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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F01K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01K
管理番号 1347557
審判番号 不服2018-695  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-18 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2013-132680「ガスタービンコンバインドサイクル設備、水上設備」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月15日出願公開、特開2015-7394、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年1月27日付け :拒絶理由通知書
平成29年4月3日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年8月23日付け :拒絶理由通知書
平成29年9月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月31日付け :拒絶査定
平成30年1月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年8月30日付け :拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」 という。)
平成30年10月29日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成30年10月29日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ガスタービンユニットと、
前記ガスタービンユニットの排ガスから排熱を回収して蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記ガスタービンユニットの排ガスを前記排熱回収ボイラに案内する排気ダクトと、
前記ガスタービンユニット、前記排熱回収ボイラ、及び前記排気ダクトを支持する支持架構と、
を備え、
前記支持架構は、上下方向に重なるように並んで配置された3層のベース部材を含み、
前記3層のベース部材は、最上層に配置された最上層ベース部材、最下層に配置された最下層ベース部材、及び前記最上層ベース部材よりも下方で、かつ前記最下層ベース部材よりも上方に配置された中間層ベース部材を備え、
前記最上層ベース部材上には、前記ガスタービンユニットを構成する吸気ダクトが配置されており、
前記中間層ベース部材には、前記ガスタービンユニットが配置されており、
前記最下層ベース部材には、前記中間層ベース部材よりも上方に至る高さとされた前記排熱回収ボイラが配置されており、
前記ガスタービンユニットの鉛直下方の前記最下層ベース部材上には、前記タービンユニットの補機および前記排熱回収ボイラの補機の少なくとも一部が配置されており、
前記排熱回収ボイラは、高さ方向に積み上げられた複数のボイラユニット備え、
前記ガスタービンユニットと前記排熱回収ボイラとは、平面視したときに、前記ガスタービンユニットのタービン軸方向と、前記排熱回収ボイラにおける前記排ガスの流れ方向とが、互いに平行になるよう並列配置されていることを特徴とするガスタービンコンバインドサイクル設備。
【請求項2】
前記ボイラユニットは、前記排気ダクトから導入される前記排ガスとの熱交換によって蒸気を発生させる蒸発器を含み、
前記複数のボイラユニットのそれぞれに前記排ガスが導入されることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンコンバインドサイクル設備。
【請求項3】
前記複数のボイラユニットのそれぞれには、各ボイラユニットで発生した蒸気と水とを分離し、分離された前記水を前記蒸発器に循環させる気水分離器が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のガスタービンコンバインドサイクル設備。
【請求項4】
前記気水分離器は、各ボイラユニットの側方且つ上方に配され、その相対位置が、各ボイラユニットで同一とされ、前記排熱回収ボイラは、自然循環ボイラとされていることを特徴とする請求項3に記載のガスタービンコンバインドサイクル設備。
【請求項5】
前記ボイラユニットと前記気水分離器とが、予め一体化された組立体とされていることを特徴とする請求項3または4に記載のガスタービンコンバインドサイクル設備。
【請求項6】
水に浮かぶ浮体と、
前記浮体上に設けられた前記請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービンコンバインドサイクル設備と、
を備えることを特徴とする水上設備。」

第3 引用文献、引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭59-99006号公報(以下「引用文献1」という。)には、「コンバインド発電プラント用ガスタ-ビンの排気ダクト装置」に関して、図面(特に、第7図ないし第9図参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「前記発電設備Aは、第1図に示すように、ガスタービン1、蒸気タービン2、発電機3、補機室4、吸気ダクト5とを備えている。」(第1ページ右欄第16行ないし第19行)

イ 「本発明は、コンバインド発電プラントにおいて、ガスタービンと排熱回収ボイラとを接続している排気ダクトの長さ方向の少なくとも一部分を、発電設備および排熱回収設備と異フロアレベルに配置し、前記排気ダクトを異フロアレベルに配置することによつて形成された空間を、機器の補修区域および保守,点検用の巡回路として利用し、前記目的を達成することができたものである。」(第2ページ右上欄第12行ないし第19行)

ウ 「ガスタービン1から出た排気ガス」(第2ページ左下欄第12行及び第13行)

