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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1346472
審判番号 不服2017-17314  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-22 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2013-207503号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 72779号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月2日の出願であって、平成29年3月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は以下の引用文献1-2に基いて、請求項2-4に係る発明は以下の引用文献1-3に基いて、請求項5に係る発明は以下の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特開2012-221770号公報
2.特開2011-258515号公報
3.特開2004-111104号公報
4.特開2013-084635号公報


第3 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成29年11月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオードと、
前記第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光し、前記第1発光ダイオードよりも個数が少ない複数個の第2発光ダイオードと、
前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードにそれぞれ駆動電流を供給して、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードを点灯させる点灯回路と、
外部から入力される調光信号に応じて複数個の前記第1発光ダイオードからの全発光量が変化し、且つ、前記調光信号に関わらず複数個の前記第2発光ダイオードからの全発光量が一定になるように、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードの発光状態を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、全点灯状態において、前記点灯回路から前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流と、前記点灯回路から前記第2発光ダイオードに供給される駆動電流が同じになるように、前記点灯回路を制御し、
調光下限において前記点灯回路から全ての前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流がゼロになるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御し、
前記調光信号に関わらず前記第2発光ダイオードの駆動電流が一定値になるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1発光ダイオードの個数が、前記第2発光ダイオードの個数の2倍以上であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1発光ダイオードの個数が、前記第2発光ダイオードの個数の3倍以上であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記調光信号の調光率が低下するにつれて複数個の前記第1発光ダイオードからの全発光量が低下するように、前記点灯回路が前記第1発光ダイオードに供給する駆動電流を低下させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記調光信号の調光率が低下するにつれて複数個の前記第1発光ダイオードからの全発光量が低下するように、点灯させる前記第1発光ダイオードの個数を減少させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の照明装置。」


第4 引用文献の記載事項等
1.引用文献1の記載事項等
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1a)「【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る照明装置10の構成を示す回路図である。
【0012】
図1において、照明装置10は、LED点灯装置10aと、第1LED25と、第2LED26を備える。LED点灯装置10aは、調光部の例であり、第1LED25及び第2LED26を点灯させ、また、第1LED25及び第2LED26を調光する。第1LED25は、色温度が2500K(ケルビン)以上かつ5000K以下の光を発する。本実施の形態では、第1LED25の例として、色温度が3500KのLED、即ち、温白色LEDが4つ直列接続されている。第2LED26は、ピーク波長が570nm(ナノメートル)以上かつ830nm以下の光を発する。ここでは、第2LED26の例として、ピーク波長が600nmの単色LED、即ち、橙色LEDが4つ直列接続されている。なお、第1LED25及び第2LED26の実装数は、それぞれ3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。
