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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61D
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61D
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61D
管理番号 1346939
審判番号 訂正2018-390156  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-10-05 
確定日 2018-11-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6389514号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6389514号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4-16〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6389514号(以下、「本件特許」という。)は、2014年5月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年5月31日 英国(GB))を国際出願日とする出願(特願2016-516245号)であって、その請求項1ないし16に係る発明について、平成30年8月24日に特許権の設定登録がなされ、同年10月5日に本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正事項
1 請求の趣旨
本件訂正審判の趣旨は、「特許第6389514号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4?16について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。

2 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?2のとおりである(下線は、審判請求人が訂正箇所を示したものである。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に「20?100μm^(2)、40?80μm^(2)、40?60μm^(2)、またはこれより小さい孔径」と記載されているのを、「20?100μm、40?80μm、40?60μm、またはこれより小さい孔径」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?16も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
明細書の段落[0032]に「フィルタは、20?100μm^(2)、好ましくは40?80μm^(2)の孔径であり、血球は通すが卵母細胞は通さない。好ましい実施形態において、フィルタは40?60μm^(2)またはこの範囲より小さい孔径である。」と記載されているのを、「フィルタは、20?100μm、好ましくは40?80μmの孔径であり、血球は通すが卵母細胞は通さない。好ましい実施形態において、フィルタは、40?60μmまたはこの範囲より小さい孔径である。」に訂正する。

第3 当審の判断
1 一群の請求項について
本件訂正前の請求項4?16について、請求項5?16は、請求項4を引用しているから、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものであり、特許法第126条第3項の規定に適合する。

2 訂正要件の検討
(1) 訂正の目的
ア 訂正事項1
訂正前の請求項4には「前記フィルタは、血球は通過できるが卵母細胞は通過できない」と記載されており、本件特許明細書の【0118】には「血球は8?10ミクロンである」とあり、1ミクロンとは1マイクロメートル(μm)を意味することから、訂正前の請求項4記載のフィルタは、8?10μmの血球は通過できるが卵母細胞は通過できないフィルタが前提である、といえる。
ところで、訂正前の請求項4の「前記フィルタは、血球は通過できるが卵母細胞は通過できないよう、20?100μm^(2)、40?80μm^(2)、40?60μm^(2)、またはこれより小さい孔径を有する」という記載が正しいと仮定し、フィルタの孔の形状が円であるとして、その円の面積をS、フィルタの孔径をDとして、Dの値を算出(面積S=半径D/2 × 半径D/2 × 円周率3.14の関係式から、Dを小数第2位を四捨五入。)すると、
S=20?100μm^(2)の場合: 5.0μm < D < 11.3μm
S=40?80μm^(2)の場合 : 7.1μm < D < 10.1μm
S=40?60μm^(2)の場合 : 7.1μm < D < 8.7μm
となり、いずれの場合においても、フィルタの孔径Dは、8?10μmの血球が通過できない範囲を含むこととなり、前記前提と合致していない。
また、本件特許明細書の【0118】には「フィルタの孔径は、血液および他の細片は通過するが卵子は通過しないように選択される。一実施形態では、フィルタは60?64ミクロンの孔径である。血球は8?10ミクロンであるため、フィルタは、10ミクロンより大きくてもよいが、卵子を保持するのに十分小さい。例えば、胚採取装置に使用されるものよりも低い孔径が好ましい。」と記載され、【0144】には「卵と血球とは、バッフルの上を通過し、フィルタに向かって落下する。卵子や卵より小さくなるように10?100μm、好ましくは20?60μmのフィルタ4の孔径が選択されているため、卵は第1チャンバ5内に保持され、一方、卵胞液、血球、および他のより小さい細片はフィルタ4を通過して第2チャンバ6に入り、最終的に出口ポート9から廃棄物リザーバに引き出される。この孔径によって、主に重力で分離が可能になり、フィルタを通して最小限の吸引圧しか必要としない。その結果、卵は、清浄な液体環境で第1チャンバ5内に保持される。血塊の形成を防ぐために、このようにして卵胞液中に存在する血液から卵を分離することが重要である。」と記載されており、血球は通過できるが卵子は通過できないようにするためのフィルタの孔径について、専ら「μm」を用いて記載されている。
以上を総合すると、訂正前の請求項4に記載された「20?100μm^(2)、40?80μm^(2)、40?60μm^(2)、またはこれより小さい孔径」は、「20?100μm、40?80μm、40?60μm、またはこれより小さい孔径」の誤記であると認められる。
よって、訂正事項1は、これらの誤記を訂正するものであるから、係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2
前記アで検討したのと同様の理由により、本件特許明細書の【0032】に記載された「フィルタは、20?100μm^(2)、好ましくは40?80μm^(2)の孔径であり、血球は通すが卵母細胞は通さない。好ましい実施形態において、フィルタは40?60μm^(2)またはこの範囲より小さい孔径である。」は、「フィルタは、20?100μm、好ましくは40?80μmの孔径であり、血球は通すが卵母細胞は通さない。好ましい実施形態において、フィルタは、40?60μmまたはこの範囲より小さい孔径である。」との誤記であると認められる。
よって、訂正事項2は、これらの誤記を訂正するものであるから、係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(2) 新規事項
訂正事項1?2は、上記(1)のとおり、誤記の訂正を目的とし、本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3) 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1?2は、上記(1)のとおり、誤記の訂正を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4) 独立特許要件
訂正後の請求項4?16に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか検討するに、訂正後の請求項4?16に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は発見しない。
したがって、訂正事項1?2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第3項の規定に適合するものである。そして、訂正事項1?2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第第5項?第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
体外受精採卵チャンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外受精(in vitro fertilisation:IVF)処置のための採卵、検卵、および選卵に用いられる卵チャンバ、および、その流体ポンプシステムに関する。卵チャンバは、使用時に、効果的に密閉された流体充填システムを提供し、このシステムにより採取された卵がさらされる環境の変化を最小限にして、生存能力を最大にする。流体ポンプシステムは、効率的で安全な採卵を可能にする独自の有利な半自動システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
体外受精(IVF)は、卵子または卵を、本来の場所である体や生物または動物の外で受精させるプロセスである。この技術は、ヒトの不妊治療に用いられ、バリエーションが、獣医用途や他の商業目的でその他の動物に用いられている。ヒトでは、IVFは主に不妊症治療に利用されるが、不妊ではないが遺伝子変異のある夫婦にも行われる(例:着床前遺伝子診断)。IVFは、女性の卵巣から1つ以上の卵子(卵)を取り出し、試験室において適切な流体中で精子と結合させることで、卵子を受精させる。1つ以上の受精卵子は、その後女性の子宮に戻される。通常、本プロセスは、妊娠成功の可能性を最大にするための多くの付加的なステップを含み、例として、卵巣過刺激や特定の培養・選別技術が挙げられる。しかし、本プロセスには未だに妊娠成功の可能性を下げる側面があることが認識されており、それらの一部は卵子または卵の採取中に起こる。特に、温度変化(Wang et al.、2001)、溶存酸素やpH(Wilding et al.、1998;Daya et al.、1988;Cockburn et al.、1973)、または揮発性有機化合物(volatile organic compound:VOC)への露出(Legro et al.、2010)等、環境や生理的変化に卵子または卵をさらすことによって卵の生存能力が損なわれる可能性があることが、当業者には明らかである。
【0003】
