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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  G06K
管理番号 1346502
審判番号 無効2017-800036  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-03-13 
確定日 2018-12-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3910705号発明「二次元コード、ステルスコード、情報コードの読み取り装置及びステルスコードの読み取り装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3910705号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件の特許第3910705号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成 9年11月28日 出願(特願平9-328040号)
平成19年 2月 2日 設定登録
平成29年 3月13日 本件無効審判請求
平成29年 6月 2日 審判事件答弁書
平成29年 7月28日 審理事項通知
平成29年 9月25日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成29年 9月26日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成29年10月10日 口頭審理
平成29年11月28日 審決の予告


第2.本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され、この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたことを特徴とする二次元コード。」


第3.請求及び主張の概要
1.請求人
(1)請求の趣旨
特許第3910705号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)無効理由
(ア)無効理由1
本件特許発明は、本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とされるべきである。
(イ)無効理由2
本件特許発明は、本件特許の出願日(平成9年11月28日)より前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とされるべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証:特開平5-233898号公報
甲第2号証:特開平8-263580号公報


2.被請求人
(1)答弁の趣旨
本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)証拠方法
乙第1号証:「知っておきたいバーコードの知識 新改訂版」p3-5,60,61、日本工業出版株式会社 バーコード編集部、平成9年3月31日


第4.当審の判断
当審は、請求人が主張する、本件特許発明が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないとする無効理由については成り立つと判断する。
理由は、以下のとおりである。

1.甲号証の記載事項
(1)甲第1号証について
本件特許出願の日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平5-233898号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 記録面に所定の着色領域が形成され、この領域に照射された光の反射光により記録情報の内容が判別される光学式カードにおいて、
上記領域を、一の波長の光に対する反射特性がそれぞれ異なる少なくとも三つの反射特性のうちの一の反射特性を有するようにしたことを特徴とする光学式カード。
【請求項2】 複数の単位領域に区画化された情報記録領域を有し、それぞれの単位領域が少なくとも三色のうちの一色に着色されていることを特徴とする光学式カード。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カルラコードなどマーク状に情報が記録された光学式カードおよびその読取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】カルラコードは、図4に示すように、携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白地あるいはこれに近い色に形成した情報記録領域2を、縦方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nに区分けするとともに、これら単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nをそれぞれ2×2の四つの単位領域a,b,c,dに区分けし、単位領域a,b,c,dのうちの任意の領域に光の反射率の低い黒色のマークMK(マーク有り)を付けあるいは黒色マークMKを付けない白色部(マーク無し)を設ける、これらの組合せでデータの記録または識別を行うものである。
【0003】カルラコードの各単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nにおける情報量を考察すると、隣接する四つの単位領域a,b,c,d毎に「マーク無し」,「マーク有り」の二つの状態が存在するため、2^(4) =16種類の情報の記録が可能である。」

(ウ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のカルラコードは、各単位情報記録領域2-1?2-nの一の単位領域に対しては、黒色の一種類のマークMKしか記録せず、読取装置もこれに応じて一種類の光によりマークMKがあるか否かを検出するように構成しているため、記録密度に制約があり、多くの情報を記録する場合などは、情報記録領域2を拡大しなければならない。これでは、携帯用のカードのように大きさに制約があるものに対してカルラコードで情報を記録する場合、記録情報にも制約を受け、光学式カードの汎用性にも問題を生じてしまう。」

(エ)「【0009】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、限られた広さの中で実質的に記録密度を高めた光学式カードおよびその記録情報を高い信頼性かつ高い再現性を維持し、かつ容易に読み取れる読取装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では、記録面に所定の着色領域が形成され、この領域に照射された光の反射光により記録情報の内容が判別される光学式カードにおいて、上記領域を、一の波長の光に対する反射特性がそれぞれ異なる少なくとも三つの反射特性のうちの一の反射特性を有するようにした。
【0011】また、本発明のカードは、複数の単位領域に区画化された情報記録領域を有し、それぞれの単位領域が少なくとも三色のうちの一色に着色されている。」

