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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1347230
審判番号 不服2017-17635  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-29 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2014- 2003「ベルヌーイハンド及び半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日出願公開、特開2014-170923、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月8日の出願(国内優先権主張 平成25年2月5日,以下,「本願優先日」という。)であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月14日 拒絶理由通知
平成29年 8月 8日 意見書・手続補正
平成29年 8月23日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年11月29日 審判請求・手続補正
平成30年 9月12日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成30年11月16日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は,以下の引用文献3及び4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
3.特開2004-140058号公報
4.特表2005-536889号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は,以下の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2009-177032号公報
2.特開2011-199229号公報

第4 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
a) 円板状のワークの中心を覆うように形成された保持面を有する平板状の本体と,
b) 前記保持面に設けられたベルヌーイ吸着部と,
c) 前記保持面上であって,前記ワークを前記ベルヌーイ吸着部で上方から吸着したときに該ワークの周縁の少なくとも3点において該周縁に当接するような位置に設けられた,前記保持面から前記ワークに向かって外方に傾斜する形状を有する複数の傾斜部であって,少なくとも1つが前記保持面に固定された固定傾斜部である,複数の傾斜部と,
d) 前記ベルヌーイ吸着部によって前記ワークを吸着した状態で,前記複数の傾斜部のうちの,前記固定傾斜部以外の少なくとも1つの傾斜部を,前記固定傾斜部に近接する方向又は離間する方向に移動させる傾斜部移動機構と
を備えることを特徴とするベルヌーイハンド。
【請求項2】
前記傾斜部が滑らかに傾斜する形状を有することを特徴とする請求項1に記載のベルヌーイハンド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベルヌーイハンドと,
e) 前記ベルヌーイハンドの前記保持面を下側に向けて前記ワークの中心を上から覆うように該ワークを保持させるハンド移動機構と
を備えた半導体製造装置。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
「【0001】
本発明は,半導体ウェーハなどのウェーハの搬送装置および加工装置に関する。」
「【0028】
[3]搬送装置
次に,図2および図3を参照して,本発明に係る本実施形態の搬送装置60を説明する。
搬送装置60は,チャックテーブル20側に面した側面61aが鉛直面であるボード61を備えている。ボード61の側面61aには,Y軸方向に延びる一対の平行なガイドレール62が固定されており,このガイドレール62にスライダ63が摺動自在に取り付けられている。このスライダ63は,モータ64でボールねじ65を作動させる搬送機構66によってY軸方向に移動させられる。
【0029】
スライダ63の中心には,スライダ63からX方向手前側に延び,先端がZ方向下方に屈曲しているL字状のアーム67が固定されている。このアーム67の先端には,リフタ68が昇降可能に装着されている。このリフタ68の下端には,搬送パッド70が設けられている。
【0030】
図3は,搬送パッド70を示す図であり,(a)は斜視図,(b)は搬送パッド70にウェーハ1を保持する様子を示す図3(a)のB-B断面図である。図3に示すように,搬送パッド70は,円盤状のベース71と,ベース71の下面側にウェーハ1を吸引する複数(図では3つ)の非接触吸引保持手段72と,非接触吸引保持手段72に保持されたウェーハ1の垂直方向の移動を規制する支持パッド(垂直方向規制部)73と,ウェーハ1の水平方向の移動を規制する側面支持手段74(水平方向規制部)とから構成されている。非接触吸引保持手段72は,ベース71の中心の周囲に,周方向に等間隔をおいて配設されている。非接触吸引保持手段72としては,例えば,上記特許文献2(特開2004-119784号公報)に記載されている非接触式吸引保持器と同様な構成のものが好適に用いられる。ウェーハ1は,非接触吸引保持手段72の下面に発生する負圧によって非接触吸引保持手段72に吸引される。」
