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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1347050
審判番号 不服2017-13146  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-06 
確定日 2018-12-06 
事件の表示 特願2012-217513号「乳酸菌増殖促進作用を有するローヤルゼリーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 68599号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月28日の出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月24日付け:拒絶理由通知書
平成28年10月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年11月29日付け:拒絶理由通知書
平成29年 2月27日 :意見書の提出
平成29年 5月31日付け:拒絶査定
平成29年 9月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年 9月 6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年 9月 6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリーを有効成分として含有するおなかの調子を整える機能をもつ乳酸菌増殖促進用食品組成物。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年10月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリーを有効成分として含有する乳酸菌増殖促進用食品組成物。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「乳酸菌増殖促進用食品組成物」について、「おなかの調子を整える機能をもつ」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された引用文献である、特開平5-123119号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明なローヤルゼリー溶液の製造方法に関するものであり、より詳しく言えばローヤルゼリーの全成分を溶解して利用しうるようにした、生ローヤルゼリーと同じ特性を持った透明なローヤルゼリー溶液の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ローヤルゼリーは若い働き蜂の分泌腺(下咽頭腺、大腮腺)より分泌される乳白色を帯びた強い酸味のある物質で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、アセチルコリン、10-ヒドロキシデセン酸、ステロール、ホルモンなどの栄養成分をバランス良く含み、古くから生タイプ、カプセルタイプ、飲料タイプなどの健康食品、医薬品、化粧品として利用されている。」
「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、ローヤルゼリーの全成分を高濃度に含有し、しかも透明な飲料の製造法について鋭意研究を続け、ローヤルゼリーの懸濁液を調製し、これに基質に対する作用部位の異なる二類以上のプロテアーゼを作用させれば蛋白質の分解率、特に難分解性の蛋白質の分解度を高めることができることを見い出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。」
「【0013】本発明方法において、まずローヤルゼリーに水または温水を加えてローヤルゼリーの懸濁液を調製する。この場合、アルコール(例えばエタノール)等で前処理(ろ別精製)したり、またはアルコール溶液を用いて懸濁液を調製すると、前述のように、ローヤルゼリー中の有用成分、とくにアルコールに不溶な蛋白質の回収率が低下し、本発明の目的は達成されない。本発明はこのようなアルコール溶液による前処理、可溶化処理を行わないことを特徴とする。ローヤルゼリー濃度を高くできるのが本法の有利な特徴で、5?50%、より好ましくは10?30%の懸濁液を調製する。次いでこの懸濁液を炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムあるいはクエン酸などを用いてpHを調整する。pHは使用する酵素の作用するpH範囲で自由に調整することができるが、pHがあまり高すぎると風味が劣化するだけでなく、褐変等の変質の原因となる。このため好ましい作用pHは2?9の範囲である。
【0014】pHを調整したローヤルゼリー懸濁液は、プロテアーゼを加えて蛋白質の分解を行う。使用するプロテアーゼには特に制限はなく、微生物や植物起源の酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼをはじめ、ペプシン、パンクレアチン等の哺乳動物由来の消化酵素など通常、食品加工に用いられているものを広く利用することが可能でこれらの中から基質に対する作用部位の異なる二種類以上を選択して用いればよい。」
