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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1347021
審判番号 不服2017-6404  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-02 
確定日 2018-12-05 
事件の表示 特願2015-534942「異種混合ワイヤレス・ネットワークにおける利他的スケジューリング」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日国際公開、WO2014/056650、平成27年12月17日国内公表、特表2015-536103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年10月9日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年8月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月28日付けで拒絶査定されたところ、平成29年5月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成28年8月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 少なくとも第1のネットワーク(103)、第2のネットワーク(101)、および第3のネットワーク(105)を含むワイヤレス通信システムにおいて潜在的な干渉に対処するための方法であって、前記第3のネットワーク(105)によって、前記第1のネットワーク(103)の通信チャネルでのデータ送信がスケジューリングされる間、前記第2のネットワーク(101)の通信チャネルでのデータ送信が制限されている第1の期間の組(201)を示す第1のパターンを示す情報を受信するステップと、前記第3のネットワーク(105)によって、前記第3のネットワークの現在の負荷値を取得するステップと、前記現在の負荷値が事前に定めた負荷しきい値より低い場合に、前記第3のネットワーク(105)によって、前記第1のパターンに基づいて前記第3のネットワーク(105)の通信チャネルでデータ送信をスケジューリングするステップとを含む、方法。」

第3 拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりのものである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2012-129794号公報
2.国際公開第2012/058820号

第4 引用発明及び公知技術
1 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用した特開2012-129794号公報(平成24年7月5日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。([当審注]:下線は、強調のために当審が付与した。)

(1)「【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)で検討が進められているLTE (Long-Term Evolution)-Advancedでは、局所的に集中する高密度トラフィックを効率的に収容するために、ピコセルなどの様々な形態のセルを用いたヘテロジニアスネットワーク(Heterogeneous Network)と呼ばれる無線アクセスネットワーク(RAN: Radio Access Network)構成が提案されている。
【0003】
ヘテロジニアスネットワークにおいては、マクロ基地局(Macro eNB)により提供される広範囲なマクロセルにオーバーレイして小範囲のピコセルを提供するために、ピコ基地局(Pico-eNB)がマクロ基地局と混在して設置される。
(中略)
【0005】
しかし、CREを導入した場合、特にピコセルのセル境界に位置するユーザ装置は、マクロ基地局から強い干渉を受けることになる。このようなセル間干渉を低減するためのセル間干渉制御(eICIC: enhanced Inter-Cell Interference Coordination)技術として、キャリアアグリゲーションを用いた周波数領域のセル間干渉制御技術や、時間領域(サブフレーム単位)でのセル間干渉制御技術が提案されている。
(中略)
【0007】
上述した時間領域でのセル間干渉制御技術では、マクロ基地局においてAlmost Blank Subframe (ABS)と呼ばれるデータを送信しないサブフレーム群(ABSパターンにより示される)が設定され、ABSパターンがマクロ基地局配下のピコ基地局に通知される。ピコ基地局では、ABSパターンを考慮して、配下のユーザ装置に対するリソース割り当て(スケジューリング)を行う。 (後略)」

