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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1346800
異議申立番号 異議2018-700243  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-23 
確定日 2018-12-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6245215号発明「ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及びビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6245215号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6245215号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年5月2日の出願(優先日:平成26年5月7日、日本)であり、平成29年11月24日にその特許権の設定登録がされ、同年12月13日にその特許掲載公報が発行され、平成30年3月23日に、その請求項1?7に係る特許について特許異議申立人貴田 達也(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年7月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月21日に特許権者より意見書が提出されたものである。


第2 本件発明

本件の請求項1?7に係る発明(以下、請求項1?7に係る発明を順に「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔が、横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成されたものであることを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項2】
前記スリット状の蒸気孔のうち、前記金型の取付けフランジ部に設けられたものが、外部に対して開放されている請求項1に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項3】
前記スリット状の蒸気孔が、少なくとも前記金型の曲面状部分に設けられている請求項1又は2に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項4】
前記スリット状の蒸気孔が、前記金型の表面形状変化部分に沿って設けられている請求項1又は2に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項5】
前記金型の側面に配置される前記スリット状の蒸気孔が、前記金型の開閉方向に沿って設けられている請求項1記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項6】
前記スリット状の蒸気孔の幅が、0.1mm?0.7mmの範囲である請求項1?5の何れか1項に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【請求項7】
請求項1?6の何れか1項に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥することにより所要形状の発泡合成樹脂の成形品を製造するビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法。」


第3 平成30年7月23日付けで通知した取消理由の概要

標記取消理由の概要は、以下のとおりである。

本件発明1?7は、下記甲第2号証(以下、甲各号証を「甲2」などという。)に記載された発明、甲6に記載された技術的事項及び、甲3?5に記載された周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本件発明1?7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、特許法第29条第2項に関する理由を「取消理由」という)。



甲2:特開2009-166344号公報
甲6:実願平5-20082号(実開平6-74216号)のCD-ROM
甲3:特許第6161181号公報
甲4:特許第6161162号公報
甲5:特許第6052463号公報


第4 取消理由に関する当審の判断

(決定注:上記取消理由のうち、周知の技術的事項の根拠として挙げた甲3?5は、本願の優先日前に頒布された刊行物ではないことから、その意味において、上記取消理由は適切ではなかった。そこで、以下、本件発明1?7が甲2及び甲6に記載された事項から想到容易であったといえるかについて検討を進める。)

1 甲各号証に記載の事項

(1)甲2に記載の事項

甲2には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与したものであり、他の甲号証についても、以下、同様である。

(2-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ蒸気室を有する雄金型と雌金型とから形成されるキャビティー内に発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気室に導入した蒸気を用いて加熱成形することにより発泡成形体を得る型内発泡成形用金型装置であって、発泡成形体先端部が薄肉形状である成形体、又は発泡成形体先端部に凹凸状段差を有する成形体、を成形するについて、成形体の薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分に対応する金型部分に、蒸気室に連通する線状スリットによる通気開口を、薄肉先端部分の肉厚距離間において、又は凹凸状段差先端部分の肉厚距離間において、1条以上、発泡成形体の外周形状に概ね沿って設けてなる発泡成形金型装置。
【請求項2】
線状スリットによる通気開口を、薄肉先端部分の肉厚距離間において、又は凹凸状段差先端部分の肉厚距離間において、略平行に少なくとも2条、発泡成形体の外周形状に概ね沿って設けてなる請求項1記載の発泡成形金型装置。
【請求項3】
2条の線状スリットが、それぞれ非連続に設けられたことを特徴とする請求項2記載の発泡成形金型装置。
【請求項4】
2条の線状スリットの相互位置が略千鳥掛状であることを特徴とする請求項3記載の発泡成形金型装置。
【請求項5】
線状スリットが、雄金型を取り付ける雄金型取付台と該雄金型とを重ね合わせる縁辺部分に、該雄金型取付台と該雄金型とを螺結させるための複数の止着部分を残して該雄金型取付台の厚み方向に切削した切削部とし、該切削部の該雄金型取付台の幅方向への切削深さが、該雄金型との重ね合わせ幅より深くすることにより、該雄金型取付台の厚み方向に連通する線状切り欠きが非連続に形成された第1線状スリット、該雄金型取付台の裏面から穿孔を、該雄金型取付台の厚み方向に穿ち、該穿孔の先端の1部が、凸状段差先端部分に対応する部分に到達することで、該雄金型取付台の厚み方向に連通した第2線状スリットを設けることを特徴とする請求項1?4いずれか1項に記載の発泡成形金型装置。
【請求項6】
該雄金型取付台が該雄金型の周辺部位に一体となった構造であることを特徴とする請求項5記載の発泡成形金型装置。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の発泡成形金型装置を用い、それぞれ蒸気室を有する雄金型と雌金型とから形成されるキャビティー内に充填口より発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気室に導入した蒸気により加熱成形し、その後、冷却することにより発泡成形体を得る発泡成形体の成形方法。」

(2-2)「【0016】
本発明によれば、通常使用している金型取付台の切削だけで改造が可能であり、開口率を大きくでき、他の部品等を必要としない。このため改造が容易であるだけでなく、新規に作製する場合であっても、金型取付台の体積が小となっていることから、金型の熱消費が少なく、加熱冷却の効率が向上して生産性が向上すると共に、発明の目的である良好な通気が、薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分に確保でき、充填性向上と融着性向上に優れた効果を発揮する。
【0017】
また、構造が簡単で、部品点数を増やすことがないことから、加工が簡単で、製作費用、改造費用が安価になり、金型掃除等の手間が簡単でメインテナンスの容易性、省力化が実現しうる。」

