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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1347214
審判番号 不服2017-18119  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-06 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2014- 25813「発光装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-153882、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 2月13日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成29年 4月12日付け:拒絶理由の通知(同年4月18日発送)
同年 5月31日 :意見書・手続補正書の提出
同年 6月27日付け:最後の拒絶理由の通知
(同年7月4日発送)
同年 8月24日 :意見書の提出
同年 9月15日付け:拒絶査定
(同年9月26日送達)
同年12月 6日 :審判請求書・手続補正書の提出
平成30年 9月 5日 :拒絶理由の通知(同年9月11日発送)
同年11月 5日 :意見書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-9に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-353518号公報
2.特開平6-132565号公報
3.特開2002-261333号公報
4.特開2011-66302号公報
5.特開2004-87889号公報
6.国際公開第2009/157445号
7.特開2013-138043号公報
8.特開2012-195371号公報
9.特表2010-517069号公報


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、発明の詳細な説明には、凹部の内側面に隙間を形成するための製造条件として、透光性樹脂に硬化促進剤を含有させること以外にどのような条件が必要であるのかが記載されておらず、当業者が前記隙間を形成することができる程度に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


第4 審判請求時の補正について
1 補正事項について
平成29年12月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成29年5月31日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1-15を次のように補正することを含むものである。

(補正事項1)
本件補正前の請求項1の「リードフレームと、前記リードフレームに形成された凹部の底面に載置された発光素子と、前記発光素子並びに前記凹部及びその周囲領域を含む前記リードフレームの一部を被覆する透光性樹脂と、を備え、前記リードフレームは、前記透光性樹脂に覆われた被覆領域と、前記透光性樹脂から露出した露出領域と、を有し、前記透光性樹脂にエポキシ樹脂及び硬化促進剤が含まれ、前記凹部の内側面において、前記リードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し、前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域に密着付与剤が設けられて、前記リードフレームと前記透光性樹脂とが密着していることを」を「凹部を有する第1のリードフレームと、第2のリードフレームと、前記第1のリードフレームに形成された前記凹部の底面に載置された発光素子と、前記発光素子並びに前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームの一部を被覆する透光性樹脂と、を備え、前記第1のリードフレームは、前記透光性樹脂に覆われた被覆領域と、前記透光性樹脂から露出した露出領域と、を有し、前記透光性樹脂にエポキシ樹脂及び硬化促進剤が含まれ、前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し、前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域に密着付与剤が設けられて、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とが密着している」とする。
(補正事項2)
本件補正前の請求項2、3、11、12の「前記リードフレーム」を「前記第1のリードフレーム」とする。
(補正事項3)
本件補正前の請求項15の「発光素子が載置された凹部を有し、前記凹部の内側面以外の少なくとも一部に密着付与剤が設けられたリードフレームを準備する工程と、前記凹部及びその周囲領域を含む前記リードフレームの一部及び前記発光素子を、エポキシ樹脂及び硬化促進剤を含有する透光性樹脂で覆うことにより、前記密着付与剤が設けられた前記リードフレームと前記透光性樹脂とを密着させるとともに、前記凹部の内側面において、前記リードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を形成する工程と、を有し、前記リードフレームを準備する工程において、前記透光性樹脂に覆われる被覆領域のうち、前記透光性樹脂から露出する露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み、前記凹部の内側面を除く前記リードフレームに、前記密着付与剤を設けることを」を「発光素子が載置された凹部を有し、前記凹部の内側面以外の少なくとも一部に密着付与剤が設けられた第1のリードフレーム、及び、第2のリードフレームを準備する工程と、前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレームの一部及び前記発光素子を、エポキシ樹脂及び硬化促進剤を含有する透光性樹脂で覆うことにより、前記密着付与剤が設けられた前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とを密着させるとともに、前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を形成する工程と、を有し、前記第1のリードフレームを準備する工程において、前記透光性樹脂に覆われる被覆領域のうち、前記透光性樹脂から露出する露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み、前記凹部の内側面を除く前記第1のリードフレームに、前記密着付与剤を設けることを」とする。

2 補正事項1について
補正事項1は、本件補正前の請求項1のリードフレームを第1のリードフレーム及び第2のリードフレームからなるものとし、凹部を有し、凹部の底面に発光素子が載置され、凹部の内側面において透光性樹脂との間に隙間を有するリードフレームを第1のリードフレームとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、補正事項1は当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

3 補正事項2について
補正事項2は、本件補正前の請求項2、3、11、12のリードフレームを第1のリードフレームとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、補正事項2は当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

4 補正事項3について
補正事項3は、本件補正前の請求項15のリードフレームを第1のリードフレーム及び第2のリードフレームからなるものとし、凹部を有し、凹部の底面に発光素子が載置され、凹部の内側面以外の少なくとも一部に密着付与剤が設けられたリードフレームを第1のリードフレームとしたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、補正事項3は当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。

5 独立特許要件について
以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-15に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

6 審判請求時の補正についてのまとめ
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。


第5 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年12月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。(下線は補正箇所である。)