(2)「【0019】
(システム構成)
図2に、本発明の実施の形態に係る通信システム(移動通信システム)の構成を示す。図2に示すように、本実施の形態に係る通信システムは、それぞれが1つのマクロセル(Macro-cell)を形成する複数のマクロ基地局(Macro eNB)1?3と、マクロ基地局1が形成するマクロセルにオーバーレイしたピコセル(Pico-cell)を形成するピコ基地局(Pico eNB)10とを含み、ヘテロジニアスネットワークを構成している。各基地局間は、有線もしくは無線により通信可能に接続されている。
【0020】
図2には、ピコセルに属しているユーザ装置(UE)の一例として、ユーザ装置20が示されている。図2には、ユーザ装置20はピコセルから離れた位置に描かれているが、これは図示の便宜上のものであり、ユーザ装置20は、ピコセル内にあって、複数のマクロ基地局1?3から強い干渉を受けているユーザ装置であるものとする。また、各マクロセルには、複数のピコ基地局が存在し、各ピコセルには複数のユーザ装置が存在してよいが、図2には、便宜上、1つのピコ基地局10及び1つのユーザ装置20を示している。また、図2には、各マクロセル(各マクロ基地局)の識別情報であるPCI(Physical Cell Identifier)が示されている。
(中略)
【0025】
本実施の形態の通信システムは、時間領域でのセル間干渉制御機能を有する。すなわち、例えば、マクロ基地局1がサブフレーム毎にABS(データを送信しない無送信区間、保護サブフレーム)を設定し、どのサブフレームを保護サブフレーム(ABS)として設定したかを示す情報をABSパターンとしてピコ基地局10に通知する。ピコ基地局10では、マクロ基地局1から通知されたABSパターンに基づいて、ユーザ装置に対するリソースの割り当てを行う。
【0026】
また、本実施の形態の通信システムは、ピコ基地局に接続するユーザ装置に対して強い干渉を及ぼす複数のマクロ基地局間で共通のABSパターンを設定する機能を備える。
(中略)
【0028】
その後、マクロ基地局1は、例えば、自身で用いているABSパターンを、通知された識別情報に対応する他のマクロ基地局(本例では、マクロ基地局2、3)に通知し、各マクロ基地局は、通知されたABSパターンを設定する。これにより、ピコ基地局10に接続されるユーザ装置に強い干渉を及ぼすマクロ基地局間で共通のABSパターンを設定することができる。共通のABSパターンを設定するための処理内容については以下において、より詳細に説明する。」

(3)「【0029】
<マクロ基地局及びピコ基地局の機能構成>
次に、マクロ基地局1及びピコ基地局10の機能構成例を説明する。以下で説明する機能構成例は、本発明に係る機能を主に示すものであり、マクロ基地局1及びピコ基地局10のそれぞれにおいて、説明する機能以外に、LTE/LTE-Advancedの方式に準拠した基地局の動作を実現するために必要な機能が備えられていることはいうまでもない。また、マクロ基地局に関し、複数のマクロ基地局1?3は同様の機能構成を有するので、代表してマクロ基地局1について説明している。
【0030】
図3に、マクロ基地局1の機能構成図を示す。図3に示すように、マクロ基地局1は、ABSパターン設定部11、ABSパターン格納部12、ABSパターン送信部13、ABSパターン受信部14、マクロ干渉基地局情報受信部15を備える。
【0031】
ABSパターン設定部11は、ABSパターンを設定するための機能部である。ABSパターンは、例えば、初期値としてシステム運用者により所定のパターンを設定し、その後、ピコ基地局10から受信するABSステータスに基づいて再設定することができる。また、特に本実施の形態においては、ABSパターン設定部11は、ABSパターン受信部14を介して他のマクロ基地局からABSパターン(当該他のマクロ基地局と共通に設定すべきABSパターン)を受信した場合に、受信したABSパターンを自身のABSパターンとして設定し、それをABSパターン格納部12に格納する機能を備える。
【0032】
ABSパターン格納部12に格納されたABSパターンは、ABSパターン送信部13によるピコ基地局10への通知、及びマクロ基地局1に属するユーザ装置に対するスケジューリング等に用いられる。また、マクロ基地局1が、共通に設定すべきABSパターンの送信元となる場合は、ABSパターン格納部12に格納されたABSパターンを、共通に設定するABSパターンとして他のマクロ基地局に通知することができる。
【0033】
ABSパターン受信部14は、他のマクロ基地局から、共通に設定すべきABSパターンを受信する機能部である。」

(4)「図2



上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記摘記事項(1)の段落0002、0003、0005、0007、上記摘記事項(2)の段落0019、0020、0025、0026、上記摘記事項(4)の図2によれば、引用例1には、「マクロ基地局1が形成するマクロセルにオーバーレイしたピコセルを形成するピコ基地局10」、「マクロセルを形成するマクロ基地局1」及び「ピコセル及びマクロ基地局1が形成するマクロセルに隣接するマクロセルを形成するマクロ基地局2」「含むヘテロジニアスネットワークを構成する通信システム」において、「ピコ基地局10に接続するユーザ装置に対して強い干渉を及ぼす複数のマクロ基地局間で共通のABS(Almost Blank Subframe)パターンを設定する時間領域でのセル間干渉制御技術(eICIC)」の方法について、記載されているといえる。

