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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1346967
審判番号 不服2017-1071  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-25 
確定日 2018-12-12 
事件の表示 特願2014-513615「ハイブリッド配向特徴を有するコンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開、WO2012/166570、平成26年 6月30日国内公表、特表2014-515503〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)5月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月1日、米国)を国際出願日とする出願(出願人:ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド、発明者:ロバート ケ-.スタップルビーン、ジェニファー ズバ)であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成26年 1月28日:翻訳文提出書
平成28年 1月26日:拒絶理由通知
平成28年 4月12日:意見書
平成28年 4月12日:手続補正書
平成28年 9月16日:拒絶査定
平成29年 1月25日:審判請求書
平成29年 1月25日:手続補正書
平成29年12月27日:拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成30年 6月 8日:意見書(以下単に「意見書」という。)
平成30年 6月 8日:手続補正書(以下、該手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

(2)本願発明
本願の請求項1ないし22に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。
「レンズ端、垂直子午線、水平子午線、上領域(a superior region)、下領域(an inferior region)、光学ゾーン、該光学ゾーンの少なくとも一部を含み前記上領域で始まるプリズムバラストゾーン、前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置され前記下領域から始まるバラスト周囲ゾーン、及び、前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置されたプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーンを含むコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、光学ゾーンとレンズ端との間に配置されたディンプルゾーンを有し、コンタクトレンズは下の(inferior)垂直子午線を中心とし、
前記ディンプルゾーンは、下の(inferior)垂直子午線を中心として、5?45度にわたり、前記ディンプルゾーンに隣接して位置する前記バラスト周囲ゾーンの厚さより比較的薄い厚さを有し、
前記バラスト周囲ゾーンは、240μmの最大厚さを有する、
ことを特徴とするコンタクトレンズ。」(以下「本願発明」という。)

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は概ね次の拒絶理由を含むものである。
(拡大先願)この出願の本件補正前の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

・請求項1ないし23
・引用文献等 先願1.特願2009-291082号(特開2011-133567号公報)