エ 「ついで、第7図,第8図および第9図は、本発明の第2の実施例を示す。
この第2の実施例では、発電設備Aと排熱回収設備Cとが第7図に示すごとく、平面から見て異なる位相に、平行に設置され、発電設備Aのガスタービン1と排熱回収設備Cの排熱回収ボイラ15とが平面から見てL字型の排気ダクト装置B′により連結されている。
そして、この第2の実施例では排気ダクト装置B′を構成している排気ダクト32,33の全部と、その排気ダクト33と排熱回収設備Cの排熱回収ボイラ15とを結ぶ排気ダクト34の一半部とが発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25に設置されている。」(第3ページ右上欄第6行ないし第19行)

オ コンバインド発電プラントにおける排熱回収設備Cが、排気ガスから排熱を回収して蒸気を生成するものであることは明らかである。

カ 第8図から、排熱回収設備Cを設置している部分、すなわち排熱回収設備Cの配置部が確認できる。そうすると、発電設備Aの設置フロア24、発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25、及び排熱回収設備Cの配置部を総称したものは、設置部といえる。

キ 第8図から、排熱回収設備Cは、発電設備Aの設置フロア24よりも上方に至る高さであることが分かる。

ク 第7図及び第8図からみて、ガスタービン1と排熱回収設備Cとは、平面視で、前記ガスタービン1のタービン軸方向と前記排熱回収設備Cにおける排気ガスの流れ方向とが、互いに平行になるよう並列配置されていることが分かる。

上記アないしク並びに第7図ないし第9図の図示内容を総合すると、引用文献1には、「コンバインド発電プラント」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「ガスタービン1と、
前記ガスタービン1の排気ガスから排熱を回収して蒸気を生成する排熱回収設備Cと、
前記ガスタービン1の排気ガスを前記排熱回収設備Cに案内する排気ダクト装置B′と、
前記ガスタービン1、前記排熱回収設備C、及び前記排気ダクト装置B′を支持する設置部と、
を備え、
前記設置部は、発電設備Aの設置フロア24、前記発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25、及び前記排熱回収設備Cの配置部を備え、
発電設備Aの設置フロア24には、前記ガスタービン1及び吸気ダクト5を備える前記発電設備Aが設置されており、前記排熱回収設備Cの配置部には、前記発電設備Aの設置フロア24よりも上方に至る高さとされた前記排熱回収設備Cが設置されており、
前記ガスタービン1と前記排熱回収設備Cとは、平面視したときに、前記ガスタービン1のタービン軸方向と、前記排熱回収設備Cにおける前記排気ガスの流れ方向とが、互いに平行になるよう並列配置されているコンバインド発電プラント。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された実願昭58-8514号(実開昭59-115806号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、「超コンパクトコンバインドプラント」に関して、図面(特に、第3図ないし第6図参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「〔考案の目的〕
本考案の目的は、コンバインドプラントにおいて、バージ船にコンバインドプラントを設置することにより、バージ船の船底と甲板を利用したコンパクトな配置、海水を利用した冷却、防音、脱硝設備の低減をして、かつ移動性のある発電所を提供することにある。」(明細書第4ページ第3行ないし第9行)

上記ア及び第3図ないし第6図の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「バージ船にコンバインドプラントを設置することにより、バージ船の船底と甲板を利用したコンパクトな配置の発電所を提供すること。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2005-42600号公報(以下「引用文献3」という。)には、「発電設備」に関して、図面(特に図13参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0096】
以下図面に基づいて船舶に発電設備を備えた具体例を説明する。」

イ 「【0106】
尚、発電設備船舶61の発電機能としては、ガスタービン設備66と蒸気タービン設備71とを組み合わせたコンバインド設備に限らず、ガスタービン設備66の単独の設備や燃料電池を備えた発電設備、燃料炊きボイラで蒸気を得て蒸気タービンを作動させる蒸気タービン設備等、種々の設備を適用することが可能である。また、蒸気発生器や蒸気タービンを備えた原子力発電設備を適用することも可能である。」

