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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1347002
審判番号 不服2018-4586  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-05 
確定日 2018-12-13 
事件の表示 特願2012-275426「対象物に対する水素ガスの溶解方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月30日出願公開、特開2014-118191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月18日の出願であって、平成28年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月23日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年6月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成29年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、その後平成29年12月27日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成30年4月5日に本件拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、平成29年8月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「水素ガス透過性材料からなる密閉容器内に対象物を収容した既製品に対し、当該対象物に水素ガスを溶解させると共に、水素ガスを溶解させた状態を維持するための方法であって、
水素ガスが充填された密封状態の袋内に、上記対象物が上記密閉容器ごと収容されており、
上記袋は少なくとも、上記密閉容器よりも水素ガスのバリア性が高い材料からなり、
上記水素ガスは少なくとも、大気圧よりも高い圧力であって、上記密閉容器内の圧力よりも高い圧力で上記袋内に充填され、
上記袋内に充填された水素ガスが上記密閉容器を透過して上記対象物に溶解する、
ことを特徴とする対象物に対する水素ガスの溶解方法。」

2 引用例
(1) 引用例
上記平成29年6月26日付けで通知した最後の拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-177242号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体機能の維持向上や疾病・疾患の予防または治療等を意図して生体に投与される水素含有生体適用液は、理化学的純度の保証や菌・微生物対策などの観点から、厳格な液質管理が要求される。そのため、製造工程を完了して生体適用液が封入された容器を開封すると、その液質保証性能が担保できないという問題があった。したがって、容器を開封することなく、容器の外側から水素を外挿する手段が望ましい。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水素を含有する経口生体適用液を、生体適用液が封入された容器を開封することなく製造できる製造方法及び製造装置を提供することである。」

(イ)「【0015】
水素貯蔵器とは、外部から器内に供給される水素、または貯蔵器自体が備える手段を通じて器内に供給される水素を一定時間保持することのできる容器全般を示す。水素の減衰分を考慮して水素を供給することも可能であるが、供給された水素をより長時間保持するためには、基本的にガス透過性が相対的に低い容器が望まれる。同様に、器内に供給された水素が大気中へ散逸することを防ぐため、開閉式の上蓋などにより必要に応じて器内を閉鎖又は密閉できるよう設計されていることが望ましい。また、水素の生体適用液への透過または浸透効率を高めるために、あるいは生体適用液の溶存水素濃度を選択するために、加圧(圧力調整)装置、冷却(温度調整)装置、水素濃度調整装置(あるいはそのための指示書)、浸漬/曝露時間調整装置(あるいはそのための指示書)が備えられていることが望ましい。なお、水素貯蔵器を加圧する場合は、1.0気圧以上、好ましくは1.2気圧以上、より好ましくは1.5気圧以上、特に好ましくは2.0気圧以上の圧を加えることが望ましい。」

(ウ)「【0026】
またそこから敷衍して、発明者等の着想は、医療の現場に限らず、例えば生体適用液の製造工場においても、製品のパッケージングが終了した工程の後工程において、本発明の非破壊的水素含有法を用いれば、既に市販されている全ての生体適用液に対して、それが本来的に有する効能や機能に加えて、水素分子に由来する新たな機能を追加的に付与することができるというところにまで及んでいる。製品出荷後の流通過程における水素分子の減衰は、上述のように、製品を冷凍して出荷するか、あるいは後述のように、生体適用液の容器を水素難透過性の外装袋でカバーする等の工夫を通じて解消できる。
【0027】
すなわち、本発明によれば、既存の製造工程に手を加えることなく容易に、生体適用液に水素を含有させることができる。言い換えれば、薬局方等の規格に基づき厳格な管理下で製造される内容物(生体適用液)に一切手を加えることなく、容器の外側から、水素という生体に安全なガスを極微量(1リットルあたり、数マイクログラム?数ミリグラムオーダー)送り込むだけで、内容物本来の効能に新たな効能を付加することができる。
また、水素含有生体適用液を医療の現場等で使用時に調製する場合は、流通過程や保存期間における水素の浪費の心配がない。
さらに、既に水素分子を含有している生体適用液に対して、水素分子を補うことを目的に本発明を用いることができる。」

