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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F |
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管理番号 | 1346972 |
審判番号 | 不服2017-8010 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-05 |
確定日 | 2018-12-13 |
事件の表示 | 特願2013-151090号「室内熱交換器、室内機、室外熱交換器、室外機、及び空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 2日出願公開、特開2015- 21676号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月19日の出願であって、その経緯は、概ね次のとおりである。 平成27年8月26日に手続補正書の提出 平成28年5月17日付けで拒絶理由の通知 平成28年7月21日に意見書の提出 平成28年11月22日付けで拒絶理由の通知 平成29年1月20日に意見書、手続補正書の提出 平成29年3月30日付けで拒絶査定 平成29年6月5日に拒絶査定不服審判の請求 平成30年7月2日付けで当審による拒絶理由の通知 平成30年9月3日に意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成30年9月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「複数のフィンが並ぶ第1フィンユニットと、 上側端部が前記第1フィンユニットの上側端部に隣接し、複数のフィンが並ぶ第2フィンユニットと、 前記第1フィンユニットの前記上側端部と前記第2フィンユニットの前記上側端部との隙間を塞ぎ、樹脂又はゴムによって形成されている第1シール部材と、 前記第1フィンユニット及び前記第2フィンユニットの前記フィンを貫通するように配置される複数の伝熱管と、 を有し、 前記伝熱管は、 冷凍サイクルが暖房運転のサイクルである場合に、前記冷凍サイクルを還流し、ジフルオロメタン(CH_(2)F_(2))であるR32を50%以上含む冷媒の入口配管が接続される入口伝熱管と、 少なくとも1つが前記入口伝熱管よりも前記第1シール部材の近くに配置され、前記入口伝熱管から流出した前記冷媒が順に流れていく複数の中継伝熱管と、を含み、 前記入口伝熱管と前記第1シール部材との間には、前記入口伝熱管の熱が前記第1シール部材に伝わることを抑制するために、前記中継伝熱管が配置されている室内熱交換器。」 第3 拒絶理由の概要 当審において、平成30年7月2日付けで本願発明に関して通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の刊行物に記載された発明に基いて、本願の出願前に本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [刊行物] 1 特開2003-254555号公報(以下、「刊行物1」という。) 2 実用新案登録第2532360号公報(以下、「刊行物2」という。) 3 特開平10-132325号公報(当審による拒絶理由において引用した刊行物8であって、以下、「刊行物3」という。) ここで、刊行物3については、本願発明が、平成30年9月3日に提出された手続補正書による補正前の請求項15に記載された発明特定事項を含むことから、列記したものである。 第4 引用刊行物 1 刊行物1 (1)刊行物1の記載事項 刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、特に、室内熱交換器における冷媒流路の構成を改良した空気調和機に関する。」 イ 「【0010】本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、冷房運転、除湿運転、暖房運転のそれぞれに、冷媒の流通作用および熱交換空気の流通作用をともに効率よく行え、たとえ大能力機種においても充分な再熱除湿機能を発揮できる空気調和機を提供しようとするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため、本発明の空気調和機は、室外機本体および室内機本体とからなり、これら室外機本体と室内機本体に分散して配置され冷房運転と暖房運転との切換えが可能なヒートポンプ式冷凍サイクルを構成するよう冷媒配管を介して連通される、圧縮機、四方切換弁、室外熱交換器、膨張手段および室内熱交換器とを具備し、上記室内熱交換器は、所定間隔を存して並設される複数枚のフィンと、これらフィンを貫通し内部に冷媒が導通する流路を形成する熱交換パイプとからなるフィンチューブタイプであって、フィンの相互間に熱交換空気が流通し、さらに室内熱交換器は、室内機本体の前面部に対向して配置される前側熱交換器部と上面部に対向して配置される後側熱交換器部とから側面視で逆V字状に形成され、前側熱交換器部と後側熱交換器部とを連通する冷媒流路の中途