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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1347603
審判番号 不服2017-17867  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-01 
確定日 2019-01-04 
事件の表示 特願2016-137455号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-179276号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年8月23日(優先権主張 平成18年9月27日(以下、「優先日」という。))に出願された特願2007-217093号の一部を、平成24年8月8日に新たな特許出願(特願2012-176309号)とし、さらにその一部を平成25年12月20日に新たな特許出願(特願2013-263501号)とし、さらにその一部を、平成27年2月18日に新たな特許出願(特願2015-29687号)とし、さらにその一部を、平成28年7月12日に新たな特許出願としたものであって、
平成29年6月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対して、平成30年7月25日付けで当審において拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年9月25日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Fは、本願発明を分説するため当審で付与した。)。

(本願発明)
「【請求項1】
A 透明部材で形成される遊技盤を遊技機枠に設けた所定部位に嵌合することによって、前記遊技盤を前記遊技機枠に固定し得るようにした弾球遊技機において、
B 前記遊技盤の裏面側に不透明部材で形成されるベース部材を配置し、
C 前記ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け、
D 前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被嵌合部を重なり合わせた状態で、前記所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた爪部との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合し、
E 前記被嵌合部の前後方向の板厚を、前記遊技盤の側部の板厚よりも薄くしたことを特徴とする
F 弾球遊技機。」

3 拒絶の理由
当審拒絶理由は、平成29年12月1日に提出された手続補正書により補正がされた請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献:特開平9-711号公報

4 引用文献に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平9-711号公報(以下、同じく「引用文献」という。)には、「遊技機」の発明に関し、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)
「【0008】パチンコ機Pは、四角く枠組みした外枠8と、その外枠8前面に回動自在に蝶着した前枠7とで概略構成されており、前記前枠7に遊技板1と機構板20及びその他殆どの部品が取り付けられている。前記前枠7は、四角い窓穴9を有する額縁形状であって、図1に示したように、窓穴9の周縁を囲うように遊技板取付枠10が裏側に設けられており、該遊技板取付枠10に設けた公知の回転型クランプ11で遊技板1の周縁を締め付けて固定する。
【0009】一方、遊技板1は合成樹脂製であって、図2に示すように、裏側が硬質塩化ビニル低発泡樹脂からなる発泡樹脂層12で、表側が透明な非晶性ポリエステル樹脂からなる透明樹脂層13であり、両層12,13のトータル厚みを通常の遊技板とほぼ同程度に設定してある。透明樹脂層13を構成する非晶性ポリエステル樹脂は障害釘5,5…や風車6,6…などを打ち込んでも割れない特質があり、従来のベニヤ板に似た性質を有する。また、透明樹脂層13の厚みは障害釘5,5…の打ち込み深さより若干大きく設定してある。従って、釘打ち箇所をポンチで刻印して障害釘5,5…や風車6,6…を打ち込むなど、従来通りの方法で遊技板1を作ることができ、且つ、日常の釘調整も可能である。」

(2)
「【0012】而して、遊技板1の正面には従来の遊技板と同様にガイドレール15でほぼ円形の遊技領域1aが形成されていて、該遊技領域1a内に入賞装置4や多数の障害釘5,5…或いは風車6,6…などが取り付けられている。入賞装置4の取付位置にはパチンコ球を導くための通孔16が透明樹脂層13と発泡樹脂層12を貫くように形成されている。該通孔16は透明樹脂層13と発泡樹脂層12を結合させた状態で穿設するか、或いは、両者を結合する前に夫々に加工して後に合致させるようにしてもよい。後者の場合、発泡樹脂層12は、金型成型時に通孔16を加工することができる。なお、遊技板1のアウト球口17や賞球排出口18も同様である。
【0013】図3に示したパチンコ機Pは、遊技用表示パネル2の前面にある透明樹脂層13に障害釘5,5…と風車6,6…が打ち込んであり、遊技用表示パネル2の前面が全てパチンコ球の流路Rになっている。なお、図3では全ての入賞装置4を遊技用表示パネル2の外周囲に設けてあるが、後述する図4のように遊技用表示パネル2に前記通孔16を設けてそこに入賞装置4を設置することもできる。そしてそのようにすれば遊技用表示パネル2で遊技領域1aの全てをカバーすることができ、壮大なスケールで遊技が可能になる。例えば、馬のキャラクターを使って競争させる競馬ゲームのような場合、遊技領域1aのガイドレール15沿いに馬のキャラクターを移動させれば、従来の遊技より遙かに迫力が増す。また、複数の数字や図形を組み合わせるスロットマシーンタイプのゲームでも遊技領域1aの全面を使用すれば表示が大きくなって見易くしかも迫力が出る。
【0014】以上、本発明を実施例について説明したが、もちろん本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、実施例では遊技用表示パネル2として液晶を例示したが、それ以外にもLED、通常のブラウン管、プラズマディスプレイなど、数字や図柄を平面上で視覚的に変化させる機能があればどのようなものでもよい。また、実施例は透明樹脂層13と発泡樹脂層12を同形状にして両者を接合するようにしたが、例えば図4に示したように発泡樹脂層12を遊技板1の厚みに形成し、該発泡樹脂層12の前面に凹部19を設けてそこに透明樹脂層13を嵌め込むようにしてもよい。」

