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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1347085
審判番号 不服2018-3826  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-19 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2013-179191「内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月16日出願公開、特開2015-48728、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月30日の出願であって、平成29年5月23日付け(発送日:平成29年5月30日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月12日付け(発送日:同年12月19日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年3月19日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下の通りである。
「この出願については、平成29年5月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・引用文献等1、3?7
請求項1に係る発明は、引用例1、3?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項2
・引用文献等1、3?7
請求項2に係る発明は、引用例1、3?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献一覧>
1.特開平11-287150号公報
3.特開2000-87836号公報
4.特開平7-109948号公報
5.特開2013-151926号公報(新たに提示する文献、周知技術を示す文献)
6.特開2013-151910号公報(新たに提示する文献、周知技術を示す文献)
7.特開2013-60938号公報(新たに提示する文献、周知技術を示す文献)

2.平成29年5月23日付け拒絶理由通知書の概要
平成29年5月23日付け拒絶理由通知書(発送日:平成29年5月30日)の概要は以下の通りである。

「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(進歩性)について
・請求項1
・引用文献等1?4
請求項1に係る発明は、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項2
・引用文献等1?4
請求項2に係る発明は、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献一覧>
1.特開平11-287150号公報
2.特開2004-27898号公報
3.特開2000-87836号公報
4.特開平7-109948号公報」

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成30年3月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下の通りのものと認める。

「 【請求項1】
クランクシャフトに付随するクランク角センサが、クランクシャフトが単位角度回転する毎にクランク角信号をパルス信号として出力しつつ、クランクシャフトの特定の回転位相角においてはその前記パルス信号を出力せずに欠損させるものであり、
前記パルス信号の欠損が前記クランクシャフトの回転時に独立して1回発生する単欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別し、また、前記パルス信号の欠損が前記パルス信号を介して複数回連続して発生する複数欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別する内燃機関の制御装置であって、
前記単欠歯欠損が、内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定され、
始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、クランクシャフトの回転角速度の低下度合いの勾配が所定勾配以上に大きい場合に前記単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止する内燃機関の制御装置。
【請求項2】
クランクシャフトに付随するクランク角センサが、クランクシャフトが単位角度回転する毎にクランク角信号をパルス信号として出力しつつ、クランクシャフトの特定の回転位相角においてはその前記パルス信号を出力せずに欠損させるものであり、
前記パルス信号の欠損が前記クランクシャフトの回転時に独立して1回発生する単欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別し、また、前記パルス信号の欠損が前記パルス信号を介して複数回連続して発生する複数欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別する内燃機関の制御装置であって、
前記単欠歯欠損が、内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定され、
始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、クランクシャフトの回転数が所定値以下の場合に前記単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止し、
クランクシャフトの回転数の変動が誘起される所定の変動誘起要因が成立している場合、そうでない場合と比較して前記回転数の所定値を高く設定することとし、
前記変動誘起要因が、ブレーキペダルやアクセルペダルが踏まれた、内燃機関の失火が発生した、自動変速機側の入力側回転数が内燃機関のクランクシャフトの回転数を上回った、エアコンディショナ、ヒータ、オーディオ機器、カーナビゲーションシステムといった補機を稼働させる操作がなされた、または稼働中の前記補機の負荷が変動したりしたことである内燃機関の制御装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献1(特開平11-287150号公報)には、「内燃機関のクランク角判定装置」に関して、図面(特に図1ないし図5を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア 「【0004】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、エンジンの回転変動が大きい時でも、クランク角判定精度を確保できる内燃機関のクランク角判定装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関のクランク角判定装置によれば、パルス信号発生手段は、内燃機関のクランク軸の回転に応じて複数の特定クランク角以外のクランク角で等間隔のパルス信号を発生し、複数の特定クランク角で前記等間隔のパルス信号と異なる間隔のパルス信号(以下「不等間隔パルス信号」という)を1個又は複数個発生し、クランク角判定手段は、前記パルス信号発生手段から出力されるパルス信号をカウントすると共に前記不等間隔パルス信号を検出してそれを基準にして前記パルス信号のカウント値からクランク角を判定する。この際、クランク軸の回転変動を回転変動判定手段によって判定し、それによって、所定以上の回転変動と判定される期間には、前記複数の不等間隔パルス信号のうちの一部の不等間隔パルス信号の検出を許容し、他の不等間隔パルス信号の検出を誤判定防止手段によって禁止する。」

