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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A01N
管理番号 1347283
審判番号 不服2018-5711  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-25 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2015-546967「ALS阻害薬系除草剤耐性テンサイ(Betavulgaris)植物における望ましくない植生を防除するためのALS阻害薬系除草剤の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日国際公開、WO2014/090760、平成28年 2月 8日国内公表、特表2016-503756、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2013年12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月13日 (EP)欧州特許庁、2012年12月13日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月26日付けで拒絶査定がされ、平成30年4月25日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1.本願請求項1-9に係る発明は、下記の引用文献1、2に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表平11-513895号公報
2.国際公開2012/049266号
(なお、原査定の拒絶の理由に引用された特表2013-542939号公報は上記国際公開公報に対応した日本語文献である。)

理由2.請求項1-9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないので、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成29年8月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】 テンサイ(Beta vulgaris)植物が569位にトリプトファンと異なるアミノ酸および188位にプロリンと異なるアミノ酸を含むALSポリペプチドをコードするALS遺伝子に突然変異を含む、テンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生を防除するための1以上のALS阻害薬系除草剤の使用であって、ここで、前記569位のトリプトファンはロイシンによって置換され、前記188位のプロリンはセリンによって置換されており、および
ここで、前記ALS阻害薬系除草剤が、
アミドスルフロン[CAS RN 120923-37-7](=A1-1);
アジムスルフロン[CAS RN 120162-55-2](=A1-2);
ベンスルフロン-メチル[CAS RN 83055-99-6](=A1-3);
クロリムロン-エチル[CAS RN 90982-32-4](=A1-4);
クロルスルフロン[CAS RN 64902-72-3](=A1-5);
シノスルフロン[CAS RN 94593-91-6](=A1-6);
シクロスルファムロン[CAS RN 136849-15-5](=A1-7);
エタメツルフロン-メチル[CAS RN 97780-06-8](=A1-8);
エトキシスルフロン[CAS RN 126801-58-9](=A1-9);
フラザスルフロン[CAS RN 104040-78-0](=A1-10);
フルセトスルフロン[CAS RN 412928-75-7](=A1-11);
フルピルスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144740-54-5](=A1-12);
ホラムスルフロン[CAS RN 173159-57-4](=A1-13);
ハロスルフロン-メチル[CAS RN 100784-20-1](=A1-14);
イマゾスルフロン[CAS RN 122548-33-8](=A1-15);
ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム[CAS RN 144550-36-7](=A1-16);
メソスルフロン-メチル[CAS RN 208465-21-8](=A1-17);
メトスルフロン-メチル[CAS RN 74223-64-6](=A1-18);
モノスルフロン[CAS RN 155860-63-2](=A1-19);
ニコスルフロン[CAS RN 111991-09-4](=A1-20);
オルトスルファムロン[CAS RN 213464-77-8](=A1-21);
オキサスルフロン[CAS RN 144651-06-9](=A1-22);
プリミスルフロン-メチル[CAS RN 86209-51-0](=A1-23);
プロスルフロン[CAS RN 94125-34-5](=A1-24);
ピラゾスルフロン-エチル[CAS RN 93697-74-6](=A1-25);
リムスルフロン[CAS RN 122931-48-0](=A1-26);
スルホメツロン-メチル[CAS RN 74222-97-2](=A1-27);
スルホスルフロン[CAS RN 141776-32-1](=A1-28);
チフェンスルフロン-メチル[CAS RN 79277-27-3](=A1-29);
トリアスルフロン[CAS RN 82097-50-5](=A1-30);
トリベヌロン-メチル[CAS RN 101200-48-0](=A1-31);
トリフロキシスルフロン[CAS RN 145099-21-4](ナトリウム)(=A1-32);
トリフルスルフロン-メチル[CAS RN 126535-15-7](=A1-33);
トリトスルフロン[CAS RN 142469-14-5](=A1-34);
NC-330[CAS RN 104770-29-8](=A1-35);
NC-620[CAS RN 868680-84-6](=A1-36);
TH-547[CAS RN 570415-88-2](=A1-37);
モノスルフロン-メチル[CAS RN 175076-90-1](=A1-38);
2-ヨード-N-[(4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジニル)カルバモイル]ベンゼン-スルホンアミド(=A1-39);
下記一般式(I)の化合物:
【化1】