英国におけるIVF治療の患者数は、過去5年で毎年6.5%までの割合で増加しており、2010年には57,652件の治療が行われた。経験の増加にもかかわらず、治療毎の出産率は、25.2%と比較的低いままである。これは、主に胚の質に因るものであることが証明されており、固有の解決不可能なヒトの問題であると一般に考えられている。しかし、受精および胚培養のための密閉・制御されたシステムの開発および利用における我々の経験では、出産率を改善できることが示されている(19.8%から32.8%への着床率上昇)(Hyslop et al.、2012)。
【0004】
卵質は、主要な結果の決定要因である(Scott M.Nelson、Debbie A.Lawlor、Predicting Live Birth, Preterm Delivery, and Low Birth Weight in Infants Born from In Vitro Fertilisation:A Prospective Study of 144,018 Treatment Cycles)。卵の発生可能性は、温度、pH、および空気中の有毒因子といった培養環境によって容易に損なわれ得る。現行のIVFプロセスは、卵・胚を外部環境にさらすため、最適な環境条件を提供していない。にもかかわらず、現行プロセスは、唯一の現実的な選択肢として世界中で受け入れられてきた。
【0005】
IVFプロセスでヒトの卵子または卵を得る最新技術では、超音波ガイド下で、膣上部に通した針を介して、卵胞における液を吸引する。この先行技術の採取装置の図を図3に示す。針を介した液吸引時に、卵母・卵丘細胞複合体が卵胞壁から回収される。吸引は、足踏みペダルによるサクションによって制御される。針は、チューブを介して栓につながれ(図3)、これを試験管上部に挿入することができる。採卵処置において、通常、卵胞液の試験管を10本まで採取する。一つの試験管が一杯になると、栓を取り外して、次の空の試験管に移し、一杯になった試験管を蓋でシールし、ホットブロック上に置く。採取処置は、通常、患者を鎮静させて、手術室で行われる。卵を含む卵胞液は、臨床医からIVF検査室の胚培養士(embryologist)に渡され(閉鎖ハッチを介することが多い)、胚培養士が卵を処理する。IVF検査室において、この処理では、試験管を層流フード、クラスIIフード、またはアイソレーターに移す。試験管から蓋を外し、熱した顕微鏡試料台上に置かれた培養容器の中に内容物を注ぐ。その後、皿を撹拌・旋回し、顕微鏡で観察して卵を識別する。卵をピペットで取り出し、媒質内に置いてすすぐ(rinse)。その後、卵を、油下の培地を含有する培養容器内に置く。卵を置いた培養容器を、注意深く制御された環境条件下で、特殊なIVF孵卵器内に保持する。
【0006】
現行の採卵プロセスにはいくつかの限界がある。第一に、卵を患者の37℃環境から取り出し、針およびチューブを通して、試験管に回収するにつれて、熱損失が発生する。処置の間試験管を保管するホットブロックでは、温度を一定に保つことはできない。処置の間、多数の試験管を使用し、栓を単純にある試験管から別の試験管に移すことから、空気が試験管に入る。同じ栓の使用は、交差汚染および熱損失にもつながり得る(図5)。胚培養士が卵を処理するにつれて、さらなる熱損失が発生する。すなわち、卵胞液を試験管から培養容器に移し、培養皿を洗い流して(swilled)卵を見つけるにつれて、胚培養士が卵を識別するのにかかる時間の間、および、卵を油下の培養ウェルに移すプロセスの間、さらなる熱損失が発生する。
【0007】
卵胞から培養皿への温度低下は、2℃?3℃である。これは、部分的には、著しい蒸発に関連した冷却による(図6)。卵が後に分割する能力、すなわち、卵の生存能力、および、受精する能力を維持するために温度が重要であることは、周知である。
【0008】
第二に、採取容器(vesicle)が試験管であるため、卵胞液は、上部が空気である試験管内に置かれる。一つの試験管が一杯になると、栓を外す。その結果、卵胞液は空気に触れ、C0_(2)が大気と平衡を保つことから、汚染、揮発性有機化合物への露出、およびpH変動の危険が生じる。
【0009】
第三に、胚培養士による卵の識別は、卵胞液内の血塊や血球の存在によって妨げられることが多い。これにより、卵が周辺環境にさらされる時間が増加する。また、卵が血塊内に閉じ込められて、識別できない場合もある。
【0010】
第四に、現行の処置では、臨床医と胚培養士の作業の物理的近接および時間的距離に制約がある。臨床医および胚培養士によって行われる仕事は、独立しており、順次的である。女性が手術室に運び込まれ、彼女の身元を胚培養士が確認し、処置が行われる。胚培養士が採取された卵胞液を処理するのにかかる時間は可変であり、大抵手術処置より長くかかる。卵の誤認を確実になくすために、前の女性の卵胞液を全て確認して卵を孵卵器に置くまで、次の女性は手術室に入れられない。このように、現行方法では、患者間に時間遅延があり、手術時間が10分未満であるにもかかわらず患者間の遅延は30分であり、スタッフ効率を損ねている。
【0011】
卵胞液は、直ちに検査室に移さなければならず、設備間の密接な物理的リンクが必要である。これにより、設備設計および柔軟性が制限される。上記の卵生存能力へのリスクを軽減するために、採卵処置の直後に卵を分離するべく胚培養士は待機している必要があり、胚培養士の検査室は、診療所に隣接していることが多い。採取した卵をその後数時間まで支障なく保管できるシステムがあれば、胚培養士の作業を臨床スケジュールと独立して行うことができ、有利であろう。
【0012】
IVF分野は、機構により規制されており、その実施規則によると、診療所は、臨床・検査プロセス中に配偶子および胚の動きを識別して追跡し、不一致を防止するために、効果的な実見システムを持つ必要がある。いくつかの不妊治療センターでは電子実見が当たり前になってはいるが、患者毎に数個の試験管を用いなければならないことから、手術室ではほとんど使われていない。卵チャンバは、患者毎に一つの皿にラベルを付けることができ、手術室において電子実見をより実施可能にするため、試料誤認のリスクを軽減する。
【0013】
場合によっては、臨床作業および胚培養士作業が行われる場所を物理的に離すことができると有利である。例えば、胚培養検査室から離れた手術室に入るべき女性に、より複雑な麻酔処置が必要となる場合である。これは、「トランスポートIVF」(transport IVF)の実施において通常行われている。このような状況では、卵は、1時間以上試験管内に残される可能性がある。成長可能性を損なわない環境において卵を保管できるシステムは、有利であろう。
【0014】
本発明は、先行技術の限界や問題を排除または軽減するものである。
【発明の概要】
【0015】
本発明によると、卵チャンバであって、少なくとも1つの側壁、上壁、および下壁を含み、上壁の少なくとも一部が透明であり下壁の少なくとも一部が光透過性である、気密可能な容器と、シール可能な第1入口と、シール可能な第1出口と、採卵に適した孔径のフィルタであって、前記容器において第1入口と第1出口との間に配され、前記容器を第1内部チャンバと第2内部チャンバとに分けるように構成されるフィルタと、を備える卵チャンバが提供される。
【0016】
入口および出口は、シール可能ポートとして設けることができる。
【0017】
入口および出口は、シール可能ポートでシール可能であってもよく、付属チューブのシール等によりチャンバの上流または下流でシールされてもよい。チューブのシールは、例えば、入口や出口に取り付けられるチューブのヒートシールによるものであってもよい。
【0018】
好ましい実施形態において、シール可能ポートは、セルフシール型である。
【0019】
代替の実施形態において、容器に取り付けられたチューブを閉塞することによって、容器を気密にする。閉塞は、栓の挿入、チューブの機械的ピンチ(例えば、パイプクリップを使用)、または上記したチューブのヒートシールによって行うことができる。
【0020】
好適には、卵チャンバ自体が単一の密閉ユニットであるため、チャンバを緩衝培地や生理食塩水等の流体で予め満たし、密閉環境で採卵プロセスを行うことができる。これによって、卵子の生存能力に影響を与え得る生理的状態の変化を最小にする。特に、卵は、常に封入流体環境に留まる。こうして、ガス濃度、特にC0_(2)および0_(2)濃度の安定性を確保し、安定したpHの維持を可能にする。また、封入流体は、汚染および/または揮発性有機化合物(VOC)への露出も最小にする。これにより、卵胞間および各卵巣で採卵プロセスが連続的になり、処置毎に多数の採取チャンバを使用する必要がなくなる。適宜、全卵胞液を、緩衝培地または適切な代替物で入れ替えることもできる。チャンバを開けて卵を培地に移す前に、初期識別のため、胚培養士がチャンバを通して顕微鏡下で卵を目視可能であってもよい。封入システムでは、採卵処置でスタッフを教育しつつ、卵を生理的状態に留めることもできる。
【0021】
任意に、卵チャンバに、1つ以上のシール可能ポートに取り付けられる取り外し可能チューブを設けてもよい。
【0022】
任意に、前記取り外し可能チューブは、針とチャンバとを接続し、リザーバおよびチャンバは、熱損失を最小にするために防護されている。
【0023】
チューブを1つ以上のシール可能ポートに取り付けると、ポートが開いて卵チャンバへの進入や卵チャンバからの流出が可能になる。チューブを取り外すと、好ましくは、ポートは閉じてまたは閉じられて気密チャンバを維持する。
【0024】
好ましくは、フィルタは、平面である。
【0025】
好ましくは、フィルタは、上壁と下壁との間に配される。
【0026】
好ましくは、フィルタは、下壁に垂直に伸びる。
【0027】
任意に、前記フィルタは、下壁から25°?90°の角度で伸びる。あるいは、フィルタは、下壁から45°?90°の角度で伸びる。
【0028】
好ましくは、フィルタは、壁から80°の角度で伸びる。
【0029】
このように上壁と下壁との間で伸びる平面フィルタを設けることで、採卵時に、卵チャンバを確実に「採取向き」に保持することができる。採取向きでは、フィルタは実質的に水平面にあり、上壁と下壁とは実質的に垂直面にある。これによって、第1チャンバに卵を保持しつつ、重力の助けにより血液やその他の流体細片をフィルタを介して第2チャンバ内に引き込むことができる。それから、チャンバを実質的に90°回転して、「検査向き」にすることができる。検査向きでは、フィルタは実質的に垂直面にあり、上壁と下壁とは実質的に水平面にあり、実質上シールされた蓋付ポットを形成する。この「検査向き」においては、重力が再度卵に作用して、卵はフィルタから下壁の内面上に落下する。
【0030】
好ましくは、フィルタは、ヒトの卵子が通過できないよう十分小さい孔径を有する。
【0031】
好ましくは、フィルタは、血球が通過できるよう十分大きい孔径を有する。
【0032】
これは、1?18cm^(2)、好ましくは4?10cm^(2)のフィルタを含む。フィルタは、20?100μm、好ましくは40?80μmの孔径であり、血球は通すが卵母細胞は通さない。好ましい実施形態において、フィルタは、40?60μmまたはこの範囲より小さい孔径である。フィルタは、無毒物質、好ましくはナイロンからなり、精子毒性試験および/または胚検定で検査される。
【0033】
一実施形態において、フィルタは、ベースに対して角度をなす(観察モード)。本実施形態において、フィルタは、卵がくっつかないように、上端にリップを有してもよい。
【0034】
一実施形態において、フィルタは、平面である。平面フィルタは、ベースへの卵の移動を促す(観察モード)。平面フィルタはまた、卵や血塊が角度付フィルタの最低点に集まらないようにする。