(3)
「【0017】
【発明の効果】本発明は、遊技用表示パネルの前面に障害釘や風車を打ち込んでパチンコ球の流路を形成することができるため、遊技用表示パネルを遊技領域一杯にまで拡張することができる。また、表示サイズを大きくしない場合でもパチンコ球の流路に従来にない変化を持たせることが可能になる。そしてさらに、遊技板は少なくとも周縁部のトータル厚みが通常の遊技板とほぼ同程度に設定されているため、既存のパチンコ機にもそのまま装着することが可能である、などの効果がある。」

(4) 図面の図1の記載より、遊技板取付枠10は裏側に段差を有し、透明樹脂層13の周縁は発泡樹脂層12の周縁とともに遊技板取付枠10の裏側の段差に位置し、
透明樹脂層13の周縁と発泡樹脂層12の周縁を重なり合わせた状態で、該遊技板取付枠10に設けた回転型クランプ11で、発泡樹脂層12の周縁の側部裏側を固定して、透明樹脂層13が遊技板取付枠10の裏側の段差に位置して固定されることが看取できる。

【図1】


(5) 図面の図2の記載より、透明樹脂層13の周縁と重なり合う発泡樹脂層12の周縁の裏側が、平坦であることが看取できる。

【図2】


そして、上記記載事項(1)?(3)、図面に記載された事項(4)?(5)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?fは、本願発明のA?Fに対応させて当審にて付与した。また、丸括弧内に示された段落番号は、引用文献における引用箇所を示す。)。

(引用発明)
「a 透明な非晶性ポリエステル樹脂からなり、障害釘5や風車6などを打ち込む透明樹脂層13(【0009】、【0013】)を、前枠7に設けられた遊技板取付枠10の裏側の段差に位置させて固定した(【0008】、図1)、パチンコ機Pであって(【0008】)、

b 透明樹脂層13の裏側に、硬質塩化ビニル低発泡樹脂からなる発泡樹脂層12を同形状にして接合し(【0009】、【0014】)、

c、d 前枠7は、前枠7の窓穴9の周縁を囲うように遊技板取付枠10が裏側に設けられ(【0008】)、
遊技板取付枠10は裏側に段差を有し(図1)、
透明樹脂層13の周縁と重なり合う発泡樹脂層12の周縁の裏側は、平坦であるとともに(図2)、
透明樹脂層13の周縁は発泡樹脂層12の周縁とともに遊技板取付枠10の裏側の段差に位置し(図1)、
透明樹脂層13の周縁と発泡樹脂層12の周縁を重なり合わせた状態で、(図1)、該遊技板取付枠10に設けた回転型クランプ11で、発泡樹脂層12の周縁の側部裏側を締め付けて固定し(【0008】、図1)、

e 発泡樹脂層12、透明樹脂層13のトータル厚みを通常の遊技板とほぼ同程度に設定し(【0009】)、既存のパチンコ機にもそのまま装着することを可能とし(【0017】)、透明樹脂層13の厚みは障害釘5,5…の打ち込み深さより若干大きく設定してある(【0009】)、

f パチンコ機P(【0008】)。」

3 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを分説にしたがって対比する。

(a)引用発明の構成aの「透明な非晶性ポリエステル樹脂からなり、障害釘5や風車6などを打ち込む」「透明樹脂層13」、「固定した」、「弾球遊技機」は、それぞれ本願発明の「透明部材で形成される遊技盤」、「固定し得るようにした」、「弾球遊技機」に相当する。
してみると、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aと「透明部材で形成される遊技盤を」「固定し得るようにした弾球遊技機」である点で共通する。

