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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1346632
審判番号 不服2017-11514  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-03 
確定日 2018-11-28 
事件の表示 特願2015-548759「フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/096833、平成28年 2月12日国内公表、特表2016-504221〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2015-548759号(以下「本件出願」という。)は、2013年(平成25年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成24年12月19日 英国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 6月10日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月 7日付け:意見書、手続補正書
平成29年 3月30日付け:拒絶査定
平成29年 8月 3日付け:審判請求書、手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 レーザー書込み可能な顔料を含む組成物を組み込んだ、レーザー書込み可能なラベリング用、包装用またはセキュリティー用フィルムであって、レーザー書込み可能な顔料粒子の少なくとも50%が1ミクロン未満の粒径を有し、前記フィルムはレーザー書き込み前には透明かつ/または無色である、フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は、当合議体が付したものであり、補正箇所を示す。
「 レーザー書込み可能な顔料を含む組成物を組み込んだ、レーザー書込み可能なラベリング用、包装用またはセキュリティー用フィルムであって、レーザー書込み可能な顔料粒子の少なくとも50%が1ミクロン未満の粒径を有し、前記フィルムはレーザー書き込み前には透明かつ/または無色であり、
前記レーザー書込み可能な顔料粒子の粒径は、50%までの粒子においての最大寸法であるd_(50)値が100ナノメートル未満であり、
70超の光沢度の光沢(45°)を有する、フィルム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件出願の明細書の【0055】及び【0073】の記載に基づいて、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、[A]「レーザー書込み可能な顔料」を、「前記レーザー書込み可能な顔料粒子の粒径は、50%までの粒子においての最大寸法であるd_(50)値が100ナノメートル未満であり」という要件を具備するものに限定するとともに、[B]「フィルム」を、「70超の光沢度の光沢(45°)を有する」ものに限定するものである。また、本件出願の明細書の【0001】及び【0040】の記載からみて、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)と本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的と補正に該当する。
そこで、本件補正発明が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特表2012-523013号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にイメージを形成する方法であって、最初は非反応性であるが、活性化によって反応性となる活性化可能発色化合物を、前記基材へ適用すること、前記イメージを形成すべき前記基材の領域内の前記発色化合物を活性化すること、および前記活性化された発色化合物を反応させてその発色形態とすることによってイメージを作製すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記活性化可能発色化合物が、ポリ-インであり、好ましくはジアセチレン、最も好ましくはジアセチレンモノもしくはジ-カルボン酸、またはモノ-もしくはジ-オール、またはそれらの誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジアセチレンモノもしくはジカルボン酸化合物が、10,12-ペンタコサジイン酸、または10,12-ドコサジイン二酸、またはそれらの誘導体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記10,12-ペンタコサジイン酸または10,12-ドコサジイン二酸の誘導体が、そのアミン誘導部分が一級アミンであるアミド誘導体であり、好ましくは、6から20個の炭素原子、最も好ましくは6、8、10、12、14、16、18、または20個の炭素原子の鎖長を持つ飽和炭化水素鎖を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一級アミンが、プロパルギルアミン、カルボン酸アミン、アルコールアミン、またはアミノ-PEGである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化可能発色ジアセチレンが、モノまたはジ-オールの誘導体であり、好ましくは、ウレタン、エステル、またはエーテルである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ウレタン、エステル、またはエーテルが、2,4-ヘキサジイン-1,6ジオールのモノまたはビス誘導体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアセチレンが、環状ジアセチレン化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
活性化が、熱、光、圧力、および放電の1もしくは2つ以上から選択される刺激に曝露することによるものである、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、熱活性化可能であり、好ましくは、光吸収剤が前記基材に適用され、該光吸収剤は、好ましくは、700から2500nmの波長範囲の光を吸収する近赤外線吸収剤である、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
700から2500nmの波長範囲の光を吸収する前記近赤外線吸収剤が:有機染料/顔料、導電性ポリマー、銅(II)ヒドロキシルホスフェートなどの無機銅(II)塩、または還元酸化スズインジウムなどの非化学量論的無機化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発色化合物が、可逆的に活性化可能である、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
活性化が、前記発色化合物の多形を含む、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
