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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1346703
審判番号 不服2018-180  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-09 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2012-242527号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月19日出願公開、特開2014-90844号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月2日の出願であって、平成28年6月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年3月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月6日付けで、同年5月12日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を補正するものであり、本件補正前の平成28年9月1日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Mについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段と、
B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類を含む複数の当選種類を予め規定する当選種類規定手段と、
D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段と、
E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段と、
G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段とを備える
M 遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機において、
C 前記当選種類規定手段は、
C1 前記複数の当選種類として特殊当選種類を規定しており、
H 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特殊当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して前記低確率状態から前記高確率状態に移行させるとともに、少なくとも通常の頻度で前記抽選契機が発生する非時間短縮状態から、この非時間短縮状態に比較して高い頻度で前記抽選契機の発生が可能となる時間短縮状態に移行させることにより高確率時間短縮状態に移行させる高確率時間短縮状態移行手段と、
I 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特殊当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特殊当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特殊当選種類の振分値を少なく規定する特殊当選種類振分値規定手段とをさらに備えることを特徴とする
M 遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段と、
B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類及び前記特定当選種類を構成する複数の当選種類のうちの一部の当選種類である特殊当選種類を含む複数の当選種類を予め規定するとともに、前記図柄に含まれる第1図柄及び第2図柄の両方の図柄に関する当選種類を予め規定する当選種類規定手段と、
D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段と、
E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段と、
G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段と、
H 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特殊当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して前記低確率状態から前記高確率状態に移行させるとともに、少なくとも通常の頻度で前記抽選契機が発生する非時間短縮状態から、この非時間短縮状態に比較して高い頻度で前記抽選契機の発生が可能となる時間短縮状態に移行させることにより高確率時間短縮状態に移行させる高確率時間短縮状態移行手段と、
I 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特殊当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特殊当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特殊当選種類の振分値を少なく規定する特殊当選種類振分値規定手段とを備え、
J 前記特別遊技は、
J1 複数の単位遊技により構成されており、
K 前記単位遊技は、
K1 利益獲得困難遊技として実行される場合と前記利益獲得困難遊技よりも実質的な利益が得られやすい利益獲得容易遊技として実行される場合があり、
L 1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しないことを特徴とする
M 遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項2が引用する補正前の請求項1及び補正前の請求項2に記載された発明特定事項であるCの「当選種類規定手段」について、補正前の請求項2の「C 前記当選種類規定手段は、C1 前記複数の当選種類として特殊当選種類を規定して」いるだけでなく、「特殊当選種類」が「前記特定当選種類を構成する複数の当選種類のうちの一部の当選種類である」ことを限定するとともに、「前記図柄に含まれる第1図柄及び第2図柄の両方の図柄に関する当選種類を予め規定する」ものであることを限定し、さらに、補正前の請求項2が引用する補正前の請求項1のEに記載された発明特定事項である「特別遊技実行手段」が「実行する」「特別遊技」について、「J 前記特別遊技は、J1 複数の単位遊技により構成されており、K 前記単位遊技は、K1 利益獲得困難遊技として実行される場合と前記利益獲得困難遊技よりも実質的な利益が得られやすい利益獲得容易遊技として実行される場合があり、L 1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない」ことを限定したものである。
そして、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0013】、【0022】、【0303】、【0306】?【0322】及び【0326】?【0344】並びに【図23】?【図25】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
平成29年10月6日付けの補正の却下の決定で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-179301号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0017】
(10)所定の当選態様で図柄が停止表示されると、通常とは異なる特別な条件が適用された特別遊技が実行される。特別遊技は、基本的には、7ラウンド大当り遊技や14ラウンド大当り遊技等の遊技に該当するが、14ラウンド大当りであるが実質的に7ラウンド大当りと同様の利益が得られる大当り等も含まれる概念である。」

「【0093】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、パチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」と略称する。)1の正面図である。また図2は、パチンコ機1の背面図である。パチンコ機1は、遊技球を遊技媒体として用いるものであり、遊技者は、遊技場運営者から遊技球を借り受けてパチンコ機1による遊技を行う。なお、パチンコ機1における遊技において、遊技球はその1個1個が遊技価値を有した媒体であり、遊技の成果として遊技者が享受する特典(利益)は、例えば遊技者が獲得した遊技球の数に基づいて遊技価値に換算することができる。以下、図1及び図2を参照して遊技機の全体構成について説明する。」

「【0109】
図3は、遊技盤8の一部(窓4a内の右下位置)を拡大して示す正面図である。第1特別図柄表示装置34及び第2特別図柄表示装置35は、例えばそれぞれ7セグメントLED(ドット付き)により特別図柄の変動状態と停止状態とを表示することができる(図柄表示手段)。」

「【0185】
本実施形態では、上始動入賞口スイッチ80又は下始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号(ON)が入力されると、主制御CPU72はそれぞれ第1特別図柄又は第2特別図柄に対応した内部抽選の契機(抽選契機)となる事象が発生したと判定する。またゲートスイッチ78から通過検出信号(ON)が入力されると、主制御CPU72は普通図柄に対応した抽選契機となる事象が発生したと判定する。いずれかの事象が発生したと判定すると、主制御CPU72は、それぞれの発生事象に応じた処理を実行する。なお、上始動入賞口スイッチ80又は下始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号が入力された場合に実行される処理については、さらに別のフローチャートを用いて後述する。
【0186】
ステップS205,ステップS206:主制御CPU72は、割込管理処理中において特別図柄遊技処理及び普通図柄遊技処理を実行する。これら処理は、パチンコ機1における遊技を具体的に進行させるためのものである。このうち特別図柄遊技処理(ステップS205)では、主制御CPU72は先に述べた第1特別図柄又は第2特別図柄に対応する内部抽選の実行を制御したり、第1特別図柄表示装置34及び第2特別図柄表示装置35による変動表示や停止表示を制御したり、その表示結果に応じて可変入賞装置30の作動を制御したりする。なお、特別図柄遊技処理の詳細については、さらに別のフローチャートを用いて後述する。」