「【請求項1】
凹部を有する第1のリードフレームと、
第2のリードフレームと、
前記第1のリードフレームに形成された前記凹部の底面に載置された発光素子と、
前記発光素子並びに前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームの一部を被覆する透光性樹脂と、
を備え、
前記第1のリードフレームは、前記透光性樹脂に覆われた被覆領域と、前記透光性樹脂から露出した露出領域と、を有し、
前記透光性樹脂にエポキシ樹脂及び硬化促進剤が含まれ、
前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し、
前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域に密着付与剤が設けられて、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とが密着していることを特徴とする、発光装置。
【請求項2】
前記凹部の底面において、前記発光素子を固定する接着剤により、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記凹部の内側面を除く全ての前記被覆領域において、前記第1のリードフレームが前記透光性樹脂と密着していることを特徴とする、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記露出領域は、端子として機能する端子部を含み、少なくとも前記端子部に前記密着付与剤が設けられていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記密着付与剤として、アルキルチオール類、アルコシシシランアルキルチオール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾールモノナトリウム塩類、トリアジンチオール類、トリアジンジチオール類、トリアジントリチオール類、トリアジンチオールモノナトリウム塩類、トリアジンジチオールモノナトリウム塩類、トリアジンジチオールジナトリウム塩類、トリアジントリチオールモノナトリウム塩類、トリアジントリチオールジナトリウム塩類、トリアジントリチオールトリナトリウム塩類、及びイソニトリル化合物のうちの少なくとも1つが用いられることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記硬化促進剤として、リン系ハロゲン化物及び金属石鹸のうちの少なくとも1つが用いられる請求項1から5の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記硬化促進剤として、金属石鹸及び4級ホスホニウム塩が用いられる請求項1から6の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記金属石鹸が、C4以上の脂肪酸のNa及びK以外の金属塩のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記硬化促進剤として、更に、3級ホスフィン類、3級アミン類、イミダゾール類、及び4級アンモニウム塩のうちの少なくとも1つが用いられることを特徴とする、請求項6から8の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記透光性樹脂の組成として添加剤が含まれ、
前記添加剤として、ポリオール、界面活性剤、着色剤、及び拡散剤のうちの少なくとも1つが用いられることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記露出領域において、前記第1のリードフレームが折り曲げられることにより、実装面を有することを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記露出領域において、前記第1のリードフレームが前記凹部の底面に対して直交方向に延びていることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
更に前記発光素子の周辺に、前記発光素子からの光の主波長よりも長い発光波長を有する波長変換部材が設けられ、
前記凹部の内側面において、前記隙間は前記波長変換部材からの光の主波長より大きいことを特徴とする、請求項1から12の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記隙間は、前記内側面の全周にわたって形成される請求項1から13の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
発光素子が載置された凹部を有し、前記凹部の内側面以外の少なくとも一部に密着付与剤が設けられた第1のリードフレーム、及び、第2のリードフレームを準備する工程と、
前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレームの一部及び前記発光素子を、エポキシ樹脂及び硬化促進剤を含有する透光性樹脂で覆うことにより、前記密着付与剤が設けられた前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とを密着させるとともに、前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を形成する工程と、を有し、
前記第1のリードフレームを準備する工程において、
前記透光性樹脂に覆われる被覆領域のうち、前記透光性樹脂から露出する露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み、前記凹部の内側面を除く前記第1のリードフレームに、前記密着付与剤を設けることを特徴とする発光装置の製造方法。」


