• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1346684
審判番号 不服2017-10808  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-20 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2013- 41569「電動機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日出願公開、特開2014-171315〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月4日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年10月27日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月18日付け:拒絶査定
平成29年 7月20日:審判請求書
平成29年 7月20日:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成30年 6月26日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月27日:意見書

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「電動機ケース内に、回転子と共に回転軸上に固定されるファンを備え、回転子に軸方向に貫通する風穴が設けられ、ファンの回転で電動機ケース内に吸込まれた外気が冷却風となって風穴に軸方向一方から他方に向けて流れるようにした電動機において、
風穴は、軸方向一方から他方に向けて径方向外方に傾斜し、
前記回転子に、前記回転軸の軸線と平行に軸方向に貫通する貫通穴が形成され、この貫通穴に嵌合する風穴部材を備え、この風穴部材に前記風穴を形成し、
前記風穴部材は、非磁性体で形成されることを特徴とする電動機。」

第3 拒絶の理由
平成30年6月26日付けの当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平6-105492号公報
引用文献2:特開2010-268659号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【請求項1】 固定子と回転子を備えると共に内部に通風ファンを設け、この通風ファンの吸引力により軸方向一端側から冷却風を内部に導入し、軸方向他端側から外部に排出して冷却する構成とした誘導主電動機において、前記回転子を構成するロータ鉄心の軸方向に貫通して設けた複数の通風穴に冷却風流通穴を形成した中空棒状部材を挿入し、この両端部で前記ロータ鉄心に固定し、前記冷却風流通穴は軸心を前記冷却風の流れ方向に沿って傾斜させて構成したことを特徴とする誘導主電動機。」

(2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に電車等の鉄道車両に使用する誘導主電動機に係り、特に保守回帰の延長を図るようにした構造の改良に関するものでる。」(なお、「ものでる。」は、「ものである。」の誤記である。)

(3)「【0002】
【従来の技術】鉄道車両に使用する誘導電動機(以下、モータという)の一般的構造としては、図7に示すものが知られている。すなわち、同図において、1はモータのフレームで、このフレーム1は円筒状に形成され、この内周面にステータ鉄心2をステータ鉄心押え3で両端から押え付けて取付けると共に、このステータ鉄心2の内周面にスロットを介してステータコイル4を取付け、ステータ(固定子)を構成している。
【0003】また、フレーム1の一方の端部の端板5に嵌合したハウジング6と、フレーム1の他方の端部に嵌合した鏡蓋7にそれぞれ軸受8a,8bを取付け、この両軸受8a,8bを介してシャフト(ロータ軸)9を回転自在に支持している。このシャフト9にロータ鉄心10をロータ鉄心押え11で両端から押え付けて固着している。このロータ鉄心10の外周面にスロットを介しロータバー12を取付け、このロータバー12の両端にリング状のエンドリング(短絡環)13を溶着して、かご形ロータ(回転子)を構成している。
【0004】ところで、モータは、車両床下の台車内の非常に狭い取付スペースの中に(図示せず)出力 100kW? 200kW程度の大容量のものを艤装しなければならないので、ステータコイル4やロータバー12から発生した熱を効率良く冷却し、モータの小型軽量化を図る必要が有る。
【0005】この冷却方式には、自己通風冷却形と他力強制通風形がある。上述したモータは、前者の自己通風冷却形である。そこで、このモータは、フレーム1外周の軸方向一端側に冷却風入口14を設け、この冷却風入口14の上部にろ過器15を構成し、これと反対の軸方向他側のフレーム1の内部に通風ファン16をシャフト9に取付けると共に、通風ファン16の外周に配列される状態で多数の排風口17をフレーム1に形成している。
【0006】このような構成において、モータが回転すると、シャフト9と一体に通風ファン16が回転し、この吸引作用でろ過器15を介して冷却風18を冷却風入口14からフレーム1内一端側に導入し、この冷却風18をステータ鉄心2とロータ鉄心10との間に形成されたギャップ19およびロータ鉄心10に軸方向に貫通して設けた多数の通風穴20に矢印で示すように通風させ、ステータコイル4やロータバー12を直接冷却すると共に、ステータ鉄心2やロータ鉄心10を介して間接的に冷却しながら排風口17よりフレーム1外に排気する。」

(4)「【0008】このような状態で、長期(6?7年)にわたりモータを使用すると、特にロータ鉄心10に軸方向に貫通して設けた多数の通風穴20は積層された鉄心で構成されているため、通風穴20の内周面は平滑ではなくて凹凸があり、また、ロータ鉄心10が回転している。したがって、通風穴20に侵入した塵埃21は、遠心力を受けて通風穴20の内周面に蓄積され、通風穴20の目づまりが発生する。」

