• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1347164
審判番号 不服2017-9866  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-04 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2014-534657「卵形骨孔ガイドおよびACL再建方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日国際公開、WO2013/052547、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502183〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月 3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年(平成23年)10月 3日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 5月30日 :翻訳文提出
平成28年 8月 9日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月12日付け:拒絶査定
平成29年 7月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年7月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年7月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
中心軸に沿って近位端から遠位端まで延在していると共に、前記近位端から前記遠位端まで貫通して延在している穴を有する本体と、
前記本体の前記遠位端に連結された突出部材と、
を備え、前記本体の外径が、前記突出部材の外径よりも大きく、
前記突出部材が、前記穴によって画成される経路を妨げないガイド装置。
【請求項2】
前記本体の前記近位端に連結されたハンドルをさらに備える請求項1に記載のガイド装置。
【請求項3】
前記ハンドルが、前記本体の前記中心軸から1?90°の角度で前記本体に連結された請求項2に記載のガイド装置。
【請求項4】
前記穴が、ドリルの少なくとも一部分を受け入れるように構成された請求項1に記載のガイド装置。
【請求項5】
前記穴が、前記本体の前記中心軸に実質的に平行な方向に前記本体を通って形成された請求項1に記載のガイド装置。
【請求項6】
前記穴の中心軸が、前記本体の前記中心軸からずらされている、請求項5に記載のガイド装置。
【請求項7】
前記穴に受け入れられた前記ドリルによって骨内部に卵形骨孔を穿孔することができるように構成されており、
少なくとも2つの別個に形成された縫合糸ループを有する固定デバイスであって、第1移植片および第2移植片が少なくとも2つの縫合糸ループに連結された固定デバイスの前記第1移植片および前記第2移植片を前記卵形骨孔内で配向し、前記固定デバイスを前記骨の外表面に固定することができるように構成された、請求項4?6の何れか一項に記載のガイド装置。
【請求項8】
前記卵形骨孔は、前記ガイド装置の少なくとも一部分が前記骨に形成された中央の骨孔に配置された状態で、前記ガイド装置を通って形成された前記穴内に配置された前記ドリルを用いて、重なり合うように前記骨に穿孔された第1骨孔及び第2骨孔からなる請求項7に記載のガイド装置。
【請求項9】
前記ガイド装置の少なくとも一部分は、前記ガイド装置の前記突出部材の少なくとも一部分である請求項8に記載のガイド装置。
【請求項10】
前記ガイド装置は、第1位置と第2位置との間で前記突出部材の周りを枢動可能である請求項8に記載のガイド装置。
【請求項11】
リード縫合糸が、前記固定デバイスに連結可能である請求項7に記載のガイド装置。
【請求項12】
前記リード縫合糸を用いて前記固定デバイスを前記卵形骨孔に引き込ませることが可能である請求項11に記載のガイド装置。
【請求項13】
フリップ縫合糸が、前記固定デバイスに連結可能である請求項11に記載のガイド装置。
【請求項14】
前記固定デバイスが前記卵形骨孔内で配向可能であり、
前記固定デバイスの長手方向軸線が前記卵形骨孔の長手方向軸線と実質的に位置合わせ可能である請求項7に記載のガイド装置。
【請求項15】
前記固定デバイスの長手方向軸線が前記卵形骨孔の長手方向軸線に対して実質的に垂直となるように、前記固定デバイスが再配向可能である請求項7に記載のガイド装置。
【請求項16】
前記固定デバイスの長手方向軸線が前記卵形骨孔の長手方向軸線に対して実質的に垂直となるように、フリップ縫合糸を操作して、前記固定デバイスを前記骨の表面で再配向可能である請求項15に記載のガイド装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
中心軸に沿って近位端から遠位端まで延在していると共に、前記近位端から前記遠位端まで貫通して延在している穴を有する本体と、
前記本体の前記遠位端に連結された突出部材と、
前記本体の前記近位端に連結されて前記本体の前記遠位端に向かって延在するハンドルと、
を備え、前記本体の外径が、前記突出部材の外径よりも大きく、
前記突出部材が、前記穴によって画成される経路を妨げないガイド装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記本体の前記近位端に連結されたハンドル」について、上記のとおりその延在する方向について限定を付加するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2009/0222013号明細書(2009年9月3日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、仮訳は当審において翻訳したものであり、下線は、当審で付した。
「[0002] 1. Field of Technology
[0003] The present disclosure relates to the preparation of a bone tunnel for receipt of a fixation device during ligament reconstruction surgery, and more specifically, a tap guide for use in such preparation.」
(仮訳:[0002] 1.技術分野
[0003] 本開示は、靭帯再建手術中に固定装置を受容するための骨トンネルの製造に関するものであり、より具体的には、そのような製造において使用するためのタップガイドに関する。)

