• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1347616
審判番号 不服2018-3914  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-20 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2016-8388「回転駆動装置を備える設備および運転方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月28日出願公開、特開2016-136022、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月20日(パリ条約による優先権主張2015年1月23日、(AT)オーストリア共和国)の出願であって、平成28年12月16日付け(発送日:平成28年12月20日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成29年6月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年11月10日付け(発送日:平成29年11月21日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成30年3月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。
「この出願については、平成28年12月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由2(特許法第29条第2項について)
・請求項1?3、6?12
・引用文献1

・請求項4、5及び13
・引用文献1、3及び4

引用文献一覧
1.特開昭59-190452号公報
3.特開平8-74591号公報公報
4.特開2007-120382号公報」

2.平成28年12月16日付け拒絶理由通知書の概要
平成28年12月16日付け拒絶理由通知書(発送日:平成28年12月20日)の概要は以下の通りである。

「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由2(進歩性)について
・請求項1?3、6?10、12?16
・引用文献1

・請求項4、5、7?11、16
・引用文献1?4

引用文献一覧
1.特開昭59-190452号公報
2.特開2000-87778号公報
3.特開平8-74591号公報
4.特開2007-120382号公報」

第3 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、平成30年3月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された以下のとおりのものと認める。(【請求項1】の【数1】として記載される公式は、平成30年3月20日の手続補正の【請求項1】の【数1】と表記は異なるものの、内容は同じである。)

「 【請求項1】
回転駆動装置(2)を備える設備を運転する方法であって、前記設備(1)の出力の変化の値の特性は少なくとも一つのパラメータを測定することおよび/または計算することにより提供され、前記設備の前記出力の変化が実質的に補償されるように、
- 前記回転駆動装置(2)が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して開ループおよび/または閉ループ制御され、および/または、
- 前記回転駆動装置(2)の負荷が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して変更され、
前記回転駆動装置(2)によって駆動される軸(6)の回転のパラメータの特性が測定され、測定信号は低域通過フィルタ(8)を用いてフィルタをかけられ、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性が、前記測定されたパラメータから計算され、
前記軸の回転速度(N)および/または角速度(W)が、前記回転駆動装置(2)によって駆動される前記軸(6)の回転の前記パラメータの特性として測定され、
負荷変動値(ΔP)が、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に使用され、
【数1】

ΔP=Jω(dω/dt)

の公式により計算され、ここでJはすべての移動される質量の入力からの有効な慣性モーメントを表し、ωは前記軸の角速度を表す
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
燃料バルブ(3)が、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して開ループおよび/または閉ループ制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
載荷圧力の調節のための調節要素としてのスロットルバルブ(4)、バイパスまたはウエストゲートが、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して開ループおよび/または閉ループ制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの点火時間が、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して変更されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記回転駆動装置(2)の少なくとも一つのシリンダ(5)の点火が、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して一時中断されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
負荷変動値(ΔP)が、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に使用されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記回転駆動装置(2)によって駆動される前記軸(6)の回転のパラメータの特性が、前記回転駆動装置(2)のクランクシャフトで測定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
発電機が前記回転駆動装置(2)を用いて駆動されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに従って運転される回転駆動装置(2)、および、設備(1)の開ループ制御および/または閉ループ制御のための制御ユニット(9)を備える設備であって、
前記制御ユニット(9)が入力インターフェイス(10)を有し、前記制御ユニット(9)により、前記設備(1)の出力の変化の値の特性および少なくとも一つのパラメータが転送可能であり、前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性は前記少なくとも一つのパラメータから決定可能であり、その中で前記制御ユニット(9)は、
? 前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して、前記回転駆動装置(2)を開ループおよび/または閉ループ制御し、および/または、
? 前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性に依存して、前記回転駆動装置(2)の負荷を変更し、
前記設備(1)の前記出力の変化が実質的に補償されるように、設計されていることを特徴とする設備。
【請求項10】
前記回転駆動装置(2)によって駆動される発電機が提供されることを特徴とする請求項9に記載の設備。
【請求項11】
前記回転駆動装置(2)はガスエンジンであることを特徴とする請求項9又は10に記載の設備。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開昭59-190452号公報)には、「ディーゼルエンジンの回転数一定制御方式」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア 「この発明は発電機などを駆動するディーゼルエンジンの回転数を負荷変動にかかわらず一定に制御するための回転数制御方式に関する。この種の制御方式ではディーゼルエンジンにかかる負荷が急に変動した時に、発電機の出力周波数の変動を防止するため、ディーゼルエンジンのあらかじめ設定した回転数が変化しないように、また一時的に回転数が変化してもこの変化分が速やかに零に収束し最終的には回転数の変化がなくなるように制御システムを構成する必要がある。」(1ページ右欄1行ないし10行。)

