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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1347006
審判番号 不服2016-13910  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2018-12-05 
事件の表示 特願2013-230965「投影露光システム用の少なくとも1つの磁石を有するアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 64017〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年2月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月10日、ドイツ国)を国際出願日とする出願である特願2011-548661号の一部を、平成25年11月7日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月12日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年6月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年12月17日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、平成28年5月10日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対して、平成28年9月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において、平成29年5月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成30年6月14日付けで意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明は、平成30年6月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(これら請求項1?14に係る発明を、それぞれ、以下、「本願発明1」?「本願発明14」という。)

「 【請求項1】
投影露光システム用のアクチュエータであって、可動である少なくとも1つのマニピュレータ表面(23)と、前記マニピュレータ表面を作動させる少なくとも1つの磁石及びコイルとを備えるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータは、前記コイル(15)を収容するコイル板(11)と、前記磁石を取り付けるための磁石保持板(12)を含み、前記磁石保持板(12)は、前記マニピュレータ表面を備え、前記磁石は前記マニピュレータ表面に取り付けられ、前記コイル板(11)と前記磁石保持板(12)とは、電流が前記コイルを流れると、前記磁石を、したがって前記マニピュレータ表面を動かすことができるように、互いに接続され、
前記磁石保持板は渦巻きばねをさらに備え、
前記マニピュレータ表面は、前記渦巻きばねの一端に対して接続されており、
前記渦巻きばねの他端が、前記磁石保持板(12)の取付領域に対して接続されており、
前記マニピュレータ表面、前記渦巻きばね、および、前記取付領域は、一体的に形成されているか、または、追加の接続材料なしで材料の連続性を保った接続により強固に結合される、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
投影露光システム用のアクチュエータであって、可動である少なくとも1つのマニピュレータ表面(23)と、前記マニピュレータ表面を作動させる少なくとも1つの磁石及びコイルとを備えるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータは、前記コイル(15)を収容するコイル板(11)と、前記磁石を取り付けるための磁石保持板(12)を含み、前記磁石保持板(12)は、前記マニピュレータ表面および磁石ハウジングを備え、前記磁石は前記磁石ハウジングにより収容されており、前記コイル板(11)と前記磁石保持板(12)とは、電流が前記コイルを流れると、前記磁石を、したがって前記マニピュレータ表面を動かすことができるように、互いに接続され、
前記磁石保持板は渦巻きばねをさらに備え、
前記磁石ハウジングは、前記渦巻きばねの一端に対して接続されており、
前記渦巻きばねの他端が、前記磁石保持板(12)の取付領域に対して接続されており、
前記磁石ハウジング、前記渦巻きばね、および、前記取付領域は、一体的に形成されているか、または、追加の接続材料なしで材料の連続性を保った接続により強固に結合される、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクチュエータにおいて、
前記マニピュレータ表面を前記磁石に対向するよう構成したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、
作動対象コンポーネントがスペーサ及びミラーであることを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、
複数の磁石を設け、該磁石の全部を完全に封入したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項6】
請求項2に記載のアクチュエータにおいて、
前記マニピュレータ表面はコーティングにより形成されてなり、
1つ又は複数の前記磁石を前記磁石ハウジング及び前記コーティングにより封入したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載のアクチュエータにおいて、
前記コーティングは耐水素拡散性であることを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のアクチュエータにおいて、
前記コーティングを複数の層で形成したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項9】
請求項6?8のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、
前記コーティングは、ニッケル、亜鉛、及び銅からなる群からの少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項10】
請求項6に記載のアクチュエータにおいて、
前記磁石ハウジング(2)を、金属、ステンレス鋼、アルミニウム、及びアルミニウム合金からなる群からの少なくとも1つの成分から形成したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項11】
請求項6に記載のアクチュエータにおいて、
前記磁石ハウジング(21)を、半導体材料、ケイ素、ケイ素合金、二酸化ケイ素、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金、及び酸化ゲルマニウムからなる群からの少なくとも1つの成分から形成したことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項12】
請求項6又は10に記載のアクチュエータにおいて、
前記磁石ハウジングの壁は、0.1mm?4mmの厚さを有することを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項13】
請求項6、10?12のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、 前記磁石ハウジングは、前記磁石に加えて閉じ込めガス体積を含むことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか1項に記載のアクチュエータにおいて、
前記取付領域の材料は、シリコンであることを特徴とする、
アクチュエータ。」


