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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F23R
管理番号 1347529
審判番号 不服2018-255  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-10 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2013-81758「燃焼器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-202465、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月10日の出願であって、平成29年3月24日付け(発送日:平成29年3月28日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成29年5月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年10月5日付け(発送日:平成29年10月17日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成30年1月10日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成30年8月30日付け(発送日:平成30年9月4日)で当審より拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、その指定期間内の平成30年10月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし10に係る発明は、以下の引用文献AないしDに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
A.特開2010-156539号公報
B.特開2007-33022号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2002-206741号公報(周知技術を示す文献)
D.実願昭58-1667号(実開昭59-108055号)のマイクロフィルム

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1(進歩性)本願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし10
・引用文献1ないし6

引用文献一覧
1.実願平4-41830号(実開平5-96759号)のCD-ROM (当審において新たに引用した文献)
2.特開2007-33022号公報(周知技術を示す文献)(原査定の引用文献B)
3.特開2002-206741号公報(周知技術を示す文献)(原査定の引用文献C)
4.特開平8-128636号公報(当審において新たに引用した文献)
5.特開2002-206742号公報(当審において新たに引用した文献)
6.特開2010-156539号公報(原査定の引用文献A)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成30年10月31日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
燃料と空気を混合して燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室内に燃料と空気を供給して火炎を保持するバーナとを備えた燃焼器であって、
前記バーナは、前記バーナの軸心に対し半径方向内周側に傾斜した内向角と周方向に傾斜した旋回角を有する空気旋回流路と、前記空気旋回流路内に燃料ガスを噴射する複数のガス噴孔とを有するメインバーナと、前記メインバーナの半径方向内周側に配置され、前記燃焼室にパイロット燃料を供給するパイロットバーナとを備え、
前記ガス噴孔が、前記バーナの軸心に対し半径方向外周側に傾斜した外向角を有するとともに、第1のガス噴孔と第2のガス噴孔の少なくとも二つのグループから成り、
前記第1のガス噴孔と前記第2のガス噴孔に対して前記燃料ガスをそれぞれ独立して供給できるよう構成され、
前記第1のガス噴孔の外向角が前記第2のガス噴孔の外向角よりも小さく、
前記メインバーナに前記燃料ガスを供給する燃料系統が、低カロリーガスを前記燃料ガスとして前記第1のガス噴孔および前記第2のガス噴孔に供給し、前記低カロリーガスよりも発熱量の高い中カロリーガスを前記燃料ガスとして前記第2のガス噴孔に供給する燃料系統であることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼器において、
バーナ軸方向について、前記第1のガス噴孔が前記第2のガス噴孔よりも前記バーナの燃焼室側端面に近い位置に配置されたことを特徴とする燃焼器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼器において、
前記第1のガス噴孔と前記第2のガス噴孔が、前記バーナの周方向について交互に配置されていることを特徴とする燃焼器。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の燃焼器において、
前記メインバーナに前記燃料ガスを供給する前記燃料系統に、供給する燃料ガスの流量を制御するための制御弁を設けたことを特徴とする燃焼器。
【請求項5】
請求項1乃至4項の何れか一項に記載の燃焼器において、
前記メインバーナに前記燃料ガスを供給する前記燃料系統が、前記低カロリーガスとして、製鉄プロセスで発生する高炉ガス、石炭を空気でガス化した石炭ガス化低カロリーガス、あるいは、木材等を空気でガス化したバイオマスガス化ガスを供給する燃料系統であることを特徴とする燃焼器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の燃焼器において、
前記メインバーナに前記燃料ガスを供給する前記燃料系統が、前記中カロリーガスとして、製鉄プロセスにおいて高炉の原料となるコークス製造の際に発生するコークス炉ガス、または石炭を酸素でガス化した石炭ガス化中カロリーガスを供給する燃料系統であることを特徴とする燃焼器。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の燃焼器において、
前記パイロットバーナは、前記パイロット燃料として気体燃料を噴射可能な気体燃料噴孔を備えていることを特徴とする燃焼器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の燃焼器において、
前記パイロットバーナは、前記パイロット燃料として液体燃料を噴射可能な液体燃料ノズルを備えていることを特徴とする燃焼器。」