(5)「【0010】そこで、本発明の目的は、モータの冷却風と共に内部に侵入した塵埃がロータ鉄心の軸方向に貫通して設けた通風穴を通過するときに、塵埃が通風穴の内周面に蓄積して通風穴が目づまりすることを防止し、保守回帰の延長を図るようにしたモータを提供することにある。」

(6)「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例の上半部を示す縦断面図である。
【0014】同図において、1はフレーム、2はステータ鉄心、3はステータ鉄心押え、4はステータコイル、5は端板、6はハウジング、7は鏡蓋、8a,8bは軸受、9はシャフト、10はロータ鉄心、12はロータバー、13はエンドリング、14は冷却風入口、15はろ過器、16は通風ファン、17は排風口、19はギャップで、これらは上述した従来モータのものと同一の構成であり、ロータ鉄心10に形成された複数の通風穴20に穴あきスタット22を固定する。
【0015】この穴あきスタット22は、図2に示すように長さをロータ鉄心10の長さより長くし、両端に設けたねじ(図示しない)にナット23をねじ込んでロータ鉄心10に固定する。この穴あきスタット22の固定により、ロータ鉄心10も締め付けられ固定する。また、穴あきスタット22には、シャフト9の軸心に対し冷却風18の流れ方向に傾斜(反通風ファン側から通風ファン側に向かって斜め上り)した穴22aを設ける。穴22aは、穴あきスタット22の軸心に対し傾斜している。
【0016】次に、以上のように構成された実施例の作用を説明する。モータを回転させると、シャフト9 と一体になっている通風ファン16が回転し、この吸引作用によってろ過器15を介して冷却風18を冷却風入口14からモータ内に導入し、ステータコイル4,ロータバー12,ステータ鉄心2およびロータ鉄心10等を冷却する。
【0017】この冷却風18中には、上述したように車両床下廻りの空気をモータ内に導入するため、塵埃21が多く含まれており、ろ過器15の性能ではこの塵埃21の全てを取り除くことができず約20?30%程度の塵埃21が含まれている。この塵埃21は、ロータ鉄心10の通風穴20中に設けた穴あきスタット22の穴22aを通過する時に図2に示すように通風ファン(図示しない)側へ吸引される力aとロータ鉄心10の回転による遠心力bが働き、この2つの力のベクトル和のcの方向に動こうとする。ところが、穴あきスタット22の穴22aを冷却風18が流れる方向に対して斜め上りに傾斜させ、しかも内面を平滑にしているから、塵埃21は穴あきスタッド22の穴22a内に蓄積することなくロータ鉄心10外部に容易に運ばれ、通風ファン16を通ってモータ外へ排出することができる。
【0018】したがって、長期間にわたりモータを運転しても、通風穴20に取付けた穴あきスタット22内の穴22aが目づまりすることがないので、冷却風18はモータ内を適量流れ、ステータコイル4,ロータバー12の温度が過大に上昇することがなく、保守回帰の延長を図ることができる。
【0019】また、従来の通風穴20中に穴あきスタット22を設けるので、モータの特性に影響するロータ鉄心10内の磁束密度も従来のモータと同じにすることができ、穴あきスタット22を設けることによりロータ鉄心10の直径を大きくする必要がなく、しかもロータ鉄心10を両側からナット23で強固に締付けるようにしているので、ロータ鉄心押え11も省くことができ、モータの小型軽量化を図ることができる。なお、本発明は、上述した実施例(以下、第1実施例という)に限定されるものではなく、種々変形実施できる。」

(7)上記(3)及び(6)の記載、及び引用文献1の【図1】の記載から、ステータ鉄心2及びロータ鉄心10等は、フレーム1と端板5、鏡蓋7により囲まれた空間に配置されていることから、フレーム1と端板5、鏡蓋7はケースを構成しているといえる。

(8)上記(3)の下線部の記載、及び【図1】の記載からみて、引用文献1に記載されたモータは、ケース内にロータ鉄心と共にシャフト9上に固定される通風ファン16を備えているといえる。

(9)上記(3)の下線部の記載より、引用文献1に記載されたモータは、モータが回転すると、シャフト9と一体に通風ファン16が回転し、冷却風18を冷却風入口14からフレーム1内一端側に導入し、ステータコイル4やロータバー12を直接冷却すると共に、ステータ鉄心2やロータ鉄心10を介して間接的に冷却しながら排風口17よりフレーム1外に排気するものであり、【図1】の記載より、冷却風入口14は、モータの軸方向一方にあり、排風口17は、モータの軸方向の他方にあることから、引用文献1に記載されたモータは、通風ファン16の回転でケース内に吸込まれた外気が冷却風となって穴22aに軸方向一方から他方に向けて流れるといえる。

