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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1347422
審判番号 不服2016-17744  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-28 
確定日 2018-12-26 
事件の表示 特願2014-559071「情報送信方法およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開、WO2013/127303、平成27年 4月23日国内公表、特表2015-512213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年3月2日 中国)を国際出願日とする特許出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成27年10月30日付け: 拒絶理由通知書
平成28年2月4日 : 意見書、手続補正書の提出
平成28年7月19日付け : 拒絶査定
平成28年11月28日 : 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成30年1月4日付け : 拒絶理由通知書(当審)
平成30年6月11日 : 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願発明は、平成30年6月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「 情報送信方法であって、
UE(ユーザ機器)がCQI(チャネル品質指示)値をeNB(発展型NodeB)に報告するステップと、
前記UEが前記eNBによって送信されたMCS(変調および符号化方式)値を受信するステップであって、前記MCS値は、前記eNBによって前記CQI値に従って決定される、受信するステップと、
前記UEが前記MCS値に従ってPDSCH(物理下りシェアドチャネル)データを受信するステップとを備え、
前記CQI値および前記MCS値は、第1のテーブルセットとは異なる第2のテーブルセットに従って決定され、前記第2のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式は前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高く、
前記第2のテーブルセットにおけるMCSテーブルは、前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高い変調方式のHARQ再送信のために予約されたMCSインデックスエントリを備え、
前記第2のテーブルセットに含まれるCQIテーブルにおけるスペクトル効率が、変調オーダーが2より大きい任意の変調方式において、2つの隣接したスペクトル効率値の間の差異がほぼ同等であり、aがbとほぼ同等であるとは、aとbとの差異の絶対値が設定値よりも小さいことを意味する条件を満たす、情報送信方法。」

第3 拒絶の理由
平成30年1月4日付けの当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由1は、
「1.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。」であるところ、請求項1に対して下記外国語特許出願が引用されている。

PCT/EP2012/052828(国際公開第2013/123961号、特表2015-513834号公報)

第4 外国語特許出願の記載及び先願発明、並びに技術常識
1 先願の記載
当審拒絶理由で引用した2012年(平成24年)2月20日を国際出願日とする外国語特許出願であるPCT/EP2012/052828(国際公開第2013/123961号、特表2015-513834号公報、出願人:NOKIA SIEMENS NETWORKS OY、発明者:LAHETKANGAS,Eeva、RAAF,Bernhard、PAJUKOSKI,Kari Pekka、TIIROLA,Esa Tapani)は、国際公開され、かつ、その出願人及び発明者は、本願発明の出願人である▲ホア▼▲ウェイ▼技術有限公司、及び、発明者である、▲楊▼ 建兵、李 洋、程 型清、万 蕾と、それぞれ同一ではない。
ここで、前記外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(1)「Figure 1 shows a cellular network system 100. A user equipment 102 is served by a first cell 103 of the cellular network system. The first cell is assigned to a base station 101.

The transmission and communication between the base station and the user equipment is controlled based on a modulation and coding scheme. The modulation and coding scheme is selectable based on a first modulation and coding scheme table comprising entries corresponding to a plurality of modulation and coding schemes with a first maximum modulation order or based on a second modulation and coding scheme table comprising entries corresponding to a plurality of modulation and coding schemes with a second maximum modulation order. In one embodiment, the second maximum modulation order is higher (for instance up to 256QAM) than the first maximum modulation order (for instance up to 64QAM).