(2-3)「【0027】
本発明に言う線状スリットによる通気開口とは、通常の発泡成形金型に、蒸気の導入や、空気の流通のために使用されている、キリ穴や打ち込みスリット等のスリット状のものとは異なり、金型を構成する2部材の重ね合わせの隙間に形成される非連続な線状切り欠きである線状の間隙であったり、金型部材の裏面から穿つ穿孔の先端の1部が、部材の他面に到達することにより形成される線状のスリットを言う。
【0028】
こうした線状スリットは、発泡成形体の外周の長さ方向に形成させることが可能であるため、成形体の薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分の肉厚距離に制約されることなく開口率を大きくすることが可能となるので好ましい。これら線状スリットが2条である場合には、発泡成形体の外周形状に概ね沿って略平行に設けられていることが好ましい。
【0029】
また、雄金型を取り付ける雄金型取付台と該雄金型とを重ね合わせる縁辺部分に、該雄金型取付台と該雄金型とを螺結させるための複数の止着部分を残して該雄金型取付台の厚み方向に切削した切削部とし、該切削部の該雄金型取付台の幅方向への切削深さが、該雄金型との重ね合わせ幅より深くすることにより、該雄金型取付台の厚み方向に連通する線状切り欠きである第1線状スリットとすることができる。
【0030】
この線状切り欠きは、厚み方向に連通することにより蒸気室につながっている。線状切り欠きは雄金型取付台の止着部分の張り出し根本部にも設けることも可能であるが、雄金型取付台の止着部分以外の箇所に設けることで非連続に形成された第1線状スリットとして成すことが止着部分の強度確保のために好ましい。
【0031】
また、該雄金型取付台の裏面から、穿孔を、該雄金型取付台の厚み方向に穿ち、該穿孔の先端の1部が、凸状段差先端部分に対応する部分に到達することで、該雄金型取付台の厚み方向に連通した第2線状スリットを形成することができる。この場合の穿孔は、長穴状であることにより、長い第2線状スリットを形成することができるので好ましい。」