【0035】
フィルタは、卵がくっつかないように、上端にリップを有してもよい。
【0036】
好ましくは、下壁は、実質的に平面である。
【0037】
好ましくは、上壁は、実質的に平面である。
【0038】
任意に、下壁は、全体的に半透明である。
【0039】
任意に、下壁は、全体的に透明である。
【0040】
好ましくは、上壁は、全体的に透明である。
【0041】
好適には、透明な上壁や半透明または透明な下壁は、顕微鏡上で密閉ユニットとして卵チャンバを使用可能であることを意味し、胚培養士は、内容物を調べるために、容器を開いて生理的バランスを変える必要がない。
【0042】
好ましくは、第1入口は、第1内部チャンバに結合する側壁に位置する。
【0043】
あるいは、第1入口を、第1内部チャンバに結合する上壁(または蓋)上に配してもよい。
【0044】
好ましくは、第1入口は、卵チャンバが「採取向き」にあるときに卵チャンバで最上になるように位置する。
【0045】
好ましくは、第1出口は、第2内部チャンバに結合する側壁に位置する。
【0046】
好ましくは、第1出口は、卵チャンバが「採取向き」にあるときに卵チャンバで最下になるように位置する。
【0047】
好ましくは、側壁は、第1内部チャンバから第2内部チャンバの方向に、平行に伸びてもよい。あるいは、側壁は共に、第1内部チャンバから第2内部チャンバの方向にテーパ状であってもよい。
【0048】
好ましくは、下壁が前記第1内部チャンバにおいて側壁と交わる場所では、傾斜がある。
【0049】
任意に、傾斜は、径方向傾斜である。
【0050】
任意に、卵チャンバは、空気が第1内部チャンバ内に吸引されたかを検出するように適合される空気センサをさらに備える。
【0051】
尚、チャンバ内の空気を視覚的に検出することも可能である。
【0052】
好ましくは、卵チャンバは、空気出口ポートをさらに備える。
【0053】
好ましくは、空気出口ポートは、卵チャンバが「採取向き」にある際に、卵チャンバの最上部分に向くように位置する。
【0054】
採卵中、空気を第1内部チャンバ内に吸引してもよい。好適には、これは、「採取向き」における採取処置の間目視できる。好適には、これは、空気センサを用いて検出することや、視覚的に確認することができる。集められた空気は、空気出口ポートを介して取り除くことができる。
【0055】
任意に、上チャンバの下壁に、可視マーキングを設けてもよい。好ましくは、可視マーキングは、グリッドである。
【0056】
下壁に可視マーカを設ける利点は、検査中卵は下壁上にあるため、胚培養士が移送前に卵をより簡単にかつ早く識別することができ、蓋を外したりシールされた卵チャンバを開ける必要がないことにある。下壁は、理想的には、IVF培養容器(0.1?3mm)と同様の厚みであり、胚培養士が顕微鏡の焦点を変える必要なしに卵母細胞を他の培養容器に移せるようにする。
【0057】
任意に、流れ案内装置(または流れ制限装置)が上チャンバに位置する。
【0058】
当該装置の機能は、チャンバ内に入る流体乱流を減らすことである。これにより、卵の物理的ストレスを軽減し、低チャンバへの血球の直接移動を促す。また、当該装置の機能は、フィルタでの流体の圧力を低減することでもある。これにより、卵がフィルタに捕らわれるリスクを削減する。また、当該装置の機能は、全血球をチャンバから流し出すのに必要な液量を低減することでもある。機能は、チャンバ内の全液量を減らして、上壁が胚培養士に取り除かれた時、流体の表面準位が側壁の準位を下回るようにすることである(「顕微鏡向き」)。機能は、流体滴の回収点として作用し、蓋が外されると流体滴がチャンバに戻るようにすることである。機能は、卵が空気出口ポートへ戻るリスクを低減することである。
【0059】
好ましくは、流れ案内装置は、バッフルである。好ましくは、バッフルは、上壁に取り付けられる。最も好ましくは、バッフルは、上壁と一体であり、観察形態において蓋(上壁の下面)からチャンバ内に下向きに突出する。あるいは、バッフルを、下壁または側壁へ取り付けるか下壁または側壁と一体化してもよく、任意の組み合わせが可能である。好ましくは、チャンバを開いて卵を取り出す際、バッフルを上壁と共に外す。
【0060】
好ましくは、バッフルは、入口ポートとフィルタとの間に位置する。
【0061】
任意に、バッフルは線形であり、「採取向き」において水平である。好ましくは、バッフルは、チャンバの取り付け部に対して90°?95°である。あるいは、バッフルは、「採取向き」において水平でない。
【0062】
好ましくは、バッフルは、V字形であり、採取向きにおいてVの底部が最も低い。
【0063】
好ましくは、バッフルと下壁との間に、約1mm?5mmの空間がある。
【0064】
好ましくは、線形バッフルの各端部と側壁との間に、0.5mm?3mmの空間がある。
【0065】
好適には、線形バッフルは、1mm?8mm幅であってもよい。好ましくは、線形バッフルは、5mm幅であってもよい。
【0066】
好ましくは、バッフルは、「採取向き」においてチャンバ上部の入口ポート近くに位置する。
【0067】
好ましくは、バッフルは、「採取向き」において上チャンバ下部に位置する。
【0068】
バッフルは、湾曲していてもよく、角があってもよい。
【0069】
流体がチャンバに入る際の流速を低減する代替選択肢としては、チャンバに入る前のチューブ径の変更(増加)がある。これは、入口ポートの前でも後でもよく、ポート開口に一体化してもよい。別の選択肢として、入口とバッフルとの間の距離の増加があるが、これは、より多くの試薬を要する可能性があるため、あまり好ましくない。
【0070】
バッフルは、無毒物質からなり、好ましくはポリスチレンやガラスである。顕微鏡下で卵を観察中に主な障害とならないものが理想的である。
【0071】
バッフルの存在によって、中心腔から血球を取り除くのに必要な液量が、200ml超から60ml未満に減少する。
【0072】
好ましくは、2つの内部平面が交わる全ての隅は、0.05mmより大きく10mmより小さい半径を有する。これにより、卵や他の卵胞液が90°の隅に集まるのを防ぐ。
【0073】
オペレータが卵を取り出せるように、容器には、取り外し可能な蓋またはアクセス点が必要である。
【0074】
一つの選択肢は、取り外し可能なねじ型蓋である。
【0075】
他の選択肢は、摩擦プッシュフィット蓋である。
【0076】
他の選択肢は、ロケーションフィット蓋であり、機械的にガスケットに押し付けられて保持され、ガスケットを圧縮してシールを形成する。
【0077】
他の選択肢は、ヒートシール可能な蓋である。これをねじ型蓋や摩擦プッシュフィット蓋と組み合わせてもよい。
【0078】
蓋とチャンバとの接続箇所の丸いエッジにより、卵が接続箇所の陰に捕らわれることを確実に防ぐ(直角は、問題になりやすい)。
【0079】
好適には、蓋は、2mm?10mmの厚さであってもよい。
【0080】
蓋は、フィルタの上部5?25%を覆うリップを備えて、卵がフィルタのこの箇所に捕らわれないようにしてもよい。
【0081】
好ましくは、容器は、ユニットが改ざんされたか、使用されたか、または開けられたかを見るための視覚的または機械的手段を有する。
【0082】
任意に、分離可能なユニット部分の間を架橋する接着タグであってもよい。タグは、蓋の取り外しが始まると破れる。
【0083】
任意に、チャンバに熱プレスされるタグであってもよい。
【0084】
あるいは、分離可能なユニット部分の間を架橋する脆弱部分であってもよい。
【0085】
任意に、蓋を開ける固有ツールを設けてもよい。固有ツールにより、最小限の漏出リスクで蓋を外すことができる。
【0086】
好ましくは、閉じ込められた空気を容器から除去するのに必要な任意のポートは、20?100μmの孔径のフィルタを備える。これにより、空気および血球はチャンバを通過するが、卵子は通過しない。
【0087】
好適には、フィルタが、チャンバの内側で出口ポートを覆う。
【0088】
好ましくは、フィルタは、ポート開口がチャンバ壁と交わる最内面上にある。任意に、フィルタは、フィルタ出口まで後退していてもよい。好適には、容器は、保管し易いように積み重ね可能であってもよい。
【0089】
本発明の第2の態様によると、第1の態様の卵チャンバとポンプステーションとを備える採卵システムであって、卵チャンバは、第1入口ポートを介して第1チューブと針とに接続され、さらに、出口ポートを介して第2チューブに接続され、ポンプステーションは、無菌液体リザーバおよび第1チューブに結合する第1プライミングポンプと、第2チューブに結合する第2吸引ポンプとを備え、流体を針から卵チャンバを介して出口チューブへと引き出すように適合される、採卵システムが提供される。
【0090】
好ましくは、第2チューブは、廃棄物リザーバに結合する。
【0091】
好ましくは、プライミングポンプは、蠕動ポンプである。
【0092】
最も好ましくは、プライミングポンプと吸引ポンプとは、どちらも蠕動ポンプである。
【0093】
任意に、吸引ポンプは、真空ポンプであってもよい。
【0094】
好ましくは、卵チャンバは、加熱ハウジング内に受け取られる。
【0095】
最も好ましくは、加熱ハウジングの少なくとも一部は、卵チャンバを視認可能にする。
【0096】
最も好ましくは、加熱ハウジングは、卵チャンバを「採取向き」で保持するように適合される。
【0097】
本発明の第3の態様によると、第1の態様の採卵チャンバを用いて動物から卵または卵子を採取する方法であって、第1チューブが第1入口ポートを介して卵チャンバに接続され、前記第1チューブは針に結合し、第2チューブが出口ポートを介して接続される、卵チャンバを得るステップと、前記卵チャンバ、第1チューブ、第2チューブ、および針を液体で充填することによって卵チャンバをプライムするステップと、卵胞液を針を介して卵チャンバに吸引して、卵胞液が卵チャンバに配されたフィルタを通じて引き込まれ卵チャンバの第1内部チャンバに卵を保持するようにするステップと、を含む方法が提供される。
【0098】
本発明の第4の態様によると、IVF採卵のための流体ポンプシステムであって、第1入口ポートと第1出口ポートとを有する第1流体ポンプであって、前記第1入口ポートは第1流体接続を介して第1リザーバに動作可能に連結され、前記第1出口ポートは第2流体接続を介して抽出ポートにおよび第3流体接続を介して第2リザーバに動作可能に連結され、前記抽出ポートと前記第2リザーバとは第4流体接続を介して接続される、第1流体ポンプと、第2入口ポートと第2出口ポートとを有する第2流体ポンプであって、前記第2出口ポートは第5流体接続を介して第3リザーバに動作可能に連結され、前記第2入口ポートは第6流体接続を介して前記第2リザーバに動作可能に連結される、第2流体ポンプと、前記第1流体ポンプ、前記抽出ポート、前記第1リザーバ、前記第2リザーバ、前記第3リザーバ、および前記第2流体ポンプのうちのいずれかの間の選択的流体連通を確立するように適合される複数のセレクタバルブと、前記複数のセレクタバルブのいずれかを選択的に作動させるように適合されるコントローラと、を備える流体ポンプシステムが提供される。
【0099】
