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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1347587 |
審判番号 | 不服2017-11640 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-04 |
確定日 | 2019-01-04 |
事件の表示 | 特願2013-557803「電源管理のためのシステム、装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日国際公開、WO2012/138442、平成26年 5月22日国内公表、特表2014-512594〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年10月24日 :翻訳文提出 平成28年10月14日付け:拒絶理由通知書 平成29年 1月18日 :意見書の提出 平成29年 3月30日付け:拒絶査定 平成29年 8月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成29年8月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年8月4日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 第一の部品に電力を供給可能な第一の電源部と、 第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受信可能な電源モード選択受信部と、 前記選択された電源モードに基づいて、前記第一の部品が前記第一の電源部からの電力を受信するか否かを制御する切り替え部と、を備え、 前記電源モード選択受信部および前記切り替え部が、前記第一の部品とは独立して電力を受信する、電源モード制御装置。」 (2)本件補正前の、平成25年10月24日に提出された国際出願翻訳文提出書に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 第一の部品に電力を供給可能な第一の電源部と、 選択された電源モードの指示を受信可能な電源モード選択受信部と、 前記選択された電源モードに基づいて、前記第一の部品が前記第一の電源部からの電力を受信するか否かを制御する切り替え部と、を備え、 前記電源モード選択受信部および前記切り替え部が、前記第一の部品とは独立して電力を受信する、電源モード制御装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「選択された電源モードの指示」について、上記のとおり「第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから」選択されたものであることの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2010/004614号(2010年1月14日国際公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a.段落0001 「[0001] 本発明は、プロジェクタに代表される端末機器に関し、特に、待機時に消費される電力を削減するための機能(省電力モード)を備える端末機器に関する。」 b.段落0020-0032、図1、2 「[0020] 図1は、本発明の一実施形態である端末機器の構成を示すブロック図である。図1に示す端末機器は、プロジェクタに代表される端末機器であって、その主要部は、CPU1、入力部2、通信制御部3、インタフェース部4、電源制御部5、カレンダIC6およびバックアップ電源7からなる。 [0021] 入力部2は、端末機器本体に設けられた本体操作部やリモコンを含む。本体操作部およびリモコンのそれぞれは、複数のボタンを有しており、利用者は、それらボタンを用いた入力操作を行うことで、端末機器の動作を制御することができる。 [0022] インタフェース部4は、パーソナルコンピュータ(PC)等の外部機器を端末機器に接続するためのハードウェアインタフェースである。インタフェース部4は、LANへの接続のためのインタフェースやRS-232C用のインタフェースなどを含む。インタフェース部4は、通信制御部3を介してCPU1に接続されている。 [0023] 通信制御部3は、インタフェース部4とCPU1の間の通信制御を行う。電源制御部5は、主電源回路に接続されており、CPU1からの制御信号に従い、入力部2である本体操作部、インタフェース部4、通信制御部3、および端末機器を構成する他の部分(光源、液晶パネル等)に電力を供給する。 [0024] カレンダIC6は、時刻設定値記憶部6aとカウンタ6bをする。カウンタ6bは、現在時刻(または現在の日時)を管理するための時計機能部である。カレンダIC6は、カウンタ6bの出力に基づいて現在時刻を取得する。 [0025] 時刻設定値記憶部6aは、省電力モードにおける割り込み開始時刻および割り込み終了時刻を記憶するためのものである。割り込み開始時刻および割り込み終了時刻は、利用者が、入力部2を通じて自由に設定することができる。カレンダIC6は、時刻設定値記憶部6aに記憶された割り込み開始時刻になると、CPU1に対して、通常待機開始コマンドを出力する。カレンダIC6は、時刻設定値記憶部6aに記憶された割り込み終了時刻になると、CPU1に対して、通常待機終了コマンドを出力する。 [0026] バックアップ電源7は、カレンダIC6に電力を供給する。このバックアップ電源7による電力供給により、カレンダIC6は、端末機器の動作モードに関係なく、常に、動作することが可能である。 [0027] CPU1は、端末機器の各部の動作を制御するものであって、入力部2を通じて利用者の入力指示を受け付け、該指示に従って必要な処理または制御を実行する。