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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1346564
審判番号 不服2018-3885  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2018-12-19 
事件の表示 特願2014-551059「電気的接触子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日国際公開、WO2014/087906、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(本願)は、平成24年12月4日にされた特許出願及び平成25年1月9日にされた特許出願に基づく優先権を主張して平成25年11月27日にされた国際特許出願である。
本願について、平成29年5月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月14日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲についての補正がなされたが、同年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、査定の謄本が同年12月19日に送達された。これに対し、平成30年3月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正がされた。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし請求項9に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成30年3月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものである。
特に、本願発明1は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
検査対象物に当接させるコンタクト部と、
配線基板と導通させる端子部と、
上記コンタクト部及び端子部の間に設けられ、湾曲方向を予め定める湾曲形状を有する弾性変形部と、
ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持され、上記弾性変形部の湾曲により所定の方向へ傾けられる摺動部とを備え、
上記摺動部は、中間層が外層で挟まれ、積層面が長手方向に延びる積層構造を有し、その側面において、上記中間層が上記外層よりも上記所定の方向に向けて突出し、上記貫通孔の内面に対し、上記外層を押圧させることなく上記中間層を押圧させることを特徴とする電気的接触子。」

また、本願発明2ないし本願発明9は、本願発明1の構成を全て含む「電気的接触子」の発明である。

第3 原査定における拒絶理由の概要
この出願の請求項1ないし請求項9に係る発明は、以下の引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-178403号公報
引用文献2:特開2012-173263号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2012/0242363号明細書
引用文献4:国際公開第2007/017955号
引用文献5:特開2007-132681号公報
引用文献6:特開平3-209173号公報

第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1
引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(1) 段落0001
「【0001】
この発明は、LCDパネルなどを電気的に検査する際に用いられるプローブピンに関するものである。」

(2) 段落0014から段落0016まで
「【0014】
(実施の形態)
図1は、この発明の実施の形態であるプローブピンの概要構成を示す断面図である。このプローブピン10は、プランジャー1,2とコイルばね3とを有し、絶縁プレート4に収納される。絶縁プレート4は、プレート状の中間絶縁体5を有し、この中間絶縁体5は、被検査物の接触端子位置に対応した位置に円柱状の孔部8を有する。中間絶縁体5の上側および下側には、それぞれ上側絶縁体6および下側絶縁体7が層状に設けられ、孔部8と同軸であって孔部8の径に比して小さな径をもつ円形の上側開口部8aおよび下側開口部8bをそれぞれ有する。そして、孔部8と、上側開口部8aをもつ上側絶縁体6と、下側開口部8bをもつ下側絶縁体7とによって、プローブピン10を収納するホルダを形成する。
【0015】
プランジャー1は、被検査物に接触する先端側がくさび状の多層平板によって形成され、先端側が外部に突き出るように上側開口部8aに挿入され、上側開口部8aの径に比して大きな幅をもつ抜け止め部によって抜け止めされる。一方、プランジャー2は、検査装置側の接続端子と接触するために先端側が針状に形成された円柱状をなし、この先端側が外部に突き出るように下側開口部8bに挿入され、下側開口部8bの径に比して大きな径をもつ抜け止め部によって抜け止めされる。また、孔部8には、孔部8の径に比して小さな径をもつコイルばね3が挿入され、このコイルばね3の反力によってプランジャー1,2を反力によって外部に押し付けられた状態で、各プランジャー1,2が孔部8内で摺動できるように組み立てられる。なお、プランジャー2は、切削加工などによって形成された鉄系部材に、AuやRhなどのめっきを施して接触抵抗値の低減を図っている。
【0016】
図2は、プランジャー1の構成を示す斜視図であり、図3は、プランジャー1の正面図であり、図4は、プランジャー1の右側面図であり、図5は、プランジャー1の平面図である。図2?図5において、プランジャー1は、先端側がくさび状に形成された略帯状の平板である中心層11の両面に、補強層12,13が形成される。補強層12,13は、中心層11の形状とほぼ同じ形状の平板であって、中心層11の形状を縮小した形状である。したがって、先端側部分では、概ね錐状となる。コイルばね3と嵌合する中心層11のばね接合端部は、くさび状に形成され、コイルばね3との嵌合が容易に行えるようになっている。また、接合端部側には、上側開口部8aの径に比して大きな幅をもつ抜け止め部14が形成される。」