「【0021】次に上記ローヤルゼリー溶液または酵素を飲料原料液に加え飲料溶液を調製することができる。ここに用いる飲料用原料とは、例えば蜂蜜、アセロラ、ビタミンC、ローズヒップ、ステビア、ブドウ糖、果糖、果汁、コーヒー、洋酒、水等の通常の飲料に用いられる原料である。これらの原料を調合、溶解し、透明なローヤルゼリー溶液を加え、均一な状態になるように攪拌し、びんまたは缶などの溶液にアセプティック充填またはホット充填し、ローヤルゼリー飲料とする。」
「【0022】
【実施例】以下に試験例と実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、使用する酵素は酸性プロテアーゼの代表としてアスペルギルス・オリゼ由来のプロテアーゼ(プロテアーゼM、力価5,500単位/g、天野製薬製)、中性プロテアーゼの代表としてバチルスズブチリス由来のプロテアーゼ(プロテアーゼN、力価150,000単位/g、天野製薬製)、また哺乳動物の消化酵素としてペプシン(力価1:10,000、天野製薬製)及びパンクレアチン(パンクレアチンF、力価26,000単位/g、天野製薬製)とし、ローヤルゼリーは10%(w/w)水溶液を用いて酵素処理を行った。」
「【0023】実施例1
10%ローヤルゼリー水懸濁液1kgを20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを4に調整した。この溶液にペプシンを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った(ペプシン処理液)。次にこの処理液を20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを8に調整し、パンクレアチンを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った。酵素処理の終了した溶液は20%水酸化ナトリウム溶液又は10%クエン酸溶液を用いてpHを5.5に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、さらにろ過を行って異物や不溶性残渣を除き、透明なローヤルゼリー溶液を得た。このローヤルゼリー溶液を使用した生ローヤルゼリーの重量まで減圧濃縮した。」
「【0029】実施例7
10%ローヤルゼリー水懸濁液1kgを20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に調整した。この溶液に中性プロテアーゼを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行った(中性プロテアーゼ処理液)。次にこの溶液にパンクレアチンを1g添加して、さらに45℃で6時間酵素処理を行った。酵素処理終了後、以下実施例1に示した方法と同様に処理して透明なローヤルゼリー溶液を得た。」
(イ)上記(ア)を総合し、実施例7に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「10%ローヤルゼリー水懸濁液1kgを20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に調整し、この溶液に中性プロテアーゼとしてバチルスズブチリス由来のプロテアーゼを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行い、次にこの溶液にパンクレアチンを1g添加して、さらに45℃で6時間酵素処理を行い、酵素処理終了後、酵素処理の終了した溶液は20%水酸化ナトリウム溶液又は10%クエン酸溶液を用いてpHを5.5に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、さらにろ過を行って異物や不溶性残渣を除かれた透明なローヤルゼリー溶液。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願出願前に頒布された特開平7-265066号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ローヤルゼリー由来の蛋白質を酵素で処理した蛋白質加水分解物からなる微生物培養培地用ペプトンに関する。この微生物培養培地用ペプトンは、ビフィズス菌あるいは乳酸菌の生育促進に優れた効果を有するものである。」