(2-4)「【実施例】
【0033】
次いで、本発明の実施態様について図面に沿って説明する。
【0034】
図1は、発泡成形金型装置の一例の概略を示す断面図である。
【0035】
雄金型1と移動側バックプレート2と移動側フレーム3に囲まれた、移動側蒸気室4、更に、雌金型5と、固定側バックプレート2’と固定側フレーム3’に囲まれた、固定側蒸気室4’からなる発泡成形金型装置の一例が図示されている。この図では雄金型1と、閉じられた状態が示されており、両金型によってキャビティー6が形成される。
【0036】
このキャビティー内には、フィーダー7の充填口8から発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気口9、9’から蒸気を蒸気室4、4’に導入し、雄金型1、雌金型5の細かい蒸気孔(図省略)から供給される蒸気を用いて、発泡性合成樹脂粒子を相互に加熱溶融させ、次いで冷却して発泡成形を終える。その後、移動側フレーム3、移動側バックプレート2及び雄金型1を後退させて型開きさせて成形体を取り出して、発泡成形を終える。蒸気室4、4’に導入された蒸気は、ドレン口10、10’から排出される。
【0037】
雄金型1は、雄金型取付台12に、ボルト・ナット等の螺結具16(図4参照)で重ね合わせて、螺結され、更にインナープレート11を介して移動側フレーム3に取り付けられる。なお、雄金型1は、一般的には、図示したごとく雄金型取付台12を用いて、インナープレート11を介して移動側フレーム3に取り付けられるのであるが、雄金型1の形状によっては、雄金型1の縁辺部分に雄金型取付台12が一体化された形状のものもありうる。その場合、本発明では雄金型1と、雄金型取付台12とは、一体のものとして記述される。
【0038】
一方、雌金型5は、インナープレート11’を介して固定側フレーム3’に取り付けられる。
【0039】
そして、図1では、発泡成形体先端部に凹凸状段差を有する成形体を成形するためのキャビティー6の形状であることが示されている。この図では発泡成形体先端部が薄肉形状である成形体についての図は省略してある。
【0040】
図2は、雄金型取付台12に雄金型1が重ね合わせられた状態で本発明の線状スリットによる通気開口(以下、線状スリットによる通気開口は、単に線状スリットと略称する。)が設けられた例を示す平面図である。ここに、第1線状スリットがAで、第2線状スリットがBで図示されている。図2には、第2線状スリットBの裏面側に長穴状の穿孔14が点線で表示されている。また、これら第1線状スリットAと、第2線状スリットBは、略平行に発泡成形体の外周形状に概ね沿って設けられており、その線状スリットA,Bの相互位置が千鳥掛状であり、平行な2条の該線状スリットA,Bが、これら線状スリットに直角に交差する方向に重ならない状態である例を示している。
【0041】
図3は、雄金型取付台12の部分を拡大してその概観を示す、Y-Y線での断面図であり、図1に於ける下方位置と対応する。雄金型取付台12と雄金型1とを重ね合わせる縁辺部分に、雄金型取付台12と雄金型1とを螺結させるための複数の止着部分15(図4参照)を残して雄金型取付台12の厚み方向に切削した切削部13とする。そして、この切削部13の雄金型取付台12の幅方向への切削深さが、雄金型1と雄金型取付台12との重ね合わせ幅より深いため、両者を重ね合わせた時に、雄金型取付台12の厚み方向に連通する線状切り欠きが非連続に形成された第1線状スリットAになる状態が示される。
【0042】
更に、雄金型取付台12の裏面から、長穴状の穿孔14を、雄金型取付台12の厚み方向に穿ち、穿孔14の先端の1部が、凸状段差先端部分に対応する部分に到達することで、雄金型取付台12の厚み方向に連通した第2線状スリットBを形成した状態が示されている。
【0043】
これら線状スリットの大きさは、金型の形状、成形体の形状等で大きく変化しうるので、一概に特定し難いが、一例を記すなら、例えば第1線状スリットAは、幅が0.1?0.8mm程度、より好ましくは0.2?0.5mm程度である。長さは、20?200mm程度、好ましくは40?120mm程度、より好ましくは60?110mm程度が例示される。
【0044】
第2線状スリットBとしては、例えば、幅が0.1?0.8mm程度、好ましくは0.2?0.5mm程度、より好ましくは0.2?0.4mm程度が例示される。また、第2線状スリットBの長さは、金型の大きさ等種々のケースが有り得るので特に特定しがたいが、例えば、金型取付台の周縁長さの20?90%程度の長さとすることが好ましい。より好ましくは30?85%程度の長さ、最も好ましくは40?80%程度の長さが例示される。
【0045】
これら第2線状スリットBを形成するために穿孔を用いる場合には、穿孔の短径は、例えば、5?15mm程度、好ましくは7?12mm程度、より好ましくは6?10mm程度が例示される。
【0046】
雄金型取付台12の厚み方向に連通する第1線状スリットA及び第2線状スリットBは、キャビティー6内と移動側蒸気室4とに連通しているので、充填口から遠く、充填性が弱く、蒸気等の吹き込みも弱くなりがちな薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分にも大きな開口率を付与できるため、充分なエアーの通気や蒸気の供給が確保でき、充填性向上と融着性向上に優れた効果が発揮される。また、移動側蒸気室4を減圧にしたりすることも自由であって、このような操作を加味することで、より顕著な充填性、融着性の向上も容易に可能である。
・・・
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】発泡成形金型装置の一例の概略を示す断面図である。
【図2】雄金型取付台に雄金型が重ね合わせた状態を示す平面図である。
【図3】雄金型取付台の部分を拡大した、Y-Y線での断面図である。
【図4】雄金型取付台と雄金型とを螺結により重ね合わせる状態を示すための一部分を概観する斜視図
【符号の説明】
【0049】
1 雄金型
2 移動側バックプレート
2’ 固定側バックプレート
3 移動側フレーム
3’ 固定側フレーム
4 移動側蒸気室
4’ 固定側蒸気室
5 雌金型
6 キャビティー
7 フィーダー
8 充填口
9、9’ 蒸気口
10、10’ ドレン口
11、11’ インナープレート
12 雄金型取付台
13 切削部
14 穿孔
15 止着部分
16 螺結具
A 第1線状スリット
B 第2線状スリット

【図1】

【図2】

【図3】



(2)甲6に記載の事項
上記甲6には、次の事項が記載されている。

(6-1)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 内部に偏心した中空穴を有し、フレーム(13)に回転自在に支持された中空軸(4)と、中空軸(4)の偏心した中空穴に、同心かつ回転自在に取り付けられたカッター軸(2)、及びそれに固定されたカッター(1)と、任意な角度で割り出し可能なインデックス(14)とを有したミゾ加工装置であって、
中空軸(4)とカッター軸(2)とをそれぞれ独立した動力で回転させることにより、カッター(1)を自転させながら偏心運動させ、カッター(1)の偏心運動でカッター(1)がワーク(15)に近ずいたときにワーク(15)を加工し、遠ざかったときにワーク(15)からカッター(1)が逃げ、かつその間にインデックス(14)で角度の割り出しを行うように調整したミゾ加工装置。
【請求項2】 インデックス(14)の角度の割り出しに超音波モータを使ったことを特徴とする、請求項1のミゾ加工装置。」

(6-2)「【実施例】
以下、本考案の実施例を説明する。図1は本考案の実施例である。カッター(1)(メタルソー)はカッター軸(2)の先端に同心状態に固定されている。カッター軸(2)は中空軸(4)にあけられた中空穴にベアリング(6)を介して回転自在に保持されており、その中空穴は中空軸(4)の軸心からわずかに偏心してあけられている。」

(6-3)「【要約】
【目的】 本考案は、超音波モータステータのミゾ加工を、短時間で精度よく行うためのものである。
【構成】 カッター(メタルソー)を、自転させながら偏心運動させて、スリット加工を行うとともに、カッターからワークが逃げている間にインデックスによる割り出しを行い、複数の放射状のスリットを加工する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例を示す立面図、及び断面図。
【図2】カッターの偏心回転運動を示す分解図。
【符号の説明】
1 カッター
2 カッター軸
3 中間軸
4 中空軸
5 モータ
6 ベアリング
7 調心ベアリング
8 ベアリング
9 カップリング
10 タイミングベルトプーリ
11 スリット板
12 フォトセンサー
13 フレーム
14 インデックス
15 ワーク
16 コレット
17 超音波モータ
18 エンコーダ
19 スリット板
20 フォトセンサー
21 エアシリンダー
22 ベアリング