イ 「この種の制御方式を説明する前に、まずこの種の制御方式が適用されるディーゼルエンジンシステムについて説明する。第1図はこの種のエンジンシステムをブロック線図で表わしたものであり、11はエンジンの回転数を制御するためのアクセル、12はエンジンに供給される燃料を増減するためのガバナ、13はエンジンのシリンダ部、14はエンジンに直結された負荷、15はエンジン及び負荷14を合計した慣性質量を表わしている。それぞれのブロックから次のような信号が出力される。すなわちアクセル11からはアクセル開度θ(rad)ガバナ12からは燃料供給量q(Kg/s)、エンジンシリンダ部13からはエンジンの出力トルクT_(E)(N-m)、負荷14からは負荷トルクT_(L)(N-m)、慣性質量15からは回転角速度ω(rad/s)が出力される。
次にそれぞれのブロック内の機構について説明する。アクセル11は通常アクセルペダルもしくはアクセルレバーの形態をとり、アクセル開度θを増減すればエンジンの回転角速度ωがこれに応じて増減するように構成されている。」(1ページ右欄12行ないし2ページ左上欄12行)

ウ 「エンジンシリンダ部13は、ガバナ12から燃料の供給qを受けて出力トルクT_(E)を出力するが、qとT_(E)は比例すると考えても差しつかえない。すなわ
ΔT_(E)=KΔq ・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
この場合、比例定数Kを1としておいても本発明の意図する目的に何ら支障を及ぼすものではないので、以下ではK=1として話を進めることにする。
ΔT_(E)=Δq ・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
次に負荷14は、エンジンに加わる負荷であり、例えばディーゼルエンジンによって駆動される発電機を想定している。そして発電機の電気的負荷量が変化した時は、この負荷14から出力される負荷トルクT_(L)が変化する。この変化をΔT_(L)とする。最後に慣性質量15はエンジン及び負荷14を合計した慣性質量であり、慣性モーメントがJ(Kgm^(3))であると仮定すれば次の関係式が成り立つ。
J(dω/dt)=T_(E)-T_(L) ・・・・・・・・・・・・(6)
いま微小な変化を考えこの式をラプラス変換すれば
JSΔω=ΔT_(E)-ΔT_(L) ・・・・・・・・・・・・・・(7)
ここでSは時間tをラプラス変換することによって生じるラプラスの微分演算子である。
これまで述べてきた関係を通常の自動制御理論で用いられるブロック線図で表すと本発明の制御方式が適用されるディーゼルエンジンシステムは第3図のように表わされる。」(2ページ右上欄17行ないし右下欄1行。)((6)式は、引用文献1と表記は異なるものの、内容は同じである。)

エ 「これを第5図で説明すれば、最初に負荷トルクがT_(L1)のときにはエンジンは負荷トルクと出力トルクが釣り合ったA点において一定の回転角速度で回転している。これから、負荷トルクがΔT_(L)増加してT_(L2)になったとするとアクセル開度がθ_(1)で一定ならば釣り合い位置がB点に移動する。この間の回転角速度の変化はAC間の長さで表されるため次の(11)式が成り立つ。
Δω=AC=ΔT_(L)tanα ・・・・・・・・・・・(11)
すなわち回転角速度はΔT_(L)tanαだけ減少するのである。
前述の如く従来のディーゼルエンジンシステムにおいては、アクセル開度を一定にしておいて負荷が変化すれば、これに応じてエンジンの回転角速度も変化するという欠点があった。
[発明の目的]
この発明は前述の欠点を除去して負荷がΔT_(L)変化しても回転角速度の変化Δωが零になるようにエンジン制御システムを構成し、より安定なディーゼルエンジンシステムを提供することを目的とする。」(3ページ左上欄7行ないし右上欄5行)