第3 当審拒絶理由
1 当審拒絶理由1は以下のとおりである。

「第1 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された発明(以下、それぞれ、順に「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成28年9月16日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次のとおりのものである。
・・・略・・・
第2 特許法第36条第6項第1号違反及び2号違反の拒絶理由
・・・略・・・
第3 特許法第36条第4項第1号違反の拒絶理由
(1)・・・略・・・
(2)発明の詳細な説明の【0052】に「DRIEドライエッチングによる環状の自由空間27の形成時に、ポット形のハウジング構造21を磁石又は磁粉22の周りに残す」としているが、【図3】をみても、ハウジング構造21の側面を残す方法は理解できるが、ハウジング構造21の底面を残す方法が明らかでない。
(3)・・・略・・・
(4)小活
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものということができず、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。」

2 当審拒絶理由2は以下のとおりである。

「1.(サポート要件)本件出願は、明細書の特許請求の範囲の下記の請求項の記載が 下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性要件)本件出願は、明細書の特許請求の範囲の下記の請求項の記載が 下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



●理由1(サポート要件)について
・請求項 1-13
・備考
・・・略・・・
●理由2(明確性要件)について
・請求項 1-13
・備考
・・・略・・・
●理由3(実施可能要件)について
・請求項2-13
・備考
本願明細書の発明の詳細な説明の【0048】?【0053】及び【図2】?【図4】に、本願の請求項2に係る発明のアクチュエータを製造する方法について記載されている。
上記の製造方法の記載において、磁石保持板12を、保護層17を設けた裏側からドライエッチング法(ディープ反応性イオンエッチング(DRIE))により処理して、ばね棒構造19の領域の材料を、ばね棒構造19の下にあるSiO_(2)保護層18まで除去することにより、自由空間27を形成する時に、ポット形のハウジング構造21を磁石又は磁粉22の周りに残すことで、封入磁石ユニット20(請求項2の「磁石ハウジング」に対応する)を形成することが記載されている。
しかしながら、上記【0048】?【0053】の記載では、上記「封入磁石ユニット20」の底部の製造方法(底部をどのように残すのか)については何ら記載がない。よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2-13に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
なお、平成29年11月16日付けで提出された意見書においては、「2-3 特許法第36条第4項第1号違反の拒絶理由について」において「DRIE等の既知の方途により、所望の領域をエッチングして除去することができます。この際、目的とする形状に応じて、例えば、エッチング速度を調節することや、エッチングのオンオフを切り替えること、さらには、ハウジング構造21の底部に該当する構造部のエッチングの際には、側壁保護膜が堆積し難いエッチング条件として、側壁をあえて「えぐる」ことができるような条件とすること等、当業者であれば実施可能な各種制御を適宜実行することで、ハウジング構造21の底部を残しつつ、エッチングを進行させることができます。」と主張されている。
しかしながら、上記の主張において「側壁保護膜」とは何か不明であり、「側壁保護膜が堆積し難いエッチング条件」、「側壁をあえて「えぐる」ことができるような条件」とは具体的にどのような条件であるのか不明である。
ドライエッチング等によって上記の「封入磁石ユニット20(磁石ハウジング)」の底部の形成をすることが可能であることが当業者にとって自明であるのならば、証拠を提示して、その点を説明する必要がある。」