「【0005】得られた蛋白質含有組成物を酵素で加水分解する際には、酵素反応に影響しない範囲で加温(10?70℃程度)し、pHを3以下あるいは7以上に調整して酵素反応を行う。使用可能な酵素については、特に限定されず通常蛋白質を加水分解する際に用いる酵素を使用することができる。例えば植物由来の酵素であれば、パパインやブロメラインであり、動物由来の酵素であれば、トリプシン、キモトリプシンである。更には微生物由来の酵素の場合には、プロテアーゼM(天野製薬社製)、オリエターゼ20A (阪急共栄物産社製)等が挙げられる。 これらの酵素の中から一種またはそれ以上を選択して用いる。酵素の添加量は、蛋白質1g当たり 150?400 単位程度で、用いる酵素の至適温度及び至適pHに従って22時間程度反応を行うと良い。また、酵素反応の停止は、85℃で20分間程度加熱することにより行うことができる。このようにして得られた蛋白質加水分解物を、微生物培養用培地に0.01%以上配合して用いる。また必要に応じてビタミンなどを培地に添加しても良い。更には、上記のようにして調製した蛋白質加水分解物を、通常の方法に従って乾燥することにより、粉末状培地用ペプトンとすることができる。この粉末状培地用ペプトンは、水に対する溶解性がよく、またエタノール溶液に対しても可溶性を有している。」
「【0008】実施例3
実施例1と同様にして得られたローヤルゼリー蛋白質溶液300gを10N水酸化ナトリウムでpH 7.0に調整した。この溶液を45℃に加温した後、プロテアーゼM(天野製薬社製)を蛋白質1g当たり 360単位加え、45℃で22時間酵素反応を行った。そして、85℃で20分間加熱して酵素を失活させた後、室温まで冷却し、10N水酸化ナトリウムでpHを 6.8に調整した。最後に、この加水分解物を凍結乾燥して培地用ペプトン17g を得た。」
「【0006】以下に実施例、比較例および実験例を示し、本発明を具体的に説明する。(%は重量%を表す。)
【実施例】
実施例1
固形率が20%となるようアルコールに溶解した生ローヤルゼリー溶液を分画分子量2万のUF膜で処理し、蛋白質を6%含有する溶液を得た。このローヤルゼリー蛋白質含有溶液 (pH 4.6) 200gを1N塩酸でpH 3.0に調整した。この溶液を45℃に加温した後、プロテアーゼM(天野製薬社製)を蛋白質1g 当たり 180単位加え、45℃で22時間酵素反応を行った。そして、85℃で20分間加熱して酵素を失活させた後、室温まで冷却し、10N水酸化ナトリウムでpHを 6.8に調整した。最後に、この加水分解物を凍結乾燥して培地用ペプトン11g を得た。」
「【0008】実施例3
実施例1と同様にして得られたローヤルゼリー蛋白質溶液300gを10N水酸化ナトリウムでpH 7.0に調整した。この溶液を45℃に加温した後、プロテアーゼM(天野製薬社製)を蛋白質1g当たり 360単位加え、45℃で22時間酵素反応を行った。そして、85℃で20分間加熱して酵素を失活させた後、室温まで冷却し、10N水酸化ナトリウムでpHを 6.8に調整した。最後に、この加水分解物を凍結乾燥して培地用ペプトン17g を得た。」
「【0016】試験例3
実施例3で得られた培地用ペプトンを用い、添加量の違いによる各種乳酸菌の生育試験を行った。試験に用いた乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス (Streptococcus thermophilus) SBT-1021A 株 (FERM P-10658) 、ラクトバチルス・アシドフィルス (Lactobacillus acidophilus) SBT-2062 株 (FERM P-10730) 、ラクトバチルス・ブルガリクス (Lactobacillus bulgaricus) SBT-2118B株 (FERM P-13955) 及びラクトバチルス・カゼイ (Lactobacillus casei) SBT-2300 株 (FERM P-13245) で、培地に 0.3%接種し、37℃で16時間培養を行った。なお、用いた培地の組成は、それぞれ(1) 脱脂粉乳 11.03%、培地用ペプトン 1.0%及び精製水 87.97%、(2) 脱脂粉乳 11.53%、培地用ペプトン 0.5%及び精製水 87.97%、(3) 脱脂粉乳 12.03%及び精製水 87.97%であった。培養後の酸度を表2に示す。
【0017】
【表2】
─────────────────────────────────
SBT-1021A SBT-2062 SBT-2118B SBT-2300
─────────────────────────────────
培地 (1) 1.05 1.57 1.52 0.83
培地 (2) 0.98 1.31 1.45 0.62
培地 (3) 0.91 0.85 1.20 0.33 (ペプトン無添加)
─────────────────────────────────
表2から、いずれの乳酸菌に対しても、本発明の培地用ペプトンは、その含有量が多くなるに従い、その効果が増すことが分かる。」
(イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「ローヤルゼリー蛋白質溶液を酵素で処理した加水分解物により得た培地用ペプトンを接種した培地を用い、培地用ペプトンの添加量の違いによる各種乳酸菌の生育試験を行うと、培地用ペプトンの含有量が多くなると、乳酸菌である、ストレプトコッカス・サーモフィルス (Streptococcus thermophilus) SBT-1021A 株 (FERM P-10658) 、ラクトバチルス・アシドフィルス (Lactobacillus acidophilus) SBT-2062 株 (FERM P-10730) 、ラクトバチルス・ブルガリクス (Lactobacillus bulgaricus) SBT-2118B株 (FERM P-13955) 及びラクトバチルス・カゼイ (Lactobacillus casei) SBT-2300 株 (FERM P-13245) の生育効果が増すこと。