3 先願の明細書等の記載事項
(1)当審拒絶理由で先願1として引用され、本件の優先日前の出願日(平成21年12月22日)を有する特許出願であって、本件の優先日後に出願公開がされた特願2009-291082号(特開2011-133567号公報)(出願人:HOYA株式会社、発明者:中嶌隆治、辻直樹)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決にて付した。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、乱視矯正用のトーリックコンタクトレンズに係り、特に、装用時における角膜上でのレンズの方向性の安定化(回転防止)を図ったトーリックコンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乱視は通常、角膜または水晶体形状がきれいな球面でない場合に、眼の縦(垂直方向)と横(水平方向)の曲率半径が異なることにより、外界の一点から出た光が眼内で一点に収束しない状態であり、乱視を矯正するためのソフトコンタクトレンズとして、トーリックコンタクトレンズが広く知られている。
【0003】
乱視の性質上、トーリックコンタクトレンズは、眼球に対して常に決められた向きに装用される必要がある。即ち、レンズの頂部(上端部)として意図した部分が、装用者の眼の頂部(上端部)に常に位置するようになっていなければならない。例えば、装用時にコンタクトレンズが瞬き(眼瞼を閉じる動作)によって回転し、トーリックコンタクトレンズの乱視軸がずれると、視力が不安定になりやすい。そこで、トーリックコンタクトレンズの回転防止または軸の安定化を図るための方法が採り入れられている。その方法の一例として、プリズムバラスト法やスラブオフ法と呼ばれるものがある。
【0004】
プリズムバラスト法を採り入れた一例として、特許文献1には、プリズムバラストを、垂直経線に平行な上下線に沿って厚さが下に行くほど増大するように形成することで設定したものが示されている。この例では、垂直経線に垂直な水平方向で厚さが実質的に一様になるように形成してあり、これらの構成の採用により、レンズの回転防止と装用感の向上を狙っている。また、スラブオフ法を採り入れた一例として、特許文献2には、レンズの周辺部に平坦部分を設けると共に、レンズの中点を通る水平軸に対して鏡像対称性を持たせ、水平軸に直交する垂直軸の部分を最も薄肉となし、この垂直軸から両側へ平坦部分に沿って徐々に肉厚となるように形成し、水平軸の部分が最大肉厚部となるように設定して、それにより動的安定を図ったトーリックコンタクトレンズが示されている。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示されたトーリックコンタクトレンズでは、プリズムバラスト機構を採用しているために外側のゾーンでレンズ上端から下端にかけて肉厚が厚くなり、内側ゾーンの下端部から下側エッジにかけての肉厚差が顕著になる。トーリックコンタクトレンズの下端部の肉厚が厚いほど、角膜下部が隆起している人が装着した場合に、瞬き毎にレンズに回転が起きやすく、レンズの向きが不安定になり、良好な軸安定性を得難くなって、装用感も充分に満足できなくなる。また、上記特許文献2に開示されたトーリックコンタクトレンズでは、装用感の良さは得られるものの、レンズの重心が幾何学的中心に存在するため、瞬き毎に角膜上で回転するなどして、軸安定性に欠けやすくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、良好な軸安定性と装用感が得られるトーリックコンタクトレンズ及びその製造方法を提供することを目的とする。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、軸安定性と装用感を両立させる方法について鋭意検討した結果、鏡像対称性を有するレンズ前面に2箇所の最大肉厚部を形成し、それら2箇所の最大肉厚部からレンズ下端部にかけて滑らかに肉厚を減少させて、これらの最大肉厚部の間に谷状の凹みを形成することにより、軸安定性が効果的に発揮されつつ良好な装用感が得られることを見出した。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
即ち、この発明に従うトーリックコンタクトレンズは、凸状のレンズ前面と凹状のレンズ後面とを有すると共に、レンズ上端部からレンズ下端部にかけて徐々に肉厚が増加するプリズムバラスト構造を有するトーリックコンタクトレンズであって、レンズ前面に、屈折度数を決定する中央光学領域と、該中央光学領域を包囲する円環状の移行領域と、該移行領域を包囲する円環状の周辺領域とが画定されると共に、レンズ前面の形状が、レンズ上端部からレンズ中点を通りレンズ下端部に至る垂直経線を境界とする鏡像対称性を有し、レンズ前面のレンズ中点より下側に、レンズ肉厚が最大となる2箇所の最大肉厚部が配され、これら最大肉厚部からレンズ下端部にかけて滑らかに肉厚が減少しており、それにより、2箇所の最大肉厚部の間に谷状の凹みが形成されている。
【0010】
好ましくは、この発明に従うトーリックコンタクトレンズは、2箇所の最大肉厚部からそれぞれレンズ下端部にかけてレンズの円周方向に測った角度が15°?35°の範囲にあるのがよい。また、好ましくは、前記最大肉厚部からレンズ下端部にかけて減少する肉厚の変化がCos関数により規定されているのがよい。さらに、好ましくは、レンズ前面の中心軸線がレンズ後面の中心軸線に対し下方にオフセットされることで、プリズムバラスト構造が形成されているのがよい。
【0011】
好ましくは、中央光学領域がバイフォーカルまたはマルチフォーカルに設計されたトーリックコンタクトレンズであるのがよい。また、好ましくは、トーリックコンタクトレンズがハイドロゲル素材またはシリコーンハイドロゲル素材のトーリックコンタクトレンズであるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鏡像対称性を有するレンズ前面に2箇所の最大肉厚部を配し、それら2箇所の最大肉厚部からレンズ下端部にかけて滑らかに肉厚を減少させ、これらの最大肉厚部の間には谷状の凹みが形成される。この結果、装用者の角膜形状に起因する軸安定性の影響を低減され、トーリックコンタクトレンズの軸の安定性の向上を図ることができる。また、レンズ下端部に谷状の凹みが形成されることにより、良好な装用感も得られる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の上述の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1と図2(a)及び(b)に示すように、このトーリックコンタクトレンズ10は、凹状のレンズ後面(ベースカーブとも言う)12と凸状のレンズ前面(フロントカーブとも言う)14とによって形成される。ベースカーブ12およびフロントカーブ14が交わる(接合する)箇所には、エッジ16が設けられている。なお、このトーリックコンタクトレンズ10のパラメータには、近視度数:-3.00D、乱視度数:-0.50Dおよび軸:180°が割り当てられる。
【0016】
ベースカーブ12は、装用者の角膜形状に対応した多段階カーブを有する回転対称形で形成される。つまり、ベースカーブ12の形状はどの角経線で切っても同一形状(同心円形状)である。
【0017】