活性化が、開環反応、電荷の発生または除去、脱離基の開裂、フォトクロミズム、光学異性体またはエナンチオマー間の変換、結晶形態間の変換、活性化剤もしくは非活性化剤の添加または除去、結晶水の添加または除去、共結晶化、液晶形成、金属錯体形成、界面活性化、または、電場の印加を含む、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化可能発色化合物および光吸収剤(存在する場合)が、1つのコーティングとして前記基材に適用される、請求項9、またはそれに従属する場合の請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化可能発色化合物および光吸収剤(存在する場合)が、別々のコーティングとして前記基材に適用される、請求項9、またはそれに従属する場合の請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記活性化可能発色化合物および/または前記光吸収剤(存在する場合)が、前記基材に埋設される、請求項9、またはそれに従属する場合の請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは700から2500nmの波長範囲の近赤外線光である光を用いて前記発色化合物が活性化され、700から2500nmの波長範囲の前記近赤外線光が、レーザーによって供給される、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化が、CO_(2)レーザーによって供給される光を用いて行われる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化基材が、続いて200から450nmの波長範囲の光に曝露され、それによって前記基材の前記活性化部分に色変化反応を引き起こしてイメージを形成させ、好ましくは、前記光が、UVランプ、UVダイオード、またはUVレーザーなどのUV光源によって供給される、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティングまたは基材が、直接光反応性色変化物質、好ましくは金属オキシアニオン化合物、炭化可能な剤(charrable agent)、ロイコ染料、または電荷移動剤をさらに含む、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記金属オキシアニオン化合物が、アンモニウムオクタモリブデートまたはナトリウムメタボレートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記炭化可能な剤が、ポリサッカリド、炭水化物、または糖類である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記炭化可能な剤が、金属塩またはアンモニウム塩と組み合わせて用いられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記イメージ形成された基材が、電気を伝導させる能力を有する、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基材が、紙、プラスチックフィルム、プラスチック部品、布地、ガラス、金属、箔、食品、または医薬製剤である、前記いずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記いずれか一項に記載の方法を用いてイメージ形成された基材。
【請求項28】
人および/または機械による読み取り用の情報を表示するための、請求項27に記載の基材の使用」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化可能発色化合物を基材へ適用することを含む、基材上にイメージを形成する方法、およびそれによってイメージ形成された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のジアセチレンは、光への曝露によって発色する能力を有することが知られている。10,12-ペンタコサジイン酸は、そのようなジアセチレンの例として本技術分野で公知である。この化合物は、その未反応状態において最初は無色であるが、UV光へ曝露すると、トポ化学重合反応を起こして青色のポリジアセチレンを生成し、続いてこれは、熱摂動(thermal perturbations)によって赤色の形態へと変換することができる。
【0003】
特許文献1には、10,12-ペンタコサジイン酸などのジアセチレンを、光酸発生種または光塩基発生種と組み合わせて、カラー印刷用途へ適用することが教示されている。10,12-ペンタコサジイン酸などの発色ジアセチレンは、通常、非常に反応性が高く、50mJcm^(-2)という低いフルエンス値への曝露で最初の重合反応を起こすことができる。この高反応性のために、バックグラウンド放射線に対する安定性は低い。感光性ジアセチレンは、次第に、保存中に重合を起こし、青色へ変色する。このような化合物による無色のコーティングを作製するためには、通常、使用前にこれらを再結晶によって精製する必要があり、これは、時間を取られ、時間を浪費するものである。さらに、これらのジアセチレンを用いて作製されたコーティングはいずれも、バックグラウンド放射線への曝露によって次第に青色に変色してしまう。このことは、このコーティングを使用することができる用途の範囲を厳しく制限するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第06/018640号
【発明の概要】
【0005】
第一の局面では、本発明は、基材上にイメージを形成する方法を提供し、その方法は、最初は非反応性であるが、活性化によって反応性となる活性化可能発色化合物を基材へ適用すること、イメージを形成すべき基材の領域内の前記発色化合物を活性化すること、および活性化された発色化合物を反応させてその発色形態とすることによってイメージを作製すること、を含む。
【0006】
第二の局面では、本発明は、本発明の第一の局面の方法を用いてイメージ形成された基材を提供する。
【0007】
第三の局面では、本発明は、人および/または機械による読み取りが可能である情報を表示するための、本発明の第二の局面に従う基材の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、その最初の固体形態ではUV光に対して非反応性であり、この最初の形態では本質的に光誘発色変化反応を起こすことができない特定のジアセチレン化合物を観察した。しかし、前記ジアセチレン化合物は、溶融および再固化を例とするある方法で活性化された場合、UV光に対する反応性が高い固体形態に変換され、続いてこれは、以下のような光誘発色変化反応を起こす:無色から青色、マゼンタ色へ、赤色、オレンジ色、黄色へ、および緑色へ。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、このような「活性化可能」ジアセチレン化合物を用いて、バックグラウンド放射線に対して本質的に安定であるコーティングを作り出した。このコーティングは、近赤外線(NIR)吸収剤と組み合わせて「活性化可能」ジアセチレンを適用することによって作製することができる。次に、NIRファイバーレーザーなどのNIR光源を用いて、コーティング内のイメージが必要とされる領域のみを加熱することができる。次に、殺菌ランプなどのUV光源を用いて、コーティングにUV光を照射する。しかし、このジアセチレン化合物は、最初にNIR光に曝露された領域でしかイメージを作り出す色変化反応を起こさない。NIR光に曝露されていないコーティング内の領域は、色変化反応をほとんど起こさず、本質的に無色の状態で維持され、バックグラウンド放射線に対して安定である。コーティング内のNIR光源で既に活性化された領域のみでのイメージ形成には、UVレーザーを用いることもできる。
【0010】
発色化合物