「【0038】
[4]他の実施形態
上記実施形態の搬送装置60では,ウェーハ1の垂直方向および水平方向の移動を規制する手段を別個に設けていたが,ウェーハ1の,垂直方向および水平方向の移動を規制する手段を一体に形成してもよい。この形態について図4を参照して説明する。なお,上記実施形態の搬送装置60と同一構成要素には同一の符合を付しており,それらについては簡略的に説明する。
【0039】
図4は,搬送パッド80を示す図であり,(a)は斜視図,(b)は搬送パッド80が備える支持パッド82の側面図,(c)は搬送パッド80にウェーハ1を保持する様子を示す図4(a)のC-C断面図である。図4に示すように,搬送パッド80は,ベース81と,ウェーハ1を吸引する複数(図では3つ)の非接触吸引保持手段72と,非接触吸引保持手段72に保持されたウェーハ1の移動を規制する移動規制パッド82とから構成されている。非接触吸引保持手段72は,上記実施形態と同様に周方向に等間隔をおいて配設されている。移動規制パッド82は,上記実施形態の支持パッド73と同様にフッ素樹脂で形成されている。
【0040】
ベース81には,上記実施形態と同様に複数(図では6つ)の移動規制パッド取付孔81aが周方向等間隔に形成されている。移動規制パッド82の上面82aには,図4(b)に示すように,上面にねじ孔(図示省略)が形成された凸部83が形成されている。移動規制パッド82は,凸部84が移動規制パッド取付孔81aに下方から挿入され,ボルト83をねじ孔に螺合させることによりベース81に固定される。移動規制パッド82は,ボルト83を介して移動規制パッド取付孔81aに沿って移動自在とされており,ボルト83を締結することで移動規制パッド取付孔81aの任意の位置に固定される。移動規制パッド81の取り付け位置は,ウェーハ1の径に合わせて適宜調整される。移動規制パッド82の一側面82bには,ウェーハ1表面1aを接触させる垂直方向接触面85と,ウェーハ1の側面を接触させる水平方向接触面86が形成されている。移動規制パッド82は,一側面82b側を内側にして取り付けられる。図5に示すように,垂直方向接触面85と水平方向接触面86がなす角θは,90度以上であって,例えば,水平面と垂直方向接触面85がなす角θ2が2.5?5度,鉛直面と水平方向接触面86がなす角θ3が45度以下に設定される。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「アームの先端に設けられた搬送パッドであって,
搬送パッドは,円盤状のベースと,ベースの下側面にウェーハを吸引する3つの非接触吸引保持手段と,非接触吸引保持手段に保持されたウェーハの移動を規制する移動規制パッドとから構成され,
移動規制パッドは,6つの移動規制パッド取付孔に沿って移動自在とされており,ボルトを締結することで移動規制パッド取付孔の任意の位置に固定され,移動規制パッドにはウェーハ表面を接触させる垂直方向接触面が形成され,水平面と垂直方向接触面がなす角が2.5?5度に設定されたもの。」

2 引用文献2の記載
当審拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
この発明は,ウエハ保持装置に関し,特に,半導体ウエハを把持するウエハ保持装置に関する。」
「【0024】
図1に示すように,ウエハ保持装置100は,アーム110に装着される取付部11を有する基部10と,一対の前方ウエハ載置部21が設けられた支持部20と,把持アーム部31を有するスライドアーム30とを備えている。このスライドアーム30は,図2および図3に示すように,ウエハ120(130)の直径(d1またはd2)の大きさに応じて,前方ウエハ把持部22に近づく前方向(矢印Y1方向,図3参照)および前方ウエハ把持部22から離間する後ろ方向(矢印Y2方向,図2参照)にスライド可能に構成されている。」
「【0035】
また,図1に示すように,前方ウエハ支持部23は,ウエハ120(130)の外周部の下側角部と摺動可能に当接して,ウエハ120(130)を支持することが可能な傾斜した支持面を有するように構成されている。」
「【0043】
また,スライドアーム30の把持アーム部31には,一対の後方ウエハ載置部40が設けられている。一対の後方ウエハ載置部40は,スライドアーム30のスライド移動に伴って,前後方向(Y方向)に移動するように構成されている。一対の後方ウエハ載置部40は,それぞれ,支持部20の両側面(Y方向に延びる両側面)に沿うように配置されるとともに,前方ウエハ載置部21と対向するように水平面に対して所定の角度で傾斜した後方ウエハ支持部41を有している。図2に示すように,後方ウエハ載置部40は,スライドアーム30が後方位置Qに配置されている場合には,後方ウエハ支持部41がウエハ120の外周部の下側角部と摺動可能に当接して,ウエハ120を支持することが可能なように構成されている。また,図3に示すように,後方ウエハ載置部40は,スライドアーム30が前方位置Pに配置されている場合には,後方ウエハ支持部41がウエハ130の外周部の下側角部と摺動可能に当接して,ウエハ130を支持することが可能な傾斜した支持面を有するように構成されている。」
「【0076】
また,上記一実施形態では,ウエハ保持装置100を,異なる直径を有する2種類のウエハ120および130を把持可能に構成した例を示したが,本発明はこれに限られない。本発明では,ウエハ保持装置を,異なる直径を有する3種類以上の半導体ウエハを把持可能なように構成してもよい。
【0077】