【図1】




2 甲2に記載の発明

甲2には、上記1(1)(2-1)の請求項1に、それぞれ蒸気室を有する雄金型と雌金型とから形成されるキャビティー内に発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気室に導入した蒸気を用いて加熱成形することにより発泡成形体を得る型内発泡成形用金型装置であって、成形体の薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分に対応する金型部分に、蒸気室に連通する線状スリットによる通気開口を、薄肉先端部分の肉厚距離間において、又は凹凸状段差先端部分の肉厚距離間において、1条以上設けてなる発泡成形金型装置が記載されている。そして、同請求項4には、線状スリットの相互位置が略千鳥掛状である旨、同請求項6には、雄金型取付台が該雄金型の周辺部位に一体となった構造である旨記載されている。
また、上記(2-3)の段落【0027】には、線状スリットによる通気開口は、金型部材の裏面から穿つ穿孔の先端の1部が、部材の他面に到達することにより形成される旨記載されている。そして、上記(2-4)の段落【0036】には、発泡性合成樹脂粒子を蒸気を用いて加熱溶融させ、次いで冷却する例が記載されており、同段落【0046】には、線状スリットによりキャビティー内と移動側蒸気室とが連通しているので、充分なエアーの通気や蒸気の供給ができる旨記載されている。

そうすると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。

「雄金型と雌金型とから形成されるキャビティー内に発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気室に導入した蒸気を用いて加熱溶融させ、冷却して発泡成形体を得る型内発泡成形用金型装置であって、
成形体の薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分に対応する金型部分に、キャビティー内と移動側蒸気室とが連通しており、蒸気の供給を行うための、線状スリットを有する、型内発泡成形用金型装置。」(以下、「甲2発明」という。)


3 本件発明1?7と甲2発明との対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲2発明との対比・判断

本件発明1と甲2発明を対比する。

甲2発明の「雄金型」、「雌金型」、「キャビティー内」、「発泡成形体」は、それぞれ、本件発明1の「コア型」、「キャビティ型」、「成形空間」、「所要形状の発泡合成樹脂の成形品」に相当し、甲2発明は雄金型と雌金型とを備えていることから、一対の金型を有している。また、甲2の上記(2-4)の段落【0036】の記載からみて、甲2発明の「発泡性合成樹脂粒子」は、加熱により溶融する粒子であることから、本件発明1の「熱可塑性樹脂の発泡ビーズ」に相当する。さらに、甲2発明の「型内発泡成形用金型装置」は、発泡性合成樹脂粒子、つまり合成樹脂のビーズを用いていることから、本件発明1の「ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型」に相当する。加えて、甲2発明の「線状スリット」は、本件発明1の「スリット状の蒸気孔」に相当し、甲2発明のスリットは、金型の表と裏とを連通していることから、「金型自体に直接形成され」ており、「金型の内外に連通して前記蒸気を通」しており、当該スリットは成形体の薄肉先端部分、又は凹凸状段差先端部分に設けられていることから、「金型の所要箇所に」形成されているといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、「コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有することを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)成形後の工程において、本件発明1は、「冷却及び乾燥」するのに対して、甲2発明は、冷却の工程のみが特定されている点。

(相違点2)金型について、本件発明1は、「削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型」であるのに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。

(相違点3)スリット状の蒸気孔が、本件発明1は、「横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成されたものである」のに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。


イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、まず、(相違点3)について検討する。

まず、甲2発明におけるスリット状の蒸気孔が、「横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成されたものである」といえるかについて検討するに、甲2の上記(2-1)?(2-4)には、スリット状の蒸気孔が切削で形成される旨記載されているものの、横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成されたものであるとは記載されていない。

次に、甲2発明において、スリット状の蒸気孔を横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成することが容易想到かについて、以下検討する。
甲6の上記(6-1)?(6-3)には、ベアリングなどへスリットを形成するミゾ加工装置として、回転可能に横向きに支持された軸を有し、その先にカッター(メタルソー)を固定する構造を有している装置が記載されており、金属素材にスリットを加工する際に、横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーよりスリットを形成する装置は、本件優先日前に公知のものであるといえる。
しかしながら、甲6のミゾ加工装置により形成されるスリットは、本件発明1のように金属材料(金型)の内外に連通するスリットではなく、金属材料(ワーク15)の上面に複数の放射状に形成されたスリットであるから、結局のところ、甲6のミゾ加工装置は、超音波モータステータのミゾ加工を行うものであって、あくまで櫛歯状のミゾを連続して形成するための専用加工装置に過ぎない。すなわち、甲6のミゾ加工装置は、ステータ(ワーク15)を上方から放射状の櫛歯状のミゾを形成すれば事足りるものであり、横型マシニングセンターの水平の主軸のようにXYZ軸方向に移動して加工を行う必要のない装置である。

一方、甲2発明は、「雄金型と雌金型とから形成されるキャビティー内に発泡性合成樹脂粒子を充填し、蒸気室に導入した蒸気を用いて加熱溶融させ、冷却して発泡成形体を得る型内発泡成形用金型装置」であるから、甲2発明において、立体形状を有する金型の内面と外面に連通させた線状スリットを形成する際に、甲6のような平面状の金属材料を上方から放射状の櫛歯状のミゾを形成するミゾ加工装置を使用する動機付けがない。