オ 「本発明の第2の実施例は、負荷トルクの変化ΔT_(L)を検出するかわりに回転角速度の変化Δωを検出して、その後で各時点における回転角速度の変化分に応じてアクセル開度をどれだけ調整すればよいかを計算しその計算値を出力することによってアクセル開度を調整する。すなわち第5図に示すように負荷トルクがT_(L1),アクセル開度がθ_(1)の時は第5図のA点が釣り合い位置となって運転されているが、ここで負荷がT_(L2)に増加すれば前述したように新しい釣り合い位置B点において運転が継続される。ここで回転角速度の変化Δωを検出してΔθ=BE=Δωcosαになるようにアクセル開度を増加すれば新しいアクセル開度はθ=θ_(2)になる。これに伴なって釣り合い位置はB点から一旦F点に移動した後、徐々に新しい釣り合い位置D点に移動しその結果回転角速度はもとのA点の回転角速度と同じになる。
これをブロック線図で表すと第7図のようになる。ところがこのブロック線図は回転角速度の変化をなくすために、回転角速度の変化分を検出しなければならないという本質的な矛盾があることを意味している。その結果このままでは負荷トルクが変化した時に回転角速度の変化を零にすることはできない。」(3ページ左下欄4行ないし右下欄7行)

カ 「そこでこの発明では負荷トルクが変化した瞬間には何らの制御も行わずある程度の時間が経過した後に回転角速度が変化したらその変化分に応じてアクセル開度の適正値を計算し、この計算値によりアクセルを調整するようにする。これをブロック線図で表わすと第9図のようになる。ここで回転角速度の検出は適当な時間間隔をおいてサンプラ16を通して行ない、回転角速度があらかじめ設定しておいた値よりも大きく変化したら前述したようにΔθ=Δωcosαによってアクセル開度の適正値を計算し、スイッチ17を閉じて制御信号をフィードバックすればよい。
ここで回転角速度を検出する時間間隔は、回転角速度に許容される変化分やディーゼルエンジン系の応答時定数により最適な値を選べばよい。この第2実施例ではこれまで述べたように、ある程度の回転角速度の変化分は許容しなければならないが、一般に回転角速度の検出は負荷トルクの検出に比べて容易であるので、システムを安価に構成することができる。」(3ページ右下欄26行ないし4ページ左上欄19行)

キ 「[発明の効果]
この発明によればアクセル,ガバナ,ディーゼルエンジン及びこのディーゼルエンジンによって駆動される発電機等の負荷からなるディーゼルエンジンシステムにおいて負荷が変動した時にこの変動分を検出して、これにシステムの特性から決まる定数を乗じて適正なアクセル開度を計算し、この計算値によりアクセル開度を変化させるように制御システムを構成したため、負荷が変動してもエンジン回転角速度は変化しないという効果が得られる。さらにこの発明の異なる制御方式によれば、前述のディーゼルエンジンシステムにおいて負荷が変動した結果生じる回転角速度の変化を検出し、この検出した値から適正なアクセル開度を計算し、この計算値によりアクセル開度を変化させるように制御システムを構成したため負荷が変動してもエンジン回転角速度は変化しないという効果が得られる。」(4ページ左下欄1行ないし18行)

ク 上記カ及び第9図の図示内容からみて、負荷トルクが変化し、ある程度の時間が経過した後に回転角速度が変化したらその変化分に応じてアクセル開度の適正値を計算し、この計算値によりアクセルを調整するようにすることは、少なくとも閉ループ制御でなされているといえる。

(2)引用発明
上記(1)の記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ディーゼルエンジンを備えるディーゼルエンジンシステムの制御方式であって、前記ディーゼルエンジンシステムの負荷トルクT_(L)の変化の値の特性はエンジン回転角速度ωを測定することにより提供され、前記ディーゼルエンジンシステムの前記負荷トルクT_(L)の変化が実質的に補償されるように、
前記ディーゼルエンジンが、前記ディーゼルエンジンシステムの前記負荷トルクT_(L)の変化の前記値の特性に依存して閉ループ制御され、
前記ディーゼルエンジンのエンジン回転角速度ωが測定される制御方式。」

2.引用文献3
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献3(特開平8-74591号公報)の段落【0020】ないし【0048】の記載からみて、当該引用文献3には、「ガスエンジン発電設備において、ノッキングが発生した場合は先ず点火時期を調整し、点火時期の調整だけで対応できない場合はエンジン出力を低下させること。」が記載されていると認められる。