また,上記一実施形態では,スライドアーム30を前後方向(Y方向)にスライド移動させる際に,使用者がスライドアーム30をスライド移動させるように構成した例を示したが,本発明はこれに限られない。本発明では,スライドアームを前後方向にスライド移動させるために,エアシリンダやリニアモータなどのアクチュエータを用いてもよい。
【0078】
また,上記一実施形態では,スライドアーム30を前方位置Pまたは後方位置Qに配置した場合に,ネジ部材36を用いてスライドアーム30を固定するように構成した例を示したが,本発明はこれに限られない。本発明では,スライドアームを半導体ウエハの直径に対応した所定のスライド位置(前方位置および後方位置)に配置した際に,機械式,空圧式または電磁式のロック機構などによってスライドアームを固定するように構成してもよい。」
3 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,ウエハ搬送装置およびウエハ処理装置に関し,詳しくは,検査ステージ等のウエハ処理ステージに対してウエハのアライメントを行うステージ等を特別に設けなくても,ウエハの位置決めができるようなウエハ搬送装置およびウエハ処理装置に関するものである。」
「【0008】
【実施例】
図1は,この発明のウエハ搬送装置の一実施例の斜視図であり,図2は,そのウエハ保持ハンドの説明図,図3は,非接触吸引ヘッドの説明図,図4は,そのVノッチ位置決め機構の各位置決め部材の説明図,そして図5は,図1に示すウエハ搬送装置を用いたミニエンシステムのウエハ検査装置の説明図である。
なお,各図において,同一の構成要素は同一の符号で示し,重複説明を割愛する。
図1において,10は,ウエハ搬送装置であって,ウエハをカセットから検査ステージへあるいはその逆にハンドリングするハンドリングアーム2を有している。ハンドリングアーム2は,回転機構7を介して移動台8に固定されていて,移動台8は,ガイドレール9上を移動する。移動台8の内部にはエアーON/OFF切換弁機構4と,制御回路5,そしてエアー供給源6とが内蔵されている。ハンドリングアーム2は,ウエハ保持ハンド20を先端側に有し,アーム2a,2bの2軸回転によりウエハ保持ハンド20を進退させる。
ウエハ保持ハンド20は,ウエハ1(図2参照)を吸引して非接触状態で保持する。これは,厚さ5mm程度のY字型の板状部材であって,後端部がハンドリングアーム2の2軸回転のうちのアーム2aの先端側に回転軸を介して結合された回動するアーム2cに固定され,チャック部21と,チャック部21に結合する3本のエアー供給管23a,23b,23cとを有している。
【0009】
チャック部21には,図2に示すように,ウエハ中心位置決め機構3と3個の非接触吸引ヘッド22とが設けられている。このチャック部21は,一点鎖線で示すウエハ1を吸引して非接触状態で保持するとともにウエハ1に対して中心位置決めと角度位置決めをする位置決めステージになっている。
チャック部21の3個の非接触吸引ヘッド22は,図2においては,Y字型の分かれ目の位置と先端側とに分散して配置され,吸引されたウエハ1の中心に対して約120度の等間隔に配置されるように設けられている。
なお,ウエハ搬送装置10には,ハンドリングアーム2を回動させるためにモータ等による回転機構7が設けられているが,これは,ウエハを回転させる機構ではなく,その回転摺動部は,露出せずにカバーされていて,例えば,装置内部にダウンフローのエアーが流されることにより,回転摺動部からはほとんど塵埃,金属粒子等がウエハ1側には飛散しない構造になっている。
【0010】
ウエハ中心位置決め機構3は,ウエハ1の円周の3点に対応して,Y字型の先端側の位置に固定ピン台座31,32が設けられ,Y字型の分かれ目の位置に設けられた非接触吸引ヘッド22の近傍に角度検出押圧ピン台座33が設けられている。
これにより,角度検出押圧ピン台座33は,固定ピン台座31,32と対向する位置に配置され,ウエハ1の中心方向に移動する(その移動機構については後述)。この角度検出押圧ピン台座33には,押圧ピン33a(図4(a)参照)が植設されていて,この押圧ピン33aにより,吸引保持されているウエハ1を固定ピン台座31,32の固定ピン31a,32a(図4(b)参照)に押しつける。これによりウエハ1の中心位置決めがなされる。」
「【0015】
図4は,ウエハ中心位置決め機構3の説明図であって,図4(a)は,角度検出押圧ピン台座33と,押圧ピン33a,ノッチ検出ピン33bの説明図である。角度検出押圧ピン台座33の押圧ピン33aの根本には,下向きに傾斜した面35を有する突出部33eが設けられていて,ウエハ1の浮上吸引が停止したときには,突出部33eの傾斜面35にウエハ1のエッジが当接されてウエハ1が保持される。
図4(b)は,固定ピン台座31,32と固定ピン31a(32a)の説明図である。固定ピン台座31,32は,同一構造をしていて,それぞれ固定ピン31a(32a)の根本には,下向きに傾斜した面34を有する突出部31b(32b)が設けられている。ウエハ1の浮上吸引が停止したときには,この突出部31b(32b)の傾斜面34にウエハ1のエッジが当接されてウエハ1が保持される。」
4 引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0015】