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「バチルスズブチリス」及び本件補正発明の「バチルス サブチリス」は、共に学名「Bacillus subtilis」の仮名表記であることは、技術常識であるから、引用発明の「バチルスズブチリス由来のプロテアーゼ」は、本件補正発明の「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素」に相当し、引用発明の「パンクレアチン」は、本件補正発明の「パンクレアチン」に相当する。そして、引用発明の「10%ローヤルゼリー水懸濁液1kgを20%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に調整し、この溶液に中性プロテアーゼとしてバチルスズブチリス由来のプロテアーゼを1g添加し、45℃で6時間酵素処理を行い、次ぎにこの溶液にパンクレアチンを1g添加して、さらに45℃で6時間酵素処理を行」って得た「溶液」は、ローヤルゼリーが栄養成分を含み、健康食品、医薬品、化粧品として利用されていることから(【0002】)、本件補正発明の「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリーを」「含有する」「組成物」に相当する。
(イ)引用発明の「酵素処理の終了した溶液は20%水酸化ナトリウム溶液又は10%クエン酸溶液を用いてpHを5.5に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、さらにろ過を行って異物や不溶性残渣を除かれた透明なローヤルゼリー溶液」は、本件補正発明の「食品組成物」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリーを含有する食品組成物。」
【相違点】
食品組成物に含有する「バチルス サブチリス由来のタンパク質分解酵素およびパンクレアチンを作用させる工程により得られた酵素処理ローヤルゼリー」について、本件補正発明は、「有効成分として」含有させ、食品組成物について「おなかの調子を整える機能をもつ乳酸菌増殖用」としているのに対し、引用発明は、そのような特定していない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
本願補正発明の組成物に係る「おなかの調子を整える機能をもつ乳酸菌増殖促進用」という特定事項は、組成物の組成自体を具体的に特定するものではない。そして、上記「(3)引用発明との対比」に示したとおり、引用発明の「ローヤルゼリー溶液」と、本願補正発明の「組成物」は共に、上記一致点で示す工程を有するから、共通する酵素処理ローヤルゼリーの組成物を有し、これが有効成分として機能することは明らかである。
そして、引用文献2には、上記(2)イのとおり、ローヤルゼリー蛋白質溶液の加水分解物により得た培地用ペプトンは、各種乳酸菌の生育効果を増すことが記載されていることから、同じくローヤルゼリー蛋白質溶液を酵素処理したものは乳酸菌の生育効果を増すことは予測できたことであり、また、乳酸菌がおなかの調子を整える機能を奏することが技術常識であることを踏まえると、引用発明において、ローヤルゼリー水懸濁液をバチルスズブチリス由来のプロテアーゼにて酵素処理がなされ、さらにパンクレアチンにより酵素処理された溶液を飲食すると、乳酸菌の生育促進効果を高め、おなかの調子を整えるように作用することを当業者が想起することは自然であるといえる。
そうすると、引用発明の飲料溶液をおなかの調子を整える機能をもつ乳酸菌増殖促進用組成物とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年9月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年10月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開平5-123119号公報
引用文献2:特開平7-265066号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「乳酸菌増殖促進用食品組成物」について「おなかの調子を整える機能をもつ」ことに係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-28 
結審通知日 2018-10-09 
審決日 2018-10-25 
出願番号 特願2012-217513(P2012-217513)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小倉 梢  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
井上 哲男
発明の名称 乳酸菌増殖促進作用を有するローヤルゼリーの製造方法  
代理人 庄司 隆  

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