「【0260】
ステップS5000:可変入賞装置管理処理は、先の特別図柄停止表示中処理において当りの態様(非当選以外の態様)で特別図柄が停止表示された場合に選択される。例えば、特別図柄が14ラウンド大当りの態様で停止表示されると、それまでの通常状態から大当り遊技状態(遊技者にとって有利な特別遊技状態)に移行する契機が発生する。大当り遊技中は、先の実行選択処理(ステップS1000)においてジャンプ先が可変入賞装置管理処理にセットされ、特別図柄の変動表示は行われない。可変入賞装置管理処理においては、大入賞口ソレノイド90が一定時間(例えば29秒間又は9個の入賞をカウントするまで)、予め設定された連続作動回数(例えば7回、14回)にわたって励磁され、これにより可変入賞装置30が決まったパターンで開閉動作する(特別電動役物の連続作動)。この間に可変入賞装置30に対して遊技球を集中的に入賞させることで、遊技者には、まとまって多くの賞球を獲得する機会が与えられる(特別遊技実行手段)。なお、このように大当り時に可変入賞装置30が開閉動作することを「ラウンド」と称し、連続作動回数が全部で14回あれば、これらを「14ラウンド」と総称することがある。本実施形態では、大当りの種類として14ラウンド大当りだけでなく、その他に複数種類の7ラウンド大当りが設けられている。また14ラウンド大当りや7ラウンド大当りについては、その中に複数の当選種類(当選図柄)が設けられている。
【0261】
また、主制御CPU72は可変入賞装置管理処理において大入賞口開放パターン(ラウンド数と1ラウンドごとの開閉動作の回数、開放時間等)を設定すると、1ラウンド分の可変入賞装置30の開閉動作を終了させるごとにラウンド数カウンタの値を1インクリメントする。ラウンド数カウンタの値は、例えば初期値を0としてRAM76のカウント領域に記憶されている。また主制御CPU72は、ラウンド数カウンタの値を表すラウンド数コマンドを生成する。ラウンド数コマンドは、演出制御出力処理(図8中のステップS212)において演出制御装置124に送信される。ラウンド数カウンタの値が設定した連続作動回数に達すると、主制御CPU72はそのラウンド限りで大当り遊技(大役)を終了する。
【0262】
そして、大当り遊技を終了すると、主制御CPU72は遊技状態フラグ(確率変動機能作動フラグ、時間短縮機能作動フラグ)に基づいて大当り遊技終了後の状態(高確率状態、時間短縮状態)を変化させる。「高確率状態」では確率変動機能が作動し、内部抽選での当選確率が通常よりも例えば10倍程度に高くなる(特定遊技状態移行手段、高確率状態移行手段、高確率状態設定手段)。また「時間短縮状態」では時間短縮機能が作動し、上記のように普通図柄の作動抽選が高確率になり、また普通図柄の変動時間が短縮されるとともに可変始動入賞装置28の開放時間が延長されて開放回数が増加する(いわゆる電チューサポートが行われる)。なお、「高確率状態」及び「時間短縮状態」については、制御上でいずれか一方だけに移行する場合もあれば、これら両方に合わせて移行する場合もある。」

「【0288】
ステップS2410:主制御CPU72は、大当り時停止図柄決定処理を実行する(当選種類決定手段、第1図柄当選種類決定手段、第2図柄当選種類決定手段)。この処理では、主制御CPU72は大当り図柄乱数に基づき、特別図柄別(第1特別図柄又は第2特別図柄)に今回の当選図柄の種類(大当り時停止図柄番号)を決定する。大当り図柄乱数値と当選図柄の種類との関係は、予め特別図柄判定データテーブルで規定されている(当選種類規定手段、第1図柄当選種類規定手段、第2図柄当選種類規定手段)。このため主制御CPU72は、大当り時停止図柄決定処理において大当り時停止図柄選択テーブルを参照し、その記憶内容から大当り図柄乱数に基づいて当選図柄の種類を決定することができる。」

「【0292】
〔第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル〕
図16は、第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルの構成列を示す図である。主制御CPU72は、今回の大当りの結果が第1特別図柄に対応する場合、図16に示される第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定する。
【0293】
第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル中、左カラムには当選図柄別の振分値が示されており、各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「48」,「27」は分母を100とした場合の割合に相当する。また左から2番目のカラムには、各振分値に対応する「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」が示されている。すなわち、第1特別図柄に対応する大当り時には、「7ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「7ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)である。また、「7ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)である。また、「7ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の48(=48%)であり、「7ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の27(=27%)である。各振分値の大きさは、大当り図柄乱数を用いた当選図柄別の選択比率に相当する。したがって、全体として第1特別図柄についての確変図柄の選択比率は79%である。」

「【0297】
「7ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は0回付与される。なお、時短回数が0回付与されるとは、実質的に時短回数が付与されない状態と同様の状態を意味する。
「7ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与される。
「7ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は0回付与される。
なお、「7ラウンド通常図柄1?3」については、時間短縮状態中での当選であれば、それぞれ30回、50回、100回の時短回数を付与することとしてもよい。
【0298】
「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与される。
「7ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与される。
「7ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与される。したがって、「7ラウンド確変図柄2」で当選した場合、高確率状態には移行するが、時間短縮状態には移行されないため、いわゆる潜伏確変状態に移行される。
【0299】
〔第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル〕
図17は、第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルの構成列を示す図である。主制御CPU72は、今回の大当りの結果が第2特別図柄に対応する場合、図17に示される第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定する。
【0300】
第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルにおいても、その左カラムには当選図柄別の振分値が示されており、各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「75」は分母を100とした場合の割合に相当する。同様に左から2番目のカラムには、各振分値に対応する「14ラウンド通常図柄1」、「14ラウンド通常図柄2」、「14ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「14ラウンド確変図柄2」が示されている。すなわち、第2特別図柄に対応する大当り時においては、「14ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「14ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)である。また、「14ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)である。また、「14ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の75(=75%)である。したがって第2特別図柄についても、全体として確変図柄の選択比率は79%である。ただし、第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルには、「7ラウンド通常図柄1?3」、「7ラウンド確変図柄1,2」についての振分値は設定されていない。」

「【0303】
〔時短回数〕
第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルの左から4番目のカラム(右カラム)には、大当り遊技の終了後に付与される時短回数の値が示されている。時短回数の具体的な値は、以下の通りである。
「14ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は30回付与される。
「14ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は50回付与される。
「14ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は100回付与される。
「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与される。
「14ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は10000回付与される。」

「【0310】
〔図14:特別図柄変動前処理を参照〕
ステップS2414:次に主制御CPU72は、大当り時その他設定処理を実行する。この処理では、主制御CPU72は先のステップS2410で決定した当選図柄の種類(大当り時停止図柄番号)が「7ラウンド確変図柄1,2」、「14ラウンド確変図柄1,2」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグの値(01H)をRAM76のフラグ領域にセットする(高確率状態移行手段、確率変動機能作動手段)。また、主制御CPU72は、先のステップS2410で決定した当選図柄の種類が「7ラウンド通常図柄1?3」、「14ラウンド通常図柄1?3」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグの値をリセットする(低確率状態設定手段、低確率状態移行手段)。
【0311】
また主制御CPU72は、先のステップS2410で決定した当選図柄の種類(大当り時停止図柄番号)が「14ラウンド確変図柄1,2」、「7ラウンド確変図柄1」、「14ラウンド通常図柄1?3」のいずれかである場合、主制御CPU72は遊技状態フラグとして時間短縮機能作動フラグの値(01H)をRAM76のフラグ領域にセットする(時間短縮状態移行手段、時間短縮機能作動手段)。」