第6 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-353518号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。
(1)「【0043】すなわち、図3において、この光半導体装置1では、一方のリード部5のインナーリード部5aの先端には、図1に示すダイパッド部7に代えて、パラボラ部12が連続して形成されている。このパラボラ部12は、略矩形プレート形状に形成されており、その上面には、断面略半球状(平面視略円形状)の集光部13が設けられている。光半導体素子3は、その集光部13に、ダイボンディングされることにより設置されており、その端子部(図示せず)が、他方のリード部6のインナーリード部6aの先端部と、ワイヤボンディングによって、ワイヤ8を介して接続されている。このようなパラボラ部12では、その集光部13において、光半導体素子3から発光される光を集光して、より輝度を高めることができる。
【0044】そして、このようなパラボラ部12を有する光半導体装置1においても、上記と同様に、リードフレーム2において、各リード部5および6のアウターリード部5bおよび6bとインナーリード部5aおよび6aとの境界部分(図3および図4では、インナーリード部5aおよび6aの境界部分9として示されている。)を除いて、少なくともパラボラ部12に、銀めっき層10(図4参照)が形成されており、かつ、硬化体4を形成するためのエポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂および硬化剤に加えて、リン系硬化促進剤および/またはチオールを含有している。
【0045】より具体的には、この光半導体装置1では、図4(a)に示すように、リード部5および6(アウターリード部5bおよび6bとインナーリード部5aおよび6aのすべて)には、銀めっき層10が形成されず、光半導体素子3を設置する設置部分11を含むパラボラ部12のすべてに銀めっき層10が形成されている。
【0046】なお、この光半導体装置1においても、上記と同様に、銀めっき層10は、パラボラ部12における光半導体素子3が設置される設置部分11に形成されており、かつ、インナーリード部5aおよび6aにおける境界部分9に形成されていなければ、特に制限はなく、例えば、図4(b)に示すように、パラボラ部12における設置部分11(すなわち、パラボラ部12における光半導体素子3がダイボンディングされる部分、および、好ましくはその周辺部分、より具体的には、図4(b)に示すように集光部13)のみに形成されていてもよく、また、図2(c)に示すように、パラボラ部12のすべて、および、インナーリード部5aおよび6aにおける境界部分9(すなわち、リード部5および6における硬化体4の内部から外部に向かって露出する手前の内側部分、さらに言い換えると、インナーリード部5aおよび6aにおけるアウターリード部5bおよび6bに連続する部分)を除くすべてに形成されていてもよい。」
(2)「【0059】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の光半導体装置は、リードフレームにおいて、銀めっき層が、光半導体素子が設置される設置部分に形成されているので、光半導体素子のリードフレームに対する良好なダイボンディングを確保することができながら、かつ、境界部分に形成されていないので、その境界部分において、硬化体とリードフレームの封止部分との界面における良好な接着性を確保することができる。そのため、その境界部分に、水分やフラックスが浸入することを阻止することができ、リードフレームが錆びて、外観不良を生じたり、あるいは、光半導体素子が腐食されることを有効に防止できる。
【0060】しかも、この光半導体装置では、硬化体を形成するエポキシ樹脂組成物に、リン系硬化促進剤および/またはチオールが含有されているので、硬化体と、境界部分を除くリードフレームの封止部分および設置部分との間の接着性を低下させて、これによって、内部応力を緩和して、光半導体素子にかかる応力を低減することにより、光半導体素子の劣化を防止できる。
【0061】したがって、この光半導体装置は、厳しい高温高湿下において、非常に長期にわたって使用しても、リードフレームに錆びが生じるや、光半導体素子の輝度が低下することがなく、優れた耐久性を発現することができる。」
(3)図3から、光半導体素子3並びに集光部13及びその周囲領域を含むリード部5及びリード部6の一部を硬化体4が被覆していることが見て取れる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「断面略半球状(平面視略円形状)の集光部13が設けられているリードフレーム2の一方のリード部5と、リードフレーム2の他方のリード部6と、集光部13に設置されている光半導体素子3と、
光半導体素子3並びに集光部13及びその周囲領域を含むリード部5及びリード部6の一部を被覆している硬化体4とを有し、リード部5はインナーリード部5aとアウターリード部5bとを有し、硬化体4は、エポキシ樹脂および硬化剤に加えて、リン系硬化促進剤およびチオールを含有しており、各リード部5のアウターリード部5bとインナーリード部5aとの境界部分において硬化体とリードフレームが良好に接着されている光半導体装置1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平6-132565号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0014】この発明は、硬化促進剤を1重量%以上と従来よりも多くし、一次硬化を適度に低温(100?120℃)で行い、かつ、アフタキュアを140℃以上の高温で行うことを基本としている。これによれば、図1に例示するように、封止樹脂5とリードフレーム1aとの界面が剥離した状態に仕上がる(図には、この非接着状態にあたる部分を“x"として示している。)。この結果、チップに対する封止樹脂の応力が低減されて、低温乃至常温域での通電信頼性が高まり、輝度が低下しなくなる。また、図7に示した従来の発光ダイオード素子のように、チップを一旦シリコーン樹脂等の軟質透明樹脂で覆うことを行っていないので、前述の様な高温通電時の輝度低下現象も発生しない。したがって、低温乃至高温域での通電信頼性が改善される。
【0015】なお、硬化促進剤を1重量%以上と多くしているが、酸化防止剤を添加しているので、黄変が防止される。
【0016】
【実施例】以下、この発明の発光ダイオード素子の製造方法を実施例により詳細に説明する。
【0017】図2(a),(b)に示すように(同図(b)は同図(a)のものを上方から見たところを示している。)、導電性接着剤3によってリードフレーム1aにチップ2をダイボンディングし、チップ2と別のリードフレーム1bとをワイヤ4でワイヤボンディングする。そして、リードフレーム1a,1bの先端部をチップ2を含んで硬質のエポキシ樹脂5で直接封止する。なお、同図(c),(d)は2つのチップ2a,2bと3本のリードフレーム1a,1b,1cを含む例、同図(e),(f)はリードフレーム1aに光反射部8を設けた例を示している。各リードフレーム1a,1b,1cは鉄フレームにAgめっきを施したもので、表面の光沢濃度が0.3?0.7(半光沢)のものを用いる(特別な技術や微妙な品質制御を要せず、低価格で製造される。)。
【0018】(第1の例)まず、エポキシ樹脂5の成分(添加物を含む)を一定とし、硬化条件を変化させた例について説明する。
【0019】エポキシ樹脂5は、ジグリシジルエーテルビスフェノールAに、これと化学当量のメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(Me-HHPA)を加えたものを主成分とする。さらに、硬化促進剤としてジメチルベンジルアミンが全重量に対して1?2wt%、酸化(黄変)防止剤として亜燐酸フェニルジアルキル(化学式を(化1)に示す)が0.4?0.6wt%、トリアルキルフェノール(化学式を(化2)に示す)が0.2?0.4wt%だけ含まれるように添加する。これらを混合および撹拌して調整する。
【0020】この混合物5を所定の封止型に注入し、これにダイボンディング・ワイヤボンディングされたリードフレーム1a,1bを挿入して固定する。封止型ごと加熱炉(100?120℃)にて1時間反応させ(一次硬化)、封止型から離型する。続いて、150℃の雰囲気で5時間?10時間加熱し(アフタキュア)、安定な硬化物とする。
【0021】出来上がった発光ダイオード素子の封止樹脂5とリードフレーム1a,…との界面は、図3(d)に示すように、大部分が剥離した状態となる(剥離した部分をxで示している)。この剥離部分xが存在することにより、樹脂応力を緩和でき、低温での通電信頼性を高めることができる。実際に、図4中の破線(d)に示すように、-25℃、1000時間の通電(電流50mA)で光度低下を2?3%に抑えることができた。また、図3(e)のものと異なり、チップ2をシリコーン樹脂6で包んでいないので、高温での通電信頼性は良好である。実際に、図5中の破線(d)に示すように、85℃、1000時間の通電(電流30mA)で光度低下を数%に抑えることができた。なお、ガラス転位温度は130?140℃であった。図4,図5中の破線(e)は、チップ2を一旦シリコーン樹脂6で包み、硬化条件を従来並みとしたもの(図3(e)のもの)のデータを示している。
【0022】また、アフタキュア条件を140℃8時間とした場合、剥離部分xは図3(c)までのレベルとなる。すなわち、封止領域のうち下端から半分を越える部分xまで剥離した状態、残りの部分(リードフレーム1aの先端近傍)が密に接着した状態となる。この場合、図4,図5中に2点鎖線(c)で示すように、低温,高温での通電で光度低下を数%に抑えることができるが、上記(d)の例には劣るものとなった。この結果から分かるように、アフタキュアは140℃以上の高温で行うのが好ましい。
【0023】なお、アフタキュア条件を130℃14時間(従来並み)とすれば、剥離部分xは図3(a)?(b)のレベルとなる。この場合、図4,図5中にそれぞれ実線(a),1点鎖線(b)で示すように、低温,高温での通電で光度低下が10%を超える結果となる。
【0024】また、一次硬化は、上に述べた条件、すなわち、100?120℃で1時間(?1.5時間)程度とするのが好ましい。この条件は、離型に最低限必要で、かつ、この発明の目的であるアフタキュアの効果を十分に発揮させるのに最適なガラス転位温度100?130℃を安定して得ることができる条件だからである。
【0025】(第2の例)次に、道路表示板用の発光ダイオード素子など耐環境信頼性が厳しく要求される場合に適したエポキシ樹脂の成分と硬化条件について説明する。
【0026】この例では、エポキシ樹脂5の成分として、第1の例のジグリシジルエーテルビスフェノールAをジグリシジルエーテルビスフェノールAと脂環式エポキシ化合物(化学式を(化3)に示す)との混合物に変更し、かつ、第1の例に比して酸化防止剤(亜燐酸フェニルジアルキルとトリアルキルフェノール)の量を多くする。具体的には、ジグリシジルエーテルビスフェノールAと脂環式エポキシ化合物との重量比を70:30程度に設定し、亜燐酸フェニルジアルキルを全重量の0.6?1.0wt%、トリアルキルフェノールを全重量の0.4?0.6wt%に設定する。
【0027】また、硬化条件としてアフタキュアを第1の例に比してさらに高温にする。すなわち、アフタキュアの条件を、160℃5?10時間乃至170℃3?8時間程度に設定する。
【0028】出来上がった発光ダイオード素子の封止樹脂5とリードフレーム1a,…との界面は、図3(d)に示したのと同様に、大部分が剥離した状態となる。そして、第1の例と同様に、剥離部分xが存在することにより、樹脂応力を緩和でき、低温での通電信頼性を高めることができる。また、ガラス転位温度は、この例では150?160℃となり、第1の例に比して20?30℃だけ上昇した。したがって、屋外表示板用としての耐環境信頼性を持たせることができた。
【0029】上記2つの例が示すように、発光ダイオード素子の通電信頼性を向上させるためには、封止樹脂5とリードフレーム1a,…との接着性を低下させることが有効である。これを実現するために、この発明では、硬化促進剤を1重量%以上と従来よりも多くし、一次硬化を適度に低温(100?120℃)で行い、かつ、アフタキュアを140℃以上の高温で行うことを基本としている。これにより、封止樹脂5とリードフレーム1a,…との接着性を低下させて、低温乃至高温域で素子の通電信頼性を改善することができる。
【0030】なお、封止樹脂5とリードフレーム1a,…との接着性を低下させるためには、硬化促進剤は多ければ多いほど良く、アフタキュア条件は高温であるほど良い。一方、脂環式エポキシ化合物は少なければ少ないほど良い。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-261333号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記構成のLEDでは、発光素子110から放出されて筐体130表面に到達した光の一部は、筐体130表面において乱反射、拡散してしまい、外部放射光として利用できない。これは、筐体130表面における反射が、粒子状の充填材表面(照射光に対して一定の角度をもった平面ではない表面)において行われるためであると考えられる。このように、従来の構成の発光装置では、発光素子の発光を十分有効に利用できているとは言えず、さらなる発光効率向上の余地があった。本発明は、以上の状況に鑑みなされたものであって、発光素子から放出された光を有効に利用し、高輝度で発光可能な発光装置を提供することを目的とする。」
