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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1346802
異議申立番号 異議2018-700772  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-26 
確定日 2018-12-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6302252号発明「建物設備の搭載方法及び建物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6302252号の請求項1、8、9に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6302252号の請求項1、8、9に係る特許についての出願は、平成26年1月9日に出願され、平成30年3月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年9月26日に特許異議申立人 齋藤 貴広(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6302252号の請求項1、8、9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、8、9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
設備本体を架台に載せてなる建物設備を、建物の躯体ユニットに搭載する建物設備の搭載方法であって、
前記建物設備を前記架台の下に敷材を介在させた状態で台車に載せる第1工程と、
前記建物設備を前記台車に載せた状態で前記躯体ユニットと並ぶ位置へ案内する第2工程と、
前記台車を前記並ぶ位置に配した状態にて前記建物設備を所定の方向に移動させることにより、当該建物設備を前記台車から前記躯体ユニットへ前記敷材ごと受け渡す第3工程と
を有し、
前記躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部が形成されており、
前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収することを特徴とする建物設備の搭載方法。
【請求項8】
前記設備本体は、浴槽及び浴室床部を有するバスユニットであり、
前記躯体ユニットの下部に形成された開口部を通じて、給排水手段の接続が可能となっていることを請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法。
【請求項9】
前記躯体ユニットを組み立てる第1組み立て工程と、
前記建物設備を組み立てる第2組み立て工程と、
前記搭載方法によって前記躯体ユニットに前記建物設備を搭載する工程と
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の建物設備の搭載方法を利用した建物の製造方法。 」

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証ないし甲第6号証を提出し、請求項1、8、9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、8、9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

[証拠]
甲第1号証:特開2001-303672号公報
甲第2号証:特開平6-220922号公報
甲第3号証:特開2010-121318号公報
甲第4号証:特開2001-288909号公報
甲第5号証:特開2008-214927号公報
甲第6号証:実願昭55-54890号(実開昭56-155642号公報)のマイクロフィルム

4 証拠の記載事項
(1) 甲第1号証
(下線は当決定で付した。以下同様。)

ア 「【0001】」
【発明の属する技術分野】
この発明は、工場で生産する建物ユニットに組込む台所の流し台等の設備ユニット及びその取付方法に関する。」

イ 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は前記の点に鑑みなされたもので、建物ユニットの組付けライン上での建物ユニットへの台所設備の取付け作業工数及び作業時間を減少し、組付けライン上での取付作業が安全且つ迅速に行うことができる台所の設備ユニット及びその取付方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この請求項1の発明は、建物ユニットの台所の床面に並置される流し台等の複数の設備を、該設備並置時の底面寸法に対応するセット底板上に並置し一体に組付けたことを特徴とする台所の設備ユニットに係る。
【0009】
また、請求項2の発明は、建物ユニットの台所の床面に並置される流し台等の複数の設備を、前記建物ユニットの組付けライン外の場所で前記設備並置時の底面寸法に対応するセット底板上に並置し一体に組付けて台所の設備ユニットとし、次いで前記台所の設備ユニットを建物ユニット内の所定位置に納めることを特徴とする台所の設備ユニットの取付方法に係る。」

