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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1347217
審判番号 不服2017-19309  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2016-191054号「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日出願公開、特開2016-217708号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月4日に出願した特願2014-116101号の一部を平成28年9月29日に新たな出願としたものであって、平成28年11月28日付けで手続補正がされ、平成29年1月6日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月21日付けで意見書の提出及び手続補正がされ、平成29年5月17日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年7月24日付けで意見書の提出及び手続補正がされ、平成29年9月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年9月11日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年11月7日付けで意見書の提出及び手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は、下記の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2007-85606号公報
2.特開2002-22197号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013-204852号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2013-36678号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
<理由1>
この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<理由2>
この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
<理由3>
本願請求項1-4に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-204852号公報(拒絶査定時の引用文献3)
2.特開2007-85606号公報(拒絶査定時の引用文献1)

第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成30年11月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
調和空気を生成する空気調和機構と、
前記調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構と、
人の存否を判断する存否判断部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足されると、前記吹出方向調節機構を制御して、前記調和空気の躯体に対する直接的な吹き付けを開始し、
当該吹き付けの開始後、前記躯体の温度が躯体冷却停止温度になると、冷房運転を停止することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記躯体は、壁又は天井であることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
調和空気を生成する空気調和機構と、
前記調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構と、
人の存否を判断する存否判断部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足されると、室内空間に前記調和空気を吹き出す第1吹出方向よりも上を向いた第2吹出方向に前記吹出方向調節機構を制御し、
天井の温度が天井冷却停止温度になるまで前記第2吹出方向に前記吹出方向調節機構を制御し、前記天井の温度が天井冷却停止温度になると、冷房運転を停止することを特徴とする空気調和機。」