第5 特許法第29条第2項(進歩性)についての判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1
平成30年8月30日付けの当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献1(実願平4-41830号(実開平5-96759号)のCD-ROM)には、「ガスタービンの燃焼器」に関して、図面(特に図1及び図2を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア「【0011】
図1に示すガスタービンの燃焼器1は、外筒2と、この外筒2の内部に配置される筒状のライナー3と、このライナー3の軸方向一端側(図中上方側)の内部に配置されるセンターボディ4とを備えている。その外筒2とライナー3との間は空気通路5とされ、この空気通路5の軸方向他端側は図外圧縮空気供給源に接続されている。そのライナー3は軸方向他端が図外タービン本体のスクロールに取り付けられ、また、外壁に複数の空気導入孔3aが形成され、その空気通路5を流れる空気の一部を図中矢印で示すようにライナー3内に導入することができる。そのライナー3の軸方向一端側とセンターボディ4との間は予混合室6とされ、そのライナー3の軸方向他端側の内部は燃焼室7とされ、その燃焼室7内の燃焼ガスがスクロールを通じて図外タービンブレードに導かれる。なお、ライナー3には点火プラグ18が取り付けられている。
【0012】
そのセンターボディ4の軸方向他端側中央部から燃焼室7内に液体燃料と気体燃料とが噴射可能とされている。すなわち、そのセンターボディ4は内層部材4aと、この内層部材4aに嵌脱可能に外嵌された筒状の中間層部材4bと、この中間層部材4bに嵌脱可能に外嵌された筒状の外層部材4cとで主構成され、前記外筒2に図外ボルトを介し着脱可能に取り付けられている。その内層部材4aの軸心に沿って液体燃料供給孔10が形成され、この液体燃料供給孔10の軸方向一端が図外液体燃料供給源に接続され、軸方向他端が液体燃料噴射口9とされている。また、その内層部材4aと中間層部材4bとの間が気体燃料供給通路12とされ、この通路12の軸方向一端が気体燃料供給源に接続され、軸方向他端が気体燃料噴射口11とされている。
【0013】
また、予混合室6の軸方向一端にも液体燃料と気体燃料とが噴射可能とされている。すなわち、前記外筒2の軸方向一端側の外部に液体燃料用マニホールド15が取り付けられている。この液体燃料用マニホールド15は、図外液体燃料供給源に配管15aを介し接続されるリング部15bと、このリング部15bから径方向内方に突出する複数の枝管15cと、この枝管15cの先端に設けられた液体燃料噴射用チップ15dとを有する。各チップ15cは、外筒2に図外ボルトにより着脱自在に取り付けられた環状ブロック16に嵌合され、その先端の燃料噴射口15eから予混合室6の軸方向一端に液体燃料を噴射する。また、その液体燃料供給用マニホールド15を囲むように、気体燃料供給用マニホールド20が設けられている。この気体燃料供給用マニホールド20は、図外気体燃料供給源に配管20aを介し接続されるリング部20bと、このリング部20bから径方向内方に突出する複数の枝管20cとを有する。各枝管20cの先端は、外筒2に図外ボルトによって着脱自在に取り付けられた環状ブロック21に接続され、このブロック21と外筒2とに形成された気体燃料通路22を介し予混合室6の軸方向一端に気体燃料を噴射する。本実施例では、その気体燃料通路22の先端の各燃料噴射口23と前記各液体燃料噴射口15eとは互いに同心の円上に配置されている。
【0014】
その予混合室6の軸方向一端側に噴射される燃料と空気通路5から流入する空気とを予混合室6において混合することができるように、その空気通路5と予混合室6との間にスワラー30が設けられている。このスワラー30は、図2に示すように、その空気通路5から予混合室6に流入する空気を旋回させる複数のベーン30aを、ライナー3の軸方向一端に形成されたフランジ3bと外筒2との間に設けることで構成される。
【0015】
その予混合室6において混合される空気と燃料の混合気は、予混合室6を軸方向一端側から他端側に向かって図中矢印で示すように流れることで前記燃焼室7に供給される。その予混合室6における混合気を絞る環状部材40が、ライナー3の内周面に溶接されている。これにより、その予混合室6から燃焼室7に流入する混合気の流速を増加させ、燃焼室7における火炎の伝播速度よりも速くしている。
【0016】
上記燃焼器1には通常はガス燃料が供給され、タービンの起動時にセンターボディ4の気体燃料噴射口11から燃焼室7に噴射される気体燃料がプラグ18によって点火されることで着火し、燃焼室7内に火炎が保持される。そして、予混合室6の軸方向一端側に気体燃料噴射口23から噴射される気体燃料と、空気通路5からスワラー30を通って予混合室6内に流入する空気の混合気とが、絞り用部材40により増速されて燃焼室7に流入する。この混合気が燃焼室6内に保持された火炎により着火され燃焼し、燃焼ガスがタービンブレードに供給される。
【0017】
また、気体燃料が何からの事情で供給できなくなった場合は、液体燃料噴射口9、15eから液体燃料が噴射され、気体燃料の場合と同様の燃焼が行なわれる。
【0018】
上記構成によれば、予混合室6において燃料と空気とを充分に混合でき、かつ、燃焼室7に保持された火炎によりその混合気を確実に着火できることから、その混合気における燃料濃度を低くしてNOxを低減できる。また、液体燃料と気体燃料のいずれによってもタービンを運転することができる。さらに、予混合室6から燃焼室7に流入する混合気の流速を火炎の伝播速度よりも確実に速くできるので、燃焼室7から予混合室6への火炎の逆流を確実に防止でき、燃料噴射口9、11、15e、23の構成部材が溶損するのを防止でき、また、予混合室6における空気と燃料の混合を促進できる。また、液体燃料噴射口9、15eおよび気体燃料噴射口11、23の構成部材を容易に着脱することができ、そのメンテナンスが容易なものである。」