(2)「【0014】(低屈折率層)低屈折率層は、封止部材よりも屈折率が小さく、封止部材とカップ状部の側面部を形成する筐体表面との間に形成される。低屈折率層は、発光素子から放出された光の一部を封止部材と低屈折率層との界面により反射して光軸方向の光に変換するために備えられる。低屈折率層は、封止部材よりも屈折率が小さいものであれば特に限定されない。例えば、封止部材よりも屈折率の小さい樹脂をその材料として用いることができる。好ましくは、封止部材の屈折率との差が大きな材料を採用する。好ましい一態様として、低屈折率層を封止部材とカップ状部を形成する筐体表面との間に間隙を設け、これを低屈折率層とすることが挙げられる。即ち、封止部材と筐体表面との間に設けられた空気層を低屈折率層とする。この場合において、封止部材として例えばシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂を採用すれば、これらの屈折率は約1.4?約1.5であり、他方、空気の屈折率は1.0であるから、封止部材と低屈折率層との間の屈折率の差は大きいものとなる。したがって、発光素子から放出されて封止部材側から低屈折率層に入射する光の全反射が起き易く、より多くの光を封止部材と低屈折率層との界面で反射して光軸方向の光として利用することが可能となる。
【0015】上記のように、低屈折率層として封止部材とカップ状部の側面部を形成する筐体表面との間に間隙を設ける場合、当該間隙の発光観測面側の端部(即ち、カップ状部の底部側と反対側の端部)に光透過性材料を充填することが好ましい。即ち、間隙(低屈折率層)を、発光観測面側においてシーリングすることが好ましい。これにより、外部より埃、塵、水分等が当該間隙内へ浸入することを防止することができ、発光装置の信頼性、耐久性の向上が図られる。
【0016】また、低屈折率層として間隙を設ける場合には、カップ状部の底部側において、カップ状部の側面部を形成する筐体表面に封止部材が接着していることが好ましい。封止部材の剥離を防止して発光装置の安定性を向上させるためである。例えば、液状の封止部材をカップ状部に滴下しこれを熱収縮させる際に、カップ状部の底部側の収縮を選択的に抑えることにより、封止部材を、カップ状部の底部側において筐体表面に接着した状態で硬化させることができる。例えば、封止部材を熱硬化させる際に、カップ状部の底部側にガラスビーズ等の光透過性材料からなる粒体又は粉体を局在させておくことにより、上記のごとき選択的に封止部材を収縮させることができる。ここでの光透過性材料からなる粒体又は粉体の線膨張係数は、封止部材のそれよりも小さいことが好ましい。
【0017】低屈折率層は、例えば以下の方法により形成することができる。まず、筐体のカップ状部に発光素子をマウントした後、液状の封止部材をカップ状部に滴下する。次いで、熱を加えることにより、カップ状部の側面部を形成する筐体表面に接着した状態で封止部材を硬化させる。その後、冷却することで封止部材を熱収縮させ、封止部材と筐体表面との間に間隙を生じさせる。尚、先の鋭利な部材を封止部材と筐体表面との間に差し込むこと等により、封止部材を筐体表面から剥離させてもよい。以上の方法により、封止部材とカップ状部の側面部を形成する筐体表面との間に空気層(間隙)からなる低屈折率層を形成することができる。また、カップ状部の側面部を形成する筐体表面に、予め封止部材よりも屈折率の小さい材料を塗布等することにより低屈折率層を設けておき、その後、封止部材をカップ状部に充填することにより、封止部材と筐体表面との間に低屈折率層を設けることもできる。」
(3)「【0021】まず、基板20上にリフレクタ30を配置する。続いて、発光素子10をマウントし、発光素子10の電極と基板20上の配線パターンとをリードで接続する。次に、液状のシリコーン樹脂(封止部材)をカップ状部50にポッティングする。続いて、約150℃程度の熱を加えてシリコーン樹脂を熱硬化させる。これにより、シリコーン樹脂はリフレクタ30表面になじみ、当該表面に接着した状態で硬化する。その後、常温に冷却する。これにより、シリコーン樹脂の熱収縮が起こり、シリコーン樹脂がリフレクタ30表面から剥離する。その結果、封止部材40とリフレクタ30表面との間に間隙(空気層60)が生ずる。
【0022】続いて、発光ダイオード1の光の放射態様について図3を用いて説明する。図3は、空気層60部分を拡大して模式的に表した図である。図3では、発光素子10からリフレクタ30方向に放出された光11が、封止部材40と空気層60との界面45で全反射されて光軸方向の光15に変換される様子が示される。発光ダイオード1では、封止部材40及び空気層60の屈折率が、それぞれ約1.4(シリコーン樹脂)及び1.0(空気)であるため、両者の差が大きい。したがって、封止部材40と空気層60との界面45において、図示されるような光の全反射が生じやすく、発光素子10からリフレクタ30方向に放出された光の多くを光軸方向の光に変換して外部放射することができる。尚、図中の符号35は、リフレクタ30内の白色系充填材である。
【0023】次に、封止部材40とリフレクタ30表面とを剥離する前後の発光ダイオード(即ち、空気層60を備えない発光ダイオード、及び空気層60を備える発光ダイオード)を用意し、両者の発光特性を調べた。その結果を図4に示す。(a)が剥離前、(b)が剥離後の発光ダイオードの三次元配光特性を示すグラフである。各発光ダイオードの発光観測面側において水平方向及び垂直方向を設定し、各方向5°ピッチの間隔の観測点において発光強度を測定した結果を三次元的にグラフ化した。剥離前の発光ダイオードでは、光軸上の発光強度は8.01×10-7(W/strad)、全放射束は2.1×10-6(W)であった。一方、剥離後の発光ダイオードについては、光軸上の発光強度が1.32×10-6(W/strad)、全放射束が3.42×10-6(W)であった。したがって、光軸上の発光強度に関して剥離後は剥離前の1.65倍であり、全放射束に関して、剥離後は剥離前の1.59倍である。このように、封止部材40をリフレクタ30表面から剥離し、両者の間に空気層60を設けることにより、光軸上の発光強度及び全放射束のいずれについても有意に増加することが示された。
【0024】図5に他の構成からなる発光ダイオード2の模式図を示す。図5において、発光ダイオード1と同一の要素には同一の符号を付してある。発光ダイオード2では、基板の代わりにリードフレーム80が用いられ、リードフレーム80の上に発光素子10がマウントされる。その他の構成は、発光ダイオード1と同様である。
【0025】以上、本発明が適用される実施例として、SMDタイプの発光ダイオードについて説明したが、本発明は、カップ状部を有するリードフレーム上に発光素子がマウントされ、発光素子及びリードフレームの一部を封止部材で被覆してなる、いわゆる砲弾型発光ダイオードにも適用できるものである。また、発光素子をいわゆるフリップチップのかたちに基板又はリードフレーム上にマウントしたフリップチップタイプの発光ダイオードにも適用できるものである。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2011-66302号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0028】
<封止部>
封止部50は、凹部21の底面22に、半導体発光素子70を封止するように接合される。封止部50は、容器部20の凹部21に設けられた底面22と接する第1の面51と、凹部21に設けられた壁面23と気体層60を介して対向する第2の面52と、凹部21の開口側に設けられた第3の面53とを有している。
ここで、第1の面51は、凹部21の底面22を構成するアノード用リード部41、カソード用リード部42およびこれらの間に存在する熱可塑性樹脂と、底面22上に設けられた半導体発光素子70とに、それぞれ接する。
【0029】
また、封止部50は、可視領域の波長において光透過率が高く、また屈折率が高い透明材料から形成される。特に、封止部50が封止する半導体発光素子70の発光波長に対して、光透過率が高い材料が好ましい。封止部50を構成する材質としては、耐熱性、耐光性、および機械的強度が高い特性を満たす材質が用いられる。例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゾル?ゲルガラスなどが好ましい。これらの原材料は、固体化に伴って収縮することで体積が小さくなる特性を有している。上記の原材料のうちシリコン樹脂がさらに好ましく、特に好ましいのは、カップリング剤を含まないシリコン樹脂である。ここで、カップリング剤とは、他の部材との密着性を高めるために添加されるものであり、例えば、エポキシ基、アクリル基、ビニル基などを官能基として有する有機変性シリコン成分などがある。なお、封止部50がシリコン樹脂から形成され、さらに容器
30もシリコン樹脂から形成されることが好ましく、さらに好ましいのは、封止部50がカップリング剤を含まないシリコン樹脂から形成され、容器30はシリコン樹脂から形成されることである。
【0030】
なお、封止部50には、必要に応じて蛍光体を含有させてもよい。蛍光体は、半導体発光素子70から出射される光の一部を、より長波長の光に変換するものである。
また、図2に示す例において、封止部50の第3の面53は凸面として示されているがこの形状に限定されるものではなく、第3の面53は、平面、凹面、あるいは集光性を高めるために溝や突起を有する面であってもよい。
さらに、限定するものではないが、本実施の形態の半導体発光素子70は0.35mm幅であり、封止部50は、上側の面の径:2.4mm、下側の面の径:1.9mm、封止部50の高さ:0.85mmであり、封止部50の屈折率は1.41?1.42であり、封止部50と壁面23との間の間隙は0.01mmである。なお、封止部50と壁面23との間の間隙は0.01mm?0.1mmであることが好ましい。
【0031】
次に、上述した半導体発光素子70の発光動作について説明する。
アノード用リード部41およびカソード用リード部42との間に、順方向電圧Vfを印加すると、アノード用リード部41から半導体発光素子70を介してカソード用リード部42に順方向電流が流れ、その結果、半導体発光素子70は光を発する。そして、半導体発光素子70から発せられた光は、封止部50内を進行し、直接あるいは底面22と対向する第1の面51および壁面23と対向する第2の面52にて反射した後、第3の面53から外部に出射される。ただし、封止部50の第3の面53に向かう光の一部は、第3の面53で反射し、再び封止部50内を進行する。ここで、封止部50が蛍光体を含んでいる場合は、封止部50を進行する光の一部がより長波長の光に変換され、半導体発光素子70から発せられる波長の光とともに外部に出射される。
【0032】
この間、封止部50内を進行する光のうち、底面22と対向する第1の面51に向かう光は、封止部50の第1の面51と底面22との界面において反射することになる。ここで、本実施の形態では、底面22に露出するアノード用リード部41およびカソード用リード部42の表面に銀メッキ層を形成しているので、封止部50の第1の面51に向かう光は、この銀メッキ層によって反射される。
【0033】
また、封止部50内を進行する光のうち、壁面23と対向する第2の面52に向かう光は、封止部50の第2の面52と気体層60との界面において反射することになる。ここで、本実施の形態のように封止部50の第2の面52の外側に気体層60を設けた場合には、気体層60を設けずに封止部50の第2の面52と壁面23とを直接接触させる構成を採用した場合と比較して、界面での屈折率差が大きくなる。このため、前者の構成を採用した場合には、後者の構成を採用した場合と比較して、封止部50の第2の面52から外部に飛び出す光の量が少なくなり、その分、封止部50の第2の面52から封止部50内に戻る光の量が多くなる。
【0034】
封止部50の第2の面52から外部に飛び出した光は、その一部が壁面23によって反射されることになるが、一部は壁面23で吸収されることになる。これに対し、封止部50内では、壁面23よりも光の吸収が生じにくい。したがって、気体層60を介して封止部50と壁面23とを対向させることで、封止部50の第2の面52から外部に飛び出す光の量を低減することができ、結果として半導体発光装置10から出射される光の取出し効率を高めることができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、気体層60を介して封止部50の第2の面52と壁面23とを対向配置させている。したがって、第2の面52から気体層60側に飛び出してくる光
の一部については、底面22から遠ざかるに従って拡開している壁面23の表面で反射させることで半導体発光装置10の外部に出射させることができる。これは、壁面23がリフレクタとして機能するためである。ここで、壁面23が半導体発光素子70から出力される光に対する反射性を有していると、光の取出し効率をさらに高めることができるため好ましい。
結果として、壁面23の表面で反射させることで、半導体発光装置10から出射される光の取出し効率をさらに高めることができる。なお、壁面23が白色顔料を含有する熱可塑性樹脂または金属で構成されると、反射性が高まる。
【0036】
本実施の形態では、半導体発光装置10の光の取出し効率が、従来の半導体発光装置と比較して10%?20%向上することが確認された。」
(2)「【0040】
<離型剤塗布工程>
そして、図3(b)に示すように、容器部20の凹部21に設けられた壁面23に離型剤80を塗布する。このとき、底面22には離型剤80を塗布しないことが望ましい。本実施の形態で用いる離型剤80は、壁面23と封止部50の原材料となる液体封止剤55(後述する図3(c)参照)との密着性を低下させる機能を有するものであればよい。なお、離型剤塗布工程は本発明に必須な工程ではない。
【0041】
<封止剤供給工程>
さらに、凹部に液体封止剤を供給する工程である、封止剤供給工程においては、図3(c)に示すように、容器部20の凹部21に液体封止剤55を供給する。このとき、液体封止剤55は、凹部21の底面22および壁面23の両者に接した状態となる。なお、液体封止剤55には、必要に応じて蛍光体を含有させるようにしてもよい。
【0042】
<固体化工程>
そして、封止部を形成する工程である、固体化工程については、図3(d)に示すように、容器部20の凹部21に供給された液体封止剤55を固体化させて封止部50を形成する。液体封止剤55を固体化させるためには、液体封止剤55に熱処理や光照射を行う