本発明は、「活性化可能」である、すなわち、光に対して比較的に非反応性である第一の固体形態を有するが、「活性化」によって、光に対して比較的に反応性であり、従って色変化反応を起こして視認可能なイメージを作り出す能力を持つ第二の形態に変換される、いかなる発色化合物をも含む。理論に制限されるものではないが、活性化は、再結晶、結晶形の修飾、共結晶の組み合わせ(co-crystal combination)、または溶融/再固化プロセスであり得る。好ましい活性化可能化合物は、ジアセチレン、トリアセチレン、およびテトラアセチレンなどのポリ-インである。ポリ-インは、2もしくは3つ以上の隣接する炭素-炭素三重結合基、
-C≡C-(-C≡C-)_(n)-
を含む化合物であり、ここで、nは、≧1の整数である。
【0011】
n=1であるジアセチレンが特に好ましい。ジアセチレンは、以下の基:
-C≡C-C≡C-
を含む化合物である。
【0012】
特に好ましいジアセチレンは、最初の活性化(例:溶融および再固化)の後は無色であるが、光、特にUV光への曝露によって青色となるものである。特に好ましいジアセチレン化合物は、以下の一般構造で表されるカルボン酸およびその誘導体であり:
Y-C≡C-C≡C-(CH_(2))_(x)-CO-Q-Z
ここで:
x=0から20
Q=NH、S、O、
Z=H、またはC=0から20である直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素アルキル鎖、または少なくとも1つの炭素原子を含むいずれかの基であり;Zは、所望される場合は、少なくとも1つの-CO-Q-、および/または-O-、もしくは-S-、-NR-の基(Rは、Hまたはアルキル)を含んでよく;ならびに、
Y=H、-(CH_(2))_(x)-CO-Q-Z(上記の通り)、C=0から20である直鎖状もしくは分岐鎖状の炭化水素アルキル鎖、または少なくとも1つの炭素原子を含むいずれかの基である。
【0013】
本発明の一部を形成するジアセチレンカルボン酸化合物の例としては、これらに限定されないが:10,12-ドコサジイン二酸、9,11-エイコサジイン二酸、8,10-オクタデカジイン二酸、7,9-ヘキサデカジイン二酸、6,8-テトラデカジイン二酸、5,7-ドコサジイン二酸、4,6-デカジイン二酸、3,5-オクタジイン二酸、2,4-ヘキサジイン二酸、10,12-ペンタコサジイン酸、5,7-ドコサジイン二酸、5,7-ドデカジイン酸、4,6-ドデカジイン酸、5,7-エイコサジイン酸、5,7-エイコサジイン-1-オール、6,8-ヘネイコサジイン酸、8,10-ヘネイコサジイン酸、12,14-へプタコサジイン酸、2,4-へプタデカジイン酸、4,6-へプタデカジイン酸、5,7-ヘキサデカジイン酸、10,12-ヘネイコサジイン酸、10,12-ノナコサジイン酸、10,12-へプタコサジイン酸、10,12-オクタデカジイン酸、10,12-ペンタコサジイン酸、10,12-トリコサジイン酸、6,8-ノナデカジイン酸、5,7-オクタデカジイン酸、10,12-オクタデカジイン酸、5,7-テトラデカジイン酸、14-ヒドロキシ-10,12-テトラデカジイン酸、10,12-ペンタコサジイン酸、および10,12-ドコサジイン二酸が挙げられ、これらの誘導体が特に好ましい。ジアセチレン化合物がジカルボン酸およびその誘導体である場合、それは、対称であっても非対称であってもよい。
【0014】
さらに特に好ましいのは、カルボン酸基がアミド、エステル、またはチオエステルへ官能化された誘導体である。これらは、ジアセチレンカルボン酸を塩化オキサリルなどの塩素化剤と反応させ、次にこのジアセチレン酸塩化物をアミン、アルコール、またはチオールなどの求核性化合物と反応させることにより、容易に作製することができる。アミド(-CONR-)がさらに特に好ましく、ここで、R=Hまたはアルキル基である。
【0015】
特に好ましいアミド系は、一級アミン(-CONH-)から誘導されるものである。一級アミンは、以下の一般構造を持つ化合物であり:
R-NH_(2)
ここで、R=Hまたは少なくとも1つの炭素原子を含む有機化学で公知のいずれかの基である。
【0016】
特に好ましい一級アミン系は、Rが飽和アルキル鎖であるものである。これらは、ジアセチレンカルボン酸を塩化オキサリルなどの塩素化剤と反応させ、次にこのジアセチレン酸塩化物を、塩基の存在下にて飽和一級脂肪族アミンと反応させることにより、容易に作製することができる。特に好ましい種類の飽和アルキル鎖は、以下の式で表される飽和脂肪族炭化水素鎖であり:
C_(n)H_(2n+1)
ここで、nは、≦20の整数である。
【0017】
飽和脂肪族炭化水素鎖は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。直鎖が特に好ましい。0から20個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素鎖一級アミンの例としては:アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、およびオクタデシルアミン、ノナデシルアミン、およびエイコサミンが挙げられる。0から20までの範囲のnが特に好ましいものの、熱活性化を起こすその他の長鎖脂肪一級アミンもまた、本発明の一部を形成する。
【0018】
ジアセチレンカルボン酸化合物が2つ以上のカルボン酸基を含む場合、そのうちのいくつであってもアルキルアミドへ誘導体化することができる。例えば、10,12-ドコサジイン二酸は、2つのカルボン酸基を含み、そのうちの1または2つを誘導体化して、モノまたはビス-アルキルアミド化合物を生じさせることができる。飽和直鎖炭化水素脂肪族アミンから作製された10,12-ドコサジイン二酸-ビス-アルキルアミド化合物の場合、驚くべきことに、熱活性化が発生するためには、上記アルキル鎖の式中のnが6から20の範囲内に入る必要があることが見出された。n≦5の場合、熱活性化は発生せず、これらのアルキルアミド化合物は、形成された状態で光反応性であり、従って、本発明の一部を形成するものではない。特に好ましい10,12-ドコサジイン二酸-ビス-アルキルアミドは、偶数の炭素原子を持つ、すなわち、n=6、8、10、12、14、16、18、および20である直鎖アルキル鎖から作製されるものである。
【0019】
本発明の一部を形成するジアセチレンカルボン酸アミドの作製に用いることができるその他のアミンとしては:エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、へプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、デカノールアミン、ウンデカノールアミン、およびドデカノールアミンなどのアルコールアミンが挙げられ、アルコールアミン化合物は、3-アミノ-1,2-プロパンジオールおよびビス-ホモトリス(bis-homotris)など、2つ以上のOH基を含んでよい。さらに含まれるのは、アミノ-PEGおよび2,2’-(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)などのエトキシル化アミンである。別の特に好ましい一級アミン系は、アミノカルボン酸である。これらは、アミノ基とカルボン酸基の両方を含む化合物である。例としては、グリシンおよびアラニンなどの天然に見られるアルファ-アミノ酸が挙げられるが、また、4-アミノブタン酸、5-アミノペンタン酸、6-アミノへキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、および12-アミノドデカン酸なども挙げられる。これらのアミノカルボン酸を、例えば2つのカルボン酸基を含むジアセチレンと反応させることにより、以下の一般式で表すことができるジアセチレン-ビス-アミドカルボン酸化合物が生じ:
【0020】
【化1】