これにより、流体ポンプシステムを完全にプライムすることができる。すなわち、流体で充填し、フラッシュ(flush)し、通風し(空気除去)、例えば予めプログラムされたコントローラにより完全に自動制御されたまたはコントローラの必要な運転モードを手動トリガすることによって少なくとも半自動的に制御された卵を採取するよう操作する。大幅に改善された効率的かつ反復性の高い採卵処置を提供することで、抽出時に採取された卵に損傷を与えるリスクを最小にする。
【0100】
好ましくは、第1流体ポンプと第2流体ポンプとは、蠕動ポンプであってもよい。
【0101】
好適には、第1セレクタバルブと第2セレクタバルブとは、第2流体接続において動作可能に連結され、第1セレクタバルブと第3セレクタバルブとは、第3流体接続において動作可能に連結され、第2セレクタバルブと第3セレクタバルブとは、第4流体接続において動作可能に連結され、少なくとも第4セレクタバルブは、第6流体接続において動作可能に連結されてもよい。
【0102】
より好適には、第2出力ポートは、第6流体接続と平行に、第7流体接続を介して第2リザーバに動作可能に連結されてもよい。
【0103】
好ましくは、第5セレクタバルブは、第7流体接続において動作可能に連結されてもよい。
【0104】
好適には、コントローラは、複数のセレクタバルブおよび/または第1ポンプおよび/または第2流体ポンプのうちのいずれか一つまたは任意の組み合わせを作動させる少なくとも1つの所定シーケンスを実行するように適合されてもよい。
【0105】
任意に、所定シーケンスは、少なくとも1つの外部アクチュエータによってトリガ可能であってもよい。好ましくは、少なくとも1つのアクチュエータは、フットペダルスイッチであってもよい。好ましくは、抽出ポートは、卵胞液を抽出するように適合される回収針に連結可能であってもよい。
【0106】
好適には、第1流体ポンプおよび第2流体ポンプによる流体流速は、選択的に調整可能であってもよい。
【0107】
好ましくは、コントローラは、コントローラにコマンドを入力するように適合されるユーザインターフェースをさらに含んでもよい。より好ましくは、ユーザインターフェースは、さらに、流体ポンプシステムの動作モードおよび/または流体ポンプシステムにおける少なくとも1つの所定の物理特性を表示するように適合されてもよい。
【0108】
好適には、第1、第2、および第3リザーバのいずれか一つまたは全部は、コントローラによって制御可能な調整可能熱源に動作可能に連結されてもよい。
【0109】
好ましくは、第1?第7流体接続のいずれかは、フレキシブルチューブからなってもよい。
【0110】
好適には、複数のセレクタバルブのいずれかは、コントローラによって作動するように適合されるピンチバルブであってもよい。
【0111】
好ましくは、第2リザーバは、本発明の第1の態様に係る卵チャンバであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
本発明の理解を助けるために、非限定実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
【0113】
【図1a】本発明に係る卵チャンバの斜視図である。
【図1b】本発明に係る卵チャンバの他の実施形態の分解斜視図である。
【図2a】採取向き(A)および検査向き(B)における卵チャンバの変化を示す断面図である。
【図2b】採取向き(A)および検査向き(B)における卵チャンバの他の実施形態の断面図である。
【図3】試験管と栓とを用いる先行技術システムの図である。
【図4】プライミングシステム・フラッシングシステムを示す概略図である。
【図5】卵母細胞採取中の温度変化の影響を示す図である。媒質を、従来の卵母細胞採取チャンバ(従来)またはCHUMP1のプロトタイプ(CHUMP1)内に吸引した。温度を、1分間隔で記録した。回復時間にあるように(n=7;P<0.001)、従来システムを使用すると温度損失がより大きかった。これは、従来システムの使用による蒸発の増加に起因すると考えられる。
【図6】標準卵母細胞採取処置中に起こる冷却および閉鎖システムの潜在的利点を実証する。発明者は、従来システムを利用して、生理的開始温度の媒質を用いて、6つの模擬卵母細胞吸引を行った。吸引した媒質の温度を、開口試験管内で、5分間測定した。(A)では、大幅な冷却が観測された(青線)。その後、発明者は、油を媒質に被せて、当該冷却が起こらないことを示した。これにより、冷却が蒸発に起因することが確認された。
【図7A】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(A)ステップ1:採取容器を加熱ブロック内に装着する。生理食塩水および廃棄物袋を、2つのペリポンプを通って、ルアーロックを介して採取容器に取り付ける必要がある。卵母細胞回収針を取り付ける。
【図7B】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(B)ステップ2:足踏みスイッチを介して生理食塩水ポンプを始動させ、採取容器を温生理食塩水溶液で充填する。容器が一杯になって流体を吸い上げ続けると、回収針もプライムされる。
【図7C】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(C)ステップ3:針を正しい位置に置くと、廃棄物ポンプを始動させることができる。これにより、胚採取のための吸引が得られる。
【図7D】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(D)ステップ4:卵胞液における不要な細片を、廃棄物ポンプを介して採取容器サンプルから除去する。
【図7E】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(E)ステップ5:採取が完了すると、回収針に残っている卵胞液をラインを通じて引き出し、全ての胚が採取容器の中にあるようにする。
【図7F】使用時の採卵システムを示すシステム図である。(F)ステップ6:閉じ込められた空気を追い出すため、十分な温生理食塩水溶液を容器内にポンプで注入する。
【図7G】使用時の採卵システムを示すシステム図である(G)ステップ7:採取容器を含む加熱領域区分を取り出して、近くの加熱ステーションに搬送することができる。これは、「動力作動」ではないが、採取容器を室内や孵卵器へ搬送するのに十分な潜熱を有する。
【図8】本発明に係る卵チャンバの第1の設計の平面図である。
【図9】本発明に係る卵チャンバの第2の好ましい設計図である。
【図10】チャンバ組立プロセスを示すフロー図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る流体ポンプシステムの概略図である。
【図12A】システム図である。(A)は、「チャンバ充填」シーケンス中である。
【図12B】システム図である。(B)は、「フラッシュ」シーケンス中である。
【図12C】システム図である。(C)は、「空気除去」シーケンス中である。
【図12D】システム図である。(D)は、「採卵」シーケンス中である。黒色のシステムコンポーネントは、活動中のシステムコンポーネントである。
【図13】コントローラによって実行される簡略化高レベル主要プロセスフローチャートを示す。
【図14A】(A)コントローラユーザインターフェースの具体例、および、(B)「採卵」、(C)「フラッシュ」、(D)「高圧力」、および(E)「高圧力での採卵」といった異なるシーケンス中のコントローラユーザインターフェースの具体例である。
【図14B】(A)コントローラユーザインターフェースの具体例、および、(B)「採卵」、(C)「フラッシュ」、(D)「高圧力」、および(E)「高圧力での採卵」といった異なるシーケンス中のコントローラユーザインターフェースの具体例である。
【図14C】(A)コントローラユーザインターフェースの具体例、および、(B)「採卵」、(C)「フラッシュ」、(D)「高圧力」、および(E)「高圧力での採卵」といった異なるシーケンス中のコントローラユーザインターフェースの具体例である。
【図14D】(A)コントローラユーザインターフェースの具体例、および、(B)「採卵」、(C)「フラッシュ」、(D)「高圧力」、および(E)「高圧力での採卵」といった異なるシーケンス中のコントローラユーザインターフェースの具体例である。
【図14E】(A)コントローラユーザインターフェースの具体例、および、(B)「採卵」、(C)「フラッシュ」、(D)「高圧力」、および(E)「高圧力での採卵」といった異なるシーケンス中のコントローラユーザインターフェースの具体例である。
【図15】流体ポンプシステムの設計の具体例であり、(a)上面図、(b)斜視図、(c)側面図、(d)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
卵チャンバ1は、図1aおよび1bに概略図示される。卵チャンバ1は、実質的に平面の上壁2と実質的に平面の下壁3とを有する密閉容器の形である。容器はまた、適切な数の側壁8を有し、多面体を形成する(図1bにあるように、1つ以上の壁は、平面ではなく湾曲していてもよい)。上壁2を含むチャンバの上部は、チャンバ1の下部から分離可能または取り外し可能であるが、通常使用において、採卵および調査中は、卵チャンバ1の上部および下部は、液密および実質的に気密シールで結合される。
【0115】
卵チャンバ1は、射出成形、回転成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、または三次元印刷等によって形成することができる。
【0116】
一実施形態において、チャンバ1は、熱軟化性または熱硬化性材料から作られる。熱軟化性プラスチックの例としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド(ナイロン)、酢酸(またはセルロース)、アクリル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、低密度または高密度ポリエテン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロエテン、無可塑ポリ塩化ビニルがある。熱硬化性プラスチックの例としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネートがある。好ましい実施形態では、チャンバは、ポリスチレンから作られる。別の実施形態では、チャンバは、ガラス、好ましくは精製ガラスから作られる。
【0117】
チャンバ1は、ナノ結晶ダイヤモンドのような物質で被覆されてもよい。好ましい実施形態では、上チャンバの少なくとも内側部分が被覆される。
【0118】
卵チャンバ1は、容器を第1チャンバ5(採卵チャンバ)と第2チャンバ6とに分けるフィルタ4を含む。フィルタ4は、上壁2と下壁3との間で伸びて、効果的に容器を二分する。本実施形態では、フィルタ4は、平面であり、下壁3から実質的に垂直に伸びる。別の実施形態では、フィルタは、湾曲していてもよい。しかし、これは、血塊や卵が同じ場所に集まり血塊の中で卵を識別するのがより困難になる可能性があるため、あまり好ましくない。フィルタ4は、別の角度であってもよく、例えば、下壁3から25°よりも大きな角度で、理想的には下壁3から25°?90°の角度で、好ましくは70°であってもよい。任意に、角度は45°?90°であってもよい。フィルタの孔径は、血液および他の細片は通過するが卵子は通過しないように選択される。一実施形態では、フィルタは60?64ミクロンの孔径である。血球は8?10ミクロンであるため、フィルタは、10ミクロンより大きくてもよいが、卵子を保持するのに十分小さい。例えば、胚採取装置に使用されるものよりも低い孔径が好ましい。