ここで、経線とは、レンズ面(ベースカーブ12またはフロントカーブ14)とレンズ中心軸線を含む平面との交差線を意味し、経線の種類には、垂直経線18、水平経線20、および角経線22がある。垂直経線18とは、レンズ上端部24及びレンズ下端部26を通る経線、水平経線20とは、垂直経線18に直交する経線、そして角経線22とは、レンズ中点Oの周りの任意の角度の経線(つまり、レンズ中点Oからエッジ16へ向かってレンズの半径方向に沿うように放射状に延びる線)のことである。なお、角経線22については後で詳しく説明する。
【0018】
フロントカーブ14は、レンズ上端部24からレンズ中点Oを通りレンズ下端部26に至る垂直経線18を境界とする鏡像対称性を有している。つまり、レンズ中点Oを通る垂直経線18の右半分と左半分とは同一形状である。このため、左右の眼に区別なく使用することが可能となる。
【0019】
フロントカーブ14には、トーリックコンタクトレンズ10の屈折度数を規定する中央光学領域28と、該中央光学領域28を包囲する円環状の移行領域30と、該移行領域30を包囲するレンズ最外周領域である円環状の周辺領域32とが画定されている。周辺領域32の外周側には、ベースカーブ12およびフロントカーブ14が交わるエッジ16が設けられている。
【0020】
フロントカーブ14の中央光学領域28は、トーリック面として形成される。即ち、乱視を矯正するために、直交する2つの経線方向において曲率半径が異なるように曲面(トーリック面)が形成されている。
【0021】
なお、中央光学領域28をトーリック面として形成した場合を、ここにおいても、また後述する実施例においても示しているが、中央光学領域28は、視力矯正目的であれば、どのような形状に設定することも可能であり、例えば、二焦点(バイフォーカル)や多焦点(マルチフォーカル)に設定することも可能である。
【0022】
移行領域30は、楕円形状の中央光学領域28と円環状の周辺領域32とを、それらの間の緩衝領域として最短距離で結んでおり、この移行領域30があることによって、装用時に触れるレンズと上下眼瞼との間の余計な摩擦を低減して装用感の向上を図っている。
【0023】
このトーリックコンタクトレンズ10はプリズムバラスト機構を有する。具体的には、図2(a)及び(b)に示すように、フロントカーブ14の中央光学領域28(実線)の中心軸線L1が、ベースカーブ12の中央光学領域34(点線)の中心軸線L2に対して下方にオフセットさせられていることにより、レンズ上端部24からレンズ下端部26にかけて徐々に肉厚が増加するプリズムバラスト構造が形成されている。この結果、レンズ下部が上部よりも厚くなって偏心することで、レンズの回転防止が図られる。なお、トーリックコンタクトレンズ10の近視度数は、中央光学領域28の曲率R1と中央光学領域34の曲率R2とによって定まる。
【0024】
以下の説明において使用するトーリックコンタクトレンズ10の角度位置は、図3(a)に示すように、レンズ上端部24を90°の位置、レンズ下端部26を270°の位置、水平経線20の方向のうち鼻側を0°の位置、反対側(耳側)を180°の位置と定義する。
【0025】
図3(b)を参照して、レンズ中点Oから角経線22毎に区切ってレンズ断面プロフィールを見てみると、移行領域30から周辺領域32までの間で肉厚Sが最大となっている。具体的には、250°の位置では、エッジ16から周辺領域32にかけてベースカーブ12とフロントカーブ14との距離が離れることで肉厚が厚くなっている。換言すると、角経線22の各々の断面を見ると、周辺領域32と移行領域30が接する点αから中央光学領域28と移行領域30とが接する点βまでの範囲に最大肉厚箇所が設けられている。
【0026】
また、点αはいずれの角度においてもエッジ16から所定の距離に位置する。一方、点βは中央光学領域28の形状に応じて角度毎に変化する。具体的には、軸180度が割り当てられたトーリックコンタクトレンズ10の場合、点αおよび点βとの距離は、90°位置(P1)および270°位置(P3)のときに最大となり、0°位置および180°位置のときに最小となる。こうして、移行領域30は緩衝領域としての機能を果たす。
【0027】
さらに、このトーリックコンタクトレンズ10は、鏡像対称性を有するため、90°から左回り(反時計回り)に270°までと、90°から右回り(時計回り)に270°までの肉厚分布は、角経線22毎に同一である。つまり、レンズ中点Oから角経線22の各々を放射状に切り分けると、断面形状は左右同じである。具体的には、0°と180°とは同一であり、250°と290°とは同一である。
【0028】
ここで、図4を参照して肉厚の定義の仕方について述べると、レンズの肉厚Sは、ベースカーブ12上の任意の点から、この任意の点に対する接線に直交する垂線がフロントカーブ14と交わる点までの距離として定義している。中央光学領域28での肉厚Sは視力矯正のために度数に応じて規定される一方、中央光学領域28を除く移行領域30および周辺領域32における肉厚Sは所望の値に変更することができる。
【0029】
図5(a)に示すように、移行領域30と周辺領域32の境界線である円周A上の肉厚は、規定された角度で区分されるエリア毎に異なる。具体的には、肉厚は、点P1(90°)から点P2(250°)にかけてCos関数で増加し、点P2(250°)から点P3(270°)にかけてCos関数で減少する。つまり、250°の位置で区切られた箇所の肉厚が最大となる。
【0030】
鏡像対称性を有するトーリックコンタクトレンズ10では、点P1(90°)から右回りに0°を経て点P2’(290°)まで徐々に肉厚が増加し、点P2’(290°)から点P3(270°)まで徐々に肉厚が減少している。つまり、トーリックコンタクトレンズ10を角経線22毎に区切ると、250°および290°で区切られた箇所の肉厚が最大となる。ここで、250°位置での最大肉厚箇所は最大肉厚部36、そして290°位置での最大肉厚箇所は最大肉厚部38と称する。
【0031】
なお、図5(a)では、点P1から点P2にかけて肉厚はCos関数で増加すると説明したが、点P1から点P2にかけて肉厚は増加すればどのような形状でも採用が可能であり、例えば、図5(b)に示すような1次関数、図5(c)に示すような2関数、そして図5(d)に示すようなルート関数を採用することも可能である。
【0032】
図5(a)に戻って、点P2(250°)から点P3(270°)まで反時計回りに、また、点P2’(290°)から点P3(270°)まで時計回りに肉厚が減少する。これにより、レンズ中点Oから角経線22に沿って反時計回りに250°から290°で区切られた範囲にスラブオフ40(図1に示す斜線部)が形成される。スラブオフ40において、250°から反時計回りに270°(290°から時計回りに270°)までの肉厚がCos関数で減少することにより、点P3は最大肉厚部36および最大肉厚部38に挟まれた谷状に凹む。この結果、角膜下部が隆起していても、トーリックコンタクトレンズ10がなじむようになり、レンズが角膜に良好にフィットして良好な装用感が得られる。
【0033】
図6(b)中に示す肉厚変化曲線TH1?TH4は、図6(a)に示すように、スラブオフ40を水平経線20(図1参照)と平行に等間隔に区切った際の各切断線TH1?TH4毎の断面を示している。このように、切断線毎の肉厚TH1?TH4は、いずれも端部から中央部にかけていったん盛り上がった後に盛り下がっている。換言すると、レンズ上端部24から左右の最大肉厚部36及び最大肉厚部38にかけて角経線22毎に肉厚が厚くなり、これら最大肉厚部36及び最大肉厚部38からレンズ下端部26にかけて角経線22毎に肉厚が薄くなるため、谷状の断面形状を呈し、肉厚がTH1?TH4のように中央付近(270°位置)が凹んだ分布となる。このようにして、スラブオフ40の谷間Vが形成される。
【0034】