第5 当審拒絶理由通知の拒絶の理由について
<理由3>について
1. 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
当審の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、予冷暖運転時の室内負荷状況を正確に把握し、適切に処理することで快適性の向上を図ると共に、予冷暖運転と在室時の通常運転との両運転を通じて消費電力量の低減を図ることが可能な空調制御方法及び空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調制御方法は、冷房、暖房及び送風の何れかの運転モードで動作し、空調対象空間を空調する風向制御可能な空調装置の空調制御方法であって、空調対象空間が設定時刻に設定温度になるように設定時刻前に空調装置を運転させる予冷運転又は予暖運転を行うにあたり、空調対象空間の使用者の在室時間幅と空調対象空間の負荷分布とに基づいて予冷運転又は予暖運転の運転開始時刻と、空調装置の運転モードと、風向及び風量と、を制御するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、室内負荷分布と在室時間幅とに基づいて室内負荷を適切に処理することができる。このため、予冷暖運転と在室時の通常運転との両運転を通じて消費電力量の低減を図ることができ、また、在室開始時の空調対象空間の快適性を向上することができる。」
「【0011】
空気調和システムは、空調装置1と空調負荷分布検知装置2と在室情報取得装置3とを備えている。空調装置1は、冷房、暖房及び送風の何れかの運転モードで動作して空調対象空間を空調する装置であり、室外機10と空調対象空間aに設置された室内機20とを備えている。室内機20は、風向制御機構(図示せず)を備えており風向制御可能に構成されている。室外機10と室内機20の間は冷媒が循環する配管100と伝送線101で接続されており、室外機10及び室内機20は、伝送線101によりコントローラ30に接続されている。コントローラ30は、使用者が室内温度及び室内湿度を設定するための入力部31を備えている。なお、図1では室内機20の接続台数は各1台であるが、室外機能力、必要空調能力に応じて接続台数を個別に変更しても良く、台数を限定するものではない。
【0012】
空調負荷分布検知装置2は、空調対象空間a内に設置され、室内の空調負荷の分布を検知する装置であり、ここでは天井温度Thを検知する天井温度センサ2aと床面温度Tlを検知する床面温度センサ2bとで構成されている。空調負荷分布検知装置2で検知された空調負荷分布(天井温度Th、床面温度Tl)は室内機20に送信される。室内機20に送信された空調負荷分布情報は、受信部41を介してコントローラ30に送信される。
【0013】
空調負荷分布検知装置2は、天井温度Th及び床面温度Tlを検知する温度センサに限らず、空調対象空間aの熱画像を取得する赤外線温度センサとしてもよい。要は、コントローラ30が空調負荷分布を取得できればよく、天井温度センサ2a及び床面温度センサ2bを配置する代わりに、インターネット等のネットワークを介して外部情報取得装置(例えば、天気情報予報システム)40から一日の温度、日射量、外気の風向、風速の予想変動情報を、受信部41を通じてコントローラ30が取得し、予め入力できる住宅躯体の断熱性能とを用いて、予冷暖運転開始時の室内温度分布傾向を推算してもよい。
【0014】
在室情報取得装置3は、空調対象空間a内に設置され、使用者の在室情報を取得することが可能な機器であり、例えば照明、人感センサ、室内ドアの開閉装置等、のうちの一又は複数である。在室情報取得装置3は、照明の使用状況や、人感センサなどによる人検知情報や、室内ドアの開閉情報など、使用者の在室時間幅TIMEinを把握できる情報を収集し、収集した情報を室内機20に送信する。室内機20に送信された収集情報は、受信部41を介してコントローラ30に送信される。」
「【0028】
《システム構成》
図3は、図1の空気調和システムの制御ブロック図である。
空調装置1のコントローラ30は、各温度センサ1a?1hの検知温度を取得できるように接続されている。また、空調装置1は、空調負荷分布検知装置2により検知された空調負荷分布(天井温度Th、床面温度Tl)及び在室情報取得装置3により取得された在室情報を受信部41を介して取得できるように接続されている。コントローラ30は、在室情報取得装置3で取得した在室情報に基づいて在室時間幅TIMEinを設定する在室時間幅設定部32を備えている。なお、在室時間幅TIMEinは、使用者が直接、入力部31から入力して在室時間幅設定部32に設定するようにしてもよい。
【0029】
コントローラ30は、各温度センサ1?hの検知温度や、空調負荷分布(天井温度Th、床面温度Tl)、在室時間幅TIMEinに基づいて室外機制御基板16を介して圧縮機11、絞り装置14及び送風装置15を制御すると共に、室内機制御基板23を介して送風装置22及び風向制御機構24を制御する。コントローラ30は、空調対象空間aを設定温度Tmに維持するように各部を制御する通常運転(冷房、暖房)と、空調対象空間aが設定時刻(在室開始時刻)に設定温度Tmになるように設定時刻前に空調装置1を運転させる予冷暖運転(予冷運転又は予暖運転)とを行う。なお、予冷暖運転終了後(つまり設定時刻以降)は通常運転に移行する。」
「【0033】
次に、予冷暖運転について説明する。予冷運転と予暖運転の制御の特徴は基本的には同じであるため、以下では予冷運転の例で説明する。本実施の形態の予冷運転は、在室時間幅TIMEinと空調負荷分布とを考慮して、低消費電力で在室開始時(設定時刻)に快適な室内空間を得ることが可能な運転であり、その運転の基本的な考え方についてまず説明する。
【0034】
一般に空調が行われる場合、熱負荷としては、室外から室内への換気等の熱伝達によって侵入する空気熱負荷の他、室内を構成する躯体など(天井や壁など。)の熱容量に応じた躯体熱負荷がある。
【0035】
冷房運転では、まず室内空気が冷却され、その冷却された室内空気が室内の躯体と熱交換して室内の躯体の温度が低下していく。すなわち、冷房運転ではまず室内空気が冷却され、続いて躯体が遅れて冷却されることになる。このため、例えば日射が強い日中など、躯体温度が上がっている場合には、冷房運転を行って室内温度を設定温度Tmまで下げても、躯体温度が影響して室内温度が昇温しやすい。この場合、空調装置1では圧縮機11の発停を頻発することになり、頻繁な圧縮機起動により消費電力の増大を招くことになる。
