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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1347167
審判番号 不服2017-14902  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-05 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2014-550616号「導光板のドット、導光板の製造方法、バックライトモジュール、及び表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日国際公開、WO2013/104216、平成27年4月9日国内公表、特表2015-510656号公報〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年11月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年1月9日 (CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成29年6月1日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年10月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである(以下「請求項1の補正」という。)。
なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1と、
前記感光材に対してフォトリソグラフィーを行い、前記導光板のドットを形成するステップS2と、
を含み、
前記感光材が感光接着剤であり、
ステップS1は、さらに、
前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、
前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、
前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13と、
を含むことを特徴とする導光板のドットの製造方法。」

(2)本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1と、
前記感光材に対してフォトリソグラフィーを行い、前記導光板のドットを形成するステップS2と、
を含み、
前記感光材が感光接着剤であり、
ステップS1は、さらに、
前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、
前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、
前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13と、
を含み、
前記ドットの直径Dが0.04mmに設定され、深さHが0.1mmに設定され、前記ドットの間の縁距離Aの最小値が0.005mmであり、又は
前記ドットの直径Dが0.04?0.18mmに設定され、深さHが0.1mmであり、前記ドットの間の縁距離Aが0.3mmであることを特徴とする導光板のドットの製造方法。」

2 補正の適否
(1)新規事項の追加の有無、シフト補正の有無及び補正の目的の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ドット」について、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0021】、【0022】等の記載を根拠に、「前記ドットの直径Dが0.04mmに設定され、深さHが0.1mmに設定され、前記ドットの間の縁距離Aの最小値が0.005mmであり、又は前記ドットの直径Dが0.04?0.18mmに設定され、深さHが0.1mmであり、前記ドットの間の縁距離Aが0.3mmである」ことを限定するものであるから、発明特定事項を限定するものであって新規事項を追加するものではない。
また、上記補正は、シフト補正をするものでもない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同第4項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(2)独立特許要件について
ア 引用文献
引用文献1:特開2001-337229号公報(原査定における引用文献1)
引用文献2:特開2011-116968号公報(原査定における引用文献2)
引用文献3:特開2003-67985号公報(原査定における引用文献3)
引用文献4:特開2006-74003号公報(原査定における引用文献4)
引用文献5:特開2004-22992号公報(原査定における引用文献5)
引用文献6:特開平10-280137号公報(原査定における引用文献7)
引用文献7:西岡伸博、“卒業研究報告 題目 フォトリソグラフィー工程における条件の最適化”、平成13年2月9日、高知工科大学 電子・光システム工学科、[平成17年4月13日検索]、インターネット<URL:http//www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/2000/ele/1010321.pdf>
引用文献8:特開平11-52370号公報

なお、引用文献7及び8は、本願優先日時の技術常識あるいは周知技術を示す文献として、当審が新たに追加したものである。

イ 各引用文献の記載事項等
(ア)引用文献1の記載事項及び引用発明
引用文献1には、次の事項等が記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下同様。)

(1a)
「【0001】本発明は,液晶表示器用のバックライト及びフロントライト,電飾看板等の各種面照明装置に使用するエッジライトパネル,光拡散パネル等の成形光学パネル及びその成形金型に関する。
【0002】
【先行技術及び発明が解決しようとする課題】本発明者は,特願平11-267686号をもって,金型基板と,該金型基板にフォトレジスト手法によってネガ型感光性樹脂を露光現像して得た多孔性パタン膜を用いてこれに導光要素をなす耐熱樹脂を充填することによって間接的に形成した成形パタンとを具備した成形金型を用いて,一側表面に導光パタンを一体に成形したエッジライトパネル用の光学パネルを提案済みである。」