熱処理などを行うことで、液体封止剤55が固体化して封止部50となる際に、液体封止剤55に収縮が生じる。一方、上記処理によって、容器部20には大きな形状変化はなく、凹部21の壁面23は大きく移動しない。したがって、得られる封止部50の第2の面52は凹部21の壁面23との間で間隙を形成する(図中矢印参照)。また、液体封止剤55が固体化するために収縮する際、液体封止剤55は凹部21の底面22との接触を維持することから、得られる封止部50の第1の面51は凹部21の底面22と接触したままとなる。
このようにして液体封止剤55が固体化して封止部50となることから、封止部50の第2の面52と容器部20の凹部21に設けられた壁面23との間には間隙が形成され、例えば大気中であればこの間隙に空気が入り込むことによって気体層60が形成されることとなる。なお、容器部20の凹部21の開口を鉛直上方に向けた状態で、液体封止剤55の収縮を行うようにすれば、上述のような状態の封止部50が得られやすくなる。
以上により、図1に示す半導体発光装置10が得られる。
【0043】
このようにして得られる半導体発光装置10において、封止部50は、凹部21の底面22を介して容器部20と接合しており、接合を維持するためには封止部50と凹部21の底面22との密着性が高いことが望ましい。一方で、封止部50は、凹部21の壁面23との間に間隙を形成しており、原材料となる液体封止剤55が壁面23と離れるためには液体封止剤55と凹部21の壁面23との密着性は低いことが望ましい。これらの要求を満たす構成としては、例えば凹部21の底面22を、凹部21の壁面23よりも粗くすることが挙げられる。この構成を有することで、より粗い面である底面22と封止部50の第1の面51との間は密着性が高いことから、封止部50は底面22から外れにくくなるのに対して、より滑らかな壁面23との密着性は低いことから、壁面23と封止部50との間の間隙が形成しやすくなる。
ここで、凹部21の底面22を、凹部21の壁面23よりも粗くする手段として、例えば容器部形成工程において予め底面22に凹凸を形成しておくことが挙げられる。この凹凸に液体封止剤55を入り込ませた状態で固体化させると所謂アンカー効果を発揮し、凹部21の底面22と封止部50の密着性が高められる。
【0044】
そして、容器部20の底面22に凹凸を形成する手法としては、例えば底面22に露出した状態で設けられるアノード用リード部41およびカソード用リード部42の表面にあらし処理をしておくことが挙げられる。このようなあらし処理の一例として、例えばアノード用リード部41およびカソード用リード部42の表面にデンドライト成長させたメッキ層を形成することが挙げられる。また、容器30のうち底面22に露出する部位に対し、予めあらし処理を行っておくようにしてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、半導体発光装置10の製造において、液体封止剤55を固体化して封止部50を形成する際の収縮を利用して、封止部50の第2の面52と容器部20の壁面23との間に間隙を形成させるようにした。このため、半導体発光装置10の光取り出し効率を向上させることができ、さらに封止部50の形成と間隙の形成とを一つの工程で行うことが可能となり、半導体発光装置10の製造プロセスを簡易なものとすることができる。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2004-87889号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂封止型半導体装置に用いるリードフレームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置用リードフレームはリードフレームに半導体素子を搭載し、半導体素子とリード端子とを導通接続した後、封止樹脂を用いて半導体素子を保護する半導体装置に用いられている。図2を用いて従来の半導体装置用リードフレームの構成を説明する。図2(a)は半導体装置用リードフレームの上面図であり、図2(b)は図2(a)のY-Y’線に沿った断面図であり、図2(c)は図2(b)のB部拡大図である。101は銅材からなるフレーム、102は半導体素子(図示せず)を搭載する素子搭載部、103は素子搭載部とフレームとを連結する吊りリード、104は半導体素子(図示せず)と外部回路とを導通接続するリード端子、105は樹脂封止領域、107は吊りリード103およびリード端子104に形成されたアンカーホール、108は銀めっきである。
【0003】
詳細な構成を下記に説明する。フープ状のフレーム101から内向きに吊りリード103を介して素子搭載部102とリード端子104とが各々突出形成されている。吊りリード103およびリード端子104にはアンカーホール107が形成されている。これは各々のリードの引張強度を増加させる目的で、突起部106を設けたり、アンカーホール107を設け封止樹脂(図示せず)からのリード抜け止め防止を図るものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の構成では、封止樹脂(図示せず)とフレームとの接着力が弱いため、吊りリード103およびリード端子104に突起部106を設けたり、アンカーホール107をプレス加工やエッチング加工などにより形成しリード抜け止め防止を図っている。しかし、突起部106またはアンカーホール107をプレス加工やエッチング加工などにより形成する必要があり工程が煩雑になるという問題を有している。また、半導体装置の高集積化に伴う多ピン化により、吊りリード103およびリード端子104が微細化され、突起部106やアンカーホール107を形成することが加工方法および加工精度的にも非常に困難となる。また、一次結合および二次結合などの相互作用による接着のように実質的には接着していないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであり、フレーム101およびリード端子104と封止樹脂(図示せず)との接着力を向上することができる半導体装置用リードフレームを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の半導体装置用リードフレームは、半導体素子を搭載する素子搭載部と、前記半導体素子と外部回路とを導通接続するリード端子とからなり、前記素子搭載部およびリード端子にトリアジンチオール誘導体被膜を形成するものであり、前記素子搭載部およびリード端子に金属被膜が形成され、前記金属被膜上にトリアジンチオール誘導体被膜を形成するものである。これによれば、フレームおよび絶縁リードに形成されたトリアジンチオール誘導体被膜が封止樹脂(図示せず)との接着力を向上するものである。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(国際公開第2009/157445号)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、表面の少なくとも一部に樹脂が接合されている鉄および鋼(ステンレス鋼を含む)を含む鉄合金物品と表面の少なくともに一部に樹脂を被覆するために表面処理を行った鉄合金部材ならびにこれらの製造方法に関し、とりわけ、樹脂と鉄合金基体との密着性に優れる鉄合金物品および鉄合金部材ならびにこれらの製造方法に関する。」
(2)「【0006】
さらに、半導体パッケージ用リードフレームと封止材の密着性向上のために、リードフレーム材の鉄合金材表面を、ダルロール圧延またはエッチングにより微細な凹凸を有する粗化表面とし、その算術平均粗さを0.05?0.8μmかつ表面積代替値が1.005?1.08として、その上にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の封止材を成形する方法(特許文献2)、およびコネクタの金属端子と樹脂製保持部をインモールド成形する際に接着強度を高めるために、金属部品の表面にあらかじめトリアジンチオール類で表面処理を施したり、表面粗さRaが1?10μmとなるように酸化力の強い過マンガン酸水溶液のようなエッチング溶液でマイクロエッチングを行う、または酸化剤によって表面に酸化被膜を形成させたりした後、多官能性モノマーを含有するナイロン樹脂を成形・一体化し、放射線照射によるナイロン樹脂の架橋と100℃以上での熱処理を行う方法(特許文献3)が提案されている。」
(3)「【0022】
図1は、全体が100で表される本発明にかかる鉄合金物品の一部分を模式的に示す断面図である。鉄または鉄合金から成る鉄合金基体1と樹脂層4とが、詳細を後述する金属化合物皮膜2と脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体被覆3とを介して接合している。
脱水シラノール含有トリアジンチオール誘導体3を用いて、鉄合金基体1と樹脂層4とを接合した従来の鉄合金物品200の断面を図2に示す。従来の鉄合金物品200は、金属化合物皮膜2を有していない。」