部に、前側熱交換器部で冷媒の凝縮作用を行わせ、後側熱交換器部で冷媒の蒸発作用を行わせて、除湿運転サイクルを成立させる絞り装置が設けられ、冷房・除湿運転サイクルにおいて、絞り装置の冷媒流路上流側に後側熱交換器部、絞り装置の冷媒流路下流側に前側熱交換器部を位置させ、後側熱交換器部は、熱交換空気流の風上側に冷媒入口部が設けられ、この冷媒入口部から前後2方向に分流案内されて、それぞれが熱交換空気流の風下側に導かれたあと合流して上記絞り装置に導入される流路構成をなし、絞り装置から導出される冷媒は2方向に分流案内されて上記前側熱交換器部に導かれる流路構成をなし、前側熱交換器部では上下方向のほぼ中央部から上下に2分される並列冷媒流路を備え、上下それぞれの流路における熱交換空気流の風上側に絞り装置から分流案内された冷媒を導入する冷媒配管が接続され、上下各流路において上下2方向に分岐して熱交換空気流の風下側において合流したのち導出される並列流路を備えた。 【0012】さらに、上記絞り装置は、冷房運転サイクル時に開放され除湿運転サイクル時に閉成される主流路と、除湿運転サイクル時に冷媒を導通させ所定絞り量を確保する絞り流路を備えた除湿用絞り弁であり、冷房・除湿運転サイクル時に除湿用絞り弁に冷媒を導入案内する冷媒配管は、直状で、かつ除湿用絞り弁側壁にほぼ水平姿勢で接続され、上記除湿用絞り弁から冷媒を導出案内する冷媒配管は、除湿用絞り弁下端部に接続され下方向に延出したあと水平方向に屈曲され、さらにこの水平端部は両端に冷媒配管が接続されたU字状分流管のほぼ中央部に接続され、このU字状分流管両端に接続される冷媒配管相互間に除湿用絞り弁に冷媒を導入案内する冷媒配管が介挿される。 【0013】さらに、後側熱交換器部の冷媒入口部に接続される冷媒配管、後側熱交換器部出口と絞り装置入口とを連通する冷媒配管、絞り装置出口と前側熱交換器部入口を連通するU字状分流管を備えた冷媒配管および前側熱交換器部の冷媒出口部に接続される冷媒配管の直径は、室内熱交換器を構成する熱交換パイプの直径よりも太い直径である。 【0014】以上のような課題を解決するための手段を備えることにより、冷房運転、除湿運転、暖房運転のそれぞれに、冷媒の流通作用と、熱交換空気の流通作用ともに効果的に行えて、たとえ大能力機種においても充分な再熱除湿機能を発揮することができる。」 ウ 「【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、空気調和機の室内機構成を示す概略の断面図であり、図2は、空気調和機の冷凍サイクル構成および室内熱交換器における流路構成を示す説明図である。 【0016】はじめに、図1の室内機から説明する。室内機本体11は、前面パネル12と後板13とから構成される。上記前面パネル12の前面側には前部吸込み口12aが開口され、上面には上部吸込口12bが開口される。室内機本体11内には、各吸込口12a,12bに亘って対向するよう緩やかな円弧状に曲成されるエアーフイルタ(さらに概略的に示す)16と、室内熱交換器17が配置される。 【0017】室内熱交換器17は、前部吸込み口12aに対向する前側熱交換器部17Aと、上部吸込み口12bに対向する後側熱交換器部17Bとから構成され、これらで側面視で逆V字状に形成される。上記前側熱交換器部17Aは、側面視でほぼ円弧状に形成され、室内機本体の前面側に配置されている。上記後側熱交換器部17Bは、室内機本体の後面側に傾斜姿勢で配置され、それぞれ直状に形成される主熱交換器部17b1と、この主熱交換器部の上面側に平行な補助熱交換器17b2とからなる。上記前側熱交換器部17Aの前面上部には、後述する絞り装置である除湿用絞り弁5が配置される。また、前側熱交換器部17A下部には前ドレンパン18aが配置され、後側熱交換器部17Bの下部には後ドレンパン18bが配置される。前,後ドレンパン18a,18bは、上記後板13に一体に設けられる。 【0018】側面視で逆V字状に形成される室内熱交換器17の内部位置、すなわち前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bとの間には、これら熱交換器部に覆われるようにして室内送風機19が配置される。後板13において、後ドレンパン18bの下部側には送風路20が形成されており、この通風路20と連通する前面パネル12下部に吹出し口21が開口される。前ドレンパン18aは、吹出し口21の手前側端部に沿って設けられ、後ドレンパン18bは、送風路20の上部側に沿って設けられることになる。 【0019】つぎに、図2の空気調和機の全体構成と、冷凍サイクル回路および室内熱交換器の冷媒流路構成を説明する。空気調和機として、一点鎖線で概略を示す室外機本体30および室内機本体11とから構成される。上記室内機本体11内に収容配置される冷凍サイクル構成部品は、先に図1で説明したように室内熱交換器17のみである。室外機本体30内には、圧縮機1、四方切換弁2、室外熱交換器3、膨張手段である電子式自動膨張弁4等の冷凍サイクル構成部品が収容配置される。 【0020】そして、圧縮機1、四方切換弁2、室外熱交換器3、電子式自動膨張弁4、室内熱交換器17が冷媒配管6を介してヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成するよう連通される。