(1b)
「【0010】本例において成形エッジライトパネル2は,例えばアクリル樹脂,ポリカーボネート樹脂等の光透過率の高い透明の合成樹脂を,例えば射出成形等の成形手段によって,平板状,図示した如くに背面側をテーパー面とした楔板状等の薄肉板状に成形して形成した透明の成形パネルとし,その一端面を上記光源8を臨設する入射端面4とした片側光源用のものとしてある。
【0011】この成形エッジライトパネル2の上記導光パタン3は,これを,金型基板11と該金型基板11にパタンフィルム14を介したフォトレジスト手法を用いて直接形成した感光性耐熱樹脂12による成形パタン13とを具備した成形金型10を用いて成形したものとしてあり,本例にあって上記感光性耐熱樹脂12はポジ型とし,上記パタンフィルム14は,これをポジフィルムとすることによって,上記導光パタン3をドット,ライン等,本例にあってはドットの導光要素4を凹陥形成した凹陥パタンによるものとし,このとき導光パタン3は,これを,入射光を供給する入射端面5側からその離隔方向に向けて入射光量に反比例する導光を行なうようにドット,ライン等,本例にあっては上記ドット(ドット孔)による導光要素4の密度を無段階変化して導光コントロールを行なったものとしてあり,このとき本例の導光パタン3は,そのドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下,特に0.08mmから0.25mm(線密度で表せば,1インチあたり約60線以上約500線以下,特に100線から300線)の範囲で無段階変化した高密度パタンとするとともに,本例にあって上記ドットの導光要素4を,深さ約30μm以下,径を約50μm以下,特に約10?30μmとすることによって,極限的に微細精密の高密度にして多孔性のファインパタンによるものとしてあり,このとき更に入射端面5側を変化スタート,入射端面5と対向する反射用の端面側又はその近傍の位置を変化ピークとするようにドットの導光要素4における径を無段階的に漸増して,上記片側光源用のエッジライトパネルとしての導光コントロールを行なう(当審注:「行う」の誤記と認められる。以下同様。)ようにして,極めて高輝度,高均一の2次照明を実現したものとしてある。
【0012】成形エッジライトパネル2の上記背面側の導光パタン3を一体に成形する成形金型10は,上記と対応してこれを金型基板11と,該金型基板11にパタンフィルム14を介したフォトレジスト手法を用いて直接形成したポジ型感光性耐熱樹脂12による成形パタン13とを具備したものとしてあり,本例にあって上記金型基板11は,これを例えば0.1乃至5mm程度の厚さのステンレス板によるものとし,ポジ型感光性耐熱樹脂12は,例えば半導体用,特に半導体ウエハの保護コート膜,層間絶縁膜等の用途を持つ半導体製造に用いられる,露光現像の高解像度と焼付による高度の密着性を有するものとしてあり,これによってその高解像度からフォトレジスト手法によって微細精密高密度の微細突起によるファインパタンの成形パタン13を金型基板11に直接に形成するとともにその成形を可及的に容易且つ確実とし,高度の密着性によって成形金型10における成形パタン13の部分的な剥落を可及的に防止し,多数の成形エッジライトパネル2を連続的に成形し得るようにして,成形エッジライトパネル2量産用の成形金型10としてその耐久性を高度に確保したものとしてある。
【0013】このとき本例の上記ポジ型感光性耐熱樹脂12は,これをポジ型感光性ポリイミド系樹脂としてあり,本例の該ポジ型感光性ポリイミド系樹脂は,例えば住友ベークライト株式会社製半導体コーティング材のスミレジン エクセル CRC-8000シリーズ中のもの(例えばCRC-8300)を用いたものとしてあり,金型基板11への上記フォトレジスト手法による成形パタン13の直接の形成を簡易且つ確実に可能とするとともに,エッジライトパネル2の成形も確実に行なえる(当審注:「行える」の誤記と認められる。)成形金型10とすることができる。」

(1c)
「【0014】このようにポジ型感光性耐熱樹脂12を用いた金型基板11への成形パタン13の形成は,例えば金型基板11にポジ型感光性耐熱樹脂12を塗布して表面にフォトレジスト膜を形成する塗布工程と,これを予備加熱して軽い焼きしめを行なうプリベーク工程と,導光パタン3のポジ型のパタンフィルム14を介して上記塗布した樹脂,即ちフォトレジスト膜を露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂を硬化する焼付工程を経ることによって行なうものとしてある。」

(1d)
「【0015】図5の(A)は塗布工程によって上記金型基板11へのポジ型感光性耐熱樹脂12を塗布した状態を,(B)はプリベーク工程によってポジ型感光性耐熱樹脂12を軽く焼きしめした状態を,(C)は露光工程によってパタンフィルム14を介してポジ型感光性耐熱樹脂12を露光している状態を,(D)は現像工程によってポジ型感光性耐熱樹脂12を現像してこれを部分的に溶解した状態を,(E)は洗浄工程によって現像による溶解部分をリンス除去した状態を,(F)は焼付工程によってポジ型感光性耐熱樹脂12を硬化し該樹脂12によって金型基板11上に直接に形成した成形パタン13をそれぞれ示している。
【0016】塗布工程は,例えばコーター(塗布機)を用いて,これにセットした金型基板11の表面,即ち成形面にポジ型感光性耐熱樹脂12の滴下,スプレー等によって供給し,金型基板11を高速回転することによってポジ型感光性耐熱樹脂12を上記導光要素4の深さに応じた,例えば約30μm以下の均一厚さに塗布することによってフォトレジスト膜を形成するように行なうものとしてある。
【0017】プリベーク工程は,加熱炉を用いて,例えば120°C前後に加熱した雰囲気中で数分間加熱して,上記予備加熱の軽い焼きしめを行ない(当審注:「行う」の誤記と認められる。)ようにするものとしてあり,これによって露光工程における精密且つ高密度の露光を確実になし得るようにしてある。
【0018】露光工程は,例えば露光機を用い,CAD設計した設計パタンの撮影フィルムであるパタンフィルム14を介して上記フォトレジスト膜にg線,i線又はこれらを含む連続波長光線(このような連続波長光線を発する光源としては,例えば高圧水銀灯などが使用できる)を短時間照射することによって行なうものとしてあり,このとき本例にあって上記パタンフィルム14はこれを上記径の変化によって導光コントロールを行なうポジフィルムによるものとし,成形パタン13の微細突起部分をマスクするとともに,マスク以外の導光パタン3に応じた非マスク部分に光源光を照射して,これを露光するように行なうものとしてある。
【0019】現像工程は,例えばディベロッパー(現像機)を用いて,例えばアルカリ水溶液によるレジスト現像液を滴下,スプレー等によって供給し,金型基板11を高速回転して現像液を均一に分布して,上記微細突起部分以外の露光した非マスク部分に現像液を浸透させてこれを溶解するように行なうものとしてある。
【0020】洗浄工程は,例えば金型基板11を高速回転しながら純水をスプレー等によって供給し,上記溶解部分をリンス除去することによって行なうものとしてある。
【0021】焼付工程は,加熱炉を用いて,例えば300?400°C程度に加熱した窒素雰囲気中で加熱することによって上記現像によって形成したパタンを硬化するとともにこれを金型基板11に密着固定し,成形パタン13を形成するように行なうものとしてある。
【0022】このようにすることによって設計パタンを反転した上記ファインパタンによる成形パタン13が金型基板11に直接に形成されるとともに金型基板11に対する成形パタン13の高度な密着性が確保され,エッジライトパネル2の成形に好適な成形金型10を得ることができる。
【0023】この成形金型10によるエッジライトパネル2の成形は,例えばこれを射出成形機等の成形機にセットして,200°C乃至350°C程度の成形温度でこれを行なうようにすればよく,このとき上記成形金型10はその上記成形パタン13をエッジライトパネル2の背面側に位置するようにセットし,正面側には同じくステンレス製とした図示省略のフラットな成形金型をセットして行なうようにすればよい。」