上記ア及びイ並びに図13の図示内容を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「船舶がコンバインド発電設備を備えること。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開昭57-191406号公報(以下「引用文献4」という。)には、「パツケージ形コンバインドサイクル発電設備及びその輸送・据付方法」に関して、図面(特に、第1図、第2図及び第13図参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「以下図面を用いて本発明のパツケージ形コンバインドサイクル発電設備を説明する。第1図及び第2図は夫々本発明の一実施例を示す図で、第1図は平面図、第2図は第1図の線II-IIに沿う断面図(側面図)である。図に於て、1は浮上輸送可能な船台で、バラストタンク1′を有し通常の船舶と同様に工場内のドック内で製作され、この船台1の上にコンバインドサイクル発電所の構成機器である吸気設備2、空気圧縮機3、燃焼器4、ガスタービン5、発電機6、蒸気タービン7、復水器8、起動装置9、排気ダクト10、排熱回収ボイラー11、及びそれらの附属機器を搭載し1つのパツケージPとして構成する。尚、図中の12は、これらの一部を収納するための建屋である。コンバインドサイクル形発電パツケージを構成するこれらの各機器は、工場において厳密な管理のもとに短期間の間に製作し、船台1上に組立搭載される。」(第3頁左上欄第19行ないし右上欄第16行)

イ 「又、前述説明のコンバインドサイクル形発電パツケージは陸上に固定設置することなく、第13図に図示する如く、水上に浮上させた状態で繋留し所定期間発生電力を陸上に送電する移動発電所として、使用し得ることも明らかであり、輸送方法として潜水可能式バージの採用の可否にかかわらず本発明からは充分類推できるものである。」(第4頁左下欄第14行ないし第20行)

上記ア及びイ並びに第1図、第2図及び第13図の図示内容を総合すると、引用文献4には、次の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献4記載事項〕
「コンバインドサイクル形発電パッケージを、水上に浮上させた状態で繋留し所定期間発生電力を陸上に送電する移動発電所として、使用すること。」

5 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平4-366303号公報(以下「引用文献5」という。)には、「自然循環形排熱回収ボイラ」に関して、図面(特に図1参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0020】
【実施例】以下、本発明を図1に示す実施例を参照して説明する。図1は自然循環形排熱回収ボイラの構成要素のうち過熱器7と蒸発器11と節炭器2の1モジュールを抜きだしたものである。
【0021】排ガスダクト8の中を流れる排ガスGの流れ方向上流側には、過熱器7が配置されており、その下流には蒸発器11が配置されている。さらにその下流には節炭器2が配置されている。
【0022】蒸発器11は図のごとく高さ方向に2つに分割し、第1および第2蒸発器11a,11bとして構成される。伝熱管は垂直に配置されており、伝熱管内の水は伝熱管を1回のみ通過するいわゆる1パス式である。蒸発器11に備えられる降水管12、上昇管13はそれぞれ専用の第1および第2の降水管12a,12bと第1および第2上昇管13a,13bとにより蒸気ドラム3と接続されている。排ガスダクト8の中では、排ガスGはラギング14により上下に分割され、第1および第2蒸発器11a,11bと熱交換を行う。
【0023】給水は給水ポンプ1により節炭器2へ送り込まれる。さらに節炭器2において排ガスGにより予熱され、蒸気ドラム3へ送られる。蒸気ドラム3内の給水は第1および第2降水管12a,12bを通り第1および第2蒸発器11a,11bへ流入し、排ガスGにより加熱され蒸発する。気水混合流体となった給水は再び蒸気ドラム3へ流入し、蒸気と水に分離され、蒸気は過熱器7により所定の蒸気条件となって蒸気タービンへ送られる。」

上記ア及び図1の図示内容を総合すると、引用文献5には、次の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献5記載事項〕
「自然循環型排熱回収ボイラを構成する蒸発器11を高さ方向に2つに分割し、第1および第2蒸発器11a,11bとして構成すること。」

6 引用文献6
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平11-13416号公報(以下「引用文献6」という。)には、「パッケージ型発電プラント」に関して、図面(特に、図1及び図6参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、架台上にガスタービン,発電機および蒸気タービンが支承されているパッケージ型発電プラントにおいて、前記架台を、鉄骨軸組および鋼製パネルによって構成される鉄骨鋼板製とするとともに、この鉄骨鋼板製架台の上部にガスタービン,発電機および蒸気タービンを支承させ、かつ鉄骨鋼板製架台の内部空間にガスタービン,発電機および蒸気タービンの制御油系、潤滑油系、冷却水系および水素ガス系の補機および配管さらに電気計装機器を内蔵するようになし所期の目的を達成するようにしたものである。」