(オ)「【0015】
【作用】本発明の光学式カードによれば、単位情報記録領域に記録される情報の種類が多くなり、実質的に一単位記録領域当たりの記録密度が向上する。
【0016】本発明の光学式カードによれば、単位情報記録領域が多色化されているので、記録される情報の種類が多くなり、実質的に一単位記録領域当たりの記録密度が向上する。」

(カ)「【0020】
【実施例】図1は、本発明に係る光学式カードを示す図であって、従来例を示す図2(当審注:図4の誤記と認める。)と同一構成部分は同一符号をもって表す。すなわち、1は光学式カード、2は情報記録領域、2-1,2-2,2-3,…,2-nは単位情報記録領域、a,b,c,dは単位情報記録領域2-1,2-2,2-3,…,2-nをそれぞれ2×2のマトリクス状に区分けした単位領域、MK1は第1のマーク、MK2は第2のマーク、MK3は第3のマークをそれぞれ示している。
【0021】第1のマークMK1は、たとえば赤色の塗料インクを所定の単位領域a?dに対して印刷することにより形成されている。この赤色の第1のマークMK1は、たとえば波長6500オングストローム(Å)近傍の波長帯の光に対する反射率が高く、他の波長帯の光に対する反射率が低い、すなわち吸収率が高い。
【0022】第2のマークMK2は、たとえば緑色の塗料インクを所定の単位領域a?dに対して印刷することにより形成されている。この緑色の第2のマークMK2は、たとえば波長5200Å近傍の波長帯の光に対する反射率が高く、他の波長帯の光に対する反射率が低い、すなわち吸収率が高い。
【0023】第3のマークMK3は、たとえば赤色と緑色との混合である黄色の塗料インクを所定の単位領域a?dに対して印刷することにより形成されている。この黄色の第3のマークMK3は、たとえば波長6500Å近傍の波長帯の光および波長5200Å近傍の波長帯の光に対して、ともに反射率が低い、すなわち両光に対して吸収率が高い。
【0024】このように、本実施例の光学式カード1は、従来のカードのようにマークMKとして黒色の一色ではなく、赤色と緑色と黄色の三色を用いて、いわゆる多色刷りのパターンを有するカードとして構成している。この構成により、一の単位領域に対して2値の情報ではなく、3値の情報を与えることができ、隣接する四つの単位領域から構成される一単位情報記録領域に対して4^(4) =256種類の情報の記録が可能となっている。」

(キ)「【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光学式カードによれば、従来の光学式カードに比べて、単位情報記録領域当たりの記録密度の向上を図れる利点がある。また、本発明の読取装置によれば、上記光学式カードに記録された情報を、容易にかつ高い信頼性および高い再現性を維持し精度よく読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学式カードの一実施例を示す図である。
【図2】図1の光学式カードの読取装置における情報読取部の要部を模式的に示す図である。
【図3】図2の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】カルラコードの説明図である。
【図5】従来の読取動作の説明図である。
【符号の説明】
1…光学式カード
2…情報記録領域
2-1?2-n…単位情報記録領域
a,b,c,d…単位領域
MK1…第1のマーク
MK2…第2のマーク
MK3…第3のマーク
11…第1の光源
12…第2の光源
13…光源制御部
14…フォトディテクタ
15…レンズ
16…制御部
17…メモリ」

(ク)



(ケ)