(1e)
「【0034】これらの場合を含めて,上記感光性耐熱樹脂をポジ型とし,上記パタンフィルムをネガフィルムとした場合には,上記光学パタンが,ドット,ライン等の光学要素を突出形成した突出パタンによるものとなり,上記感光性耐熱樹脂をネガ型とし,上記パタンフィルムをポジフィルムとした場合には,上記光学パタンが,ドット,ライン等の光学要素を突出形成した突出パタンによるものとなり,また上記感光性耐熱樹脂をネガ型とし,上記パタンフィルムをネガフィルムとした場合には,上記光学パタンが,ドット,ライン等の光学要素を凹陥形成した凹陥パタンによるものとなる。また上の例では,ドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下の範囲で無段階変化させ,径を約50μm以下としたパタンについて説明したが,ポジ型又はネガ型の感光性耐熱樹脂を用いるので,より精細なパタンを形成することも可能である。そこで例えば,所望によりパタンの各要素を円形,短形,その他の各種形状とし,各要素の径又は一辺の長さを1μm以上300μm以下,また各要素の間隔を5μm以上1mm以下の範囲で任意に変えることができる。またこの範囲内で,光学パネルの一端から多端に向けて,パタンの大きさ及び/又は間隔を任意に無段階で変化させることができる。」

以上の記載事項によると、引用文献1には、「成形光学パネル及びその成形金型」に関し、
特に摘示(1b)には、
「成形エッジライトパネル2の上記導光パタン3」を「金型基板11と該金型基板11にパタンフィルム14を介したフォトレジスト手法を用いて直接形成した感光性耐熱樹脂12による成形パタン13」により形成すること(【0011】)、
「導光パタン3は,そのドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下,特に0.08mmから0.25mm(線密度で表せば,1インチあたり約60線以上約500線以下,特に100線から300線)の範囲で無段階変化した高密度パタンとするとともに,本例にあって上記ドットの導光要素4を,深さ約30μm以下,径を約50μm以下,特に約10?30μmとする」こと(【0011】)、
「ポジ型感光性耐熱樹脂12」を、「ポジ型感光性ポリイミド系樹脂」とすること(【0013】)
が記載されており、
特に摘示(1c)には、
「金型基板11への成形パタン13の形成」方法であって、「金型基板11にポジ型感光性耐熱樹脂12を塗布して表面にフォトレジスト膜を形成する塗布工程と,これを予備加熱して軽い焼きしめを行なうプリベーク工程と,導光パタン3のポジ型のパタンフィルム14を介して上記塗布した樹脂,即ちフォトレジスト膜を露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂を硬化する焼付工程を経ることによって行なう」方法
が記載されている。

以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 金型基板11にポジ型感光性耐熱樹脂12として、ポジ型感光性ポリイミド系樹脂を塗布して表面にフォトレジスト膜を形成する塗布工程と,
これを予備加熱して軽い焼きしめを行うプリベーク工程と,
成形エッジライトパネル2の導光パタン3のポジ型のパタンフィルム14を介して上記塗布した樹脂,即ちフォトレジスト膜を露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂12を硬化する焼付工程を経ることによって行う、
金型基板11への成形パタン13の形成方法であって、
上記導光パタン3は,そのドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下,特に0.08mmから0.25mm(線密度で表せば,1インチあたり約60線以上約500線以下,特に100線から300線)の範囲で無段階変化した高密度パタンとするとともに,上記ドットの導光要素4を,深さ約30μm以下,径を約50μm以下,特に約10?30μmとする、
金型基板11への成形パタン13の形成方法」

