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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1347030 |
審判番号 | 不服2017-15550 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-19 |
確定日 | 2018-12-03 |
事件の表示 | 特願2016-507365「情報処理方法および情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/136938〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許出願は、平成27年3月12日(優先権主張 平成26年3月14日 日本、平成26年9月9日 日本)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下の通りである。 平成29年 5月10日付け:拒絶理由の通知 平成29年 7月 5日 :意見書の提出 平成29年 7月18日付け:拒絶査定 平成29年10月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出 平成29年11月24日付け:前置報告書 第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年10月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成29年10月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)を、以下のとおりの特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)に補正するものである。(なお、下線は審判請求人により付されたもの。) (補正前の請求項1) 「【請求項1】 第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて、通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、 前記第1認証処理による通行者の認証に成功した場合、前記第1認証処理に用いた前記第1生体情報および前記第2生体情報の少なくとも一方に基づく第3生体情報を記憶部に記憶する工程と、 通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記記憶部に記憶された前記第3生体情報とを用いて、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、 前記第2認証処理により認証された場合、前記第2位置を通行することを許可する認証工程と を具備する情報処理方法。」 (補正後の特許請求の範囲) 「【請求項1】 第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第1の閾値を超えているか否かによって通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、 前記第1認証処理によって前記第1の閾値を超えていることにより通行者の認証に成功した場合、前記第1認証処理に用いた前記第1生体情報および前記第2生体情報の少なくとも一方に基づく第3生体情報を記憶部に記憶する第1の記憶工程と、 通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記記憶部に記憶された前記第3生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第2の閾値を超えているか否かによって、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、 前記第2認証処理によって前記第2の閾値を超えていることにより認証された場合、前記第2位置を通行することを許可する認証工程と、 前記第2の閾値を前記第1の閾値よりも高く設定する設定工程と を具備する情報処理方法。」 2.本件補正の目的及び新規事項の有無 2-1.本件補正にかかる補正事項 補正前後の請求項1の記載を対比すると、本件補正は、以下の補正事項を含むものである。 (a)補正前の「第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて、通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、」を、補正後の「第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第1の閾値を超えているか否かによって通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、」とする補正事項。 (b)補正前の「前記第1認証処理による通行者の認証に成功した場合、」を、補正後の「前記第1認証処理によって前記第1の閾値を超えていることにより通行者の認証に成功した場合、」とする補正事項。 (c)補正前の「第3生体情報を記憶部に記憶する工程と、」を、補正後の「第3生体情報を記憶部に記憶する第1の記憶工程と、」とする補正事項。 (d)補正前の「通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記記憶部に記憶された前記第3生体情報とを用いて、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、」を、補正後の「通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記記憶部に記憶された前記第3生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第2の閾値を超えているか否かによって、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、」とする補正事項。 (e)補正前の「前記第2認証処理により認証された場合、」を補正後の「前記第2認証処理によって前記第2の閾値を超えていることにより認証された場合、」とする補正事項。 (f)補正事項(b)と補正事項(d)により補正された「第1の閾値」と「第2の閾値」との大小関係について、「前記第2の閾値を前記第1の閾値よりも高く設定する設定工程と」なる事項を追加する補正事項。 2-2.新規事項の有無について 2-2-1.補正事項(a)、(b)、(d)、(e)について 補正事項(a)及び(b)は、出願当初の明細書の段落【0034】、段落【0037】に、上記補正事項(d)及び(e)は、出願当初の明細書の段落【0057】、段落【0058】に記載されていると認められるので、特許法第17条の2第3項に違反するものではない。 2-2-2.補正事項(c)について 補正事項(c)は、出願当初の明細書の段落【0038】の「第1通行者認証部15(記憶制御部の一例)は、通行者の認証に成功した場合(ステッ プS405:Yes)、第1認証処理に用いた2つの特徴情報の少なくとも一方に基づく認証用特徴情報を、サーバ30の特徴情報記憶部31に記憶(保存)する(ステップS406)。」