第4 当審拒絶理由2について
1 当審拒絶理由2の理由3について
当審拒絶理由2の理由3は、当審拒絶理由1の「第3 特許法第36条第4項第1号違反の拒絶理由」(2)と同趣旨の拒絶理由であるところ、本願の発明の詳細な説明は、平成29年11月16日付けの手続補正により補正された請求項2?13に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないというものである。
そこで、本願の発明の詳細な説明が、平成29年11月16日付けの手続補正により補正した請求項2?13に係る発明を、さらに、平成30年6月14日付けの手続補正により補正した本願発明2?13を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かを以下、検討する。
より詳細には、本願発明2の「前記磁石を取り付けるための磁石保持板(12)」を構成する「磁石ハウジング」であって、「前記磁石は前記磁石ハウジングにより収容されており、」「前記磁石ハウジングは、前記渦巻きばねの一端に対して接続されており、」「前記磁石ハウジング、前記渦巻きばね、および、前記取付領域は、一体的に形成されているか、または、追加の接続材料なしで材料の連続性を保った接続により強固に結合される」「磁石ハウジング」について、その具体的な製造方法、特に、「磁石保持板12を、保護層17を設けた裏側からドライエッチング法(ディープ反応性イオンエッチング(DRIE))により処理して、ばね棒構造19の領域の材料を、ばね棒構造19の下にあるSiO_(2)保護層18まで除去する」(段落【0051】)ことにより、「自由空間27の形成時に、ポット形のハウジング構造21を磁石又は磁粉22の周りに残すことで、封入磁石ユニット20ができる」(段落【0052】:「ポット型のハウジング構造21」が本願発明2の「磁石ハウジング」に対応する。)と記載される製造方法について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かを以下、検討する。

2 本願の明細書及び図面の記載
本願発明2の「磁石ハウジング」に対応する「ポット型のハウジング構造21」の製造方法に関する本願の明細書及び図面の記載は以下のとおりである。(特に、関連する箇所に当審で下線を付した。)

(1)「【0029】
マニピュレータ表面及び/又は磁石ハウジング、ばね棒及び/又は磁石保持板の取付領域は、磁石取付板の固体材料、例えばシリコンウェーハから、マイクロシステム技術に従った材料パターニング技法により加工することができる。」