(イ)引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。

(2a)
「【0003】
半導体パッケージの機能、形態及び組み立てプロセスの簡略化の手法によっては、上述の特性に加えてパターン形成が可能な感光性を兼ね備える接着剤が必要とされる場合がある。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光、現像処理を行うことにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となり、形成された接着剤パターンが被着体に対する熱圧着性を有することとなる。
【0004】
感光性の接着剤組成物としては、従来、フォトレジストや、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)をベースとしたもの(例えば、特許文献1?3)、及び低Tgポリイミド樹脂をベースとしたものが知られている(特許文献4)。また、作業環境及び排水処理等の観点から、アルカリ現像液によるパターン形成が可能なものが主流である。」

(2b)
「【0182】
露光後、接着剤層1のうち露光されなかった部分を、アルカリ現像液を用いた現像によって除去することで、開口11が形成されるように接着剤層1をパターニングする(図14(a))。なお、ネガ型の感光性接着剤組成物の代わりに、ポジ型の感光性接着剤組成物を用いることも可能であり、その場合は接着剤層1のうち露光された部分が現像によって除去される。」

(ウ)引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。

(3a)
「【0002】
【従来の技術】光ディスクは一般に、光ディスク信号に対応する微細な凹凸パターンが形成されたスタンパと呼ばれるニッケル製の金型を用いて、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂から、射出成形やプレス成形などの方法でスタンパ上の微細な凹凸パターンを樹脂表面に転写することにより製造されている。そして、光ディスク用のスタンパは従来、以下のような煩雑な工程を経て製造されている。
【0003】(1) まず、使用済のガラス板から残存ニッケルや残存レジスト等を除去し、その表面を研磨することにより、ガラス板を再生する。
(2) 再生されたガラス板を超音波洗浄などの方法で洗浄することにより、表面に残存している研磨剤等を除去する。
(3) 次にこのガラス板を乾燥させた後、その表面にフォトレジストを塗布して、フォトレジスト層を形成する。
(4) 続いて、このガラス板のフォトレジスト層に所望の光ディスク信号をレーザー光により露光記録する。
(5) これを現像することにより、当該フォトレジスト層に上述の光ディスク信号に応じた凹凸パターンを形成する。
(6) 次いでフォトレジスト層の表面に、スパッタリング、蒸着、無電解メッキ等の手法により薄い金属層を形成する(メタライゼーション)。
(7) この金属層の上面に所定の厚さでメッキ(電鋳)を施すことにより、ニッケルメッキ層を形成する。
(8) さらにこの後、金属層とメッキ層とからなるスタンパ部をガラス板から引き剥がし、次に当該スタンパ部のピット面に付着しているフォトレジスト等を洗い流し、乾燥させ、余分な部分をプレスで除去する等の後工程を行って、主としてニッケルからなるスタンパを得る。」

(エ)引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の事項が記載されている。

(4a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジストをベーキングするベーク装置及びこれを利用したベーキング方法に係るもので、詳しくは、露光の前にフォトレジストをベーキングするソフトベーク装置及びベーキング方法に関するものである。」

(4b)
「【0005】
該フォトリソグラフィ工程は、基板上に任意の薄膜を蒸着する工程と、前記薄膜上にフォトレジストを塗布する工程と、該フォトレジストを露光する工程と、該フォトレジストを現像する工程と、前記現像されたフォトレジストパターンを利用して薄膜をエッチングする工程と、前記フォトレジストパターンを剥離する工程及び前記基板を洗浄する工程と、を順次行う。
【0006】
一方、前記フォトレジストをパターニングする工程をフォト工程と言うが、該フォト工程は、表面に塗布されるフォトレジストが蒸着し得るように表面処理する工程と、前記表面処理された基板上にフォトレジストを塗布する工程と、前記塗布されたフォトレジストに含まれた溶媒を除去するためのソフトベーク工程と、前記ソフトベークされたフォトレジストにマスクを配列して露光する露光工程と、該露光されたフォトレジストを現像する工程と、該現像されて所定のパターンに形成されたフォトレジストを硬化するためのハードベーク工程と、を順次行う。」

(オ)引用文献5の記載事項
引用文献5には、次の事項が記載されている。

(5a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理装置及び熱処理方法に関し、例えば液晶表示装置(LCD)ガラス基板等の被処理基板に対するレジスト塗布や現像処理の前後に行う熱処理装置及び熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、液晶表示装置(LCD)の製造においては、被処理基板であるLCDガラス基板に、所定の膜を成膜した後、フォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィー技術により回路パターンを形成する。
このフォトリソグラフィー技術では、被処理基板であるLCD基板は、主な工程として、洗浄処理→脱水ベーク→アドヒージョン処理(疎水化)処理→レジスト塗布→プリベーク→露光→現像→ポストベークという一連の処理を経てレジスト層に所定の回路パターンを形成する。
【0003】
上述のように、フォトリソグラフィー工程中におけるベーキングとして、脱水ベーク、プリベーク、ポストベークがある。
まず、脱水ベークは、洗浄工程における純水でのリンス処理の後、基板に残った水分を除去するために行うものである。また、プリベークは、フォトレジスト塗布後の露光前に行うもので、塗布したレジスト膜中に残留する溶媒を蒸発させ、膜厚変化の抑制や基板との接触面の密着強度を向上させるために行われる。さらに、ポストベークは露光、現像後に行うもので、レジスト膜中の残留溶媒はもとより、現像液、リンス液を蒸発乾燥させるとともに、レジスト膜パターンの硬化や基板との密着強度を向上させるために行うものである。
尚、前記プリベークが、レジスト材料が反応しない100℃程度の低温で処理されるのに対し、ポストベークはプリベークに比べて高温かつ長時間の処理がなされる。」