イ 「【0008】また、所定以上の回転変動であるか否かの判定は、機関回転数を検出して行っても良いが、一般に、不等間隔パルス信号と等間隔パルス信号とを誤判別するような回転変動は、機関回転数が低い始動時に発生するため、請求項3のように、内燃機関のクランキング開始から所定期間内である時に所定以上の回転変動と判定するようにしても良い。このようにすれば、例えばスタータスイッチの信号から極めて簡単に所定以上の回転変動の期間を判定することができる。
【0009】或は、請求項4のように、所定以上の回転変動と判定する“所定期間”を、内燃機関のクランキング開始から機関回転数が始動完了回転数に上昇するまでの期間に設定しても良い。始動が完了すれば、クランク軸の回転が比較的安定し、不等間隔パルス信号を誤判別するような大きな回転変動は発生しにくくなるため、始動完了までの期間を所定以上の回転変動の期間とすることで、クランク角の誤判定防止処理期間の長さを適正化できる。
【0010】ところで、冷却水温が低くなるほど、内燃機関のフリクションが大きくなってクランク軸の回転が不安定になるため、冷却水温が低くなるほど、クランク軸の回転変動が大きくなる傾向があるが、冷却水温が高い時には、内燃機関のフリクションが小さくなるため、始動時でも、不等間隔パルス信号を誤判別するような大きな回転変動は生じない。
【0011】この点を考慮して、請求項5のように、上記請求項3又は4で所定以上の回転変動と判定する所定期間内で且つ冷却水温が所定温度以下のときに所定以上の回転変動と判定するようにしても良い。このようにすれば、始動時で且つ冷却水温が低い時のみ前述したクランク角の誤判定防止処理が実施され、始動時でも、不等間隔パルス信号を誤判別するような大きな回転変動が生じない冷却水温の時には、クランク角の誤判定防止処理が実施されないので、不必要な誤判定防止処理を行わずに済み、始動時のクランク角判定精度を更に向上することができる。」

ウ 「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態では、例えば4気筒のエンジン(図示せず)を制御対象とする。4気筒エンジンは、#1気筒と#4気筒、#2気筒と#3気筒とが、それぞれのピストンが同じ位相で運動する気筒グループを構成し、例えば、気筒グループの一方の気筒が爆発行程にあるときに他方の気筒が吸気行程にある。
【0013】次に、この4気筒エンジンのクランク角判定や気筒判別に用いられるクランクセンサ11(パルス信号発生手段)とカムセンサ12の構成について説明する。クランクセンサ11は、図3に示すように、クランク軸13に嵌着されたクランク側シグナルロータ14の外周に対向し、その外周に例えば10℃Aのピッチで等間隔に形成された歯15を検出する例えば電磁ピックアップ式センサである。クランク側シグナルロータ14の外周3箇所に、歯15が2個ずつ欠損した欠歯部16?18が形成されており、欠歯部16の位置は、#1気筒の圧縮上死点前5℃A(以下「#1BTDC5℃A」と記載、他の気筒についても同様)又は#4BTDC5℃Aにてクランクセンサ11と対向する歯15aよりも、クランク軸13の回転方向(矢印方向)に4,5歯分離れたところに位置する。また、欠歯部17,18は、#2BTDC5℃A又は#3BTDC5℃Aにてクランクセンサ11と対向する歯15bよりも、クランク軸13の回転方向に4,5歯分、1,2歯分離れたところに連続して位置する。
【0014】このクランクセンサ11は、クランク軸13の回転に応じて、図5に示すように、特定クランク角(欠歯部16?18の位置)以外のクランク角で、等間隔のパルス信号(クランク信号)を出力し、特定クランク角(欠歯部16?18の位置)でパルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)を出力する。」