【0036】
よって、通常運転開始前の段階で躯体の熱負荷を処理し、躯体温度を設定温度Tmまで下げておくようにすれば、通常運転開始後の頻繁な圧縮機起動を抑制でき、消費電力の低減を図ることができる。
【0037】
躯体温度を設定温度Tmまで下げるのに要する消費電力は、室内温度を設定温度Tmまで下げるのに要する消費電力よりも当然のことながら大きい。よって、予冷運転中に躯体温度を設定温度Tmまで下げる運転を行うのは、予冷運転時だけでなく通常運転開始後の運転中も含めたトータルでの消費電力低減に効果的である場合に行うことが好ましい。この判断に、在室時間幅TIMEinを用いる。
【0038】
すなわち、在室時間幅TIMEinが、躯体温度を設定温度Tmまで下げるのに要する時間(以下、居住負荷処理運転判定時間TIMEin_sという)よりも長い場合には、躯体温度を設定温度Tmまで下げる運転が効果的である。逆に、在室時間幅TIMEinが居住負荷処理運転判定時間TIMEin_s以下の場合には、躯体温度の影響を受けて室内温度が昇温し始める前に在室時間が終わる。このため、予冷運転で敢えて躯体の熱負荷まで処理する必要はなく、使用者の居住領域(室内全体のうち、床面側の領域)の空気温度を設定温度Tmに下げる運転を行えば十分である。このように、消費電力の低減を図るにあたり、室内空気の熱負荷を処理する方が効果的か、室内空気の熱負荷に加えて躯体の熱負荷も処理する方が効果的かは、在室時間幅TIMEinによって切り分けることができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、空調対象空間a内における躯体の熱負荷状況を反映した指標として天井温度Thを用いる。よって、以下の説明では、躯体温度に代えて天井温度Thを用いる。なお、予暖運転の場合には、空調対象空間a内における躯体の熱負荷状況を反映した指標として床面温度Tlを用いることになる。
【0040】
以上説明したように、予冷運転は、床面温度Tlを設定温度Tmまで下げることを目的とした運転か、天井温度Thを設定温度Tmまで下げることを目的とした運転かの2つに大きく分けられる。そして、本実施の形態では更に、天井温度Thを設定温度Tmまで下げることを目的とした運転を更に3つに分けており、空調負荷分布に応じて適宜選択するようにしている。よって、床面温度Tlを設定温度Tmまで下げることを目的とした運転も含めて、合計4つの予冷運転パターンを有している。
【0041】
図4は、予冷運転の各パターンの説明図である。
まず、予冷運転時に行われる風向制御について説明する。風向制御としては、室内循環動作、上部循環動作、下部循環動作の3つの動作がある。
【0042】
図5は、風向制御の説明図で、(a)は室内循環動作、(b)は上部循環動作、(c)は下部循環動作を示している。
《(a)室内循環動作》
室内循環動作は、空調対象空間a全体の空気を循環させる動作であり、空調対象空間aの温度を均一化させることを目的とする。この動作を行うための具体的な風向制御機構24の制御は、室内機20の吸込み口及び吹出し口の位置関係に応じて適宜制御すればよい。
【0043】
《(b)上部循環動作》
上部循環動作は、空調対象空間a上部の空気を上部空間内で循環させる動作であり、空調対象空間aの上部温度を均一化させるか又は設定温度Tmに近づける(天井に蓄熱された熱を室内空気で処理又は利用する)ことを目的とする。この動作を行うための具体的な風向制御機構24の制御は、室内機20の吸込み口及び吹出し口の位置関係に応じて適宜制御すればよい。
【0044】
《(c)下部循環動作》
下部循環動作は、空調対象空間a下部の空気を下部空間内で循環させる動作であり、空調対象空間aの下部温度を均一化させるか又は設定温度Tmに近づける(在室者付近の空気を優先的に温調する)ことを目的とする。この動作を行うための具体的な風向制御機構24の制御は、室内機20の吸込み口及び吹出し口の位置関係に応じて適宜制御すればよい。」
「【0048】
<在室時間が長い場合>
(2)高負荷処理運転+予冷本運転
空調対象空間aに高負荷領域が有る場合、予冷運転の初期にまずは高負荷領域の負荷を集中して処理する高負荷処理運転を行う。そして、高負荷処理運転により高負荷領域の負荷が処理されると、空調対象空間a全体の負荷を処理する予冷本運転を行う。
【0049】
具体的には、天井温度Thが高めの場合(天井温度Thと設定温度Tmとの温度差が高負荷処理運転判定温度Ths以上)、高負荷領域有りと判断し、冷房運転で上部循環動作を行い、まず、天井付近の高温空気の温度を低下させる。そして、高負荷処理運転により天井温度Thと吸込温度Tinとの差が所定温度差まで小さくなると、予冷本運転に切り換え、冷房運転で下部循環動作を行う。この(2)のパターンの運転時間幅TIME_w2は、圧縮機11を予冷用周波数で運転して天井温度Th(例えば32℃)を設定温度Tmに下げるのに要する時間であり、天井温度Thと設定温度Tmとの温度差(この例では6℃)に基づいて決定される。
【0050】
(3)負荷軽減運転+予冷本運転
空調対象空間aに高負荷領域が無い場合で、空調対象空間aの低負荷領域部分の負荷を利用して空調対象空間a全体の負荷軽減が可能な場合、予冷運転の初期にまずは空調対象空間a全体の空気を掻き混ぜる負荷軽減運転を行う。その後、空調対象空間a全体の負荷を処理する予冷本運転を行う。
【0051】
具体的には、天井温度Thが低め(天井温度Thと設定温度Tmとの温度差が高負荷処理運転判定温度Ths未満)で、且つ、床面温度Tlが設定温度Tmより高いもののその差が小さい場合は、送風運転(圧縮機11は停止)で室内循環動作を行うことで、床面の低温を利用して空調対象空間a全体の空気を掻き混ぜて均一化し、温度ムラを解消する。その後、予冷本運転に切り換え、冷房運転で室内循環動作を行う。
【0052】
負荷軽減運転により、床面近くの低温になりやすい部分の空気を使って天井付近の温度を下げることができるため、負荷軽減運転後に行う予冷本運転時の負荷を軽減できる。この(3)のパターンの運転時間幅TIME_w3は、天井温度Thと設定温度Tmとの温度差に基づいて決定される。天井温度Thと設定温度Tmとの温度差が上記(2)の場合に比べて小さいため、TIME_w3は、TIME2に比べて短く決定されることになる。」