谷間Vは、250°の位置にある最大肉厚部36と290°の位置にある最大肉厚部38間の間隔を示す。角膜下部が窪んでいたとしても、所望する軸はぶれにくくなるものと推察される。なお、谷間Vについては、3?7mmの長さが好ましく、また、4.5?6.5mmの長さであればより好ましい。3mmを下回ると、角膜と上下瞼とで契合する領域が狭くなるため、瞬きする際、スラブオフ40と最大肉厚部36および最大肉厚部38とならびに上下瞼および角膜で生じる摩擦が効果的に発揮されず、この結果、軸のズレ量が増加する。一方、7mmを上回ると、角膜と上下瞼とで契合する領域が広がってしまい、瞬きする際、スラブオフ40と最大肉厚部36および最大肉厚部38とならびに上下瞼および角膜で生じる摩擦が効果的に発揮されず、この結果、軸のズレ量が増加する。
【0035】
図1に戻って、250°及び290°の位置は、レンズ下端部26(270°の位置)からレンズの円周方向に角度を測った際に±20°に開く展開角となる。スラブオフ40の展開角が±20°であるため、軸安定性と装用感とのバランスが保たれる。本実施形態では、270°(レンズ下端部26)から±20°箇所を最大肉厚部36および最大肉厚部38が設けられた位置として説明したが、270°から±15°?35°の範囲である225°?255°(-15°?-35°)の位置と285°?305°(下端部から+15°?+35°)の位置とが実用可能範囲である。
【0036】
つまり、スラブオフ40の展開角が広がった±40°(230°?310°)より大きいとき、角膜下部とフィットする領域が広がるため、瞬き毎に軸がブレやすくなり、軸安定性に欠ける。一方、スラブオフ40の展開角が狭まった±10°(260°?280°)未満のとき、角膜下部とフィットし難くなり、軸安定性が低下する。
【0037】
なお、点P2から点P3にかけて肉厚はCos関数で減少すると説明したが、点P2から点P3にかけて肉厚が、例えば、1次関数で減少すると、後述するスラブオフ40での形状がより弛みやすくなるため、軸安定性を損なう。
【0038】
円周A上の90°位置での肉厚は、円周A上の250°位置での肉厚(最大肉厚部36)および円周A上の290°位置での肉厚(最大肉厚部38)に対して、「最大肉厚部の肉厚:レンズ上端部の肉厚=2.27?2.54:1」の関係に設定されるのが好ましい。この範囲を外れると、装用感および軸安定性が低下する。
【0039】
また、円周A上の270°位置での肉厚は、円周A上の250°位置での肉厚(最大肉厚部36)および円周A上の290°位置での肉厚(最大肉厚部38)に対して、「最大肉厚部の肉厚:レンズ下端部の肉厚=1?1.27:1」の関係に設定されるのが好ましい。この範囲を外れると、装用感および軸安定性が低下する。
【0040】
さらに、円周A上の90°位置での肉厚は、円周A上の270°位置での肉厚に対して、「レンズ上端部の肉厚:レンズ下端部の肉厚=1?2.27:1」の関係に設定されるのが好ましい。この範囲を外れると、装用感および軸安定性が低下する。
【0041】
なお、ベースカーブ12およびフロントカーブ14の各中心軸が一致していてもよい。
【0042】
また、トーリックコンタクトレンズ10を製造する際に使用するコンタクトレンズ基材としては、重合後にコンタクトレンズ形状を保持し、ハイドロゲルとなりうる重合体、好ましくは、シリコーンを含有し、ハイドロゲルとなりうる共重合体であればよく、従来からソフトコンタクトレンズ用基材として知られているもの(シリコーンハイドロゲル材料)をそのまま用いることができる。さらに、トーリックコンタクトレンズ10は、キャストモールド製法により重合されるが、このときのモールド型の材質としては、モノマー混合液に対して耐性を有するものであればいかなるものでもよく、例えば、ポリプロピレンが挙げられる。」
エ 「【実施例】
【0043】
以下、実施例のトーリックコンタクトレンズを装用した9つの試験について具体的に説明する。表1には、実施例1?4および比較例1?5の特徴を示し、表2には、実施例1?4および比較例1?5にて使用されたトーリックコンタクトレンズの各々に共通するパラメータを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
・・・略・・・
【0046】
実施例1?4のトーリックコンタクトレンズは、実施形態のコンタクトレンズ10と同様に、レンズ下端部である270°の位置に谷状の凹みが存在するものである。つまり、左右両側の最大肉厚部36および最大肉厚部38から270°のレンズ下端部26にかけて肉厚が徐々に減少している。
【0047】
実施例1は、上述した実施形態のトーリックコンタクトレンズ10に相当するものである。また、実施例2は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、スラブオフ40の展開角度を±30°に設計したトーリックコンタクトレンズである。さらに、実施例3は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、270°位置の肉厚を実施例1よりも薄くなるように設計したトーリックコンタクトレンズである。さらにまた、実施例4は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、270°位置の肉厚を実施例3よりも薄くなるように設計したトーリックコンタクトレンズである。
【0048】
一方、比較例1のトーリックコンタクトレンズは、いわゆる従来のプリズムバラスト機構を備えたトーリックコンタクトレンズであり、最大肉厚箇所がレンズ下端部26である270°に存在し、レンズ上端部24からレンズ下端部26にかけて徐々に肉厚が厚くなる。また、比較例2は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、スラブオフ40の展開角度を±10°に設計したトーリックコンタクトレンズであり、左右両方の最大肉厚箇所の谷間Vは実施例1?4に比べ狭い。さらに、比較例3は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、スラブオフ40の展開角度を±40°に設計したトーリックコンタクトレンズであり、左右両方の最大肉厚箇所の谷間Vは実施例1?4に比べ広い。さらにまた、比較例4は、実施例1のトーリックコンタクトレンズ10を基に、スラブオフ40の展開角度を±40°とし、最大肉厚箇所を250°位置から290°位置にかけて同一肉厚となるように設計したトーリックコンタクトレンズである。また、比較例5のトーリックコンタクトレンズは、最大肉厚部36から最大肉厚部38までが連続した一定の肉厚である。
【0049】
装用テストは、年代の違う被験者5名の右目に対して行った。装用後15分経過及び30分経過した時点での軸位置を確認し、この結果を表(a)に示す。なお、表3の(b)は表3の(a)中に示された記号の説明である。
【0050】
・・・略・・・
【0051】
ここで、最大肉厚部36および最大肉厚部38と、スラブオフ40の展開角度とが軸安定性に与える影響について確認すると、表4と、スラブオフ40の展開角度毎に区分したグラフである図7とに示すように、スラブオフ40の下部展開角度が±20°?±30°付近の場合に軸安定性の優位性が顕著に得られることが分かった。
【0052】
・・・略・・・
【0053】
また、レンズ下端部26付近の肉厚が軸安定性に与える影響について確認すると、表5および図8に示すように、270°の位置での肉厚が薄くなるほど、角膜や上下瞼によって生じる摩擦に起因する形状になじみやすくなるため、軸安定性が向上するものと考えられる。
【0054】
【表5】