・上記(イ)、及び図4の記載によれば、従来のカルラコードは、携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白地に形成した情報記録領域2を、縦方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2-1、2-2、2-3、…、2-nに区分けし、単位情報記録領域2-1、2-2、2-3、…、2-nそれぞれを2×2の四つの単位領域a、b、c、dに区分けし、単位領域a、b、c、dのうちの任意の単位領域に、光の反射率の低い黒色のマークMK(マーク有り)を付けあるいは黒色マークMKを付けない白色部(マーク無し)を設け、これらの組合せでデータの記録または識別を行うものであって、各単位情報記録領域は、隣接する四つの単位領域a、b、c、d毎に「マーク無し」、「マーク有り」の二つの状態が存在するため、2^(4) =16種類の情報の記録が可能なものである。
・上記(カ)の段落【0020】-【0023】には、光学式カードの、従来と同じ単位情報記録領域2-1を2×2のマトリクス状に区分けした単位領域a、b、c、dに対して、赤色の第1のマークMK1、緑色の第2のマークMK2、黄色の第3のマークMK3のいずれかを印刷することが記載されているといえる。
さらに、上記(カ)の段落【0024】には、赤色と緑色と黄色の三色のマークを用いて、一の単位領域に対して3値の情報を与えることができ、隣接する四つの単位領域から構成される一単位情報記録領域に対して4^(4) =256種類の情報の記録が可能となっていることが記載されており、ここで、3^(4)ではなく4^(4)となっているのは、上記(イ)の従来のコードにおいては黒色マークとマークなしの白色(無色)での組み合わせで情報を識別していることを鑑みれば、赤色と緑色と黄色の三色に白色(無色)を加えた4色を、一の単位領域に対して与えているためと認められる。
してみると、甲第1号証には、従来のカルラコードの各単位情報記録領域2-1、2-2、2-3、…、2-nを、マトリクス状に2×2の四つの単位領域a、b、c、dに区分けし、該単位領域に対して、赤色の第1のマークMK1、緑色の第2のマークMK2、黄色の第3のマークMK3のいずれかを印刷し、赤色と緑色と黄色の三色に加え白色(無色)の4色で4値の情報を一の単位領域に対して与え、2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの記録領域からなる一の単位情報記録領域2-1では4^(4) =256種類の情報の記録が可能なこと、が記載されているといえる。

上記各記載及び図面並びにこの技術分野の技術常識を考慮すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「携帯用光学式カード1などの表面の所定領域を白地に形成した情報記録領域2を、縦方向に等間隔で複数の単位情報記録領域2-1、2-2、2-3、…、2-nに区分けし、単位情報記録領域2-1、2-2、2-3、…、2-nそれぞれを、マトリクス状に2×2の四つの単位領域a、b、c、dに区分けし、各単位情報記録領域は、隣接する四つの単位領域a、b、c、d毎に「マーク無し」、「マーク有り」の二つの状態を記録するカルラコードにおいて、
隣接する四つの単位領域a、b、c、dに対して、赤色の第1のマークMK1、緑色の第2のマークMK2、黄色の第3のマークMK3のいずれかを印刷し、
赤色と緑色と黄色の三色のマークに加え白色(無色)の4色で4値の情報を一の単位領域に対して与えることで、2×2のマトリクスを形成する隣接する四つの単位領域からなる一の単位情報記録領域2-1では4値の組み合わせで4^(4) =256種類の情報の記録が可能なコード。」

(2)甲第2号証について
本件特許出願の日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平8-263580号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は小さなスペースに大量の情報を表示することができる識別コードマークに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、物を認識する識別コードマークとして「バーコード」と呼ばれる1次元のものと、黒と白の方形図形a,bを図1に示すように架空のます目(実際には表示されない)A内に市松状にマトリックス表示した「2次元コード」が知られているが、もっとスペース効率の良い識別コードマークの出現が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、小さいスペースで表示し得る情報量を飛躍的に向上することが出来る疑似3次元識別コードマーク、即ち、恰も高さ方向にもコード表示素子を配置したと同じ情報量を表示し得る識別コードマークを得ることを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、最近の画像処理技術が形状、色調、色彩をそれぞれ識別し得るようになったことによりなされたもので、第1の発明は、単位図形をマトリックス状に配置した2次元コード識別コードマークにおいて、単位図形を2種以上の色調又は色彩で表示するようにしたことを特徴とする識別コードマークである。」