以上から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「空調装置1と空調負荷分布検知装置2と在室情報取得装置3とを備え、空調装置1は、冷房、暖房及び送風の何れかの運転モードで動作して空調対象空間を空調する装置であり、空調対象空間aに室内機20を備え、室内機20は風向制御機構を備え風向制御可能に構成され、空調負荷分布検知装置2により天井温度Thが検知され、在室時間が長い場合にコントローラ30は天井温度Thに基づいて、送風装置22及び風向制御機構24を制御する空気調和システム。」

(2)引用文献2について
当審の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、天井面の結露や汚染を防止しながら、人体に直接冷風を当てないようにした間接冷房を行うことが可能な空気調和機を提供することを目的とする。」
「【0011】
本発明の空気調和機は、室内空間の空調負荷が小さくなって天井面への結露が発生しにくい状態を検出して、その場合にのみ間接冷房運転を行い、室内空間の空調負荷が大きく天井面への結露の恐れがある場合には通常冷房を行うことが可能となるので、天井面への結露や汚染を防止しながら人体に直接冷風を当てない快適な間接冷房を行うことが可能な空気調和機を提供することができる。」
「【0025】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における空気調和機を取り付けた状態の側面図である。図4において、室内機本体1は壁掛け型の室内機であり、空気調和機の室内機としての基本的な内部構成は本発明の実施の形態1に示した天井埋め込み型の室内機と同等であるので詳細な説明は省略する。
【0026】
室内機本体1は壁面8に掛けられて取り付けられ、風向偏向板13の向きにより通常冷房運転モードと間接冷房運転モードを切り替えるように構成されている。図4では間接冷房運転モードの風向偏向板13の向きを示しているが、風向偏向板13を下方に向けることにより、通常冷房運転モードの吹き出しが可能なように構成されている。間接冷房運転モードにおいて、室内機本体1から吹き出された冷風Aは、天井7に沿うように流れる。輻射センサ14は天井面温度検知範囲7aに向けられ、その温度を非接触で検知する。室内温度センサ(図示せず)は室内機本体1の吸い込み口付近に配設されて室内温度を検出する。
【0027】
以上のように構成された空気調和機において、本発明の第1の実施の形態における空気調和機と同様に、運転モード切替手段22(図示せず)が、予め定めた天井面温度と室内温度との関係により通常冷房運転モードと間接冷房運転モードの切り替えを行うことで、天井面の結露や汚染を防止しながら、人体に直接冷風を当てないようにした間接冷房を行うことが可能な空気調和機を提供することができる。」