[式中、M^(+)は、化合物(I)の個々の塩、すなわちそれのリチウム塩(=A1-40);それのナトリウム塩(=A1-41);それのカリウム塩(=A1-42);それのマグネシウム塩(=A1-43);それのカルシウム(=A1-44);それのアンモニウム塩(=A1-45);それのメチルアンモニウム塩(=A1-46);それのジメチルアンモニウム塩(=A1-47);それのテトラメチルアンモニウム塩(=A1-48);それのエチルアンモニウム塩(=A1-49);それのジエチルアンモニウム塩(=A1-50);それのテトラエチルアンモニウム塩(=A1-51);それのプロピルアンモニウム塩(=A1-52);それのテトラプロピルアンモニウム塩(=A1-53);それのイソプロピルアンモニウム塩(=A1-54);それのジイソプロピルアンモニウム塩(=A1-55);それのブチルアンモニウム塩(=A1-56);それのテトラブチルアンモニウム塩(=A1-57);それの(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-58);それのビス-N,N-(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-59);それのトリス-N,N,N-(2-ヒドロキシエタ-1-イル)アンモニウム塩(=A1-60);それの1-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-61);それの2-フェニルエチルアンモニウム塩(=A1-62);それのトリメチルスルホニウム塩(=A1-63);それのトリメチルオキソニウム塩(=A1-64);それのピリジニウム塩(=A1-65);それの2-メチルピリジニウム塩(=A1-66);それの4-メチルピリジニウム塩(=A1-67);それの2,4-ジメチルピリジニウム塩(=A1-68);それの2,6-ジメチルピリジニウム塩(=A1-69);それのピペリジニウム塩(=A1-70);それのイミダゾリウム塩(=A1-71);それのモルホリニウム塩(=A1-72);それの1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-7-エンイウム塩(=A1-73);それの1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンイウム塩(=A1-74)を示す。];
または下記式(II)の化合物もしくはそれの塩:
【化2】

(R^(2)、およびR^(3)は下記の表で定義の意味を有する。
【表1】

または下記式(III)(=A1-87)の化合物、すなわち化合物(A1-83)のナトリウム塩:
【化3】

または下記式(IV)(=A1-88)の化合物、すなわちの化合物(A1-82)ナトリウム塩
【化4】

からなるスルホニル尿素類の下位群(A1);
フルカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-17-9](=A2-1);
プロポキシカルバゾン-ナトリウム[CAS RN 181274-15-7](=A2-2);
チエンカルバゾン-メチル[CAS RN 317815-83-1](=A2-3);
からなるスルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン類の下位群(下位群((A2));
クロランスラム-メチル[147150-35-4](=A3-1);
ジクロスラム[CAS RN 145701-21-9](=A3-2);
フロラスラム[CAS RN 145701-23-1](=A3-3);
フルメツラム[CAS RN 98967-40-9](=A3-4);
メトスラム[CAS RN 139528-85-1](=A3-5);
ペノキススラム[CAS RN 219714-96-2](=A3-6);
ピロクススラム[CAS RN 422556-08-9](=A3-7);
からなるトリアゾロピリミジン類の下位群(下位群(A3));
一般式(V)によって記載される群からの化合物もしくはそれの塩:
【化5】

[式中、
R^(1)はハロゲン、好ましくはフッ素または塩素であり、
R^(2)は水素であり、R^(3)はヒドロキシルであり、または
R^(2)およびR^(3)が、それらが結合している炭素原子とともに、カルボニル基C=Oであり、
R^(4)は水素またはメチルである。];
より特別には、下記の化学構造(A4-1)から(A4-8)の化合物:
【化6】