「[0027] FIG. 1 shows the tap guide 10 of the present disclosure. The tap guide 10 includes a shaft 11 having a proximal portion 11a and a distal portion 11b, a handle 12 coupled to the proximal portion 11a of the shaft 11 , and a tip 13 coupled to the distal portion 11b of the shaft 11 . The handle 12 includes a proximal portion 12a positioned substantially perpendicular to a longitudinal axis 11d of the shaft 11 and a distal portion 12b located at an angle to the proximal portion 12a. The distal portion 12b is configured for providing a user with a proper grip during surgery, as will be further described below. It is within the scope of this disclosure that the proximal portion 12a may be positioned parallel, or at an angle to, the longitudinal axis 11d of the shaft 11. It is also within the scope of this disclosure that the distal portion 12b may be in-line with or not at an angle to the proximal portion 12a.」
(仮訳:[0027] 図1は、本開示のタップガイド10を示す。タップガイド10は、近位部分11aと遠位部分11bとを有するシャフト11と、シャフト11の近位部分11aに結合されるハンドル12と、シャフト11の遠位部分11bに結合される先端部13とを有する。ハンドル12は、シャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有する。以下にさらに説明するように、遠位部分12bは、手術中に適切なグリップをユーザに提供するように構成される。近位部分12aは、シャフト11の長手方向軸11dに平行に、または角度をなして配置されてもよいことは、本開示の範囲内である。遠位部分12bが近位部分12aに対して一直線となっているか、または一直線になっていない場合も、本開示の範囲内である。)

「[0028] As shown in FIGS. 2A and 2B, the shaft 11 includes a through hole 11c extending a length of the shaft 11. The through hole 11c is configured for insertion of a tap, as will be more fully described below. Additionally, the shaft 11, including the proximal portion 11a, is substantially circular in shape. However, the distal portion 11b of the shaft 11 is beveled to facilitate coupling of the tip 13 to the distal portion 11b. The distal portion 11b may be beveled via machining or any other type of process. The tip 13 is located at an angleα, between about 2° and about 4°, relative to a longitudinal axis 11d of the shaft 11. However, for the purposes of this disclosure, the angle α may range from between about 0° to about 45°. Also for the purposes of this disclosure, the shaft 11 may be a shape other than circular.」
(仮訳:[0028] 図2Aと2Bに示すように、シャフト11は、シャフト11の長さ方向に延びる貫通孔11cを有する。貫通孔11cは、以下に詳しく説明するように、タップを挿入するように構成されている。さらに、近位部分11aを含むシャフト11は、実質的に円形である。しかしながら、シャフト11の遠位部分11bは、遠位部分11bへ先端部13の結合を容易にするために面取りされている。遠位部分11bは、機械加工または任意の他のタイプのプロセスを介して面取りすることができる。先端部13は、シャフト11の長手方向軸11dに対して角度α、約2°と約4°の間で配置される。しかしながら、本開示の目的によって、角度αは約0°から約45°の範囲であってもよい。また、本開示の目的によって、シャフト11は円形以外の形状であってもよい。)

「[0029] As shown in FIGS. 3A and 3B, the tip 13 includes a first end 13a, a second end 13b, and a groove 14 having a tapered depth along a length of the groove 14 such that the groove 14 is between about 40% to about 65% deeper at a second end 14a'' of the groove 14 relative to a first end 14a' of the groove 14. The tip 13 also includes a laser mark 15 that will be used as a guide in controlling the insertion depth of the tip 13 and the tap into the bone tunnel, as will be further described below. The laser mark 15 is located between about 25 mm to about 35 mm from the first end 13a of the tip 13 .」