イ 上記摘記事項(3)の段落0029によれば、複数のマクロ基地局1?3は同様の機能構成を有しており、同段落0030-0033は代表してマクロ基地局1について記載されているのであるから、同段落0030によれば、各マクロ基地局はABSパターン送信部及びABSパターン受信部を有しているといえる。そして、上記摘記事項(2)の段落0028によれば、マクロ基地局は、自身で用いているABSパターンを他のマクロ基地局へ通知することができ、また、上記摘記事項(3)の段落0030-0033よれば、マクロ基地局は、他のマクロ基地局から共通に設定すべきABSパターンを受信し、当該ABSパターンを当該マクロ基地局に属するユーザ装置に対するスケジューリングに用いることもできるといえる。そして、上記摘記事項(2)の段落0028によれば、マクロ基地局2は、マクロ基地局1から共通に設定すべきABSパターンを受信することが例示されている。してみると、引用例には、「マクロ基地局2は、マクロ基地局1からマクロ基地局1で用いているABSパターンを受信し、マクロ基地局2は、当該ABSパターンに基づいて、マクロ基地局2に属するユーザ装置に対するスケジューリングをする」ことが記載されているといえる。

上記ア、イを総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「 マクロ基地局1が形成するマクロセルにオーバーレイしたピコセルを形成するピコ基地局10、マクロセルを形成するマクロ基地局1、及びピコセル及びマクロ基地局1が形成するマクロセルに隣接するマクロセルを形成するマクロ基地局2を含むヘテロジニアスネットワークを構成する通信システムにおいて、ピコ基地局10に接続するユーザ装置に対して強い干渉を及ぼす複数のマクロ基地局間で共通のABS(Almost Blank Subframe)パターンを設定する時間領域でのセル間干渉制御技術(eICIC)の方法であって、マクロ基地局2は、マクロ基地局1からマクロ基地局1で用いているABSパターンを受信し、マクロ基地局2は、当該ABSパターンに基づいて、マクロ基地局2に属するユーザ装置に対するスケジューリングをする、方法。」

2 公知技術
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2012/058820号(2012年(平成24年)5月10日国際公開。以下、「引用例2」という。)には,以下の記載がある。([当審注]:下線は、強調のために当審が付与した。)

(1)「Heterogeneous networks (HetNet) have been added to the scope of the LTE-A work item and now enhanced inter-cell interference coordination (elCIC) for co-channel HetNet deployment is one of the key technical points for Release 10. 」(1ページ9-12行目)
(当審仮訳:「 ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)は、LTE-Aワーク・アイテムの範囲に追加されており、現在では、同一チャネルHetNet展開のために拡張されたセル間干渉調整(elCIC)が、リリース10の重要な技術的要点の1つである。」)

(2)「Advantageously, the picocell eNodeB 20 determines the requirement for ABSs based on the number of the UEs which are near the edge of coverage area of the picocell and/or the traffic load of the UEs which are near the edge of coverage area of the picocell.
Then the picocell eNodeB 20 generates the request signaling based on the determined requirement for ABSs and sends the request signaling to the macrocell eNodeB 10. 」(7ページ13-20行目)
(当審仮訳:「 有利なことに、ピコセルeNodeB20は、ピコセルの通信領域のエッジに近いUEの数および/またはピコセルの通信領域のエッジに近いUEのトラフィック負荷に基づいてABSの要件を決定する。
次に、ピコセルeNodeB20は、ABSのために決定した要件に基づいて要求シグナリングを生成し、マクロセルeNodeB10に要求シグナリングを送信する。」)

