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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B |
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管理番号 | 1346503 |
審判番号 | 不服2018-2060 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-14 |
確定日 | 2018-12-11 |
事件の表示 | 特願2014- 42574「透明導電体およびこれを用いたデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-170404、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月5日の出願であって、平成29年6月27日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月30日付けで手続補正書及び意見書の提出がされ、同年11月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献> 1.特開2014-7147号公報 2.国際公開第2012/005205号(周知技術を示す文献) 3.特開2008-34473号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2008-507001号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成29年8月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 透明な基体と、 前記透明な基体上に形成され、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層と、 前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層と、 前記酸化グラフェン層に接触して形成された電気絶縁性の樹脂層と を具備する透明導電体。 【請求項2】 前記金属ナノワイヤ層と前記酸化グラフェン層と前記電気絶縁性の樹脂層とを含む積層 構造は、パターン化されている請求項1に記載の透明導電体。 【請求項3】 前記酸化グラフェン層の中または表面に金属ナノ粒子が含まれている請求項1または2 に記載の透明導電体。 【請求項4】 前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである請求項1?3のいずれか1項に記載の透明 導電体。 【請求項5】 前記電気絶縁性の樹脂層は、極性基を有する樹脂を含む請求項1?4のいずれか1項に 記載の透明導電体。 【請求項6】 さらに、前記透明な基体と前記金属ナノワイヤ層との間に酸化グラフェン層を具備する 請求項1?5のいずれか1項に記載の透明導電体。 【請求項7】 透明な第1基体、およびその表面に形成され、第1の方向に延びるパターン化された第1の導電層を含む第1配線基板と、 透明な第2基体、およびその表面に形成され、前記パターン化された第1の導電層に離間対向し、前記第1の方向に交差する第2の方向に延びるパターン化された第2の導電層を含む第2配線基板と、 前記第1基体および前記第1の導電層、ならびに前記第2基体および前記第2の導電層に接する電気絶縁性の樹脂層とを具備し、 前記第1の導電層および前記第2の導電層は、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層と、前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層とを含む位置決め用パネル。 【請求項8】 透明な第1基体、およびその表面に形成された第1導電層を含む透光性の第1支持体と、 第2基体、およびその表面に形成され、前記第1導電層に離間対向して配置された第2導電層を含む第2支持体と、 半導体層と、前記半導体層の両面に形成された第1の電極および第2の電極とを有し、 前記第1の電極が前記第1導電層に電気的に接続され、前記第2の電極が前記第2導電層に電気的に接続されて、前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置された発光素子と、 前記第1導電層および前記第2導電層に接する電気絶縁性の樹脂層とを具備し、 前記第1導電層は、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層と、前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層とを含む発光デバイス。 