「【0356】
〔大当り時の手順〕
先ず、大当り時の手順は以下となる。
ステップS5204:主制御CPU72は、図柄別開放パターン設定処理を実行する。この処理では、主制御CPU72は今回の該当する当選図柄に応じて大入賞口の開放パターン(ラウンドごとの開放回数及び各開放の時間)やラウンド間のインターバル時間、1ラウンド中のカウント数(最大入賞回数)を設定する。なお当選図柄別の開放パターンについては、先の特別図柄遊技処理(図13)において〔複数の当選種類〕の項目で説明した通りである。またラウンド間のインターバル時間は、例えば「7ラウンド図柄」及び「14ラウンド図柄」については数秒(例えば2秒?2.5秒)程度に設定されるものとする。なお、1ラウンド中のカウント数(最大入賞回数)は全ての当選図柄について例えば9個であるが、極端な短時間(0.1秒程度)の開放中に入賞が発生することはほとんどない(不能ではないが極めて困難である)。
【0357】
ステップS5206:主制御CPU72は、先の大当り時停止図柄決定処理(図14中のステップS2410)で選択した大当り時当選図柄に基づき、今回の大当り遊技における実行ラウンド数を設定する。具体的には、当選図柄として大分類の「14ラウンド図柄」を選択していれば、主制御CPU72は実行ラウンド数を14回に設定する。また、当選図柄として「7ラウンド図柄」を選択していれば、主制御CPU72は実行ラウンド数を7回に設定する。ここで設定した実行ラウンド数は、プログラム上で対応する値(7回なら「6」、14回なら「13」)として、例えばRAM76のバッファ領域に格納され
る。
【0358】
ステップS5208:次に主制御CPU72は、先のステップS5204で設定した大入賞口開放パターンに基づき、大当り時開放タイマを設定する。ここで設定したタイマの値は、可変入賞装置30を作動する際の1回あたりの開放時間となる。なお、大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が容易に発生する充分な時間(例えば発射制御基板セット174により遊技球が10個以上発射される時間、好ましくは6秒以上)となる。一方、大当り開放タイマ(当審注:「大当り開放タイマ」は「大当り時開放タイマ」の誤記と認められる。)の値として0.1秒が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が不能ではなくとも、ほとんど発生しない(困難となる)短時間(例えば1秒より短い時間、好ましくは発射制御基板セット174による遊技球の発射間隔よりも短い時間)となる。」

「【0417】
〔演出画像の例〕
次に、パチンコ機1において実際に液晶表示器42に表示される演出画像について、いくつかの例を挙げて説明する。以上のように、パチンコ機1において大当りの内部抽選が行われると、主制御CPU72による制御の下で変動パターン(変動時間)を決定し、第1特別図柄や第2特別図柄による変動表示が行われる(図柄表示手段)。ただし、上記のように第1特別図柄や第2特別図柄そのものは7セグメントLEDによる点灯・点滅表示であるため、見た目上の訴求力に乏しい。そこでパチンコ機1では、上記のように演出図柄を用いた変動表示演出が行われている。
【0418】
演出図柄には、例えば左演出図柄、中演出図柄、右演出図柄の3つが含まれており、これらは液晶表示器42の画面上で左・中・右に並んで表示される(図1参照)。各演出図柄は、例えば数字の「1」?「7」とともにキャラクターが付された絵札をデザインしたものとなっている。各演出図柄については、数字が「1」?「7」の降順に並んだ図柄列を構成している。このような図柄列は、画面上の左領域・中領域・右領域でそれぞれ縦方向に流れる(スクロールする)ようにして変動表示される。」


上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?mについては本願補正発明のA?Mに対応させて付与した。)。

「a 上始動入賞口スイッチ80又は下始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号(ON)が入力されると、それぞれ第1特別図柄又は第2特別図柄に対応した内部抽選の契機(抽選契機)となる事象が発生したと判定し、第1特別図柄又は第2特別図柄に対応する内部抽選を実行する主制御CPU72と(【0185】、【0186】)、
b 内部抽選が行われると変動表示が行われ、特別図柄の変動状態と停止状態とを表示することができる第1特別図柄表示装置34及び第2特別図柄表示装置35と(【0109】、【0417】)、
c1、l 当選図柄別の各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「48」,「27」に、「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」がそれぞれ対応、すなわち、第1特別図柄に対応する大当り時には、「7ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「7ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)であり、「7ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)であり、「7ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の48(=48%)であり、「7ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の27(=27%)であり、「7ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「7ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「7ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「7ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「7ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与されることが予め規定されている第1特別図柄大当り時停止選択テーブルと(【0288】、【0293】、【0297】、【0298】)、
c2 当選図柄別の各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「75」に「14ラウンド通常図柄1」、「14ラウンド通常図柄2」、「14ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「14ラウンド確変図柄2」がそれぞれ対応、すなわち、第2特別図柄に対応する大当り時においては、「14ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「14ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)であり、「14ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)であり、「14ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の75(=75%)であり、「14ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は30回付与され、「14ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は50回付与され、「14ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は100回付与され、「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「14ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は10000回付与されることが予め規定されている第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルと(【0288】、【0300】、【0303】)、を備え、
前記主制御CPU72は、
d 大当りの結果が第1特別図柄に対応する場合、第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定し、大当りの結果が第2特別図柄に対応する場合、第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定し(【0292】、【0299】)、
e 当りの態様(非当選以外の態様)で特別図柄が停止表示された場合に、それまでの通常状態から大当り遊技状態(遊技者にとって有利な特別遊技状態)に移行する契機が発生し、大当り遊技中は、大入賞口ソレノイド90が一定時間(例えば29秒間又は9個の入賞をカウントするまで)、予め設定された連続作動回数(例えば7回、14回)にわたって励磁され、これにより可変入賞装置30が決まったパターンで開閉動作し、この間に可変入賞装置30に対して遊技球を集中的に入賞させることで、遊技者には、まとまって多くの賞球を獲得する機会が与えられる特別遊技を実行し、大当りの種類として14ラウンド大当りだけでなく、その他に複数種類の7ラウンド大当りが設けられ、また14ラウンド大当りや7ラウンド大当りについては、その中に複数の当選種類(当選図柄)が設けられている特別遊技を実行し(【0260】、【0261】)、
f 決定した前記当選図柄の種類が「7ラウンド確変図柄1,2」、「14ラウンド確変図柄1,2」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグの値をRAM76のフラグ領域にセットし、大当り遊技を終了すると、確率変動機能作動フラグに基づいて大当り遊技終了後の状態を高確率状態に変化させ(【0262】、【0310】)、
h 決定した当選図柄の種類が「14ラウンド確変図柄1,2」、「7ラウンド確変図柄1」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグ及び時間短縮機能作動フラグの値をRAM76のフラグ領域にセットし、大当り遊技を終了すると、確率変動機能作動フラグ及び時間短縮機能作動フラグに基づいて大当り遊技終了後の状態を高確率状態及び時間短縮状態に変化させる(【0262】、【0310】、【0311】)ものであり、
k 前記可変入賞装置30を作動する際の1回あたりの開放時間となる大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が容易に発生する充分な時間となり、一方、大当り時開放タイマの値として0.1秒が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が不能ではなくとも、ほとんど発生しない(困難となる)短時間となるものである
m パチンコ遊技機1。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(m)は、本願補正発明のA?Mに対応させている。

(a)引用発明1の「a 上始動入賞口スイッチ80又は下始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号(ON)が入力されると、それぞれ第1特別図柄又は第2特別図柄に対応した内部抽選の契機(抽選契機)となる事象が発生したと判定し、第1特別図柄又は第2特別図柄に対応する内部抽選を実行する主制御CPU72」は、「上始動入賞口スイッチ80又は下始動入賞口スイッチ82から入賞検出信号(ON)が入力される」のが遊技中であることは明らかであるから、本願補正発明の「A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段」に相当する。