The base station may determine actual channel conditions of the radio transmission channel being used for the transmission between the base station and the user equipment. Then, the base station may determine a maximum supported modulation order based on the determined actual channel conditions and eventually based on information from the user equipment which modulation order can be supported by the user equipment. The base station then selects the first modulation and coding scheme table or the second modulation and coding scheme table based on a comparison of the maximum supported modulation order with the first maximum modulation order and the second maximum modulation order. Thus, the modulation and coding scheme (MCS) for the transmission between the base station and the user equipment is controlled based on the selected modulation and coding scheme table.」(11ページ21行?12ページ7行)
(当審訳: 図1は、セルラーネットワークシステム100を示す。ユーザ機器102は、セルラーネットワークシステムの第1のセル103のサービスを受ける。第1のセルは、基地局101に割り当てられている。
基地局とユーザ機器との間の送信及び通信は、変調及び符号化方式に基づいて制御される。変調及び符号化方式は、第1の最大変調次数をもつ複数の変調及び符号化方式に対応するエントリを含む第1の変調及び符号化方式テーブルに基づくか、又は、第2の最大変調次数をもつ複数の変調及び符号化方式に対応するエントリを含む第2の変調及び符号化方式テーブルに基づくか、選択可能である。1つの実施形態では、第2の最大変調次数が、第1の最大変調次数(例えば、64QAMまで)より高い(例えば、256QAMまで)。
基地局は、基地局とユーザ機器との間の送信に使用される無線送信チャンネルの実際のチャンネル状態を決定する。次いで、基地局は、決定された実際のチャンネル状態に基づいて、且つ 最終的に、ユーザ機器によってどの変調次数がサポートできるかとのユーザ機器からの情報に基づいて、サポートされる最大変調次数を決定する。
次いで、基地局は、サポートされる最大変調次数と、第1の最大変調次数及び第2の最大変調次数との比較に基づいて、第1の変調及び符号化方式テーブル又は第2の変調及び符号化方式テーブルを選択する。従って、基地局とユーザ装置との間の送信のための変調及び符号化方式(MCS)は、選択された変調及び符号化方式テーブルに基づいて制御される。)

(2)「The problem is how to introduce 256QAM for LTE to maintain backward compatibility and avoid too much complexity. 256QAM addition might need to be done to both MCS index and modulation table and CQI table defined in LTE standard.
(中略)
The idea of the herein described method is to define a new procedure which allows to use 256QAM in good channel conditions using the existing DCI formats. For this purpose, additional new MCS and CQI index tables with extension to 256QAM (Qm =8) may be generated. The new tables have the same size as the usual ones. Decision whether original index table or the table with 256QAM extension is used is either determined by the base station (or eNB) and the switching is indicated to the UE with a signalling message or decided in implicit way.

In one embodiment, there is a common index area common for both the original table and the table with 256QAM extension where MCS/CQI index, modulation order and TBS index are identical and are also in identical positions in both tables. Only this common MCS in- dex area might be used while switching the tables to avoid ambiguities.」(12ページ33行?13ページ30行)
(当審訳: 問題は、後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMをどのように導入するかということである。256QAMの追加は、LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブルと、CQIテーブルとの両方に対して実行する必要がある。
(中略)
ここに述べる方法の考え方は、既存のDCIフォーマットを使用して、良好なチャンネル状態において256QAMの使用を許す新規な手順を定義することである。この目的のために、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うMCS及びCQIインデックステーブルが作成される。新たなテーブルは、通常のものと同じサイズである。オリジナルのインデックステーブルが使用されるか、256QAMの拡張を伴うテーブルが使用されるかの判断は、基地局(又はeNB)によって決定され、その切り換えは、シグナリングメッセージでUEに指示されるか、又は暗示的な仕方で判断される。
1つの実施形態では、オリジナルテーブル及び256QAM拡張を伴うテーブルの両方に共通の共通インデックスエリアがあり、ここで、MCS/CQIインデックス、変調次数及びTBSインデックスは、両テーブルにおいて同一であると共に同一の位置にある。テーブルを切り換える間、曖昧さを回避するため、共通のMCSインデックスエリアのみが使用される。)