【0119】
第1チャンバ5は、側壁に位置する入口ポート7を有する。卵チャンバ1が採取向きにあり第1チャンバが第2チャンバの上でフィルタ4が略水平であるとき、入口が一番高くなるように、入口を配置することが好ましい。この向きでは、第2チャンバ6に結合する側壁が、互いに向かってテーパ状で、第2チャンバ6の側壁に位置する出口ポート9に向かって流体が流れ易くしていることが分かる。採取向きでは、側壁は、漏斗状である。
【0120】
好ましくは、出口ポートは、「採取向き」において一番低い位置であり、重力によって全血球を出口管に取り出しやすくする。あるいは、ポートは、側壁の異なる位置にあるか、または上壁にあってもよい。
【0121】
好ましくは、第2チャンバのサイズは、チャンバをフラッシュして血球をなくすのに必要な液量を低減するために小さくするべきである。
【0122】
流れ案内装置が、第1チャンバ内に配置される。好ましい実施形態では、この装置は、バッフルの形であり、線形でも湾曲状でもよく、チャンバに入る流体乱流を減少させる。これにより、卵の物理的ストレスを低減し、下チャンバへの血球の直接移動を促進する。別の実施形態では、流体案内装置は、(観察モードにおいて)チャンバのベースに取り付けられる。また、流体漏出のリスクを低減するために、蓋を外す際に流体レベルを下げるメカニズムがあってもよい。例えば、蓋に流体案内装置を組み込むことによって、蓋と共にバッフルをチャンバから取り外すようにして、流体レベルを低下させることができる。
【0123】
下壁3がフィルタ4と交わる箇所では、表面がわずかにテーパ状であり、滑らかな傾斜11を形成する。これにより、卵チャンバ1が観察向きにあるとき、卵がフィルタ4に集まらないようにする。こうして、採取された卵を見易くし、第1チャンバの陰になった隅に隠れにくくする。
【0124】
入口ポート7と出口ポート9は両方とも、セルフシールポートであってもよい。ポートが閉じているとき、卵チャンバ1は、閉じた液密および気密容器である。ポートは、アイソレータやクラス2フード内での使用に適している。
【0125】
一実施形態において、セルフシールポートは、ルアー型またはツイスト接続カップリングである。
【0126】
ポートは、医療グレードであり、片手ディスコネクトが可能であるものが望ましい。最も好ましくは、ポートに、取り外しが起こったことをユーザに警告する可聴ディスコネクト(クリック)を設けてもよい。ポートは、偶発的な取り外しを防止するための機構を含む、漏れのない非スピル弁であるべきである。よじれを防ぐため、ポートは、接続されたチューブの回転を可能にするべきである。また、好ましくは、ポートは、エラストマーシールを有する。ポートおよびチャンバの他の要素は、ガンマ線無菌可能であるべきである。
【0127】
理想的には、ポートは、より良い流れを提供し、停滞流れ領域をなくすギャップのない流路を可能にするべきである。
【0128】
適切なセルフシールポートの例としては、SMCポリカーボネート系カップリング(コールダープロダクツ社)がある。これは、ツイスト接続カップリングであり、ルアー型接続の確実かつより安全な代替手段である。これはまた、接続時に、チューブの自由な回転を可能にする。別の例として、SRC小口径コネクタ(コールダープロダクツ社)がある。これは、ルアーフィッティングの誤接続の可能性を排除する。NS4ABSシリーズカップリング(コールダープロダクツ社)は、コンパクトなサイズおよび医療グレードの材料での非スピルバルブを備える。
【0129】
あるいは、セルフシールポートではなく、CompoSeal(登録商標)ユニバーサル(フレゼニウスカービ)のようなチューブシール機を用いて、気密チャンバを提供するためにチャンバの入口および出口に結合するチューブをシールしてもよい。図示の実施形態では、空気出口ポート10も、第1チャンバに結合する。これも、側壁に含まれており、使用時にシステムに入る空気を容易に除去することができる。また、第1チャンバ内にセンサを設けて、空気が検出された場合にシステムを遮断し、さらに空気がシステムに入るのを防いでもよい。
【0130】
容器の上壁2は、透明であり、開けなくても容器の内容物の目視検査が可能である。図示の実施形態では、実質的に上壁全体が透明であり、これは、第1チャンバ5と第2チャンバ6との両方を見ることができるため好ましい。あるいは、採卵チャンバである第1チャンバ5の目視検査を可能にするように、上壁2の一部のみが透明であってもよい。
【0131】
容器の下壁3も、図示の実施形態において透明である。これにより、卵チャンバ1がその内容物の目視検査のため光学顕微鏡上に置かれると、光が確実に下壁3を通って中に入る。あるいは、採卵チャンバである第1チャンバ5の目視検査を可能にするように、下壁3の一部のみが透明であってもよい。
【0132】
チャンバ1が透明または半透明の材料を含む場合、材料は、好ましくは、非発熱性かつ非毒性である。最も好ましくは、材料は、エンドトキシン、精子毒性および胚毒性試験に合格したものである。好ましくは、材料は、インビトロ細菌エンドトキシン試験で、0.25EU/ml未満、好ましくは0.03EU/ml未満である。試験の例としては、ゲル・クロット、動的比濁分析および発色法(定量的)がある。材料はまた、好ましくは、精子の運動性アッセイ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10875871)等の精子毒性アッセイ、および/または、毒性に関する幹細胞アッセイを合格したものである。材料はまた、好ましくは、胚毒性アッセイを合格したものである。アッセイの例としては、胚性幹細胞試験(EST)、ゼブラフィッシュ胚毒性試験(ZET)、およびラット着床後全胚培養(WEC)がある。好ましくは、そのようなアッセイの結果は、96時間で80%を超えて拡大した胚細胞である。
【0133】
チャンバ1は、USPクラスVI試験の要件を満たす必要があり、医療機器に必要な基準に従って無菌することができる。
【0134】
図示はないが発明者が想定する実施形態では、下壁に、グリッドマーキングや他の可視指標を設けて、観察および第1チャンバ内の卵の位置特定を容易にしてもよい。
【0135】
卵チャンバ1の大きさは、既に臨床医や胚培養士によって使用されている装備と同様になるように選択される。例えば、現在胚培養士によって使用されている典型的なペトリ皿または採取容器と同様の寸法である。また、大きさは、卵チャンバ1が顕微鏡下での観察に適するように選択される。
【0136】
卵チャンバは、2?16cm^(2)、好ましくは4?lOcm^(2)である。
【0137】
チャンバは、ポリスチレンやガラス等の非毒性プラスチックからなる。
【0138】
卵チャンバ1は、好ましくは、ポンプを備えた自動採取システムと一体化可能である。システムを図7に示す。卵チャンバ1は、チューブに取り付けられ、チューブは、チャンバ1をポートを介して採卵針、フラッシング流体リザーバ、および廃棄物回収ユニットへ取り付ける。卵チャンバは、温度制御システム内に収められる。一実施形態では、温度制御システムは、加熱ブロックを含み、加熱ブロックは、ある1つの位置においてのみ卵チャンバを受け取る。別の実施形態では、チューブおよびポンプは、温度制御されるハウジングシステム内に収容される。自動採取システムは、例えば、番号または色分けされたクリップや異なる長さのチューブ等、正しい構成でポンプにチューブを接続する機構を備える。自動採取システムにデバイスを接続するときに、この機構により、オペレータエラーを低減または防止する。
【0139】
次のように卵チャンバ1を使用する。
【0140】
卵チャンバ1には、入口ポート7に取り付けられたチューブ12が設けられる。チューブ12の遠位端部(容器から遠い端部)は、採取針13に取り付けられる。また、卵チャンバには、出口ポートに取り付けられた第2チューブ14が設けられる。第2チューブ14は、その遠位端の廃棄物リザーバに結合する。第2チューブ14は、また、卵チャンバ1から廃棄物リザーバにチューブを介して流体を引き込む吸引ポンプにも結合する。このポンプは、足踏みペダルによって作動してもよい。全ての場合において、チューブは、実行可能な限り短くする。
【0141】
卵チャンバ1は、チューブ12と針13と共に、全て温無菌液体、例えば生理食塩水で充填されることによってプライミングされる。針と入口ポート7との間のチューブ12は、三方活栓17(図4)を備え、チューブ12は、針13および卵チャンバ1の入口ポート7と同様に、温無菌液体リザーバ18にも接続できる。ピンチバルブを用いて、必要に応じて、流体の流れのオプションを開閉することができる。蠕動ポンプを駆動して、チューブ12を介して無菌液体リザーバから卵チャンバ1と針13の両方に無菌液体を押し出すことができる。
【0142】
卵チャンバ1は、完全に流体で充填される。好ましくは、卵チャンバ1を加熱プレート上または加熱ハウジング内に保持して、体温やそれに近い温度にチャンバ1を維持する。加熱プレートまたはハウジングは、より大きなポンプユニットの一部として、システムを通して液体を引き出すために使用されるポンプに結合することができる。好ましくは、流体を、36.8±0.4°C、37°Cに加熱する。
【0143】
採卵中、卵チャンバは、フィルタ4がチャンバ内で実質的に水平である「採取向き」に保持される。これにより、卵胞液を吸引しチャンバ1内の血液や細片から卵や卵子を分離しようとする重力の効果を促す。
【0144】
採卵は、通常、鎮静中の患者に対する日帰り処置である。針13は、卵巣への超音波ガイド下で患者の膣の上部に通される。卵胞液、および関連する卵子は、システムを介して流体を引き込むことによって吸引される。吸引ポンプを用いて、プライミング液をシステムを介して廃棄物リザーバに引き込み、卵子を含む卵胞液を針13およびチューブ12を介して入口ポート7を通って卵チャンバ1に引き入れる。流体は、入口ポートを介して容器に引き込まれ、第1チャンバ5に入り、さらにフィルタ4を介して第2チャンバ6に入る。バッフルは、バッフルの長さにわたって広がる流体の流れを遅くする。その後、低減速度で「カーテン」の流れのようにバッフル上を流れる。卵と血球とは、バッフルの上を通過し、フィルタに向かって落下する。卵子や卵より小さくなるように10?100μm、好ましくは20?60μmのフィルタ4の孔径が選択されているため、卵は第1チャンバ5内に保持され、一方、卵胞液、血球、および他のより小さい細片はフィルタ4を通過して第2チャンバ6に入り、最終的に出口ポート9から廃棄物リザーバに引き出される。この孔径によって、主に重力で分離が可能になり、フィルタを通して最小限の吸引圧しか必要としない。その結果、卵は、清浄な液体環境で第1チャンバ5内に保持される。血塊の形成を防ぐために、このようにして卵胞液中に存在する血液から卵を分離することが重要である。
【0145】
特に、全ての卵が単一の容器に採取され、卵胞液がシステムを介して最終的に廃棄物リザーバ内に引き込まれることから、適切な卵子/卵を識別して選択するために胚培養士が調べなければならない流体の量が減少する。
【0146】
シールされたチャンバは、胚培養士が検査およびチャンバを開く準備ができるまで、孵卵器に保持される。