エ 「【0016】これらクランクセンサ11のクランク信号とカムセンサ12のカム信号は、図示しないエンジン電子制御回路(以下「ECU」という)に入力される。このECUは、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶されたエンジン制御プログラムに従い、上記クランク信号、カム信号に基づいて後述するクランク角判定、気筒判別、エンジン回転数の演算等を行うと共に、これらの演算結果と各種センサ等から出力される各運転状態情報に基づいて最適な点火時期と燃料噴射量を演算し、点火動作と燃料噴射動作を制御する。
【0017】この場合、クランク角判定は、図1及び図2に示すプログラムによって実行される。本プログラムは、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン後にクランクセンサ11からクランク信号が入力される毎に実行され、特許請求の範囲でいうクランク角判定手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、クランク信号のパルス間隔Ti を算出し、次のステップ102で、イグニッションスイッチのオン後、最初の気筒判別が完了しているか否かを判定する。
【0018】もし、最初の気筒判別が完了していなければ、次のようにして最初の気筒判別を行う(ステップ103?ステップ111)。まず、ステップ103で、いずれかの欠歯部を検出済みか否か(欠歯部検出済みフラグXGAP=1か否か)を判定し、欠歯部未検出であれば、ステップ104に進み、最初の欠歯部16又は17を検出するために、次式を満たすか否かを判定する。
(T_(i-1) /T_(i) )<判定値K_(1) (但しK_(1) =例えば0.5?0.7)
【0019】ここで、T_(i-1) は、パルス間隔Ti の直前のパルス間隔である。欠歯部16又は17のパルス間隔は、通常のクランク信号のパルス間隔の約3倍程度となる(回転変動が少ない場合)。このステップ104で、(T_(i-1) /T_(i) )≧K_(1) の場合には、欠歯部未検出と判定され、ステップ105に進み、欠歯部検出済みフラグXGAPを欠歯部未検出を意味する「0」にリセットして、本プログラムを終了する。
【0020】その後、欠歯部16又は17がクランクセンサ11に到達すると、ステップ104で、(T_(i-1) /T_(i) )<判定値K_(1) と判定され、欠歯部16又は17が検出される。この場合は、ステップ106に進み、欠歯部検出済みフラグXGAPを欠歯部検出済みを意味する「1」にセットして、本プログラムを終了する。
【0021】その後、本プログラムが起動された時には、上記ステップ103で、XGAP=1(欠歯部検出済み)と判定されて、ステップ107に進み、上記ステップ104で検出した欠歯部16又は17の次に検出された歯部が欠歯部18であるか否かを判定するために、次式を満たすか否かを判定することで、欠歯部16と欠歯部17とを判別する。
(T_(i-1) /T_(i) )<判定値K_(2) (但しK_(2) =例えば1.5?2)
ここで、T_(i-1) は、直前のパルス間隔、つまり、欠歯部16又は17のパルス間隔である。もし、今回のパルス間隔T_(i) が欠歯部18であれば、パルス間隔T_(i)が直前の欠歯部16又は17のパルス間隔T_(i-1) とほぼ同等の長さであり、欠歯部18でなければ、パルス間隔T_(i) は欠歯部16又は17のパルス間隔T_(i-1) のほぼ1/3程度である(回転変動が少ない場合)。
【0022】従って、このステップ107で、(T_(i-1) /T_(i) )<K_(2) の場合には、連続した欠歯部18の検出と判断される。この場合には、今回検出したクランク信号の発生位置を欠歯部18の直後の歯15b(#3BTDC5℃A又は#2BTDC5℃A)と判断して、ステップ108に進み、クランク信号カウンタCNEのカウント値を「0」にリセットする。#3BTDC5℃Aと#2BTDC5℃Aとの判別は、カム信号の有無によって行われる。尚、このクランク信号カウンタCNEは、図5に示すように、クランク信号が入力される毎(後述する図2のステップ112を通過する毎)にカウントアップし、そのカウント値が「29」を越えると、「0」にリセットされる。
【0023】一方、ステップ107で、(T_(i-1) /T_(i) )≧K_(2) の場合には、連続した欠歯部18が検出されない(通常のクランク信号である)と判断される。この場合には、今回検出したクランク信号の発生位置を欠歯部16から1歯分離れた歯15c(#1BTDC25℃A又は#4BTDC25℃A)と判断して、ステップ109に進んで、クランク信号カウンタCNEのカウント値を「14」にセットする。尚、#1BTDC25℃Aと#4BTDC25℃Aとの判別は、カム信号の有無によって行われる。
【0024】このようにしてステップ108又は109で、連続した欠歯部18の検出の有無に応じてクランク信号カウンタCNEのカウント値を「0」又は「14」にセットした後、ステップ110に進み、欠歯部検出済みフラグXGAPを「0」にリセットし、次のステップ111で、最初の気筒判別完了とする。以上説明した最初の気筒判別処理(ステップ103?111)は、クランキング開始直後のスタータの駆動力のみでエンジンが回転している状態の時に実行されるため、欠歯部16?18のパルス間隔と通常のクランク信号のパルス間隔とを誤判別させるような大きな回転変動は発生しない。
【0025】以上のようにして最初の気筒判別を完了すると、その後、本プログラムを起動する毎(クランク信号が入力される毎)に、ステップ102から図2のステップ112に進み、クランク信号カウンタCNEをカウントアップする。このクランク信号カウンタCNEのカウント値とカム信号に基づいてクランク角判定と気筒判別を行って、燃料噴射時期や点火時期が制御される。」

オ 「【0028】これに対し、上記ステップ117で、クランク信号カウンタCNEのカウント値が、「29,0,1」のいずれでもないと判定された場合は、ステップ119に進み、クランク信号カウンタCNEのカウント値が、「13,14,15」のいずれかであるか否かを判定する。このカウント値が、「13,14,15」のいずれかであれば、ステップ120に進み、今回検出したクランク信号の発生位置を欠歯部16の直後の歯15e(#1BTDC35℃A又は#4BTDC35℃A)と判定し、クランク信号カウンタCNEのカウント値を「13」にセットする。尚、#1BTDC35℃Aと#4BTDC35℃Aとの判別は、カム信号の有無によって行われる。」

カ 「【0032】通常、クランク軸13の回転変動発生時、その回転変動は、圧縮TDCに向かうほど回転数が低下するような周期的な回転変動となる(圧縮TDCの直前は回転抵抗が大きいためである)。このため、圧縮TDCの手前に位置する欠歯部16を検出した直後に検出される通常のパルス間隔は、回転変動により長く検出される傾向があり、これが原因で、従来システムでは、回転変動が大きいと、欠歯部16検出直後の通常のパルス間隔を誤って欠歯部と判定してしまうおそれがある。一方、前記ステップ114のように、最初の欠歯部16又は17を検出する場合には、欠歯部16又は17のパルス間隔が長く検出されても、欠歯部16又は17を検出するステップ114の判定結果には全く影響がなく、欠歯部16又は17を正確に検出することができる。
【0033】この点を考慮し、最初の欠歯部16又は17の検出後に、次の欠歯部18の有無を判定する際に、ステップ122で、クランク軸13の回転変動が大きいか否かを判定し、回転変動が大きいと判定される時は、次の欠歯部18の有無を判定する処理(ステップ123?125)を省略する。このステップ122の処理が特許請求の範囲でいう回転変動判定手段及び誤判定防止手段としての役割を果たす。このステップ122では、回転変動が大きいか否かを次の○1?○3の条件が全て成立するか否かによって判定する。
○1スタータのオン(エンジンのクランキング中であること)
○2エンジン回転数が始動完了回転数以下であること
○3冷却水温が所定温度以下であること
【0034】ここで、始動完了回転数は、エンジンが始動完了(完爆)したと判定できる回転数であり、例えば400?800rpmの範囲内で設定される。また、所定温度は、エンジンオイルの粘性が大きく低下する極低温度、例えば-20?-30℃の範囲内で設定される。極低温時は、エンジンオイルの粘性低下によりエンジンのフリクションが大きくなるため、クランキング開始後の混合気の燃焼が比較的不安定な期間(乱爆期間)に、欠歯部の誤判定を発生させるような大きな回転変動が発生しやすい。始動完了後は、クランク軸13の回転が比較的安定するため、欠歯部を誤判定させるような大きな回転変動はほとんど発生しない。
【0035】このような事情を考慮し、ステップ122では、欠歯部の誤判定を発生させるような大きな回転変動の判定基準として上記○1?○3の条件が設定されている。
【0036】これら○1?○3の条件が全て成立し、クランク軸13の回転変動が大きいと判定された時には、上述したように、次の欠歯部18の有無を誤判定する可能性があるため、次の欠歯部18の有無を判定する処理(ステップ123?125)を省略して、ステップ126に進み、欠歯部検出済みフラグXGAPを欠歯部未検出を意味する「0」にリセットして、本プログラムを終了する。」(「○1」、「○2」及び「○3」は、いずれも○により囲われた数字である。以下同様。)