(b)引用発明1の「b 前記内部抽選が行われると変動表示が行われ、特別図柄の変動状態と停止状態とを表示することができる第1特別図柄表示装置34及び第2特別図柄表示装置35」は、特別図柄表示装置が内部抽選の結果を表す態様で図柄を停止表示することは技術常識であるから、本願補正発明の「B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段」に相当する。

(c)引用発明1の「c1、l 当選図柄別の各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「48」,「27」に、「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」がそれぞれ対応、すなわち、第1特別図柄に対応する大当り時には、「7ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「7ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)であり、「7ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)であり、「7ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の48(=48%)であり、「7ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の27(=27%)であり、「7ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「7ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「7ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は0回付与され、「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「7ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「7ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は0回付与されることが予め規定されている第1特別図柄大当り時停止選択テーブルと、c2 当選図柄別の各振分値「6」,「7」,「8」,「4」,「75」に「14ラウンド通常図柄1」、「14ラウンド通常図柄2」、「14ラウンド通常図柄3」、「14ラウンド確変図柄1」、「14ラウンド確変図柄2」がそれぞれ対応、すなわち、第2特別図柄に対応する大当り時においては、「14ラウンド通常図柄1」が選択される割合は100分の6(=6%)であり、「14ラウンド通常図柄2」が選択される割合は100分の7(=7%)であり、「14ラウンド通常図柄3」が選択される割合は100分の8(=8%)であり、「14ラウンド確変図柄1」が選択される割合は100分の4(=4%)であり、「14ラウンド確変図柄2」が選択される割合は100分の75(=75%)であり、「14ラウンド通常図柄1」に該当した場合、時短回数は30回付与され、「14ラウンド通常図柄2」に該当した場合、時短回数は50回付与され、「14ラウンド通常図柄3」に該当した場合、時短回数は100回付与され、「14ラウンド確変図柄1」に該当した場合、時短回数は10000回付与され、「14ラウンド確変図柄2」に該当した場合、時短回数は10000回付与されることが予め規定されている第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル」は、aの「第1特別図柄又は第2特別図柄に対応する内部抽選を実行する」ことにより得られる当選時の結果について規定するものであることは明らかである。そして、確変図柄のうち0回の時短回数が付与される「7ラウンド確変図柄2」及び「14ラウンド確変図柄2」を特定当選種類とし、確変図柄のうち0回を除く時短回数が付与される「7ラウンド確変図柄1」及び「14ラウンド確変図柄1」を特殊当選種類とすれば、引用発明のc1、l及びc2の構成は、本願補正発明の「C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類及び前記特定当選種類を構成する複数の当選種類のうちの一部の当選種類である特殊当選種類を含む複数の当選種類を予め規定するとともに、前記図柄に含まれる第1図柄及び第2図柄の両方の図柄に関する当選種類を予め規定する当選種類規定手段」に相当する。

(d)引用発明1の「d 大当りの結果が第1特別図柄に対応する場合、第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定し、大当りの結果が第2特別図柄に対応する場合、第2特別図柄大当り時停止図柄選択テーブルを参照して当選図柄の種類を決定」する「主制御CPU72」は、「大当りの結果」がaの「内部抽選」の「当選」の結果であることは明らかであるから、本願補正発明の「D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段」に相当する。

(e)引用発明1の「e 当りの態様(非当選以外の態様)で特別図柄が停止表示された場合に、それまでの通常状態から大当り遊技状態(遊技者にとって有利な特別遊技状態)に移行する契機が発生し、大当り遊技中は、大入賞口ソレノイド90が一定時間(例えば29秒間又は9個の入賞をカウントするまで)、予め設定された連続作動回数(例えば7回、14回)にわたって励磁され、これにより可変入賞装置30が決まったパターンで開閉動作し、この間に可変入賞装置30に対して遊技球を集中的に入賞させることで、遊技者には、まとまって多くの賞球を獲得する機会が与えられる特別遊技を実行し、大当りの種類として14ラウンド大当りだけでなく、その他に複数種類の7ラウンド大当りが設けられ、また14ラウンド大当りや7ラウンド大当りについては、その中に複数の当選種類(当選図柄)が設けられている特別遊技を実行」する「主制御CPU72」は、「当選図柄」がbの「第1特別図柄表示装置34及び第2特別図柄表示装置35」に「停止状態」として「表示される特別図柄」に対応することは明らかであり、また、c1、l及びc2の構成から当選種類(当選図柄)に応じて利益の小さい7ラウンド又は利益の大きい14ラウンドの大当り遊技を実行することも明らかであるから、本願補正発明の「E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段」に相当する。

(f)引用発明1の「f 決定した前記当選図柄の種類が「7ラウンド確変図柄1,2」、「14ラウンド確変図柄1,2」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグの値をRAM76のフラグ領域にセットし、大当り遊技を終了すると、確率変動機能作動フラグに基づいて大当り遊技終了後の状態を高確率状態に変化させ」る「主制御CPU72」は、本願補正発明の「F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段」に相当する。

(g)引用発明1のc1、lの構成によれば、第1特別図柄に対応する大当り時に、7ラウンドで確変図柄が選択される確率=(7ラウンド確変図柄1の振分値48+7ラウンド確変図柄2の振分値27)/(7ラウンド確変図柄1の振分値48+7ラウンド確変図柄2の振分値27+7ラウンド通常図柄1の振分値6+7ラウンド通常図柄2の振分値7+7ラウンド通常図柄3の振分値8)=75/96≒78%よりも、14ラウンドで確変図柄が選択される確率=14ラウンド確変図柄1の振分値4/14ラウンド確変図柄1の振分値4=1=100%の方を高く設定するとともに、7ラウンドの確変図柄の振分値=7ラウンド確変図柄1の振分値48+7ラウンド確変図柄2の振分値27=75よりも14ラウンドの確変図柄の振分値=14ラウンド確変図柄1の振分値4を少なく設定しているといえる「第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル」は、本願補正発明の「G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段」に相当する。

(h)引用発明1の「h 決定した当選図柄の種類が「14ラウンド確変図柄1,2」、「7ラウンド確変図柄1」のいずれかである場合、遊技状態フラグとして確率変動機能作動フラグ及び時間短縮機能作動フラグの値をRAM76のフラグ領域にセットし、大当り遊技を終了すると、確率変動機能作動フラグ及び時間短縮機能作動フラグに基づいて大当り遊技終了後の状態を高確率状態及び時間短縮状態に変化させ」る「主制御CPU72」は、本願補正発明の「H 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特殊当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して前記低確率状態から前記高確率状態に移行させるとともに、少なくとも通常の頻度で前記抽選契機が発生する非時間短縮状態から、この非時間短縮状態に比較して高い頻度で前記抽選契機の発生が可能となる時間短縮状態に移行させることにより高確率時間短縮状態に移行させる高確率時間短縮状態移行手段」に相当する。