(エ)【0029】
[実施例1]
生体適用液として、500mL容量の輸液バッグに入った市販の生理食塩水(大塚製薬株式会社製、『日本薬局方生理食塩液 大塚生食注』)を使用した。水素貯蔵器として、2L容量のポリプロピレン製の容器を使用した。この容器に、DH濃度1.2mg/Lの水素含有水を満たした後、生理食塩水の入った輸液バッグを浸漬させ容器上蓋を閉め放置した。水素含有水は1時間毎に同DH濃度の新しい水に交換した。5時間経過後に、水素貯蔵器から輸液バッグを取りだし開封するとともに、生理食塩水のDH濃度及び電気伝導度(EC)を測定した。その際、水素含有水のDH濃度も測定した。なお水素含有生体適用液の製造装置の詳細については後述する。
生理食塩水のDH濃度は、0.6mg/L、ECは、1.2S/mであった。
水素含有水のDH濃度は、1.2mg/Lであった。
【0030】
[実施例2]
生体適用液として、500mL容量の輸液バッグに入った市販の生理食塩水(大塚製薬株式会社製、『日本薬局方生理食塩液 大塚生食注』)を使用した。水素貯蔵器として、2L容量のポリプロピレン製の容器を使用した。容器に、生理食塩水の入った輸液バッグを設置するとともに、ガス供給用の容器開口部よりチューブを通して、水素ガスを100mL/分の流速で通気させた。5時間経過後に、水素貯蔵器から輸液バッグを取りだし開封するとともに、生理食塩水のDH濃度を測定した。
生理食塩水のDH濃度は、0.46mg/Lであった。
【0031】
[実施例3]
生体適用液として、500mL容量の輸液バッグに入った市販の生理食塩水(大塚製薬株式会社製、『日本薬局方生理食塩液 大塚生食注』)を使用した。水素貯蔵器として、2L容量のポリプロピレン製の容器を使用した。この容器に、DH濃度0.9mg/Lの水素含有水を満たした後、生理食塩水の入った輸液バッグを浸漬させ容器上蓋を閉め放置した。1時間経過後に、水素貯蔵器から輸液バッグを取りだし開封するとともに、生理食塩水のDH濃度を測定した。
生理食塩水のDH濃度は、0.18mg/Lであった。
【0032】
[実施例4]
生体適用液として、500mL容量の輸液バッグに入った市販の生理食塩水(大塚製薬株式会社製、『日本薬局方生理食塩液 大塚生食注』)を使用した。水素貯蔵器として、電解水生成装置に接続された10L容量のポリプロピレン製の容器を使用した。」

(オ)「【0040】
本発明において、水素貯蔵器内の水素分子が気体として供給されるのであれ、液体として供給されるのであれ、生体適用液を水素分子へ接触させるに先立って、上記の手段や減圧などの手段を通じて、生体適用液の容器内のエアや溶存ガスを除去しておくことは望ましいことである。しかしそのなかでも、減圧などの手段を通じて、容器の外側から非破壊的に脱気することが最も望ましいことである。」

(カ)「【0049】
また、本発明は、以下のような構成をとることができる。すなわち、プラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い容器(以下、内容器)に入れられた生体適用液を内容器ごと、内容器よりも水素透過性の低いポータブルな水素貯蔵器(以下、外容器)に収容するとともに、外容器を、水素含有水など水素分子を含有する液体または気体で満たす。水素は、内容器の表面を透過し生体適用液に含有される一方、外容器に阻まれ、流通過程や保存期間においても、外界に散逸することが少ない。使用時には、外容器から生体適用液の入った内容器を取り出して使用するか、外容器と内容器をともに開封し、内容器を取り出さずにそのまま使用してもよい。」

(キ)「【0066】
・・・
[実施例16]
上述の血液保存液C液28mlを含む200mL容量のポリ塩化ビニル容器「テルモ血液バッグCPD」(テルモ株式会社製)に採血した犬の静脈血液を、その容器ごと、550mL容量のアルミパウチ容器に収容した後、ポリ塩化ビニル容器とアルミパウチ容器の間の空間を1.5ppmの溶存水素水で満たすとともに、アルミパウチ容器の開口部をヒートシールし24時間放置した。その後、アルミパウチ容器とポリ塩化ビニル容器を開封し、ポリ塩化ビニル容器中の血液製剤の溶存水素濃度を測定した。
測定には、Unisense社製溶存水素測定装置(含・H2-N (Hydrogen Needle Sensor)、PA2000(2-Channel Picoammeter)、ADC-216(2-Channel A/D Converter))を用いた。
血液製剤の溶存水素濃度は、600ppbであった。」(「・・・」は省略を意味する。)