(3) 段落0018
「【0018】
ここで、プランジャー1は多層平板であるため、その断面が十字形状となる。したがって、図6に示すように、プランジャー1の摺動時に、プランジャー1の先端側と上側開口部8aと接触が安定するため、先端部の位置精度や摺動の安定性をもたせることができる。なお、図7に示すように、単層の平板の場合、上側開口部8aとの接触が線的になり、図6に示すような面的に広がった接触に比して、不安定なものとなる。」

上記(1)ないし(3)の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「被検査物に接触する先端側がくさび状の多層平板によって形成されるプランジャー1と、
検査装置側の接続端子と接触するために先端側が針状に形成された円柱状をなすプランジャー2と、
コイルばね3と、
被検査物の接触端子位置に対応した位置に円柱状の孔部8を有し、孔部8にコイルばね3が挿入される中間絶縁体5と、
中間絶縁体5の上側に設けられ、孔部8と同軸で孔部8の径に比して小さな径をもつ円形の上側開口部8aを有し、上側開口部8aにプランジャー1の先端側が外部に突き出るように挿入される上側絶縁体6と、
中間絶縁体5の下側に設けられ、孔部8と同軸で孔部8の径に比して小さな径をもつ円形の下側開口部8bを有し、下側開口部8bにプランジャー2の先端側が外部に突き出るように挿入される下側絶縁体7と、
を備え、
コイルばね3の反力によってプランジャー1、2を外部に押し付けた状態で、各プランジャー1、2が孔部8内で摺動できるように組み立てられており、
プランジャー1は、先端側がくさび状に形成された略帯状の平板である中心層11の両面に、中心層11の形状とほぼ同じ形状の平板であって中心層11の形状を縮小した形状である補強層12、13が形成された多層平板であって、その断面が十字形状であるため、摺動時にその先端側と上側開口部8aとの接触が、単層平板の場合のような線的な接触ではなく面的に広がった接触となって安定し、先端部の位置精度や摺動の安定性をもたせることができる、
LCDパネルなどを電気的に検査する際に用いられるプローブピン10。」

2 引用文献2
引用文献2には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。

(1) 段落0022から段落0023まで
「【0022】
図中の(a)に示したコンタクトプローブ100は、略直線状の細長い形状からなる本体部1の一端にコンタクト部2を形成した垂直型プローブである。本体部1及びコンタクト部2は、いずれも導電性材料からなり、検査対象物(不図示)に対し略垂直となるように本体部1を配置し、検査対象物上の電極端子にコンタクト部2を当接させて使用される。また、オーバードライブ時には、本体部1が弓形に弾性変形することにより、電極端子に対し、コンタクト部2を確実に接触させることができる。
【0023】
本体部1は、空隙10Sを介して主面を対向させた2枚の板状体10A,10Bと、これらの板状体10A,10Bの一端(後端)を互いに結合させた第1結合部11と、上記板状体10A,10Bの他端(前端)を互いに結合させた第2結合部12とによって構成される。また、コンタクト部2は、第2結合部12の先端(前端)に形成され、第2結合部12から突出する形状からなる。」

(2) 段落0032から段落0034まで
「【0032】
プローブユニット5は、配線基板50、ガイド板51,52、ガイド支持部53及びコンタクトプローブ100により構成される。配線基板50は、2以上のコンタクトプローブ100を支持する支持基板であり、コンタクトプローブ100に対応する2以上の電極端子50tが形成されている。ガイド板51は、2以上のガイド穴51hが形成され、電極端子50tを露出させるように、配線基板50に固着されている。ガイド板52は、空間を挟んでガイド板51と対向するように配置され、電極端子50tに対応する2以上のガイド穴52hが形成されている。ガイド支持部53は、配線基板50に固着されるとともに、ガイド板52を支持している。
【0033】
コンタクトプローブ100は、本体部1の上端が、ガイド板51のガイド穴51hに挿入され、配線基板50上の電極端子50tに接続されている。また、コンタクト部2が形成された本体部1の下端は、ガイド板52のガイド穴52hを貫通し、ガイド板52から突出している。ガイド穴51h,52hは、コンタクトプローブ100の両端付近においてコンタクトプローブ100を拘束し、その長手方向への移動を可能としつつ、当該長手方向に交差する方向への移動を規制している。
【0034】
つまり、コンタクトプローブ100は、その両端付近をガイド板51,52によって上下動可能に支持され、オーバードライブ時にガイド板51,52間の空間において、湾曲することができるとともに、当該湾曲により、コンタクトプローブ100の両端の位置がずれるのを抑制している。」