(イ)「【0007】
【作用】第1?第3の発明によると、恰も3次元コードのように、表示し得る情報量を飛躍的に向上することができる。
【0008】
【実施例】図2は本発明の実施例1を示すもので、黒の単位図形1,1’の形状は従来の2次元コードと同じであるが、色調を2種類としたものである。なお色彩を例えば赤、黒の2種類としても同じであるが、この構成によると、図1に示す従来の2次元コードによって表示される情報の種類が2の4乗=16種類であったものが、3の4乗=81種類と飛躍的に向上する。
【0009】図3は本発明の実施例2を示すもので、単位図形を丸2と四角3の2種類を単位図形とし、且つ2種類の色調(濃淡)又は色彩(赤と黒)としたもので、この場合は5の4乗=625種類の情報を表示出来る。
【0010】
【異なる実施例】以上、理解を容易にするため、単純構成の2つの実施例を例示したが、図形の種類、色彩の種類及びマトリックス状に配置する単位図形の数等を増加することにより、恰も3次元コードのように表示し得る情報量が飛躍的に増大した識別コードマークが得られる。」

(ウ)「【図面の簡単な説明】
【図1】従来の2次元コードの識別コードマークの一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1を示す図である。
【図3】本発明の実施例2を示す図である。
【符号の説明】
1,1’ 黒の四角の単位図形
2,2’ 丸の単位図形
3,3’ 黒の四角の単位図形」

(エ)



・上記(ア)の段落【0002】、及び図1には、従来から、黒と白の方形図形a、bを、2×2のマトリックスを構成する架空のます目に割り当てた2次元コードが知られていた、ことが記載されている。
そして、上記(イ)の段落【0008】、及び図2には、白の方形図形bに加え、従来の2次元コードと同じ形状の、図2おいては黒であるが色彩は赤と黒の2種類である単位図形1、1’を、2×2のマトリックスを構成する架空のます目に割り当てることで、表示される情報の種類を3の4乗=81種類としたことが記載され、ここで、マトリックスにおける色の組み合わせが個々の情報を表すもので有り、これは、従来の2次元コードを改良した2次元コードといえる。
したがって、甲第2号証には、2×2のマトリックスを構成する架空のます目に、白、黒、赤の図形を割り当てることで、表示される情報の種類を3の4乗=81種類とした2次元コードが記載されているといえる。

上記各記載及び図面並びにこの技術分野の技術常識を考慮すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「2×2のマトリックスを構成する架空のます目に、白、黒、赤の図形を割り当てることで、表示される情報の種類を3の4乗=81種類とした2次元コード。」


2.対比・判断
(1)無効理由1について
(ア)対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、
ア.甲1発明の「単位領域」は、「赤色」、「緑色」、「黄色」、「白色(無色)」のいずれかの色が印刷されており、一の波長の光に対する反射特性がそれぞれ異なるから、本件特許発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域」に相当する。

イ.甲1発明の「単位情報記録領域」それぞれは、「単位領域a、b、c、d」が「2×2のマトリクス」に配置されたものであり、「2×2のマトリクス」は二次元的な配列であるから、「単位領域」を「二次元的な配列で並べて形成」したものと認められる。
さらに、「単位情報記録領域」を構成する各「単位領域」には、「赤色と緑色と黄色の三色のマークに加え白色(無色)の4色」のうちの一つの色が与えられ、「2×2のマトリクス」における「単位領域」の「色」の組み合わせで「4^(4 )=256種類」の「情報」の区別ができ、「256種類」の「情報」の表示が可能なものであるから、甲2発明において「単位情報記録領域」の「単位領域」の「色」の組み合わせにより情報を記録することは、本件特許発明の「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたこと」に相当する。

ウ.そして、甲1発明の「コード」は、複数の「単位領域」を「2×2のマトリクス」に二次的配置したものであり、「単位領域」の「色」の組み合わせにより情報を記録するものであるから、二次元のコードであるといえるから、本件特許発明の「二次元コード」に相当する。

よって、本件特許発明と甲1発明は、

「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され、この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした二次元コード。」

の発明である点で一致し、両者に相違するところはない。

したがって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に該当するといえるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許をうけることができない。