具体的には、CPU1は、動作モードの切り替え処理、モード割り込み処理およびその割り込み処理の開始時刻の設定処理等を行う。CPU1による処理または制御は、基本的には、プログラムによりCPU1を動作させることで実現される。 [0028] 動作モードは、例えば、通常モード、省電力モード、通常待機モードの3つのモードを含む。通常モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)に電力を供給する。省電力モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部にのみ電力を供給する。通常待機モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部およびインタフェース部4に電力を供給する。 [0029] なお、CPU1への電力供給は、主電源回路から直接行われている。省電力モードおよび通常待機モード時は、主電源回路からCPU1へ、必要最低限の機能を維持するための電力(スタンバイ電源)が供給される。必要最低限の機能は、省電力モードまたは通常待機モードから通常モードへ復帰するための第1の機能と、省電力モード時における割り込み処理を行うための第2の機能を含む。第1の機能では、CPU1は、リモコンまたは本体操作部からのコマンド信号(解除コマンド)を受信し、現在設定されている省電力モードまたは通常待機モードを解除する。第2の機能では、CPU1は、カレンダIC6から通常待機開始コマンドを受信し、省電力モードから通常待機モードへの移行処理を実行し、その後、カレンダIC6から通常待機終了コマンドを受信し、その通常待機モードで設定された状態を維持する。 [0030] また、CPU1は、通常モード時において、インタフェース部4に接続された外部機器から画像信号の供給がなされていない状態(無信号状態)の経過時間、および入力部2から信号を受信していない状態(無操作状態)の経過時間をそれぞれ計測しており、無信号状態または無操作状態の経過時間が閾値を越えた場合に、端末機器の動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える。この通常モードから省電力モードへの切り替えのための手段として、例えば、特許文献1に記載された技術を適用してもよい。 [0031] 次に、本実施形態の端末機器の動作について具体的に説明する。 (1)省電力モード時の割り込み処理の開始時刻および終了時刻の設定: 利用者は、入力部2を通じて、省電力モード時の割り込み処理の開始時刻および終了時刻を設定する。入力部2にて開始時刻を指定するための入力操作が行われると、CPU1は、その指定された開始時刻をカレンダIC6の時刻設定値記憶部6aに格納する。続いて、入力部2にて終了時刻を指定するための入力操作が行われると、CPU1は、その指定された終了時刻をカレンダIC6の時刻設定値記憶部6aに格納する。なお、この開始時刻および終了時刻の設定は、外部機器からの遠隔操作により行ってもよい。 (2)動作モードの切り替え処理: 端末機器の電源をオンにすると、CPU1は、通常モードでの各部の動作制御を行う。そして、CPU1は、無信号状態または無操作状態の経過時間を計測し、その計測値が閾値を越えた場合に、端末機器の動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える。 [0032] 図2は、省電力モードが設定された端末機器の機能停止状態を示す模式図である。図2において、停止した機能は、破線で示されている。省電力モードでは、CPU1、入力部2およびカレンダIC6に対して電力が供給されており、通信制御部3およびインタフェース部4を含む他の部分へは、電力は供給されていない。このため、外部機器により端末機器を遠隔操作することはできない。」 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 〈引用発明1〉 CPU1、入力部2、通信制御部3、インタフェース部4、電源制御部5などから構成され、待機時に消費される電力を削減するための省電力モードを備える端末機器であって、 入力部2は、端末機器本体に設けられた本体操作部やリモコンを含み、本体操作部およびリモコンのそれぞれは、複数のボタンを有しており、利用者は、それらボタンを用いた入力操作を行うことで、端末機器の動作を制御することができ、 電源制御部5は、主電源回路に接続されており、CPU1からの制御信号に従い、入力部2である本体操作部、インタフェース部4、通信制御部3、および端末機器を構成する他の部分(光源、液晶パネル等)に電力を供給するものであり、 CPU1は、端末機器の各部の動作を制御するものであって、入力部2を通じて利用者の入力指示を受け付け、該指示に従って、動作モードの切り替え処理等を行うものであり、 動作モードは、通常モード、通常待機モード、省電力モードの3つのモードを含み、 通常モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)に電力を供給し、 通常待機モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部およびインタフェース部4に電力を供給し、 省電力モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部にのみ電力を供給し、 CPU1への電力供給は、主電源回路から直接行われ、省電力モードおよび通常待機モード時は、主電源回路からCPU1へ、必要最低限の機能を維持するための電力(スタンバイ電源)が供給される、端末機器。 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-218162号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 c.