ウ 「【0011】
この発明の台所設備ユニット10は、図1及び図2に示すように、流し台11、コンロ台12、調理台13の他、フロアキャビネット等のような建物ユニットH内下部の床面に配置される種々の設備からなり、施主により適宜選択された複数の設備11,12,13を組合せてセット底板20上に並置し、各設備11,12,13及びセット底板20を一体に組付けたものである。
【0012】
セット底板20は、前記各設備11,12,13を組合せたときの底面寸法に対応する寸法、すなわち、前記各設備11,12,13を組合せて載置できる大きさとされる。また、このセット底板20は、設備ユニット10の底面積全面に相当する一枚の平板からなるものとするのが好ましいが、設備ユニット20の前部側底板及び奥部側底板(図示せず)のように2枚以上の長板状からなるもので構成してもよい。さらに、セット底板20は、一般の下地合板でもよいが、特には台所設備ユニット10の設置場所の床面に仕上げ材として敷くフローリング材と同一材質で構成するのが、設備ユニット10を建物ユニットHに取付けた際に後加工が簡単になり、より好ましい。また、セット底板20の厚みは、セット底板20上に固定される各設備11,12,13の重みを考慮し、5mm以上とするのが好ましい。
【0013】
前記セット底板20への各設備11,12,13の固定一体化は、建物ユニットHの組付けライン(主ライン)外の作業場(副ライン等)で行う。その際、予めセット底板20の上面には、各設備11,12,13の側壁(側面)内側となる位置に断面方形の受け材25を所要数、釘や木ねじ26等で取付けておく。次いで、前記各設備11,12,13を受け材25に位置合わせしてセット底板20上の所定位置に並べて載置し、各設備11,12,13の側壁表面11a,12a,13a側から各側壁内側の受け材25に釘や木ねじ26等で固定する。前記各設備11,12,13における隣接する設備同士は、従来と同様の手段により連結処理される。例えば、互いに隣接する設備の側壁同士を木ねじ等で固定連結してもよい。また、前記隣接する設備同士間の連結固定については、この設備ユニット10の搬送等において支障がない場合、特に必要はない。なお、前記設備ユニット10は、このように各設備11,12,13とセット底板20が一体にされた後、付帯する配管や棚板等が適宜組付けられる。
【0014】
次に、前記のようにして建物ユニットHの組付けラインL外で一体化された台所の設備ユニットを、組付けラインL上の建物ユニットHに取付ける方法について説明する。
【0015】
その取付けは、図3に示すように、前記設備ユニット10を搬送台車41に載置し、作業ステージM側から組付けラインL上の建物ユニットH内所定位置へ搬送し、建物ユニットHの床面H1へ移動させることにより行う。前記搬送台車41は、ローラコンベア42の下にキャスター43を取付けた既知のものを使用できる。前記設備ユニット10の搬送時、設備ユニット10はその底面に平坦なセット底板20を一体に有するので、搬送台車41のローラーコンベア42上から容易に建物ユニットHの配置床面上に移動することができる。また、前記組付けラインL外の作業場所における搬送台車41上で、前記セット底板20と各設備11,12,13との組付け一体化を行って設備ユニット10を形成すれば、そのまま搬送台車41を移動させるだけで建物ユニットH内へ搬送することができ、合理的である。
【0016】
そして、建物ユニットH内の所定位置へ載置した後、セット底板20に面一で連続するフローリング等を敷設すれば、当該建物ユニットH床面の仕上げが完了する。」

エ 上記アないしウからみて、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。

「組付けラインL外で各設備11,12,13及びセット底板20を一体化された設備ユニット10を、組付けラインL上の建物ユニットHに取付ける方法であって、
セット底板20の上面に、受け材25を取付けておき、次いで、前記各設備11,12,13を受け材25に位置合わせしてセット底板20上の所定位置に並べて載置し、固定一体化し、
設備ユニット10を搬送台車41に載置し、作業ステージM側から組付けラインL上の建物ユニットH内所定位置へ搬送し、建物ユニットHの床面H1へ移動させることにより行う、方法。」

(2) 甲第2号証
ア 「【0015】
本実施例において、ユニットルーム20の移動はトラック等の荷降し地点からユニットルーム設置用土台18の上まで布設したローラコンベア32上を据付架台10付きのユニットルーム20を載せた台盤30を滑動させることによって行なわれる。なお、本実施例では台盤30は合板製であるが、他の材質としても良い。
【0016】
ユニットルーム20を載せた台盤30を滑動させるには、前記土台18上まで後方より人力等で押し上げる方法や、前方より電動ウィンチ等で引き上げる方法などを採用できる。なお、通常の大きさ、重量のユニットルームの場合、ローラコンベア32が上り勾配にて配設されていても、2名程度の作業員でユニットルームを容易に滑動させることができた。
【0017】
土台18の上までユニットルーム20を移動させた後、後述の如き適宜の方法でユニットルーム20を据付架台10ごと台盤30より持ち上げた状態を作り出し、ローラコンベア32と台盤30を据付架台10と土台18の間から撤去する。然る後、該据付架台10を降下させて前記土台18に載せる。」