(b)引用発明の構成bの「裏側に」、「発泡樹脂層12」、「接合し」はそれぞれ本願発明の「裏面側に」、「ベース部材」、「配置し」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bと「遊技盤の裏面側にベース部材を配置」する点で共通する。

(c)本願発明の、「前記ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け、」との構成について、当該構成における「一部のみ」との事項は、「一部のみ」「平坦」なのか、「一部のみに」「被嵌合部」が「設け」られているのか、必ずしも定かではない。
しかし、
・本願発明の上記構成の「一部のみ」の後ろには、「に」と付されており、当該「一部のみに」との修飾語が係る語句は、動詞(の連用形)である「設け」であること解するのが相当であること、
・本願の図面をみると、図10における、ベース部材をなす表示枠部材21には、被嵌合部である平坦部217a(合計2箇所)のほかにも平坦部が存在していること(図中左上の符号「28」が指し示す付近を参照)、
からみて、「一部のみ」であるのは、「被嵌合部」であると解するのが相当である。
また、平成30年9月25日に審判請求人より提出された意見書の「2.本願発明が特許されるべき理由(2-1)本願発明の説明(b)」においても、
「・・・とりわけ、ベース部材における遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに設けた被嵌合部が、遊技盤の側部と重なり合った状態で遊技機枠に設けた嵌合溝部に嵌合するため、遊技盤を被嵌合部と共に遊技機枠に対してより確実に強固に固定することができる。」(下線は当審で付した。)
との主張がなされており、当該主張からみても、上記理解に誤りはないといえる。

さらに、本願発明の「領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け」との記載における「平坦な被嵌合部」とは、「領域の一部のみ」に設けられた「被嵌合部」そのものが「平坦」であればよいのであって、上記「領域の一部」以外の「領域の他部」が「平坦」であってはならないなどと解するべき事情もなければ、上記「領域の一部」と「領域の他部」が地続きの平坦であってはならないとか、両者の間に見た目の区別が付かなければならないなどと解するべき事情もない。

上記理解に基づいて、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の構成c、dの「透明樹脂層13の周縁」のうちの側部は、本願発明の「遊技盤の側部」に相当する。そして、引用発明の構成c、dの「透明樹脂層13の周縁」のうちの側部と「重なり合う発泡樹脂層12の周縁」は、本願発明の構成Cの「ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域」に相当する。
また、引用発明の構成c、dによれば「透明樹脂層13の周縁と重なり合う発泡樹脂層12の周縁の裏側は、平坦」であり、「遊技板取付枠10に設けた回転型クランプ11で、発泡樹脂層12の周縁の側部裏側を締め付けて固定」しているのだから、「発泡樹脂層12の周縁の側部裏側」のうち、回転型クランプ11が固定している部分は、本願発明の構成Cの「ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部」に設けられた「平坦な被固定部」であることが明らかである。

してみると、引用発明の構成c、dは、本願発明の構成Cと、
「前記ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部に平坦な被固定部を設け」る点で共通する。

(d)引用発明の構成c、dの「透明樹脂層13の周縁」のうちの側部が、本願発明の「遊技盤の側部」に相当することは、上記(c)にて説示のとおりである。
また、引用発明の構成c、dの「透明樹脂層13の周縁と発泡樹脂層12の周縁を重なり合わせた状態」は、「透明樹脂層13の周縁」のうち側部と「発泡樹脂層12の周縁」の側部も重なり合わせた状態となっていることが明らかであるから、本願発明の構成Dの「前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材」「を重なり合わせた状態」に相当する。
また、引用発明の構成c、dの「発泡樹脂層12の周縁の側部裏側」のうち、回転型クランプ11が固定している部分は、本願発明の構成Dの「ベース部材の前記被嵌合部」と「ベース部材の被固定部」である点で共通する。