キ 「【0044】また、上記実施形態では、ステップ122で、○1スタータオン、○2エンジン回転数NE≦始動完了回転数、○3冷却水温THW≦所定温度の3つの条件が全て成立する時に、回転変動が大きいと判断して、誤判定するおそれのある次の欠歯部18を検出する処理(ステップ123?125)を禁止するようにしたが、これ以外に、○1?○3の3つの条件のうち、いずれか2つの条件、又はいずれか1つの条件のみを用いて、回転変動が大きいか否かを判定するようにしても良い。」

ク 上記ウの段落【0013】及び【0014】の記載並びに図3の図示内容からみて、欠歯部16におけるパルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)の出力は、クランク軸13の回転時に独立して1回なされることが分かる。

ケ 上記ウの段落【0013】及び【0014】の記載並びに図3の図示内容からみて、2つの欠歯部17及び18におけるパルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)の出力は、クランク軸13の回転時に連続してなされることが分かる。

コ 上記ウの段落【0014】及び上記ク並びにケからみて、クランク軸13に嵌着されたクランク側シグナルロータ14の外周に等間隔に形成された歯15を検出するクランクセンサ11は、クランク軸13が単位角度回転する毎に等間隔のパルス信号(クランク信号)を出力し、クランクシャフトの特定クランク角においてはパルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)の出力するものといえる。

サ 上記ウの段落【0013】の記載及びオの記載並びに図3の図示内容からみて、欠歯部16の位置は、#1気筒又は#4気筒の圧縮上死点前35℃Aより前であることが分かる。

シ 上記ウの段落【0013】及び上記エの段落【0018】ないし【0024】の記載からみて、気筒判別は、欠歯部16ないし18の検出に基いて各気筒の行程を判別するものといえる。

ス 上記イの段落【0008】の「所定の回転変動であるか否かの判定は、機関回転数を検出して行っても良いが、一般に、不等間隔パルス信号と等間隔パルス信号とを誤判別するような回転変動は、機関回転数が低い始動時に発生する」との記載は、不等間隔パルス信号と等間隔パルス信号とを誤判別するような回転変動は、一般に、機関回転数が低い始動時に発生するものの、始動時以外の通常運転時でも発生しうることが示唆されているといえる。

セ 上記イ、カ及びキの記載から、「内燃機関のクランキング開始から所定時間」内である機関回転数が低い始動時は所定以上の回転変動と判定すること、及び「内燃機関のクランキング開始から所定時間」を判定するために、スタータスイッチの信号、内燃機関のクランキング開始から機関回転数が始動完了回転数に上昇するまでの期間、及び冷却水温が所定温度以下であることを用いることができることが分かる。

(2)引用発明
上記(1)の記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「クランク軸13に嵌着されたクランク側シグナルロータ14の外周に等間隔に形成された歯15を検出するクランクセンサ11は、クランク軸13が単位角度回転する毎に等間隔のパルス信号(クランク信号)を出力し、クランクシャフトの特定クランク角においてはパルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)を出力するものであり、
前記パルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)の出力が、独立して1回出力されるクランク軸13の回転時にクランク側シグナルロータ14の外周に形成された欠歯部16を検出することに基づいて各気筒の行程を判別し、また、前記パルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)の出力が、クランク側シグナルロータ14の外周に形成された2つの欠歯部17及び18を検出することに基づいて各気筒の行程を判別する内燃機関のクランク角判定装置であって、
欠歯部16の位置は、#1気筒又は#4気筒の圧縮上死点前35℃Aより前であり、
始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、機関回転数の検出により欠歯部18の有無の判定を省略する内燃機関のクランク角判定装置。」