段落0005 「【0005】 本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、赤外線送信機等の遠隔制御装置によって制御可能な構成を有する電子機器において、スタンバイモード時の消費電力を大幅に低減させることにある。」 d.段落0036-0038、図5 「【0036】 また、サブ制御部150は、リモコン受光器6を介してリモコン120からの制御信号を受信する「受信手段」としてのリモコン受信回路152を有しており、リモコン受信回路152がリモコン120から動作モードを通常モードからスタンバイモードへ移行させる動作モード制御信号(以下、スタンバイモード制御信号とする)を受信した場合は、動作モードを通常モードからスリープモードへ移行させる条件としている。動作モード制御回路151は、リモコン120からスタンバイモード制御信号を受信した場合には、動作モードを通常モードからスリープモードへ移行させ、リモコン120から動作モードを通常モードへ移行させる動作モード制御信号(以下、通常モード制御信号とする)を受信した場合には、動作モードをスタンバイモードからスリープモードへ移行させる。 さらに、当該実施例に示したインクジェット式記録装置50は、通常モードで動作中に電源スイッチ35を操作した場合は、スリープモードへ移行し、スリープモードで動作中に電源スイッチ35を操作した場合には、通常モードへ移行するようになっている。つまり、当該実施例に示したインクジェット式記録装置50は、一般的なビデオテープレコーダ等の電子機器と同様に、電源をOFFしても内部的にはスタンバイ状態(スリープモード)で動作しており、リモコン120からの制御信号を受信した場合等の所定の通常モード移行条件が成立した時点で、いつでも通常モードへ移行できる状態となっている。 【0037】 ・・・(中略)・・・ そして、スタンバイモード(スリープモード)で動作している間は、サブ制御部150が動作しているので、リモコン120からの制御信号をリモコン受信回路152で受信することが可能な状態となっている。リモコン受信回路152が通常モード制御信号をリモコン120から受信した際には、動作モード制御回路151は、電圧制御回路21による定電圧スイッチング直流電源回路110を約13Vのスタンバイ電圧から42Vの定格電圧まで上昇させるべく、電圧制御回路21を制御する(詳細は後述)。 同時に、スイッチSW1をON制御して、定電圧スイッチング直流電源回路110からPFモータ57、CRモータ63、及び記録ヘッド62へ電力を供給するとともに、スイッチSW2をON制御して、DC-DCコンバータ22から記録制御部100へ電力を供給する。PFモータ57、CRモータ63、及び記録ヘッド62を定格電圧42Vで動作させることが可能な状態となり、記録制御部100による記録制御がいつでも実行可能な状態となる。 【0038】 このように、インクジェット式記録装置50の主たる制御を実行する記録制御部100と、リモコン120からの動作モード制御信号を受信する手段を有するサブ制御部150とを別個独立させ、記録制御部100への電力供給をON/OFF可能なスイッチSW2を設ける。そして、通常モードで動作中にリモコン120からスタンバイモード制御信号を受信した時点で、サブ制御回路150の動作モード制御回路151は、動作モードを通常モードからスタンバイモード(スリープモード)へ移行させるとともに、スイッチSW2をOFF制御して記録制御部100への電力供給を遮断する。 それによって、スタンバイモード時に消費電力が高い記録制御部100への電源供給をOFFしてインクジェット式記録装置50の消費電力を大幅に低減させつつ、リモコン120からの動作モード制御信号を受信することが可能になる。したがって、リモコン120によって制御可能な構成を有するインクジェット式記録装置50において、スタンバイモード時の消費電力を大幅に低減させることができる。また、スタンバイモード時には、定電圧直流電源装置110の出力電圧を定格電圧(42V)からスタンバイ電圧(約13V)まで低下させることによって、スタンバイモード時のインクジェット式記録装置50の消費電力をより低減させることができる。」 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。 〈引用文献2記載の技術事項〉 (a)サブ制御部150は、リモコン受光器6を介してリモコン120からの制御信号を受信する「受信手段」としてのリモコン受信回路152を有しており、リモコン受信回路152がリモコン120から動作モードを通常モードからスタンバイモードへ移行させる動作モード制御信号(スタンバイモード制御信号)を受信した場合は、動作モードを通常モードからスリープモードへ移行させる条件としている。 (b)スタンバイモード(スリープモード)で動作している間は、サブ制御部150が動作しているので、リモコン120からの制御信号をリモコン受信回路152で受信することが可能な状態となっている。 (c)通常モードで動作中にリモコン120からスタンバイモード制御信号を受信した時点で、「サブ制御回路150」の動作モード制御回路151は、動作モードを通常モードからスタンバイモード(スリープモード)へ移行させるとともに、スイッチSW2をOFF制御して「記録制御部100」への電力供給を遮断する。 (3)本件補正発明と引用発明1との対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1は「CPU1、入力部2、通信制御部3、インタフェース部4、電源制御部5などから構成され、・・・端末機器」であることから、前記「インタフェース部4」は「端末機器」の部品の一つといえる。また、引用発明1において「電源制御部5は、主電源回路に接続されており、CPU1からの制御信号に従い、・・・インタフェース部4・・・に電力を供給するもの」であるから、「主電源回路」は端末機器の部品である「インタフェース部4」に電力を供給可能な電源であるといえる。 