(イ)被請求人の主張
被請求人は、答弁書(3頁15行-8頁14行)において、甲1発明が本件特許発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され」(以下、「構成要件A」という。)及び「ことを特徴とする二次元コード」(以下、「構成要件C」という。)を有していないから、本件特許発明は新規性を有し、無効理由はないと主張する。
その理由としては、以下の(a)、(b)を主張している。
(a)本件特許発明の構成要件A及びCの「二次元」の意義については、縦(垂直)方向及び横(水平)方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素とすることを意味する(答弁書4頁6-8行)。
本件特許発明の構成要件A及びCの「二次元」とは、単に表示領域が縦(垂直)方向及び横(水平)方向に幾何学的に組み合わされていることではなく、この組み合わせにより縦(垂直)方向及び横(水平)方向の二方向に情報表示の要素を有することを意味する(陳述要領書3頁11-14行)。
これに対して、甲1発明のコードは、4つの単位領域を有する単位情報記録領域が2×2の単位領域で構成されているものの、情報記録領域は水平方向のみにしか情報表示の要素を有しない点で、「二次元」コードとはいえないもので、情報の構造という意味では一次元のコードである。甲1発明のコードの情報の読み取り単位である単位情報記録領域は幾何学的には二次元形状であるものの、複数の単位情報記録領域で形成されるコード自体は、複数の単位情報記録領域が水平方向に並べられ、水平方向に順次読み込まれるものであるから、このコードの情報表示の要素は水平方向のみ(一次元)であり、単位情報記録領域の垂直方向及び水平方向の表示領域の組み合わせを情報表示の要素とするものではない(答弁書4頁11行-5頁3行)。
(b)本件特許出願当時において、二次元コードにおける構造情報の重要性が既に認識されており、当業者にとっては、「コード」に関する発明において、コードとは有意情報と構造情報の双方を含む独立コードを意味するのが一般的であった。そして、構造情報となる切り出しシンボルが設けられ、コード自体で上下左右を確定できるQRコードの開発後の平成9年に出願された本件特許発明においても、本件特許発明の構成要件Cに係る「コード」は独立コードを意味するものである(答弁書6頁17-22行)。
本件特許出願当時において、発明としての「コード」が読み取り機器や媒体から独立して単独して有用であるコードを意味することは当業者における技術常識であった。したがって、このような技術常識に照らして、本件特許発明における「コード」が有意情報のみでなく読み取りに必要な取り決めをも有するコードを意味するということは自明の理なのである(陳述要領書6頁4-10行)。
それに対し、「田」の字の単位情報記録領域の連続からなる甲1発明のコードは、有意情報のみを含むものであって、それ自体で上下左右を識別することはできず、当該コードは、光学式カードの記録面に形成されて初めて上下左右が確定し読み取りが可能となるものであって、「光学式カード」に印刷されることを必須の構成とする発明であって、独立コードの発明ではない(答弁書7頁18行-8頁尾14行)。

(ウ)上記(a)、(b)の主張について判断する
(a)について
上記(a)の主張における「二方向に情報表示の要素を有する」に関して、被請求人は口頭審理において、「情報表示の要素は甲第1号証の単位記録領域に相当し、単位記録領域が複数二方向にあることを表している」と主張している(調書の被請求人の3)。
ここで、甲第1号証には段落【0015】に「【作用】本発明の光学式カードによれば、単位情報記録領域に記録される情報の種類が多くなり、実質的に一単位記録領域当たりの記録密度が向上する。」、及び段落【0016】に「本発明の光学式カードによれば、単位情報記録領域が多色化されているので、記録される情報の種類が多くなり、実質的に一単位記録領域当たりの記録密度が向上する。」とあり、「単位記録領域」と「単位情報記録領域」は同じ領域を指す用語と認められる。
そして、確かに、甲第1号証の「単位記録領域」(「単位情報記録領域」)における「単位領域」の「色」の組合わせが、本件特許発明の「情報表示の要素」に相当するといえる。
しかしながら、本件特許発明の特許請求の範囲には、「表示領域を二次元的な配列で並べ」ることは記載されているが、「情報表示の要素」の個数や配置に関する記載はなく、本件特許発明に係る明細書の段落【0048】には「二次元コードは二次元に配列した表示領域(黒又は白で塗り分けられる最少表示単位)の組み合せにより情報を表示するもので、PDF417、カルラコード等が知られている。」と記載されており、本件特許発明は、「情報表示の要素」が一つのものも含むものであることは明らかであり、「単位記録領域が複数二方向にある」という主張は認められない。
したがって、上記(a)の主張は採用できない。