(3) 段落0043から段落0044まで
「【0043】
図6は、図4のコンタクトプローブ102のオーバードライブによる弾性変形の他の例を示した図である。図中の(a)には、オーバードライブ直前の状態が示され、図中の(b)には、オーバードライブ後の状態が示されている。図6を図4と比較すれば、コンタクトプローブ102の前端付近がガイド板52によって長手方向に移動可能に支持されている点で異なる。
【0044】
コンタクトプローブ102は、オーバードライブ前及びオーバードライブ後のいずれにおいても、第2結合部12がガイド板52のガイド穴52hの内周面と対向するように保持されている。つまり、オーバードライブ前の状態において、第2結合部12の後端がガイド板52よりも配線基板50側に位置している。このため、オーバードライブ時に、コンタクト部2が、電極端子300に対し略垂直に移動する。従って、電極端子300の面積が小さい場合に、コンタクト部2がスクラブすることによって、コンタクト部2が電極端子300と接触しなくなるのを防止することができる。」

上記(1)ないし(3)の記載によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。

「コンタクトプローブ100は、略直線状の細長い形状からなる本体部1の一端にコンタクト部2を形成した垂直型プローブであって、
検査対象物上の電極端子にコンタクト部2を当接させて使用され、
本体部1が、空隙10Sを介して主面を対向させた2枚の板状体10A、10Bと、これらの板状体10A、10Bの一端を互いに結合させた第1結合部11と、上記板状体10A、10Bの他端を互いに結合させた第2結合部12とによって構成され、オーバードライブ時には、弓形に弾性変形することにより、電極端子に対し、コンタクト部2を確実に接触させることができ、
コンタクト部2が形成された本体部1の下端は、プローブユニット5を構成するガイド板52のガイド穴52hを貫通し、ガイド板52から突出し、上下動可能に支持され、
オーバードライブ前及びオーバードライブ後のいずれにおいても、第2結合部12がガイド板52のガイド穴52hの内周面と対向するように保持されている。」

3 引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線及び訳文は合議体が付したものである。

(1) 段落0034から段落0035まで
「[0034] FIG. 1 illustrates a test system 100 for testing DUT 114 in which vertical, non-linear contact elements 112 can make pressure-based electrical connections with terminals 116 of DUT 114. The acronym DUT is short for "device under test," and DUT 114 in FIG. 1 can be one or more electronic devices. …(略)…
(訳文:図1は、垂直非線形の接触素子112が、DUT114の端子116と圧力ベースでの電気接続を形成することができる、DUT114試験用の試験システム100を示す。DUTは「被試験デバイス(device under test)」の頭文字であり、図1のDUT114は1つ又は複数の電子デバイスでありうる。…(略)…)
[0035] As shown in FIG. 1, test system 100 can include a tester 102 configured to control testing of DUT 114 and a contactor 106 configured to be an interface between tester 102 and DUT 114. …(略)…(訳:図1に示すように、試験システム100は、DUT114の試験を制御するように構成された試験器102と、試験器102とDUT114との間のインターフェースとなるよう構成された接触子106とを含みうる。…(略)…)」

(2) 段落0042
「[0042] As illustrated in FIGS. 2A and 2B, contact element 200 can comprise a first base end 202, a body 204, and a second base end 212. First base end 202 can be coupled to or otherwise held in contact with or proximity to a surface 122 of contactor 106 or a component of contactor 106. …(略)… Second base end 212 can comprise a contact tip 214 configured to make direct contact with a terminal 116 of DUT 114. As shown, body 204 can comprise multiple, elongate leaves 206. Each leaf 206 can deform elastically, plastically, or a combination of elastically and plastically. Opposite ends 208 of each leaf 206 can be coupled respectively to first base end 202 and second base end 212, and there can be a space 210 between each leaf 206. The first base 202, leaves 206, second base 212, and contact tip 214 can be electrically conductive.
(訳文:図2A及び図2Bで示されるように、接触素子200は、第1の端基部202と、本体204と、第2の端基部212とを含みうる。第1の端基部202は、接触子106の表面122又は接触子106の構成要素と結合され、或いは接触状態又はその近傍にて保持されうる。…(略)…第2の端基部212は、DUT114の端子116との直接接触を形成するように構成された接触先端部214を含みうる。図示されるように、本体204は、複数の、細長い板206を含みうる。各板206は弾性的に、可塑的に、又は弾性的と可塑的の組み合わせにおいて変形しうる。各板206の両端208はそれぞれ第1の端基部202と第2の端基部212とに結合され、各板206間には間隔210が設けられうる。第1の基部202、板206、第2の基部212及び接触先端部214は導電性とされうる。)」