2.引用文献3
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献3(特開2000-87836号公報)には、「内燃機関の点火制御方法」に関して、図面(特に図1及び図3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0010】一方、一旦回転数が所定回転数以上になった場合でも、クラッチ操作等で回転数が急減する場合がある。この場合、始動直後の乱爆と同様に、気筒判別の誤判別を生じる場合がある。これを防止するために、回転数がある値以下となった場合に、気筒判別が中止され前回の気筒判別の結果に基づいて各気筒の点火制御が行われる。」

イ 「【0014】クランク角センサ5は、内燃機関13におけるクランク軸の回転に伴って、所定のパルス信号出力するものである。ここで、一般に内燃機関の形式としては、いわゆる4ストロークサイクルと2ストロークサイクルとが代表的である。4ストロークサイクルとは、吸気-圧縮-爆発-排気をそれぞれ分けて、クランク軸の2回転(回転角720度)で1行程とするものである。一方、2ストロークサイクルとは、吸入や圧縮等の行程を一部オーバーラップさせ、クランク軸の1回転(回転角360度)を1行程とするものである。本発明では、一例として4ストロークサイクルの内燃機関13を用いた場合の例を説明する。従って、クランク角センサ5は、カムシャフトに直接付ける場合のほか、クランク軸からギヤを介して回転数を半減させて取り付けるようにすればよい。尚、本実施形態では3気筒の内燃機関を用いている。
【0015】図3は、内燃機関13が正常に回転している場合のクランク角センサ5の出力を示す図である。この図に示すように、各気筒について上死点前75度と上死点前5度においてパルス状のクランク角情報P11,P12,P21,P22,P31,P32がそれぞれ出力されるようになっている。また、本実施形態では、第2番目の気筒については、更に2つのクランク角情報(第1付加信号P2a及び第2付加信号P2b)が出力されるようになっている。そして、主制御部9では、クランク角センサ5からの信号により、気筒判別を行う。」

ウ 「【0021】但し、クランク角センサの信号間の時間は内燃機関の回転数に反比例する。従って、回転が上昇する時はその時間が小さくなり、逆に回転数が下降している時はその時間は大きくなる。このため、内燃機関13の始動時の他、上記したようにクラッチ接続時等にも内燃機関13の回転数が急減し、上式を満たしてしまう場合がある。この場合、本来は、正常なタイミングでクランク角情報が出力されていないにも拘わらず、上式を満たした直後の信号が第1気筒の上死点前75度のクランク角情報と誤って判断されてしまう場合がある。このクランク角情報に基づいて気筒判別をした後、点火制御を行うと内燃機関13に不具合が生じる場合もある。そこで、次のような制御を行う。
【0022】例えば、図1に示すように、内燃機関13が始動後、所定の回転数(Ne1)を超え、しかる後、クラッチ操作等によって回転数が急減する場合がある。本実施形態では、所定の回転数として、Ne2及びNe3を設定している。これらNe2及びNe3は、クラッチ操作で低下すると思われる回転数である。ここで、各回転数には以下の関係が成立している。
Ne0<Ne2<Ne3<Ne1
そして、内燃機関13の回転数が上記Ne2よりも低下した時に、気筒判別を中止する。各回転数の値としては、一例としてNe0が300rpm、Ne1が1200rpm、Ne2が750rpm、Ne3が600rpm程度に設定した。但し、これらの回転数はあくまでも一例であり、内燃機関の形式、大きさ、許容回転数等によって様々に設定される。」

以上から、引用文献3の記載事項は以下のとおりといえる。

「内燃機関13が始動後、所定の回転数(Ne1)を超えた後、クラッチ操作等で回転数が急減し、所定の回転数(Ne2)値以下となった場合、気筒判別を中止すること。」

3.引用文献4
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献4(特開平7-109948号公報)には、「内燃機関のクランク角判別装置」に関して、図面(特に、図1、図3及び図4を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達するためになされた本発明は、図12に例示するように、クランク軸の回転に応じて、所定のクランク角では間隔を異にし他のクランク角では等間隔なパルス信号を発生するパルス信号発生手段と、該パルス信号の発生間隔に基づいてクランク角を判別するクランク角判別手段と、を備えた内燃機関のクランク角判別装置において、上記パルス信号発生手段が、クランク角に応じて異なる回数連続した不等間隔部を有するパルス信号を発生する手段を含み、上記クランク角判別手段が、上記パルス信号の不等間隔部の連続回数に基づいてクランク角を判別する手段を含むことを特徴とする内燃機関のクランク角判別装置を要旨としている。
【0008】
【作用】このように構成された本発明では、パルス発生手段は、クランク角に応じて異なる回数連続した不等間隔部を有するパルス信号を発生し、クランク角判別手段は、そのパルス信号の不等間隔部の連続回数に基づいてクランク角を判別する。不等間隔部の連続回数はエンジン回転数の変化などに関わらず比較的正確に計数可能である。例えば、不等間隔部の大きさを計数する場合に比べてエンジン回転数の影響を受け難い。また、本発明は、パルス信号の発生様式およびクランク角の判別方法を変更するだけでよく、従来装置にセンサなどを新たに設ける必要がない。従って、本発明では、簡単な構成にして正確にクランク角を判別することが可能となる。
【0009】なお、多数のクランク角を判別する場合、不等間隔部を多数連続させる必要が生じる。このような場合、クランク軸の回転に応じて変動する運転状態の変動を検出する運転状態変動検出手段を新たに設け、その運転状態変動検出手段が上記パルス信号の等間隔部で所定の運転状態の変動を検出したとき、上記クランク角判別手段が、上記クランク角とは異なるもう一つの所定クランク角を判別するようにするとよい。このように構成した場合、パルス信号の等間隔部でも一つの所定クランク角を判別することができるので、他の所定クランク角に対応する不等間隔部の連続回数を低減することが可能となる。
【0010】更に、このような運転状態の変動に基づくクランク角の判別は、内燃機関の回転数が所定値以上のとき、バッテリ電圧が所定値以上のとき、または、内燃機関がクランキング状態のときのみ行うようにしてもよい。内燃機関の回転数が低いときやバッテリ電圧の低いときはクランク軸の回転に応じて変動する運転状態の変動が不規則になる。そこで、上記運転状態の変動に基づくクランク角の判別をこれらの場合に禁止することによりクランク角の誤判別を一層良好に防止することが可能となる。また、クランク軸がスタータの駆動力によって回転するクランキング状態では、上記運転状態の変動とクランク角との対応がより良好になる。そこで、クランキング状態のときにのみ運転状態の変動に基づくクランク角の判別を行うことによっても一層正確にクランク角を判別することが可能となる。」