よって、甲2発明を(相違点3)に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

そうすると、本件発明1は、(相違点1)及び(相違点2)を検討するまでもなく、甲2発明及び甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2?7について

本件発明2?6は、請求項1を引用し、それぞれスリット状の蒸気孔の配置場所や大きさを特定した金型の発明であり、本件発明7は、請求項1の金型を使用し、発泡合成樹脂の成形品を製造する方法の発明であるが、上記(1)イでも検討したとおり、本件発明1と同様に、甲2発明及び甲6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第5 取消理由で採用しなかった申立理由

異議申立人は、申立理由として、本件発明1、6及び7に対して、甲1を主引例とし、甲2?6を副引例とする特許法第29条第2項違反についても主張することから、以下に検討する。

甲1:特開2004-230590号工法
甲2:特開2009-166344号公報
甲3:特許第6161181号公報
甲4:特許第6161162号公報
甲5:特許第6052463号公報
甲6:実願平5-20082号(実開平6-74216号)のCD-ROM

1 甲各号証に記載の事項

(1)甲1に記載の事項
甲1には、次の記載がある。

(1-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気スリットが設けられた第1の成形型と第2の成形型とを備え、これら第1と第2の成形型を合わせて形成されるキャビティに発泡性樹脂粒子を充填し、前記蒸気スリットを介して該発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させ、発泡樹脂成形品を作製する発泡樹脂成形型において、
前記第1の成形型と第2の成形型のキャビティ面の一部又は全部に、多数の細溝状の蒸気スリットを設けたことを特徴とする発泡樹脂成形型。
【請求項2】
前記細溝状の蒸気スリットが、前記キャビティ面の裏面側からキャビティ面近傍まで設けられた蒸気穴に連通して該キャビティ面に設けられた請求項1記載の発泡樹脂成形型。
【請求項3】
前記細溝状の蒸気スリットの幅が0.2?0.4mmの範囲内である請求項1又は2記載の発泡樹脂成形型。」