(b)について
被請求人が主張するように、「一次元コード」の「バーコード」及び「二次元コード」の「QRコード」には、有意情報に加え、読み取りに必要な取り決めを有すると認められるが、被請求人の答弁書6頁にも記載されるように、カルラコードには構造情報を含まないものもあること、また、平成6年に開発されたQRコードにおいて構造情報が含まれるようになったことを鑑みれば、平成6年以前の二次元コードには構造情報を含まないものもあるといえ、このような構造情報を含まない二次元コードが、本件特許の出願時である平成9年当時存在していたものと認められることから、平成9年当時においては、「二次元コード」が読み取りに必要な取り決めの情報を有するものと、有しないものが併存していたことが技術常識であると認められる。
そして、本件特許発明に係る明細書には、本件特許発明の二次元「コード」が読み取りに必要な取り決め(構造情報)を含むことは記載されおらず、本件特許発明における「コード」が有意情報のみでなく、読み取りに必要な取り決め(構造情報)をも有する「コード」を意味することが自明であるとはいえない。
したがって、本件特許発明の「二次元コード」は、甲1発明と同様なコード内に「構造情報」を含まない有意情報のみの「コード」も含むものといえる。
したがって、上記(b)の主張も採用できない。


(2)無効理由2について
(ア)対比
本件特許発明と甲2発明とを対比する。
ア.甲2発明の「架空のます目」は、「白、黒、赤の図形を割り当てる」ものであり、異なる色では反射の波長特性は異なることから、本件特許発明の「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域」に相当する。

イ.甲2発明の「2×2のマトリックス」は、「架空のます目」を「2×2のマトリクス」で構成したものであり、「2×2のマトリックス」は二次元的な配列であるから、「架空のます目」を「二次元的な配列で並べて形成」したものと認められる。
さらに、甲2発明は、「2×2のマトリックス」を構成する「架空のます目」に、「白、黒、赤の図形を割り当てることで、表示される情報の種類を3の4乗=81種類とした」ものであるから、甲2発明の「2×2のマトリックス」における「架空のます目」の「色」の組み合わせにより情報を記録することが、本件特許発明の「この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素としたこと」に相当する。

ウ.そして、甲2発明の「2次元コード」は、本件特許発明の「二次元コード」に相当する。

よって、本件特許発明と甲2発明は、

「反射又は放射の波長特性が異なる3種以上の表示領域を二次元的な配列で並べて形成され、この配列における表示領域の波長特性の組み合せを情報表示の要素とした二次元コード。」

の発明である点で一致し、両者に相違するところはない。

したがって、本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明に該当するといえるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許をうけることができない。

(イ)被請求人の主張
被請求人は、答弁書(8頁20行-9頁24行)において、甲2発明が本件特許発明の構成要件Cを有していないから、本件特許発明は新規性を有し、無効理由はないと主張する。
その理由としては、上記「(1)甲1発明について」の「(イ)被請求人の主張」の「(b)」における「独立コード」でないと同様の趣旨の主張であり、上記「(1)甲1発明について」の「(ウ)上記(a)、(b)の主張について判断する」の「(b)について」と同様の理由で該主張は採用できない。


3.まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明であるから、この特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものある。
したがって、無効すべきものである。


第5.むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由1、無効理由2には理由があるから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-01 
結審通知日 2018-03-05 
審決日 2018-03-19 
出願番号 特願平9-328040
審決分類 P 1 123・ 113- Z (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
山澤 宏
登録日 2007-02-02 
登録番号 特許第3910705号(P3910705)
発明の名称 二次元コード、ステルスコード、情報コードの読み取り装置及びステルスコードの読み取り装置  
代理人 根本 浩  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 古庄 俊哉  
代理人 古庄 俊哉  
代理人 手代木 啓  
代理人 平野 惠稔  
代理人 ▲高▼梨 義幸  
代理人 平野 惠稔  
代理人 手代木 啓  
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