【請求項9】 透明な第1基体、およびその表面に分割して形成された導電層を含む透光性の第1支持体と、 前記導電層に離間対向して配置された第2支持体と、 半導体層と、前記半導体層の片面に分離して形成された第1の電極および第2の電極とを有し、前記第1の電極および前記第2の電極が前記分割して形成された導電層の各々に電気的に接続されて、前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置された発光素子と、 前記導電層および前記第2支持体に接する電気絶縁性の樹脂層とを具備し、 前記導電層は、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層と、前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層とを含む発光デバイス。 【請求項10】 前記発光素子が無機発光ダイオードである請求項8または9に記載の発光デバイス。」 第4 引用文献の記載、引用発明 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の記載がある。 (下線は、合議体が付した。以下、この審決中において同様である。) 「【請求項1】 基材と、 前記基材上に形成される第1の電極層と、 前記第1の電極層の上部及び/または下部に形成されるグラフェンオキサイド層とを含む透明電極。 【請求項2】 前記第1の電極層は、伝導体及び/または半導体で形成される請求項1に記載の透明電極。 【請求項3】 前記伝導体は、金属系材料、炭素系材料、金属酸化物材料及び電導性高分子よりなる群から選ばれる1種以上である請求項2に記載の透明電極。 【請求項4】 前記金属系材料は、Cu、Al、Ag、Au、Pt、Ni、Pd、Fe、Ti、Zn及びTiよりなる群から選ばれる1種以上である請求項3に記載の透明電極。 ・・・ 【請求項10】 前記第1の電極層は、シート、粒子、ナノワイヤ、ファイバ、リボン、チューブ及びグリッドよりなる群から選ばれる1種以上の形態を有する請求項1に記載の透明電極。 ・・・ 【請求項13】 請求項1の透明電極を備える電子材料。 【請求項14】 前記電子材料が、液晶表示素子、電子紙表示素子、光電素子、タッチスクリーン、有機EL素子、太陽電池、燃料電池、二次電池、スーパーキャパシ夕、電磁波遮蔽層及びノイズ遮蔽層である請求項13に記載の電子材料。」 「<実施例1> 【0060】 図4の構造を有する透明電極10を製造した。抵抗が?20Ω/□のAgナノワイヤを、前記ガラス基材11上にバーコーティング法で塗布し、厚さが数十nmの第1の電極層12を形成した。 【0061】 グラフェンオキサイドを水に分散させた後、該グラフェンオキサイド分散液を前記第1の電極層12上にスプレーコーティング法で、数十nm厚さのグラフェンオキサイド層13を含む透明電極10を製造した。 <実験例1> 【0062】 ・・・実施例1による透明電極の面抵抗(surface resistance)を4-pointprobeを用いて・・・に測定した。その結果を下記の表1に示す。 【0063】 ここで、R1は、Agナノワイヤが連結された部分での抵抗値であり、R2は、両方のAgナノワイヤが各々電導性高分子層とグラフェンオキサイド層とに分離した部分での抵抗値である。 【0064】 上記表1の結果から、従来のように、電導性高分子などの有機物から成るオーバーコーティング層を含む透明電極(比較例1)の場合、第1の電極層の抵抗値に比べて、R1の抵抗値は、約2.5倍増加したことが分かる。・・・ 【0065】 これに比べて、グラフェンオキサイド層を含む本発明による透明電極(実施例1)の場合、第1の電極層の面抵抗値とR1は、ほとんど差がなしに維持されることが分かる。これによって、伝導体である第1の電極層間には、グラフェンオキサイド層がその伝導体の特性をそのまま保持させることが分かる。また、R2での抵抗値は無限大であって、これは、完全に絶縁体の特性を示すと認められる。これによって、グラフェンオキサイド層が伝導体である第1の電極層間に位置し、絶縁体の役目を充実に遂行していることが分かる。 【0066】 ・・・ <比較例2> 【0067】 抵抗が?20Ω/□のAgナノワイヤをバーコーティング法でガラス基材上に塗布し、厚さが数十nmの第1の電極層を含む透明電極を製造した。比較例2は、グラフェンオキサイド層を含まないで、基材上に第1の電極層のみを含む透明電極であって、グラフェンオキサイド層の有無による効果を測定するために比較例として使った。 <実施例2> 【0068】 図5のような構造を有する透明電極10を製造するにおいて、抵抗が?20Ω/□のAgナノワイヤをバーコーティング法でガラス基材11上に塗布し、厚さが数十nmの第1の電極層12を形成した。 【0069】 グラフェンオキサイドを水に分散させた後、該グラフェンオキサイド分散液を前記第1の電極層12上にスプレーコーティング法で、数十nm厚さのグラフェンオキサイド層13を含む透明電極10を製造した。 <実験例2> 【0070】 比較例2及び実施例2による透明電極を用いて、グラフェンオキサイド層のコーティング前後の面抵抗を4-point Probeを用いて、透過率はHazemeterを用いて測定した。その結果を下記の表2に示す。 【0071】 上記表1(合議体注;「表1」は、「表2」の誤記と認める。)