ここで、x=0から20であり、y=0から20である。
【0021】
アミノカルボン酸化合物は、ジアセチレン酸塩化物と反応してジアセチレンアミド化合物を生じる能力を有し、これもまた、続いて、例えば一級アミンと反応させてさらに誘導体化し、複数のアミド基を持つジアセチレン化合物を生ずることができるカルボン酸基を含む。
【0022】
別の特に好ましい10,12-ドコサジイン二酸アミド誘導体は、少なくとも1つ、好ましくは両方のカルボン酸基がプロパルギルアミドへ変換されたプロパルギルアミドである:
【0023】
【化2】

10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミド
【0024】
プロパルギルアミドは、カルボン酸をプパルギルアミンと反応させることで作製される。適切なアミドの作製に用いることができるその他の好ましいアミンとしては:ジプロパルギルアミンおよび1,1-ジメチルプロパルギルアミンが挙げられる。」

ウ 「【0079】
コーティング
発色化合物およびNIR吸収剤(存在する場合)は、通常、インク製剤によって基材に適用される。インク製剤は、水性ベースであっても、または非水性ベースであってもよい。これは、発色化合物およびNIR吸収剤の両方を含むインク製剤であってよい。または、2つの種のうちの一方を含む第一のコーティング層の上に他方を含む上層がある状態で、これらを別々に適用してもよい。1もしくは複数のインク製剤はまた、印刷の技術分野で公知の1もしくは複数のその他の添加剤を含んでもよく:通常はポリマーであり、アクリルポリマー、スチレンポリマーおよびその水素化生成物、ビニルポリマーおよびその誘導体、ポリオレフィンならびにその水素化およびエポキシ化生成物、アルデヒドポリマー、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、スルホンを主体とするポリマー、ならびにセルロースを主体とするバインダーなどの天然ポリマーおよびその誘導体、を含むバインダー、などである。バインダーはまた、ポリマーバインダーおよびコア-シェル系の混合物であってもよい。それは、コーティング後にUV照射下にて上記で列挙したポリマーバインダーの1つを形成する、液体モノマーおよび適切な光開始剤の混合物であってもよい。適切なバインダー系の例としては、BASFによって提供される製品GlascolおよびJoncryl、パラケム(ParaChem)によって提供される製品Paranol、バキセンデンケミカルズ(Baxenden Chemicals)によって提供される製品Witcobond、スコット-ベイダー(Scott-Bader)によって提供される製品Texicryl、およびDSMネオレジンズ+(DSM NeoResins+)によって提供される製品Neoが挙げられる。1もしくは複数のインク製剤のその他の添加剤としては:溶媒、界面活性剤、安定剤、増粘剤、ワックス、不透明化剤、TiO_(2)などの白色化剤、発泡防止剤、塩基、殺生物剤、着色剤、レオロジー改変剤(rheology modifier)、UV吸収剤、酸化防止剤、HALS、湿潤剤、着色剤、防煙剤、およびタガントが挙げられる。
【0080】
活性化可能光反応性色変化化合物およびNIR吸収剤(存在する場合)を、1もしくは複数のコーティングを用いずに基材に適用することも可能である。これらは、基材中に直接埋設/混合してよく、通常は、基材に、その製造中に添加される。また、これらの成分の一方は基材に埋設/混合するが、他方はコーティングによって適用するということも可能である。」