(3)「After the picocell eNodeB 20 sends the request signaling to the macrocell eNodeB 10, then in step S12, the macrocell eNodeB 10 receives the request signaling from the picocell eNodeB 20.
After receiving the request signaling, then in step S13, the macrocell eNodeB 10 determines the pattern of ABSs.
To be specific, the macrocell eNodeB 10 may determine the pattern of ABSs based on the requirement for ABSs in the request signaling .
(中略)
Certainly, the macrocell eNodeB 10 may disregard the requirement for ABSs in the request signaling, and determines the pattern of ABSs only based on the traffic load of the UEs which are served by the macrocell eNodeB 10. For example, if the traffic load of the UEs which are served by the macrocell eNodeB 10 is quite heavy, then the macrocell eNodeB 10 will disregard the requirement for ABSs and determines the pattern of ABSs only based on the traffic load of the UEs which are served by the macrocell eNodeB 10. 」(11ページ3行目-12ページ13行目)
(当審仮訳:「 ピコセルeNodeB20がマクロセルeNodeB10に要求シグナリングを送信した後、ステップS12において、マクロセルeNodeB10は、ピコセルeNodeB20から要求シグナリングを受信する。
要求シグナリングを受信した後、ステップS13において、マクロセルeNodeB10は、ABSのパターンを決定する。
具体的には、マクロセルeNodeB10は、要求シグナリングにおけるABSの要件に基づいてABSのパターンを決定することができる。
(中略)
確かに、マクロセルeNodeB10は、要求シグナリングのABSの要件を無視することができ、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷のみに基づいて、ABSのパターンを決定する。例えば、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷がかなり重い場合、マクロセルeNodeB10は、ABSの要件を無視し、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷のみに基づいてABSのパターンを決定する。」)

(4)「

Fig. 1」(図1の当審仮訳は省略する。)

上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(公知技術)
「 ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)における拡張されたセル間干渉調整(elCIC)において、
ピコセルeNodeB20は、ABSのために決定した要件に基づいて要求シグナリングを生成し、マクロセルeNodeB10に要求シグナリングを送信し、
マクロセルeNodeB10は、ピコセルeNodeB20から要求シグナリングを受信し、要求シグナリングにおけるABSの要件に基づいてABSのパターンを決定する、
ただし、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷がかなり重い場合、マクロセルeNodeB10は、上記ABSの要件を無視し、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷のみに基づいてABSのパターンを決定する。」

第5 対比

1 発明の詳細な説明の段落0016によれば、本願発明の「第1のネットワーク」は、「第1の基地局および第1のユーザ機器を含むピコ・セル」を含み、同「第2のネットワーク」は、「ピコ・セルの領域に少なくとも部分的に重複する第1のマクロ・セル」を含むと認められる。してみると、引用発明の「ピコ基地局10が形成するピコセル」及び「マクロ基地局1が形成するマクロセル」は、本願発明の「第1のネットワーク(103)」、「第2のネットワーク(101)」に含まれる。また、発明の詳細な説明の段落0017によれば、本願発明の「第3のネットワーク」は、「第1のマクロ・セルおよびピコ・セルに隣接する第2のマクロ・セル」を含むと認められるから、引用発明の「マクロ基地局2が形成する、ピコセル及びマクロ基地局1が形成するマクロセルに隣接するマクロセル」は、本願発明の「第3のネットワーク(105)」に含まれる。

2 発明の詳細な説明の段落0006、0019によれば、本願発明の「第1のネットワーク(103)の通信チャネルでのデータ送信がスケジューリングされる間、第2のネットワーク(101)の通信チャネルでのデータ送信が制限されている第1の期間の組(201)」は、「ほぼブランクのサブフレーム(ABS)」を含むと認められる。また、「第3のネットワーク(105)によって受信される」「第1の期間の組(201)を示す第1のパターンを示す情報」は、「ABSパターン」を含むと認められる。そうすると、引用発明の「マクロ基地局2は、マクロ基地局1からマクロ基地局1で用いているABS(Almost Blank Subframe)パターンを受信」することは、本願発明の「第3のネットワーク(105)によって、第1のネットワーク(103)の通信チャネルでのデータ送信がスケジューリングされる間、第2のネットワーク(101)の通信チャネルでのデータ送信が制限されている第1の期間の組(201)を示す第1のパターンを示す情報を受信するステップ」に含まれる。

3 本願発明は、「前記第1のネットワーク(103)の通信チャネルでのデータ送信がスケジューリングされる」ものであり、「前記第2のネットワーク(101)の通信チャネルでのデータ送信が制限されている」ことに鑑みれば、本願発明の「第3のネットワーク(105)によって、前記第1のパターンに基づいて前記第3のネットワーク(105)の通信チャネルでデータ送信をスケジューリングするステップ」は、「第3のネットワーク(105)の通信チャネルでのデータ送信をスケジューリングする」ことを含むと解される。(なお、国際出願日における国際特許出願の明細書の請求項1には「and scheduling, by the third network (105), data transmissions on a third communication channel in the third network (105) based on the first pattern.」と記載されており、上記解釈は当該記載にも整合するものである。)
したがって、引用発明の「マクロ基地局2は、ABSパターンに基づいて、マクロ基地局2に属するユーザ装置に対するスケジューリングをする」ことは、本願発明の「第3のネットワーク(105)によって、第1のパターンに基づいて第3のネットワーク(105)の通信チャネルでデータ送信をスケジューリングするステップ」に含まれる。([当審注]:下線は、強調のために当審が付与した。)