(1-2)「【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明に係る発泡樹脂成形型を備えた成形装置の一例を示すものである。この成形装置Aは、一対の雌成形型1(第1の成形型)と雄成形型2(第2の成形型)からなり、雌成形型1は固定台3に固定されている一方、雄成形型2は移動台4に固定され、雄成形型2は移動台4を移動させることによって雌成形型1に対して接近・離間する方向に移動可能に配置されている。なお、雌雄成形型1,2は、熱伝導率が良好な銅、アルミニウム、銅及びアルミニウムの合金、銅、アルミニウム、マグネシウム及びマンガンの合金(ジュラルミン)から形成されるのが好ましい。
【0010】
雌成形型1には凹部5が形成されている一方、雄成形型2には凸部6が形成されており、雌雄成形型1,2は、これら凹部5と凸部6とを互いに対向させた状態に配設されており、雌成形型1の凹部5内に雄成形型2の凸部6を挿入した状態に雌雄成形型1,2を型閉めすると、雌成形型1の凹部5と雄成形型2の凸部6との対向面間にキャビティ7が形成されるように構成されている。なお、雌雄成形型1,2のいずれかの部位には、キャビティ7内に発泡性樹脂粒子を供給するための発泡性樹脂粒子供給管(図示せず)が一体的に設けられていると共にこの発泡性樹脂粒子供給管にはフィラー弁(図示せず)が介装され、更に、発泡樹脂成形品を雌成形型1から離型させるための押出ピン(図示せず)が一体的に設けられている。
【0011】
雌雄成形型1,2内は全面的に中空構造とされ、この中空部はチャンバー20,21とされている。また雌雄成形型1,2の成形壁部8,9には、雌雄成形型1,2を型閉めして形成されるキャビティ7内とチャンバー20,21内とを連通させる多数の蒸気穴22,23と細溝状の蒸気スリット30,31とが設けられている。
【0012】
図2は、雌雄成形型1,2のキャビティ面側に形成した細溝状の蒸気スリット30の一例を示す図であり、図2(a)はキャビティ面の平面図、(b)は図2(a)中のb-b部断面図である。本例示において細溝状の蒸気スリット30は、キャビティ面の縦横に所定間隔をおいて多数本設けられて格子状となるように形成されている。該蒸気スリット30は、キャビティ面の裏面側からキャビティ面近傍まで設けられた蒸気穴22に連通するようにキャビティ面側に形成されている。
【0013】
チャンバー内に供給された蒸気は、蒸気穴22を通って蒸気スリット30に達し、格子状に形成された蒸気スリット30からキャビティ7内に放出されるようになっている。
この細溝状の蒸気スリット30の幅は0.2?0.4mm、好ましくは0.2?0.3mmの範囲内であることが好ましい。蒸気スリット30の幅が前記範囲より小さいと、スリット長さ当たりの蒸気放出量が少なくなり、成形に必要な量の蒸気をキャビティ7内の発泡性樹脂粒子に供給するために、より多数の蒸気スリットを形成しなければならず、成形型の生産コスト上昇を招いてしまう。一方、蒸気スリット30の幅が前記範囲より大きいと、製造される発泡樹脂成形品の表面に形成される蒸気スリット痕34の突条の幅が大きくなって蒸気スリット痕34が目立ってしまい、外観価値が低下するとともに、蒸気スリット30に発泡性樹脂粒子が入り込んで目詰まりを起こす可能性がある。この蒸気スリット痕34の突出高さは、前記スリットの幅、使用する発泡性樹脂粒子の粒径や材質等によって変化するが、通常はスリットの幅が大きくなれば高くなり、スリットの幅が小さければ低く、目立たなくなる。
【0014】
本例示において、細溝状の蒸気スリット30は格子状に形成しており、その縦横の形成ピッチは20?50mm、好ましくは縦と横で異なるピッチとし、狭い方のピッチを20?40mm程度、広い方のピッチを30?50mm程度としてもよい。さらに好ましい縦横の形成ピッチは30?35mm程度である。蒸気スリット30の形成ピッチが前記範囲より小さいと、多数の蒸気スリットを形成しなければならず、成形型の生産コスト上昇を招いてしまう。一方、このピッチが前記範囲より大きいと、蒸気放出量が不足して成形不良を生じるおそれがある。なお、本例示では蒸気スリット30を格子状に配置しているが、蒸気スリット30の配置形状はこれに限定されることなく、例えば放射状、同心円状、千鳥状、スパイラル状、それらを組み合わせた形状などの各種の配置形状とすることができ、一部に文字、数字、マーク等を入れることもできる。
【0015】
雌雄成形型1,2の凹部5と凸部6に、蒸気穴22,23と蒸気スリット30、31とを形成する方法は、特に限定されることなく、従来公知の切削加工、エッチング処理、放電加工等を用いて形成できる。例えば、通常のパンチング加工によって貫通孔(蒸気穴22,23)を穿設した凹部5と凸部6のキャビティ面に、適当な厚さの金属板33を接合し、この金属板33に切削加工またはエッチング処理を用いて、蒸気穴22,23に連通する細溝状の蒸気スリット30,31を形成する方法を用いてもよい。
【0016】
前記チャンバー20,21には、これらのチャンバー20,21内に蒸気を供給するための蒸気供給管24,25の一端部が連結、連通されている一方、蒸気供給管24,25を通じてチャンバー20,21内に供給した蒸気をチャンバー20,21外に排出するための蒸気排出管26,27の一端部が連結、連通されている。これらの蒸気供給管24,25には蒸気供給弁24a,25aが介装されていると共に、蒸気排出管26,27には蒸気排出弁26a,27aが介装されている。
【0017】
また、チャンバー20,21には、これらのチャンバー20,21内の空気を真空吸引するための吸引管28,29の一端部が連結、連通されており、この吸引管28,29には吸引開閉弁28a,29aが介装されていると共に、この吸引開閉弁28a,29aの他端側には真空ポンプ(図示せず)が配設されている。
【0018】
次に、蒸気成形装置Aを用いて、発泡樹脂成形品を成形する要領について説明する。まず、上述した通り構成された雌雄成形型1,2を型閉めし、雌雄成形型1,2の成形壁部8,9の対向面間にキャビティ7を形成する(型閉め工程)。
【0019】
続いて、雌成形型1のフィラー弁を開放して発泡性樹脂粒子供給管を通じてキャビティ7内に発泡性樹脂粒子を供給、充填する(充填工程)。
・・・
【0022】
充填工程の後、蒸気供給弁24a,25a及び蒸気排出弁26a,27aを開放して蒸気供給管24,25を通じて雌雄成形型1,2のチャンバー20,21内に蒸気を供給、充満させると共に、この蒸気を雌雄成形型1,2の蒸気排出管26,27を通じてチャンバー20,21内に流通させ、チャンバー20,21内を所定時間加熱する(型加熱工程)。その後、雄成形型2の蒸気供給弁25aを閉止すると共に雌成形型1の蒸気排出弁26aを閉止して、雌成形型1の蒸気供給管24を通じて雌成形型1のチャンバー20内に蒸気を供給し、この蒸気を、雌成形型1の蒸気穴22および蒸気スリット30を通じてキャビティ7内に流入させて、発泡性樹脂粒子に接触、通過させ、発泡性樹脂粒子を加熱、発泡させた上で、雄成形型2の蒸気スリット31および蒸気穴23を通じて雄成形型2のチャンバー21内に流入させた後、雄成形型2の蒸気排出管27を通じて外部に排出させる(一方加熱工程)。続いて、雄成形型2の蒸気供給弁25a及び雌成形型1の蒸気排出弁26aを開放する一方、雌成形型1の蒸気供給弁24a及び雄成形型2の蒸気排出弁27aを閉止して、雄成形型2の蒸気供給管25を通じて雄成形型2のチャンバー21内に蒸気を供給し、この蒸気を、雄成形型2の蒸気穴23を通じてキャビティ7内に流入させて発泡性樹脂粒子に接触、通過させ、発泡性樹脂粒子を加熱、発泡させた上で、雌成形型1の蒸気穴22および蒸気スリット30を通じて雌成形型1のチャンバー20内に流入させた後、雌成形型1の蒸気排出管26を通じて外部に排出させる(逆一方加熱工程)。続いて、雌雄成形型1,2の蒸気供給弁24a,25aを共に開放状態とする一方、雌雄成形型1,2の蒸気排出弁26a,27aを共に閉止し、雌雄成形型1,2のチャンバー20,21内に蒸気供給管24,25を通じて蒸気を供給、充満させて、雌雄成形型1,2の成形壁部8,9を加熱してキャビティ7を加熱すると共に、チャンバー20,21内の蒸気を蒸気穴22,23および蒸気スリット30,31を通じてキャビティ7内の発泡性樹脂粒子を加熱、発泡させて発泡樹脂成形品Bを作製する(両面加熱工程)。
【0023】
次に、冷却工程に移り、雌雄成形型1,2の冷却媒体供給管(図示せず)を通じて冷却媒体をチャンバー20,21内に供給、流通させて、キャビティ7内の発泡樹脂成形品を冷却する。なお、冷却媒体としては、特に限定されず、冷却水、冷却エアー等が挙げられる。
【0024】
更に、この冷却媒体による冷却の後、真空ポンプを駆動させ、雌雄成形型1,2のチャンバー20,21内を吸引管28,29を通じて真空吸引して減圧状態とする。
【0025】
チャンバー20,21内とキャビティ7内とは蒸気穴22,23および蒸気スリット30,31を通じて連通した状態となっていることから、真空ポンプによる真空吸引によって、発泡樹脂成形品のあるキャビティ7内も減圧状態となる。
【0026】
一方、発泡性樹脂粒子の加熱、発泡に用いられた蒸気は、冷却による温度低下に伴って凝縮、液化し、この凝縮水はキャビティ7内にある発泡樹脂成形品の表面及び内部に存在している。
【0027】
しかるに、この発泡樹脂成形品の表面及び内部に存在する凝縮水は上述のようにして減圧状態となることによって円滑に気化し、この凝縮水の気化熱によって発泡樹脂成形品が冷却されると共に、この気化した水分は直ちに真空ポンプによって吸引されて吸引管28,29を通じて外部に排出、除去される。
【0028】
このように、キャビティ7内の発泡樹脂成形品を、チャンバー20,21内を真空吸引によって発泡樹脂成形品表面及び内部に存在する凝縮水を減圧気化させ、この凝縮水の気化熱により冷却しており、よって、発泡樹脂成形品は短時間のうちに効果的に冷却される。また、上述の如く、発泡樹脂成形品の表面に付着した凝縮水及び発泡樹脂成形品内部に入り込んだ凝縮水を減圧気化させて強制的に吸引除去しており、含水率の低い発泡樹脂成形品を得ることができる。
【0029】
続いて、雌雄成形型1,2に配設された真空ポンプを停止させると共に吸引開閉弁28a,29aを閉止し、更に、雌雄成形型1,2の蒸気排出弁26a,27aを開放させて、雌雄成形型1,2のチャンバー20,21内の減圧状態を開放してチャンバー20,21内を大気圧とした上で、移動台4を固定台3に対して離間方向に移動させることによって雌雄成形型1,2を型開きし、雌成形型1に設けられた押出ピンを作動させてキャビティ7内の発泡樹脂成形品を離型させて取り出す(型開き工程)。
【0030】
そして、型閉め工程?型開き工程を一連の成形工程とし、この成形工程を繰り返し行って発泡樹脂成形品を連続的に成形する。」