してみると、引用発明c、dは、本願発明の構成Dと、
「前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被固定部を重なり合わせた状態で、固定部に固定する」点で共通する。

(e)引用発明の構成fの「パチンコ機P」は本願発明の「弾球遊技機」に相当する。
引用発明の構成fは、本願発明の構成Fに相当するものである。

そうすると、上記(a)?(f)によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「A′透明部材で形成される遊技盤を固定し得るようにした弾球遊技機において、
B′前記遊技盤の裏面側にベース部材を配置し、
C′前記ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部に平坦な被固定部を設け、
D′前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被固定部を重なり合わせた状態で、固定部に固定する、
F 弾球遊技機。」

(相違点1)
構成A、C、Dにおける、「透明部材で形成される遊技盤」の固定について、
本願発明は、「遊技盤を遊技機枠に設けた所定部位に嵌合することによって、前記遊技盤を前記遊技機枠に固定し得るようにした弾球遊技機において」、「ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け、前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被嵌合部を重なり合わせた状態で、前記所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた爪部との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合」するのに対し、
引用発明では、「透明樹脂層13を、前枠7に設けられた遊技板取付枠10の裏側の段差に位置させて」、「透明樹脂層13の周縁と発泡樹脂層12の周縁を重なり合わせた状態で、該遊技盤取付枠10に設けた回転型クランプ11で、発泡樹脂層12の周縁の側部裏側を締め付けて固定」しているものの、遊技機枠への嵌合による固定といえるかどうか明らかでない点。

(相違点2)
構成Bについて、本願発明では、ベース部材は「不透明部材で形成される」のに対し、引用発明の「硬質塩化ビニル低発泡樹脂から」なる「発泡樹脂層12」(ベース部材)は、不透明部材といえるか否か不明である点。

(相違点3)
構成Eについて、本願発明では、「被嵌合部」の「前後方向の板厚を、前記遊技盤の側部の板厚よりも薄くした」のに対し、引用発明では、「発泡樹脂層12の周縁の側部」(被固定部)の板厚と「透明樹脂層13の周縁」のうち側部(遊技盤の側部)の板厚がそのような関係にあるのか否か不明である点。

4 判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)(構成A、C、D)
遊技盤を遊技機枠に設けた所定部位に嵌合することによって、前記遊技盤を前記遊技機枠に固定し得るようにし、
遊技盤の裏面側の側部の領域のみに平坦な被嵌合部を設け、
遊技盤の側部を、前記所定部位にあって爪部との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する嵌合溝部に嵌合することで遊技盤を固定する手法が、例えば
特開2005-305145号公報(特に、【0031】、【0038】や図11、12、17等に記載された、遊技盤15(遊技盤)を本体枠13(遊技機枠)に設けた所定部位に嵌合することによって、遊技盤15(遊技盤)を本体枠13(遊技機枠)に固定し得るようにし、遊技盤の裏面側の側部の領域のみに平坦な被嵌合部を設け、遊技盤15(遊技盤)の側部を、前記所定部位にあって係止爪94(爪部)との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する嵌合溝部に嵌合する態様を参照。)や、
特開2005-304548号公報(特に、【0007】、【0009】や図1、図3、図4等に記載された、遊技盤110(遊技盤)を可動枠75(遊技機枠)に設けた所定部位に嵌合することによって、前記遊技盤110を前記可動枠75(遊技機枠)に固定し得るようにし、遊技盤110の裏面側の側部の領域のみに平坦な被嵌合部を設け、遊技盤の側部を、前記所定部位にあって遊技主体受部98(爪部)との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する嵌合溝部に嵌合する態様を参照。)
にみられるように従来より周知の手法である。

また、遊技盤の側部を固定するにあたり、所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネよりも前よりに設けられた爪部との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する被嵌合部に嵌合することもまた、
特開2005-304548号公報(特に、【0009】や図1、図3等に記載された、遊技盤110(遊技盤)を、前側に押圧する板ばねにより構成された遊技主体押圧部97(前後方向に弾性変形可能なバネ)と当該遊技主体押圧部97(バネ)よりも前よりに設けられた遊技主体受部98(爪部)との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する被嵌合部に嵌合する態様を参照。)や、
特開2005-168679号公報(特に、【0016】や図4、図6等に記載された、遊技盤4(遊技盤)を、遊技盤4を前方へ押すバネ板31(前後方向に弾性変形可能なバネ)と当該バネ板31(バネ)よりも前よりに設けられた当接部30(爪部)との間に形成され、上方からみた平面視において側方が開口する被嵌合部に嵌合する態様を参照。)
にみられるように周知である。