の内容を指すことは明らかであると認められるので、特許法第17条の2第3項に違反するものではない。 2-2-3.補正事項(f)について 補正事項(f)に関する記載としては、出願当初の明細書の段落【0058】に「ここで、第2閾値は、第1認証装置10における通行者の認証に用いた第1閾値と同じ値としても良いし、第1閾値とは異なる値としても良い。」と記載されている。 しかしながら、当該段落の記載内容は、「第2閾値は第1閾値とは異なる値としても良い」との内容にとどまり、補正事項(f)の様に『第2の閾値を第1の閾値よりも高く設定する』と特定することが開示されている、とするまでには至っていない。 さらに、出願当初の明細書の他の記載を参酌しても、『第2の閾値を第1の閾値よりも高く設定する』ことやそのことによる作用効果等の技術的事項を示唆する記載も見いだせない。 この点、出願当初の明細書の段落【0040】ないし【0042】には、第1認証処理に用いられた2つの特徴情報である「識別情報読取部により媒体Mから読み取られた特徴情報」と「第1顔特徴抽出部により取得された特徴情報」のうちの前者を用いることによって通行者の入れ替わりに対するセキュリティを高めることができること、前者は第1認証処理が実行された時点よりも前に通行者を撮像して得られた画像からのものであるために、「通行者を撮像して得られる画像から取得される特徴情報との類似度」が下がり、通行者の経年変化等の影響を受けやすいこと、前者ではなく後者を第2認証処理のために特徴情報記憶部31に記憶させることによって通行者の経年変化等の影響を軽減でき、認証精度を向上できることが記載されている。また、段落【0064】には、特徴情報記憶部31に記憶されてから所定期間経過した認証用特徴情報を用いる場合の「第2閾値」をそうでない場合の「第2閾値」よりも高くすることにより、特徴情報記憶部31に記憶されてから所定期間経過した信頼性が低い認証得用特徴情報を用いた場合に認証が成功する可能性を低くすることが記載されている。 しかし、これらの段落も、段落【0058】の「第2閾値は、・・・第1閾値とは異なる値としても良い」旨を補足する内容を記載したものでなく、せいぜい、特徴情報記憶部31には経年変化の影響をより受けにくい情報を記憶するほうが望ましいことを示唆するにすぎないから、段落【0058】にこれらの段落の記載を併せ鑑みても、『第2の閾値を第1の閾値よりも高く設定する』ことが示唆されているとはいえない。 したがって、これらの事項を鑑みると、補正事項(f)は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、この範囲内においてなされたものとは認められないので、特許法第17条の2第3項に違反するものである。 2-3.目的要件について 事案に鑑み、本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについても検討する。 2-3-1.特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、同第3号(誤記の訂正)、同第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とするものであるかについて <補正事項(a)から(f)について> 補正事項(a)から(f)が、特許法第17条の2第5項第1号、第3号、第4号を目的とするものでないことは明らかである。 2-3-2.特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであるかについて <補正事項(a)について> 補正事項(a)は、第1認証処理について、その具体的な処理内容を特定するための事項を付加するのであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められ、また、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題についても同一であると認められる。 したがって、補正事項(a)は、特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 <補正事項(b)について> 補正事項(b)は、補正事項(a)との文言の整合性を図るためになされたものであると認められるから、補正事項(a)と同様に特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 <補正事項(c)について> 補正事項(c)は、補正前の「第3生体情報を記憶部に記憶する工程と、」を、補正後の「第3生体情報を記憶部に記憶する第1の記憶工程と、」とする補正事項であるが、補正の前後において『第3生体情報を記憶部に記憶する』という工程の内容を何ら変更するものではない。 したがって、補正事項(c)は、単なる表現上の変更であって、補正の前後において内容の変更を伴うものではないから、実質的な補正とはいえない。 <補正事項(d)について> 補正事項(d)は、第2認証処理について、その具体的な処理内容を特定するための事項を付加するのであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものと認められ、また、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題についても同一であると認められる。 したがって、補正事項(d)は、特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 <補正事項(e)について> 補正事項(e)は、補正事項(d)との文言の整合性を図るためになされたものであると認められるから、補正事項(d)と同様に特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 <補正事項(f)について> 補正事項(f)は、第1閾値と第2閾値との関係を「第2の閾値を第1の閾値よりも高く設定する」と特定するものであるから、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1認証処理」と「第2認証処理」に関する事項を限定するものと認められ、また、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題についても同一であると認められる。 したがって、補正事項(f)は、特許法第17条の2第5項第2号でいうところの「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 2-4.独立特許要件について 上記「2-3.目的要件について」で言及した様に、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-129016号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。) (ア)「本発明は、認証システム、プログラム、及び建築物に関する。