上記前後側熱交換器部17A,17Bとも、所定間隔を存して並置される多数枚のフィンFに熱交換パイプPが蛇行状に貫通してなる。前側熱交換器部17Aと、後側熱交換器部17Bのうちの主熱交換器部17b1は、熱交換パイプPが2列並設され、補助熱交換器17b2は熱交換パイプPが1列設けられる。 【0021】熱交換空気は、上述したように前側熱交換器部17Aと、後側熱交換器部17Bとのそれぞれに導かれるようになっている。前側熱交換器部17Aに導かれる熱交換空気は、2列の熱交換パイプPと熱交換をなし、後側熱交換器部17Bに導かれる熱交換空気は補助熱交換器17b2の1列と主熱交換器部17b1の2列との、合計3列の熱交換パイプPと熱交換をなす。同図の室内熱交換器17における冷媒流路構成は、冷房運転および除湿運転サイクル時の状態を示しており、以下、これらの運転サイクル時における冷媒の流れを基準にして説明する。また、暖房運転サイクル時の冷媒流路構成は同図とは全く逆となり、したがって入口と出口の表現を逆にする必要がある。 【0022】室内熱交換器17の冷媒入口部7aは、上記後側熱交換器部17Bの熱交換空気流風上側(以下、単に、風上側と言う)に位置する補助熱交換器部17b2で、熱交換パイプPを構成するU字管Paに設けられる。このU字管Paから上下2方向に分流案内され、それぞれが主熱交換器部17b1における風上側列Kaの熱交換パイプPに連通し、さらにこの風下側に回ったあと、風下側列Kbに設けられるU字管Pbにおいて合流する。 【0023】合流した冷媒は、後側熱交換器部17Bから出て絞り装置を構成する上記除湿用絞り弁5の入口部5aに導かれる。そして、この除湿用絞り弁5から導出される冷媒は、出口部5bに接続した直後部位に設けられるU字状分流管8を介して2方向に分流案内され、それぞれが前側熱交換器部17Aに導かれる。上記前側熱交換器部17Aは、上下方向のほぼ中央部から上下に2分される流路構成をなしている。上下部それぞれの流路における風上側列Kaに、上記除湿用絞り弁5から分流案内された冷媒を導入するようになっている。 【0024】前側熱交換器部17Aにおける上下部流路では、それぞれ上下2方向に分流案内される。上部側流路では、風上側列Kaの上下端部から風下側列Kbに回り込み、ここに設けられるU字管Pcで合流する。下部側流路においても、風上側列Kaの上下端部から風下側列Kbに回り込み、ここに設けられるU字管Pdで合流する。前側熱交換器部17Aにおける上部側流路と下部側流路でそれぞれ合流し、かつ出口部7b,7bから導出される冷媒は、所定の部位において合流して上記四方切換弁2に導かれるようになっている。 【0025】この室内熱交換器17の冷媒流路構成の特徴として、後側熱交換器部17Bの冷媒入口部7aから冷媒が導入された直後に2流路に分流され、そのあと合流して除湿用絞り弁5に導かれる。さらに、この除湿用絞り弁5から導出され、4流路に分流されて出口部7b,7bに至る、いわゆる2-4パス(流路)を備えている。4流路の内容は、除湿用絞り弁5を出てから前側熱交換器部17Aの上部側流路と下部側流路へ導かれる2列の並列流路が構成されるうえに、上下部側流路のそれぞれにおいて、上下に2分される2つの並列流路となっていて、結局、合計4つの並列流路となる。 【0026】このようにして構成される空気調和機であり、冷房運転サイクル時は、圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒ガスが四方切換弁2を介して室外熱交換器3に導かれ、凝縮液化する。この液冷媒は電子自動膨張弁4で断熱膨張化し、室内熱交換器17に導かれて後述するように蒸発する。室内機本体11内では、室内送風機19が駆動され、室内空気を前部吸込口12aと上部吸込口12bから本体11内に吸込み、室内熱交換器17を流通させて熱交換パイプPを導かれる冷媒と熱交換する。熱交換した後の熱交換空気は、送風路20に案内され吹出口21から室内へ吹出され、冷房作用をなす。 【0027】除湿運転サイクル時は、冷房運転サイクル時と全く同一の冷媒流路を構成する。そして、除湿用絞り弁5が絞り作用を行うことで、この絞り弁5の上流側である後側熱交換器部17Bが冷媒凝縮作用をなし、下流側である前側熱交換器部17Aが冷媒蒸発作用をなす。すなわち、除湿用絞り弁5が後側熱交換器部17Bと前側熱交換器部17Aを凝縮器と蒸発器とに切り分けることとなり、再熱除湿機能を得られる。室内の湿気が除去され乾燥化する。暖房運転サイクル時は、冷房運転と除湿運転とは全く逆の冷媒流路を構成する。圧縮機1から四方切換弁2を介して室内熱交換器17に導かれた冷媒は、前側熱交換器部17Aの上下部側流路に分流され、それぞれ並列流路を構成して除湿用絞り弁5を通過し、さらに後側熱交換器部17Bに導かれる。 【0028】図7は、冷房運転サイクル時と、暖房運転サイクル時および除湿運転サイクル時における冷媒温度と空気温度の関係を示している。冷房運転サイクル時のみ説明すると、除湿用絞り弁5の上流側である後側熱交換器部17Bでは、冷媒が風上側列Kaを気液二相状態で導通され熱交換空気との熱交換にともなって温度低下する。冷媒が後側熱交換器部17Bの風下側列Kbを導通する間にも気液二相割合が変化し、さらに冷媒温度が低下する。 