このことから、引用発明1の「インタフェース部に電源を供給可能な主電源回路」は、本件補正発明の「第一の部品に電力を供給可能な第一の電源部」に相当する。 (イ)引用発明1において、「電源制御部5は、主電源回路に接続されており、CPU1からの制御信号に従い、入力部2である本体操作部、インタフェース部4、通信制御部3、および端末機器を構成する他の部分(光源、液晶パネル等)に電力を供給するもの」であるところ、「通常モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)に電力を供給」することから、通常モードは「端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、「端末機器内のほとんどまたは全ての部品は電力を受信できる電源モード」であるといえる。 また、「通常待機モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部およびインタフェース部4に電力を供給」することから、通常待機モードは「本体操作部およびインタフェース部4が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、「端末装置内の一部の部品は電力を受信できる電源モード」であるといえる。 さらに、「省電力モードにおいて、電源制御部5は、CPU1からの制御信号に従って、本体操作部にのみ電力を供給」することから、省電力モードは「本体操作部のみが主電源回路からの電力を受信する」モードであり、「動作モードの指示の受け付けに必須の部品のみに電力を供給することができる電源モード」であるといえる。 そして、本願明細書の段落0015の記載を参照すると、引用発明1の「通常モード」、「通常待機モード」、「省電力モード」は、それぞれ本件補正発明の「第一の電源モード(オンモード)」、「第二の電源モード(スタンバイモード)」、「第三の電源モード(オフモード)」に相当していると認められる。 (ウ)引用発明1において、「CPU1は、・・・入力部2を通じて利用者の入力指示を受け付け、該指示に従って、動作モードの切り替え処理等を行うもの」であり、「動作モードは、通常モード、通常待機モード、省電力モードの3つのモードを含」むことから、前記「入力部2」は「通常モード、通常待機モード、または省電力モードから選択された動作モードの指示を受け付け可能な入力手段」といえる。 ここで、引用発明1の「入力部2」はリモコンを含むものであるが、引用文献1には、「入力部」がリモコンである場合に、リモコンの有する複数のボタンを用いた利用者の入力操作を受け付ける具体的な構成について開示されていないため、選択された動作モードの指示を受信することにより受け付けているか不明である。 してみれば、引用発明1の「通常モード、通常待機モード、または省電力モードから選択された動作モードの指示を受け付け可能な入力手段」は、本件補正発明の「第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受信可能な電源モード選択受信部」と、「第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受け付け可能な電源モード選択受付手段」である点で共通するものの、本件補正発明では、選択された電源モードの指示を受信することにより受け付けているのに対し、引用発明1では、選択された電源モードの指示を受信することにより受け付けているか不明な点で相違する。 (エ)引用発明1において、「電源制御部5は、主電源回路に接続されており、CPU1からの制御信号に従い、・・・インタフェース部4・・・に電力を供給するものであり」、「CPU1は、・・・入力部2を通じて利用者の入力指示を受け付け、該指示に従って、動作モードの切り替え処理等を行うものであり」、上記(イ)に示したように、通常モードは「端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、通常待機モードは「本体操作部およびインタフェース部4が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、省電力モードは「本体操作部のみが主電源回路からの電力を受信する」モードであるから、引用発明1は、電源制御部5およびCPU1が協働することにより実現される、「選択された動作モードに基づいて、インタフェース部4が主電源回路からの電力を受信するか否かを制御する切り替え処理手段」を備えているといえる。 してみれば、引用発明1の「動作モード」、「インタフェース部4」、「主電源回路」は、それぞれ本件補正発明の「電源モード」、「第一の部品」、「電源部」に相当することから、引用発明1の「選択された動作モードに基づいて、インタフェース部4が主電源回路からの電力を受信するか否かを制御する切り替え処理手段」は、本件補正発明の「前記選択された電源モードに基づいて、前記第一の部品が前記第一の電源部からの電力を受信するか否かを制御する切り替え部」に相当する。 (オ)引用発明1において、「電源制御部5は、主電源回路に接続されており」、「CPU1への電力供給は、主電源回路から直接行われ、省電力モードおよび通常待機モード時は、主電源回路からCPU1へ、必要最低限の機能を維持するための電力(スタンバイ電源)が供給される」ことから、電源制御部5およびCPU1が協働することにより実現される「切り替え処理手段」は、インタフェース部4が主電源回路からの電力を受信するか否かに関係なく、主電源回路から電力を受信しているといえる。 