(1-3)「【図1】

【図2】



(2)甲2?6に記載の事項

甲2,6については、上記第4 1で記載したとおりである。

なお、上記第4でも記載したとおり、甲3?5は、本願の優先日前に頒布された刊行物ではないことから、その意味において、上記申立理由は適切ではない。そこで、以下、本件発明1、6及び7が甲1、甲2及び甲6に記載された事項から想到容易であったといえるかについて検討を進める。


2 甲1に記載の発明

甲1には、上記(1)(1-1)の請求項1に、蒸気スリットが設けられた第1の成形型と第2の成形型とを備え、これら第1と第2の成形型を合わせて形成されるキャビティに発泡性樹脂粒子を充填し、前記蒸気スリットを介して該発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させ、発泡樹脂成形品を作製する発泡樹脂成形型において、前記第1の成形型と第2の成形型のキャビティ面の一部又は全部に、多数の細溝状の蒸気スリットを設けた発泡樹脂成形型が記載されている。そして、同請求項2には、前記細溝状の蒸気スリットが、前記キャビティ面の裏面側からキャビティ面近傍まで設けられた蒸気穴に連通して該キャビティ面に設けられた旨記載されている。
また、上記(1-2)の段落【0009】及び図1には、雌成形型1は固定台3に固定されている一方、雄成形型2は移動台4に固定され、雄成形型2は移動台4を移動させることによって雌成形型1に対して接近・離間する方向に移動可能に配置されている旨記載されている。そして、上記(1-2)の段落【0011】及び図1には、雌雄成形型1,2内は全面的に中空構造とされ、この中空部はチャンバー20,21とされており、雌雄成形型1,2の成形壁部8,9には、雌雄成形型1,2を型閉めして形成されるキャビティ7内とチャンバー20,21内とを連通させる多数の蒸気穴22,23と細溝状の蒸気スリット30,31とが設けられている旨記載されている。加えて、段落【0015】には、雌雄形成型1,2の凹部5と凸部6に、蒸気穴22,23と蒸気スリット30、31とを形成する方法として、例えば、当該凹部5と凸部6のキャビティ面に、適当な厚さの金属板33を接合し、この金属板33に切削加工またはエッチング処理を用いて、蒸気穴22,23に連通する細溝状の蒸気スリット30,31を形成する方法を用いてもよい旨記載されている。
さらに、上記(1-2)の段落【0023】には、発泡性樹脂粒子を加熱、発泡後、冷却する旨記載されている。

そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。

「第1の成形型と第2の成形型を合わせて形成されるキャビティに発泡性樹脂粒子を充填し、蒸気スリットを介して該発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させ、冷却して発泡樹脂成形品を作製する発泡樹脂成形型において、
前記第1の成形型と第2の成形型のキャビティ面に接合された金属板に、多数の細溝状の蒸気スリットを設けた発泡樹脂成形型。」(以下、「甲1発明」という。)


3 本件発明1、6及び7と甲1発明との対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断

本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「第1の成形型」、「第2の成形型」、「キャビティ」、「発泡樹脂成形品」は、それぞれ、本件発明1の「コア型」、「キャビティ型」、「成形空間」、「所要形状の発泡合成樹脂の成形品」に相当し、甲1発明は第1の成形型と第2の成形型とを備えていることから、一対の成形金型を有している。また、甲1の上記(1-2)の段落【0013】の記載からみて、甲1発明の「発泡性樹脂粒子」は、蒸気により成形可能な粒子であることから、本件発明1の「熱可塑性樹脂の発泡ビーズ」に相当する。さらに、甲1発明の「発泡樹脂成形型」は、発泡性樹脂粒子、つまり合成樹脂のビーズを用いていることから、本件発明1の「ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型」に相当する。加えて、甲1発明の「蒸気スリット」は、本件発明1の「スリット状の蒸気孔」に相当し、甲1発明のスリットは、キャビティ面の表と裏とを連通していることから、「内外に連通して前記蒸気を通」しており、当該スリットは第1の成形型と第2の成形型のキャビティ面に接合された金属板に設けられていることから、「所要箇所に」形成されているといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
所要箇所に、内外に連通して前記蒸気を通すための、スリット状の蒸気孔を有することを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点A)スリット状の蒸気孔が、本件発明1は、「金型自体に直接形成」されたものであるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。

(相違点B)発泡合成樹脂の成形品を得る際、本件発明1は、冷却後、乾燥しているのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。

(相違点C)金型について、本件発明1は、「削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型」であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。

(相違点D)スリット状の蒸気孔が、本件発明1は、「横型マシニングセンターの主軸に取り付けたメタルソーより形成されたものである」のに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。


イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、まず、(相違点A)について検討する。

まず、甲1発明において、スリット状の蒸気孔が、「金型自体に直接形成」されているといえるかについて検討する。

甲1の上記(1-2)の段落【0011】及び図1には、雌雄成形型1,2内は全面的に中空構造とされ、この中空部はチャンバー20,21とされており、雌雄成形型1,2の成形壁部8,9には、雌雄成形型1,2を型閉めして形成されるキャビティ7内とチャンバー20,21内とを連通させる多数の蒸気穴22,23と細溝状の蒸気スリット30,31とが設けられている旨記載されており、また、段落【0015】には、蒸気スリット30,31の設け方について、キャビティ面に接合された金属板に当該蒸気スリットを設ける旨記載されていることから、蒸気スリットが設けられているのはは、雌雄成形型(金型)に接合された「金属板」であることが理解できる。

してみると、金属板は金型を直接構成するものではないことから、甲1発明において、スリット状の蒸気孔が金型自体に直接形成されているとはいえない。

さらに、甲1発明において、第1の成形型及び第2の成形型にスリット状の蒸気孔を直接形成することが容易想到かについて、以下検討する。
上述のとおり、甲1には、蒸気スリット30,31は、キャビティ面に接合された金属板に設ける旨記載されているのであって、甲1発明において、蒸気スリットは雌雄成形型自体ではなく、雌雄成形型のキャビティ面に接合された金属板に蒸気スリットを設けることが必須の構成である。さすれば、甲1発明において、蒸気スリットを金属板ではなく、第1の成形型及び第2の成形型に直接設けることは、阻害事由があるというべきである。

よって、甲1発明を(相違点A)に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。この点は、甲2、6の記載を参酌しても、同様である。

また、相違点Dについても検討するに、上記3(1)イで述べたとおり、甲6のような平板状の金属材料を上方から放射状の櫛歯状のミゾを形成するミゾ加工装置を、立体形状を有するキャビティ面の内面と外面に連通させた蒸気スリットを形成する際に用いる動機付けがないのであるから、甲1発明において、(相違点D)に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者にとって容易になし得ることではない。

そうすると、本件発明1は、(相違点B)、(相違点C)を検討するまでもなく、甲1発明及び甲2、6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明6及び7について

本件発明6は、請求項1を引用し、それぞれスリット状の蒸気孔の配置場所や大きさを特定した金型の発明、本件発明7は、請求項1の金型を使用し、発泡合成樹脂の成形品を製造する方法の発明であるが、上記(1)イでも検討したとおり、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2、6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない


第6 むすび

上記「第4」ないし「第5」で検討したとおり、本件発明1?7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由によっては、本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、決定する。
 
異議決定日 2018-12-04 
出願番号 特願2015-94477(P2015-94477)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増永 淳司  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 加藤 友也
阪▲崎▼ 裕美
登録日 2017-11-24 
登録番号 特許第6245215号(P6245215)
権利者 株式会社羽根
発明の名称 ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及びビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法  
代理人 森岡 則夫  
代理人 関口 久由  
代理人 柳野 隆生  
代理人 特許業務法人矢野内外国特許事務所  
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