(2)「【0041】
図2?図4は、別の実施形態に従った投影露光システム、特にEUV投影露光システムで用いるアクチュエータの製造の断面図を示す。製造プロセスを図2?図4に示すアクチュエータは、マイクロパターニングプロセスにより、特にリソグラフィ法により製造し、アクチュエータの寸法は、マイクロ技術的大きさに限定するのではなくより大きな寸法で確実に実現することができる。例えば、アクチュエータ10により作動するミラー13のサイズは、直径又は辺長に関して最大4mmの大きさである。
【0042】
図4から明らかなように、アクチュエータ10は、4つの平面に分割することができ、第1平面をコイル板11により形成する。図示の実施形態のコイル板11は、シリコン半導体材料から形成し、マイクロ電子コイル15の取付けに用いる。マイクロ電子コイル15は、リソグラフィ堆積法によりコイル板11の表面に堆積することができる。
【0043】
コイル板11の上には、いわゆる磁石保持板12を配置し、これは、コイル15と協働してミラー13を動かすことができる、特に傾斜させることができる磁石22を備える。磁石保持板12の設計及び製造は、図2及び図3を参照して以下で詳述する。
【0044】
アクチュエータ10の第2平面を形成する磁石保持板12の上には、スペーサ14を第3平面として磁石22の反対側でマニピュレータ表面23上に設け、その上にさらに、傾斜させる移動ミラー13を配置する。
【0045】
すでに上述したように、コイル15を通る電流の流れは磁界を発生させることができ、この磁界が磁石22の磁界と相互作用して、ミラー13を傾斜させる。
【0046】
マニピュレータ表面23及びその上に配置したスペーサ14の移動度を高めるために、マニピュレータ表面23及び磁石22を、磁石保持板12の取付領域25にばね棒19を介して接続することで、ばね棒19の変形がマニピュレータ表面23及びその上に配置したスペーサ14の傾斜、及び接続したミラー13の傾斜も可能にする。
【0047】
図示の実施形態のばね棒19は、マニピュレータ表面の領域の周りで渦巻ばねとして実施する。
【0048】
アクチュエータ10のマイクロ技術製造を、図2及び図3に部分的に示す。
【0049】
図2は、初期製造段階における磁石保持板12の断面図である。この製造段階で、磁石保持板12は、ばね棒19に対応する微細構造をすでに有している。これは例えば、気相堆積による材料の対応の堆積を用いたリソグラフィ堆積法によっても製造することができる。図示の実施形態の磁石保持板12をシリコン製にすることで、ばね棒19の微細構造もシリコンから形成することができる。
【0050】
ばね棒19のパターニング層の堆積前に、不動態酸化物(passivation oxide)、例えば二酸化ケイ素を、磁石保持板12を形成するシリコンウェーハの表面上に形成して、後続のパターニングプロセスのための保護層としての役割を果たすようにすることができる。それに応じて、二酸化ケイ素保護層17を下側の特定の領域にも設けることができ、このとき後続の材料除去領域用の凹部を二酸化ケイ素領域にすでに設けておく。同様に、凹部を二酸化ケイ素層18の中央に設けることで、シリコンウェーハに空洞26を形成することができるようにし、この空洞26は、磁石又は磁粉22を収容する役割を果たす。磁粉は、純粋な粉体として、又は液体形態の懸濁液として充填し、後続のステップで乾燥又は硬化させ、必要であれば磁化することができる。図3は、磁粉又は磁石22を充填した図2からの磁石保持板12を示す。
【0051】
続いて、磁石保持板12を、保護層17を設けた裏側からドライエッチング法により処理して、ばね棒構造19の領域の材料を除去する。この目的で、例えば、ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて、シリコンをばね棒構造19の下にあるSiO_(2)保護層18まで除去することができる。これにより、自由空間27ができる。二酸化ケイ素保護層18は、これに関してドライエッチングプロセス用の停止層としての役割を果たし、続いて適当な方法により溶解することでばね棒19を露出させることができる。
【0052】
DRIEドライエッチングによる環状の自由空間27の形成時に、ポット形のハウジング構造21を磁石又は磁粉22の周りに残すことで、封入磁石ユニット20ができる。封入磁石ユニット20のカプセルハウジング21は、ばね棒19に母材の連続性を保って結合し、ばね棒19をさらに、磁石保持板12の取付領域25に母材の連続性を保って結合する。
【0053】
上側では、磁石ハウジング21をカバー要素23でシールすることができ、カバー要素23は、コーティングの形態で堆積するか又は他のハウジング部分に同様に母材の連続性を保って結合する。カバー要素23の代替として、スペーサ14を直接用いて、接続層24により、例えば共晶金属結合により得られるいわゆる結合部位を介して、カプセルハウジング21をシールすることができる。
【0054】
スペーサ14の上には、再び対応の接続層を介してミラー13を配置することができる一方で、磁石保持板12の下側には、接続層16を介して、例えば共晶金属結合によりコイル板11を配置することができる。
【0055】
マイクロ技術製造を通して、封入磁石20は、磁石保持板12に直接母材の連続性を保って結合して可動に取付けることができ、これは、磁石及びそれに接続したマニピュレータ表面を保持するための対応の接続層、例えば接着剤層等を必要とせずに行われる。こうした接続層は、特に極端紫外光の波長域で動作させる投影露光システムでは耐用寿命に関して問題となり得る。さらに、このような接続層は、剪断力の適応に関して問題となり得る。本発明の製造技法ではこれが回避されるが、それは、ばね棒及び磁石22のハウジング21を、接続手段を一切介在させずに取付領域25に母材の連続性を保って結合するからである。特に、取付領域25の領域における酸化層18を省くことができ、その結果として、気相堆積によりシリコン上に堆積したばね棒構造19のシリコンは、シリコンウェーハのシリコンに直接堆積して最適な付着状態となる。」

(3)「【図2】

【図3】

【図4】



3 本願の明細書及び図面に記載された技術事項
上記本願の明細書及び図面の記載事項(特に、段落【0050】?【0052】の下線部及び図2?4)において、当業者の技術常識をも考慮すると、「保護層17」を「ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)」のエッチングレジストとして使用して、図4に示される「自由空間27」をエッチングすると解される。すなわち、下記の図(本願の図3に、当審で、矢印と塗りつぶしを追加した図であり、以下「図3’」という。)に示されるように、「保護層17」は黒く塗りつぶした部分に形成され、「磁石保持板12を形成するシリコンウェーハ」のうちの「保護層17」が形成されていない部分が「ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)」でエッチングされ(DRIEは、異方性エッチングであるので、矢印が示す方向にエッチングされ、矢印に直交する方向にはほとんどエッチングされない。)、その結果、図3’に濃い灰色で塗りつぶした部分のみがエッチングされると解される。(なお、このことについては、請求人も、平成30年6月14日付けの意見書の【意見の内容】4.3において、「二酸化ケイ素保護層17は、シリコン製板の取付領域25および磁石ハウジング21に対応する底部に形成されます。これによって、構造化プロセス(すなわち、ドライエッチングプロセス)によりシリコン板の取付領域25および磁石ハウジング21の底部を形成するシリコン板の中央領域が除去されないようにします。」と説明している。)
すると、図4の「ポット型のハウジング構造21」の底面と「コイル板11」の上面との間の空間部分(図3’で、薄い灰色で塗りつぶした部分)は、「保護層17」がエッチングレジストとして存在しているので、上記「ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)」ではエッチングされないと解するの相当である。