【0013】
LED点灯装置10aは、ダイオードブリッジ11と、昇圧回路15と、第1定電流出力回路17aと、第2定電流出力回路17bと、調光制御部31と、調光コントローラ32を備える。・・・即ち、第1定電流出力回路17aは、第1LED25に電力を供給する。第2定電流出力回路17bは、第1定電流出力回路17aと同様に、昇圧回路15に接続され、昇圧回路15から出力された直流電圧により定電流を生成して第2LED26に出力する。即ち、第2定電流出力回路17bは、第2LED26に電力を供給する。調光制御部31は、第1定電流出力回路17aと第2定電流出力回路17bを制御する。調光コントローラ32は、調光制御部31に調光信号を出力する。
・・・
【0017】
調光制御部31は、調光コントローラ32から出力される調光信号を入力し、入力した調光信号に基づいて、第1定電流出力回路17a、第2定電流出力回路17bの出力電流を調整するための出力制御信号を、第1制御部21、第2制御部22に出力する。調光制御部31には、第1LED25及び第2LED26の明るさ及び色温度を制御するためのアルゴリズムが組み込まれている。調光制御部31は、このアルゴリズムに基づいて、第1定電流出力回路17a及び第2定電流出力回路17bの出力電流を制御することで、第1LED25及び第2LED26の明るさ及び色温度を、白熱電球の明るさ及び色温度に近い特性で制御する。調光制御部31は、例えばマイクロコンピュータで実装でき、この場合、上記アルゴリズムは、マイクロコンピュータで実行されるソフトウェアに組み込むことができる。
【0018】
調光制御部31に組み込まれているアルゴリズムでは、色温度の計算手法として、相関色温度の簡便な求め方を用いる。
・・・
【0020】
色度座標x,yから相関色温度Tを求める近似式として、次式が提案されている(McCamy,1992)。
T=-437n^(3)+3601n^(2)-6861n+5514.31
ここで、
n=(x-0.3320)/(y-0.1858)
である。
【0021】
上記の式により、第1LED25及び第2LED26のデータシートに記載されている色度座標x,yの値と、第1LED25及び第2LED26の明るさ比率から容易に色温度を算出することができる。例えば、第1LED25の色度座標(x,y)=(0.3903,0.3826)、第2LED26の色度座標(x,y)=(0.5625,0.43)、第1LED25の光出力(調光度、明るさ)を100%、第2LED26の光出力を37%とする。この場合、照明装置10(第1LED25及び第2LED26の合成光)の色度座標(x,y)=(0.436807,0.395401)となるから、n=0.500028である。よって、照明装置10の色温度T=2929.335[K]となる。
・・・
【0028】
図4に、表4として、温白色LEDのみの明るさを可変とした、本実施の形態に係る照明装置10の色温度と明るさの対比表を示す。また、図10に、色温度を縦軸、明るさを横軸にした、表4と表2に対応するグラフを示す。
【0029】
表4は、本実施の形態で第1LED25として使用する温白色LEDを可変出力とし、本実施の形態で第2LED26として使用する橙色LEDを固定出力とした照明装置10の色温度と明るさの特性を示したものである。図10は、表4と表2を縦軸が色温度、横軸が明るさとなるようにグラフで表したものである。
【0030】
本実施の形態において、LED点灯装置10aの調光制御部31は、調光コントローラ32から調光度L[%](5≦L≦100)を指令する調光信号を受信すると、第1LED25が調光度Lに応じた光出力で点灯するように、第1定電流出力回路17aを制御する。このとき、調光制御部31は、第2LED26が調光度Lに関係なく一定の光出力で点灯するように、第2定電流出力回路17bを制御する。即ち、本実施の形態では、調光制御部31が、照明装置10の調光度(合成光の目標の明るさ)が小さくなるにしたがって、第1LED25の光出力が小さくなり、第2LED26の光出力が一定になるように、第1LED25及び第2LED26を調光する。このとき、第1LED25の光出力の変化率は、調光度の大小に関わらず一定である。また、本実施の形態では、調光制御部31が、色温度に違和感を与えないようにするため、明るさ5%付近の色温度が白熱電球と同じになるように第1LED25及び第2LED26の明るさの制御を行っている。
【0031】
図10を見ると明らかなように、本実施の形態によれば、第1LED25の明るさを増減させるだけで、暗くなると同時に色温度も低くなる特性を実現できる。しかも、本実施の形態では、照明装置10(合成光)の明るさが暗くなるにしたがって照明装置10の色温度の変化率が大きくなっている。このため、白熱電球(白熱灯)からLEDへと切り替えた際の違和感を抑えることができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、LED点灯装置10aが調光コントローラ32を内蔵しているが、LED点灯装置10aの外部に調光コントローラ32が備えられてもよい。」

(1b)引用文献1には以下の図が示されている。





(2)引用文献1に記載された発明
(2-1)摘記事項(1a)及び摘記事項(1b)の図から以下の事項が認定できる。