(3) 段落0065から段落0076まで
「[0065] Contact elements 200 (including any variation of contact elements 200 discussed above such as contact elements 500, 600, 700, 800, 900, and/or 1000 ) can be made in any suitable manner. (…(略)…) FIGS. 11A-14 illustrate an example of a lithographic process for making contact elements 200. …(略)…
(訳文:接触素子200(接触素子500、600、700、800、900及び/又は1000などの、上述の接触素子200のあらゆる変形形態を含む)は任意の適切な手法で作製することができる。(…(略)…)図11A?図14は、接触素子200を作製するためのリソグラフィ工程の一例を示す。…(略)…)
[0066]…(略)…[0075] The result can be, as shown in FIG. 14, contact element 200. As shown, the first base end 202 can comprise first base portions 1106, 1206, and 1306 ; the leaves 206 can comprise leaf portions 1110, 1210, and 1310 ; and second base end 212 can comprise second base portions 1208, 1208, and 1308. Contact tip 214 can comprise contact tip 1212 formed during the process illustrated in FIGS. 11A-13A. Alternatively, contact tip 214 can be formed separately and then attached to second base end 212.
(訳文:…(略)…結果は図14に示されるような接触素子200となりうる。図示されるように、第1の端基部202は第1の基部部分1106、1206及び1306を含むことができ、板206は板部分1110、1210及び1310を含むことができ、第2の端基部212は第2の基部部分1208、1208及び1308を含むことができる。接触先端部214は、図11A?図13Aに示される工程中に形成される接触先端部1212からなるものとすることができる。或いは、接触先端部214を別個に形成し、その後、第2の端基部212に取り付けるようにすることともできる。)
[0076] As another example of a variation of the contact element 200, any of the leaf portions 1110, 1210, and/or 1310 can comprise more than one material. As yet another example, leaves 206 can be made of different materials. For example, two or more or all of leaf portions 1110, 1210, and 1310 can comprise different materials. As still another example, although contact element 200 is illustrated in FIG. 14 as comprising three layers, contact element 200 can alternatively comprise a different number of layers (e.g., one, two, four, five, six, seven, eight, nine, or more layers). As yet another example, not all portions, materials, and/or layers of contact element 200 need be electrically conductive. Moreover, some portions, materials, and/or layers of contact element 200 can be better electrical conductors than other portions, materials, and/or layers.
(訳文:接触素子200の変形形態の別の例としては、板部分1110、1210及び/又は1310のいずれかを、1つより多い材料で構成することができる。さらに別の例としては、複数の板206を異なる材料で作製することができる。例えば、板部分1110、1210及び1310のうちの2つ以上又は全てを異なる材料で構成することができる。さらに別の例としては、図14において接触素子200を3つの層で構成しているところ、接触素子200をこれとは異なる数の層(例えば、1、2、4、5、6、7、8、9又はそれより多い数の層)で構成するようにすることもできる。さらに別の例として、接触素子200の全ての部分、材料及び/又は層を、導電性のものとする必要もない。さらに、接触素子200のいくつかの部分、材料及び/又は層を、他の部分、材料及び/又は層に比してより良好な電気伝導体とすることもできる。)」