【0055】
さらに、スラブオフ40でのスムージング(肉厚減少度合い)が軸安定性に与える影響について確認すると、表6および図9に示すように、Cos関数で減少する形状の方が1次関数で減少する形状に比べ軸安定性が良好である。これは、P2(250°,290°)からP3(270°)にかけて1次関数で肉厚を減少させると、スラブオフ40が弛みやすくなるため軸安定性が低下するものと考えられる。
【0056】
・・・略・・・
【0057】
以上の結果をまとめると、下部展開角度の頂点に位置する最大肉厚箇所が±20°?±30°のときに軸安定性の効果が顕著に発揮(好ましくは±20°)され、270°の位置では薄肉化されたときに軸安定性の効果が顕著に発揮される。フロントカーブ14に、鏡像対称性を有するレンズ前面に配された2箇所の最大肉厚部36および最大肉厚部38からレンズ下端部26にかけて滑らかに肉厚が減少し、これらの最大肉厚部36および最大肉厚部38の間に谷状のスラブオフ40が形成される。この結果、装用者の角膜形状に起因する軸安定性の影響が低減される。これによって、トーリックコンタクトレンズの軸の安定性を確保することができる。また、レンズ下端部26に谷状の凹みが形成されることにより、角膜下部が隆起していても、トーリックコンタクトレンズ10がなじむようになり、レンズが角膜に良好にフィットして良好な装用感が得られる。要するに、実施例1?4のトーリックコンタクトレンズは、比較例1?5のトーリックコンタクトレンズに比べ優れていることが明らかとなった。」