の結果のように、グラフェンオキサイド層を含む本発明による透明電極(実施例2)の場合、第1の電極層の面抵抗値とほとんど差なしに維持されることが認められた。また、透過率も第1の電極層の透過率と大きい差がないことが認められた。」 「 」 「 」 2.引用発明 引用文献1の記載(上記1.)、特に、請求項1-4及び10に特定される透明電極の発明の具体的態様に相当する実施例1の記載によれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガラス基材と、 前記ガラス基材上に銀ナノワイヤで形成される第1の電極層と、 前記第1の電極層の上部にグラフェンオキサイド水分散液を前記第1の電極層上にスプレーコーティングすることで形成されるグラフェンオキサイド層とを含む透明電極。」 3.引用文献2-4について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2-4には、以下の技術的事項が記載されている。 (1)引用文献2 ア 引用文献2には、以下の記載がある。 「[0037] 図3は、図1の透明導電層付き基体であるX電極用パターン化透明導電層付き基体(X電極用パターン化透明導電層フィルム)と、図2の透明導電層付き基体であるY電極用パターン化透明導電層付き基体(Y電極用パターン化透明導電層付きフィルム)を重ね合わせた正面図と断面図を示しており、X電極、Y電極のそれぞれのダミーパターン部が重ね合わされ、X電極、Y電極の隙間部分を埋めている。 また、X電極、Y電極の交差部分は、X電極、Y電極のそれぞれのブリッジ(連結部)が対応して絶縁層であるOCA(光学用透明粘着剤)を介し、X電極用、Y電極用それぞれのパターン化透明導電層付き基体(フィルム)が直角方向に重ね合わされて形成される。 [0038] 図4は、本発明の一実施形態であるの図3でX電極用パターン化透明導電層付き基体(フィルム)、Y電極用パターン化透明導電層付き基体(フィルム)のそれぞれの透明導電層付き基体(フィルム)を重ね合わせた積層体の断面図の一例を示している。 透明フィルム基体1上に形成された、電極部分の透明導電性被膜4、隙間部分の絶縁性ダミーパターン5、ブリッジを有したX電極用パターン化透明導電層付き基体(フィルム)上に、同様に電極部分の透明導電性被膜4、隙間部分の絶縁性ダミーパターン5、ブリッジを有したY電極用パターン化透明導電層付き基体(フィルム)がOCA(光学用透明粘着剤)2を介して積層され、さらにタッチパネルセンサー保護用のスクリーンパネルがY電極用パターン化透明導電層付き基体(フィルム)上に、OCA(光学用透明粘着材)を2介し積層されており、X-Y方式タッチパネルセンサーが形成されている。」 「 」 (なお、図4以外の図面の記載は省略する。) 「[0049] [透明導電層付き基体の構成材料] 以下に本発明で規定する透明導電層付き基体(フィルム)における各部分の構成、及び該透明導電層付き基体(フィルム)における透明導電層を作製するための、透明導電層用塗料に使用しうる原料、材料について記載し、さらにそれら原材料を用いた本願発明の透明導電層付き基体(フィルム)の製造方法について記載する。 ・・・ [0051] 本発明において透明基体上に形成されるパターン化された透明導電性領域は、バインダー樹脂及び導電性物質を含有する。 透明導電性物質の形状としては粒子状、繊維状、薄膜状等種々の形状のものが使用できる。 ・・・ [0052] 本発明で使用する微細な導電性物質としては繊維状のものがこのましく、その中でも分岐がなく、ほぐれやすく、かつ繊維状物質の均一な分布密度を得やすく、その結果繊維と繊維のからまりの間に大きな開口部を形成し、良好な光透過率を実現することができるワイヤー状のものが好ましい。このような形状をした導電性物質の例としては、・・・金属ナノワイヤーを挙げることができる。・・・ ・・・ [0054] ・・・ このような導電性を有する金属ナノワイヤーが透明基体上に適度な間隔を保ちながら互いに絡み合った状態を有し、導電網を形成することで、実質的に透明な導電網が可能である。具体的な金属種や軸長さ、アスペクト比等は使用目的等に応じて適宜定めればよい。 [0055] 本願発明の透明導電層付き基体の作製は、これら微細な導電性物質を分散した分散液を用いて透明基体上に透明導電層を形成し透明導電層付き基体を作製する。」 イ 上記記載によれば、引用文献2には、金属ナノワイヤを有するパターン化透明導電層電極用付き基体が、絶縁層であるOCA(光学用透明粘着剤)を介して積層された構造を有するタッチパネルセンサーが記載されていると認められる。 (2)引用文献3 ア 引用文献3には、以下の記載がある。 「【0012】 ・・・ (第1の実施の形態) ・・・ 【0013】 本実施の形態の面状光源は、互いに対向し、かつ両側に電極を有する複数のLED11Bチップと、LEDチップ11Bを上下から挟んでLEDチップ11Bと電気的に接続する一対のフレキシブル基板10a,10bと、フレキシブル基板に挟まれた領域を充填する充填層15を備えている。 【0014】 LEDチップ11Bは、図3(a)に示すように、・・・光透過性を有する導電性成長基板110aの上に・・・n型層115、発光層116及びp型層117を下からこの順に形成することにより得られ、発光層116から青色光又は紫外光を発光する。