ア.照明装置10は、LED点灯装置10aと、第1LED25と、第2LED26とを備えること(段落【0012】、図1)。
イ.第1LED25として温白色LEDが4つ直列接続されており、第2LED26として橙色LEDが4つ直列接続されていること(段落【0012】、図1)。
ウ.LED点灯装置10aは、ダイオードブリッジ11、昇圧回路15、第1定電流出力回路17a、第2定電流出力回路17b、調光制御部31及び調光コントローラ32を備えること(段落【0013】、図1)。
エ.調光コントローラ32はLED点灯装置10aの外部に備えられてもよいものであること(段落【0032】)。
オ.調光制御部31は、第1LED25及び第2LED26の明るさ及び色
温度を、白熱電球の明るさ及び色温度に近い特性で制御するものであって、調光コントローラ32から入力される調光信号における調光度L[%](5≦L≦100)に応じた光出力で可変出力の第1LED25が点灯するように第1定電流出力回路17aの出力電流を制御し、固定出力の第2LED26が調光信号における調光度Lに関係なく一定の光出力で点灯するように第2定電流出力回路17bの出力電流を制御すること(段落【0017】,【0028】-【0030】、図4,10)。
カ.調光制御部31は、調光度Lが上限の100%のとき、第1LED25
の光出力を1000にし、第2LED26の光出力を一定の40にしていること(図4)。
キ.調光制御部31は、色温度に違和感を与えないようにするため、明るさ
5%付近の色温度が白熱電球と同じになるように第1LED25及び第2LED26の明るさの制御を行うこと(段落【0030】、図10)。
ク.調光制御部31は、調光度Lが下限の5%のとき、1LED25の光出
力を12にし、第2LED26の光出力を一定の40にしていること(図4)。
(2-2)段落【0020】に記載された「色度座標x,yから相関色温度Tを求める近似式」と、段落【0021】に記載された「第1LED25の色度座標(x,y)=(0.3903,0.3826)、第2LED26の色度座標(x,y)=(0.5625,0.43)」から色温度を算出すると以下の事項が認定できる。
ケ.第1LED25の色温度は3786Kであり、第2LED26の色温度は1879Kであること。
(2-3)したがって、これらを整理すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「照明装置10は、LED点灯装置10aと、第1LED25と、第2LED26とを備えるものであって、
前記第1LED25として温白色LEDが4つ直列接続されており、
前記第2LED26として橙色LEDが4つ直列接続されており、
前記第1LED25の色温度は3786Kであり、
前記第2LED26の色温度は1879Kであり、
前記LED点灯装置10aは、ダイオードブリッジ11、昇圧回路15、第1定電流出力回路17a、第2定電流出力回路17b、調光制御部31及び調光コントローラ32を備え、
前記調光コントローラ32は前記LED点灯装置10aの外部に備えられてもよいものであり、
前記調光制御部31は、前記第1LED25及び前記第2LED26の明るさ及び色温度を、白熱電球の明るさ及び色温度に近い特性で制御するものであって、前記調光コントローラ32から入力される調光信号における調光度L[%](5≦L≦100)に応じた光出力で可変出力の前記第1LED25が点灯するように前記第1定電流出力回路17aの出力電流を制御し、固定出力の前記第2LED26が前記調光信号における前記調光度Lに関係なく一定の光出力で点灯するように前記第2定電流出力回路17bの出力電流を制御し、
前記調光制御部31は、前記調光度Lが上限の100%のとき、前記第1LED25の光出力を1000にし、前記第2LED26の光出力を一定の40にし、
前記調光制御部31は、色温度に違和感を与えないようにするため、明るさ5%付近の色温度が白熱電球と同じになるように前記第1LED25及び前記第2LED26の明るさの制御を行うものであって、前記調光度Lが下限の5%のとき、前記第1LED25の光出力を12にし、前記第2LED26の光出力を一定の40にしている、
照明装置10。」

2.引用文献3の記載事項等
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の記載がある。
(3a)「【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施形態1を示すLED点灯装置の回路図、図2は位相制御式調光器の出力波形図、図3は位相角と各LEDアレイに流れる電流の関係を示す図、図4はLED点灯装置を内蔵した電球形照明器具の構成図、図5は電流変化をさせた場合の、調光度と発光色との関係を示す図である。
【0009】
図1において、1は商用電源、2は直流電源であり、ダイオードブリッジ3、平滑コンデンサ4及びインピーダンス素子5からなっている。6はインバータ回路であり、スイッチング素子7a及び7bからなり、ここではスイッチング素子7a及び7bにMOSFETを使用している。8は、インバータ回路6を駆動する制御回路、9は直流カットコンデンサ、10はインダクタ、11は、第1の発光手段である白色LED11aの直列回路が逆並列に接続された白色LEDアレイ、12は、白色LEDとは異なる例えば有色の第2の発光手段である電球色LED12aの直列回路からなる。電球色LEDアレイ、13は制御抵抗である。14は、商用電源1と直流電源回路2との間に挿入され、商用電源1から供給される電力を位相制御して調光させる位相制御式調光器であり、通常は、白熱電球の調光用に一般に用いられるものである。