(カ)引用文献6の記載
引用文献6には、次の事項が記載されている。

(6a)
「【0021】一方、エタノールおよび純水による超音波洗浄と自然乾燥を施した無酸素銅製のバッキングプレートにも、同様に半田の不要な部分にマスキングを施した後、接合面を上向きにしてホットプレートに設置し200[℃]に加熱し、接合面全体にインジウム半田を厚みが0.2[mm]となるように塗布した。」

(キ)引用文献7の記載事項
引用文献7には、次の記載がある。

(7a)(第5頁第2?4行)
「レジストは有機溶媒に溶けて溶液の状態になっており,プリベークはレジスト中に残っている溶媒を蒸発させて膜を緻密にするために行う処理である。」

(7b)(第8頁第1行?第9頁第5行)
「3 実験
本章では本学に設置されているフォトリソグラフィー装置を用いて,実際にレジストパターンをシリコン基板上に作製し,その作製時のリソグラフィー工程の各条件,コーターの回転数,露光時間,現像時間を変化させてみる。この各条件を変えることでその条件下におけるレジスト膜厚の変化,どの条件でレジストパターンがマスク・パターンと同じように再現されるかを実験により求めている。
レジストパターン形成後,エッチングやリフトオフなどの処理を行い,それぞれの処理がレジストにどのような影響を与え,処理後のシリコン基板の表面状態はどうなっているかを求めている。また,エッチングやリフトオフにはどのような条件のレジストが適しているかを実験結果から考察してみる。

3.1. 実験手順
[1]ウェーハの洗浄(各5分)
超音波洗浄…アセトン(約20cc)

超音波洗浄…メタノール(約20cc)

超音波洗浄…純水(約50cc)
[2]ウェーハの乾燥
窒素ブローの後,コーターにウェーハを吸着させ,スピンドライ(2?3秒)
[3]フォトレジスト塗布
ウェーハに感光性樹脂であるフォトレジスト(OFPR-800,20cP)を塗布し,コーターを高速回転させ,薄いレジスト被膜を作る。
[4]プリベーク
露光前の焼き締め。(温風循環乾燥機,110℃,7[min])
[5]露光
露光装置にマスク,ウェーハをセットし,露光する。
[6]現像
露光後のウェーハを現像液に浸け,現像する。 所定の時間経過後,すぐにリンス液(今回では純水)へ浸ける。
[7]リンス
現像したウェーハを流水(純水)に浸け,約30秒間洗浄する。
[8]ポストベーク
パターンをチェックした後,120℃,5[min]でレジストを焼き固める。」(当審注:[1]?[8]は丸数字である。)

(ク)引用文献8の記載事項
引用文献8には、次の事項が記載されている。

(8a)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、背面照明(バックライト)方式の液晶表示装置に関する。」

(8b)
「【0010】
【発明の実施の形態】本発明では、導光板内導波光の進行方向を所定の方向に変換させるため、導光板表面に複数の小凸部あるいは小凹部からなるドット9を形成する。ドットとは、図4(導光板下面に小凹部を形成した場合)に示すように、導光板表面のドット形成面10を正面から見て、導光板ドット形成面の平坦部11(Ra<1.0μm、導光板光出射面12に対する角度10゜以下)に囲まれた小凸部あるいは小凹部である。」

(8c)
「【0019】ドットの深さまたは高さは、2?100μm(好ましくは5?40μm)が適正である。その理由は、ドットの深さまたは高さが100μmより大きい場合、光源に近い部分の輝度が高くなり過ぎて、結果として、輝度分布が不均一になること、また導光板を形成する際、プラスチック材料をドットの小凸部または小凹部に充填しにくくなり、所望のドット形状を形成しにくくなること、さらにドット深さまたは高さをこれ以上とすると、ドットの大きさが大きくなりドット見えの原因となるためである。一方ドットの深さまたは高さが2μmより小であると、光の反射効率が低下して所望の輝度を得ることができなくなることや、導波光が散乱及び回折しやすくなり、導光板を単に粗面にしたのと同一になってしまうためである。また、ドットの深さまたは高さは、輝度分布の均一化を図るために冷陰極管に近いほど小さくすることが望ましい。」

ウ 対比・判断
(ア)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(a)
(a-1)引用発明の「成形エッジライトパネル2」に関し、引用文献1には、「一側表面に導光パタンを一体に成形したエッジライトパネル用の光学パネル」(摘示(1a)【0002】)と記載されており、「パネル」であることから「板」であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「成形エッジライトパネル2」が、本願補正発明の「導光板」に相当する。
(a-2)引用発明の「ポジ型感光性ポリイミド系樹脂」が、その機能・構成から、本願補正発明の「感光材」に相当する。
(a-3)引用発明の「金型基板11」は、「成形エッジライトパネル2」の金型基板であることから、引用発明の「金型基板11」が、本願補正発明の「導光板の金型コア」に相当する。
(a-4)(a-1)?(a-3)を総合すると、引用発明の「金型基板11にポジ型感光性耐熱樹脂12として、ポジ型感光性ポリイミド系樹脂を塗布して表面にフォトレジスト膜を形成する塗布工程」は、本願補正発明の「導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1」に相当する。