さらに、遊技盤の側部を固定するにあたり、遊技盤の側部を、所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた部材との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合させることもまた、例えば、特開2003-126392号公報(特に、【0012】?【0013】や、図7等における、遊技盤10(遊技盤)の側部を、ガタつき防止用の板バネ67(前後方向に弾性変形可能なバネ)と当該板バネ67(バネ)の前方に設けられた爪部69との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合させる態様を参照。)や、
特開2005-237665号公報(特に【0032】?【0035】や図5等における、遊技盤1(遊技盤)の側部を、弾性を有し遊技盤1を押圧して固定する金属製の挟持部材161(前後方向に弾性変形可能なバネ)と当該バネの前方に設けられた規制板124との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合させる態様を参照。)や、
特開2006-136476号公報(特に、図1を当業者がみれば、遊技盤の側部を、所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた部材との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合させる構造であることは明らかである。)
にみられるように周知である。

これらのことを考慮すれば、引用発明における「透明樹脂層13の周縁」のうちの側部(遊技盤の側部)とそれに重なり合う「発泡樹脂層12」(ベース部材)の「周縁」の「平坦」(平坦部)の固定対象を、遊技機枠に設けた所定部位とするとともに、回転型クランプ11による固定に代えて、これら周知の手法を以て固定し、
「ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け、
前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被嵌合部を重なり合わせた状態で、前記所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた爪部との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合」することは、当業者が適宜なしうることである。

なお、本願発明の「領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け」との記載における「平坦な被嵌合部」とは、「領域の一部のみ」に設けられた「被嵌合部」そのものが「平坦」であればよいのであって、上記「領域の一部」と「領域の他部」が地続きの平坦であってはならないとか、両者の間に見た目の区別が付かなければならないなどと解するべき事情がないことは、上記「3 本願発明と引用発明の対比(c)」にて説示のとおりであるが、仮にそのようにいうことができないとしても、裏面側の側部の領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設け、当該領域の一部を、他の領域と区別が付くようにすることもまた、例えば上記特開2005-237665号公報(特に【0036】や図9-図11等における、内側段部170を境に形成された、平坦な被狭持部169等を参照。)にみられるように周知の事項であり、引用発明に対して、回転型クランプ11による固定に代えて、上記周知の手法を以て固定する際に、被嵌合部をそのようにすることもまた、当業者が適宜になしうることである。

(相違点2について)(構成B)
まず、本願発明の構成Bにおける「ベース部材」における「不透明」の定義について、本願の明細書をみてみる。すると、【0025】?【0026】には、
「また、下側の表示不能領域92及び遊技領域9から外れた領域は、遊技盤3を透して後方が視認できないように、ベース部材をなす表示枠部材21により隠蔽される。
・・・略・・・
表示枠部材21は、不透明(半透明を含む)の合成樹脂製で形成されるとともに、・・・」(下線は当審で付した。)
と記載されている。そうすると、本願発明の構成Bにおける「ベース部材」に関する「不透明」とは、半透明の状態も含まれるものということができる。

一方、発泡樹脂は一般に、樹脂中にガスを細かく分散させて発泡状(フォーム)または多孔質状に成形された樹脂であって、樹脂そのものの性状が透明であっても、内部に分散した気泡が光を乱反射させるために透明な成形品が得られず、光の透過性は半透明にとどまることが技術常識であって、引用発明の構成bの「硬質塩化ビニル低発泡樹脂から」なる「発泡樹脂層12」(ベース部材)が不透明(半透明を含む)となることは、当業者にとって明らかなことである。
してみると、上記相違点2は実質的には相違点とはいえないものである。
(相違点3について)(構成E)
(1)引用文献の図1をみると、発泡樹脂層12(ベース部材)の板厚が透明樹脂層13(遊技盤)の板厚よりも薄い態様をみることができ、当該図面をもとに、発泡樹脂層12(ベース部材)の板厚を透明樹脂層13(遊技盤)の板厚よりも薄くし、以て本願発明の相違点3の構成をなすことは、当業者が適宜なしうることである。