イ 「【0013】内燃機関のクランク軸20近傍には図1に示すクランク軸センサ21が装着されている。クランク軸20には、そのクランク軸20と一体に回転するクランク側円板23が同軸状に固定され、クランク軸センサ21は、そのクランク側円板23の周囲に等間隔で形成された突起25を検出する電磁ピックアップ式の検出器である。
【0014】突起25は、クランク軸20が気筒1または6の圧縮上死点(以下、TDC1,TDC6と記載、他の気筒についても同様)に対応するクランク角まで回転したときクランク軸センサ21と対向する突起25aよりも、クランク軸20の回転方向に4歯分および5歯分手前の部分が欠落しており、この部分に欠歯部29aが形成されている。また、TDC2,TDC5にてクランク軸センサ21と対向する突起25bよりも、1歯分,2歯分,4歯分,および5歯分手前の部分で突起25が欠落しており、この部分に欠歯部29b,29cが形成されている。なお、TDC3,TDC4にてクランク軸センサ21と対向する突起25cの近傍には欠歯部が形成さていない。」

ウ 「【0046】更に、このような運転状態の変動に基づくクランク角の判別を、内燃機関の回転数が所定値以上のとき、バッテリ電圧が所定値以上のとき、または、内燃機関がクランキング状態のときのみ行うようにすれば、より一層正確にクランク角を判別することができる。また、このように構成した場合も、本発明は、パルス信号の発生様式およびクランク角の判別方法のみを変更するだけで実施することができる。」

以上から、引用文献4の記載事項は以下のとおりといえる。

「運転状態の変動に基づくクランク角の判別を、内燃機関の回転数が所定値以上のとき、バッテリ電圧が所定値以上のとき、または、内燃機関がクランキング状態のときのみ行うこと。」

4.引用文献5
原査定に周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された引用文献5(特開2013-151926号公報)には、「内燃機関の制御装置」に関して、図面(特に図3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

「【0036】
但し、クランクシャフトのロータの歯は一部欠けており、その欠歯部分に起因して、図3に示すようにクランク角信号パルスもまた一部が欠損する。図3に示している例では、十七番目、十八番目、二十番目、二十一番目、三十五番目及び三十六番目に該当するパルスが欠損している。この欠損を基にして、クランクシャフトの絶対的な角度を知ることが可能である。欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくと、欠損した十八番目のパルスに続く十九番目のパルスのタイミングが180°CAということになる。」

以上から、引用文献5の記載事項は以下のとおりといえる。

「クランクシャフトのロータの三十五番目及び三十六番目の欠歯部分に起因するパルスの欠損のうち、欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくこと。」

5.引用文献6
原査定に周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された引用文献6(特開2013-151910号公報)には、「内燃機関の制御装置」に関して、図面(特に、図4を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

「【0027】
但し、クランクシャフトが一回転する間に三十六回のパルスを出力するわけではない。クランクシャフトのロータ7の歯71は一部欠けており、その欠歯部分に起因して、図4に示すようにクランク角信号パルスもまた一部が欠損する。図2及び図4に示している例では、十七番目、十八番目、二十番目、二十一番目、三十五番目及び三十六番目に該当するパルスが欠損している。この欠損を基にして、クランクシャフトの絶対的な角度を知ることが可能である。欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくと、欠損した十八番目のパルスに続く十九番目のパルスのタイミングが180°CAということになる。上記の0°CAのタイミングを示すパルスは、気筒1の圧縮上死点に等しいか、約10°CA以内の範囲で圧縮上死点よりも前方にオフセットさせる。」

以上から、引用文献6の記載事項は以下のとおりといえる。

「クランクシャフトのロータ7の三十五番目及び三十六番目の欠歯部分に起因するパルスの欠損のうち、欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくと、上記0°CAのタイミングを示すパルスは、気筒1の圧縮上死点に等しいこと。」

6.引用文献7
原査定に周知技術を示す文献として引用され、本願出願前に頒布された引用文献7(特開2013-60938号公報)には、「エンジン制御装置」に関して、図面(特に、図3を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