(3) 甲第3号証
ア 「【0045】
まず、図7(a)に示すように、浴室ユニット30を建物ユニット20a内に設置する作業を行う。ここではまず、搬送台60のローラ61上に載置された浴室ユニット30を作業台63上に載置された建物ユニット20a内に水平移動させ、作業台63内にあらかじめ用意された昇降台62の上に載置する。この場合、浴室ユニット30の天井部材35は下位置(図6(a)に示す位置)に仮固定しておき、浴室ユニット30の高さ寸法Hを天井大梁22と床大梁23との離間距離Lよりも小さくしておく。そして、この状態で浴室ユニット30を建物ユニット20a側面における天井大梁22,床大梁23及び柱21により囲まれた開口領域を通じて建物ユニット20a内に水平移動させる。なお、搬送台60の高さ(ローラ61高さ)は作業台63上の建物ユニット20aの床大梁23の上面高さとほぼ同じになっている。
【0046】
ここで、浴室ユニット30が載置される昇降台62は、受小梁27間から上方に出没可能に設けられた複数の支持アーム部62aと、各支持アーム部62aの上端部に配置され浴室ユニット30が載置される載置部62bとを有し、各支持アーム部62aを周知のリンク機構により伸縮させることにより載置部62bの高さ位置を調整することが可能となっている。浴室ユニット30を昇降台62に載置する際には、載置部62bの載置面の高さをあらかじめ搬送台60の高さと同じに設定しておく。
【0047】
浴室ユニット30を昇降台62の載置部62bに載置した後は、載置部62bをその載置面が受小梁27の下面よりも下方に位置するまで下降させる。これにより、浴室ユニット30が受小梁27上に設置される。その後、浴室ユニット30を固定金具53等により床小梁25に固定する。なお、このとき浴室ユニット30上方に浴室ユニット30の下降分の空間部が形成される。」

(4) 甲第4号証
ア 「【0015】 図1に示すように、本発明の浴室ユニット10のユニット住宅15への搬入方法は、ユニット住宅15に、床部が防水パン11からなる浴室ユニット10を台車20に載せてユニット住宅15に搬入するようになされている。
【0016】
浴室ユニット10を搬入する作業台30と、ユニット住宅15の床面156とは段差が設けられている。そのため搬入される浴室ユニット10の防水パン11の搬入前方に設置される台車20は、ジャッキアップした状態になされて、防水パン11は水平に保持できる様になされている。
【0017】
ユニット住宅15は、工場内で床面156、壁面151、153、天井面155を箱型に組み立てられている(図7に詳述)。壁面153は、浴室ユニット10が搬入できるように、壁面153が開口されている。
【0018】
浴室ユニット10は、壁面153の開口より搬入されて、住宅ユニット15の設置スペース157に設置できるようになされている。
【0019】
浴室ユニット10の床面を形成する防水パン11の裏面には、搬入方向の前方に台車20が設けられ、浴室ユニット10が、ユニット住宅15の床面156を移動できるようになされている。
【0020】
台車20は、ユニット住宅15の床面156に設置され、台車20の上部にある支持板201(図3にて詳述)を防水パン11の裏面に当てて、防水パン11を支持するようになされ、下部にある車輪203で移動できるようになされている。
【0021】
浴室ユニット10は、床面に開口のない防水パン11に壁パネル、天井パネルを組み立てて構成されている。防水パン11の裏面には、ユニット住宅15の床面156に水平に設置できるように脚部12が間隔を置いて設けられている。
【0022】
図2に示す様に、浴室ユニット10は、作業台30より、ユニット住宅15内の床面156を移動して、ユニット住宅15内に搬入され、浴室ユニット設置スペース157に搬入設置されている。
【0023】
ユニット住宅15内に搬入後、浴室ユニット10は、脚部12で、床面156に設置されている。台車20は、支持板201を下げて防水パン11から切り離されている。
【0024】
図3に示す様に、防水パン11を支持する台車20は、支持板201、駆動装置204、車輪部202、車輪203とが設けられている。支持板201は、台車20の上部に設けられ、防水パン11の裏面を支持できるようになされている。
【0025】
支持板201は、駆動装置204によって、支持板201を上下動できるようになされている。駆動装置204は、遠隔操作できるようになされて、別途設けられた操作盤で遠隔操作できるようになされている。駆動装置204は、油圧式、電気式dどちらの方法の装置でもよい。
【0026】
板状からなる車輪部202の下部には、車輪203が設けられ、台車20が浴室ユニット10の荷重を支持した状態で移動できる様になされている。台車20は、浴室ユニット10をユニット住宅15の床面156を移動できるように、前方の防水パン11の端部にセットされている。
【0027】
図4に示す様に、前記浴室ユニット10の床面を形成する防水パン11は、洗い場111と浴槽設置部112が一体に成形されて縁部が立ち上がって形成されている。
【0028】
浴槽設置部112は、浴槽を据え置くようになされている。浴槽設置部に両端には点検口113が縁部を立ち上げて設けられている。点検口113の開口は台車20が出し入れできるような大きさになされている。
【0029】
図5に示す様に、防水パン11の裏面は、脚部12を裏面全面に間隔をおいて配設され、裏面全体は突起した補強リブ114を格子状に配置され、防水パン11の床面強度が補強されている。
【0030】
台車20の支持板は、点検口113、113の近傍の台車設置面115の位置に設置されている。浴室ユニット10がユニット住宅内に設置された後、台車20の支持板201を下げて後、台車20を防水パン11から分離させて後、点検口113から取り出せるようになされている。」