【0010】
次に動作について図1?図5により説明する。
商用電源1からの交流電源は、ダイオードブリッジ3によって全波整流され、平滑コンデンサ4によって平滑化され、直流電圧源となる。インピーダンス素子5は突入電流抑制用のものであり、インダクタまたは抵抗等が用いられる。
インバータ回路6内で、MOSFET7a、7bは制御回路8の駆動信号によって交互にON/OFFし、直流電源回路2の直流出力を高周波に変換する。
インバータ回路6からの高周波電流はインダクタ10によって制限され、白色LEDアレイ11に投入される。従って、白色LEDアレイ11において、それぞれの白色LED11aは半波整流された高周波電流で点灯されることになる。また、直流電源回路2からの直流出力は、制御抵抗13によって電流を制限され、電球色LEDアレイ12に印加され、電球色LEDアレイ12が点灯される。
【0011】
図2は、位相制御式調光器14によって切られる商用電源1の波形を示すものである。図は一例として位相角90度付近のものを示したが、通常0?180度まで制御される。制御回路8は、この位相角に応じた位相制御式調光器14のい出力により出力周波数を単調増加する制御を行う。出力周波数が上昇した場合、インダクタ10のインピーダンスが大きくなり、白色LEDアレイ11に通電される電流が減少する。従って、位相制御式調光器14の位相角が増えると白色LEDアレイ11は調光され、明るさは暗くなっていくことになる。
また、位相制御式調光器14の位相角が90度を超えると、平滑コンデンサ4の電圧が下がり、電球色LEDアレイ12へ通電される電流が減少することにより、調光され、明るさは暗くなっていくことになる。
【0012】
図3は、上記の、位相角と各LEDアレイに流れる電流を示すものであり、白色LEDアレイ11に流れる実効電流をiw1、電球色LEDアレイ12に流れる平均電流をiy1とする。上記のように、iw1は位相各に対して単調減少し、iy2は位相角90?180度において単調減少する。なお、図3は調光度と電流の関係も示しており、調光する(暗くする)場合、iw1は位相各に対して単調減少し、iy2は位相角90?180度において単調減少する。
・・・
【0014】
このような構成において、図3のような電流変化をさせた場合の、調光度と発光色との関係は図5に示すように、調光度が明るい白色、調光する(暗くする)と電球色となる。」

(3b)引用文献3には以下の図が示されている。

(2)引用文献3に記載された技術的事項
(2-1)摘記事項(3a)及び摘記事項(3b)の図から以下の事項が認定できる。
ア.LED点灯装置は、白色LEDアレイ11、電球色LEDアレイ12及び位相式制御調光器14を備えること(図1)。
イ.白色LEDアレイ11は複数個の白色LED11aの直列回路を逆並列に接続したものであり、電球色LEDアレイ12は複数個の電球色LED12aの直列回路からなること(段落【0009】、図1)。
ウ.商用電源1から供給される電力を位相式制御調光器14で位相制御することにより、白色LEDアレイ11に流れる実効電流iw1及び電球色LEDアレイ12に流れる実効電流iw2を制御することで調光度と発光色を変化させること(段落【0008】,【0011】、図3,5)。
エ.前記位相式制御調光器14の位相角に対して実効電流iw1を単調減少させてゼロにすること(段落【0012】、図3)。
(2-2)したがって、これらを整理すると、上記引用文献3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「LED点灯装置は、白色LEDアレイ11、電球色LEDアレイ12及び位相式制御調光器14を備え、
前記白色LEDアレイ11は複数個の白色LED11aの直列回路を逆並列に接続したものであり、前記電球色LEDアレイ12は複数個の電球色LED12aの直列回路からなり、
商用電源1から供給される電力を前記位相式制御調光器14で位相制御することにより、前記白色LEDアレイ11に流れる実効電流iw1及び前記電球色LEDアレイ12に流れる実効電流iw2を制御することで調光度と発光色を変化させ、
前記位相式制御調光器14の位相角に対して前記実効電流iw1を単調減少させてゼロにする。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「第1LED25」、「第2LED26」、「調光制御部31」、「照明装置10」は、それぞれ本願発明1における「第1発光ダイオード」、「第2発光ダイオード」、「制御回路」、「照明装置」に相当する。
イ.引用発明における「第1LED25の色温度」である「3786K」は、本願発明1の「第1色温度」に相当する。そして引用発明における「第2LED26の色温度」である「1879K」は、上記「3786K」より低い色温度であることから、本願発明1の「第1色温度よりも低い第2色温度」に相当する。
ウ.引用発明における「第1LED25」は、「4つ直列接続されて」おり、「それぞれ発光する複数個」のものといえるから、上記「ア」,「イ」をも踏まえると、本願発明1の「第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオード」に相当するものといえる。