「【0033】
(気筒判別)
ECU10は、クランク軸の回転に伴って所定の角度間隔で発生する信号列中に所定の角度位置を表わす基準位置信号を有するクランク角信号と、カム軸50の回転に伴って所定の角度位置で発生するカム角信号とに基づいて、気筒判別を行い、吸入行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程からなる1燃焼サイクルにおけるエンジン回転位置をクランク角信号に基づいて判定する。
【0034】
クランク角信号は、クランク軸に固定されたクランクロータの外周に所定の角度間隔(例えば10°)で形成された歯を、クランク軸の回転に伴って図示しないクランク角センサが検出することにより発生する。
【0035】
尚、クランクロータの外周に形成される歯の間隔は10°に限るものではなく、10°より小さくてもよいし、大きくてもよい。クランクロータの歯列の途中には、1個の歯を挟んで2個の歯が2箇所で連続して欠損した欠歯の連欠け200(図3参照)と、2個の歯が1箇所で欠損した欠歯の単欠け202(図3参照)とが、所定の角度位置として180°反対側に形成されている。連欠け200、単欠け202を検出するときのクランク角信号は、気筒判別および1燃焼サイクルにおけるエンジン回転位置の設定を行うときの基準位置信号になる。」

以上から、引用文献7の記載事項は以下のとおりといえる。

「クランク軸に固定されたクランクロータの外周に形成された歯、及び1個の歯を挟んで2個の歯が2箇所で連続して欠損した欠歯の連欠け200、並びに連欠け200の180°反対側に形成された2個の歯が1箇所で欠損した欠歯の単欠け202を、クランク軸の回転に伴ってクランク角センサが検出することにより発生するクランク角信号とカム角信号とに基づいて気筒判別を行うこと、及び連欠け200、単欠け202を検出するときのクランク角信号は、気筒判別を行うときの基準位置信号になること。」

第5 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「クランク軸13」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「クランクシャフト」に相当し、以下同様に、「クランク軸13に嵌着されたクランク側シグナルロータ14の外周に等間隔に形成された歯15を検出するクランクセンサ11」は「クランクシャフトに付随するクランク角センサ」に、「等間隔のパルス信号」は「パルス信号」に、「クランク信号」は「クランク角信号」に、「特定クランク角」は「特定の回転位相角」に、「パルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)を出力する」は「パルス信号を出力せずに欠損させる」に、「内燃機関のクランク角判定装置」は「内燃機関の制御装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「クランク側シグナルロータ14の外周に形成された欠歯部16」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「独立して1回発生する単欠歯欠損」に相当し、同様に「クランク側シグナルロータ14の外周に形成された2つの欠歯部17及び18」は「複数回連続して発生する複数欠歯欠損」に相当する。
そして、後者の「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、機関回転数の検出により欠歯部18の有無の判定を省略する」と前者の「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、クランクシャフトの回転角速度の低下度合いの勾配が所定勾配以上に大きい場合に前記単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止する」とは、「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、所定に場合に気筒の行程の判別を行わない」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「クランクシャフトに付随するクランク角センサが、クランクシャフトが単位角度回転する毎にクランク角信号をパルス信号として出力しつつ、クランクシャフトの特定の回転位相角においてはその前記パルス信号を出力せずに欠損させるものであり、
前記パルス信号の欠損が前記クランクシャフトの回転時に独立して1回発生する単欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別し、また、前記パルス信号の欠損が前記パルス信号を介して複数回連続して発生する複数欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別する内燃機関の制御装置であって、
始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、所定の場合に気筒の行程の判別を行わない内燃機関の制御装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者は「単欠歯欠損が、内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定」されるのに対し、後者は「欠歯部16の位置は、#1気筒又は#4気筒の圧縮上死点前35℃Aより前」であって、単欠歯欠損は「内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定」されるものでない点。

[相違点2]
「所定の場合」に関し、前者は「クランクシャフトの回転角速度の低下度合いの勾配が所定勾配以上に大きい場合」であるのに対し、後者は「機関回転数の検出」である点。

[相違点3]
「気筒の行程の判別を行わない」に関し、前者は「単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止」するのに対し、後者は複数回連続して発生する複数欠歯欠損の一部である「欠歯部18の有無」の判定を省略するものである点。

事案に鑑み、先ず相違点3について検討する。
引用文献3の記載事項は、「内燃機関13が始動後、所定の回転数(Ne1)を超えた後、クラッチ操作等で回転数が急減し、所定の回転数(Ne2)値以下となった場合、気筒判別を中止すること。」である。
また、引用文献4の記載事項は、「運転状態の変動に基づくクランク角の判別を、内燃機関の回転数が所定値以上のとき、バッテリ電圧が所定値以上のとき、または、内燃機関がクランキング状態のときのみ行うこと。」である。
したがって、引用文献3及び引用文献4の記載事項は、「単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止」するものではない。