(3)「New TB sizes may be introduced in the MCS / CQI index table with 256QAM extension in order to increase spectral efficiency with 256QAM:
・ Room for these new TB sizes can be taken from current low TB sizes (QPSK and possibly low 16QAM)
・ The reserved TBS size for QAM may also be in the low modulation common MCS area. This MCS is used for retransmissions with bad channel conditions, in particular if the previous initial transmission was done with a higher MCS, in particular a higher Modulation Order, or with a different number of assigned resources. However, it might not be necessary to also have the reserved entry for 256QAM included.
(中略)

An example of the MCS index and modulation table with 256QAM extension is shown in Table 1. The MCS indexes 12 to 31 refer to the continuous common MCS index area. The MCS indexes 0, 5 and 10 refer to a sub-sampled low modulation common MCS index area and the MCS indexes 1 to 4, 6 to 9 and 1 refer to the 256QAM extension. 」(15頁6?32行)
(当審訳:
256QAMでのスペクトル効率を増加するため、256QAM拡張を伴うMCS/CQIインデックステーブルに、新たなTBサイズが導入される。
・ 現行の低いTBサイズ(QPSK及び、おそらく低い16QAM)から、これらの新しいTBサイズの場所がとられる。
・ QAMのために予約されたTBSサイズが、低変調共通MCSエリアに存在しても良い。このMCSは、特に前の最初の送信が、特により高い変調次数、又は異なる割り当てられたリソース数と共に、といったより高いMCSで行われた場合に、悪いチャネル条件での再送信に用いられる。しかしながら、含まれた256QAMに対してエントリを予約する必要はない。
(中略)
256QAM拡張を伴うMCSインデックス及び変調テーブルの一例がテーブル1に示される。MCSインデックス12から31は、連続的な共通のMCSインデックスエリアを示す。MCSインデックス0、5及び10は、サブ・サンプリングされた低変調の共通MCSインデックスエリアを示し、そしてMCSインデックス1から4、6から9、及び1は、256QAM拡張を示す。)

(4)

(16ページ)(当審訳:テーブル1:MCSインデックステーブルの例)

2 先願発明
(1) 上記1(2)によれば先願明細書等には、後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMを導入する方法が記載されているといえる。
(2) 上記1(1)及び(2)によれば先願明細書等に記載された方法は、LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブル及びCQIテーブルの両方に対して256QAMの追加が行われた、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うMCS及びCQIインデックステーブルを使用する方法といえる。
(3) 上記1(3)及び(4)によれば先願明細書等の、256QAM拡張を伴う変調テーブルの一例であるテーブル1において、変調次数8(256QAM)に対応するMCSインデックス11のTBSインデックスは再送信のために予約されている。

以上を踏まえると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認める。
「後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMを導入する方法であって、
LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブル及びCQIテーブルの両方に対して256QAMの追加が行われた、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うMCS及びCQIインデックステーブルを使用し、
256QAM拡張を伴う変調テーブルの一例であるテーブル1において、変調次数8(256QAM)に対応するMCSインデックス11のTBSインデックスは再送信のために予約されている、
方法。」

3 技術常識
(1) LTE技術について解説した書籍であるErik Dahlman、Stefan Parkvall、Johan Skold、Per Beming著、服部 武、諸橋知雄、藤岡雅宣 監訳、「3G Evolutionのすべて -LTEモバイルブロード方式技術-」、丸善株式会社、平成21年12月25日発行には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。また、著者の「Skold」の「o」は、表記上の理由で「¨」(ウムラウト)が省略されている。)

ア 「14.3 ソフトコンバイニングをともなうハイブリッドARQ
「ソフトコンバイニングをともなう高速ハイブリッドARQ」は、HSPAにおける場合と非常に良く似た理由によりLTEでも使われる。すなわち、誤って受信した送信ブロックの再送信を端末が素早く要求し、暗黙のレートアダプテーションのためのツールを提供するためである。」(324ページ17?21行)

イ 「15.2.2 スケジューリング
(中略)
下りリンクのスケジューラは、各端末の送信ならびに各端末に対し送信すべきDL-SCH上のリソースブロックの動的な制御を受けもつ。図15.5aに示される通り、トランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調方式ならびにアンテナマッピング)の選択と下りリンクの論理チャネル多重がeNodeBによって制御される。」(338ページ1行?339ページ13行)