【0029】絞り弁5の下流側である前側熱交換器部17Aにおいて、この風上側列Kaに冷媒が導かれるが、このときもなお冷媒の気液二相割合の変化が継続し、さらに温度低下がある。前側熱交換器部17Aの風下側列Kbに冷媒が導かれると、冷媒の気液二相割合は変化し、さらに温度低下がある。暖房運転と、除湿運転サイクル時には、特に詳細な説明は省略するが、前側と後側のそれぞれの熱交換器部17A,17Bにおいて、図に示すような冷媒の状態変化があり、温度変化がある。 【0030】また、冷房運転サイクル時では、室内側熱交換器17において冷媒が液相からガス相に変化するにしたがって、冷媒流路構成が後側熱交換器部17Bの2列から前側熱交換器部17Aの4列になるので、冷媒の流通圧力が低減する。暖房運転サイクル時には、室内側熱交換器17において冷媒がガス相から液相に変わるにしたがって、冷媒流路構成が前側熱交換器部17Aの4列から後側熱交換器部17Bの2列になる。すなわち、冷媒の密度に対応した冷媒流路となって、流通抵抗が低減する。 【0031】また、冷房運転サイクル時に、室内側熱交換器17において冷媒の流れが風上側列Kaの熱交換パイプPから風下側列Kbの熱交換パイプPに移るよう構成されているため、冷媒圧力が比較的高い風上側列Kaから、これよりも低くなる風下側列Kbに導通していくにつれて、冷媒温度が円滑に低下する。同時に、室内熱交換器17を流通する熱交換空気も熱交換にともなって温度低下があるので、熱交換空気の風上側から風下側まで冷媒との温度差を比較的大きくとることができ、熱交換作用が効率よく行われる。 【0032】また、暖房時においては、冷媒が風下側列Kbの熱交換パイプPから風上側列Kaの熱交換パイプPに導かれるよう構成されているため、圧力の比較的高い風下側列Kbから圧力の低くなる風上側列Kaに導かれるにつれて冷媒温度が低下する。同時に、室内熱交換器17を流通する熱交換空気も熱交換にともなって温度上昇するので、熱交換空気の風上側から風下側まで冷媒との温度差を比較的大きくとることができ、熱交換作用が効率よく行われる。」 (2)刊行物1の図1、2、5及び6の記載 刊行物1には、次の図1、2、5及び6が記載されている。 ア 「 」 イ 「 」 ウ 「 」 エ 「 」 (3)上記(1)及び(2)から分かること ア 上記(1)アないしウ(特に、段落【0001】、【0011】及び【0015】ないし【0018】)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、刊行物1には、室内熱交換器17が記載されていることが分かる。 イ 上記(1)イ及びウ(特に、段落【0011】、【0017】及び【0020】)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、刊行物1には、複数のフィンFが並ぶ前側熱交換器部17Aと、複数のフィンFが並ぶ後側熱交換器部17Bと、を有することが分かる。 ウ 上記(1)イ及びウ(特に、段落【0011】、【0017】及び【0018】)において、室内熱交換器17が、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bとで側面視で逆V字状に形成されることが記載され、また、図1及び2の記載から、前側熱交換器部17Aの上側端部と後側熱交換器部17Bの上側端部とが隣接していることが見て取れる。 エ 上記(1)ウ(特に、段落【0020】)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、前側熱交換器部17A及び前記後側熱交換器部17Bにおける多数枚のフィンFを貫通する部分の熱交換パイプP(以下、多数枚のフィンFを貫通する部分の熱交換パイプPを単に「熱交換パイプP」という。)が複数示されており、前側熱交換器部17A及び後側熱交換器部17BのフィンFを貫通するように配置される複数の熱交換パイプPを有することが分かる。 オ 上記(1)ウ(特に、段落【0020】ないし【0025】)及び図2の記載によれば、ヒートポンプ式の冷凍サイクルが暖房運転サイクル時には、圧縮機1から吐出され、四方切換弁2を経て冷媒配管6を通り、上方の冷媒配管6eに分岐した冷媒が、前側熱交換器部17AのU字管Pcで上方の出口部7bに分岐して風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPに流入し、風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP、風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプPを経て風上側列kaの上から4番目の熱交換パイプPから流出し、出口冷媒配管6c、U字状分流管8、出口冷媒配管6b、出口部5bを経て除湿用絞り弁5に導入され、除湿用絞り弁5から入口部5a、冷媒配管6a、U字管Pbを経て後側熱交換器部17Bの主熱交換器部17b1の風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPに流入し、主熱交換器部17b1の風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP、風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプPを経て風上側列kaの上から2番目の熱交換パイプPから流出し、後側熱交換器部17Bの補助熱交換器部17b2の上から1番目の熱交換パイプPに流入し、上から2番目の熱交換パイプPから流出する冷媒流路に着目すると、次のことが分かる。 (ア)熱交換パイプPは、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを還流する冷媒の冷媒配管6eが接続される前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPを含むこと。 (イ)熱交換パイプPは、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP及び風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプPが前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPよりも前側熱交換器部17Aの上側端部の近くに配置され、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPから流出した冷媒が順に流れていく複数の中継する熱交換パイプPを含むこと。 (ウ)前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPと前側熱交換器部17Aの上側端部との間には、中継する熱交換パイプPが配置されていること。 (4)引用発明 上記(1)ないし(3)を総合して、本願発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「複数のフィンFが並ぶ前側熱交換器部17Aと、 上側端部が前記前側熱交換器部17Aの上側端部に隣接し、複数のフィンFが並ぶ後側熱交換器部17Bと、 前記前側熱交換器部17A及び前記後側熱交換器部17Bの前記フィンFを貫通するように配置される複数の熱交換パイプPと、 を有し、 前記熱交換パイプPは、 ヒートポンプ式の冷凍サイクルが暖房運転サイクル時に、前記ヒートポンプ式の冷凍サイクルを還流する冷媒の冷媒配管6eが接続される前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPと、 前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP及び風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプPが前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPよりも前側熱交換器部17Aの上側端部の近くに配置され、前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPから流出した冷媒が順に流れていく複数の中継する熱交換パイプPと、を含み、 前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPと前記前側熱交換器部17Aの上側端部との間には、前記中継する熱交換パイプPが配置されている室内熱交換器17。」 2 刊行物2 (1)刊行物2の記載事項 刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ア 「【0006】 【実施例】以下、本考案の一実施例を図1?図4に基づいて説明する。図1は室内ユニットの外観を表す斜視図、図2は同室内ユニットの内部を表す側断面図で、筐体1は本体2と、この本体2に着脱自在に被せられる前面カバー3とから成り、前面カバー3の正面パネル3aは上部で開閉自在に軸支されている。また、前面カバー3の上部には室内空気の吸込口4a,4bが設けられ、前面下部には吹出口5が形成されている。吸込口4a,4bと吹出口5との間には空気通路6が形成されており、この空気通路6内には前面カバー3の内面に沿わせて本体2寄りまで移動させることのできる着脱自在なエアーフィルタ7と、三分割された熱交換器8と、送風機(クロスフローファン)9とが配置され、熱交換器8により熱交換された空気は送風機9により吹出口5に送られ、室内への風向は風向板10によって調節されるようになっている。 【0007】熱交換器8は水平方向に三分割され、隣接する二つが逆V字形に形成されたもので、その一つを本体2側に向け、他を前面カバー3側に向けて配置している。送風機9は逆V字形に形成された熱交換器8の下部中央に設けている。このような配置であれば送風機9と三分割された各熱交換器との距離差が少なくなり熱交換器8を通過する空気の分布(風速分布)を良くすることができると共に、筐体1を小型化することができるからである。」 イ 「【0009】ところで、図示のように形成された熱交換器8では、その分割面が開放されて熱交換されない空気が通過し、熱交換率を低下させるため、無駄な空気の通過を防止するシールド板14を設ける必要があるが、本実施例では、このシールド板14を図3および図4に示すような形状のものにした。