(5)甲第5号証
ア 「【0028】
本発明設置構造10は、平面視したとき二本の洗い場側吊架台22,22と浴槽側吊架台21と洗い場側横長部材3とで囲まれる平面領域内に浴槽31の排水口52と洗い場防水パン32の排水口51を配置すると共に、前記浴室ユニット設置用吊架台20の二本の洗い場側吊架台22,22の間に、浴槽31の排水口52と洗い場防水パン32の排水口51を連通する排水トラップ34付きの連通配管具45を配設して、浴室ユニット設置用吊架台20と連通配管具45との干渉を回避できるようにすることで、洗い場防水パン32の排水口51を浴槽31の際に設ける仕様にも対応させることを可能にすると共に、連通配管具45の標準の高さ寸法H5で各現場で対応させることができるようにしてある。更に、本発明設置構造10は、浴室ユニット設置用吊架台20と連通配管具45との干渉を回避できるので、浴室ユニット設置用吊架台20に設置する浴槽31及び洗い場防水パン32の高さ位置を現場の仕様に応じて下げることも可能である。本例の連通配管具45は、洗い場防水パン32の排水口51に排水トラップ34を接合し、排水トラップ34と浴槽31の排水口52とを連通管37で接合してある。
【0029】
本発明設置構造10は、連通配管具45から延びる排水管36が、一方(本例では手前側であるが、奥側も可能)の洗い場側吊架台22の下側を通過して、浴室ユニット30を設置する領域の外部へ延設されている。この排水管36の延設構造は、排水管36の高さ位置等を調節することで、一方の洗い場側吊架台22の下方を潜るように排水管36を通過させて簡単に横引きできる。
【0030】
前記連通配管具45から延びる排水管36の横引きの別態様としては、図6に示す如く、連通配管具45から延びる排水管61が、建物躯体の洗い場側横長部材3へ向かって二本の洗い場側吊架台22,22の間を通過して、浴室ユニット30を設置する領域の外部へ延設されたものがある。この排水管36の延設構造は、排水管36が洗い場側吊架台22,22を避けるので排水管36を横引きしやすい。」

(6)甲第6号証
ア 「以下添付図面をもとにその実施例について説明する。図において、1は組合せ家具における一枚の長尺状の天板、2は複数個の箱体、3はその台枠である。そして台枠3上には箱体2が、また箱体2上には天板1がそれぞれ截置されこれらは適宜固定されるものである。ここで台枠3は長方形状をしており、前板4、後板5、前板4と後板5に橋架する梁6、左側板7および右側板8により形成されている。ここで前板4、後板5の内面には、横方向に走る溝9、10を設け、梁6をこの溝9、10内にのぞませて前板4、後板5に橋架するともに、L字状の連結具11をネジ14により適宜な個所に取り付けているものである。また前板4、後板5及び左側板7、右側板8の端部には、それぞれワンタッチで互いに係合できる係合部12、13を設けている。」 (明細書の第2頁第2行-第17行)

5 当審の判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「各設備11,12,13」、「受け材25を取り付けてお」いた「セット底板20」、「設備ユニット10」、「建物ユニットH」、「搬送台車41」は、本件発明1の「設備本体」、「架台」、「建物設備」、「躯体ユニット」、「台車」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは以下の点で相違する。

(相違点)
本件発明1では、「建物設備」を、第1工程において、「架台の下に敷材を介在させた状態で台車に載せ」て、第3工程において、「台車から前記躯体ユニットへ前記敷材ごと受け渡す」とともに、「敷材」に関して、「躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部が形成されており、前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収する」のに対し、甲1発明では、そのような構成を有しない点。