特に、本発明は、被認証者を認証する認証システムに関する。」(【0001】) (イ)「図2は、認証システム100の詳細な構成の一例を示す。本例において、入館管理部102は、開錠操作部208、カメラ202、カードリーダ204、及び入館認証部206を有する。入室管理部104a?dのそれぞれは、各居室A?D(図1参照)のそれぞれに対応して設けられており、開錠操作部306、カメラ302、及び入室認証部304をそれぞれ有する。 開錠操作部208は、入館認証部206により被認証者が認証された場合に、正面玄関におけるドア106の鍵を開錠する。カメラ202は、被認証者を撮像する第1撮像部の一例である。カメラ202は、正面玄関に設けられており、入館しようとする被認証者の顔画像を撮像して、入館認証部206に供給する。カードリーダ204は、被認証者の携行するIDカードから、そのIDカードに格納されている被認証者の顔画像を取得して、入館認証部206に供給する。 入館認証部206は、第1認証部の一例であり、被認証者のIDカードに格納されている被認証者の顔画像と、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像とを照合することにより、被認証者を認証する。これにより、入館認証部206は、カメラ202により撮像される被認証者を認証する。 そして、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入館者であると認証された場合、入館認証部206は、開錠操作部208に、正面玄関の鍵を開錠させる。これにより、被認証者はドア106の通過を許可された者であると認証した場合に、入館認証部206は、ドア106を開放する。そして、入館認証部206は、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、各入室管理部104a?eに送信する。 入室管理部104における開錠操作部306は、入室認証部304により被認証者が認証された場合に、対応する居室の入り口におけるドア108の鍵を開錠する。カメラ202は、対応する居室の入口に設けられており、入室しようとする被認証者の顔画像を撮像して、入室認証部304に供給する。カメラ302は、被認証者を撮像する第2撮像部の一例であり、被認証者が通過する経路において、カメラ202が設けられた位置より後に被認証者が通過する位置に設けられる。 入室認証部304は、被認証者を認証する第2認証部の一例であり、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、入館認証部206から受け取ることにより、正面玄関においてカメラ202により撮像された被認証者の顔画像と、居室の入口においてカメラ302により撮像された被認証者の顔画像とを照合する。そして、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入室者であると認証された場合、入室認証部304は、開錠操作部306に、各居室の鍵を開錠させる。これにより、被認証者はドア108a?eの通過を許可された者であると認証した場合に、入室認証部304はドア108a?eを開放する。本例によれば、各居室の入口において、被認証者を、効率よく認証できる。」(【0024】?【0029】) したがって、上記摘記事項(ア)及び(イ)の記載から引用例には、 「開錠操作部208、カメラ202、カードリーダ204、及び入館認証部206を有する入館管理部102と、開錠操作部306、カメラ302、及び入室認証部304をそれぞれ有する入室管理部104a?dと、を備える認証システム100が被認証者を認証するための情報処理方法であって、 カメラ202は、正面玄関に設けられており、入館しようとする被認証者の顔画像を撮像して、入館認証部206に供給し、カードリーダ204は、被認証者の携行するIDカードから、そのIDカードに格納されている被認証者の顔画像を取得して、入館認証部206に供給し、 入館認証部206は、被認証者のIDカードに格納されている被認証者の顔画像と、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像とを照合することにより、被認証者を認証し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入館者であると認証された場合、入館認証部206は、開錠操作部208に、正面玄関の鍵を開錠させ、そして、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、各入室管理部104a?eに送信し、 入室認証部304は、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、入館認証部206から受け取ることにより、正面玄関においてカメラ202により撮像された被認証者の顔画像と、居室の入口においてカメラ302により撮像された被認証者の顔画像とを照合し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入室者であると認証された場合、入室認証部304は、開錠操作部306に、各居室の鍵を開錠させる、情報処理方法。」(以下、「引用発明」という。) が開示されているものと認められる。 (2)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 (2-1) 引用発明における「居室の入口」は「正面玄関」から入館する被認証者にとっては、「正面玄関」よりも下流に位置するものである。よって、引用発明における「正面玄関」及び「居室の入口」は、補正発明でいうところの『第1位置』及び『第1位置より下流側の第2位置』に相当する。 (2-2) 引用発明における「被認証者」及び「IDカード」が、補正発明でいうところの『通行者』及び『媒体』に相当することは明らかである。 (2-3) 引用発明においては、「カードリーダ204は、被認証者の携行するIDカードから、そのIDカードに格納されている被認証者の顔画像を取得して、入館認証部206に供給」するのであるから、「被認証者の携行するIDカードに格納されている被認証者の顔画像」は、補正発明でいうところの『第1生体情報』に相当する。 また、引用発明においては、「カメラ202は、正面玄関に設けられており、入館しようとする被認証者の顔画像を撮像して、入館認証部206に供給する」のであり、カメラ202が撮像した画像には被認証者の顔以外のものも含まれていると解するのが自然であり、当該「撮像した画像」から被認証者の顔画像を照合対象として入館認証部206に供給するものであるからら、「正面玄関に設けられたカメラ202により撮像された被認証者の顔画像」は、補正発明でいうところの『撮像して得られた画像から取得した第2生体情報』に相当する。 