オ 「【図1】

・・・略・・・
【図3】

・・・略・・・
【図5】


カ 表1(上記エの【0044】)には、実施例3に関し、「最大肉厚箇所(肉厚)」が「250°と290°(0.28)」、「270°肉厚」が「0.22」、「スムージング」(肉厚減少度合い)が「Cos関数(250°?290°)」と記載されており、前記肉厚については、表5(上記エの【0054】)の記載を参酌すると、単位はmmであると理解できるから、最大肉厚箇所250°と290°、すなわち最大肉厚部36及び38の肉厚は0.28mmであり、270°の肉厚は0.22mmと理解できる。
キ 上記アないしカからみて、先願明細書等には、実施例3として、次の発明が記載されているものと認められる。
「レンズ上端部24及びレンズ下端部26を通る垂直経線18と、垂直経線18に直交する水平経線20と、屈折度数を規定する中央光学領域28と、該中央光学領域28を包囲する円環状の移行領域30と、該移行領域30を包囲するレンズ最外周領域である円環状の周辺領域32と、周辺領域32の外周側のベースカーブ12およびフロントカーブ14が交わる箇所に設けられたエッジ16と、レンズ上端部24からレンズ下端部26にかけて徐々に肉厚が増加するプリズムバラスト構造と、を有するトーリックコンタクトレンズ10であって、
レンズ上端部24を90°の位置、レンズ下端部26を270°の位置、水平経線20の方向のうち鼻側を0°の位置、反対側(耳側)を180°の位置と定義すると、移行領域30と周辺領域32の境界線である円周A上の肉厚は、90°から250°にかけてCos関数で増加し、250°から270°にかけてCos関数で減少し、250°の位置で区切られた肉厚が最大となる箇所を最大肉厚部36とし、同様に、90°から0°を経て290°まで徐々に肉厚が増加し、290°から270°まで徐々に肉厚が減少し、290°で区切られた肉厚が最大となる箇所を最大肉厚部38とし、
250°から270°まで反時計回りに、また、290°から270°まで時計回りに肉厚が減少し、これにより、250°から290°で区切られた範囲に最大肉厚部36および最大肉厚部38に挟まれた谷状に凹むスラブオフ40が形成され、
270°の肉厚が0.22mmであり、
最大肉厚部36及び38の肉厚が0.28mmである、
トーリックコンタクトレンズ10。」(以下「先願発明」という。)

4 対比
本願発明と先願発明とを対比する。
(1)先願発明の「エッジ16」、「垂直経線18」、「水平経線20」、「屈折度数を規定する中央光学領域28」及び「トーリックコンタクトレンズ10」は、それぞれ本願発明の「レンズ端」、「垂直子午線」、「水平子午線」、「光学ゾーン」及び「コンタクトレンズ」に相当する。

(2)先願発明は、「垂直経線18」及び「水平経線20」が存在し、水平経線20を基準に、垂直経線18に沿った上方の領域と下方の領域とを備えることは明らかであるから、本願発明の「上領域」及び「下領域」に相当する構成を備えることは明らかである。

(3)先願発明の「レンズ上端部24からレンズ下端部26にかけて徐々に肉厚が増加するプリズムバラスト構造」は、「屈折度数を規定する中央光学領域28」(光学ゾーン)の少なくとも一部を含み、垂直経線18に沿った上方の領域で始まることは明らかである。そうすると、先願発明は、本願発明の「光学ゾーンの少なくとも一部を含み上領域で始まるプリズムバラストゾーン」に相当する構成を備えることは明らかである。