(仮訳:[0029] 図3A及び3Bに示すように、先端部13は、第1の端部13aと、第2の端部13bとを有し、溝14は、第1の端部14a'と比較して、第2の端部14a''が約40%から約65%深くなるように、溝14の長さに沿ってテーパ形状の深さ有している。第1の端部13A、及び溝14を含む。先端部13はまた、以下にさらに説明するように、先端部13の挿入深さおよび骨トンネルへのタップを制御する際のガイドとして使用されるレーザマーク15を有する。レーザマーク15は、先端部13の第1の端部13aから約25mm?約35mmの間に位置する。)

「[0032] FIG. 5 shows the use of the tap guide 10 and the tap 20 for creating a notch in a wall of the bone tunnel 31 of a bone 30 during ligament reconstruction surgery, such as ligament reconstruction surgery. Such a notch creates enough of a pathway to substantially reduce the possibility of graft rotation and/or screw breakage, but allow enough contact between the screw and the graft for screw fixation. After creation of the bone tunnel 31 via a drill or other device for creating bone tunnels, the tip 13 of the tap guide 10 is inserted into the bone tunnel 31 until the laser mark 15 is aligned with the opening 31a to the tunnel 31. The tip 13 has a diameter that is substantially equal to the diameter of the bone tunnel 31. The diameter of the tip 13 is between about 4 mm and about 12 mm. After insertion of the tip 13, the tap 20 is then inserted into the through hole 11c of the shaft 11 and subsequently inserted into the bone tunnel 31 by rotating the tap 20 such that the threaded distal portion 21b of the shaft 21 creates a notch in the wall 32 of the bone tunnel 31. The tap 20 is rotated until the laser mark 21b'' of the tap 20 is aligned with the laser mark 15 of the tip 13. The threaded distal portion 21b extends about 2.5 cm along the length of the shaft 21. Consequently, the length of the notch is also about 2.5 cm. This length helps to substantially reduce screw breakage upon insertion of the screw into the bone tunnel 31 and allows rotation of the screw to occur the entire length, as will be more fully described below.」
(仮訳:[0032] 図5は、靭帯再建手術の際に骨30の骨トンネル31の壁にノッチを形成するためのタップガイド10およびタップ20の使用を示す。このようなノッチは、グラフトの回転および/またはネジの破損の可能性を実質的に低減するために十分な通路を形成するが、ねじ固定のためのネジとグラフトとが十分に接触するようになっている。骨トンネルを形成するためのドリルまたは他の装置を介して骨トンネル31を形成した後、レーザマーク15が骨トンネル31への開口部31aと整列するまで、タップガイド10の先端部13を骨トンネル31に挿入する。先端部13は、骨トンネル31の直径に実質的に等しい直径を有する。先端部13の直径は、約4mm?約12mmである。先端部13を挿入した後、タップ20がシャフト11の貫通孔11cに挿入され、続いて、シャフト21のねじ切りされた遠位部分21bが骨トンネル31の壁32にノッチを形成するように、タップ20を回転させることによって、骨トンネル31に挿入される。タップ20のレーザマーク21b''が先端部13のレーザマーク15と整列するまで、タップ20を回転させる。ねじ付き遠位部分21bは、シャフト21の長さに沿って約2.5cm延びている。したがって、ノッチの長さも約2.5cmである。この長さは、以下に詳細に説明するように、骨トンネル31へのネジの挿入時のネジの破損を実質的に減少させ、ねじの回転が全長に及ぶことを可能にする。)