エ 「【0086】
基材
基材は、印刷の技術分野で公知のいずれの基材であってもよく、例としては:紙、ボール紙、段ボール、ガラス、布地、金属、箔、木材、皮革、プラスチックフィルム、セルロースフィルム、食品、および医薬製剤が挙げられる。基材は、CDまたはDVDなどのデータキャリアであってよい。活性化可能ジアセチレンは、インクもしくは表面コーティング製剤を用いて基材に適用してよく、または、例えばサイジング段階の過程での添加によって紙などの基材中に直接埋設させるか、もしくはプラスチックフィルムへ押出してもよい。基材は、ラミネート状であっても、または非ラミネート状のままであってもよい。
【0087】
基材は、プレフォーム、ボトル、およびキャップなどのプラスチック部品の作製に例えば用いられるLDPE、HDPE、PP、およびPETなどの溶融加工プラスチックであってよく、または、パッド、オムツ、および女性用衛生用品などに使用するための不織布の製造に例えば用いられる溶融紡糸繊維であってよい。
【0088】
活性化可能発色化合物は、プラスチックの全体の着色、または、レーザースキャンシステム、アレイシステム、もしくはランプ/マスク機構を用いての、イメージ、パターン、デバイス、機械読み取り用コード、およびテキストのプラスチック部品上への直接の印刷のために用いることができる。活性化可能ポリ-インは、固体または液体マスターバッチシステムによってプラスチックへ供給してよい。適切なプラスチックの例としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル(PMMA)、セルロイド、酢酸セルロース、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、フルオロプラスチック(FEP、PFA、CTFE、ECTFE、ETFEと並んで、PTFE)、イオノマー、アクリル/PVCアロイの商標であるKydex、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POMまたはアセタール)、ポリアクリレート(アクリル)、ポリアクリロニトリル(PANまたはアクリロニトリル)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、ポリアミド-イミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEKまたはケトン)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PLC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリケトン(PK)、ポリエステル 低および高密度ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタラミド(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリウレタン(PU)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、およびスチレン-アクリロニトリル(SAN)などが挙げられる。「活性化可能」ポリ-イン化合物を含むプラスチックを用いて、いかなるプラスチック部品も作製することができ、例としては、プレフォーム、ボトル、およびキャップなどのリッジ付きプラスチックパッケージング(ridged plastic packaging)、またはパッド、オムツ、および女性用衛生用品などに使用するための不織布の製造に例えば用いられる溶融紡糸繊維が挙げられる。
【0089】
本発明の活性化可能ジアセチレンを含む基材は、印刷品の製造に用いることができ、例としては、一次および二次パッケージング、新聞、雑誌、リーフレット、パンフレットおよび本、ポスター、裏面の接着剤と組み合わせたラベル、銀行券、小切手、通貨、チケット、パスポート、およびライセンスなどなどのセキュリティ文書が挙げられ、それは、デスクトップ/家庭用印刷用途、商用ワイドウェブ印刷用途に用いることができる。基材はまた、回路基盤製造などのいずれの印刷エレクトロニクス用途にも用いることができる。基材は、テキスト、グラフィックス、およびバーコードなど、人による読み取り用および/または機械による読み取り用の情報の表示に用いることができる。
【0090】
光源
最初の活性化に用いられる光源は、好ましくは、最初は非反応性である発色ジアセチレンの溶融に用いることができるものである。それは、200nmから25ミクロンの範囲の波長であってよい。なおより好ましくは、それは、波長範囲が700から2500nmの近赤外光であり、さらになおより好ましくは、それは、用いられるNIR光吸収剤の吸収プロファイルにおおよそ対応する。光は、広帯域または単波長、非コヒーレントまたはレーザー放射線であってよい。好ましくは、光は、NIRレーザー放射線である。レーザーは、パルスもしくは連続波レーザー、ファイバーレーザーもしくはダイオードレーザー、またはダイオードアレイであってよい。約10.6ミクロンの波長で運転されるCO_(2)レーザーも好ましい。
【0091】
既に活性化された発色化合物の色変化反応の開始に用いられる光は、200nmから25ミクロンの波長範囲であってよい。より好ましくは、それは、200から400nmの波長範囲のUV光、または400から450nmの範囲の短波長可視光である。光は、広帯域または単波長、非コヒーレントまたはレーザー放射線であってよい。光は、ランプによって提供される非コヒーレント光であってよく、基材表面全体を単に光で照射するために用いられる。用いることができるUV光源の例としては、殺菌ランプおよび水銀アークランプが挙げられる。別の選択肢として、UVレーザーまたはUVダイオード光源を、特により正確な光の配置を要する場合に、用いてよい。ランプ/マスク機構も用いてよい。約10.6ミクロンの波長で運転されるCO_(2)レーザーも、特にCO_(2)レーザー光に対して反応性である化学物質も存在する場合、好ましい。レーザーシステムが用いられる場合、それは、パルスレーザーであっても、または連続波レーザーであってもよい。光ビームは、ミラーに基づく検流計型システムを用いて誘導しても、または光源のアレイから発光させてもよい。」

オ 「【0143】
【0143】
実施例M - 熱活性化単一インク製剤
以下のインク製剤を作製した:
水性アクリルバインダー 58g
水 14.95g
発泡防止剤 0.1g
非イオン性界面活性剤 0.45g
還元(青色)ITO 2.5g
10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミド 15.0g
イソプロパノール 4.0g
UV吸収剤 3g
HALS 2g
【0144】
この製剤を、50ml Eiger-Torranceビーズミルを用いて、<5ミクロンの粒子サイズが得られるまで粉砕した。
【0145】
次に、このインクを、10gsmのコーティング重量にて透明および白色の両方の50ミクロンOPP基材上へコーティングした。このインクはまた、10gsmにて白色のラベルストック紙上にもコーティングした。
【0146】
すべてIBM互換PCで制御された以下の4つのレーザーシステムのうちの1つを用いて活性化を行った:
i. 1070nmファイバーレーザー
ii. 1470nmファイバーレーザー
iii. 1550nmファイバーレーザー
iv. 10.6ミクロンCO2レーザー
【0147】
次に、無色から青色への色変化反応を、以下のうちの1つを用いて行った:
a. 広帯域UV(殺菌)ランプ
b. IBM互換PCで制御された266nmUVレーザー
【0148】
青色イメージは、最初にNIR/CO2で活性化された領域のみで形成された。青色イメージは、NIRまたはCO2放射線の照射により、マゼンタ色、赤色、オレンジ色、および黄色に変化した。青色と黄色の混合を用いて緑色を作り出した。」