(10)上記(6)の下線部の記載より、穴あきスタット22に、シャフト9の軸心に対し冷却風18の流れ方向に傾斜した穴22aが形成され、引用文献1の【図1】の記載からみて、この傾斜は径方向外方への傾斜であるといえることから、穴22aは、冷却風が流れる方向である軸方向一方から他方に向けて径方向外方に傾斜しているといえる。

(11)上記(6)の下線部の記載より、ロータ鉄心10に形成された通風穴20に穴あきスタット22を固定することから、ロータ鉄心10に、通風穴20が形成され、この通風穴20に固定される穴あきスタット22をモータは備えている。そして、引用文献1の【図1】の記載、及び穴あきスタット22の固定により、ロータ鉄心10も締め付けられ固定すること(上記(6)参照)、シャフト9にロータ鉄心10を固着していること(上記(3)参照)からみて、通風穴20は、シャフト9の軸線と平行に軸方向に貫通しているといえる。したがって、引用文献1に記載されたモータは、ロータ鉄心10に、前記シャフト9の軸線と平行に軸方向に貫通する通風穴20が形成され、この通風穴20に固定される穴あきスタット22を備えているといえる。さらに、上記(10)より、この穴あきスタット22に、穴22aが形成されることから、結局、穴22aは、穴あきスタット22が備えられるロータ鉄心10に軸方向に貫通して設けられる穴であるといえる。

2 引用発明
上記1の記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「ケース内に、ロータ鉄心10と共にシャフト9上に固定される通風ファン16を備え、ロータ鉄心10に軸方向に貫通する穴22aが設けられ、通風ファン16の回転でケース内に吸込まれた外気が冷却風となって穴22aに軸方向一方から他方に向けて流れるようにしたモータにおいて、
穴22aは、軸方向一方から他方に向けて径方向外方に傾斜し、
前記ロータ鉄心10に、前記シャフト9の軸線と平行に軸方向に貫通する通風穴20が形成され、この通風穴20に固定される穴あきスタット22を備え、この穴あきスタット22に前記穴22aを形成したモータ。」

3 引用文献2の記載
(1)「【請求項1】
中心部に回転軸取付部を有し、外周側に複数の永久磁石取付部を有する鋼板を積層してなる永久磁石式電動機回転子の冷却構造であって、
前記回転子の内部に前記鋼板を積層方向に貫通して設けられ、冷媒が流通する冷媒通路と、
前記回転子の内部に前記鋼板を積層方向に貫通して設けられ、前記冷媒通路に対し回転子半径方向外側に配置されるスリットと、を備え、
前記スリットは、前記回転子を軸方向に視たときに、前記冷媒通路の回転子半径方向外側を囲む屈曲形状をなし、
前記スリット内の全域に樹脂を充填したことを特徴とする永久磁石式電動機回転子の冷却構造。」

(2)「【0029】
電動機の固定子・回転子は、損失低減のため、順送プレスにて打抜き成形された薄板鋼板を積層して製造されるが、自動車駆動用の永久磁石式電動機回転子には、通常、軽量化のためのプレス抜き貫通孔(軽量化孔)が配設される。従って、この軽量化孔を冷媒通路として用い、冷媒を流して、回転子磁石冷却を行う。
【0030】
しかしながら、回転子は、薄板鋼板を積層して製造されており、積層鋼板間には微小な隙間が存在する。また、回転子とその内部を流通する冷媒には遠心力が加わる。従って、プレス抜きによる軽量化孔にそのまま冷媒を流すと、遠心力により積層鋼板間の微小な隙間から冷媒が外径側に漏洩し、固定子・回転子間のギャップ(空気層)に浸入することで、そのせん断粘性により攪拌損失が増大し、電動機の出力低下につながる。従って、固定子・回転子間のギャップへの冷媒流出を防ぐ必要がある。
【0031】
このため、図2の参考例(1)に示すように、軽量化孔(冷媒通路)11の内周に樹脂(ハッチングで示す)をモールド成形して被覆し、外周側への冷媒の浸入を防止することが考えられるが、電動機軸長が長いものに対しては、モールド後の型抜きが困難となる。
【0032】
また、図3の参考例(2)に示すように、軽量化孔11の内部に非磁性材料で成形された冷媒通路形成用のパイプ12材を配設し、軽量化孔11とパイプ材12との間に樹脂(ハッチングで示す)を充填してモールド固定し、パイプ材12の内部に冷媒を流すことが考えられるが、軽量化孔11のほぼ全体に樹脂を充填することになり、軽量化効果が大きく低減される。
【0033】
また、図4の参考例(3)に示すように、軽量化孔13とは別に孔14を設けて、この別の孔14に冷媒通路形成用のパイプ材14を挿入して樹脂(ハッチングで示す)で固定することも考えられる。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「ケース」は、本願発明の「電動機ケース」に相当し、また、引用発明の「ロータ鉄心10」、「シャフト9」、「通風ファン16」、「穴22a」、「モータ」、「通風穴20」は、それぞれ本願発明の「回転子」、「回転軸」、「ファン」、「風穴」、「電動機」、「貫通穴」に相当する。
また引用発明の「穴あきスタット22」は、本願発明の「風穴部材」に相当し、また、引用発明の「通風穴20に固定される穴あきスタット22」は、穴あきスタット22が通風穴20に嵌合して固定されると解されるから、本願発明の「貫通穴に嵌合する風穴部材」に相当する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の[一致点]で一致し、[相違点]で相違する。