からなるスルホアニリド類の下位群(下位群(A4));
からなる(スルホン)アミドの群(群(A));
イマザメタベンズメチル[CAS RN 81405-85-8](=B1-1);
イマザモックス[CAS RN 114311-32-9](=B1-2);
イマザピック[CAS RN 104098-48-8](=B1-3);
イマザピル[CAS RN 81334-34-1](=B1-4);
イマザキン[CAS RN 81335-37-7](=B1-5);
イマゼタピル[CAS RN 81335-77-5](=B1-6);
SYP-298[CAS RN 557064-77-4](=B1-7);
SYP-300[CAS RN 374718-10-2](=B1-8);
からなるイミダゾリノン類の群(群(B1));
ビスピリバック-ナトリウム[CAS RN 125401-92-5](=C1-1);
ピリベンゾキシム[CAS RN 168088-61-7](=C1-2);
ピリミノバック-メチル[CAS RN 136191-64-5](=C1-3);
ピリバムベンズ(pyribambenz)-イソプロピル[CAS RN 420138-41-6](=C1-4);
ピリバムベンズ(pyribambenz)-プロピル[CAS RN 420138-40-5](=C1-5);
からなるピリミジニルオキシ安息香酸類の下位群(下位群(C1))
ピリフタリド[CAS RN 135186-78-6](=C2-1);
ピリチオバック-ナトリウム[CAS RN 123343-16-8](=C2-2);
からなるピリミジニルチオ安息香酸類の下位群(下位群(C2));
からなるピリミジニル(チオ)ベンゾエート(群(C))に属する、前記使用。」

なお、本願発明2-6の概要は以下のとおりである。
本願発明2、3は、本願発明1のALS阻害薬系除草剤の選択肢を減縮した発明である。
本願発明4は、本願発明1-3のALS阻害薬系除草剤に非ALS阻害薬系除草剤を組み合わせた使用に関する発明である。
本願発明5は、本願発明1のテンサイ(Beta vulgaris)植物をNCIMB42050という名称の寄託物に相当するものに特定した発明である。
本願発明6は、テンサイ(Beta vulgaris)植物成長区域での望ましくない植生の防除方法の発明であり、施用する除草剤が本願発明1のALS阻害薬系除草剤に、任意に本願発明4の非ALS阻害薬系除草剤を組み合わせたものである。
本願発明7、8は、本願発明6の防除方法で施用するALS阻害薬系除草剤を本願発明2、3のALS阻害薬系除草剤に特定した発明である。
本願発明9は、本願発明6の防除方法でテンサイ(Beta vulgaris)植物をNCIMB42050という名称の寄託物に相当するものに特定した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1-1)「(1)発明の概要
本発明は、雑草の防除に用いられるイミダゾリノン除草剤とスルホニル尿素除草剤の両方に耐性であるサトウダイコン植物(Beta vulgaris L.)の作製方法に関する。特に、本発明は、培地中の細胞と共にこれらの除草剤を逐次用いて、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)としても知られるアセトラクテートシンターゼ(ALS)をコードする遺伝子の突然変異によって、感受性サトウダイコンから誘導されるサトウダイコン植物に関する。」(第5ページ第7?13行)
(1-2)「SBサトウダイコンALS遺伝子二重突然変異は、単一突然変異体サトウダイコンの各々(即ち、SurとSir-13)によって個別に与えられる、化学的ファミリー(chemical family)の組合せに対する除草剤耐性を生じる。図4は、2つの単一突然変異体(SurとSir-13)と二重突然変異体(SB)との基本的ファミリー交差耐性特徴(basic family cross resistance characteristics)を表示する。図4に示したアミノ酸は、植物のALS阻害除草剤耐性に関与すると文献に報告された5つの絶対保存残基(strictly conserved residue)を表す。二重突然変異体酵素(及び対応植物)内の独立した突然変異の相互作用は特有(unique)である。Sir-13アミノ酸置換(Ala_(113)→Thr)によって見られるIM-特異的耐性と、Sur置換(Pro_(188)→Ser)によって観察されるSU耐性及びTP耐性との組合せは、3種類の全ての除草剤化学に耐性なサトウダイコン93R30B(a.k.a.SB)を生ずる。
しかし、耐性は加算的ではない。その代わり、突然変異はイミダゾリノン除草剤のイマゼタピルとAC299,263に対する耐性に関して相乗的である。この現象は図5と6では視覚によって、表2では量的に知ることができる。