(4) 段落0118から段落0119まで
「[0118] As shown in FIG. 26A, second base end 2612 can also be disposed in a hole 2610 in a guide structure 2608. Typically, as a contact tip 2616 of the second base end 2612 is pressed against a terminal 116 of a DUT (see FIG. 1 ), the second base end 2612 moves up and down in the hole 2610. As illustrated in FIG. 26A, however, a notch 2614 can be provided that facilitates movement of the second base end 2612 along the "z" axis with minimal rotation about the "x" axis. In other embodiments, more notches on the second base end 2612 and/or the first base end 202 can facilitate or prevent rotation. Regardless, guide structure 2608 can maintain the second base end 2612 in a desired position in an "x,y" plane. Guide structure 2608 can, for example, be a guide plate with multiple holes 2610 for holding multiple contact elements.
(訳文:図26Aで示されるように、第2の端基部2612もまた、ガイド構造部2608の穴2610内に配置することができる。典型的には、第2の端基部2612の接触先端部2616がDUT(図1を参照)の端子116に対して押し付けられると、第2の端基部2612が穴2610内において上下に移動する。しかしながら、図26Aで示されるように、「x」軸を中心とした最小限の回転とともに「z」軸に沿った移動を第2の端基部2612に行わせるため、切り欠き部2614を設けることもできる。他の実施形態では、第2の端基部2612及び/又は第1の端基部202により多くの切り欠き部を設けることで、回転を促したり防止したりすることもできる。いずれにしても、ガイド構造部2608は第2の端基部2612を「x、y」面内の所望の位置に維持することができる。ガイド構造部2608は、例えば、複数の接触素子を保持するための複数の穴2610を有するガイド板とすることができる。)
[0119] FIGS. 26B-26D (each of which shows a bottom view of the contact element 2600 of FIG. 26A ) illustrate examples of a hole 2610 in guide structure 2608 according to some embodiments of the invention. As generally discussed above (and as noted by the arrows in FIGS. 26B-26D ), the second base end 2612 can tend to move laterally (e.g., in the "x,y" plane) as the contact element 2600 compresses and then buckles. As illustrated in FIGS. 26B and 26C, the second base end 2612 and the hole 2610 can be shaped such that the second base end 2612 contacts a wall of the hole 2610, which thus impedes appreciable movement of the second base end 2612 and thus also prevents appreciable rotation about any axis of the second base end 2612 and contact tip 2616. The examples of a square or rectangular second base end 2612 and a square or rectangular hole 2610 in FIG. 26B are examples only, and those shapes can be any shapes that result in the foregoing contact of the second base end 2612 with a wall of the hole 2610. Similarly, the examples of a rectangular second base end 2612 and a circular hole 2610 are examples only, and those shapes can also be any shapes that result in the foregoing contact of the second base end 2612 with a wall of the hole 2610.
(訳文:図26B?26D(そのそれぞれが図26Aの接触素子2600の底面図を示す)は、本発明のいくつかの実施形態によるガイド構造部2608内の穴2610の例を示す。上で全般的に述べたように(及び図26B?26Dの矢印によって示されるように)、接触素子2600が圧縮して後に屈曲すると、第2の端基部2612は、(例えば「x、y」面内において)横に移動する傾向をもちうる。図26B及び図26Cで示されるように、第2の端基部2612及び穴2610は、第2の端基部2612が穴2610の壁に接触するような格好となり、そのため第2の端基部2612のかなりの動きが妨げられ、また、第2の端基部2612及び接触先端部2616の任意の軸線を中心としたかなりの回転が防止されることとなりうる。図26Bで示される正方形又は長方形の第2の端基部2612及び正方形又は長方形の穴2610の例は単なる一例であり、それら形状は、前述の、第2の端基部2612と穴2610の壁との接触をもたらす任意の形状でありうる。同様に、長方形の第2の端基部2612及び円形の穴2610の例は単なる一例であり、それら形状も、前述の、第2の端基部2612と穴2610の壁との接触をもたらす任意の形状でありうる。)」

上記(1)ないし(4)の記載によれば、引用文献3には、以下の技術事項が記載されている。

「垂直非線形の接触素子200(112)は、被試験デバイス(DUT)114試験用の試験システム100に用いられ、第1の端基部202と、本体204と、第2の端基部212とを含むものであり、
第1の端基部202は、試験器102とのインターフェースである接触子106と結合され、
第2の端基部212は、DUT114の端子116との直接接触を形成するように構成された接触先端部214を含み、
本体204は、弾性的に変形しうる複数の細長い板206を含み、各板206の両端208はそれぞれ第1の端基部202と第2の端基部212とに結合され、各板206間には間隔210が設けられ、
第1の端基部202、板206及び第2の端基部212のそれぞれは3つの層(部分)で構成され、いくつかの層を他の層よりも良好な電気伝導体とすることができ、
第2の端基部2612は、ガイド構造部2608の穴2610内に配置することができ、接触先端部2616がDUTの端子116に対して押し付けられると、穴2610内において上下に移動するものであり、
ガイド構造部2608は、複数の接触素子を保持するための複数の穴2610を有するガイド板であり、
第2の端基部2612は、接触素子200(2600)が圧縮して後に屈曲すると、横に移動して穴2610の壁に接触するような格好となる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