(b)
引用発明の「成形エッジライトパネル2の導光パタン3のポジ型のパタンフィルム14を介して上記塗布した樹脂,即ちフォトレジスト膜を露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂を硬化する焼付工程」は、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」に対して、「パタンフィルム14」を介して「露光」し、その後、「現像工程」、「洗浄工程」及び「焼付工程」を経て「成形エッジライトパネル2の導光パタン3」の「ドット」を形成している。
そうすると、引用発明の「成形エッジライトパネル2の導光パタン3のポジ型のパタンフィルム14を介して上記塗布した樹脂,即ちフォトレジスト膜を露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂を硬化する焼付工程」が、本願補正発明の「前記感光材に対してフォトリソグラフィーを行い、前記導光板のドットを形成するステップS2」に相当する。

(c)
(a)を踏まえると、引用発明の「金型基板11にポジ型感光性耐熱樹脂12として、ポジ型感光性ポリイミド系樹脂を塗布して表面にフォトレジスト膜を形成する塗布工程」と、本願補正発明の「前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12」とは、「前記導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップ」の限度で共通する。

(e) 引用発明の「成形パタン13」は、「ドット」からなる「成形エッジライトパネル2の導光パタン3」に基づき形成されるものであること及び上記(a-1)を考慮すれば、引用発明の「金型基板11への成形パタン13の形成方法」が、本願補正発明の「導光板のドットの製造方法」に相当する。

以上(a)?(e)を総合すると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりといえる。

<一致点>
「 導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1と、
前記感光材に対してフォトリソグラフィーを行い、前記導光板のドットを形成するステップS2と、
を含み、
ステップS1は、さらに、
前記導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップ
を含む、
導光板のドットの製造方法。」

<相違点1>
本願補正発明の「感光材」が、「感光接着剤」であると特定されており、本願補正発明の「導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1」が、「前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13と、」をさらに含むことを特定しているのに対し、引用発明の「感光材」が、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」であって「感光接着剤」であることは特定されておらず、「導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1」が、「前記導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップ」は含んでいるものの、「前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13」を含むことを特定していない点。

<相違点2>
本願補正発明の「ドット」は、「前記ドットの直径Dが0.04mmに設定され、深さHが0.1mmに設定され、前記ドットの間の縁距離Aの最小値が0.005mmであり、又は前記ドットの直径Dが0.04?0.18mmに設定され、深さHが0.1mmであり、前記ドットの間の縁距離Aが0.3mmである」と特定されているのに対し、引用発明のそれは、「そのドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下,特に0.08mmから0.25mm(線密度で表せば,1インチあたり約60線以上約500線以下,特に100線から300線)の範囲で無段階変化した高密度パタンとするとともに,上記ドットの導光要素4を,深さ約30μm以下,径を約50μm以下,特に約10?30μmとする」と特定されている点。

(イ)判断
a 相違点1について
(a)感光材について
引用発明の「感光材」は、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」であるところ、かかる「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」は、「露光(感光といってもよい)する露光工程と,これを現像処理する現像工程と,現像による除去部分をリンス除去する洗浄工程と,現像で形成されたパタンを高温焼付してポジ型感光性耐熱樹脂を硬化する焼付工程」を経て、「上記現像によって形成したパタンを硬化するとともにこれを金型基板11に密着固定し,成形パタン13を形成する」(摘示(1d)【0021】)ものである。
また、引用文献2には、「フォトマスクを介して露光、現像処理を行うことにより、高精細な接着剤パターンを形成する」ために用いられる「感光性を有する感光性接着剤」に関する技術であって(摘示(2a)【0003】)、「感光性の接着剤組成物としては、従来、フォトレジストや、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)をベースとしたもの」「及び低Tgポリイミド樹脂をベースとしたものが知られている」こと(摘示(2a)【0004】)及び「ネガ型の感光性接着剤組成物の代わりに、ポジ型の感光性接着剤組成物を用いることも可能」なこと(摘示(2b))が記載されており、その機能・構成から、引用文献2に記載された「感光性接着剤」が本願補正発明の「感光接着剤」に相当する。
そして、引用発明の「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」と引用文献2の「感光性接着剤(感光接着剤)」は、いずれも露光、現像をおこなって、パタンを形成する樹脂であり、作用・機能の共通性を有することから、引用発明の「感光材」として、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」に換えて、引用文献2に記載された「感光性接着剤(感光接着剤)」を採用する動機付けは十分に存在する。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載された技術を採用し、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」に換えて、「感光接着剤」とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