(2) 引用例に記載された発明
上記(ウ)及び(カ)の記載を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「プラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い容器(以下、内容器)に入れられた製品のパッケージングが終了した工程の後工程において、既に販売されている生体適用液を内容器ごと、内容器よりも水素透過性の低いポータブルな水素貯蔵器(以下、外容器)に収容するとともに、外容器を、水素分子を含有する気体で満たし、水素が、内容器の表面を透過し生体適用液に含有される一方、外容器に阻まれ、流通過程や保存期間においても、外界に散逸することが少なく、使用時には、外容器から生体適用液の入った内容器を取り出して使用するか、外容器と内容器をともに開封し、内容器を取り出さずにそのまま使用する方法。」

3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「プラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い容器」は、その機能から、本願発明の「水素ガス透過性材料からなる密閉容器」に相当し、同様に、「生体適用液」は「対象物」に、「水素分子を含有する気体」は「水素ガス」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「外容器」と本願発明の「袋」とは、水素貯蔵器の限りで一致する。

(イ)引用発明の「プラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い容器(以下、内容器)に入れられた製品のパッケージングが終了した工程の後工程において、既に販売されている生体適用液を内容器」は、水素透過性が中程度または高い内容器に生体適用液を収納したものといえるから、引用発明の当該記載と本願発明の「水素ガス透過性材料からなる密閉容器内に対象物を収容した既製品」とは、「水素ガス透過性材料からなる密閉容器内に対象物を収容した品」の限りで一致する。

(ウ)引用発明の「プラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い容器(以下、内容器)に入れられた生体適用液を内容器ごと、内容器よりも水素透過性の低いポータブルな水素貯蔵器(以下、外容器)に収容するとともに、外容器を、水素分子を含有する気体で満た」すことは、水素分子を含有する気体で満たされた外容器内に、生体適用液が内容器ごと収納されていることであって、水素分子を含有する気体は、密封しないと気体が散逸することが技術常識であり、引用発明が「外容器に阻まれ、流通過程や保存期間においても、外界に散逸することが少なく」、「外容器と内容器をともに開封し」と特定されていることからも、外容器は密封状態であるといえるから、引用発明の当該記載と本願発明の「水素ガスが充填された密封状態の袋内に、上記対象物が上記密閉容器ごと収容されて」いることとは、「水素ガスが充填された密封状態の水素貯蔵器に、上記対象物が上記密閉容器ごと収容されている」ことの限りで一致する。

(エ)引用発明の「内容器よりも水素透過性の低いポータブルな水素貯蔵器(以下、外容器)」である態様と、本願発明の「上記袋は少なくとも、上記密閉容器よりも水素ガスのバリア性が高い材料からな」る態様とは、「上記水素貯蔵器は少なくとも、上記密閉容器よりも水素ガスのバリア性が高い材料からな」る態様の限りで一致する。

(オ)引用発明の「水素が、内容器の表面を透過し生体適用液に含有される」態様は、外容器内の水素分子を含有する気体が、内容器の表面を透過して生体適用液に溶解することであるから、引用発明の当該記載と本願発明の「上記袋内に充填された水素ガスが上記密閉容器を透過して上記対象物に溶解する」態様とは、「上記水素貯蔵器内に充填された水素ガスが上記密閉容器を透過して上記対象物に溶解する」態様の限りで一致する。