【0147】
卵がまだ入口ポート7を介して引き込まれていない場合、吸引後に卵をチューブ12内に配してもよい。採取の終わりに、臨床医は、プライミングポンプを用いて、全卵胞液が卵チャンバ1内に押し出され卵や卵子が誤ってチューブ12内に残っていないか確認することができる。
【0148】
女性から針を外した後に卵が針に残っている懸念がある場合は、針を生理食塩水等の温無菌液体に挿入してフラッシュすることができる。
【0149】
図示しない実施形態では、卵チャンバには、吸引中に空気が第1チャンバに入ってくるか否かを検出する空気センサが設けられる。卵胞吸引中に空気がシステムに入る恐れがあり、この場合、卵や卵子が保持される卵胞液のpHに影響を与える可能性があり、より重大なケースでは、卵が乾ききることもある。センサは、チャンバが採取向きにあるときに第1チャンバの上部に位置する。そして、空気出口ポート10を開いて、空気を除去し、採取された卵の周囲の生理的状態の変化(例えば、pH変化)を最小限にし、卵の乾燥を防ぐ。センサがなくても、空気出口ポート10を使用することができる。
【0150】
採取プロセス中に針が詰まると、針をフラッシュすることも可能である。針と入口ポート7との間のチューブ12は、三方活栓17(図4)を備えてもよい。針と入口ポート7との間の流れは、例えばピンチバルブを使用して、点Aで閉じることができ、無菌液体リザーバと針との間の流れは、例えば点Bで開くことができる。ポンプ、好ましくは蠕動ポンプを用いて、無菌液体を無菌液体リザーバから針を介して押し出し、針や関連チューブの穴を塞ぐ物を取り除く。フラッシングが完了すると、無菌液体リザーバと針との間の流れを再び閉じることができ、針と入口ポート10との間の流れを再度開くことができる。フラッシング中、吸引に関連する吸引ポンプは通常は停止される。
【0151】
その後、卵チャンバ1は、取り外され、針13に結合するチューブ12および第2チューブ14から離される。ポート7、9、10はシール可能(好ましくはセルフシール)および非ドリップであるため、チャンバは、採取された卵のためのシール環境になる。採取プロセス全体にわたって、卵チャンバ1は、ホットブロック上に保持され、卵チャンバ1およびその内容物を、体温である37°Cまたは胚培養士が所望する温度(胚培養士は体温よりわずかに高いまたは低い温度に卵を保つことを好む場合がある)に確実に保つ。チャンバを体温等の一定温度に保持することができ、必要に応じて、卵子/卵をしばらくの間チャンバ内に保持することができる。
【0152】
卵が採取されると、次の段階で、胚培養士が検査し、処置でさらに使用するための最も生存能力の高い卵/卵子を選択する。図2に最適に示すように、卵チャンバ1は、フィルタ4がチャンバ内で実質的に水平面にある「採取向き」から、約90°の角度で再指向/移動され、下壁3が下面でフィルタ4が実質的に垂直面にある「検査向き」になる。向きの変更により、胚培養士は、検査向きになった未だシールされている卵チャンバ1を、顕微鏡上に置いて、観察することができる。好適には、この向きはまた、卵チャンバ1の保管および移送を容易にする。下壁3は、透明であり、光のチャンバへの進入を可能にする。これは、下方に位置する光源を有する顕微鏡を使用した場合に特に有用である(つまり、光源が卵チャンバ1の下方に位置する)。卵/卵子は第1チャンバ5内に保持されている。卵チャンバ1が観察向きにあるので、卵/卵子は、下壁3の内面であるチャンバの床の上に載っている状態である。下壁3がフィルタ4と交わる場所および/または下壁3が1以上の側壁8と交わる場所に傾斜面11またはラジアスエッジを設けることにより、卵/卵子は、第1チャンバのエッジから離れるようになり、特に、卵チャンバ1が採取向きになるときには卵/卵子が最も位置しそうな箇所であるフィルタから離れるようになる。上壁2も透明であるため、胚培養士は、ユニットを開いたり開封することなく、卵チャンバ1の内容物を観察できる。また、チャンバの向きは、フィルタが胚培養士の視界を妨げないようにする。下壁は、グリッドパターン等のマーキングまたは指標を有して、胚培養士が卵や卵子を見つけやすくしてもよい。この時点まで、卵/卵子は、実質的にシールされた流体(より好ましくは、液体)環境であり、温度やpHの変化が最小限またはなく空気の侵入が最小限またはない環境で保持されている。
【0153】
本実施形態では上壁が透明であるが、別の実施形態では、胚培養士が第1チャンバの内容物を見るのに十分なサイズであれば、上壁の窓部のみ透明であってもよい。第2チャンバの内容物を可視化することにも利点がある。採取中、施術者は、卵胞から相当量の血液が引き出されているかを見たいことが多い。容器のその他の壁または部分も、任意に、任意の角度から吸引流体を見ることができるように透明または半透明であってもよい。
【0154】
胚培養士が卵を検査し最も生存能力があると思われる卵を識別すると、卵チャンバ1の蓋部15を外すことができる。蓋部15は、上壁2の少なくとも一部を含み、図1に示す実施形態では、全上壁2を含む。蓋部は、突出部19を有してもよく、ユーザは突出部を持って容易に蓋部15を外すことができる。好ましくは、チャンバ内の視界を妨げないように、突出部19を、蓋部15の側面に設ける。一実施形態では、ねじること(回転)によって蓋を外す。他の実施形態では、蓋部15を、単にベース部16から持ち上げでもよい。好ましくは、蓋を外すのに必要な回転は、20度未満であり、より好ましくは10度未満である。蓋は、円形または非円形であってもよい。この時点までは、蓋部15は、液密および気密シールで、卵チャンバ1のベース部16にシールされている。これによって、吸引後に卵チャンバ全体が気密および液密であり、pHおよび温度変化、空気や酸素の侵入、汚染物質との接触等の生理的環境変化がないことを保証する。好ましくは、これは、一度破れると再シールできないヒートシール、タンパープルーフテープ、またはシリコンシールである。これにより、卵チャンバが単回使用であり改ざん防止であることが保証される。一実施形態では、図1bに示すように、蓋15は、保持リング17を用いてベース部16にシールされている。好ましくは、保持リングは、単回使用であり、蓋15をベース16から外すときに破れる。必要に応じてチャンバから保持リング17の除去を容易にするためにチャンバから外に延びているタブ部18を保持リング17に設けてもよい。卵チャンバ1に患者識別子を付与できることから、単回使用チャンバは、患者追跡も容易にする。患者識別子は、永久識別子であってもよい。蓋部15を外すと、胚培養士は、公知技術により、ピペットを使用して選択卵を取り出すことができる。採取した卵や卵子は、その後、さらに使用される。
【0155】
蓋の一実施形態は、圧縮嵌め蓋である。ここでは、ツールを設けて蓋を外す。一実施形態では、ツールは、キーであり、蓋に挿入して回すことで、蓋を外すことができる。一実施形態では、ツールの受け入れ領域(キーホール)は、流れ案内装置を組み込んだ蓋の領域にある。
【0156】
図8および9を参照して、卵チャンバのわずかに異なる2つの設計が開示されている。好ましい設計を開示する図9において、上チャンバ5の側面は、まっすぐであり、図8の設計のようにテーパ状でない。また、バッフルは、V字形であり、蓋15の下面に取り付けられ、蓋15の形状は、上チャンバ5の形状と一致する(すなわち、平らな底で、平行な側面が湾曲アーチになる)。蓋15の下面を厚くして、チャンバ5内に突出し、チャンバ5の液体を変位させて、蓋15を外したときに漏出のリスクが減るようにしてもよい。蓋15の厚さは、フィルタ4に向かって減少してもよく、すなわち、角度を付けて、全フィルタ4が見えるようにしてもよい。また、蓋15は、蓋15を外すために取り除く必要があるポリスチレンリングシール(図示せず)で覆われてもよい。
【0157】
補強タブを、上チャンバ5の外側壁に、好ましくは採卵モードにおける上部に、配置してもよい。シールを破るためにツールを補強タブ上に置いて、シールをてこで外す。破れると、シールリングを剥がすことができる。シールリングは、硬質(および脆い)であってもよく、一体で剥がれる。補強タブがチャンバの最も高い位置にあるとき(採取モード)、空気出口は、好ましくは、補強タブの下に、チャンバの最上部に位置してもよい(観察モード)。
【0158】
また、蓋15の上面は、蓋15を外すハンドルとして機能するタブを含んでもよい。タブは、好ましくは、チャンバ5の視野を遮らないように、例えばバッフルの真上に位置してもよい(観察モード)。また、バッフルの上の上チャンバ5領域に位置してもよく(採取モード)、好ましくは、中央の右または左である。
【0159】
卵チャンバの利点
卵チャンバは、先行技術と比べて多くの利点を有する。
・卵の温度が常に制御される(細胞生存能力の上昇)
・卵が常に封入流体環境にあり、安定したpHを維持することができ、汚染および/または揮発性有機化合物(VOC)への露出のリスクを最小限にする。
・採卵プロセスが連続的である、すなわち、試験管から試験管に移す必要がない。すべての卵が1つの密閉チャンバ内に採取される(たくさんの人手を必要とせず、汚染のリスクを最小限に抑え、熱損失を防止する)。
・卵は自動的にチャンバ内で洗浄(卵胞液中の血液から分離)され、清浄な流体の中で胚培養士に提示されるため、容易に識別することができる(胚培養士の時間を節約し、より少ない冷却で、汚染リスクを最小限に抑える)。
・胚培養士が卵を選びそれらを油下で培地に配置する準備ができたとき、培養検査室(理想的にはアイソレータ内)でのみ、チャンバが開かれる(汚染リスクを最小限に抑える)。
・卵は、取り出した後、孵卵器において密閉気密チャンバで維持することができる。このように、採卵の臨床処置と卵の識別の胎生的プロセスとは独立する。これは、臨床および胚培養士の時間のより効率的な利用であり、検査室および診療所の場所に柔軟性を与える。
・チャンバを用いて、卵胞液を緩衝培地(または生理食塩水)で入れ替えることができ、卵のための浸透圧およびpHが安定した環境を提供する。
【0160】
臨床医の観点からは、システムは、現行のシステムとほぼ同様に働く。すなわち、現行システムと同様、新システムでは、既存の針とチューブを使用することができ、チャンバは透明にすることができ、吸引流体を見ることができる。
【0161】
胚培養士の観点からは、既存の装備(顕微鏡、フード等)が使用され、皿はすでに使用されているものと同様のサイズである。いくつかの実施形態では、卵は、既存の方法とは異なるベースの上に存在し得るが、顕微鏡下で同じように見え、識別し易い。
【0162】
皿は、卵母細胞選択および洗浄中に使用される現行のペトリ皿と同様のサイズ/形状であってもよく、最適なフィルタ面積を提供するのに十分な大きさであってもよい。
【0163】
また、卵チャンバは、獣医IVF市場に適用されてもよい。獣医IVFは、しばしば不十分に制御された環境で行われるので、卵チャンバの利点は、非常に望ましいであろう。
【0164】
卵チャンバの製造
好ましい製造方法では、卵チャンバは、以下のコンポーネントから構成される。
・第1内部チャンバ - 射出成形ポリスチレン
・第2内部チャンバ - 射出成形ポリスチレン
・蓋 - 射出成形ポリスチレン
・保持リング - 射出成形ポリスチレン
・空気出口コネクタ - 機械加工または射出成形ポリスチレン
・入口および出口コネクタ - 射出成形ポリスチレン
・メインフィルタメッシュ - 60μΜナイロンメッシュ