(2)仮にそのようにいえないとしてさらに検討してみる。
引用発明は、その構成eによれば、発泡樹脂層12(ベース部材)、透明樹脂層13(遊技盤)のトータル厚みを通常の遊技板とほぼ同程度に設定するのだから、発泡樹脂層12(ベース部材)及び透明樹脂層13(遊技盤)の両者の関係は、一方の板厚を厚くしていけば他方の板厚が薄くなる関係にあるということができる。
一方、引用発明の透明樹脂層13(遊技盤)は、同発明の構成aによれば、障害釘5や風車6などを打ち込み、同構成eによれば、透明樹脂層13の厚みを障害釘5,5…の打ち込み深さより若干大きく設定するのだから、透明樹脂層13(遊技盤)には障害釘5,5…の打ち込み深さより大きい厚みが求められていることが明らかである。さらに、障害釘の打ち込みに当たり、遊技盤に対して釘が抜けたり回転したりすることがなく確実に保持されるように、保持強度が確保される打ち込み深さで釘を打ち込むことが技術常識であり、遊技盤が合成樹脂であったとしても、保持強度が確保される打ち込み深さで釘を打ち込む必要があることは技術常識である(例えば、特開平4-354960号公報の【0005】には、「しかしながら、合成樹脂製の成形体からなる基盤に釘を打つと、前記成形体の厚さが十分でないときには釘を保持する力が十分得られず、打ち込まれた釘が不安定になったり、打込部に亀裂が生じ基盤自体の強度が低減する虞れがある。」と記載されている。)。そうすると、引用発明において、透明樹脂層13(遊技盤)に対し、釘が確実に保持される打ち込み深さを超えた板厚を確保することは、当業者が当然考慮する設計的事項というべきであって、その結果として、引用発明の透明樹脂層13(遊技盤)の板厚が厚くなり、発泡樹脂層12(ベース部材)の板厚が透明樹脂層13(遊技盤)の板厚よりも相対的に薄くなり、以て本願発明の相違点3の構成をなすことは、当業者が適宜なしうる設計的事項である。

したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知の技術に基づいて容易に想到することができたものである。

5 請求人の主張及び本願発明が奏する効果について

(1) 審判請求人は、平成30年9月25日提出の意見書において、
引用文献1-4(そのうち2-4は、周知の技術の例示である。)には、本願発明の発明特定事項「前記ベース部材における前記遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに平坦な被嵌合部を設けた」点、及び「前記遊技盤の前記側部を、前記側部の裏面に前記ベース部材の前記被嵌合部を重なり合わせた状態で、前記所定部位にあって前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた爪部との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合した」について記載も示唆もなければ、上記効果のうちとりわけ
「(b)遊技盤の側部を、当該側部の裏面にベース部材の被嵌合部を重なり合わせた状態で、前後方向に弾性変形可能なバネと当該バネの前方に設けられた爪部との間に形成され側方が開口する嵌合溝部に嵌合したことにより、遊技盤の側部を嵌合溝部に固定することができる。とりわけ、ベース部材における遊技盤の側部の裏面と重なり合う領域の一部のみに設けた被嵌合部が、遊技盤の側部と重なり合った状態で遊技機枠に設けた嵌合溝部に嵌合するため、遊技盤を被嵌合部と共に遊技機枠に対してより確実に強固に固定することができる。」
を奏し得るような構成についての記載もなければ示唆もない旨を主張している。

しかし、本願発明が、当業者が引用発明及び周知の技術に基づいて容易に想到することができたものであることは、上記「2 本願発明」乃至「4 判断」にて説示のとおりであって、(b)として主張された効果もまた、引用発明及び周知の技術から、当業者が予測しうる効果である。

(2) また、本願発明が奏する作用効果についてさらに検討してみても、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得るものであって、格別のものということはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-31 
結審通知日 2018-11-06 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2016-137455(P2016-137455)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 石井 哲
蔵野 いづみ
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 横堀 芳徳  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 竹沢 荘一  

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