(b)導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1について
(b-1)導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11について
引用文献3には、「フォトレジストを塗布」する前に、「ガラス板を超音波洗浄などの方法で洗浄」し、「このガラス板を乾燥させ」る技術、すなわち、基板(ガラス板)を超音波洗浄などの方法で洗浄し、乾燥させる技術が記載されており、また、引用文献6には「エタノールおよび純水による超音波洗浄と自然乾燥」が施されること(摘示(6a))が記載されているように、「超音波洗浄」に「純水」を用いることは、周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用文献5には、「フォトリソグラフィー」(摘示(5a)【0002】)に関する技術であって、「主な工程として、洗浄処理→脱水ベーク→アドヒージョン処理(疎水化)処理→レジスト塗布→プリベーク→露光→現像→ポストベークという一連の処理を経てレジスト層に所定の回路パターンを形成する」こと(摘示(5a)【0002】)、そして、「フォトリソグラフィー工程中におけるベーキングとして、脱水ベーク、プリベーク、ポストベークが」あり、そのうち、「脱水ベークは、洗浄工程における純水でのリンス処理の後、基板に残った水分を除去するために行うものである」点(摘示(5a)【0003】)が記載され、同様に技術常識を示す文献として引用する引用文献7には、「フォトリソグラフィー」に関する技術であって、「レジストパターンをシリコン基板上に作製」する実験手順として、「フォトレジスト塗布」の前に、「(1)ウェーハの洗浄(各5分)」を「超音波洗浄…アセトン(約20cc)」、「超音波洗浄…メタノール(約20cc)」、「超音波洗浄…純水(約50cc)」の順に行い、その後、「ウェーハの乾燥」を行うことが記載されており(摘示(7b))、引用文献5及び7に記載されていることからも理解されるように、「フォトリソグラフィー」において、基板の洗浄を水で行い、その後水分の除去・乾燥を行うことは技術常識といえる(以下「技術常識A」という。)。
また、上記「(ア)(b)」のとおり、引用発明は「フォトリソグラフィー」工程を含む発明であることから、明記されていないものの、「塗布工程」の前に、膜の密着性を高めるために「フォトレジスト膜」を形成する「金型基板11」を洗浄・乾燥すべきことは、引用発明の内在する課題であるといえる。
そうすると、上記技術常識Aを考慮すれば、引用発明において、上記内在する課題を解決するために、引用文献3に記載された技術及び周知技術1を採用し、「導光板(成形エッジライトパネル2)の金型コア(金型基板11)に対して水除去処理を行うステップ」を備えることは、当業者にとって格別困難なことではない。

(b-2)導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12について
引用発明は、「導光板(成形エッジライトパネル2)の金型コア(金型基板11)の表面に感光材を塗布するステップS1」を含んでおり、上記(a)のとおり、引用発明の「感光材」として、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」に換えて、引用文献2に記載された「感光性接着剤(感光接着剤)」を採用する動機付けは十分に存在するから、上記(b-1)を踏まえると、「導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11」の後を、「導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12」とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

(b-3)感光接着剤から溶媒を除去するステップS13について
引用文献4には、「フォトレジストをベーキングするベーク装置及びこれを利用したベーキング方法に係るもので、詳しくは、露光の前にフォトレジストをベーキングするソフトベーク装置及びベーキング方法に関する」技術であって(摘示(4a))、「表面処理された基板上にフォトレジストを塗布する工程」の後、「フォトレジストにマスクを配列して露光する露光工程」の前に、「塗布されたフォトレジストに含まれた溶媒を除去するためのソフトベーク工程」を行う点(摘示(4b)【0006】)が記載されている。
また、引用文献5には、「フォトリソグラフィー」(摘示(5a)【0002】)に関する技術であって、「プリベークは、フォトレジスト塗布後の露光前に行うもので、塗布したレジスト膜中に残留する溶媒を蒸発させ、膜厚変化の抑制や基板との接触面の密着強度を向上させるために行われる」(摘示(5a)【0003】)ことが記載され、同様に、技術常識を示す文献として引用する引用文献7には、「フォトリソグラフィー」(摘示(7b))に関する技術であって、「プリベークはレジスト中に残っている溶媒を蒸発させて膜を緻密にするために行う処理」であること(摘示(7a))が記載されており、引用文献5及び7に記載されていることからも理解されるように、フォトレジストの塗布後、露光の前にフォトレジストに含まれた溶媒を除去するためにプリベークを行うことは技術常識といえる(以下「技術常識B」という。)。
そうすると、引用発明と引用文献4はいずれもフォトリソグラフィーの工程を含む技術分野に属するものであること及び上記技術常識Bを考慮すれば、引用発明に引用文献4に記載された「溶媒を除去するステップS13(溶媒を除去するためのソフトベーク工程)」を採用する動機付けは十分に存在するといえる。
そうすると、引用発明において、引用文献4に記載された技術を採用し、「溶媒を除去するステップS13」を採用することは、当業者にとって格別困難なことではない。