エ.引用発明における「第2LED26」は「4つ直列接続されて」おり、「それぞれ発光」する「複数個」のものといえるから、かかる「第2LED26」と本願発明1の「第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光し、前記第1発光ダイオードよりも個数が少ない複数個の第2発光ダイオード」とは、上記「ア」,「イ」をも踏まえると、「第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光する複数個の第2発光ダイオード」の限度で共通するものといえる。
オ.引用発明における「ダイオードブリッジ11と、昇圧回路15と、第1定電流出力回路17aと、第2定電流出力回路17b」は、「第1LED25」及び「第2LED26」にそれぞれ駆動電流を供給して、「第1LED25」及び「第2LED26」を点灯させる回路を形成することが明らかであることから、本願発明1の「前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードにそれぞれ駆動電流を供給して、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードを点灯させる点灯回路」に相当するものといえる。
カ.引用発明における「調光コントローラ32」は「LED点灯装置10aの外部に備えられ」て「調光信号」を「調光制御部31」に「入力」するものであるから、引用発明における「前記調光コントローラ32から入力される調光信号」は、本願発明1の「外部から入力される調光信号」に相当する。
キ.引用発明における「調光制御部31」の「前記調光コントローラ32から入力される調光信号における調光度L[%](5≦L≦100)に応じた光出力で可変出力の前記第1LED25が点灯するように前記第1定電流出力回路17aの出力電流を制御し、固定出力の前記第2LED26が前記調光度Lに関係なく一定の光出力で点灯するように前記第2定電流出力回路17bの出力電流を制御」するという構成は、上記「ア」,「カ」をも踏まえると、本願発明1における「制御回路」の「外部から入力される調光信号に応じて複数個の前記第1発光ダイオードからの全発光量が変化し、且つ、前記調光信号に関わらず複数個の前記第2発光ダイオードからの全発光量が一定になるように、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードの発光状態を制御する」という構成に相当するものといえる。
ク.引用発明における「調光制御部31」の「固定出力の前記第2LED26が前記調光信号における前記調光度Lに関係なく一定の光出力で点灯するように前記第2定電流出力回路17bの出力電流を制御」するという構成は、上記「ア」,「オ」をも踏まえると、本願発明1における「制御回路」の「調光信号に関わらず前記第2発光ダイオードの駆動電流が一定値になるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御する」という構成に相当するものといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオードと、
前記第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光する複数個の第2発光ダイオードと、
前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードにそれぞれ駆動電流を供給して、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードを点灯させる点灯回路と、
外部から入力される調光信号に応じて複数個の前記第1発光ダイオードからの全発光量が変化し、且つ、前記調光信号に関わらず複数個の前記第2発光ダイオードからの全発光量が一定になるように、前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードの発光状態を制御する制御回路とを備え、
前記調光信号に関わらず前記第2発光ダイオードの駆動電流が一定値になるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御する照明装置。」

(相違点1)「第1発光ダイオード」及び「第2発光ダイオード」の個数の関係について、本願発明1では「前記第1発光ダイオードよりも個数が少ない複数個の第2発光ダイオード」であるのに対し、引用発明では「第1発光ダイオード」と「第2発光ダイオード」はともに「4つ」で同じである点。
(相違点2)本願発明1は「前記制御回路は、全点灯状態において、前記点灯回路から前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流と、前記点灯回路から前記第2発光ダイオードに供給される駆動電流が同じになるように、前記点灯回路を制御し」という事項を備えるのに対し、引用発明は「前記調光制御部31は、前記調光度Lが上限の100%のとき、前記第1LED25の光出力を1000にし、前記第2LED26の光出力を一定の40にし」という事項を備える点。
(相違点3)本願発明1は「調光下限において前記点灯回路から全ての前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流がゼロになるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御し」という事項を備えるのに対し、引用発明は「前記調光制御部31は、色温度に違和感を与えないようにするため、明るさ5%付近の色温度が白熱電球と同じになるように前記第1LED25及び前記第2LED26の明るさの制御を行うものであって、前記調光度Lが下限の5%のとき、前記第1LED25の光出力を12にし、前記第2LED26の光出力を一定の40にしている」という事項を備える点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