(3)引用発明
引用文献1の【0001】には、引用文献1でいう本発明が、活性化可能発色化合物を基材へ適用することを含む、基材上にイメージを形成する方法によってイメージ形成された基材に関することが記載され、また、【0005】?【0007】には、最初は非反応であるが、活性化によって反応性となる発色化合物を基材へ適用すること、イメージを形成すべき基材の領域内の発色化合物を活性化すること、及び活性化された発色化合物を反応させてその発色形態とすることによってイメージを作製すること、を含む方法を用いてイメージ形成された、人及び/又は機械による読み取りが可能である情報を表示するための、基材が記載されている。
さらに、引用文献1の【0022】及び【0023】には、特に好ましい発色化合物が、10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミドであること、【0070】?【0076】には、特に好ましいNIR吸収剤がスペクトルの可視領域では本質的に吸収がなく、従って目には無色に見えるコーティングを生ずるもの(還元性スズインジウム等)であることが記載されている。また、【0079】には、発色化合物及びNIR吸収剤が、通常、インク製剤(コーティング)によって基材に適用されることが記載されている。
加えて、引用文献1の【0086】及び【0087】には、基材が、印刷の技術分野で公知のいずれの基材であってもよく、紙、ボール紙、段ボール、ガラス、布地、金属、箔、木材、皮革、プラスチックフィルム、セルロースフィルム、食品及び医薬製剤が例示されることが記載されている。また、【0143】?【0148】には、水性アクリルバインダー、水、還元(青色)ITO、10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミドを含む製剤を5μmまで粉砕したインクを延伸ポリプロピレン基材上にコーティングし、NIRレーザーにより活性化し、次に、無色から青色への色変化反応を、UV光により行ったところ、青色イメージは、NIRで活性化された領域のみで形成され、青色イメージは、NIRの照射により、マゼンタ色、赤色、オレンジ色及び黄色に変化し、青色と黄色の混合を用いて緑色を作り出したことが記載されている。
そして、引用文献1には、以上の記載事項に対応する具体的な発明として、請求項27(請求項1?請求項5、請求項9?請求項11、請求項15、19、請求項20、請求項26及び請求項27)に係る発明が記載されているところ、この発明を引用記載を整理するとともに、用語を統一して記載すると、次のとおりとなる。(以下「引用発明」という。)
「 最初は非反応であるが、活性化によって反応性となる発色化合物を基材へ適用すること、イメージを形成すべき基材の領域内の発色化合物を活性化すること、及び活性化された発色化合物を反応させてその発色形態とすることによってイメージを作製することを含む方法を用いてイメージ形成された基材であって、
発色化合物が10,12-ドコサジイン二酸のプロパルギルアミン誘導体、すなわち、10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミドであり、
活性化が、光に曝露することによるものであり、
光吸収剤が基材に適用され、光吸収剤は、700nmから2500nmの波長範囲の光を吸収する近赤外線吸収剤であり、
近赤外線吸収剤が還元酸化スズインジウムであり、
発色化合物及び光吸収剤が、1つのコーティングとして基材に適用され、
活性化が、CO_(2)レーザーによって供給される光を用いて行われ、
基材が、続いて200から450nmの波長範囲の光に曝露され、それによって基材の活性化部分に色変化反応を引き起こしてイメージが形成され、ここで、光はUV光源によって供給され、
基材が、プラスチックフィルムである、
イメージ形成された基材。」

(4)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特表2012-520905号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、被還元性(reducible)金属化合物の調製物の形態をした固有にマーキング可能なレーザー顔料(intrinsically markable laser pigment)、その調製方法、ならびに例えば水ガラスまたは水ガラスに基づく被覆剤(coatings)などの無機系における、および有機ポリマー、特にプラスチック、表面被覆剤(surface coatings)、自動車用塗料、粉体塗料(powder coatings)、印刷インク、製紙用塗布剤(paper coatings)および製紙紙料(papermaking stocks)におけるその使用に関する。
【0002】
レーザー放射線(laser radiation)による市販製品のラベル付けは、現在、実質的に産業の全部門において標準的な技術となっている。したがって、例えば、生産データ、バッチ番号、使用期限、バーコード、企業ロゴ、通し番号などを、プラスチックまたはプラスチックフィルムに頻繁に施さなければならない。
・・・(中略)・・・
【0006】
したがって本発明の目的は、レーザー光線の作用下で非常に良好なマーキング結果、特に高いコントラストおよび鮮明なマークを与え、同時に重金属を含まず、工業規模で調製することができる、レーザーマーキング用の固有マーキング添加剤を見出すことである。
・・・(中略)・・・
【0009】
驚くべきことに、レーザー放射線により低酸化状態の着色金属化合物または金属に還元される微細(finely divided)金属化合物は、レーザーマーキング用の固有マーキング添加剤として極めて適していることが見出された。可能な限り中間色(neutral in colour)である金属の酸化物が特に適しており、この酸化物は、汎用的有用性のために非毒性であるべきであり、また還元に際して毒性反応生成物を形成すべきでない。
【0010】
本発明は、0.01?200μmの粒径を有する顔料が1種または複数の被還元性金属化合物と還元剤とを含む調製物の形態であるという事実によって特徴付けられる、固有にレーザーマーキング可能な顔料に関する。」