(4)ア 本願の明細書には、「プリズムバラストゾーン」、「バラスト周囲ゾーン」及び「プリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン」に関し、以下の記載がある。
「【0020】 従ってレンズ10は、光学ゾーン22の少なくとも一部を含みかつ上領域26で始まるプリズムバラストゾーン24を含む。レンズ10は、光学ゾーン22とレンズ端部36との間に配置されかつ下領域30から始まるバラスト周囲ゾーン28(また、「周辺バラスト」としても知られる)を含む。プリズムバラストゾーンは、レンズの小さいが重要なプリズムバラストによって画定される。プリズムバラストゾーンは、単一の曲線(図1参照)から構成されてもよいし、複数の曲線で構成されてもよい。当業者は容易に理解するように、プリズムバラストゾーン24は、光学ゾーン22の少なくとも一部を含み、上領域26で始まる。プリズムバラストゾーンは、一般に図1に示されるように、下領域30内に延びることができる。あるいは、バラスト周囲ゾーン28は上領域26内に延びることができる(示していない)。
・・・略・・・
【0023】 レンズ10はさらに、光学ゾーン22とレンズ端36との間に配置され、かつプリズムバラストゾーン24とバラスト周囲ゾーン28との間に配置された、少なくとも1種のプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン32を含む。混合ゾーンは、垂直子午線Y-Y’に対して対称であり、プリズムバラストゾーン24がバラスト周囲ゾーン28に直接隣接していた場合に起きるような、プリズムバラストゾーン24からバラスト周囲ゾーン28へのより緩やかな移動を与える。プリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーンは、改良された快適性を着用者に与えると考えられる。ある態様においてプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン32は、約1?約45度にわたる。ある態様においてプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン32は約5?約20度にわたる。ある態様においてプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン32は約10度にわたる。」

イ 意見書では、「プリズムバラストゾーン」、「バラスト周囲ゾーン」及び「プリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン」に関し、以下の記載がある。
「3)理由2について(1)請求項1について ・・・略・・・ しかしながら、「プリズムバラスト」及び「バラスト周囲ゾーン」は、コンタクトレンズについて方向を提供するために別個に用いられることが当該技術分野においてよく知られる特徴であります。例えば、プリズムバラストは、光学ゾーンを介して上側ゾーンから下側ゾーンまでレンズの漸次的な厚み付けを提供する前面及び後面曲線により提供されることがよく知られており、一方バラスト周囲ゾーンは、光学ゾーンを介した漸次的な厚み付けが所望でない場合に光学ゾーンの外側で用いられることがよく知られています。本願明細書においては、そのような既知のバラスト特徴をディンプルゾーンと組み合わせて使用することにより、従来のバラスト化レンズよりも回転の回復と主視線の配向(PGO)の両方で改善された快適性と良好な目の配向を提供するものであります。当該技術分野においてよく知られた特徴であることに加えて、そのようなバラストゾーンは、その位置に関して本願明細書において明確に説明されるものであります。すなわち、本願明細書の段落【0020】に記載されるように、プリズムバラストゾーン24は、光学ゾーン22の少なくとも一部を含み、上領域26で始まるのに対し、バラスト周囲ゾーン28は、光学ゾーン22とレンズ端部36との間に配置されかつ下領域30から始まるものであります。」

ウ 先願発明において、「最大肉厚部36」及び「最大肉厚部38」をそれぞれ含むその近傍の各領域は、中央光学領域28(光学ゾーン)の外方であって、移行領域30と周辺領域32の境界線である円周Aを中心に「エッジ16」(レンズ端)に向けて外方に存在する。そうすると、上記ア及びイに照らせば、前記各領域は、「前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置され前記下領域から始まるバラスト周囲ゾーン」に相当する。また、先願発明は、円周Aに沿って「最大肉厚部36」及び「最大肉厚部38」に至るまで、徐々に肉厚が増加するものであるから、前記各領域とプリズムバラスト構造との間で明確な境界があるものとはいえず、遷移領域、すなわち相互の混合領域が存在するといえる。そうすると、先願発明は、本願発明の「前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置されたプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン」に相当する構成を備えることは明らかである。

(5)先願発明の「垂直経線」(垂直子午線)は、レンズ上端部24及びレンズ下端部26を通るものであり、トーリックコンタクトレンズ10がほぼ円形であることを踏まえれば、下の「垂直経線」(垂直子午線)をトーリックコンタクトレンズ10の左右方向中心としていることは明らかである。そうすると、先願発明は、本願発明の「コンタクトレンズは下の(inferior)垂直子午線を中心とし」に相当する構成を備えることは明らかである。

(6)先願発明の「スラブオフ40」が、本願発明の「ディンプルゾーン」に相当する。そして、先願発明は、250°から270°まで反時計回りに、また、290°から270°まで時計回りに肉厚が減少し、これにより、250°から290°で区切られた範囲に最大肉厚部36および最大肉厚部38に挟まれた谷状に凹む「スラブオフ40」(ディンプルゾーン)が形成され、該「スラブオフ40」(ディンプルゾーン)が「垂直経線」(垂直子午線)を中心として一方側に20°、両側に40°にわたっているから、本願発明の「前記ディンプルゾーンは、下の(inferior)垂直子午線を中心として、5?45度にわた」るに相当する構成を備えることは明らかである。また、先願発明において、「スラブオフ40」(ディンプルゾーン)の中心である270°の肉厚が0.22mmであり、最大肉厚部36及び38の肉厚が0.28mmであるから、先願発明は、本願発明の「前記ディンプルゾーン」は、「前記ディンプルゾーンに隣接して位置する前記バラスト周囲ゾーンの厚さより比較的薄い厚さを有する」に相当する構成を備えることは明らかである。