イ 「【0020】鉄骨鋼板製架台1の内部でありガスタービン3の直下には、吸気流入路12が設けてあり、吸気流入路12をガスタービン3に直接接続することにより、吸気ダクトの省略を図れる。また、図6に示す様に吸気流入路12内に熱交換機設備18を設置したことにより、ガスタービンの燃焼器に空気を供給するための空気温度を下げることができる。
【0021】熱交換機設備18は、冷却水または冷却気体を流入口18aより流入し、流入した冷却水または冷却気体にて吸気流入路12内を通る流体空気の温度を下げる。流入口18aより流入した冷却水または冷却気体は、流出口18bより流出され一定のサイクルで熱交換機設備18内を循環する。流入口18aおよび流出口18bは、鉄骨鋼板製架台1の側面に設置する。熱交換機設備18を吸気流入路12内に設置したことによりガスタービンの燃焼効率の向上が図れる。」

上記ア及びイ並びに図1及び図6の図示内容を総合すると、引用文献6には、次の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献6記載事項〕
「パッケージ型発電プラントにおいて、鉄骨鋼板製架台の上部にガスタービンを支承させ、鉄骨鋼板製架台の内部空間にガスタービン等の補機を内蔵すること。」

第4 対比・判断
1 本願発明1
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガスタービン1」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「ガスタービンユニット」に相当し、以下同様に、「排気ガス」は「排ガス」に、「排熱回収設備C」は「排熱回収ボイラ」に、「排気ダクト装置B′」は「排気ダクト」に、「コンバインド発電プラント」は「ガスタービンコンバインドサイクル設備」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「設置部」と、本願発明1における「支持架構」とは、「支持部」という限りで一致する。
さらに、引用発明における「発電設備Aの設置フロア24」、「発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25」及び「排熱回収設備Cの配置部」と、本願発明1における「最上層ベース部材」、「最下層ベース部材」及び「中間層ベース部材」とは、それぞれ「ベース部」という限りで一致するから、引用発明における「前記設置部は、発電設備Aの設置フロア24、前記発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25、及び前記排熱回収設備Cの配置部を備え」と、本願発明1における「前記支持架構は、上下方向に重なるように並んで配置された3層のベース部材を含み、前記3層のベース部材は、最上層に配置された最上層ベース部材、最下層に配置された最下層ベース部材、及び前記最上層ベース部材よりも下方で、かつ前記最下層ベース部材よりも上方に配置された中間層ベース部材を備え」とは、「前記支持部は、複数のベース部を備え」という限りで一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「ガスタービンユニットと、
前記ガスタービンユニットの排ガスから排熱を回収して蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記ガスタービンユニットの排ガスを前記排熱回収ボイラに案内する排気ダクトと、
前記ガスタービンユニット、前記排熱回収ボイラ、及び前記排気ダクトを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、複数のベース部を備え、
前記ガスタービンユニットと前記排熱回収ボイラとは、平面視したときに、前記ガスタービンユニットのタービン軸方向と、前記排熱回収ボイラにおける前記排ガスの流れ方向とが、互いに平行になるよう並列配置されているガスタービンコンバインドサイクル設備。」

〔相違点1〕
本願発明1においては、「支持部」は「支持架構」であり、
「前記支持架構は、上下方向に重なるように並んで配置された3層のベース部材を含み、
前記3層のベース部材は、最上層に配置された最上層ベース部材、最下層に配置された最下層ベース部材、及び前記最上層ベース部材よりも下方で、かつ前記最下層ベース部材よりも上方に配置された中間層ベース部材を備え、
前記最上層ベース部材上には、前記ガスタービンユニットを構成する吸気ダクトが配置されており、
前記中間層ベース部材には、前記ガスタービンユニットが配置されており、
前記最下層ベース部材には、前記中間層ベース部材よりも上方に至る高さとされた前記排熱回収ボイラが配置されており、
前記ガスタービンユニットの鉛直下方の前記最下層ベース部材上には、前記タービンユニットの補機および前記排熱回収ボイラの補機の少なくとも一部が配置されて」いるのに対し、
引用発明においては、「支持部」は「設置部」であり、
「前記設置部は、発電設備Aの設置フロア24、前記発電設備Aの設置フロア24の下方の異フロア25、及び前記排熱回収設備Cの配置部を備え、
発電設備Aの設置フロア24には、前記ガスタービン1及び吸気ダクト5を備える前記発電設備Aが設置されており、前記排熱回収設備Cの配置部には、前記発電設備Aの設置フロア24よりも上方に至る高さとされた前記排熱回収設備Cが設置されて」いる点。