・・・LEDチップ11Bには、・・・導電性酸化物や、光透過性を有する程度の厚さで形成した・・・金属積層体からなるp電極110p及びn電極110nが互いに対向してLEDチップ11Bの両側に形成されている。・・・ 【0015】 フレキシブル基板10a,10bは、・・・図2に示すように、コア101a,101bと、コア101a,101bの一方の面に形成された配線102a,102bと、コアの他方の面に形成された蛍光体膜103a,103bとを有している。 コア101a,101bの材質としては、光透過性を有するポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)又は液晶ポリマーが挙げられるが、耐熱性の観点から、ポリイミドを用いることが望ましい。 【0016】 配線102a,102bの材質としては、上記の導電性酸化物や、光透過性の金属積層体が挙げられるが、光取り出しの観点から、ITOを用いることが好ましい。この配線102a,102bをLEDチップの電極と導電性の透明接着剤を介して接合させることにより、LEDチップ11と外部電力源と配線102a,102bを介して電気的に接続される。 【0017】 ・・・ 充填層15は、シリコンゴム又はフッ素ゴム等の弾性体からなる。・・・ 【0018】 上記の構成を有する本実施の形態の面状光源によれば、その厚みは、LEDチップと一対のフレキシブル基板の厚みのみに依存するため、厚みを薄くすることができる。その上、フレキシブル基板を用いることにより、衝撃や熱応力が発生してもフレキシブル基板でこれらを吸収することができるので、高信頼性の面状光源を得ることができる。 【0019】 また、一対の電極を互いに対向して両側に形成したLEDチップを用いて面状光源を形成したので、一方のフレキシブル基板にLEDチップを搭載した後、これと他方のフレキシブル基板とを位置合わせしてLEDチップと接合させるだけで面状光源を形成することができるので、製造工程が簡便となる。」 「 」 (なお、図2以外の図面の記載は省略する。) イ 上記記載によれば、引用文献3には、光透過性を有する導電性成長基板の上にn型層、発光層、p型層を下から順に形成して得られたLED、及び、その両側の電極を有する複数のLEDチップと、LEDチップを上下から挟んでLEDチップと電気的に接続する一対のフレキシブル基板と、フレキシブル基板に挟まれた領域を充填する充填層を備えている面状光源が記載されていると認められる。 (3)引用文献4 ア 引用文献4には、以下の記載がある。 「【請求項1】 第1透明板; 前記第1透明板と対向して所定間隔で離隔して形成される第2透明板; 多数のLED; 前記第1透明板の両面中に前記第2透明板に対向する面にコーティングして形成されて、前記各LEDの電極中のいずれか一つの電極が所定間隔で離隔してすべて接続されて一地点に電源の供給を受けるカソード電源供給部が形成されたカソード面と、前記各LEDの他の電極がそれぞれ接続されて一地点に電源の供給を受けるアノード電源供給部が形成された多数のアノード面と、に分割された少なくとも一つの閉回路面を形成する透明電極; 前記透明電極と前記第2透明板間に充填される透明材質の充填材; 前記アノード電源供給部と接続され、前記カソード面及びアノード面の電源供給を制御することで前記LEDを点滅させるコントローラー; を含むことを特徴とする透明電光板。 ・・・ 【請求項6】 前記透明電極の分割された隙間には、電源の両極が短絡されることを防ぐ非伝導性接着剤が充填されたことを特徴とする請求項1乃至4中のいずれか1に記載の透明電光板。」 イ 上記記載によれば、引用文献4には、第1透明板;前記第1透明板と対向して所定間隔で離隔して形成される第2透明板;多数のLED;前記第1透明板の両面中に前記第2透明板に対向する面にコーティングして形成されて、前記各LEDの電極中のいずれか一つの電極が所定間隔で離隔してすべて接続されて一地点に電源の供給を受けるカソード電源供給部が形成されたカソード面と、前記各LEDの他の電極がそれぞれ接続されて一地点に電源の供給を受けるアノード電源供給部が形成された多数のアノード面と、に分割された少なくとも一つの閉回路面を形成する透明電極;前記透明電極と前記第2透明板間に充填される透明材質の充填材;前記透明電極の分割された隙間に充填される、電源の両極が短絡されることを防ぐ非伝導性接着剤;前記アノード電源供給部と接続され、前記カソード面及びアノード面の電源供給を制御することで前記LEDを点滅させるコントローラー;を含む透明電光板が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「ガラス基材」は本願発明1における「透明な基体」に相当し、電極は導電体であるから、引用発明の「透明電極」は本願発明1における「透明導電体」に相当する。 イ 引用発明における「銀ナノワイヤ」は、本願発明1における「金属ナノワイヤ」に相当し、引用発明の「ガラス基材上に銀ナノワイヤで形成される第1の電極層」は、本願発明1における「透明な基体上に形成され(る)金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層」に相当する。 