【図3’】


4 判断
上記3での検討のとおり、図4の「ポット型のハウジング構造21」の底面と「コイル板11」の上面との間の空間部分は、「ディープ反応性イオンエッチング(DRIE)」ではエッチングされないところ、本願の明細書及び図面には、この部分を具体的にどのように除去するかについての記載がないことは明らかである。
請求人は、この部分の(エッチングによる)除去について、
まず、平成29年11月16日付けの意見書の【意見の内容】2-3において、
「・・・この際、目的とする形状に応じて、例えば、エッチング速度を調節することや、エッチングのオンオフを切り替えること、さらには、ハウジング構造21の底部に該当する構造部のエッチングの際には、側壁保護膜が堆積し難いエッチング条件として、側壁をあえて「えぐる」ことができるような条件とすること等、当業者であれば実施可能な各種制御を適宜実行することで、ハウジング構造21の底部を残しつつ、エッチングを進行させることができます。その結果、段落[0052]にて、「RIEドライエッチングによる環状の自由空間27の形成時に、ポット形のハウジング構造21を磁石又は磁粉22の周りに残すことで、封入磁石ユニット20ができる。」と記載されておりますように、所望形状のハウジング構造21を形成することができます。」
と説明しているが、「ハウジング構造21の底部に該当する構造部のエッチングの際には、側壁保護膜が堆積し難いエッチング条件として、側壁をあえて「えぐる」ことができるような条件とすること等、当業者であれば実施可能な各種制御を適宜実行すること」において、「側壁保護膜が堆積し難いエッチング条件として、側壁をあえて「えぐる」ことができるような条件とすること」が、具体的にどのようなエッチング方法を記載しようとしているのかは理解できない。
次に、平成30年6月14日付けの意見書の【意見の内容】4.3において、
「さらに、渦巻ばねの下の領域の材料を除去するための構造化プロセスは、意図された構造(例えば、取付領域25および磁石ハウジング21を残す構造)を形成するために、いくつかのプロセスステップにより実行することができることは、当業者には明らかです。以上のように、本願明細書の記載及び図面に基づき、磁石ハウジング21の領域に設けられた二酸化ケイ素保護層17により、磁石ハウジング21の底部を形成できることは、当業者に容易に理解できることです。」
と説明するが、「いくつかのプロセスステップ」が具体的にどのようなステップであるのかが当業者に理解できるとする主張の根拠は全く示されていない。

なお、明細書及び図面には、上記記載事項のほかに、段落【0035】?【0040】及び図1に、「カプセルハウジング2」の内部に「リング磁石1」を密封した「封入リング磁石」が記載されているが、この「封入リング磁石」を、具体的にどのようにして、「磁石保持板12」や「渦巻きばね」(「ばね棒19」)と一体的に形成するか、または、追加の接続材料なしで材料の連続性を保った接続により強固に結合して、アクチュエータを形成するのかが、本願の明細書又は図面には記載も示唆もされていないことは明らかである。

してみると、本願の明細書及び図面の記載事項並びに当業者の技術常識、さらに、請求人の意見書での主張を勘案しても、本願発明2の「前記磁石を取り付けるための磁石保持板(12)」を構成する「磁石ハウジング」であって、「前記磁石は前記磁石ハウジングにより収容されており、」「前記磁石ハウジングは、前記渦巻きばねの一端に対して接続されており、」「前記磁石ハウジング、前記渦巻きばね、および、前記取付領域は、一体的に形成されているか、または、追加の接続材料なしで材料の連続性を保った接続により強固に結合される」「磁石ハウジング」の具体的な製造方法は不明であるといわざるを得ない。

5 結論
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明2?13を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願は、その発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-09 
結審通知日 2018-07-10 
審決日 2018-07-25 
出願番号 特願2013-230965(P2013-230965)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 投影露光システム用の少なくとも1つの磁石を有するアクチュエータ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 結城 仁美  
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