これらは何れも樹脂成形品で、逆V字形に形成された熱交換器8の分割面に沿わせて被せられるようになっており、下部には熱交換器8の配管(U字管)15に係止させるための複数の係止片16が所定の間隔で両側に設けられている。」 (2)刊行物2の図2ないし4の記載 ア 「 」 イ 「 」 ウ 「 」 (3)刊行物2記載の技術 上記(1)及び(2)によれば、刊行物2には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認める。 「室内ユニットの逆V字状で上部が分割された熱交換器において、分割面が解放されて熱交換されない空気が通過し、熱交換率を低下することがないように、無駄な空気の通過を防止する樹脂成形品であるシールド板を前側の熱交換器の上側端部と後側の熱交換器の上側端部の隙間を塞ぐように設ける技術。」 3 刊行物3 (1)刊行物3の記載事項 刊行物3には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、冷凍サイクルに用いられる冷媒として、HFC冷媒を複数混合してできる高圧冷媒を用いた空気調和機に関する。 【0002】 【従来の技術】空気調和機の冷凍サイクルに用いられる冷媒は、従来、CFC(クロロフルオロカーボン)12(R12とも呼ばれる)や、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)22(R22とも呼ばれる)が用いられてきたが、大気圏で科学的に安定したオゾン層を破壊する虞れがあって、将来生産が全廃、もしくは原則廃止に至っている。 【0003】このような事情から、これらの特定フロンまたは指定フロンに代わる新たな冷媒が求められていて、オゾン層破壊がないことを中心として新代替え物質の開発を促進した結果、塩素原子を含まないHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒の採用が考えられている。 【0004】HFC冷媒のうちで、空気調和機の冷凍サイクルに最適な冷媒として、R32冷媒(ジフルオロメタン)とR125冷媒(ペンタフルオロメタン)を、それぞれ50%づつの割合で混合した冷媒である。」 イ 「【0058】なお、上述した実施の形態では、冷凍サイクルの冷媒としてR32とR125のHFC混合冷媒を用いたが、R32を45wt%以上含むもの、R32とR125が80wt%以上のもの、R143aとR125が80wt%以上のものなどがある。」 (2)刊行物3記載の技術 上記(1)によれば、刊行物3には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物3記載の技術」という。)が記載されていると認める。 「オゾン層破壊を防止するため、冷凍サイクルの冷媒として、R32冷媒を45wt%以上含むもの(例えば、R32冷媒(ジフルオロメタン)とR125冷媒(ペンタフルオロメタン)を、それぞれ50%づつの割合で混合したもの)を採用する技術。」 ここで、刊行物3記載の技術は、R32冷媒とR125冷媒を、それぞれ50%づつの割合で混合したものが刊行物3に例示されていることを考慮すると、R32冷媒を50%以上含むことが想定されているといえる。 第5 対比 本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・後者の「フィンF」は、前者の「フィン」に相当し、以下同様に、「前側熱交換器部17A」は「第1フィンユニット」に、「後側熱交換器部17B」は「第2フィンユニット」に、「熱交換パイプP」は「伝熱管」に、「ヒートポンプ式の冷凍サイクル」は「冷凍サイクル」に、「暖房運転サイクル時」は「暖房運転のサイクルである場合」に、「冷媒配管6e」は「入口配管」に、「前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP」は「入口伝熱管」に、「前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP及び風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプP」は「複数の中継伝熱管」の「少なくとも1つ」に、「中継する熱交換パイプP」は「中継伝熱管」に、「室内熱交換器17」は「室内熱交換器」に、それぞれ相当する。 ・後者の「ヒートポンプ式の冷凍サイクルが暖房運転サイクル時に、前記ヒートポンプ式の冷凍サイクルを還流する冷媒の冷媒配管6eが接続される前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP」は、前者の「冷凍サイクルが暖房運転のサイクルである場合に、前記冷凍サイクルを還流し、ジフルオロメタン(CH_(2)F_(2))であるR32を50%以上含む冷媒の入口配管が接続される入口伝熱管」に、「冷凍サイクルが暖房運転のサイクルである場合に、前記冷凍サイクルを還流し、冷媒の入口配管が接続される入口伝熱管」という限りにおいて一致する。 ・前者の「第1シール部材」は、「第1フィンユニットの上側端部と第2フィンユニットの上側端部との隙間を塞」ぐものであって、第1フィンユニットの上側端部の近くに配置されることは明らかであるから、後者の「前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から1番目の熱交換パイプP及び風上側列kaの上から1番目の熱交換パイプPが前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPよりも前側熱交換器部17Aの上側端部の近くに配置され、前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPから流出した冷媒が順に流れていく複数の中継する熱交換パイプP」は、前者の「少なくとも1つが前記入口伝熱管よりも前記第1シール部材の近くに配置され、前記入口伝熱管から流出した前記冷媒が順に流れていく複数の中継伝熱管」に、「少なくとも1つが入口伝熱管よりも第1フィンユニットの上側端部の近くに配置され、前記入口伝熱管から流出した冷媒が順に流れていく複数の中継伝熱管」という限りにおいて一致する。 ・後者の「前記前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプPと前記前側熱交換器部17Aの上側端部との間には、前記中継する熱交換パイプPが配置されている」は、前者の「前記入口伝熱管と前記第1シール部材との間には、前記入口伝熱管の熱が前記第1シール部材に伝わることを抑制するために、前記中継伝熱管が配置されている」に、「入口伝熱管と第1フィンユニットの上側端部又はその近くとの間には、中継伝熱管が配置されている」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、 「複数のフィンが並ぶ第1フィンユニットと、 上側端部が前記第1フィンユニットの上側端部に隣接し、複数のフィンが並ぶ第2フィンユニットと、 前記第1フィンユニット及び前記第2フィンユニットの前記フィンを貫通するように配置される複数の伝熱管と、 を有し、 前記伝熱管は、 冷凍サイクルが暖房運転のサイクルである場合に、前記冷凍サイクルを還流し、冷媒の入口配管が接続される入口伝熱管と、 少なくとも1つが前記入口伝熱管よりも前記第1フィンユニットの上側端部の近くに配置され、前記入口伝熱管から流出した冷媒が順に流れていく複数の中継伝熱管と、を含み、 前記入口伝熱管と前記第1フィンユニットの上側端部又はその近くとの間には、前記中継伝熱管が配置されている室内熱交換器。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明は、「前記第1フィンユニットの前記上側端部と前記第2フィンユニットの前記上側端部との隙間を塞ぎ、樹脂又はゴムによって形成されている第1シール部材」を有し、複数の中継伝熱管の「少なくとも1つが前記入口伝熱管よりも前記第1シール部材の近くに配置され」、「前記入口伝熱管と前記第1シール部材との間には、前記入口伝熱管の熱が前記第1シール部材に伝わることを抑制するために、前記中継伝熱管が配置されている」のに対して、引用発明は、前側熱交換器部17Aの上側端部と後側熱交換器部17Bの上側端部の隙間を塞ぎ、樹脂又はゴムによって形成されているシール部材を有しているか不明であり、当該シール部材と、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)及び中継する熱交換パイプP(中継伝熱管)との位置関係も不明である点。 [相違点2] 「冷媒」に関し、本願発明は、「ジフルオロメタン(CH_(2)F_(2))であるR32を50%以上含む冷媒」であるのに対して、引用発明は、冷媒の特定がされていない点。 第6 判断 1 相違点1について 上記相違点1について検討する。 刊行物2記載の技術は、「室内ユニットの逆V字状で上部が分割された熱交換器において、分割面が解放されて熱交換されない空気が通過し、熱交換率を低下することがないように、無駄な空気の通過を防止する樹脂成形品であるシールド板を前側の熱交換器の上側端部と後側の熱交換器の上側端部の隙間を塞ぐように設ける技術。」であるところ、刊行物1には、「本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、冷房運転、除湿運転、暖房運転のそれぞれに、冷媒の流通作用および熱交換空気の流通作用をともに効率よく行え」(上記第4の1(1)イの段落【0010】)という記載及び「暖房時においては、冷媒が風下側列Kbの熱交換パイプPから風上側列Kaの熱交換パイプPに導かれるよう構成されているため、・・・熱交換空気の風上側から風下側まで冷媒との温度差を比較的大きくとることができ、熱交換作用が効率よく行われる。」(上記第4の1(1)イの段落【0032】)という記載があることから理解できるように、引用発明においても、熱交換率の低下を抑制することは内在する課題であるから、逆V字状で上部が分割された熱交換器である引用発明に刊行物2記載の事項を適用することは、当業者にとって格別困難ではない。 そして、引用発明に刊行物2記載の事項を適用することに伴い、引用発明は、前側熱交換器部17A(本願発明の「第1フィンユニット」に相当。以下、括弧内は同様。)