したがって、上記引用文献2には次の発明又は技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「風向偏向板13の向きにより通常冷房運転モードと間接冷房運転モードを切り替えるように構成され、予め定められた天井面温度と室内温度との関係により通常冷房運転モードと間接冷房運転モードとを切り替え、間接冷房運転モードにおいて、室内機本体1から吹き出された冷風Aは、天井7に沿うように流れるように構成された空気調和機。」

2.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「空調装置1」は、その技術的意味等から、本願発明1における「調和空気を生成する空気調和機構」に相当する。
同様に、引用発明における「風向制御機構」、「在室情報取得装置3」及び「コントローラ30」は、本願発明1における「調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構」、「人の存否を判断する存否判断部」及び「制御部」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「調和空気を生成する空気調和機構と、
前記調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構と、
人の存否を判断する存否判断部と、
制御部と、を備えた空気調和機。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1の制御部は、「冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足されると、前記吹出方向調節機構を制御して、前記調和空気の躯体に対する直接的な吹き付けを開始し、当該吹き付けの開始後、前記躯体の温度が躯体冷却停止温度になると、冷房運転を停止する」のに対して、引用発明はそのような冷房運転を行うか不明な点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、「冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足される」ことを前提とする上記躯体冷却に係る具体化された制御は、引用文献1及び引用文献2には、記載も示唆もない。また、周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「空調装置1」は、その技術的意味等から、本願発明3における「調和空気を生成する空気調和機構」に相当する。
同様に、引用発明における「風向制御機構」、「在室情報取得装置3」及び「コントローラ30」は、その技術的意味等から、本願発明3における「調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構」、「人の存否を判断する存否判断部」及び「制御部」に相当する。
したがって、本願発明3と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「調和空気を生成する空気調和機構と、
前記調和空気の吹出方向を調節する吹出方向調節機構と、
人の存否を判断する存否判断部と、
制御部と、を備えた空気調和機。」
(相違点)
(相違点2)本願発明3の制御部は、「冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足されると、室内空間に前記調和空気を吹き出す第1吹出方向よりも上を向いた第2吹出方向に前記吹出方向調節機構を制御し、天井の温度が天井冷却停止温度になるまで前記第2吹出方向に前記吹出方向調節機構を制御し、前記天井の温度が天井冷却停止温度になると、冷房運転を停止する」のに対して、引用発明はそのような冷房運転を行うか不明な点。

(2)相違点についての判断
上記相違点2について検討すると、「冷房運転中に前記存否判断部によって人が不在であると判断され、且つ、外気温度が予め規定された基準温度以上であるという条件が満足される」ことを前提とする、上記天井冷却に係る具体化された制御は、引用文献1及び引用文献2には、記載も示唆もない。また、周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明3は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

<理由1>及び<理由2>について
<理由1>及び<理由2>は、平成30年11月7日付けの手続補正により解消された。

第6 原査定についての判断
平成30年11月7日付けの手続補正により、補正後の請求項1及び2は、上記相違点1に係る請求項1の構成を有し、また、補正後の請求項3は、上記相違点2に係る請求項3の構成を有するものとなった。当該、上記相違点1に係る請求項1の構成及び上記相違点2に係る請求項3の構成は、原査定における引用文献1には記載されておらず、本願出願日前における周知技術であるともいえないので、本願発明1-3は、当業者であっても、原査定における引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審において通知した拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2016-191054(P2016-191054)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
P 1 8・ 537- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野田 達志金丸 治之▲高▼藤 啓町田 豊隆  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 窪田 治彦
莊司 英史
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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