(7)上記(1)ないし(6)からみて、本願発明と先願発明とは、
「レンズ端、垂直子午線、水平子午線、上領域(a superior region)、下領域(an inferior region)、光学ゾーン、該光学ゾーンの少なくとも一部を含み前記上領域で始まるプリズムバラストゾーン、前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置され前記下領域から始まるバラスト周囲ゾーン、及び、前記光学ゾーンと前記レンズ端との間に配置されたプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーンを含むコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、光学ゾーンとレンズ端との間に配置されたディンプルゾーンを有し、コンタクトレンズは下の(inferior)垂直子午線を中心とし、
前記ディンプルゾーンは、下の(inferior)垂直子午線を中心として、5?45度にわたり、前記ディンプルゾーンに隣接して位置する前記バラスト周囲ゾーンの厚さより比較的薄い厚さを有する、
コンタクトレンズ。」の点で一致し、次の点で一応相違する。

・相違点
「バラスト周囲ゾーン」は、
本願発明では、「240μmの最大厚さを有する」のに対し、
先願発明は、最大肉厚箇所の厚さが0.28mm(280μm)である点。

5 判断
(1)上記相違点について検討する。
先願明細書等の【0039】(上記3(1)ウ)には、「円周A上の270°位置での肉厚は、円周A上の250°位置での肉厚(最大肉厚部36)および円周A上の290°位置での肉厚(最大肉厚部38)に対して、「最大肉厚部の肉厚:レンズ下端部の肉厚=1?1.27:1」の関係に設定されるのが好ましい。この範囲を外れると、装用感および軸安定性が低下する。」と記載されており、当該記載に基づけば、先願発明において、スラブオフ40(ディンプルゾーン)内の270°の厚さ0.22mm(220μm)からみて、最大肉厚箇所の厚さは、0.22mm(220μm)ないし0.28mm(280μm)(≒0.22mm×1.27)の範囲を許容し得るものと理解できる。
そうすると、先願発明において、最大肉厚箇所の厚さが0.28mm(280μm)であるのを0.22mm(220μm)ないし0.28mm(280μm)の範囲(0.24mm(240μm)を含む)のいずれかの厚さとなすことは記載されているに等しい事項である。
してみると、上記相違点に係る本願発明の構成は、先願明細書等に記載されているに等しい事項であるとともに、本願発明を実施する際の具体化手段における設計上の微差にすぎないから、上記相違点は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は先願発明と同一の発明であり、本願発明は、先願明細書等に記載された発明である。
また、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願の出願人が先願の出願人とも同一でもない。
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

(2)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、意見書において、概略、以下のとおり主張している。
「2)理由1について
先の拒絶理由通知において、先願明細書に記載された発明は、本願の旧請求項1に係る発明と同一である、とのご指摘を受けております。
しかしながら、先願明細書には、本願の請求項1に係る発明の特徴とする、「前記ディンプルゾーンは、下の(inferior)垂直子午線を中心として、5?45度にわたり、前記ディンプルゾーンに隣接して位置する前記バラスト周囲ゾーンの厚さより比較的薄い厚さを有する」ことに関しては、全く記載がありません。この点に関して、先の拒絶理由通知において審判官殿は、先願明細書には「バラスト周囲ゾーン」を備えることの明示がないことを認められており、スラブオフ4に隣接する最大肉厚部36、38を含む領域が「バラスト周囲ゾーン」であることが自明である、とご指摘されておりますが、先願明細書に記載されるのは、単に「最大肉厚部36、38から滑らかに肉厚が減少する」だけのことであります。
・・・略・・・
これに対して、先願明細書には、上記のような本願の請求項1に係る発明の特徴的構成については全く記載がありません。すなわち、先願明細書に記載されるバラスト厚さは全て250μm以上であります。また、先願明細書に記載されるプリズムバラストは、前面と後面のプリズムバラスト曲線面の間で形成されるものであるので、プリズムバラストとは別個のバラスト周囲の特徴やプリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーンに関しては先願明細書には全く記載がありません。」

イ 審判請求人の主張について検討する。
上記4で検討したように、先願発明は、本願発明の「バラスト周囲ゾーン」及び「プリズムバラスト/バラスト周囲混合ゾーン」に相当する構成を備え、また、上記5で検討したように、バラスト周囲ゾーンが240μmの最大厚さを有することも先願明細書等に記載されているに等しい事項であるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

6 むすび
本願発明は、先願明細書等に記載された発明であり、本件出願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本件の出願の時において、本件の出願人が先願の出願人とも同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-11 
結審通知日 2018-07-17 
審決日 2018-07-30 
出願番号 特願2014-513615(P2014-513615)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
関根 洋之
発明の名称 ハイブリッド配向特徴を有するコンタクトレンズ  
代理人 柳田 征史  
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