(339ページ)

エ 「16.4.3 物理下り制御チャネル
物理下り制御チャネル(PDCCH)は、スケジューリングの決定や電力制御コマンドなどの下り制御情報(DCI)の伝送に用いられる。より詳細にいうと、DCIに含まれるのは、
・物理下り共用チャネル(PDSCH)リソース指示、伝送フォーマット、ハイブリッドARQ情報、及び空間多重に関する制御情報(もし、使用可能であれば)を含む下りリンクスケジューリング割当
(中略)
16.4.4 下りリンクスケジューリング割当
(中略)
16.4.4.2 トランスポートブロックサイズの信号
正しい下りリンクの受信は、リソースブロックのセットに加えて、変調方式とトランスポートブロックサイズに関する情報;異なるDCIフォーマット中の5ビットの領域で(間接的に)準備される情報、を必要とする。この目的については後述するが、32の組合せのうち29が変調・符号化方式の信号に、3が予約(リザーブ)に使用される。変調・符号化方式とリソースブロックの数は両方で下り共用チャネル(DL-SCH)におけるトランスポートブロックサイズを与える。
(中略)
29の変調・符号化方式の組合せは、それぞれ、およそ0.2から5.6ビット/秒/シンボルのレンジの参照周波数効率を表す。29行のうちいくつかが同じ周波数効率を示しているので、組み合わせのオーバーラップが多少ある。その理由は、ある周波数効率を実現する最適な組合せはチャネルの属性に依存するからで、ある時は低符号化率の高多値変調は高符号化率で低多値数の変調方式より良いし、場合によってはその逆のこともある。このオーバーラップにより、与えられた伝搬シナリオにおいて、eNodeBは最適な組合せを選択することが可能である。
(中略)
最初に述べた変調・符号化方式の3つの予約された組合せに戻ると、これらは再送のみで用いられる。再送の場合、トランスポートブロックサイズは変更なしと定義されており、基本的にはこの情報の信号化の必要性はない。そのかわり、3つの予約された値はスケジューラが(ほとんど)任意の再送用リソースブロックの組合せで使用可能な変調方式、QPSK、16QAMまたは64QAMを表す.明らかに、3つの予約された組合せのいずれかを使い、端末は最初の制御信号を正しく受信する、それが失敗した場合、再送によりトランスポートブロックサイズを明示的に示す。」(374ページ13行?385ページ8行)

オ 「下りリンクチャネルに依存するスケジューリングをサポートする重要な点は、端末からの「チャネル状態通知」にもとづいて、ネットワークがスケジューリングを決定するということである。
(中略)
チャネル状態通知は、1つまたはいくつかの情報から成り立つ。
(中略)
・ 「チャネル品質情報」(CQI)は、下りリンクの伝送に使用すべき推奨変調方式と符号化速度を表す。CQIはあらかじめ決められた変調方式と符号化速度の組合せを表として示す。
(中略)
一般的に、端末によって配信されるものは、下りリンク伝送のための適切な設定に関する「推奨事項」である。ネットワークは、その推奨事項におそらく従うであろうが、必ず従わなければならないというものではない。DL-SCH伝送に用いられる実際の変調方式と符号化速度に関する情報は、常に下りリンクスケジューリング割当に含まれる。そして、端末は、実際のDL-SCH伝送の復調と復号には、必ずこれを使用しなければならない。」(526ページ10行?528ページ2行)