3.引用文献4
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献4(特開2007-120382号)の段落【0041】及び【0048】の記載からみて、当該引用文献4には、「動力出力装置において、ストール発進を判定した時は点火時期を遅くすると共にエンジンの半分の気筒に対し気筒休止を指示し、気筒休止していない気筒に対する燃料噴射量を減量すること。」が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「ディーゼルエンジン」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「回転駆動装置(2)」に相当し、以下同様に、「ディーゼルエンジンシステム」は「設備」及び「設備(1)」に、「負荷トルクT_(L)」は「出力」に、「制御方式」は「方法」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「エンジン回転角速度ω」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「少なくとも一つのパラメータ」及び「軸(6)の回転のパラメータの特性」に相当する。また、前者の「回転速度(N)および/または角速度(W)」とは、「角速度(W)」という限りで一致する。そうすると、後者の「前記発電機の負荷トルクTLの変化の値の特性はエンジン回転角速度ωを測定することにより提供され、前記設備の前記負荷トルクT_(L)の変化が実質的に補償されるように」と前者の「前記設備(1)の出力の変化の値の特性は少なくとも一つのパラメータを測定することおよび/または計算することにより提供され、前記設備の前記出力の変化が実質的に補償されるように」とは、「前記設備(1)の出力の変化の値の特性は少なくとも一つのパラメータを測定することにより提供され、前記設備の前記出力の変化が実質的に補償されるように」という限りで一致する。
また、後者の「前記ディーゼルエンジンが、前記ディーゼルエンジンシステムの前記負荷トルクT_(L)の変化の前記値の特性に依存して閉ループ制御され」と前者の「- 前記回転駆動装置(2)が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して開ループおよび/または閉ループ制御され、および/または、
- 前記回転駆動装置(2)の負荷が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して変更され」とは、「前記回転駆動装置(2)が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して閉ループ制御され」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「回転駆動装置(2)を備える設備を運転する方法であって、前記設備(1)の出力の変化の値の特性は少なくとも一つのパラメータを測定することにより提供され、前記設備の前記出力の変化が実質的に補償されるように、
前記回転駆動装置(2)が、前記設備の前記出力の変化の前記値の特性に依存して閉ループ制御され、
前記回転駆動装置(2)によって駆動される軸(6)の回転のパラメータの特性が測定され、
前記軸の角速度(W)が、前記回転駆動装置(2)によって駆動される前記軸(6)の回転の前記パラメータの特性として測定される方法。」
である点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

[相違点1]
前者は「測定信号は低域通過フィルタ(8)を用いてフィルタをかけられ」るのに対し、後者は係る事項を備えていない点。

[相違点2]
前者は「前記設備(1)の前記出力の変化の前記値の特性が、前記測定されたパラメータから計算」され、そして「負荷変動値(ΔP)が、設備(1)の出力の変化の前記値の特性に使用され、
【数1】

ΔP=Jω(dω/dt)

の公式により計算され、ここでJはすべての移動される質量の入力からの有効な慣性モーメントを表し、ωは前記軸の角速度を表す」のに対し、後者はかかる構成を備えていない点。

相違点について検討する。
事案に鑑み、先ず相違点2について検討する。
引用文献1には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は記載されておらず、示唆されているともいえない。また、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、本願の優先日前に周知技術或いは技術常識であったともいえない。
そうすると、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得るものではない。
また、引用文献3の記載事項は「ガスエンジン発電設備において、ノッキングが発生した場合は先ず点火時期を調整し、点火時期の調整だけで対応できない場合はエンジン出力を低下させること。」である。そして、引用文献4の記載事項は「動力出力装置において、ストール発進を判定した時は点火時期を遅くすると共にエンジンの半分の気筒に対し気筒休止を指示し、気筒休止していない気筒に対する燃料噴射量を減量すること。」であるから、引用文献3及び引用文献4の記載事項は、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とは相違する。
そうすると、このような本願発明1の発明特定事項と相違する引用文献3及び引用文献4の記載事項を引用発明に適用しても、上記相違点2にかかる本願発明1の発明特定事項にはならない。
そして、引用文献3及び引用文献4には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

したがって、相違点1の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基いて、或いは引用発明及び引用文献3並びに引用文献4の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし11について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし11は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし11は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2ないし11は、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基いて、或いは引用発明及び引用文献3並びに引用文献4の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし11は、引用発明に基いて、或いは引用発明及び引用文献3並びに引用文献4の記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2016-8388(P2016-8388)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 粟倉 裕二
水野 治彦
発明の名称 回転駆動装置を備える設備および運転方法  
代理人 田中 拓人  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