の上側端部と後側熱交換器部17B(第2フィンユニット)の上側端部との隙間を塞ぎ、樹脂によって形成されているシールド板(第1シール部材)を有するものとなるところ、複数の中継する熱交換パイプP(中継伝熱管)の少なくとも1つが前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)よりもシールド板(第1シール部材)の近くに配置され、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)とシールド板(第1シール部材)との間には、中継する熱交換パイプP(中継伝熱管)が配置されたものとなる。 また、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)とシールド板(第1シール部材)との間に、中継する熱交換パイプP(中継伝熱管)が配置されたものとなることで、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)の熱がシールド板(第1シール部材)に至るまでの間に放熱されることから、前側熱交換器部17Aの風下側列kbの上から2番目の熱交換パイプP(入口伝熱管)の熱がシールド板(第1シール部材)に伝わることが抑制されることは明らかである。 そうすると、引用発明において、刊行物2記載の技術に基づいて、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 相違点2について 上記相違点2について検討する。 上記第4の3(2)に示した刊行物3記載の技術にみられるように、オゾン層破壊を防止するため、冷凍サイクルの冷媒として、R32冷媒を50%以上含むものを採用することは、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)である。 一方、冷凍サイクルにおいて、冷媒として、オゾン層破壊を防止するものを採用することは、本願の出願前に普遍的な課題であり、ヒートポンプ式の冷凍サイクルに関する引用発明においても内在する課題であるから、引用発明に周知技術を適用することは、当業者にとって格別困難ではない。 そうすると、引用発明において、周知技術に基づいて、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 3 効果について そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 4 平成30年9月3日に提出された意見書における請求人の主張について (1)請求人は、平成30年9月3日に提出された意見書において、本願発明について概ね次の主張をする。 「熱交換器において、高温になりやすいR32を含む冷媒が冷凍サイクルを還流している場合、二つのフィンユニットの上側端部同士を塞ぐ位置に、樹脂によって形成されているシールド板(シール部材)を配置することは、当該シール部品が冷媒の高温に起因して劣化しやすくなることから、当業者が通常は行わない設計であり、むしろ当業者が避けようとする設計です。また、フィンユニットの上側端部同士を塞ぐ位置にシール部品を配置しても、R32を含む冷媒の高温に起因して、伝熱管から熱がシール部材に伝わって、シール部材の劣化が生じます。このため、刊行物1に記載の発明における熱交換率の低下を抑制するという課題を解決することもできません。 したがって、刊行物1に記載の発明に、刊行物2、3(当審注:当審で通知した拒絶理由で引用した刊行物8を審決では刊行物3とした。)に記載の技術を適用することを阻害する事情があるといえます。」 (2)しかしながら、「高温になりやすいR32を含む冷媒が冷凍サイクルを還流している場合、二つのフィンユニットの上側端部同士を塞ぐ位置に、樹脂によって形成されているシールド板(シール部材)を配置することは、当該シール部品が冷媒の高温に起因して劣化しやすくなる樹脂によって形成されているシールド板(シール部材)を配置することは、当該シール部品が冷媒の高温に起因して劣化しやすくなる」という問題があるとしても、刊行物2記載の技術でも、暖房運転時に冷媒が高温となるので、程度の差こそあれ、高温の熱の問題は考慮されるものといえ、シールド板を冷媒の高温に起因する劣化が生じない程度の耐熱性を有する樹脂により形成することで当該問題は解決できるのであるから、引用発明に、刊行物2記載の技術及び刊行物3に例証される周知技術を適用することを阻害する事情があるとはいえず、請求人の主張は採用することができない。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第7 むすび 上記第6のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-10-02 |
結審通知日 | 2018-10-09 |
審決日 | 2018-10-23 |
出願番号 | 特願2013-151090(P2013-151090) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正浩 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
槙原 進 莊司 英史 |
発明の名称 | 室内熱交換器、室内機、室外熱交換器、室外機、及び空気調和機 |
代理人 | 木村 満 |
代理人 | 美恵 英樹 |
代理人 | 八島 耕司 |