(i)引用発明1のc1、lの構成によれば、第1特別図柄に対応する大当り時に、7ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄が選択される確率=7ラウンド確変図柄1の振分値48/(7ラウンド確変図柄1の振分値48+7ラウンド確変図柄2の振分値27+7ラウンド通常図柄1の振分値6+7ラウンド通常図柄2の振分値7+7ラウンド通常図柄3の振分値8)=48/96=50%よりも、14ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄が選択される確率=14ラウンド確変図柄1の振分値4/14ラウンド確変図柄1の振分値4=1=100%の方を高く設定するとともに、7ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄の振分値=7ラウンド確変図柄1の振分値48よりも14ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄の振分値=14ラウンド確変図柄1の振分値4を少なく設定しているといえる「第1特別図柄大当り時停止図柄選択テーブル」は、本願補正発明の「I 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特殊当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特殊当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特殊当選種類の振分値を少なく規定する特殊当選種類振分値規定手段」に相当する。

(j)引用発明1のeの「大当りの種類として14ラウンド大当りだけでなく、その他に複数種類の7ラウンド大当りが設けられ」ることは、各ラウンドが単位遊技といえるから、本願補正発明の「J 前記特別遊技は、J1 複数の単位遊技により構成されて」いることに相当する。

(k)引用発明1の「k 前記可変入賞装置30を作動する際の1回あたりの開放時間となる大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が容易に発生する充分な時間となり、一方、大当り時開放タイマの値として0.1秒が設定されていれば、その開放時間は1回の開放中に大入賞口への入賞が不能ではなくとも、ほとんど発生しない(困難となる)短時間となる」ことは、「1回の開放中」がeの「ラウンド」に対応することは明らかであるから、本願補正発明の「K 前記単位遊技は、K1 利益獲得困難遊技として実行される場合と前記利益獲得困難遊技よりも実質的な利益が得られやすい利益獲得容易遊技として実行される場合があ」ることに相当する。

(l)引用発明1のc1、lの構成によれば、第1特別図柄に対応する大当り時に、7ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄が選択される確率=7ラウンド確変図柄1の振分値48/(7ラウンド確変図柄1の振分値48+7ラウンド確変図柄2の振分値27+7ラウンド通常図柄1の振分値6+7ラウンド通常図柄2の振分値7+7ラウンド通常図柄3の振分値8)=48/96=50%で、14ラウンドで0回を除く時短回数が付与される確変図柄が選択される確率=14ラウンド確変図柄1の振分値4/14ラウンド確変図柄1の振分値4=1=100%であるから、引用発明1のe及びhの構成も考慮すれば、引用発明1は、1回の特別遊技で可変入賞装置30の開閉が14ラウンドにわたり実行された場合には、高確率状態及び時間短縮状態に変化させることが確定する一方、1回の特別遊技で可変入賞装置30の開閉が14ラウンド未満である7ラウンドにわたり実行された場合には高確率状態及び時間短縮状態に変化させることが確定しないといえる。したがって、引用発明1のe及びhの構成を考慮したc1、lの構成と、本願補正発明の「L 1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない」とは、「L’1回の前記特別遊技で利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない」点で共通する。

(m)引用発明1の「m パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「M 遊技機」に相当する。

そうすると、両者は、
「A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段と、
B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類及び前記特定当選種類を構成する複数の当選種類のうちの一部の当選種類である特殊当選種類を含む複数の当選種類を予め規定するとともに、前記図柄に含まれる第1図柄及び第2図柄の両方の図柄に関する当選種類を予め規定する当選種類規定手段と、
D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段と、
E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段と、
G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段と、
H 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特殊当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して前記低確率状態から前記高確率状態に移行させるとともに、少なくとも通常の頻度で前記抽選契機が発生する非時間短縮状態から、この非時間短縮状態に比較して高い頻度で前記抽選契機の発生が可能となる時間短縮状態に移行させることにより高確率時間短縮状態に移行させる高確率時間短縮状態移行手段と、
I 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特殊当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特殊当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特殊当選種類の振分値を少なく規定する特殊当選種類振分値規定手段とを備え、
J 前記特別遊技は、
J1 複数の単位遊技により構成されており、
K 前記単位遊技は、
K1 利益獲得困難遊技として実行される場合と前記利益獲得困難遊技よりも実質的な利益が得られやすい利益獲得容易遊技として実行される場合があり、
L’1回の前記特別遊技で利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない
M 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「L’1回の前記特別遊技で利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の前記特別遊技で前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない」ことの「1回の前記特別遊技」について、本願補正発明は「前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において」の場合であるのに対し、引用発明1はそのようなものか否か明らかでない点。

イ 判断
以下、上記相違点について検討する。

引用文献1の段落【0017】には「特別遊技は、基本的には、7ラウンド大当り遊技や14ラウンド大当り遊技等の遊技に該当するが、14ラウンド大当りであるが実質的に7ラウンド大当りと同様の利益が得られる大当り等も含まれる」との記載(以下「引用文献1の記載事項」という。)があり、これを引用発明1に適用するために、c1、lの「14ラウンド確変図柄1」に対して、kの構成に基づき、14ラウンド中のいずれかの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定することを想起することは当業者にとって格別の困難性はない。
また、遊技の興趣向上のために、14ラウンド大当りだけでなく7ラウンド大当り遊技についても同様に、7ラウンド大当りであるが実質的に7ラウンドより少ないラウンドの大当りと同様の利益が得られる大当りとするように、引用発明1のc1、lの「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」に対して、引用発明1のkの構成に基づき、7ラウンド中の少なくとも1つ以上のラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りのラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定することを想起することは当業者にとって格別の困難性はない。

そして、そのようにすれば、1回の特別遊技で大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドと0.1秒が設定されるラウンドとが両方とも実行される状況において、大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドが所定回数の7回にわたり実行された場合(時短回数10000回が付与される「14ラウンド確変図柄1」が当選したとき)には高確率時間短縮状態に移行することが確定する一方、1回の特別遊技で大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドと0.1秒が設定されるラウンドとが両方とも実行される状況において、大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドが所定回数の7回未満にわたり実行された場合(時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄1」、時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄2」、時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄3」、時短回数10000回が付与される「7ラウンド確変図柄1」、時短回数0回が付与される「7ラウンド確変図柄2」が当選したとき)には高確率時間短縮状態に移行することが確定しないものとなることは明らかである。
したがって、引用文献1の記載事項に基づけば、引用発明1から相違点に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献1の記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、以下のように主張する。
「(a)有利な効果(その1)
本願補正発明によれば、「1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定する」ため、すなわち、実施形態に即して説明すれば、実質10ラウンドの出球が得られる大当り遊技が実行された場合、花火モード(高確率時間短縮状態)に移行することが確定するため、所定回数分の利益獲得容易遊技による利益が得られるというメリットと、高確率時間短縮状態への移行というメリットといった二重のメリットを得ることがきるという有利な効果がある。
これに対して、引用文献1の発明では、14ラウンドの特別遊技が実行されたとしても、「14ラウンド通常1」等に該当していた場合には、高確率時間短縮状態に移行しないことがあるため(引用文献1、図17)、遊技者に対して二重のメリットを与えることができない。