また、引用発明において、第1の電極層には、銀ナノワイヤは「複数」含まれると認められる。 ウ 引用発明における「グラフェンオキサイド」と本願発明1における「酸化グラフェン」は同義である。 そして、引用発明における「第1の電極層の上部にグラフェンオキサイド水分散液を前記第1の電極層上にスプレーコーティングすることで形成されるグラフェンオキサイド層」は、本願発明1における「酸化グラフェン層」に相当するところ、引用文献1の「第1の電極層がナノワイヤ形態の場合、さまざまな原因によってナノワイヤ同士の接触が不良で抵抗が増加する場合、前記グラフェンオキサイド層を第1の電極層の上部にコーティングすると、・・・グラフェンオキサイド層がナノワイヤを堅く覆うことによって第1の電極層の面抵抗を減少させる」(【0052】)なる記載からも明らかなとおり、銀ナノワイヤで形成される第1の電極層は、グラフェンオキサイド水分散液のスプレーコーティングによって、グラフェンオキサイド層に覆われることになるから、本願発明1の「金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「透明な基体と、 前記透明な基体上に形成される複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層と、 前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層 を具備する透明導電体。」 <相違点1> 本願発明1では、金属ナノワイヤ層に含まれる複数の金属ナノワイヤについて、「互いに一部が融合している」と特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定はない点。 <相違点2> 本願発明1では、透明導電体が「酸化グラフェン層に接触して形成された電気絶縁性の樹脂層を具備する」のに対し、引用発明の透明電極(透明導電体)は、グラフェンオキサイド層(酸化グラフェン層)に接触して形成された電気絶縁性の樹脂層を具備していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討する。 引用文献1には、表1の実施例1に、抵抗が?20Ω/□の銀ナノワイヤから形成される第1の電極層(本件発明1の「金属ナノワイヤ層」に相当する。)自体の面抵抗値が20Ω/□であり、当該第1の電極層の上にグラフェンオキサイド層が設けられた部分の面抵抗値R1が?20Ω/□であることが示されており、これを受けて、【0065】には、「グラフェンオキサイド層を含む本発明による透明電極(実施例1)の場合、第1の電極層の面抵抗値とR1は、ほとんど差がなしに維持されることが分かる。これによって、伝導体である第1の電極層間には、グラフェンオキサイド層がその伝導体の特性をそのまま保持させることが分かる。」と記載されている。 (なお、引用文献1の表2には、抵抗が?20Ω/□の銀ナノワイヤを用いた第1の電極層のみを有する比較例2の透明電極と、第1の電極層上にグラフェンオキサイド層が形成されている実施例2の透明電極を用いて、グラフェンオキサイド層のコーティング前後の面抵抗を測定した結果が示されており、これを受けて、【0071】には、「グラフェンオキサイド層を含む本発明による透明電極(実施例2)の場合、第1の電極層の面抵抗値とほとんど差なしに維持されることが認められた。」と記載されている。) そして、上記の引用文献1の記載によれば、グラフェンオキサイド層の有無に関わらず、第1の電極層の面抵抗はほとんど変化しておらず、このことから、実施例1のものは、第1電極層にグラフェンオキサイド層が設けられているにもかかわらず、銀ナノワイヤが互いに融合し面抵抗が低下(導電性が向上)したものではないことが理解できる。すなわち、引用発明の「ガラス基材上に銀ナノワイヤで形成される第1の電極層」に含まれる複数の銀ナノワイヤは、「互いに一部が融合している」ものではないということができる。 そこで、引用発明の透明電極において、第1の電極層に含まれる複数の銀ナノワイヤを、「互いに一部が融合している」ものとすることが当業者が容易に想到し得たことであるといえるかについて検討する。 引用文献1には、引用発明における(複数の銀ナノワイヤで形成される)第1の電極層を、銀ナノワイヤが「互いに一部が融合」したものとすることを示唆する記載はない。また、引用文献2?4を参酌しても、これらの引用文献には、上記第4の3.に記載した技術的事項が記載されているのみで、引用発明の第1の電極層を、銀ナノワイヤが「互いに一部が融合」したものとすることを示唆する記載はない。 そうすると、引用文献1?4から、引用発明を相違点1にかかる本願発明1の構成を備えたものとすることについて、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 しかも、本願発明1では、金属ナノワイヤ層が、「互いに一部が融合」している複数の金属ナノワイヤを含むことにより、「金属の量は少ないものの全体として高い導電性を示す」(本願明細書の【0012】)という、引用文献には記載のない効果が期待できる。