ア 引用発明の「LCDパネルなどを電気的に検査する際に用いられるプローブピン10」は、本願発明1の「電気的接触子」に相当する。

イ 引用発明の「多層平板によって形成されるプランジャー1」の「被検査物に接触する先端側」は、本願発明1の「検査対象物に当接させるコンタクト部」に相当する。

ウ 引用発明における「プランジャー2」は「検査装置側の接続端子と接触する」ものであるが、「検査装置側の接続端子」が何らかの配線基板に設けられることは当然のことであるから、「検査装置側の接続端子と接触する」「プランジャー2」は、本願発明1の「配線基板と導通させる端子部」に相当する。

エ 引用発明では、「プランジャー1の先端側が」「挿入される」「上側開口部8aを有」する「上側絶縁体6」と、「プランジャー2の先端側が」「挿入される」「下側開口部8bを有」する「下側絶縁体7」との間に、「コイルばね3が挿入される」「孔部8を有」する「中間絶縁体5」が設けられ、「コイルばね3の反力によってプランジャー1、2を外部に押し付けた状態」とされているのであるから、「コイルばね3」は「プランジャー1」と「プランジャー2」の間に設けられている。
よって、引用発明の「コイルばね3」と本願発明の「弾性変形部」とは、「コンタクト部及び端子部の間に設けられ」る「弾性変形部」であるという点で共通する。

オ 引用発明では、「プランジャー1」が、「円柱状」の「孔部8内で摺動できるように組み立てられており」、「プランジャー1」の「摺動時にその先端側と上側開口部8aとの接触が、単層平板の場合のような線的な接触ではなく面的に広がった接触となって安定し、先端部の位置精度や摺動の安定性をもたせることができる」ようになっている。
つまり、「プランジャー1」は、「上側開口部8a」により「円柱状」の「孔部8」の深さ方向(長手方向)に摺動できるようににより支持されており、「上側開口部8a」は本願発明1の「貫通孔」に相当し、「上側開口部8a」を有する「上側絶縁体6」は本願発明1の「ガイド板」に相当するといえる。また、引用発明の「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位は、本願発明1の「摺動部」と、「ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持され」る「摺動部」であるという点で共通する。

カ 引用発明の「プランジャー1」は、「先端側がくさび状に形成された略帯状の平板である中心層11の両面に、中心層11の形状とほぼ同じ形状の平板であって中心層11の形状を縮小した形状である補強層12、13が形成された多層平板であって、その断面が十字形状である」ため、「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位についても同様に、「略帯状の平板である中心層11の両面に、中心層11の形状とほぼ同じ形状の平板であって中心層11の形状を縮小した形状である補強層12、13が形成された多層平板であって、その断面が十字形状である」ものであると認められる。
ここで、引用発明の「中心層11」及び「補強層12、13」は、本願発明1の「中間層」及び「外層」にそれぞれ相当する。引用発明において、「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位が、「略帯状の平板である中心層11の両面に」「ほぼ同じ形状の平板であ」る「補強層12、13が形成された多層平板」であるということは、本願発明1において、「摺動部」が、「中間層が外層で挟まれ、積層面が長手方向に延びる積層構造を有」しているということに相当する。
また、引用発明において、「補強層12、13」は「中心層11の形状を縮小した形状」であって、「多層平板」の断面が「十字形状」であることから、多層平板の側面において「中心層11」は「補強層12、13」よりも突出しているといえ、このことは、本願発明の「摺動部」が「その側面において、上記中間層が上記外層よりも」「突出し」ているということに相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点

「検査対象物に当接させるコンタクト部と、
配線基板と導通させる端子部と、
上記コンタクト部及び端子部の間に設けられる弾性変形部と、
ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持される摺動部とを備え、
上記摺動部は、中間層が外層で挟まれ、積層面が長手方向に延びる積層構造を有し、その側面において、上記中間層が上記外層よりも突出する
電気的接触子。」