イ 「【0020】
本発明によるレーザー顔料は、本質的に2つの構成成分からなる:
1.容易に還元されうる、少なくとも1つの金属化合物、好ましくは金属酸化物または金属酸化物混合物、
および
2.少なくとも1つの還元剤。
【0021】
ここで金属化合物は、例えば、金属化合物を還元剤で被覆することにより、または還元剤を金属化合物で被覆することにより、還元剤と直接または密接(intimate)に接触していることが重要である。
【0022】
被覆される物質は、それぞれの場合において、粒状である。
【0023】
被還元性金属化合物が還元剤で被覆される場合、被還元性金属化合物は、無支持(support-free)粒子の形態または支持体上の被膜の形態である。ここで、本発明によるレーザー顔料が、単一被覆粒子、または共通の被膜と共に、顔料を形成する一群の粒子のどちらでも構成できるように、それぞれの場合に、個別の粒子のみならず複数の粒子を含む群も還元剤で同時に被覆できることは言うまでもない。被還元性金属化合物が支持体上(例えば、下記のような雲母フレーク上)に存在する場合にも、同じことが当てはまる。
・・・(中略)・・・
【0029】
この種類の無支持粒子は、本発明によれば、1nmから1000nmの範囲の粒径(最長軸の長さに相当)を有する。
【0030】
粒径の増加と共に入射光を散乱させる程度が増加するので、粒径が増加すると、(コア)粒子の隠蔽力は増加する。したがって、本発明によるレーザー添加剤の意図される使用に応じて、すなわち、特に、レーザーによりマーキングされる材料の種類およびレーザー添加剤を含む層の層厚に応じて、上記の粒径範囲と異なる粒径の範囲がそれぞれの場合において好ましい。
【0031】
被還元性金属化合物のほんの僅かな光散乱、したがって低い隠蔽力が望ましい場合、10nmから<100nm(from 10 nm to <100 nm)の範囲の粒径が特に好ましい。
【0032】
対照的に、より高い隠蔽力が可能であるまたは望ましい場合、100nm?700nmの範囲の粒径が特に好ましい。」
・・・(中略)・・・
【0036】
特に好ましい実施形態において、本発明によるレーザー顔料は、被還元性金属酸化物、好ましくは二酸化チタン、および還元剤により被覆されている雲母フレークの調製物からなる。ここで二酸化チタン層の厚さは、好ましくは10?200nm、特に20?100nm、とりわけ好ましくは40?60nmである。


(5)引用発明との対比及び判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)組成物
引用発明の「イメージ形成された基材」は、「基材が、プラスチックフィルムである」とともに、「発色化合物及び光吸収剤が、1つのコーティングとして基材に適用」されてなるものである。また、引用発明の「発色化合物」は、「10,12-ドコサジイン二酸のプロパルギルアミン誘導体、すなわち、10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミド」である。
ここで、本件補正発明の「レーザー書き込み可能な顔料」には、「10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミド」が含まれる(本件出願の明細書の【0156】)。また、引用発明の「コーティング」は、「発色化合物及び光吸収剤」を含むものであるから、組成物であるということができる。
そうしてみると、引用発明の「10,12-ドコサジイン-ビス-プロパルギルアミド」及び「コーティング」は、それぞれ本件補正発明の「レーザー書き込み可能な顔料」及び「組成物」に相当する。また、引用発明の「コーティング」は、本件補正発明の「組成物」における「レーザー書き込み可能な顔料を含む」という構成を具備する。

(イ)フィルム
引用発明の「イメージ形成された基材」は、「発色化合物及び光吸収剤が、1つのコーティングとして基材に適用され」、「活性化が、CO_(2)レーザーによって供給される光を用いて行われ」、「基材が、続いて200から450nmの波長範囲の光に曝露され、それによって基材の活性化部分に色変化反応を引き起こしてイメージが形成させ」てなるものである。
そうしてみると、引用発明の「イメージ形成された基材」は、本件補正発明の「フィルム」に相当するとともに、両者は、「レーザー書込み可能な顔料を含む組成物を組み込んだ、レーザー書込み可能な」「フィルム」の点で共通する。
(当合議体注:本件補正発明における「組み込んだ」という構成が、「コーティング」を含む概念であることは、本件出願の特許請求の範囲の請求項14が請求項1の記載を引用していることからみて明らかといえるが、仮に、そうでないとしても、引用文献1には、発色化合物及び光吸収剤を基材に埋設する構成(例:請求項17)も開示されており、結論を左右しない。)

イ 一致点及び相違点
(ア)本件補正発明と引用発明は、次の構成で一致する。
(一致点)
「 レーザー書込み可能な顔料を含む組成物を組み込んだ、フィルム。」

(イ)本件補正発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
「フィルム」について、本件補正発明は、「ラベリング用、包装用またはセキュリティー用フィルム」であって、「レーザー書き込み前には透明かつ/または無色」であるのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。

(相違点2)
レーザー書込み可能な顔料粒子」について、本件補正発明は、「少なくとも50%が1ミクロン未満の粒径を有し」、「50%までの粒子においての最大寸法であるd_(50)値が100ナノメートル未満」のものであるのに対して、引用発明は、このように特定されたものではない点。