(b)有利な効果(その2)
本願請求項1に係る発明によれば、「1回の前記特別遊技で前記利益獲得困難遊技と前記利益獲得容易遊技とが両方とも実行される状況において前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合には前記高確率時間短縮状態に移行することが確定しない」が、これはあくまで「前記高確率時間短縮状態に移行することが確定」しないだけであって、「前記高確率時間短縮状態に移行する」余地は残っており(本願図23参照)、「前記利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合」であっても、「高確率時間短縮状態に移行するかもしれない」という遊技者の期待感を維持することができるという有利な効果がある。」

イ 請求人の主張に対する当審の見解
(ア)請求人が主張する「(a)有利な効果(その1)」については、前記(3)イで検討したように、引用文献1の記載事項と、引用発明1のc1、l及びkの構成に基づき、「14ラウンド確変図柄1」に対して、14ラウンド中のいずれかの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定するとともに、「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」に対して、7ラウンド中のいずれかのラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りのラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定することは当業者にとって格別の困難性はなく、そして、そのようにすれば、1回の特別遊技で大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドと0.1秒が設定されるラウンドとが両方とも実行される状況において、大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドが所定回数の7回にわたり実行された場合(時短回数10000回が付与される「14ラウンド確変図柄1」が当選したとき)には高確率時間短縮状態に移行することが確定するものとなることから、所定回数分の利益獲得容易遊技たる大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドによる利益が得られるというメリットと、高確率時間短縮状態への移行というメリットといった二重のメリットを得ることがきるという効果を奏することは明らかである。

(イ)請求人が主張する「(b)有利な効果(その2)」については、前記(3)イで検討したように、引用文献1の記載事項と、引用発明1のc1、l及びkの構成に基づき、「14ラウンド確変図柄1」に対して、14ラウンド中のいずれかの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りの7ラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定するとともに、「7ラウンド通常図柄1」、「7ラウンド通常図柄2」、「7ラウンド通常図柄3」、「7ラウンド確変図柄1」、「7ラウンド確変図柄2」に対して、7ラウンド中のいずれかのラウンドに大当り時開放タイマの値として29.0秒程度を設定し、残りのラウンドに大当り時開放タイマの値として0.1秒を設定することは当業者にとって格別の困難性はなく、そして、そのようにすれば、1回の特別遊技で大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドと0.1秒が設定されるラウンドとが両方とも実行される状況において、大当り時開放タイマの値として29.0秒程度が設定されるラウンドが所定回数の7回未満にわたり実行された場合(時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄1」、時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄2」、時短回数0回が付与される「7ラウンド通常図柄3」、時短回数10000回が付与される「7ラウンド確変図柄1」、時短回数0回が付与される「7ラウンド確変図柄2」が当選したとき)には高確率時間短縮状態に移行することが確定しないものとなるが、これはあくまで高確率時間短縮状態に移行することが確定しないだけであって、時短回数10000回が付与される「7ラウンド確変図柄1」が当選して、高確率時間短縮状態に移行する余地は残っており、利益獲得容易遊技が所定回数未満の回数にわたり実行された場合であっても、高確率時間短縮状態に移行するかもしれないという遊技者の期待感を維持することができるという有利な効果を奏することは明らかである。

よって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年9月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
(1)(新規性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献:特開2012-24397号公報(以下「引用文献2」という。)

3 引用文献に記載された事項
引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0026】
図1は、ぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。
ぱちんこ遊技機10は、主に遊技機枠と遊技盤で構成される。ぱちんこ遊技機10の遊技機枠は、外枠11、前枠12、透明板13、扉14、上球皿15、下球皿16、および発射ハンドル17を含む。外枠11は、開口部分を有し、ぱちんこ遊技機10を設置すべき位置に固定するための枠体である。前枠12は、外枠11の開口部分に整合する枠体であり、図示しないヒンジ機構により外枠11へ開閉可能に取り付けられる。前枠12は、遊技球を発射する機構や、遊技盤を着脱可能に収容させるための機構、遊技球を誘導または回収するための機構等を含む。」

「【0048】
第1抽選手段126および第2抽選手段128は、「特図抽選手段」として機能する。第1抽選手段126は、第1抽選値取得手段112、第1当否判定手段113、第1パターン決定手段114を含み、第1始動口62への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第1の抽選を実行する。第1の抽選の結果は、第1特別図柄表示装置70において第1特別図柄192の変動表示の形で示され、演出表示装置60の表示領域194において装飾図柄190の変動表示の形で示される。一方、第2抽選手段128は、第2抽選値取得手段115、第2当否判定手段117、第2パターン決定手段119を含み、第2始動口63への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第2の抽選を実行する。第2の抽選の結果は、第2特別図柄表示装置71において第2特別図柄193の変動表示の形で示され、演出表示装置60の表示領域194において装飾図柄190の変動表示の形で示される。第1抽選手段126および第2抽選手段128は、図柄変動を開始するにあたり、その図柄変動に対応する抽選の結果を演出決定手段132へ送信する。」

「【0065】
特別遊技制御手段120は、第1抽選手段126による第1の抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第1特別図柄192が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口91を開放させることにより特別遊技を実行する。同様に、特別遊技制御手段120は、第2抽選手段128による第2の抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第2特別図柄193が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口91を開放させることにより特別遊技を実行する。特別遊技は、大入賞口91の開閉動作を複数回連続して継続する遊技であり、1回の開閉を単位とした複数回の単位遊技(ラウンド)で構成される。特別遊技制御手段120は、単位遊技の継続回数が上限回数(本実施例では16回、12回または8回)に達していなければ、現在の単位遊技の終了後に次の単位遊技を開始させる。単位遊技が上限回数を消化した場合に特別遊技を終了させる。
【0066】
特定遊技実行手段122は、遊技状態を通常状態から特定遊技状態へ移行させる制御と、特定遊技状態から通常状態へ戻す制御を実行する。本実施例における特定遊技には、当否抽選の当選確率を通常確率の状態から高確率の状態へ切り替える確変と、図柄変動時間を通常時間より短時間へ切り替える時短とがある。特定遊技実行手段122は、当否抽選値が確変状態へ移行すべき値であった場合に、特別遊技後の遊技状態を確変状態へ移行させる。確変状態は原則として次の大当りが発生するまで続行される。また、特定遊技実行手段122は、当否抽選値の如何に関わらず、特別遊技後に遊技状態を時短の状態へ移行させる。時短は、特別遊技後の特別図柄の変動回数が所定の継続回数(本実施例では100回)に至るまで継続される。」