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2013-138043号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0034】
(接合部材)
接合部材103としては樹脂組成物が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、或いは、組み合わせて用いてもよい。熱や光で硬化する物が好ましい。
具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、Si-O結合を有していることが好ましく、これにより信頼性を向上させることができる。
【0035】
また、発光素子の基板として、例えば導電性のシリコン(Si)基板を用いた窒化ガリウム系半導体素子を用いて正極側或いは負極側となる層を接合面とする場合は、基体101に設けられる導電部材102bと発光素子104とを、この部分で導通させる必要がある。従って、このような場合は樹脂組成物中に比較的融点の低い、低融点金属などの導電性部材を混入させておくことが好ましい。さらに、低融点金属の融点を下げたり酸化物を還元させたりする機能を持つ樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0036】
(ワイヤ)
ワイヤ106は、発光素子や保護素子における電極端子と、基体101の凹部に配される導電部材102a,102cの電極となる部位とを電気的に接続するものである。ワイヤ106の材料は、金、銅、白金、アルミニウム等の金属、および、それらの合金を用いたものが挙げられるが、特に、熱伝導率等に優れた金を用いるのが好ましい。
【0037】
(封止部材)
封止部材109は、基体101に載置された発光素子104、ワイヤ106等を、塵芥、水分、外力等から保護する部材である。図3に示すように、基体101の凹部内部は、封止部材109により、封止されている。
【0038】
封止部材109の材質は、発光素子104からの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。このような材料に加え、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー、蛍光部材等を含有させることもできる。なお、封止部材109は単一の部材で形成することもできるし、あるいは、2層以上の複数の層として形成することもできる。また、封止部材109の充填量は、基体101の凹部に載置される発光素子104、保護素子、ワイヤ106等が被覆される量であればよい。なお、封止部材109にレンズ機能をもたせる場合には、封止部材109の表面を盛り上がらせて砲弾型形状や凸レンズ形状としてもよい。
【0039】
本実施形態においては、隣接する発光素子と発光素子の間には接合部材が配置されているため、封止部材109と接合部材103の材質を同一のものとすることで、封止部材と接合部材との密着性を向上させることができる。」