(カ)引用発明の「外容器に阻まれ、流通過程や保存期間においても、外界に散逸することが少なく、使用時には、外容器から生体適用液の入った内容器を取り出して使用するか、外容器と内容器をともに開封し、内容器を取り出さずにそのまま使用する」ことは、生体適用液に水素分子を含有する気体を溶解させた後、流通、保存し、使用されるまでの間、生体適用液に水素分子を含有する気体を溶解させた状態を維持することであるから、引用発明の「水素が、内容器の表面を透過し生体適用液に含有される一方、外容器に阻まれ、流通過程や保存期間においても、外界に散逸することが少なく、使用時には、外容器から生体適用液の入った内容器を取り出して使用するか、外容器と内容器をともに開封し、内容器を取り出さずにそのまま使用する方法」は、本願発明の「当該対象物に水素ガスを溶解させると共に、水素ガスを溶解させた状態を維持するための方法」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「水素ガス透過性材料からなる密閉容器内に対象物を収容した品に対し、当該対象物に水素ガスを溶解させると共に、水素ガスを溶解させた状態を維持するための方法であって、
水素ガスが充填された密封状態の水素貯蔵器内に、上記対象物が上記密閉容器ごと収容されており、
上記水素貯蔵器は少なくとも、上記密閉容器よりも水素ガスのバリア性が高い材料からなり、
上記水素貯蔵器内に充填された水素ガスが上記密閉容器を透過して上記対象物に溶解する、
ことを特徴とする対象物に対する水素ガスの溶解方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>
水素ガス透過性材料からなる密閉容器内に対象物を収容した品が、本願発明では、「既製品」であるのに対して、引用発明では、「既に販売されている生体適用液を」入れた「内容器」であるものの、「既製品」とは特定されていない点。
<相違点2>
水素貯蔵器が、本願発明では、「袋」であるのに対して、引用発明では、外容器である点。
<相違点3>
本願発明では、「上記水素ガスは少なくとも、大気圧よりも高い圧力であって、上記密閉容器内の圧力よりも高い圧力で上記袋内に充填され、」ているのに対して、引用発明では、外容器内の圧力が不明である点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
本願発明の「既製品」について、本願明細書の【0037】に「このように、袋2内に充填された水素ガスが、密閉容器5を透過して対象物4中に溶解し続けるため、一度、密閉容器5内に対象物4を密閉してしまった状態からでも、対象物4中の水素ガスを溶解させると共に、その溶存度を高い状態に維持することができる。そのため、密閉容器5内に密閉された既製品の飲料や化粧品等に対しても、一旦開栓、開封等することなく、水素ガスを溶解させることができるので、内容物の品質を損なうことなく水素ガスを溶解させることができて便利である。」と記載されているから、引用発明の「既に販売されている生体適用液を」入れた「内容器」は、本願発明の「対象物を収容した既製品」に相当するといえる。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。
仮に、実質的な相違点であるとして、以下検討する。
引用例には、「水素を含有する経口生体適用液を、生体適用液が封入された容器を開封することなく製造」すること(【0005】)が記載されており、実施例1?4(【0029】?【0032】)に内容器として、「生体適用液として、500mL容量の輸液バッグに入った市販の生理食塩水(大塚製薬株式会社製、『日本薬局方生理食塩液 大塚生食注』)」を使用することが記載されていることを参酌すると、引用発明において、生体適用液を入れたプラスチックバッグなど水素透過性が中程度または高い内容器として、既製品を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
引用例の【0015】には、「水素貯蔵器とは、外部から器内に供給される水素、または貯蔵器自体が備える手段を通じて器内に供給される水素を一定時間保持することのできる容器全般を示す。」と記載され、実施例16には、水素貯蔵器として「アルミパウチ容器」を用いることが記載されている。
そして、水素を一定時間保持することのできる容器として、袋状の容器は、周知(例えば、拒絶理由に示した特開2008-110811号公報(以下「周知例1」という。)の「アルミ箔を含む積層フィルムで製造されたパウチ」、【0040】?【0043】、拒絶理由に示した登録実用新案第3158888号公報(以下「周知例2」という。)の「ガスバリヤー袋」、【0014】、【0018】参照。)であるから、引用発明において、外容器として袋状のものを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3について>
引用例には、【0015】に「水素貯蔵器を加圧する場合は、1.0気圧以上、好ましくは1.2気圧以上、より好ましくは1.5気圧以上、特に好ましくは2.0気圧以上の圧を加えることが望ましい。」、及び【0040】に「生体適用液を水素分子へ接触させるに先立って、上記の手段や減圧などの手段を通じて、生体適用液の容器内のエアや溶存ガスを除去しておくことは望ましいことである。しかしそのなかでも、減圧などの手段を通じて、容器の外側から非破壊的に脱気することが最も望ましいことである。」と記載されており、外容器内の圧力を内容器内の圧力より高くすることが示唆されているといえる。
また、周知例1には、水素ガスを含む外側密閉容器の圧力を、内側密閉容器より高く加圧する点が記載されており(【請求項1】、【請求項2】、【0050】等)、さらに、引用発明は、内容器内の生体適用液に外容器内の水素分子を含有する気体が溶解させようとするものであり、当該気体の溶解度は、溶解させようとする気体の圧力が高いほど大きくなることは技術常識であるから、外容器内の圧力を内容器内の圧力より高く設定することで生体適用液の溶存水素量を高くしようとすることに格別の困難性は認められない。
したがって、引用発明において、上記引用例記載事項、周知例1記載事項及び技術常識に基いて、上記相違点3に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願発明の効果について>
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明、引用例記載事項、周知例1記載事項及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用例記載事項、周知例1記載事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-18 
結審通知日 2018-10-19 
審決日 2018-10-31 
出願番号 特願2012-275426(P2012-275426)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 蓮井 雅之
佐々木 正章
発明の名称 対象物に対する水素ガスの溶解方法  
代理人 粕川 敏夫  
代理人 清水 喜幹  

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