[一致点]
電動機ケース内に、回転子と共に回転軸上に固定されるファンを備え、回転子に軸方向に貫通する風穴が設けられ、ファンの回転で電動機ケース内に吸込まれた外気が冷却風となって風穴に軸方向一方から他方に向けて流れるようにした電動機において、
風穴は、軸方向一方から他方に向けて径方向外方に傾斜し、
前記回転子に、前記回転軸の軸線と平行に軸方向に貫通する貫通穴が形成され、この貫通穴に嵌合する風穴部材を備え、この風穴部材に前記風穴を形成した電動機。」

[相違点]
本願発明は、風穴部材が、非磁性体で形成されるのに対し、引用発明は、風穴部材に相当する穴あきスタット22が非磁性体であることについて特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。まず、引用文献2には、電動機の回転子1に設ける冷却用のパイプ材12を非磁性材料で成形することが記載(上記 第4 3 (2)参照。)されている。
そして、相違点として認定したように引用発明は、穴あきスタット22が非磁性体であることについて特定されていないが、通常、モータの回転子において、その磁場が乱されないようにするため、鉄心やコイル以外の部材は非磁性体で構成されており、引用発明の穴あきスタット22を非磁性体とすることに阻害要因はない。さらに、引用文献1に記載されたモータと引用文献2に記載された電動機とは、冷却用のパイプを回転子に有する点で共通することから、引用文献1に記載されたモータの穴あきスタット22に、引用文献2に記載された非磁性材料で冷却用のパイプを成型することを適用し、引用文献1に記載されたモータの穴あきスタット22を非磁性材料とすることは当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易にすることができた発明である。
また、電動機の回転子に設ける部材を非磁性材料で形成することは、周知技術(周知例として上記引用文献2の外に、特開2009-303293号公報(段落【0017】参照。)、特開2013-17297号公報(段落【0017】参照。樹脂部材46は、非磁性材料であると認められる。)、特開2009-261059号公報(段落【0030】、【0031】参照。)がある。)であり、引用発明のモータの穴あきスタット22も、回転子に設けられる部材であるから、これを周知技術に基づいて非磁性材料とすることは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易にすることができた発明である。
審判請求人は、平成30年8月27日付けの意見書において、本願発明で風穴部材を非磁性体で形成するのは、回転子の軸方向一方と他方で風穴の径方向位置の差に起因する磁気特性の偏りを防止することを目的としており、この目的は、引用文献1等には何ら開示も示唆もされていないから、冷媒通路の形成部材の材料として非磁性体が公知又は周知であったとしても、非磁性体から形成された冷媒通路の形成材料を引用文献1に記載された穴あきスタット22に適用することの動機付けがない旨を主張している。
しかし、引用文献1には、上記第4 1(6)に摘記したように、「従来の通風穴20中に穴あきスタット22を設けるので、モータの特性に影響するロータ鉄心10内の磁束密度も従来のモータと同じにすることができ」る旨の記載があり、穴あきスタット22を設けた引用発明のロータ鉄心10内の磁束密度が従来のモータ、すなわち、穴あきスタット等を設けないモータと同じにできることが示唆されている。そして、穴あきスタット22を設けたにもかかわらず、ロータ鉄心10内の磁束密度が穴あきスタット22を設けない従来のモータと変わらないためには、この穴あきスタット22が、ロータ鉄心10内の磁束密度に影響しないものであることを要し、引用文献2に記載された非磁性材料で成形された冷却用のパイプ材12や上記のように周知技術である非磁性材料で形成された電動機の回転子に設ける部材は、非磁性材料であるため、ロータ鉄心内の磁束密度に与える影響が小さく、モータの特性に影響するロータ鉄心内の磁束密度を従来のモータと同じにすることができるものである。したがって、引用文献1には、穴あきスタット22を非磁性材料とすることの動機付けがあるといえ、請求人の上記主張は採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-26 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2013-41569(P2013-41569)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀和  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 堀川 一郎
長馬 望
発明の名称 電動機  
代理人 特許業務法人青莪  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