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1について、引用発明、すなわち、引用文献1に記載の発明及び引用文献1-4に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2.本願発明2-10について (1)本願発明1と本願発明2-10の関係について 独立請求項に係る発明に関し、本願発明1は透明導電体に関する発明であり、本願発明7は位置決め用パネルに関する発明であり、本願発明8、9は発光デバイスに関する発明であるが、いずれも、本願発明1と同様に、「透明な(第1)基体」と、「前記透明な基体上(表面)に形成され、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層」と、「前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層」と、「前記酸化グラフェン層に接触して(接して)形成された電気絶縁性の樹脂層」とを具備する導電体構造を有する点で、技術的に共通している。 (なお、本願発明7-9では、「電気絶縁性の樹脂層」と接するのは、「導電層」であるが、「導電層は、互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層」と、「前記金属ナノワイヤ層を覆う酸化グラフェン層」からなるから、「酸化グラフェン層」が、「電気絶縁性の樹脂層」に接することになる。) また、従属請求項に係る発明に関し、本願発明2-6は、本願請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項に係る発明であって、いずれも、本願発明1を減縮した発明に相当する。 より具体的には、本願発明2-6は、透明導電体について、「金属ナノワイヤ層と前記酸化グラフェン層と前記電気絶縁性の樹脂層とを含む積層構造は、パターン化されている」(本願発明2)、「酸化グラフェン層の中または表面に金属ナノ粒子が含まれている」(本願発明3)、「金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである」(本願発明4)、「電気絶縁性の樹脂層は、極性基を有する樹脂を含む」(本願発明5)、「透明な基体と前記金属ナノワイヤ層との間に酸化グラフェン層を具備する」(本願発明6)との特定がされている。 さらに、本願発明10は、本願請求項8又は9を引用する請求項に係る発明であって、本願発明8又は9を減縮した発明に相当し、より具体的には、発光デバイスについて「発光素子が無機発光ダイオードである」との特定がされている。 (2)本願発明2-6について (1)で記載したとおり、本願発明2-6は、本願請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項に係る発明であるところ、本願発明2-6と引用発明とは、少なくとも、上記1.(1)で記載した相違点1で相違している。 そして、相違点1についての判断は上記1.(2)で記載したとおりであり、本願発明2-6は、1.(2)で本願発明1について示したと同様の理由により、引用文献1に記載の発明及び引用文献1-4に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (3)本願発明7-10について (1)で記載したとおり、本願発明7-9は、本願発明1と、導電体構造の各層構成の点で技術的に共通する発明である上、いずれも、本願発明1の相違点1に係る構成である「互いに一部が融合している複数の金属ナノワイヤを含む金属ナノワイヤ層」との構成を備えている。 また、本願発明10は、本願請求項8又は9を引用する請求項に係る発明であって、本願発明8又は9を減縮した発明に相当し、本願発明1の相違点1に係る構成を備えている。 そうすると、本願発明7-10と引用発明とは、少なくとも、上記1.(1)で記載した相違点1で相違している。 そして、相違点1についての判断は上記1.(2)で記載したとおりであり、本願発明7-10は、1.(2)で本願発明1について示したと同様の理由により、引用文献1に記載の発明及び引用文献1-4に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-10は、いずれも、当業者が引用文献1に記載の発明及び引用文献1-4に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-28 |
出願番号 | 特願2014-42574(P2014-42574) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 牟田 博一 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 結城 佐織 |
発明の名称 | 透明導電体およびこれを用いたデバイス |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 井上 正 |