(2) LTE技術について解説した書籍は3GPPの規格等に基づくものであるから、下記の事項は、上記(1)の記載に基づきLTEにおける技術常識といえる。
ア 上記(1)オによれば「チャネル状態通知」は、下りリンクの伝送に使用すべき推奨変調方式と符号化速度を表す「チャネル品質情報(CQI)」すなわちCQI値を含むから、上記(1)ウの図15.5(a)によれば、「UEがCQI値を含むチャネル状態通知をeNBに報告する。」ことはLTEにおいて技術常識といえる。
イ 上記(1)イの、トランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調方式)の選択がeNodeBによって制御されるとの記載、また、上記(1)オのチャネル品質情報(CQI)についての「一般的に、端末によって配信されるものは、下りリンク伝送のための適切な設定に関する「推奨事項」である。ネットワークは、その推奨事項におそらく従うであろうが、必ず従わなければならないというものではない。」との記載によれば、「DL-SCH伝送に用いられる実際の変調方式と符号化速度、すなわちMCS値はeNBによってCQI値に従って決定される。」ことはLTEにおいて技術常識といえる。
ウ 上記(1)オの「DL-SCH伝送に用いられる実際の変調方式と符号化速度に関する情報は、常に下りリンクスケジューリング割当に含まれる。そして、端末は、実際のDL-SCH伝送の復調と復号には、必ずこれを使用しなければならない。」との記載によると、「UEはeNBによって送信された、決定された変調・符号化方式の組合せ、すなわちMCS値を受信する。」こと、及び「UEが受信したMCS値に従ってPDSCHデータ受信する。」ことは、いずれもLTEにおいて技術常識といえる。
エ 「ハイブリッドARQ」と「HARQ」とは単なる表記上での差異であるから、上記(1)アによれば、「LTEにおいて、HARQが再送制御方式として用いられている。」ことは、技術常識といえる。
オ 上記(1)エによれば、「LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブルの、3つの予約された組合せは再送のみで用いられる。」ことは、技術常識といえる。

第5 対比
本願発明と先願発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
1 「後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMを導入する方法」である先願発明は、「情報送信方法」といえる点で本願発明と対応する。
2 「後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMを導入する方法」である先願発明は、LTEのための方法であるから、上記第4 3(2)ア?ウのLTEに関する技術常識を含むことは当然である。したがって、先願発明は、
「 UE(ユーザ機器)がCQI(チャネル品質指示)値をeNB(発展型NodeB)に報告するステップと、
前記UEが前記eNBによって送信されたMCS(変調および符号化方式)値を受信するステップであって、前記MCS値は、前記eNBによって前記CQI値に従って決定される、受信するステップと、
前記UEが前記MCS値に従ってPDSCH(物理下りシェアドチャネル)データを受信するステップとを備え」る点で本願発明と一致する。
3 先願発明の「LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブル及びCQIテーブル」を「第1のテーブルセット」と称することは任意である。
また、先願発明の「LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブル及びCQIテーブルの両方に対して256QAMの追加が行われた、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うMCS及びCQIインデックステーブル」を「第1のテーブルセットとは異なる第2のテーブルセット」と称することも任意であるから、先願発明は、「前記第2のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式は前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高く」といえる点で本願発明と一致する。
したがって、「LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブル及びCQIテーブルの両方に対して256QAMの追加が行われた、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うMCS及びCQIインデックステーブルを使用」する先願発明は、「前記CQI値および前記MCS値は、第1のテーブルセットとは異なる第2のテーブルセットに従って決定され、前記第2のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式は前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高く」といえる点で本願発明と一致する。
4 「256QAM拡張を伴う変調テーブルの一例であるテーブル1において、変調次数8(256QAM)に対応するMCSインデックス11のTBSインデックスは再送信のために予約されている」先願発明は、「HARQ」再送信のためにとは特定されていないものの、「第2のテーブルセットにおけるMCSテーブルは、第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高い変調方式の再送信のために予約されたMCSインデックスエントリを備え」といえる点で本願発明と共通する。