図6?11は,本発明の特徴を有する実施の形態に係るエンドイフェクタ100を示す図である。図示した実施の形態に係るエンドイフェクタ100は,ベルヌーイ型のエンドイフェクタである。図6に示したように,エンドイフェクタ100は,上プレート132及び下プレート130を含む細長いアーム部104と,ほぼディスク形をしたヘッド部108とで構成されている。アーム部104は,近位端110,遠位端112,第1側部114及び第2側部116を備えている。アーム部104の近位端110は,ロボット(図示省略)に連結するのに適合した形状となっている。本技術分野ではよく知られているように,ロボットは,ウェーハの処理環境内で半導体ウェーハを搬送するために,エンドイフェクタ100を所定の手順で移動させるようにプログラムされている。エンドイフェクタ100は,エンドイフェクタ100が使用される高温の処理環境に耐える材料,例えば,石英やセラミック材料などで形成されていることが好ましい。図示した例の場合には,エンドイフェクタ100は石英で形成されている。好ましい半導体の処理環境の場合には,エンドイフェクタ100は,常に600℃を超える温度下に置かれ,800℃を超える温度下に置かれることも少なくない。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「円盤状のベース」は,「ベースの下側面にウェーハを吸引する」もので「ウェーハ」は「平板状のワーク」といえるから,本願発明1の「円板状のワークの中心を覆うように形成された保持面を有する平板状の本体」に相当する。
イ 引用発明の「ベースの下側面にウェーハを吸引する3つの非接触吸引保持手段」は,本願発明1の「前記保持面に設けられたベルヌーイ吸着部」に相当する。
ウ 引用発明の「移動規制パッド」は「6つの移動規制パッド取付孔に沿って移動自在とされており」,「ウェーハ表面を接触させる垂直方向接触面が形成され,水平面と垂直方向接触面がなす角が2.5?5度に設定されたもの」であるから,本願発明1の「前記保持面上であって,前記ワークを前記ベルヌーイ吸着部で上方から吸着したときに該ワークの周縁の少なくとも3点において該周縁に当接するような位置に設けられた,前記保持面から前記ワークに向かって外方に傾斜する形状を有する複数の傾斜部である」「複数の傾斜部」に相当する。
エ 引用発明は「アームの先端に設けられた搬送パッド」であり「ウェーハを吸引」するから,本願発明1の「ベルヌーイハンド」に相当する。
オ すると,本願発明1と引用発明とは,下記カの点で一致し,下記クの点で相違する。
カ 一致点
「a) 円板状のワークの中心を覆うように形成された保持面を有する平板状の本体と,
b) 前記保持面に設けられたベルヌーイ吸着部と,
c) 前記保持面上であって,前記ワークを前記ベルヌーイ吸着部で上方から吸着したときに該ワークの周縁の少なくとも3点において該周縁に当接するような位置に設けられた,前記保持面から前記ワークに向かって外方に傾斜する形状を有する複数の傾斜部である複数の傾斜部と,
を備えることを特徴とするベルヌーイハンド。」
キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では「複数の傾斜部」が「少なくとも1つが前記保持面に固定された固定傾斜部である」のに対し,引用発明では「搬送パッド」は「6つの移動規制パッド取付孔に沿って移動自在とされており」「固定された固定傾斜部」が無い点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記ベルヌーイ吸着部によって前記ワークを吸着した状態で,前記複数の傾斜部のうちの,前記固定傾斜部以外の少なくとも1つの傾斜部を,前記固定傾斜部に近接する方向又は離間する方向に移動させる傾斜部移動機構」を備えるのに対し,引用発明ではこの「傾斜部移動機構」を備えない点。
(2)判断
ア 相違点2について検討する。
相違点2に係る構成について,何れの引用文献にも記載も示唆もない。
引用発明では「移動規制パッド」は「移動自在とされて」いるが,これは「移動規制パッドの取付位置は,ウェーハの径に合わせて適宜調整される」(前記第5の1(1)【0040】)ためであり,すなわち,ウェーハの径が変わったときだけそれに合わせて「適宜調整」するために「移動自在とされて」いるのであるから,ウェーハの径が変わらないのに「ウェーハ」すなわち「ワーク」を「吸着した状態で」傾斜部を移動させるようにする動機づけがない。
イ 本願発明1は,相違点2に係る構成を有することにより,「傾斜部41の位置を調整することにより,本体10の保持面と半導体基板60の上面の間の距離を調整することができる。これにより,前述した圧力差(ベルヌーイ効果により生じる負圧と大気圧の差)や半導体基板の重量等を考慮して,前記距離を,半導体基板60を安定的に保持するために最適なものにすることができる」(本願明細書段落0023)という格別の有利な効果を奏する。
ウ したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)まとめ
よって,本願発明1は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
前記第6のとおり,本願発明1ないし3は,引用文献3及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2014-2003(P2014-2003)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 ベルヌーイハンド及び半導体製造装置  
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所  

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