以上から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「燃料と空気を混合して燃焼させる燃焼室7と、前記燃焼室7内に燃料と空気を供給して火炎を保持するセンターボディー4及び予混合室6とを備えたガスタービン燃焼器1であって、
前記センターボディー4及び予混合室6は、周方向に傾斜した旋回角を有するベーン30aを設けたスワラ-30と、前記スワラ-30に気体燃料を噴射する気体燃料通路22の先端の燃料噴射口23及び液体燃料噴射口15eを有する予混合室6と、前記予混合室6の半径方向内周側に配置され、前記燃焼室7に液体燃料と気体燃料が噴射可能なセンターボディー4とを備え、
前記気体燃料通路22の先端の燃料噴射口23と前記液体燃料噴射口15eに対して燃料をそれぞれ独立して供給できるよう構成されたガスタービン燃焼器1。」

(2)引用文献2
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献2(特開2007-33022号公報)の段落【0028】及び【0029】並びに図2及び図3の記載からみて、当該引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。

ア 「バーナ13の軸心に対し半径方向内周側に傾斜した内向角と周方向に傾斜した旋回角を有する空気旋回器17。」
イ 「空気旋回器17の流路17aの内周側に設けられ、バーナ13の軸心に対し半径方向外方に傾斜した外向角を有する混合燃料ノズル16の噴出口16a。」

(3)引用文献3
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献3(特開2002-206741号公報)の段落【0026】ないし【0029】並びに図1及び図2の記載からみて、当該引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。

ア 「軸心側に傾斜した内向角γ及び軸心を基準に傾斜した旋回角αが設定される流体旋回通路24cが形成される空気旋回器24。」
イ 「空気旋回器24に設けられ、平面に投影した角度θとライナー8の内壁面の交点から設定される半径方向外方に傾斜した外向角βが設定される燃料噴射孔24a。」