一方、上記(イ)に示したように、通常モードは「端末機器の各部分(入力部2である本体操作部、通信制御部3、およびインタフェース部4を含む)が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、通常待機モードは「本体操作部およびインタフェース部4が主電源回路からの電力を受信する」モードであり、省電力モードは「本体操作部のみが主電源回路からの電力を受信する」モードであり、いずれの動作モードにおいても、「入力部2である本体操作部」は、主電源回路から電力を受信している。このことから、「通常モード、通常待機モード、または省電力モードから選択された動作モードの指示を受け付け可能な入力手段」として機能する「入力部2である本体操作部」は、インタフェース部4が主電源回路からの電力を受信するか否かに関係なく、主電源回路から電力を受信しているといえる。 このことから、引用発明1において、入力手段および切り替え処理手段は、インタフェース部4が主電源回路からの電力を受信するか否かに関係なく、すなわち、インタフェース部4とは独立して主電源回路から電力を受信するものであると認められる。 そして、引用発明1の「切り替え処理手段」、「インタフェース部4」、「主電源回路」は、それぞれ本件補正発明の「切り替え部」、「第一の部品」、「電源部」に相当し、引用発明1の「通常モード、通常待機モード、または省電力モードから選択された動作モードの指示を受け付け可能な入力手段」は、本件補正発明の「第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受信可能な電源モード選択受信部」と、「第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受け付け可能な電源モード選択受付手段」である点で共通することから、引用発明1の「入力手段および切り替え処理手段は、インタフェース部4とは独立して主電源回路から電力を受信する」ことは、本件補正発明の「電源モード選択受信部および切り替え部が、第一の部品とは独立して電力を受信する」ことと、「電源モード選択受付手段および切り替え部が、第一の部品とは独立して電力を受信する」点で共通する。 (カ)引用発明1である「待機時に消費される電力を削減するための省電力モードを備える端末機器」は、電源モードを制御していることから、「電源モード制御装置」といえる。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 〈一致点〉 「第一の部品に電力を供給可能な第一の電源部と、 第一の電源モード、第二の電源モード、または第三の電源モードから選択された電源モードの指示を受け付け可能な電源モード選択受付手段と、 前記選択された電源モードに基づいて、前記第一の部品が前記第一の電源部からの電力を受信するか否かを制御する切り替え部と、を備え、 前記電源モード選択受付手段および前記切り替え部が、前記第一の部品とは独立して電力を受信する、電源モード制御装置。」 〈相違点〉 本件補正発明の「電源モード選択受信部」は、選択された電源モードの指示を受信することにより受け付けているのに対し、引用発明1の「入力部」は、選択された動作モード(電源モードに相当)の指示を受信することにより受け付けているか不明な点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 引用文献2には、「サブ制御部150は、リモコン受光器6を介してリモコン120からの制御信号を受信する「受信手段」としてのリモコン受信回路152を有しており、リモコン受信回路152がリモコン120から動作モードを通常モードからスタンバイモードへ移行させる動作モード制御信号(スタンバイモード制御信号)を受信した場合は、動作モードを通常モードからスリープモードへ移行させる条件としている」ことが記載されている。 引用文献2記載の技術は、引用発明1と同様に、電子装置における待機時の消費電力を低減することを課題とするものであり、引用発明1の「入力部」はリモコンを含むことが示唆されており、引用発明1の「入力部」としてリモコンを採用する際の具体的な構成として、引用文献2に記載される「リモコン受光器6」および「リモコン受信回路152」を備えることにより、選択された動作モード(電源モードに相当)の指示を受信することにより受け付けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成29年8月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年10月24日に提出された国際出願翻訳文提出書に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-22に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:国際公開第2010/004614号 引用文献2:特開2005-218162号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「選択された電源モードの指示」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-07-30 |
結審通知日 | 2018-07-31 |
審決日 | 2018-08-20 |
出願番号 | 特願2013-557803(P2013-557803) |
審決分類 |
P
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8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐賀野 秀一、中野 裕二 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
▲吉▼田 耕一 松田 岳士 |
発明の名称 | 電源管理のためのシステム、装置および方法 |
代理人 | 鮫島 睦 |
代理人 | 大畠 康 |
代理人 | 山崎 敏行 |