そして、引用発明においては、「入館認証部206は、被認証者のIDカードに格納されている被認証者の顔画像と、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像とを照合することにより、被認証者を認証し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入館者であると認証された場合、入館認証部206は、開錠操作部208に、正面玄関の鍵を開錠させ」るのであり、ここで、引用発明でいう「一致度」や補正発明でいうところの『類似度』については、その用語自体の他に何かしらの技術的特徴を示す事項は特定されていないことを鑑みると、引用発明でいう「一致度」と補正発明でいうところの『類似度』は、いずれも、比較する2つの情報の同一性の程度を表現するために用いられる単に表現上異なる用語であると解するのが自然である。そして、引用発明における「所定の(一致度)」とは、補正発明でいうところの『第1の閾値』に対応するといえる。 したがって、引用発明における「入館認証部206は、被認証者のIDカードに格納されている被認証者の顔画像と、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像とを照合することにより、被認証者を認証し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入館者であると認証された場合」は、補正発明でいうところの『第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第1の閾値を超えているか否かによって通行者を認証する第1認証処理を実行する工程』に相当する。 (2-4) 引用発明においては、「入室認証部304は、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、入館認証部206から受け取ることにより、正面玄関においてカメラ202により撮像された被認証者の顔画像と、居室の入口においてカメラ302により撮像された被認証者の顔画像とを照合し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入室者であると認証された場合、入室認証部304は、開錠操作部306に、各居室の鍵を開錠させる、」のであり、前記「居室の入口においてカメラ302により撮像された被認証者の顔画像」は、補正発明でいうところの『通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報』に相当し、前記「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」は「入館認証部206から受け取る」ものであるから、補正発明でいうところの『第1認証処理に用いた第2生体情報に基づく第3生体情報』に相当する。 また、引用発明にかかる「入室認証部304」が実行する“被認証者に関する認証処理”は、入館認証部206が実行する被認証者に関する認証処理とは別のものであるから、補正発明でいうところの『第2認証処理』に対応するといえる。 さらに、入室認証部304が実行する“被認証者に関する認証処理”において用いる「所定の(一致度)」とは、補正発明でいうところの『第2の閾値』に対応するといえる。 してみると、引用発明と補正発明とは、『通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記第3生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第2の閾値を超えているか否かによって、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程』を備えるという点で一致している。 (2-5) 引用発明においては、「入室認証部304は、カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、入館認証部206から受け取ることにより、正面玄関においてカメラ202により撮像された被認証者の顔画像と、居室の入口においてカメラ302により撮像された被認証者の顔画像とを照合し、これらの顔画像が所定の一致度を超えて一致することにより、被認証者が正当な入室者であると認証された場合、入室認証部304は、開錠操作部306に、各居室の鍵を開錠させる、」のであり、前記「入室認証部304は、開錠操作部306に、各居室の鍵を開錠させる、」は、補正発明でいうところの『第2位置を通行することを許可する認証工程』に対応するといえるから、引用発明は、補正発明でいうところの『第2認証処理によって前記第2の閾値を超えていることにより認証された場合、前記第2位置を通行することを許可する認証工程』を備えているといえる。 上記(2-1)から(2-5)で検討した結果、補正発明と引用発明とは、 「第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第1の閾値を超えているか否かによって通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、 通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記第3生体情報とを用いて類似度を算出し、前記類似度が第2の閾値を超えているか否かによって、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、 前記第2認証処理によって前記第2の閾値を超えていることにより認証された場合、前記第2位置を通行することを許可する認証工程と、 を具備する情報処理方法。」 で一致しており、以下の点で相違している。 [相違点1] 補正発明は、『前記第1認証処理によって前記第1の閾値を超えていることにより通行者の認証に成功した場合、前記第1認証処理に用いた前記第1生体情報および前記第2生体情報の少なくとも一方に基づく第3生体情報を記憶部に記憶する第1の記憶工程』を備えているのに対し、引用発明は、「入館認証部206は、・・・カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、各入室管理部104a?eに送信」するものであり、当該「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」が記憶部に記憶されるのか明示されていない点。 [相違点2] 上記[相違点1]に関連して、補正発明は、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程において、『記憶部に記憶された第3生体情報』を用いるのに対して、引用発明においては、「入館認証部206から送信されたカメラ202により撮像された被認証者の顔画像」を用いる点。 [相違点3] 補正発明は、『前記第2の閾値を前記第1の閾値よりも高く設定する設定工程』を備えるのに対し、引用発明はかかる工程を備えていない点。 (3)判断 [相違点1]及び[相違点2]について 引用発明において、入館認証部206から各入室管理部104a?eに送信された「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」は、入室管理部が備える入室認証部304において被認証者を認証するために用いられるものであるから、「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」を入室管理部側で記憶手段に記憶すること、及び、入室認証部304が記憶手段に記憶された「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」を用いて被認証者を認証する処理を実行することは、当業者にとっては技術常識又は自明なことである。 [相違点3]について 引用発明における入館部認証部206と入室部認証部304とは、カメラ202により撮像された被認証者の画像を用いた認証のための照合を行うにあたって異なる情報を用いる(前者は「被認証者の携行するIDカードに格納されている被認証者の顔画像」を用いるのに対し、後者は「カメラ302により撮像された顔画像」を用いる)のであり、前記「被認証者の携行するIDカードに格納されている被認証者の顔画像」と前記「カメラ302により撮像された顔画像」との経時的劣化の程度に差があることは明らかであるから、入館部認証部206での照合において「一致」とされる「一致度」と入室部認証部304での照合における「一致」とされる「一致度」とが異なることは自然なことである。 さらに、各居室への入室を許可するセキュリティレベルは、居室の性質に基づいて居室毎に定められることが一般的な技術常識である。 してみると、引用発明において、入館部認証部206における「一致」とされる「一致度」に比して、ある居室についての入室部認証部304における「一致」とされる「一致度」を高くすること、即ち、補正発明でいうところの『第2の閾値を前記第1の閾値よりも高く設定する』ことは、各居室に求められるセキュリティレベル等を踏まえて、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また、補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明に開示されている事項により当業者ならば容易に予測することができる程度のものである。 以上の通り、補正発明は引用発明に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するものである。 2-5.「補正却下の決定」についてのまとめ 上記「2-2」から「2-4」で検討した通り、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する、又は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成29年10月19日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.補正の内容」における(補正前の特許請求1)参照。)により特定されるものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、及び、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用例:特開2005-129016号公報 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例(特開2005-129016号公報)に記載された事項及び当該引用例に開示されている発明(引用発明)は、上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(1)引用例」」に記載した通りである。 4.対比 本願発明は、平成29年10月19日付けの手続補正によって補正された補正発明から上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-1.本件補正にかかる補正事項」」で言及した補正事項(a)から(f)を削除したものであり、これらの補正事項についての対比を除く他は、上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(2)対比」」の「(2-1)」ないし「(2-5)」として記載したものと同じである。 そして、本願発明と引用発明とは、 「第1位置を通過する通行者が所持する媒体から読み取られた第1生体情報と、前記第1位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第2生体情報とを用いて、通行者を認証する第1認証処理を実行する工程と、 通行者の進行する方向において前記第1位置より下流側の第2位置を通過する通行者を撮像して得られた画像から取得した第4生体情報と、前記第3生体情報とを用いて、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程と、 前記第2認証処理により認証された場合、前記第2位置を通行することを許可する認証工程と を具備する情報処理方法。」 で一致しており、以下の点で相違している。(なお、以下の相違点は、上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(2)対比」」で特定した[相違点1]及び[相違点2]と同じである。) [相違点1] 補正発明は、『前記第1認証処理によって前記第1の閾値を超えていることにより通行者の認証に成功した場合、前記第1認証処理に用いた前記第1生体情報および前記第2生体情報の少なくとも一方に基づく第3生体情報を記憶部に記憶する第1の記憶工程』を備えているのに対し、引用発明は、「入館認証部206は、・・・カメラ202により撮像された被認証者の顔画像を、各入室管理部104a?eに送信」するものであり、当該「カメラ202により撮像された被認証者の顔画像」が記憶部に記憶されるのか明示されていない点。 [相違点2] 上記[相違点1]に関連して、補正発明は、通行者を認証する第2認証処理を実行する工程において、『記憶部に記憶された第3生体情報』を用いるのに対して、引用発明においては、「入館認証部206から送信されたカメラ202により撮像された被認証者の顔画像」を用いる点。 5.判断 上記[相違点1]及び[相違点2]についての判断は、上記「「第2.平成29年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2-4.独立特許要件について」「(3)判断」」の「[相違点1]及び[相違点2]について」に記載したものと同じである。 したがって、本願発明は、引用発明に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上の通り、本願発明は、引用発明に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2018-10-05 |
結審通知日 | 2018-10-11 |
審決日 | 2018-10-23 |
出願番号 | 特願2016-507365(P2016-507365) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 561- Z (G06Q) P 1 8・ 572- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 佐藤 智康 |
発明の名称 | 情報処理方法および情報処理システム |
代理人 | 井上 正則 |
代理人 | 井上 正則 |