同様に、引用文献5ないし引用文献7の記載事項は、それぞれ「クランクシャフトのロータの三十五番目及び三十六番目の欠歯部分に起因するパルスの欠損のうち、欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくこと。」、「クランクシャフトのロータ7の三十五番目及び三十六番目の欠歯部分に起因するパルスの欠損のうち、欠損した三十六番目のパルスの次の一番目のパルスのタイミングを0°CAとおくと、上記0°CAのタイミングを示すパルスは、気筒1の圧縮上死点に等しいこと。」、及び「クランク軸に固定されたクランクロータの外周に形成された歯、及び1個の歯を挟んで2個の歯が2箇所で連続して欠損した欠歯の連欠け200、並びに連欠け200の180°反対側に形成された2個の歯が1箇所で欠損した欠歯の単欠け202を、クランク軸の回転に伴ってクランク角センサが検出することにより発生するクランク角信号とカム角信号とに基づいて気筒判別を行うこと、及び連欠け200、単欠け202を検出するときのクランク角信号は、気筒判別を行うときの基準位置信号になること。」である。
したがって、引用文献5ないし引用文献7の記載事項も、「単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止」するものではない。

さらに、引用文献3ないし引用文献7に、「単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止」することは明記されておらず、示唆もない。

してみると、引用発明に引用文献3ないし引用発明7の記載事項を適用しても、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項にはならない。
さらに、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項が周知技術又は技術常識ともいえない。

そうすると、引用発明及び引用文献3ないし引用文献7の記載事項を総合しても、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易になし得ることはできない。

したがって、相違点1及び2の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献3ないし引用文献7の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2
本願発明2と引用発明とを対比すると、後者の「クランク軸13」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「クランクシャフト」に相当し、以下同様に、「クランク軸13に嵌着されたクランク側シグナルロータ14の外周に等間隔に形成された歯15を検出するクランクセンサ11」は「クランクシャフトに付随するクランク角センサ」に、「等間隔のパルス信号」は「パルス信号」に、「クランク信号」は「クランク角信号」に、「特定クランク角」は「特定の回転位相角」に、「パルス間隔が3倍程度長くなるパルス信号(不等間隔のクランク信号)を出力する」は「パルス信号を出力せずに欠損させる」に、「内燃機関のクランク角判定装置」は「内燃機関の制御装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「クランク側シグナルロータ14の外周に形成された欠歯部16」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「独立して1回発生する単欠歯欠損」に相当し、同様に「クランク側シグナルロータ14の外周に形成された2つの欠歯部17及び18」は「複数回連続して発生する複数欠歯欠損」に相当する。
そして、後者の「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、機関回転数の検出により欠歯部18の有無の判定を省略する」と前者の「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、クランクシャフトの回転数が所定値以下の場合に前記単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止する」とは、「始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、所定に場合に気筒の行程の判別を行わない」という限りで一致する。

そうすると、両者は、
「クランクシャフトに付随するクランク角センサが、クランクシャフトが単位角度回転する毎にクランク角信号をパルス信号として出力しつつ、クランクシャフトの特定の回転位相角においてはその前記パルス信号を出力せずに欠損させるものであり、
前記パルス信号の欠損が前記クランクシャフトの回転時に独立して1回発生する単欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別し、また、前記パルス信号の欠損が前記パルス信号を介して複数回連続して発生する複数欠歯欠損に基づいて各気筒の行程を判別する内燃機関の制御装置であって、
始動時以外の通常運転時に行われる各気筒の行程の判別において、所定の場合に気筒の行程の判別を行わない内燃機関の制御装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点4]
前者は「単欠歯欠損が、内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定」されるのに対し、後者は「欠歯部16の位置は、#1気筒又は#4気筒の圧縮上死点前35℃Aより前」であって、単欠歯欠損は「内燃機関の特定の気筒の圧縮上死点に略等しいタイミングで出現するように設定」されるものでない点。

[相違点5]
「所定の場合」に関し、前者は「クランクシャフトの回転数が所定値以下の場合」であるのに対し、後者は「機関回転数の検出」である点。

[相違点6]
「気筒の行程の判別を行わない」に関し、前者は「単欠歯欠損に基づいて行う気筒の行程の判別を禁止」するのに対し、後者は複数回連続して発生する複数欠歯欠損の一部である「欠歯部18の有無」の判定を省略するものである点。

[相違点7]
前者は、「クランクシャフトの回転数の変動が誘起される所定の変動誘起要因が成立している場合、そうでない場合と比較して前記回転数の所定値を高く設定することとし、前記変動誘起要因が、ブレーキペダルやアクセルペダルが踏まれた、内燃機関の失火が発生した、自動変速機側の入力側回転数が内燃機関のクランクシャフトの回転数を上回った、エアコンディショナ、ヒータ、オーディオ機器、カーナビゲーションシステムといった補機を稼働させる操作がなされた、または稼働中の前記補機の負荷が変動したりしたこと」との事項を備えるのに対し、後者はかかる事項を備えていない点。

事案に鑑み、先ず相違点6について検討する。
相違点6は、本願発明1において検討した相違点3と同じである。そうすると、本願発明1における検討で上述した理由と同様の理由により、引用発明及び引用文献3ないし引用文献7の記載事項を総合しても、上記相違点6に係る本願発明2の発明特定事項を容易になし得ることはできない。

したがって、相違点4、5及び7の検討をするまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明及び引用文献3ないし引用文献7の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1及び本願発明2は、引用発明及び引用文献3ないし引用文献7の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2013-179191(P2013-179191)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 粟倉 裕二
水野 治彦
発明の名称 内燃機関の制御装置  
代理人 赤澤 一博  
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