8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2012-195371号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0046】
光透過性封止層30の内部には、空隙部31が設けられている。空隙部31は、LEDチップ20の光軸OAを囲繞する筒状の形状を有しており、好適にはLEDチップ20をも囲繞している。この空隙部31は、たとえばパルス幅が10-15秒(1フェムト秒)以上10-11秒(10ピコ秒)以下の超短パルスレーザ光(以下、便宜上これをフェムト秒レーザ光とも称する)を光透過性封止層30に照射することによって形成されたものである。
【0047】
フェムト秒レーザ光を用いたレーザ加工は、高分子構造体の内部にフェムト秒レーザ光を照射することで、当該フェムト秒レーザ光が照射された部分において屈折率変化や空孔形成、黒色化等を誘起する加工であり、本実施の形態においては、このうちの空孔形成を利用することで光透過性封止層30の内部に空隙部31を形成する。なお、具体的な加工方法については、後述する実施の形態3ないし6において詳説することとする。
【0048】
空隙部31は、好適には、図示する如く、光透過性封止層30の厚み方向に沿ってLEDチップ20から遠ざかるにつれてその直径が大きくなる略円錐板状の形状に形成される。当該形状の空隙部31を形成するためには、たとえばフェムト秒レーザ光の照射位置を当該形状に沿って走査させればよい。」