〔相違点2〕
本願発明1においては、「前記排熱回収ボイラは、高さ方向に積み上げられた複数のボイラユニット備え」るのに対し、
引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を示唆する記載はない。
また、引用文献2記載事項は、「バージ船にコンバインドプラントを設置することにより、バージ船の船底と甲板を利用したコンパクトな配置の発電所を提供すること」であり、引用文献3記載事項は、「船舶がコンバインド発電設備を備えること」であり、引用文献4記載事項は、「コンバインドサイクル形発電パッケージを、水上に浮上させた状態で繋留し所定期間発生電力を陸上に送電する移動発電所として、使用すること」であり、引用文献5記載事項は、「自然循環型排熱回収ボイラを構成する蒸発器11を高さ方向に2つに分割し、第1および第2蒸発器11a,11bとして構成すること」であり、引用文献6記載事項は、「パッケージ型発電プラントにおいて、鉄骨鋼板製架台の上部にガスタービンを支承させ、鉄骨鋼板製架台の内部空間にガスタービン等の補機を内蔵すること」である。
そして、引用文献2ないし6記載事項は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の中で特に、「前記支持架構は、上下方向に重なるように並んで配置された3層のベース部材を含み、前記3層のベース部材は、最上層に配置された最上層ベース部材、最下層に配置された最下層ベース部材、及び前記最上層ベース部材よりも下方で、かつ前記最下層ベース部材よりも上方に配置された中間層ベース部材を備え、前記最上層ベース部材上には、前記ガスタービンユニットを構成する吸気ダクトが配置されており、前記中間層ベース部材には、前記ガスタービンユニットが配置されており、前記最下層ベース部材には、」「前記排熱回収ボイラが配置されて」いるとの事項を開示するものではない。さらに、引用文献2ないし6には、上記事項を開示又は示唆する記載はない。
そうすると、引用発明において、引用文献2ないし6記載事項を参酌しても、当業者の通常の創作能力の範囲内で、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2ないし6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし6
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし6は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし本願発明6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし本願発明6は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
(1)原査定の概要
原査定(平成29年10月31日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

本願の請求項1ないし5及び7に係る発明については引用例1、2、4、6及び7に記載された発明に基いて、また、本願の請求項6に係る発明については引用例1、2及び4ないし7に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用例一覧>
1.実願昭58-8514号(実開昭59-115806号)のマイクロフィルム(本審決における引用文献2)
2.特開昭59-99006号公報(同引用文献1)
4.特開平4-366303号公報(同引用文献5)
5.特開平11-13416号公報(同引用文献6)
6.特開2005-42600号公報(同引用文献3)
7.特開昭57-191406号公報(同引用文献4)
なお、平成29年1月27日付け拒絶理由において引用した「3.実願昭57-25588号(実開昭58-129008号)のマイクロフィルム」は、原査定では引用されていない。

(2)原査定についての判断
平成30年10月29日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし6は、上記「第4 対比・判断」の「(1)対比 」で述べた上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものである。
そして、上記「第4 対比・判断」の「(2)判断 」で検討したとおり、本願発明1ないし6は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1、2及び4ないし7(本審決における引用文献1ないし6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1の「上下方向に並んで配置された」及び「タービン軸方向の位置が重なる」との記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知している。
しかしながら、平成30年10月29日の手続補正により、請求項1は、「上下方向に重なるように並んで配置された」と補正されるとともに、「タービン軸方向の位置が重なる」との記載が削除されたものとなった結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1に記載される、3層のベース部材が上下方向に「並んで」配置されること、ガスタービンユニット「を構成するケーシング」が配置されること、ガスタービンユニット「を構成するケーシング」の鉛直下方に補機が配置されること、及び排熱回収ボイラとガスタービンユニットとが「タービン軸方向の位置が重なるように」並列配置されていることは、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知している。
しかしながら、平成30年10月29日の手続補正により、請求項1は、「上下方向に重なるように並んで配置された」と補正されるとともに、「ケーシング」に関する記載及び「タービン軸方向の位置が重なるように」との記載が削除されたものとなった結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明及び引用文献2ないし6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2013-132680(P2013-132680)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F01K)
P 1 8・ 121- WY (F01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹倉田 和博  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
粟倉 裕二
発明の名称 ガスタービンコンバインドサイクル設備、水上設備  
代理人 古都 智  
代理人 鎌田 康一郎  
代理人 長谷川 太一  
代理人 松沼 泰史  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 橋本 宏之  

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