4 上記1-3より、引用発明の「マクロ基地局1が形成するマクロセルにオーバーレイしたピコセルを形成するピコ基地局10、マクロセルを形成するマクロ基地局1、及びピコセル及びマクロ基地局1が形成するマクロセルに隣接するマクロセルを形成するマクロ基地局2を含むヘテロジニアスネットワークを構成する通信システムにおいて、ピコ基地局10に接続するユーザ装置に対して強い干渉を及ぼす複数のマクロ基地局間で共通のABS(Almost Blank Subframe)パターンを設定する時間領域でのセル間干渉制御技術(eICIC)の方法」は、本願発明の「少なくとも第1のネットワーク(103)、第2のネットワーク(101)、および第3のネットワーク(105)を含むワイヤレス通信システムにおいて潜在的な干渉に対処するための方法」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 少なくとも第1のネットワーク(103)、第2のネットワーク(101)、および第3のネットワーク(105)を含むワイヤレス通信システムにおいて潜在的な干渉に対処するための方法であって、前記第3のネットワーク(105)によって、前記第1のネットワーク(103)の通信チャネルでのデータ送信がスケジューリングされる間、前記第2のネットワーク(101)の通信チャネルでのデータ送信が制限されている第1の期間の組(201)を示す第1のパターンを示す情報を受信するステップと、前記第3のネットワーク(105)によって、前記第1のパターンに基づいて前記第3のネットワーク(105)の通信チャネルでのデータ送信をスケジューリングするステップとを含む、方法。」

(相違点)
本願発明は、更に、「第3のネットワーク(105)によって、第3のネットワークの現在の負荷値を取得するステップ」を含み、一致点の「前記第3のネットワーク(105)の通信チャネルでデータ送信をスケジューリングする」ことについて、「前記現在の負荷値が事前に定めた負荷しきい値より低い場合に」との条件が付けられているが、引用発明は、そのようなステップを含んでおらず、当該条件も付されていない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
上記「第4 2」のとおり、「 ヘテロジニアスネットワーク(HetNet)における拡張されたセル間干渉調整(elCIC)において、ピコセルeNodeB20は、ABSのために決定した要件に基づいて要求シグナリングを生成し、マクロセルeNodeB10に要求シグナリングを送信し、マクロセルeNodeB10は、ピコセルeNodeB20から要求シグナリングを受信し、要求シグナリングにおけるABSの要件に基づいてABSのパターンを決定する、ただし、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷がかなり重い場合、マクロセルeNodeB10は、上記ABSの要件を無視し、マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷のみに基づいてABSのパターンを決定する。」ことが公知技術である。ここで、「マクロセルeNodeB10によってサービスを提供されるUEのトラフィック負荷がかなり重い場合」なる状況の判別は、現在の負荷値を取得していることが前提であることは当然のことである。
そして、引用発明の「ピコセル及びマクロ基地局1が形成するマクロセルに隣接するマクロセルを形成するマクロ基地局2」において、他の基地局からのABSに関する要求であるABSパターンを受信したときに、自局の負荷がかなり重い状況である場合があり得ることは、当然に予測し得ることである。
したがって、引用発明の「マクロ基地局2」が、「ABSパターンに基づいて、サブフレームの間にユーザ装置にリソースを割り当て、データ送信をスケジューリングをする」際に、上記公知技術を適用して、マクロ基地局2が形成する第2のマクロセルの現在の負荷値を取得して、当該負荷値が事前に定めた負荷しきい値より低い場合に当該スケジューリングをするとの条件を付けることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び公知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-05 
結審通知日 2018-07-10 
審決日 2018-07-26 
出願番号 特願2015-534942(P2015-534942)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 光平河合 弘明東 昌秋  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 海江田 章裕
山本 章裕
発明の名称 異種混合ワイヤレス・ネットワークにおける利他的スケジューリング  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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