単一突然変異サトウダイコン、SurとSir-13は、イマゼタピルに対して3倍と100倍の耐性を示す;これに対して、二重突然変異体、SBは、完全植物に発芽後に施用したときに除草剤に対して300倍の耐性を示す。この相乗作用のサポートは、突然変異体の各々からのALS酵素のイマゼタピルに対する反応の観察によって与えられる(図7)。この場合にも、単一突然変異体、Sur(1X)とSir-13(40X)単独に対して二重突然変異体、SB(>1000X)には、除草剤に対する相乗的耐性が存在する。」(第21ページ第12行?第22ページ下から11行)(下線は当審にて追加。)

引用文献1には、Sir-13アミノ酸置換(Ala_(113)→Thr)と、Sur置換(Pro_(188)→Ser)との組合せを揺するサトウダイコン93R30Bが記載され、引用文献1の表2にはそのサトウダイコン93R30Bにイマゼタピルを使用したことが結果とともに記載されている。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「サトウダイコンが113位にアラニンと異なるアミノ酸および188位にプロリンと異なるアミノ酸を含むALSポリペプチドをコードするALS遺伝子に突然変異を含む、サトウダイコンにおけるイマゼタピルの使用であって、前記113位のアラニンはスレオニンによって置換され、前記188位のプロリンはセリンによって置換されている使用。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。なお、英文であるため、パテントファミリーである特表2013-542939号公報の記載を翻訳文とする。

(2-1)「特許請求の範囲
1 ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)の成長場所における望ましくない植生を防除するための、1以上のALSインヒビター除草剤の使用であって、該ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)植物が、569位にトリプトファンとは異なるアミノ酸を含有するALSタンパク質をコードする内因性ALS遺伝子のコドン1705-1707に突然変異を含む、使用。
・・・
5 ALSタンパク質の569位のアミノ酸がロイシンである、請求項1?4のいずれか1項記載の1以上のALSインヒビター除草剤の使用。」

第5 理由1に対する判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「サトウダイコン」は、上記(1-1)から本願発明1における「テンサイ(Beta vulgaris)植物」に相当する。
イ 引用発明における「イマゼタピル」は、本願発明1のALS阻害薬系除草剤であるイミダゾリン類の群(群B1)に含まれるイマゼタピルと同じであるから、成長区域における望ましくない植生を防除するためのものであることは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「テンサイ(Beta vulgaris)植物が188位にプロリンと異なるアミノ酸を含むALSポリペプチドをコードするALS遺伝子に突然変異を含む、テンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生を防除するためのALS阻害薬系除草剤の使用であって、前記188位のプロリンはセリンによって置換されており、および
ここで、前記ALS阻害薬系除草剤が、イマゼタピルである。」
(相違点)
テンサイ(Beta vulgaris)植物のALSポリペプチドをコードするALS遺伝子の突然変異について、本願発明1は、188位の特定に加え、569位のトリプトファンがロイシンであることを特定しているのに対して、引用発明は、188位の特定に加え、113位のアラニンがスレオニンであることを特定している点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用文献2には、569位にトリプトファンと異なるアミノ酸を含むALS遺伝子に突然変異を含み、前記569位のトリプトファンがロイシンによって置換されているテンサイ(Beta vulgaris)植物の成長区域にALS阻害薬系除草剤を使用することが記載されている(摘記2-1)。
一方、引用発明は、188位のプロリンがセリンによって置換されていることに加え、113位のアラニンがスレオニンによって置換されているサトウダイコンを前提とするものであって、188位及び113位以外の他の位置に突然変異を含むALSポリペプチドをコードするALS遺伝子を含むテンサイ(Beta vulgaris)植物に関して、記載も示唆もない。
そうすると、上述のとおり、引用文献2に単独で569位のトリプトファンをロイシンによって置換されているテンサイ(Beta vulgaris)植物の成長区域にALS阻害薬系除草剤を使用することが記載されているからといって、引用発明において、その成長区域にALS阻害薬系除草剤を使用するテンサイ(Beta vulgaris)植物のALSポリペプチドをコードするALS遺伝子の突然変異の位置である188位及び113位をあえて変更し、引用発明におけるALS遺伝子の突然変異の位置を113位ではなく、569位を選択し、なおかつトリプトファンに代え、ロイシンに置換するという構成を採用することには動機付けがなく、当業者といえども容易に想到することはできないといえる。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、本願発明1のテンサイ(Beta vulgaris)植物が、「188位にプロリンと異なるアミノ酸を含むALSポリペプチドをコードするALS遺伝子に突然変異を含み、前記188位のプロリンはセリンによって置換されている」ことに加え、「569位にトリプトファンと異なるアミノ酸を含むALS遺伝子に突然変異を含み、ここで、前記569位のトリプトファンはロイシンによって置換されている」との同一の構成を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.理由1に対するまとめ
以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 理由2に対する判断
1.判断の前提
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