「[0033] FIGS. 6A and 6B show the notch 40 that is created in the wall 32 of the bone tunnel 31. As stated above, the tip 13 includes a groove 14 having a tapered depth along a length of the groove 14. Consequently, during the creation of the notch 40, the distal portion 21b of the tap 20 cuts deeper in a first area 40a of the notch 40 than in a second area 40b of the notch 40. This difference in depth is more clearly shown in FIGS. 7A-7B and 8A- 8B. The bone tunnels 31 in FIGS. 7A-B and 8A-B are 6 mm and 10 mm, respectively. A tap having a 4 mm diameter shaft was used to make the notch 40. FIGS. 7A and 8A show the notch 40 in the second area 40b of the notch 40 and FIGS. 7B and 8B show the notch 40 in the first area 40 a of the wall 40 .」
(仮訳:[0033] 図6Aおよび6Bは、骨トンネル31の壁32に形成されるノッチ40を示す。上述したように、先端部13は、溝14の長さに沿ってテーパ状の深さを有する溝14を有する。したがって、ノッチ40の形成中に、タップ21の遠位部分20bはノッチ40の第2領域40bよりもノッチ40の第1領域40aにおいてより深く切断することになる。この深さの差は、図7A-7Bおよび図8A-8Bにおいてより明確に示されている。骨トンネル31は、図7A-Bおよび8A-Bにおいて、それぞれ6mmおよび10mmである。直径4mmのシャフトを有するタップを使用してノッチ40を作製した。図7A及び図8Aはノッチ40の第2の領域40bにおけるノッチ40を示している。図7B及び8Bは、ノッチ40の第1の領域40aにおけるノッチ40の壁を示す。)

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、「靭帯再建手術中に固定装置を受容するための骨トンネルの製造に関するものであり、より具体的には、そのような製造において使用するためのタップガイドに関するものである。」([0003])
b 「タップガイド10は、近位部分11aと遠位部分11bとを有するシャフト11と、シャフト11の近位部分11aに結合されるハンドル12と、シャフト11の遠位部分11bに結合される先端部13とを有する。ハンドル12は、シャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有する。」([0027])という記載から、「長手方向軸11dに沿って近位部分11aから遠位部分11bまで延在しているシャフト11」、「シャフト11の遠位部分11bに結合された先端部13」及び「シャフト11の近位部分11a結合されてシャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有するハンドル12」という技術的事項が記載されているといえる。
c 「シャフト11は、シャフト11の長さ方向に延びる貫通孔11cを有する。貫通孔11cは、タップを挿入するように構成されている。さらに、近位部分11aを含むシャフト11は、実質的に円形である。しかしながら、シャフト11の遠位部分11bは、遠位部分11bへ先端部13の結合を容易にするために面取りされている。」([0028])という記載から、「近位部分11aから遠位部分11bまで延びる貫通孔11cを有するシャフト11」という技術的事項が記載されているといえる。
d 「タップ20がシャフト11の貫通孔11cに挿入され、続いて、シャフト21のねじ切りされた遠位部分21bが骨トンネル31の壁32にノッチを形成するように、タップ20を回転させることによって、骨トンネル31に挿入される。」([0032])という記載及び図5から、「先端部13が、貫通孔11cによって画成される経路を妨げない」という技術的事項が記載されているといえる。
(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「長手方向軸11dに沿って近位部分11aから遠位部分11bまで延在していると共に、近位部分11aから遠位部分11bまで延びる貫通孔11cを有するシャフト11と、
シャフト11の遠位部分11bに結合された先端部13と、
シャフト11の近位部分11a結合されてシャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有するハンドル12と、
を備え、
先端部13が、貫通孔11cによって画成される経路を妨げないタップガイド10。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、靭帯再建手術中に固定装置を受容するための骨トンネルの製造に関するものであり、より具体的には、そのような製造において使用するためのタップガイドに関するものであり、本件補正発明と、技術分野が共通する。したがって、引用発明の「タップガイド10」は、本件補正発明の「ガイド装置」に相当する。
(イ)引用発明のシャフト11は、両端部を有し、その両端部に延びる貫通孔11cを有しているのであるから(引用文献1の図2A参照)、引用発明の「近位部分11a」及び「遠位部分11b」は、本件補正発明の「近位端」及び「遠位端」にそれぞれ相当する。そうすると、引用発明の「長手方向軸11dに沿って近位部分11aから遠位部分11bまで延在していると共に、近位部分11aから遠位部分11bまで延びる貫通孔11cを有するシャフト11」は、本件補正発明の「中心軸に沿って近位端から遠位端まで延在していると共に、前記近位端から前記遠位端まで貫通して延在している穴を有する本体」に相当する。
(ウ)引用発明の「先端部13」は、骨30に形成された骨トンネル31に挿入するものであるから([0032]及び図5参照)、本件補正発明の「突出部材」に相当する。そうすると、引用発明の「シャフト11の遠位部分11bに結合された先端部13」は、本件補正発明の「前記本体の前記遠位端に連結された突出部材」と、「前記本体に連結された突出部材」という限りにおいて共通する。
(エ)シャフト11の端部にハンドル12が結合されているので(引用文献1の図1及び図5参照)、引用発明の「シャフト11の近位部分11a結合されてシャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有するハンドル12」は、本件補正発明の「前記本体の前記近位端に連結されて前記本体の前記遠位端に向かって延在するハンドル」と、「前記本体の前記近位端に連結された延在するハンドル」という限りにおいて共通する。
(オ)引用発明の「先端部13が、貫通孔11cによって画成される経路を妨げない」は、本件補正発明の「前記突出部材が、前記穴によって画成される経路を妨げない」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「中心軸に沿って近位端から遠位端まで延在していると共に、前記近位端から前記遠位端まで貫通して延在している穴を有する本体と、