(4)引用文献4
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献4(特開平8-128636号公報)の段落【0004】及び【0021】並びに図1、図2、図8及び図9の記載からみて、当該引用文献4には、次の事項が記載されていると認められる。

ア 「一次燃焼用予混合ガス噴出孔2に一次燃料ガスG1が供給され、二次燃焼用予混合ガス噴出孔3に二次燃料ガスG2が供給されてそれぞれ噴出すること。」
イ 「ガス燃焼装置の軸方向について、一次燃焼用予混合ガス噴出孔2と二次燃焼用予混合ガス噴出孔3の位置を異ならせて配置すること。」

(5)引用文献5
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献5(特開2002-206742号公報)の段落【0017】ないし【0019】及び段落【0028】並びに図1の記載からみて、当該引用文献5には、次の事項が記載されていると認められる。

ア 「燃焼器の軸方向について、一次燃料ノズル5と二次燃料ノズル6の位置を異ならせて配置すること。」
イ 「一次燃料ノズル5と二次燃料ノズル6を周方向に互い違いに配置すること。」

(6)引用文献6
当審拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された引用文献6(特開2010-156539号公報)の段落【0008】の記載からみて、当該引用文献6には、「二種類のガス燃料を含む複式燃料を使用して動作可能なDLN-1燃焼器を提供すること。」が記載されていると認められる。

2 対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「燃焼室7」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「燃焼室」に相当し、以下同様に、「ガスタービン燃焼器1」は「ガスタービン燃焼器」に、「予混合室6」は「メインバーナ」に、「液体燃料と気体燃料」は「パイロット燃料」に、「センターボディー4」は「パイロットバーナ」にそれぞれ相当する。そして、後者の「予混合室6及びセンターボディー4」は、前者の「バーナ」に相当するものといえる。
また、後者の「周方向に傾斜した旋回角を有するベーン30aを設けたスワラ-30」と前者の「バーナの軸心に対し半径方向内周側に傾斜した内向角と周方向に傾斜した旋回角を有する空気旋回流路」とは、少なくとも「バーナの軸心に対し周方向に傾斜した旋回角を有する空気旋回流路」という限りで一致する。
そして、後者の「スワラ-30に気体燃料を噴射する気体燃料通路22の先端の燃料噴射口23及び液体燃料噴射孔口15e」と前者の「空気旋回流路内に燃料ガスを噴射する複数のガス噴孔」とは、「空気旋回流路内に燃料を噴射する複数の噴孔」という限りで一致する。そうすると、後者の「燃料噴射口23及び液体燃料噴射孔口15e」と前者の「ガス噴孔が、前記バーナの軸心に対し半径方向外周側に傾斜した外向角を有するとともに、第1のガス噴孔と第2のガス噴孔の少なくとも二つのグループから成り」とは、「噴孔が、第1の噴孔と第2の噴孔の少なくとも二つのグループから成り」という限りで一致する。
さらに、後者の「気体燃料通路22の先端の燃料噴射口23と前記液体燃料噴射孔口15eに対して燃料をそれぞれ独立して供給できるよう構成された」と前者の「第1のガス噴孔と第2のガス噴孔に対して燃料ガスをそれぞれ独立して供給できるよう構成され」とは、「第1の噴孔と第2の噴孔に対して燃料をそれぞれ独立して供給できるよう構成され」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「燃料と空気を混合して燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室内に燃料と空気を供給して火炎を保持するバーナとを備えた燃焼器であって、
前記バーナは、前記バーナの軸心に対し周方向に傾斜した旋回角を有する空気旋回流路と、前記空気旋回流路内に燃料を噴射する複数の噴孔とを有するメインバーナと、前記メインバーナの半径方向内周側に配置され、前記燃焼室にパイロット燃料を供給するパイロットバーナとを備え、
前記噴孔が、第1の噴孔と第2の噴孔の少なくとも二つのグループから成り、
前記第1の噴孔と前記第2の噴孔に対して前記燃料をそれぞれ独立して供給できるよう構成された燃焼器。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者の「空気旋回流路」は「バーナの軸心に対し半径方向内周側に傾斜した内向角」を有しているのに対し、後者の「スワラー30」がかかる事項を備えるか不明である点。
[相違点2]
「噴孔」に関し、前者は「ガス噴孔」であって、該「ガス噴孔」が「バーナの軸心に対し半径方向外周側に傾斜した外向角を有するとともに、第1のガス噴孔と第二のガス噴孔の少なくとも二つのグループ」から成り、そして「第1のガス噴孔の外向角が第2のガス噴孔の外向角よりも小」さく、さらに、「メインバーナに燃料を供給する燃料系統が、低カロリーガスを燃料ガスとして第1のガス噴孔および第2のガス噴孔に供給し、前記低カロリーガスよりも発熱量の高い中カロリーガスを前記燃料ガスとして前記第2のガス噴孔に供給する燃料系統」であるのに対し、後者は、「噴孔」が「気体燃料通路22の先端の燃料噴射口23と液体燃料噴射口15e」、すなわち「ガス噴孔」と液体燃料の「噴孔」からなり、気体燃料を燃料噴射口23に供給し、液体燃料を液体燃料噴射口15eに供給する点。