「【0090】
以上に述べた大当り演出の演出パターンは、図柄変動に先立って行われる当否抽選、図柄抽選およびパターン抽選等を通じて決定される。以下、その詳細について説明する。
図8は、図柄範囲テーブルを模式的に示す図である。図8(a)は当否判定結果が大当りであった場合に参照されるテーブルであり、図8(b)は当否判定結果が外れであった場合に参照されるテーブルである。
【0091】
第1当否判定手段113および第2当否判定手段117は、図柄判定においてこの図柄範囲テーブルを参照する。各図柄範囲テーブルには、「0」?「9」の数字、「A」?「C」の文字、および「-」の記号で表される特別図柄と図柄抽選値との対応関係が定められている。なお、同図には単に「図柄抽選値」と表記しているが、第1抽選値取得手段112が取得する図柄抽選値は「第1図柄抽選値」に対応し、第2抽選値取得手段115が取得する図柄抽選値は「第2図柄抽選値」に対応する。特別図柄の種類は当否判定結果と対応付けられており、「1」?「9」の数字および「A」?「C」の文字が大当りに対応し、「-」の記号が外れに対応する。
【0092】
図8(a)に示す特別図柄のうち、特別図柄「1」?「6」は確変移行を伴う大当り(「確変大当り」ともいう)を示し、特別図柄「7」?「9」および「A」?「C」は確変移行を伴わない大当り(「非確変大当り」ともいう)を示している。各特別遊技には、図柄抽選値「0?255」が割り振られており、確変大当りとなる確率(特別図柄「1」?「6」のいずれかが選択される確率)は約65%、非確変大当りとなる確率(特別図柄「7」?「9」および「A」?「C」が選択される確率)は約35%とされている。つまり、本実施例においては、第1の遊技および第2の遊技ともに大当りとなった場合の確変移行確率が65%に設定されている。図示のように、第1図柄抽選値には、「1」?「9」の数字および「A」?「C」の文字の全てが対応づけられている。一方、第2図柄抽選値には、「1」,「3」,「5」,「7」,「9」,「B」が対応づけられているが、「2」,「4」,「6」,「8」,「A」,「C」は対応づけられていない。一方、図8(b)に示すように、特別図柄「-」は当否判定結果が外れの場合における全範囲の図柄抽選値に対応付けられている。
【0093】
図9は、開閉パターン判定テーブルを模式的に示す図である。
特別遊技制御手段120は、特別遊技における大入賞口の開閉パターンの決定に際してこの開閉パターン判定テーブルを参照する。この開閉パターン判定テーブルにおいては、特別図柄「1」?「9」,「A」?「C」と開閉パターン1?3(図5参照)が対応づけられている。図示のように、特別図柄「1」,「2」,「7」,「8」に対して16R特別遊技の開閉パターン1が対応づけられ、特別図柄「3」,「4」,「9」,「A」に対して12R特別遊技の開閉パターン2が対応づけられ、特別図柄「5」,「6」,「B」,「C」に対して8R特別遊技の開閉パターン3が対応づけられている。図8に示した図柄範囲テーブルと対比させると、第2の遊技のほうが第1の遊技よりもラウンド数の多い特別遊技が選択される可能性が高くなっている。」

「【0099】
図13は、図12におけるS20の特別図柄および装飾図柄の処理を詳細に示すフローチャートである。
この図柄変動処理は、第1特別図柄192、第2特別図柄193、装飾図柄190を変動表示させる処理を示す。まだ図柄変動表示が開始されていない場合(S30のN)、第1特別図柄192の変動表示タイミングであれば(S32のY)、第1当否判定手段113が特図保留手段144から第1当否抽選値を読み出して当否を判定する(S34)。そして、第1当否判定手段113が第1特別図柄192を決定し(S36)、第1パターン決定手段114が第1特別図柄192の変動パターンを決定し、演出決定手段132が決定された変動パターンに対応する装飾図柄190の変動演出パターンを決定する(S38)。そして、第1特別図柄192および装飾図柄190の図柄変動が開始される(S48)。」


【図8】(a)には、段落【0090】?【0092】の記載を参照すれば、第1図柄抽選値0?20に第1の特別図柄「1」が、第1図柄抽選値21?40に第1の特別図柄「2」が、第1図柄抽選値41?60に第1の特別図柄「3」が、第1図柄抽選値61?80に第1の特別図柄「4」が、第1図柄抽選値81?100に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値101?120に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値121?140に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値141?160に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値161?170に第1の特別図柄「7」が、第1図柄抽選値171?180に第1の特別図柄「8」が、第1図柄抽選値181?190に第1の特別図柄「9」が、第1図柄抽選値191?200に第1の特別図柄「A」が、第1図柄抽選値201?210に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値211?225に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値226?240に第1の特別図柄「C」が、第1図柄抽選値241?255に第1の特別図柄「C」が対応付けられている図柄範囲テーブルが記載されていることが見て取れる。

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(a?mについては本願発明のA?Mに対応させて付与した。)。

「a 第1始動口62への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第1の抽選を実行する第1抽選手段126および第2始動口63への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第2の抽選を実行する第2抽選手段128と(【0048】)、
b 第1の抽選の結果を、第1特別図柄192の変動表示の形で示す第1特別図柄表示装置70および第2の抽選の結果を第2特別図柄193の変動表示の形で示す第2特別図柄表示装置71と(【0048】)、
c 第1抽選値取得手段112が取得する第1図柄抽選値「0?255」に、確変移行を伴う大当り(「確変大当り」)を示す特別図柄「1」?「6」、確変移行を伴わない大当り(「非確変大当り」)を示す特別図柄「7」?「9」および「A」?「C」が対応づけられている図柄範囲テーブルであって(【0091】、【0092】)、第1図柄抽選値0?20に第1の特別図柄「1」が、第1図柄抽選値21?40に第1の特別図柄「2」が、第1図柄抽選値41?60に第1の特別図柄「3」が、第1図柄抽選値61?80に第1の特別図柄「4」が、第1図柄抽選値81?100に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値101?120に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値121?140に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値141?160に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値161?170に第1の特別図柄「7」が、第1図柄抽選値171?180に第1の特別図柄「8」が、第1図柄抽選値181?190に第1の特別図柄「9」が、第1図柄抽選値191?200に第1の特別図柄「A」が、第1図柄抽選値201?210に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値211?225に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値226?240に第1の特別図柄「C」が、第1図柄抽選値241?255に第1の特別図柄「C」が対応付けられている図柄範囲テーブル(【図8】)と、
d 当否判定結果が大当りであった場合に、前記図柄範囲テーブルを参照し、第1特別図柄192を決定する第1当否判定手段113と(【0090】、【0099】)、
e 第1抽選手段126による第1の抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第1特別図柄192が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口91を開放させることにより特別遊技を実行する特別遊技制御手段120であって(【0065】)、特別図柄「1」,「2」,「7」,「8」に対して16R特別遊技の開閉パターン1が対応づけられ、特別図柄「3」,「4」,「9」,「A」に対して12R特別遊技の開閉パターン2が対応づけられ、特別図柄「5」,「6」,「B」,「C」に対して8R特別遊技の開閉パターン3が対応づけられている開閉パターン判定テーブルを参照して、特別遊技における大入賞口の開閉パターンを決定する特別遊技制御手段120と(【0093】)、
f 当否抽選値が確変状態へ移行すべき値であった場合に、特別遊技後の遊技状態を確変状態へ移行させる特定遊技実行手段122(【0066】)を備える
m ぱちんこ遊技機10(【0026】)。」

4 対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。なお、見出し(a)?(m)は、本願発明のA?Mに対応させている。