前記本体に連結された突出部材と、
前記本体の前記近位端に連結された延在するハンドルと、
を備え、
前記突出部材が、前記穴によって画成される経路を妨げないガイド装置。」

【相違点1】
「本体に連結された突出部材」について、本件補正発明は、「本体の遠位端に連結された突出部材」であるのに対し、引用発明は、「シャフト11の遠位部分11bに結合された先端部13」である点。
【相違点2】
「本体の近位端に連結された延在するハンドル」について、本件補正発明は、「本体の近位端に連結されて本体の遠位端に向かって延在するハンドル」であるのに対し、引用発明は、「シャフト11の近位部分11a結合されてシャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有するハンドル12」である点。
【相違点3】
本件補正発明は、「本体の外径が、突出部材の外径よりも大きく」なっているのに対して、引用発明は、そのようなものか不明である点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の図2Aにおいて、シャフト11の遠位部分11bの先端が平らに切り欠かれた部分を看取でき、さらに図3Aにおいて、先端部分13の第2の端部13bに形成された段部を看取できる。そして、図2Bにおいて、前記平らに切り欠かれた部分が、前記段部に結合していることが看取できる。
そして、「シャフト11の遠位部分11bの先端が平らに切り欠かれた部分」は、「シャフト11の遠位端」といえるから、引用文献1において、「シャフト11の遠位端に結合された先端部13」が記載されているといえる。
さらに、引用発明の「シャフト11」は本件補正発明の「本体」に相当し、同様に「結合」は「連結」に相当し、「先端部13」は「突出部材」に相当するから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
本体の近位端に連結されて本体の遠位端に向かって延在するハンドルは、手術器具の分野において本願の優先日前に周知技術である(必要であれば、米国特許第5520693号明細書の図1のハンドル18を参照。)
そして、引用文献1の[0027]に、「ハンドル12は、シャフト11の長手方向軸11dに対して実質的に垂直に配置された近位部分12aと、近位部分12aに対してある角度で配置された遠位部分12bとを有する。以下にさらに説明するように、遠位部分12bは、手術中に適切なグリップをユーザに提供するように構成される。」と記載されているように、引用発明において、遠位部分12bは近位部分12aに対してある角度で配置されるが、その方向については特に限定されていないのであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、上記相違点2の如く構成することは、当業者が容易になし得ることである。

ウ 相違点3について
引用文献1の[0032]に「骨トンネルを形成するためのドリルまたは他の装置を介して骨トンネル31を形成した後、・・・タップガイド10の先端部13を骨トンネル31に挿入する。先端部13は、骨トンネル31の直径に実質的に等しい直径を有する・・・先端部13を挿入した後、タップ20がシャフト11の貫通孔11cに挿入され、続いて、シャフト21のねじ切りされた遠位部分21bが骨トンネル31の壁32にノッチを形成するように、タップ20を回転させることによって、骨トンネル31に挿入される。」と記載され、[0033]に「骨トンネル31は、図7A-Bおよび8A-Bにおいて、それぞれ6mmおよび10mmである。直径4mmのシャフトを有するタップを使用してノッチ40を作製した。図7A及び図8Aはノッチ40の第2の領域40bにおけるノッチ40を示している。図7B及び8Bは、ノッチ40の第1の領域40aにおけるノッチ40の壁を示す。」と記載されていることから、骨トンネル31の直径が6mmの実施例の場合、先端部13の直径は6mmで、シャフト11の貫通孔11cの径(シャフト11の内径)は4mm以上となる。
そして、シャフト11の外径は、内径(4mm以上)にシャフト11の厚さ(外径と内径の差)の2倍を加えたものとなるところ、シャフト11は骨にノッチを形成するタップ20をガイドするものであるから、ある程度の強度が要求されることは容易に予測できるので、シャフト11の内径が約4mmの場合、その厚さを1mm以上とし、その外径を6mm以上とすることは、当業者が適宜行う設計事項である。
なお、本件補正発明において、「本体の外径が、突出部材の外径よりも大きく」なっていることに関して、本願明細書において、【0022】に「1つまたは複数の実施形態において、ガイド200の本体201の外径は、突出部材205の外径よりも大きくてもよい。例えば、図示されるように、本体201の外径は、突出部材205の外径よりも大きい。」と記載されており、本体の外径と突出部材の外径の大小関係は選択的な事項である旨の記載があるばかりか、その技術的意義について何ら記載されていない。そうすると、引用発明において、上記相違点3の如く構成することは、当業者であれば容易になし得る設計事項というべきである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年7月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年11月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項2に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項2に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2009/0222013号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、ハンドルについて「本体の遠位端に向かって延在する」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-18 
結審通知日 2018-07-23 
審決日 2018-08-03 
出願番号 特願2014-534657(P2014-534657)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 船越 亮
林 茂樹
発明の名称 卵形骨孔ガイドおよびACL再建方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