2.特許請求の範囲の記載
請求項1-9の記載は、上記第3で述べたとおりである。

3.発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、本願発明1-9に関連して、以下の事項が記載されている。
(1)「【0034】
例えば、サトウダイコンが世界の砂糖生産の約20%を占めるということを考慮すると、非常に強力で重大な雑草の効率的防除を可能とする雑草防除システムを利用可能とすることが非常に望ましいものと考えられる。従って、1以上のALS阻害薬系除草剤を、そのようなALS阻害薬系除草剤に対して耐性であるテンサイ(Beta vulgari
s)植物、好ましくはサトウダイコン植物において望ましくない植生の防除に使用することが非常に望ましいものであると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この問題は、本発明によって解決された。
【0036】
本発明は、テンサイ(Beta vulgaris)、好ましくはサトウダイコン成長区域における望ましくない植生を防除するための1種類または各種のALS阻害薬系除草剤分類に属する1以上のALS阻害薬系除草剤の使用であって、前記テンサイ(Beta vulgaris)植物、好ましくはサトウダイコン植物が、ALS酵素における569位のトリプトファンの突然変異およびALS酵素における188位のプロリンの突然変異、ならびに適宜に一つもしくはいくつかのさらなる突然変異、好ましくはALS遺伝子における一つもしくはいくつかのさらなる突然変異、好ましくはALS遺伝子におけるさらなるアミノ酸置換を引き起こす突然変異を含む使用に関するものである。」
(2)「【0167】
実施例5:温室試験:直接比較での各種サトウダイコンのALS阻害剤処理
本発明の文脈で使用される配列番号3および配列番号5(二つの異なる対立遺伝子上)を含む変異サトウダイコン植物(上記の実施例4に記載、「系統A」)を各種ALS阻害剤によって処理し、コードされたALS酵素の569位のトリプトファンがロイシンによって置換されているサトウダイコン植物(「系統B」)、コードされたALS酵素の188位のプロリンがセリンによって置換されているWO98/02527に記載のサトウダイコン植物(「系統C」)、および569および188に突然変異を持たない従来品種(野生型)サトウダイコン植物(「系統WT」)と直接比較した。
【0168】
前記四種類の異なるサトウダイコン植物の種子のいくつかの群を、温室で分けて播種し、BBCHモノグラフ″Growth stages of mono-and dicotyledonous plants″, 2nd edition, 2001, ed. Uwe Meier、Federal Biological Research Centre for Agriculture and Forestry (Biologische Bundesanstalt fur Land und Forstwirtschaft)に従って、テンサイ(Beta vulgaris) L. ssp. vulgarisにおける段階BBCH14(すなわち、開いた葉4枚(第2の対))まで成長させた。次に、得られたサトウダイコン植物の別個の群をそれぞれ個別に、表1に示した量(g/ha)でALS阻害剤(ALS-in)で処理した。
【0169】
個々のALS阻害剤の施用から第14日に、サトウダイコン植物の各群における損傷(すなわち、植物毒性)を、0%(すなわち、損傷なし、植物毒性なし)から100%(すなわち、植物が完全に枯死)の階層化スケールで評点した。植物の各群における平均評点も表1に示してある。
【0170】
表1:
【表2】