9 引用文献9について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献9(特表2010-517069号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0078】
図5aにおいて図示されているように、各々の光源81a乃至81cからの光をコリメートするよう構成されるコリメータ84a乃至84cの各々は、第1光学部材86と各々の第2光学部材87a乃至87cとの間の空隙85a乃至85cにおけるTIR反射器によって形成される。第2光学部材87a乃至87cの各々の上には第3光学部材88が設けられる。コリメータ板の反射器85a乃至85cの機能及び構成は、図4a及び4bの光導体実施例について上で記載したものと同様である。
【0079】
空隙85a乃至85cの各々の断面は、光学素子80の第2面83に平行な面において閉ループを形成する。断面を含む、コリメータの形状は、コリメート光線の望ましい形状に依存する。例えば、円形断面を持つ光線のためには、一般に、空隙断面も円形でなければならない。」


第7 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「断面略半球状(平面視略円形状)の集光部13が設けられているリードフレーム2の一方のリード部5」は、図3より「断面略半球状(平面視略円形状)の集光部13」が凹部であることが見て取れるから、本願発明1の「凹部を有する第1のリードフレーム」に相当する。
イ 引用発明の「リードフレーム2の他方のリード部6」は、本願発明1の「第2のリードフレーム」に相当する。
ウ 引用発明の「集光部13に設置されている光半導体素子3」は、図3より光半導体素子3が集光部13の底面に載置されていることが見て取れるから、本願発明1の「前記第1のリードフレームに形成された前記凹部の底面に載置された発光素子」に相当する。
エ 引用発明の「光半導体素子3並びに集光部13及びその周囲領域を含むリード部5及びリード部6の一部を被覆している硬化体4」は、引用発明の「硬化体4」が本願発明1の「透光性樹脂」に相当するから(「硬化体4を形成するためのエポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂および硬化剤に加えて、リン系硬化促進剤および/またはチオールを含有している」(【0044】参照。)、本願発明1の「前記発光素子並びに前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームの一部を被覆する透光性樹脂」に相当する。
オ 引用発明の「リード部5はインナーリード部5aとアウターリード部5bとを有し」は、「インナーリード部5a」及び「アウターリード部5b」が「(第1のリードフレームの)前記透光性樹脂に覆われた被覆領域」及び「(第1のリードフレームの)前記透光性樹脂から露出した露出領域」にそれぞれ相当するから、本願発明1の「前記第1のリードフレームは、前記透光性樹脂に覆われた被覆領域と、前記透光性樹脂から露出した露出領域と、を有し」に相当する。
カ 引用発明の「硬化体4は、エポキシ樹脂および硬化剤に加えて、リン系硬化促進剤およびチオールを含有しており」は、本願発明1の「前記透光性樹脂にエポキシ樹脂及び硬化促進剤が含まれ」に相当する。
キ 引用発明の「各リード部5のアウターリード部5bとインナーリード部5aとの境界部分において硬化体とリードフレームが良好に接着されている」は、「各リード部5のアウターリード部5bとインナーリード部5aとの境界部分に」が本願発明1の「前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域」に相当するから、本願発明1の「前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域」において、「前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とが密着している」に相当する。
ク 引用発明の「光半導体装置1」は、本願発明1の「発光装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「凹部を有する第1のリードフレームと、第2のリードフレームと、前記第1のリードフレームに形成された前記凹部の底面に載置された発光素子と、前記発光素子並びに前記凹部及びその周囲領域を含む前記第1のリードフレーム及び前記第2のリードフレームの一部を被覆する透光性樹脂と、を備え、前記第1のリードフレームは、前記透光性樹脂に覆われた被覆領域と、前記透光性樹脂から露出した露出領域と、を有し、前記透光性樹脂にエポキシ樹脂及び硬化促進剤が含まれ、前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂とが密着している発光装置。」
(相違点1)
本願発明1は「前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し」ているのに対して、引用発明はこのような隙間を有しているかどうかが不明である点。
(相違点2)
本願発明1は「前記被覆領域内であって前記露出領域との境界またはその近傍に位置する前記被覆領域の端部を少なくとも含み前記凹部の内側面を除く前記被覆領域に密着付与剤が設けられて」いるのに対して、引用発明はこのような密着付与剤が設けられているかどうかが不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
引用文献2には、剥離部分が光反射部の内面に存在することが記載されているが(図2(e)(f)参照。)、当該剥離部分が発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有しているのか不明である。
引用文献3には、封止樹脂の収縮によって、リフレクタと封止樹脂の間に間隙(空気層)を形成することが記載されているが、当該間隙(空気層)が発光素子からの光の主波長より大きいかどうか不明であるし、大気から密封されたものではない。
引用文献4には、液体封止剤の収縮によって、 封止部と壁面の間に間隙(気体層)を形成することが記載されているが、当該間隙(気体層)が発光素子からの光の主波長より大きいかどうか不明であるし、大気から密封されたものではない。
引用文献5-9には、リードフレームの凹部の内側面と透光性樹脂との間に発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有することは記載されていない。
そして、本願発明1は「前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し」ていることにより、熱または光等によりリードフレームと透光性樹脂の一部が剥離して、経時的劣化による配光バラツキが生じることを抑制するという効果を奏するものである。
よって、引用発明及び引用文献2-9に記載された技術的事項に基づいて、「前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し」という構成を、当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-9の記載に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-15について
本願発明2-14は何れも、本願発明1と同じく「前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を有し」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が引用発明及び引用文献2-7の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明15は「前記凹部の内側面において、前記第1のリードフレームと前記透光性樹脂との間に前記発光素子からの光の主波長より大きい大気から密封された隙間を形成する工程」を備える製造方法であり、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明及び引用文献2-9の記載に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第8 原査定(特許法第29条第2項)について
前記第6に記載したとおり、本願発明1-15は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-9に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第9 当審拒絶理由について
平成30年11月 5日付けの意見書において、透光性樹脂に硬化促進剤を所定量入れることで凹部の内側面に隙間を容易に形成できることが主張され、当審拒絶理由は解消された。


第10 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-18 
出願番号 特願2014-25813(P2014-25813)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 森 竜介
村井 友和
発明の名称 発光装置及びその製造方法  
代理人 鮫島 睦  
代理人 膝舘 祥治  
代理人 柳橋 泰雄  
代理人 言上 惠一  

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