・空気出口フィルタメッシュ - 60μΜナイロンメッシュ
・ガスケット - シリコンガスケット材料
【0165】
第1内部チャンバ、第2内部チャンバ、蓋、および保持リングは、BASFにより供給されたポリスチレンルーラン(Luran)HD-20から製造される。第1内部チャンバの目的は、採卵処置中に卵母細胞を採取することである。また、採取処置が完了すると、胚培養士が卵母細胞を選択および洗浄するための容器を提供する。第1内部チャンバは、組み立て手順における第1コンポーネントである。他のコンポーネントは全てこのチャンバと結合する。第2内部チャンバ(またはノーズチャンバ)は正面に位置し、ガスケット、蓋、および保持リングは上部に収納され、空気と入口コネクタは後ろの壁のポート内に位置する。
【0166】
第1内部チャンバは、以下の特徴を持つ。
・顕微鏡下で使用するための光学的に明瞭なベース。
・チャンバ上部の周りの犠牲溶接ビード。
・側壁上部近くのガスケットハウジングリップ。
・蓋およびガスケットコンポーネントを伴うスライディング/ロケーティングフィット。
・第2内部チャンバ/ノーズコンポーネント上のフィルタボスを伴うプッシュフィット。
・空気および入口接続を伴うプッシュフィット。
・第2内部チャンバ/ノーズコンポーネントとの溶接時に良好なコンタクトを与えるための正面周りの滑らかな表面。
【0167】
第2内部チャンバは、流れを第1内部チャンバから出口接続へと導く。これは、メインチャンバ内へとプッシュフィットを有するボス押し出し型材を通じて、メインチャンバと連結する。ボス押し出し型材は、メインフィルタメッシュが装着される溶接面を提供する。メインチャンバに押し込まれると、超音波溶接を用いて双方をシールする。
【0168】
第2内部チャンバは、以下の主要な特徴を持つ。
・角度付ボスは、フィルタメッシュ用の溶接面と、第1内部チャンバとのロケーションフィットとを提供する。
・フィルタメッシュと溶接するため第2内部チャンバ/ノーズチャンバへの入口の周りの犠牲溶接ビード。
・第1チャンバと溶接するためボス押し出し型材のベースの周りの犠牲溶接ビード。
・出口コネクタを伴うプッシュフィット。
・溶接ソニトロード(sonitrode)のためのアクセスを可能にする出口コネクタ穴の周りの平坦な接触面積。
【0169】
蓋は、メインチャンバの上部に挿入され、ガスケットを挟んでシールデバイスを作製する。蓋の後部の近くには、バッフルがある。これは、流れの中の乱流を低減し、フィルタメッシュ全体への分布を促進する。バッフルは、蓋を外す際「ドリップキャッチング」のためのチャネルとして機能するチャンバの中心に対してわずかな角度を持つ。蓋は、メインチャンバ内に深く突出する特に厚い切片コンポーネントである。この突起によりメインチャンバの液量が減り、蓋を外すと流体の所望の実行容積を残す。タブは、蓋の上部から突出し、ユーザがメインチャンバから蓋を持ち上げるためのピッキング点を提供する。
【0170】
蓋コンポーネントは、以下の主要な特徴を持つ。
・メインチャンバとのロケーションフィット。
・ガスケットを挟む滑らかで平らな表面仕上げであり、シールを形成する。
・光学的に明瞭であり、ユーザがチャンバの内容物を見ることができる
・バッフルの底部とチャンバベースとの間に少なくとも1mmの間隙。
【0171】
保持リングは、メインチャンバの上部との保持溶接を提供して、シリコーンガスケットを挟んで、シールデバイスを形成する必要がある。リングは、そのエッジの周りにロケーティングリッジを有し、これによりメインチャンバの上に配置され、犠牲溶接ビードと位置合わせされる。
【0172】
保持リングは、以下の主要な特徴を持つ。
・メインチャンバとのスライディングフィット。
・シリコーンガスケットを圧縮するための構造的完全性。
【0173】
空気出口コネクタは、好ましくは、ポリスチレンレキソライト(Rexolite)1422から機械加工される。これは、ポリスチレンルーランHD-20から射出成形されてもよい。
【0174】
空気出口コネクタは、2つの犠牲溶接ビードを有する必要があり、1つはフィルタメッシュを溶接するため、もう1つはコネクタを第1内部チャンバ内に溶接するためである。この空気出口コネクタは、ポンプ、バルブ、および針をチャンバに接続するチューブコンポーネントとのインターフェースを提供する。チューブは、雄チューブコネクタの上に位置し押し付けられて、シールを形成する。
【0175】
空気出口コネクタは、以下の主要な特徴を持つ。
・IVF産業で使用される標準的なチューブ材とシールするチューブコネクタ(有刺またはマイクロルアースリップ)。
・1mmIDおよび2mmODのチューブとシールするチューブコネクタ。
・第1内部チャンバとのプッシュフィット。
・フィルタメッシュをコネクタの上に溶接するための犠牲溶接ビード。
・コネクタを第1内部チャンバに溶接するための犠牲溶接ビード。
【0176】
入口/出口コネクタは、コネクタを第1内部チャンバ(入口)および第2内部チャンバ(出口)に溶接するために犠牲溶接ビードを有する必要がある。この入口/出口コネクタは、ポンプ、バルブ、および針をチャンバに接続するチューブコンポーネントとのインターフェースを提供する。チューブは、雄チューブコネクタの上に位置し押し付けられて、シールを形成する。
【0177】
入口/出口コネクタは、以下の主要な特徴を持つ。
・IVF産業で使用される標準的なチューブ材とシールするチューブコネクタ(有刺またはマイクロルアースリップ)。
・1mmIDおよび2mmODのチューブとシールするチューブコネクタ。
・メインおよびノーズチャンバとのプッシュフィット。
・コネクタを第1および第2内部チャンバに溶接するための犠牲溶接ビード。
【0178】
入口/出口コネクタは、好ましくは、ポリスチレンレキソライト1422から機械加工される。これらは、個々にまたは第1内部チャンバおよびノーズチャンバの一部として、ポリスチレンルーランHD-20から射出成形されてもよい。
【0179】
空気出口フィルタメッシュは、ミリポア(Millipore)によって供給される60μm孔径のナイロンメッシュから製造される。空気出口フィルタメッシュは、1.13mm^(2)の濾過面積を提供する。フィルタは、空気入口コネクタ上に溶接され、これがメインチャンバに溶接されてシールを形成する。フィルタは、卵が空気出口から逃げるのを防止するフェイルセーフとして機能する。
【0180】
空気出口フィルタメッシュは、以下の主要な特徴を持つ。
・ナイロンから製造。
・60μmのフィルタ孔径。
【0181】
シリコーンガスケットは、医療グレードシリコーンから製造され、蓋コンポーネントの突出部上に嵌合される。蓋がメインチャンバに挿入されると、ガスケットが挟み込まれる。その後、保持リングが所定位置に溶接されると、ガスケットは、圧縮され、メインチャンバ上にシールを生成する。
【0182】
シリコーンガスケットは、以下の主要な特徴を持つ。
・蓋コンポーネントの突出部とのロケーションフィット。
・シール形成のために必要な圧縮を可能にする0.5?1mmの厚さ。
【0183】
コンポーネントは、射出成形またはCNC機械でバッチ製造される。各射出成形コンポーネントには、個別の金型があり、これが成形機に取り付けられる。バルク粒状のBASF提供ポリスチレンルーランHD-20は、本機の入力ホッパーに入れられる。成形パラメータが個々のコンポーネントに適用され、プロセスが自動的に実行され、最終コンポーネントが機械から排出されバルク容器に回収された後、個別に袋詰めされる。各CNC機械加工コンポーネントは、設定された加工プログラムを実行して製造され、最終コンポーネントは、回収され超音波洗浄されて、袋詰めされる。各コンポーネントは、その後、組立エリアに来て、図10に示すように組み立てられる。
【0184】
コンポーネントの超音波溶接を利用して、チャンバを組み立てる。これにより、コンポーネントを接合する際に有害な溶媒を使う必要がなくなる。標準の超音波溶接機を、溶接の必要な形状に応じて、ソニトロードの範囲で使用する。
【0185】
製造プロセスは、可能な限り最小グレード7クリーンルーム環境で行われる。
【0186】
流体ポンプシステム
IVF採卵に適した流体ポンプシステム100を、図7および11?15を参照して説明する。図11は、図7A?Gに示す採卵システムの流体ポンプシステムの好ましい実施形態の概略図である。流体ポンプシステム100の好ましい実施形態は、第1蠕動ポンプ102、第2蠕動ポンプ104、加熱生理食塩水リザーバ106、廃棄物リザーバ108、加熱ステージを有する採卵チャンバ110、針114等に結合可能な抽出ポート112、およびコントローラ(概略図に図示せず)を含む。
【0187】
流体ポンプシステム100は、チャンバを収容するための取り外し可能な容器(チャンバハウス)を含んでもよい。流体ポンプシステム100との接触の大部分を占めるチャンバハウスの後側は、アルミニウムからなってもよい。これにより、ポンプ上の加熱ステージからチャンバへの熱伝導が可能になる。チャンバハウスの正面は、チャンバへの流体採取をオペレータが視認検査できるように、透明なパースペックス材料からなる蓋を有してもよい。チャンバは、チャンバハウジングに入り込み、パースペックス蓋は閉じられる。チャンバハウジングは、操作のため、流体ポンプシステム100の2つのリップ内に摺動する。
【0188】
第1蠕動ポンプ102の入口ポート116は、第1チューブ118を介して加熱生理食塩水リザーバ106に流体的に接続され、出口ポート120は、第2チューブ124を介して流体ジャンクション122に流体的に接続される。抽出ポート112(および針114)は、第3チューブ126を介して流体ジャンクション122に流体的に接続され、流体ジャンクション122は、さらに第4チューブ130を介して採卵チャンバ110の入口ポート128に流体的に接続される。第2蠕動ポンプ104の出口ポート132は、第5チューブ134を介して廃棄物リザーバ108に流体的に接続される。第2蠕動ポンプ104の入口ポート136は、第6チューブ140を介して採卵チャンバ110の第1出口ポート138に流体的に接続され、第7チューブ144を介して採卵チャンバ110の第2出口ポート142に流体的に接続される。
【0189】
第1作動可能セレクタバルブ202は、第2チューブ124に動作可能に連結され、第2作動可能セレクタバルブ204は、第4チューブ130に動作可能に連結され、第3作動可能セレクタバルブ206は、第3チューブ126に動作可能に連結され、第4作動可能セレクタバルブ208は、第7チューブ144に動作可能に連結され、第5作動可能セレクタバルブ210は、第6チューブ140に動作可能に連結される。
【0190】
コントローラ(図示せず)は、少なくとも作動可能セレクタバルブ202、204、206、208、および210に動作可能に連結され、第1および第2蠕動ポンプ102および104に動作可能に連結される。コントローラ(図示せず)はまた、採卵チャンバ110の任意の制御可能なヒータ(図示せず)および加熱生理食塩水リザーバ106に動作可能に連結されてもよい。コントローラ(図示せず)はまた、流体ポンプシステム100内で一体化されている任意のセンサに動作可能に連結されてもよい。センサは、流体流速、流体温度、および/または周囲温度等、流体ポンプシステム100内の物理的特性を決定するように適合されてもよい。
【0191】
