップ2を容器10の口部11に係合させるために口部11上に被せる際に、キャップ2が傾斜した斜めキャップの状態で口部11に被せられても、キャップ2の雌ネジ5と口部11の雄ネジ13とが螺合を開始する前に、ガイド壁7の下方に傾斜している側の先端部70の外周面が口部11の上端部の内周面と接触することで、キャップ2の傾斜状態が矯正される。このガイド壁7のガイド機能によりキャップ2は水平状態またはほぼ水平状態に戻され、雌ネジ5と雄ネジ13とが正常に螺合するので、キャップ2が傾斜した状態で口部11に係合されることに伴うキャップ2および口部11の係合不良を起こすことを防止できる。」との記載等を参酌すると,上記相違点3に係る本願発明1の「前記キャップの前記雌ネジが容器の口部の雄ネジと係合し始めるまでに前記ガイド壁の先端部が容器の口部の上面よりも下方に位置するように、前記ガイド壁の高さが設定されている」との構成の奏する効果は,キャップが斜めキャップの状態で口部に被せられても,ガイド壁のガイド機能によりキャップの傾斜状態を矯正し,キャップが傾斜した状態で口部に係合されることに伴うキャップ及び口部の係合不良を防止することであると解される。
これに対して,「第4 引用文献,引用発明等」の「5.その他の文献について」で示したとおり,引用文献5には,停止面11から首部4の上端までの距離Aが,シールリップ6の高さよりも短いことが記載されており,また,引用文献5の図1及び図2の記載からは,シールリップ6の高さについて,側壁3の内面のねじ山5が首部4の外面のねじ山5に係合し始めるまでに,シールリップ6の先端部が首部4の上面よりも下方に位置するのに十分な大きさであることを見て取れる。
しかしながら,引用文献5のシールリップ6は,首部4の内壁に対してシールを形成するように押し付けられるものであって,首部4の内周面と常に間隔をあけて対向するものではなく,キャップが斜めキャップの状態で口部に被せられても,ガイド壁のガイド機能によりキャップの傾斜状態を矯正し,キャップが傾斜した状態で口部に係合されることに伴うキャップ及び口部の係合不良を防止するという効果を奏するものでもないから,本願発明1の「ガイド壁」に相当するものとはいえない。また,引用文献5のシールリップ6の高さは,その端部8がリング10に当接してシールリップ6が圧縮されることにより,折り目9又は湾曲部12が外側に突出してシールリップ6が首部4の内壁に対してシールを形成するように設定されるものである一方,引用発明の環状位置付け片38は,口頸部58の内周面と常に間隔をあけて対向するものであって,口頸部58の内周面に対してシールを形成するものではないことから,引用発明の環状位置付け片38に対して,引用文献5のシールリップ6の構成を適用する動機付けがあるとはいえない。
また,引用文献2-4には,上記相違点3に係る本願発明1の構成の記載や示唆はない。

エ 効果の検討
本願発明1は,「ア 相違点1について」で示したように,口径40mm以上の口部を有する容器であっても,係合不良を防止し,開栓を容易にすることができるという効果を奏するものであり,また,「ウ 相違点3について」で示したように,キャップが斜めキャップの状態で口部に被せられても,ガイド壁のガイド機能によりキャップの傾斜状態を矯正し,キャップが傾斜した状態で口部に係合されることに伴うキャップ及び口部の係合不良を防止するという効果を奏するものである。そして,本願発明1が奏するこのような効果について,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,引用文献5に記載された技術的事項及び引用文献3,4から把握される周知技術それぞれの奏する効果から予測し得るものであるとまではいえない。

オ 相違点についての判断のむすび
以上のとおりであるから,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,引用文献5に記載された技術的事項及び引用文献3,4から把握される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明1を引用する本願発明2-5も,引用発明と少なくとも相違点1-3で相違するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,引用文献5に記載された技術的事項及び引用文献3,4から把握される周知技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
上記第5のとおり,本願発明1-5は,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,引用文献5に記載された技術的事項及び引用文献3,4から把握される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないところ,原査定の理由である,引用文献1に記載された発明,引用文献2に記載された発明及び引用文献3,4に例示された周知技術によっても,当然に,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2013-51710(P2013-51710)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 信秀谿花 正由輝  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 千壽 哲郎
白川 敬寛
発明の名称 キャップ付き容器  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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