(相違点3)
「フィルム」について、本件補正発明は、「70超の光沢度の光沢(45°)を有する」のに対し、引用発明は、このように特定されたものではない点。

ウ 判断
以下、相違点1-3について検討する。

(ア)相違点1及び相違点2について
引用発明の「イメージ形成された基材」を「ラベリング用、包装用またはセキュリティー用」の「レーザー書き込み前には透明かつ/または無色」のフィルムとすることは、引用発明における自明な用途にすぎない(例えば、引用文献1の【0089】)には、「一次および二次パッケージング」、「裏面の接着剤と組み合わせたラベル」及び「セキュリティ文書」に用いることが記載され、【0002】?【0009】には、発色前には無色のものを青色等に色変化させることが記載されている。)。
そして、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明の要件を満たすものとすることは、引用発明を上記用途において具体化するに際しての、最適化の範囲内の事項にすぎない。
すなわち、引用発明を上記用途において具体化する当業者ならば、イメージの見栄えを考慮して、全くの無色のものが明瞭な青色等に変化するよう引用発明のコーティングを設計するといえる。そして、顔料の粒径は望ましい散乱の程度に応じて適宜設定すべきものであるから、引用発明を上記用途において10nm?100nmの範囲の粒径とすることは、当業者における最適化の範囲内の事項といえる(引用文献2の【0030】、【0031】及び【0036】を参照。)。
そうしてみると、引用発明の「イメージ形成された基材」を、「ラベリング用、包装用またはセキュリティー用」の「レーザー書き込み前には透明かつ/または無色」のフィルムとすること、その際、引用発明の「発色化合物」を、「少なくとも50%が1ミクロン未満の粒径を有し」、「50%までの粒子においての最大寸法であるd_(50)値が100ナノメートル未満」のものとすることは、引用文献1の示唆に基づいて引用発明を具体化する当業者における、通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。

(イ)相違点3について
上記(ア)で述べた引用発明の用途を考慮すると、引用発明の「イメージ形成された基材」を「70超の光沢度の光沢(45°)を有する」ものとすることもまた、引用発明を上記用途において具体化するに際しての、最適化の範囲内の事項にすぎない。
すなわち、「45°」の測定条件は、鏡面光沢度の測定規格のものであり、「70超」という値についても、通常求められる程度のものにすぎない(必要ならば、特開平9-328617号公報の【0001】、【0053】、【0054】、【0063】、【0064】、【0071】及び【0072】、特開平11-343357号公報の【0001】、【0025】、【0031】、【0039】、特開2007-30472号公報の【0001】、【0030】、【0031】、【0033】、【0037】、【0041】等を参照されたい。)。
そうしてみると、引用発明の「イメージ形成された基材」を「70超の光沢度の光沢(45°)を有する」ものとすることは、引用文献1の示唆に基づいて引用発明を具体化する当業者における、通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。

エ 本件補正発明の効果について
本件出願の明細書には、本件補正発明の効果とされる明示的な記載はないが、【0053】-【0056】には、d_(50)値を100nm未満とすることで、高光沢、透明色の製品が生じ、こうした製品は広範な色域にわたって優れた光学的特性を有するものとなることが記載されている。
また、審判請求人は、平成29年8月3日付け審判請求書において、概略、以前は極めて小粒径の顔料を用いることに利点はなく、大規模な粉砕加工の必要性や増粘による加工性の悪化することから回避されてきたのに対し、本件補正発明では、粒径の減少によって光学的特性が改善され、加工性が低下しないものであって、高光沢であることから美観的にも商業的にも望ましく、さらに、マーキング時のエネルギー入力が少なくなる旨主張している。
しかしながら、本件出願の明細書の【0156】-【0183】に記載されている実施例において、サイズ/nm(当合議体中:本数値は、d_(50)値に相当するものと判断した。)が100nm未満のものは、【0166】の【表3】に記載されている試料9のみであって、【0170】の【表4】に記載されている結果を勘案すると、試料9が他の試料(試料1-8、10-20)に比して顕著な効果を奏するとは認められない。
具体的には、表4において試料9が最も高い光沢を示しているが、粒径を小さくするほど光沢等に優れたものになることは、例えば、伊藤征司郎編、「顔料の事典」、株式会社朝倉書店、2000年9月25日発行、266、267、503及び519頁の記載(特に、266頁右欄10行?277頁左欄14行、503頁左欄2行?右欄7行、519頁左欄18行?最下行、図IV2.2等参照)からも理解できる事項であり、最も粒径の小さい含量を用いた試料9が高光沢となることが、当業者が予測し得ない格別なものであるとは認められない。また、光沢以外の他の項目については、試料9が最も優れた数値を有しているわけではないことから、試料9が有する効果は引用発明と同程度のものであると認められる。さらに、本件出願の明細書には、試料9と他の試料との加工性やマーキング時のエネルギー入力の差異が示されておらず、また粒径を100nm以下とすることは、上記ウ(イ)に記載のとおり、周知技術であることから、小粒径化することによる効果が格別なものであるとは認められない。
以上より、本件補正発明の効果が、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものであるとは認められない。

(当合議体注:上記「顔料の事典」の引用箇所(266、267、502、503及び509頁)は以下のとおりである。
266頁:

267頁:

502頁:

503頁:

519頁:

)

オ 小括
本件補正発明は、引用文献2に記載された事項ないし周知技術を心得た当業者が、引用発明に基づいて容易に発明できたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年8月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年11月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-22に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2012-523013号公報
引用文献2:特表2012-520905号公報
引用文献3:特表2012-506786号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)-(4)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記レーザー書込み可能な顔料粒子の粒径は、50%までの粒子においての最大寸法であるd_(50)値が100ナノメートル未満であり、70超の光沢度の光沢(45°)を有する」という要件を削除したものである。
そうしてみると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用文献2に記載された事項ないし周知技術を心得た当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された事項ないし周知技術を心得た当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-29 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-17 
出願番号 特願2015-548759(P2015-548759)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41M)
P 1 8・ 121- Z (B41M)
P 1 8・ 572- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 定文宮澤 浩  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
川村 大輔
発明の名称 フィルム  
代理人 片山 健一  
代理人 大野 聖二  
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