(a)引用発明2の「a 第1始動口62への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第1の抽選を実行する第1抽選手段126および第2始動口63への入球に対応する当否抽選(特別図柄抽選)として第2の抽選を実行する第2抽選手段128」は、第1始動口62への入球および第2始動口63への入球が遊技中の抽選契機といえるから、本願発明の「A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段」に相当する。

(b)引用発明2の「b 第1の抽選の結果を、第1特別図柄192の変動表示の形で示す第1特別図柄表示装置70および第2の抽選の結果を第2特別図柄193の変動表示の形で示す第2特別図柄表示装置71」は、本願発明の「B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段」に相当する。

(c)引用発明2の「c 第1抽選値取得手段112が取得する第1図柄抽選値「0?255」に、確変移行を伴う大当り(「確変大当り」)を示す特別図柄「1」?「6」、確変移行を伴わない大当り(「非確変大当り」)を示す特別図柄「7」?「9」および「A」?「C」が対応づけられている図柄範囲テーブルであって、第1図柄抽選値0?20に第1の特別図柄「1」が、第1図柄抽選値21?40に第1の特別図柄「2」が、第1図柄抽選値41?60に第1の特別図柄「3」が、第1図柄抽選値61?80に第1の特別図柄「4」が、第1図柄抽選値81?100に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値101?120に第1の特別図柄「5」が、第1図柄抽選値121?140に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値141?160に第1の特別図柄「6」が、第1図柄抽選値161?170に第1の特別図柄「7」が、第1図柄抽選値171?180に第1の特別図柄「8」が、第1図柄抽選値181?190に第1の特別図柄「9」が、第1図柄抽選値191?200に第1の特別図柄「A」が、第1図柄抽選値201?210に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値211?225に第1の特別図柄「B」が、第1図柄抽選値226?240に第1の特別図柄「C」が、第1図柄抽選値241?255に第1の特別図柄「C」が対応付けられている図柄範囲テーブル」は、確変大当りを特定当選種類とすれば、本願発明の「C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類を含む複数の当選種類を予め規定する当選種類規定手段」に相当する。

(d)引用発明2の「d 当否判定結果が大当りであった場合に、前記図柄範囲テーブルを参照し、第1特別図柄192を決定する第1当否判定手段113」は、「当否判定結果」がaの「第1抽選手段126」の「当否抽選(特別図柄抽選)として」の「第1の抽選」の結果であることは明らかであるから、本願発明の「D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段」に相当する。

(e)引用発明2の「e 第1抽選手段126による第1の抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第1特別図柄192が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口91を開放させることにより特別遊技を実行する特別遊技制御手段120であって、特別図柄「1」,「2」,「7」,「8」に対して16R特別遊技の開閉パターン1が対応づけられ、特別図柄「3」,「4」,「9」,「A」に対して12R特別遊技の開閉パターン2が対応づけられ、特別図柄「5」,「6」,「B」,「C」に対して8R特別遊技の開閉パターン3が対応づけられている開閉パターン判定テーブルを参照して、特別遊技における大入賞口の開閉パターンを決定する特別遊技制御手段120」は、「特別図柄」がbの「第1特別図柄表示装置70」の「変動表示」の停止表示されるものであってcの「図柄範囲テーブル」により決定されることは明らかであり、また、停止表示される特別図柄に応じて利益の大小が異なる16R特別遊技の開放パターン1、12R特別遊技の開放パターン2、8R特別遊技の開放パターン3のいずれかが決定されるといえるから、本願発明の「E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段」に相当する。

(f)引用発明2の「f 当否抽選値が確変状態へ移行すべき値であった場合に、特別遊技後の遊技状態を確変状態へ移行させる特定遊技実行手段122」は、cの「確変移行を伴う大当り(「確変大当り」)を示す特別図柄「1」?「6」」の確変大当りを特定当選種類とすれば、本願発明の「F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段」に相当する。

(g)引用発明2のcとeの構成によれば、第1の抽選について、8Rの確変大当りの確率=8Rの確変大当りの図柄抽選値数/(8Rの確変大当りの図柄抽選値数+8Rの非確変大当りの図柄抽選値数)=(特別図柄「5」の抽選値数40+特別図柄「6」の抽選値数40)/(特別図柄「5」の抽選値数40+特別図柄「6」の抽選値数40+特別図柄「B」の抽選値数25+特別図柄「C」の抽選値数30)=80/135≒59%よりも、16Rの確変大当りの確率=16Rの確変大当りの図柄抽選値数/(16Rの確変大当りの図柄抽選値数+16Rの非確変大当りの図柄抽選値数)=(特別図柄「1」の抽選値数21+特別図柄「2」の抽選値数20)/(特別図柄「1」の抽選値21+特別図柄「2」の抽選値数20+特別図柄「7」の抽選値数10+特別図柄「8」の抽選値数10)=41/61≒67%の方を高く設定するとともに、特別遊技による得られる利益が小となる8Rの確変大当りの図柄抽選値数=特別図柄「5」の抽選値数40+特別図柄「6」の抽選値数40=80よりも、特別遊技により得られる利益が大となる16Rの確変大当りの図柄抽選値数=特別図柄「1」の抽選値数21+特別図柄「2」の抽選値数20=41を少なく設定しているといえるから、引用発明2は、本願発明の「G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段」に相当する手段を有するといえる。

(m)引用発明2の「m ぱちんこ遊技機10」は、本願発明の「M 遊技機」に相当する。

そうすると、両者は、
「A 遊技中に抽選契機が発生すると、所定の内部抽選を実行する抽選実行手段と、
B 前記内部抽選が実行されると、これを契機として図柄を所定の変動時間にわたって変動表示させた後に前記内部抽選の結果を表す態様で前記図柄を停止表示させる図柄表示手段と、
C 前記抽選実行手段による前記内部抽選で得られる当選時の結果について、少なくとも特定当選種類を含む複数の当選種類を予め規定する当選種類規定手段と、
D 前記抽選実行手段による前記内部抽選で当選の結果が得られた場合、前記当選種類規定手段により規定された複数の当選種類のいずれに該当するかを決定する当選種類決定手段と、
E 前記図柄表示手段により所定の当選態様で前記図柄が停止表示された場合、前記当選種類決定手段により決定された当選種類に応じて利益の大小が異なる特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
F 前記抽選実行手段による前記内部抽選の結果が当選に該当し、かつ、前記当選種類決定手段により前記特定当選種類に該当することが決定された場合、前記特別遊技実行手段による特別遊技の終了後に、前記抽選実行手段により行われる前記内部抽選に際して少なくとも通常の確率で当選が得られる低確率状態から前記低確率状態に比較して高い確率で当選が得られる高確率状態に移行させる高確率状態移行手段と、
G 前記当選種類規定手段による当選種類の規定について、前記特別遊技により得られる利益が小となる場合よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる場合の方が、前記特定当選種類に該当する確率を高く設定するとともに、前記特別遊技により得られる利益が小となる前記特定当選種類よりも前記特別遊技により得られる利益が大となる前記特定当選種類の振分値を少なく規定する特定当選種類振分値規定手段とを備える
M 遊技機。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明と引用発明2との間に相違点があったとしても、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-25 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-15 
出願番号 特願2012-242527(P2012-242527)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 川崎 優
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 山崎 崇裕  

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