相違点について検討する。
事案に鑑み、先ず相違点2について検討する。
引用文献2の記載事項のイは、「空気旋回器17の流路17aの内周側に設けられ、バーナ13の軸心に対し半径方向外方に傾斜した外向角を有する混合燃料ノズル16の噴出口16a。」である。
引用文献3の記載事項のイは、「空気旋回器24に設けられ、平面に投影した角度θとライナー8の内壁面の交点から設定される半径方向外方に傾斜した外向角βが設定される燃料噴射孔24a。」である。
そして、引用文献2の記載事項のイ及び引用文献3の記載事項のイからみて、「バーナの軸心に対し半径方向外周側に傾斜した外向角」を有する「噴孔」は周知技術といえる。
また、引用文献6の記載事項は、「二種類のガス燃料を含む複式燃料(低カロリーガス及び中カロリーガス)を使用して動作可能なDLN-1燃焼器(燃焼器)を提供すること。」である。
しかしながら、引用発明に対し、上記周知技術及び引用文献6の記載事項を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項、特に「第1のガス噴孔の外向角が第2のガス噴孔の外向角よりも小」さくするという事項、及び「メインバーナに燃料を供給する燃料系統が、低カロリーガスを燃料ガスとして第1のガス噴孔および第2のガス噴孔に供給し、前記低カロリーガスよりも発熱量の高い中カロリーガスを前記燃料ガスとして前記第2のガス噴孔に供給する燃料系統」という事項を導き出すことはできない。

また、引用文献2ないし引用文献6には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は記載されておらず、示唆もない。

そして、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項により、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0039】に記載される「高炉ガスなどの低カロリーガスを安定に燃焼しつつ、低カロリーガスとコークス炉ガスなどの中カロリーガスを同一のバーナで安定して燃焼できるガスタービン燃焼器を提供することができる。」との、引用発明及び引用文献2ないし6の記載事項を総合した効果を超える、格別な効果を奏するといえる。

したがって、相違点1の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし6の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし本願発明8
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし8は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2ないし本願発明8は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
平成30年10月31日の補正により、補正後の請求項1ないし8は、第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点2に係る発明特定事項を有するものとなった。当該第5 2(1)で上述した本願発明1の相違点2に係る発明特定事項は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献6)、引用文献B(当審拒絶理由における引用文献2)、引用文献C(当審拒絶理由における引用文献3)及び引用文献Dには記載されておらず、本願の出願前における周知技術でもないので、本願発明1ないし8は、当業者が原査定における引用文献AないしDに基いて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、当審が通知した理由及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2013-81758(P2013-81758)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F23R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 孔徳  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 冨岡 和人
水野 治彦
発明の名称 燃焼器  
代理人 ポレール特許業務法人  

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