相違点の判断
上記相違点について検討すると、少なくとも、相違点に係る「敷材」に関する構成(方法)については、甲第2号証ないし甲第6号証には記載されていない。

申立人は、甲第2号証には、「建物設備を架台(据付架台10)の下に敷材(台盤30)を介在させた状態で台車(ローラコンベヤ32)に載せる」工程が記載されている旨、主張する。
前述のとおり、甲第2号証には、「ユニットルーム20の移動はトラック等の荷降し地点からユニットルーム設置用土台18の上まで布設したローラコンベア32上を据付架台10付きのユニットルーム20を載せた台盤30を滑動させることによって行なわれる。」及び「ローラコンベア32と台盤30を据付架台10と土台18の間から撤去する。」との記載があるから、「台盤30」が本件発明の「敷材」に、また、「据付架台10」が、本件発明の「架台」に相当するものと認められる。
しかしながら、甲第2号証では、「台盤30」を、据付架台10と土台18の間から回収するものであり、本件発明の相違点に係る構成である、「躯体ユニットの下部には、当該躯体ユニットの床大梁に囲まれて下開口部が形成されており、前記第3工程では、前記受け渡し後に、前記躯体ユニットの下開口部を通じて前記敷材を回収する」構成は、甲第2号証に記載されていない。

申立人は、甲第3号証には、「浴室ユニット30を建物ユニット20aに受け渡し後に、躯体ユニット(建物ユニット20a)の下開口部(受小梁27,27間の開口)を通じて敷材(載置部62b)を下降させる点」が記載されている旨、主張する。
しかしながら、甲第3号証に記載の「載置部62b」は、「昇降台62」の一部であり、建物設備を台車に載せる際に、架台の下に設けられるものではないから、「敷材」とはいえない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。

甲第4号証には、前述のとおり、 「浴室ユニット10がユニット住宅内に設置された後、台車20の支持板201を下げて後、台車20を防水パン11から分離させて後、点検口113から取り出せるようになされている。」ことが記載されているが、「点検口113」は、「躯体ユニットの下開口部」ではなく、「台車20」は、「敷材」ではないから、本件発明1の相違点に係る構成は記載されていない。
申立人は、「搬送に使用した部材を使用後に開口を通して回収することは・・・当業者にとって慣用技術又は周知技術である」と主張するが、仮に、「搬送に使用した部材を使用後に開口を通して回収する」ことが慣用技術又は周知技術であったとしても、甲1発明に、「敷材」及び「躯体ユニットの下開口部」が設けられていない以上、「搬送に使用した部材」を「敷材」とし、「開口」を「躯体ユニットの下開口部」と定めることが当業者にとって容易であるとはいえない。

甲第5号証は、前述のとおり、給排水手段に関する構成が記載されており、本件発明1の相違点に係る構成とは直接関係がない。

甲第6号証には、前述のとおり、「台枠3上には箱体2が、また箱体2上には天板1がそれぞれ截置されこれらは適宜固定されるものである」ことが記載されており、本件発明1の「架台」に相当するもの(台枠3)が記載されているとは認められるものの、本件発明1の相違点に係る構成は記載されていない。
また、甲第6号証には、「敷材」の構成が記載されているとは認められないから、申立人の、相違点1(本件特許発明1は「設備本体を架台に載せてなる建物設備を、前記架台の下に敷材を介在させた状態で台車に載せる」のに対し、甲1発明はそのような構成を有していない点。)に相当する構成が、甲第6号証に記載されているとの主張は採用できない。

よって、甲1発明において、本件発明1の相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、当業者が甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものではない。

(2) 本件発明8、9について
本件発明8、9は、本件発明1を直接または間接的に引用し、本件発明1にさらに技術事項を追加したものである。よって、上記(1)で示した理由により、当業者が甲第1ないし第6号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものではない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によって、本件発明1、8、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-26 
出願番号 特願2014-2716(P2014-2716)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E04G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 富士 春奈
住田 秀弘
登録日 2018-03-09 
登録番号 特許第6302252号(P6302252)
権利者 トヨタホーム株式会社
発明の名称 建物設備の搭載方法及び建物の製造方法  
代理人 山田 強  
代理人 加藤 雅博  

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