b 相違点2について
(a)ドットの直径D及びドットの間の縁距離Aについて
引用発明の「ドット」は、「径を約50μm以下,特に約10?30μmとする」とともに、「ドット間隔を約0.05mm以上約0.4mm以下,特に0.08mmから0.25mm」とすると特定されている。
そして、引用文献1には、「所望によりパタンの各要素を円形,短形,その他の各種形状とし,各要素の径又は一辺の長さを1μm以上300μm以下,また各要素の間隔を5μm以上1mm以下の範囲で任意に変えることができる。」(摘示(1e))と記載され、「径」と「一辺の長さ」が並列的に記載されていることから、引用発明の「径」は本願補正発明の「直径D」に相当するといえる。
また、引用発明の「ドット間隔」が、本願補正発明の「縁距離A」に相当する。
そうすると、本願補正発明の「ドット」の「直径D」及び「縁距離A」は、「ドットの直径Dが0.04mmに設定され、・・・前記ドットの間の縁距離Aの最小値が0.005mm」又は「前記ドットの直径Dが0.04?0.18mmに設定され、・・・前記ドットの間の縁距離Aが0.3mm」と特定されているところ、「直径D」を「0.04mm」とし、「縁距離A」を「0.3mm」とすることは、引用発明の「ドット」の「直径D」及び「縁距離A」の範囲に含まれ、そのように設定することは、引用発明においても想定の範囲内といえる。

(b)ドットの深さHについて
引用発明の「ドット」は、「深さ約30μm以下」と特定されているが、引用文献1には、「例えばコーター(塗布機)を用いて,これにセットした金型基板11の表面,即ち成形面にポジ型感光性耐熱樹脂12の滴下,スプレー等によって供給し,金型基板11を高速回転することによってポジ型感光性耐熱樹脂12を上記導光要素4の深さに応じた,例えば約30μm以下の均一厚さに塗布することによってフォトレジスト膜を形成するように行なう」と記載されており(摘示(1d)【0016】)、「深さ約30μm以下」はあくまでも一例として特定されているものであって、用途に応じて深さが変更されることを阻害するものとはいえない。
そして、引用文献8に、「背面照明(バックライト)方式の液晶表示装置」(摘示(8a))において、「導光板内導波光の進行方向を所定の方向に変換させるため、導光板表面に複数の小凸部あるいは小凹部からなるドット9を形成」し、(摘示(8b))「ドットの深さまたは高さは、2?100μm(好ましくは5?40μm)が適正である」(摘示(8c))と記載されていることからも理解されるように、「導光板」の「ドット」の「深さHが0.1mm」となるように設定することは周知技術(以下「周知技術2」という。)であり、引用発明に上記周知技術2を採用することは、当業者にとって格別困難なことではない。

c 本願補正発明の作用効果について
本願補正発明の作用効果についても、引用発明、引用文献2?4に記載された技術、上記技術常識A,B及び上記周知技術1,2から予測可能なものであって、格別顕著なものとはいえない。

d まとめ
本願補正発明は、引用発明、引用文献2?4に記載された技術、上記技術常識A,B及び上記周知技術1,2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成28年12月26日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)【請求項1】」に記載したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載の発明及び引用文献7に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、との理由を含むものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2001-337229号公報
引用文献2:特開2011-116968号公報
引用文献3:特開2003-67985号公報
引用文献4:特開2006-74003号公報
引用文献7:特開平10-280137号公報
なお、引用文献1?4、7は、上記「第2[理由]2(2)ア」の引用文献1?4、6と同じである。

3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由に、引用文献1?4及び7として引用された、引用文献1?4及び7の記載事項及び引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記「第2[理由]2(2)イ」に、引用文献1?4及び6の記載事項等として記載したとおりである。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
上記「第2[理由]2(2)ウ(ア)」を参照すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりのものといえる。

<一致点>
「 導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1と、
前記感光材に対してフォトリソグラフィーを行い、前記導光板のドットを形成するステップS2と、
を含み、
ステップS1は、さらに、
前記導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップ
を含む、
導光板のドットの製造方法。」

<相違点A>
本願発明の「感光材」が、「感光接着剤」であると特定されており、本願発明の「導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1」が、「前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13と、」をさらに含むことを特定しているのに対し、引用発明の「感光材」が、「ポジ型感光性ポリイミド樹脂」であって「感光接着剤」であることは特定されておらず、「導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップS1」が、「前記導光板の金型コアの表面に感光材を塗布するステップ」は含んでいるものの、「前記導光板の金型コアに対して水除去処理を行うステップS11と、前記導光板の金型コアの表面に感光接着剤を塗布するステップS12と、前記感光接着剤から溶媒を除去するステップS13」を含むことを特定していない点。

5 判断
相違点Aは上記相違点1と同じ相違点といえるから、上記相違点1について(第2[理由]2(2)ウ(イ)a)で判断したとおり、引用発明に引用文献2?4に記載された技術、上記技術常識A,B及び上記周知技術1を採用し、上記相違点Aに係る本願発明の構成をすることは、当業者が容易になし得たものといえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に引用文献2?4に記載された技術、上記技術常識A,B及び上記周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-18 
結審通知日 2018-07-23 
審決日 2018-08-06 
出願番号 特願2014-550616(P2014-550616)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
P 1 8・ 575- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 和幸鈴木 重幸  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
仁木 学
発明の名称 導光板のドット、導光板の製造方法、バックライトモジュール、及び表示装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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