コントローラは、セレクタバルブ202?210の作動および第1および第2蠕動流体ポンプ102および104の動作の所定シーケンスを実行するようにプログラムされてもよい。例えば、コントローラ(図示せず)は、最初に図12Aに示すように「チャンバ充填」シーケンスを実行してもよい。ここで、第3および第4セレクタバルブ206および208が作動され(すなわち、閉じられ)、加熱生理食塩水リザーバ106から採卵チャンバ110を通り第6チューブ140を介して第2蠕動ポンプ104、廃棄物リザーバ108へと流路を形成する。ポンプ102および104を両方とも始動させて、加熱生理食塩水リザーバ106から採卵チャンバ110内および廃棄物リザーバ108へと流体を移動させて、当該プロセスにおいてら採卵チャンバ110を加熱生理食塩水で充填する。
【0192】
「チャンバ充填」シーケンス後、コントローラは、図12Bに示すように「フラッシュ」シーケンスを実行する。このシーケンスでは、第2、第4、および第5セレクタバルブ204、208、および210が閉じられて、加熱生理食塩水リザーバから抽出ポート112および針114へと流路を形成する。第1蠕動流体ポンプ102を始動させて、抽出ポート112および針114から生理食塩水をフラッシュする。採卵チャンバ110への流体接続は、遮断される。
【0193】
システムがフラッシュされた後、コントローラは、「フラッシュ」シーケンス後自動的にまたは外部アクチュエータ(例えば、フットペダル)等によって手動でトリガされると、空気除去」シーケンスを実行してもよい。図12cに示すように、第3および第4セレクタバルブ206および208が閉じられて、加熱生理食塩水リザーバ106から採卵チャンバ110を通り第6チューブ140に入る流路を形成する。第1蠕動流体ポンプ102を始動させて、採卵チャンバに追加すべき生理食塩水の制御量を追加し、「チャンバ充填」シーケンス中に採卵チャンバ110に閉じ込められた残留空気を除去する。
【0194】
次に、コントローラは、自動的にまたはフットペダル等の外部アクチュエータ(図示せず)によって手動でトリガされると、流体ポンプシステムを「プライミング」して、「採卵」シーケンスを開始する。図12Dに示すように、第1および第5セレクタバルブ202および210が閉じられて、抽出ポート112および針114から採卵チャンバ110への流路、および、採卵チャンバ110から第2蠕動ポンプ104を介して廃棄物リザーバ108への流路を形成する。第2蠕動ポンプ104を始動させて、針から採卵チャンバを通るように流体を移動させる。過剰な流体は、廃棄物リザーバ108内に移動させる。先述の通り、採卵チャンバは、卵が廃棄物リザーバ108に移動しないように構成されている。
【0195】
コントローラによって実行可能な「高圧力」機能は、例えば「フラッシュ」シーケンスおよび「採卵」シーケンスを、ポンプ102および104をより高い流速で動作させた状態で、行うことを可能にする。但し、2つのポンプ102および104それぞれの動作速度は、任意の適した速度に調整できる。
【0196】
図13を参照して、高レベル主要プロセスフロー概略図は、コントローラ(図示せず)によって実行可能な流体ポンプシステム100のコマンドおよびシーケンス構造を示す。システム100に電源が投入されると、自動初期化シーケンスが実行される。ここで、コントローラは、コントローラのユーザインターフェースおよび制御ハードウェアと同様に、全てのアクチュエータ(すなわち、セレクタバルブ、ポンプ)およびセンサ(利用可能な場合)との通信を確立する。
【0197】
コントローラの典型的なユーザインターフェース300を図14A?Eに示す。ユーザインターフェースは、ユーザが全ての動作モードにアクセス可能なタッチスクリーンであってもよい。最初の電源投入後、図14Aに示すような画面レイアウトをユーザに表示してもよい。この状態で、コントローラのプロセッサは、ユーザが機能を選択するまで、待機ループを実行する。図14Aに示すユーザインターフェースは、加熱生理食塩水リザーバ106および採卵チャンバ110で測定された現在の温度に関する情報も提供する。
【0198】
図14B?Eは、異なるシーケンスでのユーザインターフェース表示を示す。各シーケンスは外部アクチュエータ(例えば、フットペダル)を介して開始されてもよく、あるいは、シーケンスは予めプログラムされたコントローラによって自動的に実行されてもよい。好ましくは、各シーケンスが完了するまで、ユーザインターフェースは、「ロック」される。
【0199】
また、異なる背景色を用いて、流体ポンプシステム100の現在の動作状態を表してもよい。例えば、初期化シーケンスでは画面の背景が青色、「採卵」シーケンスでは画面の背景が緑色、「フラッシュ」シーケンスでは画面の背景がオレンジ色、「高圧力」シーケンスでは画面の背景が赤色であってもよい。
【0200】
図15は、異なる視点での流体ポンプシステム100の設計の例を示す。具体的に、(a)は上面図、(b)は斜視図、(c)は側面図、(D)は正面図である。この実施形態において、流体ポンプシステム100は、可動アーム402を介してテーブルトップ400に連結される。フロントパネル404は、採卵チャンバ110、生理食塩水リザーバ106、およびユーザインターフェースディスプレイ300を備える。
【0201】
なお、上記実施形態は単なる例示であり限定的ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲から逸脱することなくさまざまな変更や変形が可能であることを当業者は理解するであろう。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵チャンバであって、
少なくとも1つの側壁、上壁、および下壁を含み、上壁の少なくとも一部が透明であり下壁の少なくとも一部が光透過性である、気密可能な容器と、
シール可能な第1入口と、
シール可能な第1出口と、
採卵に適した孔径のフィルタであって、前記容器において第1入口と第1出口との間に配され、前記容器を第1内部採卵チャンバと第2内部チャンバとに分けるように構成されるフィルタと、
を備え、
流れ案内装置(または流れ制限装置)が前記第1内部採卵チャンバに位置する卵チャンバ。
【請求項2】
前記第1入口および第1出口は、セルフシーリングであり、及び/又は
前記第1入口および第1出口に取り付けられる取り外し可能チューブが設けられる、請求項1に記載の卵チャンバ。
【請求項3】
前記フィルタは、前記上壁と下壁との間に配され、及び/又は
前記フィルタは、前記下壁に垂直に伸び、又は
前記フィルタは、前記下壁から25°?90°の角度で伸びる、
請求項1または2に記載の卵チャンバ。
【請求項4】
前記フィルタは、血球は通過できるが卵母細胞は通過できないよう、20?100μm、40?80μm、40?60μm、またはこれより小さい孔径を有する、請求項1?3のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項5】
前記フィルタは、卵がくっつかないように、上端にリップを有する、請求項1?4のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項6】
前記側壁は共に、前記第1内部採卵チャンバから前記第2内部チャンバの方向にテーパ状であり、及び/又は
前記下壁が前記第1内部採卵チャンバにおいて側壁と交わる場所では、傾斜がある、
請求項1?5のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項7】
空気が前記第1内部採卵チャンバ内に吸引されたかを検出するように適合される空気センサをさらに備え、及び/又は
空気出口ポートをさらに備える、
請求項1?6のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項8】
前記流れ案内装置は、バッフルである、請求項1?7のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項9】
前記バッフルは、前記上壁に取り付けられ、及び/又は
前記バッフルは、前記上壁と一体であり、観察形態において蓋(上壁の下面)から第1内部採卵チャンバ内に下向きに突出する、
請求項8に記載の卵チャンバ。
【請求項10】
前記バッフルは、第1入口と前記フィルタとの間に位置する、請求項8に記載の卵チャンバ。
【請求項11】
前記バッフルは、線形であり、
前記線形バッフルは、1mm?5mm幅であり、
前記バッフルは、第1内部採卵チャンバの取り付け部に対して90°?95°である、
請求項8?10のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項12】
前記バッフルと前記下壁との間に、約1mm?5mmの空間があり、
前記線形バッフルの各端部と前記側壁との間に、1mm?3mmの空間がある、
請求項11に記載の卵チャンバ。
【請求項13】
フィルタが、前記第2内部チャンバの内側で出口ポートを覆う、請求項1?12のいずれかに記載の卵チャンバ。
【請求項14】
請求項1?13のいずれかに記載の卵チャンバとポンプステーションとを備える採卵システムであって、
前記卵チャンバは、第1入口ポートを介して第1チューブと針とに接続され、さらに、出口ポートを介して第2チューブに接続され、
前記ポンプステーションは、無菌液体リザーバおよび第1チューブに結合する第1プライミングポンプと、第2チューブに結合する第2吸引ポンプとを備え、流体を針から卵チャンバを介して出口チューブへと引き出すように適合される、
採卵システム。
【請求項15】
前記第1プライミングポンプは、蠕動ポンプであり、
前記第2吸引ポンプは、蠕動ポンプまたは真空ポンプである、
請求項14に記載の採卵システム。
【請求項16】
前記卵チャンバは、加熱ハウジング内に受け取られ、
前記加熱ハウジングの少なくとも一部は、前記卵チャンバを視認可能としており、及び/又は
前記加熱ハウジングは、前記卵チャンバを「採取向き」で保持するように適合される、請求項14または15に記載の採卵システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-11-05 
結審通知日 2018-11-07 
審決日 2018-11-20 
出願番号 特願2016-516245(P2016-516245)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (A61D)
P 1 41・ 855- Y (A61D)
P 1 41・ 852- Y (A61D)
P 1 41・ 854- Y (A61D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 槻木澤 昌司  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 高木 彰
船越 亮
登録日 2018-08-24 
登録番号 特許第6389514号(P6389514)
発明の名称 体外受精採卵チャンバ  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 憲司  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 憲司  
代理人 塚中 哲雄  

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