ここで、原査定の判断は「引用文献3には、位相角が90度を超えたある範囲(調光下限)において白色LEDアレイ11(第1発光ダイオード)に供給される電流iw1(駆動電流)がゼロになるように、制御する照明装置が記載されている(段落0004、0009-0013、図1-4、等参照。)。引用発明において、幅広い色温度に調光できるように、引用文献3に記載された構成を参酌して、調光下限において全ての前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流がゼロになるように制御することは、当業者が容易に想到し得る事項である。」(平成29年3月17日付け拒絶理由通知における「・請求項3、4」についての「・備考」参照)というものであるので、以下検討する。
引用文献3には、上記「第4 2.(2)(2-2)」で述べた技術的事項が記載されている。
ここで引用文献3に記載された技術的事項と本願発明1とを対比すると、前者の「LED点灯装置」は、後者の「照明装置」に相当し、また前者の白色LEDアレイ11における「複数個の白色LED11a」は、後者の「第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオード」に相当する。さらに、光の分野において電球色の色温度は白色の色温度より低いことは技術常識であることを鑑みるに、前者の電球色LEDアレイ12における「複数個の電球色LED12a」は、後者の「前記第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光」する「複数個の第2発光ダイオード」に相当するものといえる。
したがって、引用文献3に記載された技術的事項は、
「照明装置は、白色LEDアレイ11、電球色LEDアレイ12及び位相式制御調光器14を備え、
前記白色LEDアレイ11は第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオードの直列回路を逆並列に接続したものであり、前記電球色LEDアレイ12は前記第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光する複数個の第2発光ダイオードの直列回路からなり、
商用電源1から供給される電力を前記位相式制御調光器14で位相制御することにより、前記白色LEDアレイ11に流れる実効電流iw1及び前記電球色LEDアレイ12に流れる実効電流iw2を制御することで調光度と発光色を変化させ、
前記位相式制御調光器14の位相角に対して前記実効電流iw1を単調減少させてゼロにする。」ということになる。

してみると、引用発明と引用文献3に記載された技術的事項は、第1色温度でそれぞれ発光する複数個の第1発光ダイオード及び前記第1色温度よりも低い第2色温度でそれぞれ発光する複数個の第2発光ダイオードとを備え、該第1発光ダイオード及び該第2発光ダイオードに供給する電流を制御することで明るさと色を変化させる点で共通する。
しかしながら、引用発明は「前記第1発光ダイオード及び前記第2発光ダイオードの明るさ及び色温度を、白熱電球の明るさ及び色温度に近い特性で制御するもの」であって、あくまで「前記調光コントローラ32から入力される調光信号における調光度L[%](5≦L≦100)に応じた光出力で可変出力の前記第1LED25が点灯するように前記第1定電流出力回路17aの出力電流を制御」することを前提として「前記調光制御部31は、色温度に違和感を与えないようにするため、明るさ5%付近の色温度が白熱電球と同じになるように前記第1LED25及び前記第2LED26の明るさの制御を行うものであって、前記調光度Lが下限の5%のとき、前記第1LED25の光出力を12にし、前記第2LED26の光出力を一定の40にしている」ものである。したがって、それに反して引用発明において引用文献3に記載された上記技術的事項を適用し、本願発明1のように「調光下限において前記点灯回路から全ての前記第1発光ダイオードに供給される駆動電流がゼロになるように、前記制御回路が前記点灯回路を制御」する構成とすることの動機付けが存在するということはできず、むしろ阻害要因があるというべきである。
よって、相違点3に係る本願発明1の事項は、当業者であっても引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、その他の相違点1-2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1-3に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に当業者であっても容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2013-207503(P2013-207503)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中川 真一
中村 泰二郎
発明の名称 照明装置  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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