【0171】
表1に示したデータによれば、「系統A」のサトウダイコン植物が、各種ALS阻害薬系除草剤の施用に対して顕著に高い耐性を有していたことを明瞭に示すことができる。すなわち、耐性が個々のALS阻害薬系除草剤に対して示されているが、従来の品種、すなわち野生型(「系統WT」)は同じ条件下で大きく損傷した。
【0172】
さらに、チエンカルバゾン-メチルおよびホラムスルフロンを含む混合物で処理した後に、各サトウダイコン植物の代表的な早期表現型を調べた。各系統の個々の早期表現型を図1に示してある(図1)。
【0173】
図1には、本発明の文脈で使用するのに好適なサトウダイコン植物(「系統A」)が優れたALS阻害薬系除草剤抵抗性を示すことも示されている。すなわち、「系統B」、「系統C」および「系統WT」の他の早期表現型と比較して、優れた成長および低い植物毒性効果が認められた。」
(3)「【図1】



4.対比・判断
(1)本願発明の課題
本願発明1-5の課題は、【0034】?【0036】及び明細書全体の記載からみて、ALS阻害薬系除草剤に対して耐性であるテンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生を防除するためのALS阻害薬系除草剤の使用方法を提供することにあり、本願発明6-9の課題は、ALS阻害薬系除草剤に対して耐性であるテンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生の防除方法を提供することにあるものと認める。

(2)対比・判断
本願明細書中の実施例5において、本願発明に係るテンサイ植物が、ALS阻害薬系除草剤に対して耐性であるテンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生を防除するためのALS阻害薬系除草剤の使用方法という解決手段によって、同一の作用機序、つまりALS酵素(アセト乳酸合成酵素)阻害活性を有し、かつ、化学構造が多岐にわたるホラムスルフロン、ヨードスルフロン-メチル-ナトリウム、アミドスルフロン、チエンカルバゾンーメチル、ビスピリバック-ナトリウム、メトスラムに対して卓越した耐性を有することが実証されている(3.摘記(2)参照)。
したがって、本願発明1に係るALS阻害薬系除草剤は全て同一の作用機構を有する除草剤、つまりALS酵素(アセト乳酸合成酵素)阻害活性を有する除草剤であるから、本願発明に係る二重突然変異を有するテンサイ植物は一定の耐性を示すことを理解できるといえる。
そうすると、ALS酵素における569位のトリプトファンの突然変異およびALS酵素における188位のプロリンの突然変異を含み、ここで、前記569位のトリプトファンはロイシンによって置換され、前記188位のプロリンはセリンによって置換されているテンサイ(Beta vulgaris)成長区域における望ましくない植生を防除するため本願発明1の使用方法がALS阻害薬系除草剤全般にわたって適用でき、本願発明1の課題を解決できることを当業者が理解できるといえる。
以上より、本願発明1については、本願発明1の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであると認められる。

(3)本願発明2-9について
本願発明2-9についても本願発明1と同様の理由により、本願発明2-9の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであると認められる。

5.理由2に対するまとめ
以上のとおり、請求項1-9に記載された特許を受けようとする発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものである。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-18 
出願番号 特願2015-546967(P2015-546967)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A01N)
P 1 8・ 121- WY (A01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 瀬下 浩一
瀬良 聡機
発明の名称 ALS阻害薬系除草剤耐性テンサイ(Betavulgaris)植物における望ましくない植生を防除するためのALS阻害薬系除草剤の使用  
代理人 小野 誠  
代理人 坪倉 道明  
代理人 重森 一輝  
代理人 城山 康文  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 金山 賢教  
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