イ 相違点

(ア) 相違点1
本願発明では、弾性変形部が「湾曲方向を予め定める湾曲形状を有」し、摺動部が「弾性変形部の湾曲により所定の方向へ傾けられ」、中間層の突出する方向が「上記所定の方向」(つまり、弾性変形部の湾曲により摺動部が傾けられる方向)となっているのに対して、引用発明では、「コイルばね3」が「コイル」形状を有しており、「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位が「コイルばね3」の湾曲により「所定の方向へ傾けられ」るかどうかが不明であり、よってそのような傾きの方向と「中心層11」の突出する方向とが一致するかどうかも不明である点。

(イ) 相違点2
本願発明では、摺動部が、「貫通孔の内面に対し、上記外層を押圧させることなく上記中間層を押圧させる」ようになっているのに対して、引用発明では、プランジャー1の先端側が上側開口部8aとの間で、「単層平板の場合のような線的な接触ではなく面的に広がった接触」を行うようになっている点。

(3) 相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
引用発明が相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにするには、引用発明の「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位において、多層平板の「補強層12、13」を「上側開口部8a」に接触させることなく「中心層11」のみを「上側開口部8a」に接触させる必要がある。
しかし、引用発明の「プランジャー1」は、「摺動時にその先端側と上側開口部8aとの接触が、単層平板の場合のような線的な接触ではなく面的に広がった接触となって安定し、先端部の位置精度や摺動の安定性をもたせることができる」ものとされていることから、「補強層12、13」を「上側開口部8a」に接触させる方が「面的に広がった接触となって安定し」て望ましく、逆に、「補強層12、13」を「上側開口部8a」に接触させないようにすると引用発明の利点が失われるため、そうすることには阻害要因があるともいえる。
また、引用文献2ないし引用文献6のいずれも、引用発明の「プランジャー1」の「先端側」における「上側開口部8a」と接触する部位において、「補強層12、13」を「上側開口部8a」に接触させないといったことを示唆するものではない。
特に、引用文献2には、「コンタクト部2が形成された本体部1の下端は、プローブユニット5を構成するガイド板52のガイド穴52hを貫通し、ガイド板52から突出し、上下動可能に支持され、オーバードライブ前及びオーバードライブ後のいずれにおいても、第2結合部12がガイド板52のガイド穴52hの内周面と対向するように保持されている」という技術事項が記載されており、「ガイド板52のガイド穴52hの内周面と対向するように保持されている」「第2結合部12」が、本願発明1の「ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持され」る「摺動部」に相当するものといえるが、「第2結合部12」が積層構造を有し、外層は「ガイド穴52hの内周面」に対し押圧されないといったことは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献3には、「第1の端基部202、板206及び第2の端基部212のそれぞれは3つの層(部分)で構成され、いくつかの層を他の層よりも良好な電気伝導体とすることができ、第2の端基部2612は、ガイド構造部2608の穴2610内に配置することができ、接触先端部2616がDUTの端子116に対して押し付けられると、穴2610内において上下に移動するものであり、ガイド構造部2608は、複数の接触素子を保持するための複数の穴2610を有するガイド板であり、第2の端基部2612は、接触素子200(2600)が圧縮して後に屈曲すると、横に移動して穴2610の壁に接触するような格好となる」という技術事項が記載されており、「ガイド板」の「穴2610内において上下に移動するものであり」、「穴2610の壁に接触するような格好となる」ものでもある「第2の端基部2612」が、本願発明1の「ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持され」る「摺動部」に相当するものといえるが、「第2の端基部2612」を構成する3つの層のうちの外側の層が「穴2610の壁」に対し押圧されないといったことは、記載も示唆もされていない。
さらに、引用文献4ないし引用文献6は、本願発明1の「ガイド板の貫通孔により、長手方向に移動可能に支持され」る「摺動部」に相当する構成を開示するものではないことから、相違点2に係る本願発明1の構成を開示するものでもない。
したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と、引用文献2ないし引用文献6に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

(4) 本願発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、相違点1を検討するまでもなく、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 本願発明2ないし本願発明9について
本願発明2ないし本願発明9は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(上記1(2)イ)で引用発明と相違する。そして、前記1(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献2ないし引用文献6に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできないから、相違点2に係る本願発明2ないし本願発明9の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明9は、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 原査定について
上記第5のとおり、本願発明1ないし本願発明9は、引用文献1ないし引用文献6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2014-551059(P2014-551059)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 櫻井 健太
清水 稔
発明の名称 電気的接触子  
代理人 大槻 聡  

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