以上を踏まえると、本願発明と先願発明とは以下の点で一致し、相違する。
「 情報送信方法であって、
UE(ユーザ機器)がCQI(チャネル品質指示)値をeNB(発展型NodeB)に報告するステップと、
前記UEが前記eNBによって送信されたMCS(変調および符号化方式)値を受信するステップであって、前記MCS値は、前記eNBによって前記CQI値に従って決定される、受信するステップと、
前記UEが前記MCS値に従ってPDSCH(物理下りシェアドチャネル)データを受信するステップとを備え、
前記CQI値および前記MCS値は、第1のテーブルセットとは異なる第2のテーブルセットに従って決定され、前記第2のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式は前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高く、
前記第2のテーブルセットにおけるMCSテーブルは、前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高い変調方式の再送信のために予約されたMCSインデックスエントリを備える、
情報送信方法。」

相違点1
一致点である、「前記第2のテーブルセットにおけるMCSテーブルは、前記第1のテーブルセットによってサポート可能な最大の変調方式より高い変調方式の再送信のために予約されたMCSインデックスエントリ」が、本願発明において「HARQ」再送信のために予約されているのに対し、先願発明の、256QAM拡張を伴う変調テーブルの一例であるテーブル1において、予約された変調次数8(256QAM)に対応するMCSインデックス11が、再送信のために予約されているものの、再送信が「HARQ」再送信であると特定されていない点。

相違点2
本願発明は「前記第2のテーブルセットに含まれるCQIテーブルにおけるスペクトル効率が、変調オーダーが2より大きい任意の変調方式において、2つの隣接したスペクトル効率値の間の差異がほぼ同等であり、aがbとほぼ同等であるとは、aとbとの差異の絶対値が設定値よりも小さいことを意味する条件を満たす」と特定されているのに対して、先願発明は、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うCQIインデックステーブルにおけるスペクトル効率について特定されていない点。

第6 判断
1 相違点1について
上記第4 3(2)エのとおり、LTEにおいて、HARQが再送制御方式として用いられ、また、上記第4 3(2)オのとおり、LTE規格で定義されたMCSインデックス及び変調テーブルの、3つの予約された組合せは再送のみで用いられることは技術常識である。
以上を踏まえると、後方互換性を維持し、著しい複雑さを回避して、LTEのための256QAMを導入する方法である先願発明において、新たに予約された256QAM拡張を伴う変調テーブルの一例であるテーブル1における変調次数8(256QAM)に対応するMCSインデックス11も、同様にHARQ再送のために予約されているといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。

2 相違点2について
LTE規格で定義されたCQIテーブル(3GPP TS 36.213 Table 7.1.7.1(発明の詳細な説明の段落0015の表1参照))におけるスペクトル効率も、それぞれの変調方式において、チャネル品質に応じて利用するスペクトル効率がほぼ均等になるように「変調オーダーが2より大きい任意の変調方式において、2つの隣接したスペクトル効率値の間の差異がほぼ同等であり、aがbとほぼ同等であるとは、aとbとの差異の絶対値が設定値よりも小さいことを意味する条件を満たす」といえるから、256QAMを導入して同様の処理を行う先願発明のLTE規格で定義されたCQIテーブルに対して256QAMの追加が行われた、付加的な新しい256QAM(Qm=8)への拡張を伴うCQIインデックステーブルにおけるスペクトル効率についても、それぞれの変調方式において、チャネル品質に応じて利用するスペクトル効率がほぼ均等になるように「変調オーダーが2より大きい任意の変調方式において、2つの隣接したスペクトル効率値の間の差異がほぼ同等であり、aがbとほぼ同等であるとは、aとbとの差異の絶対値が設定値よりも小さいことを意味する条件を満たす」とすることは当業者が当然考慮していることと解されるから、実質的な相違点とはいえない。

したがって、本願発明は先願発明と実質的に同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-26 
結審通知日 2018-07-31 
審決日 2018-08-14 
出願番号 特願2014-559071(P2014-559071)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04W)
P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 16- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 雄太郎廣川 浩  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 松永 稔
山本 章裕
発明の名称 情報送信方法およびデバイス  
代理人 木内 敬二  
代理人 佐伯 義文  

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