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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41M
管理番号 1347668
異議申立番号 異議2018-700296  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-10 
確定日 2018-11-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6211744号発明「感熱記録体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6211744号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6211744号の請求項1、2に係る特許を維持する。 特許第6211744号の請求項3?5についての異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6211744号の請求項1?5に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)6月16日(優先権主張 平成27年6月16日)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月22日にその特許権の設定登録がされ、同年10月11日に特許公報が発行され、その後、その特許について、平成30年4月10日付けで特許異議申立人水野智之(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年7月4日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月6日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年10月19日付けで意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6211744号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」というものである。

2 訂正の内容
本件訂正による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正された箇所に下線を付した。

(1)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に
「支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として下記一般式(化3)で表されるスルホン化合物及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、一般式(化3)で表されるスルホン化合物1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体。
【化3】

(式中、R^(2)及びR^(3)は,それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?6のアルキル基又はアルコキシ基、mは1?3の整数を表す。)
【化2】

」と記載されているのを、
「支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体。
【化2】

」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記一般式(化3)で表されるスルホン化合物1重量部に対し、一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?0.5重量部の割合で含有する請求項1に記載の感熱記録体。」と記載されているのを、
「前記4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し、一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?0.5重量部の割合で含有する請求項1に記載の感熱記録体。」に訂正する。

(3)訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項2
明細書の段落【0005】に
「 本発明者らは鋭意検討の結果、感熱記録層に特定の2種類の顕色剤を特定比で含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として下記一般式(化3)で表されるスルホン化合物及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、一般式(化3)で表されるスルホン化合物1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体を提供する。
【化3】

(式中、R^(2)及びR^(3)は,それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?6のアルキル基又はアルコキシ基、mは1?3の整数を表す。)
【化2】

」と記載されているのを、
「 本発明者らは鋭意検討の結果、感熱記録層に特定の2種類の顕色剤を特定比で含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン(下式(化4)で表されるスルホン化合物)及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体を提供する。
【化4】

【化2】

」に訂正する。

(7)訂正事項3
明細書の段落【0008】、【0009】及び【0010】を削除する。

(8)訂正事項4-1
明細書の段落【0012】、【0017】、【0018】、【0019】及び【0067】に
「一般式(化3)で表されるスルホン化合物」と記載されているのを、
「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」に訂正する。

(9)訂正事項4-2
明細書の段落【0017】に
「、スルホン化合物」と記載されているのを、
「、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-5〕について請求されたものである。

3 訂正の目的の適否
(1)訂正事項1-1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「下記一般式(化3)で表されるスルホン化合物」を「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」に減縮するものである。また、本件訂正1-2による訂正も、本件訂正前の請求項2について、上記訂正事項1-1と同じ事項の訂正を行うものである。
したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(2)訂正事項1-3?訂正事項1-5による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3?5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)訂正事項2、訂正事項4-1及び訂正事項4-2による訂正は、いずれも、訂正事項1-1及び訂正事項1-2による、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2における訂正にともない、これと整合するように、明細書の記載を改めたものといえる。
したがって、訂正事項2、訂正事項4-1及び訂正事項4-2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。

(4)訂正事項3による訂正は、訂正事項1-3?訂正事項1-5により、特許請求の範囲の請求項3?5が削除されたことにともない、これと整合するように、明細書の記載を改めたものといえる。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。

(5)むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。

4 新規事項の有無
(1)訂正事項1-1及び訂正事項1-2
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の【請求項5】には、「前記スルホン化合物が4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンである請求項1又は2に記載の感熱記録体。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項1-1及び訂正事項1-2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2)訂正事項1-3?訂正事項1-5
訂正事項1-3?訂正事項1-5による訂正は、請求項を削除するものであるから、訂正事項1-3?訂正事項1-5による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(3)訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1及び訂正事項4-2
訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1及び訂正事項4-2による訂正は、訂正事項1-1?訂正事項1-5による訂正と整合するように、明細書の記載を改めたものであるから、訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1及び訂正事項4-2による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9条で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

5 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1及び訂正事項1-2による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「下記一般式(化3)で表されるスルホン化合物」を「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」に減縮するものであるから、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1-3?1-5による訂正は、請求項を削除するものであるから、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4-1及び訂正事項4-2による訂正は、訂正事項1-1?訂正事項1-5による訂正と整合するように、明細書の記載を改めたものであるから、事実上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められることとなったので、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、請求項3?5は、本件訂正により削除された。
「【請求項1】
支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体。
【化2】

【請求項2】
前記4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し、一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?0.5重量部の割合で含有する請求項1に記載の感熱記録体。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
平成30年7月4日付けで通知した取消理由の概要は、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるというものである。

甲第1号証:特開2003-266946号公報
甲第3号証:特開昭58-82788号公報
甲第4号証:特開平10-217615号公報

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2003-266946号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に、下線を付した。以下の刊行物についても同様である。

(ア)「【請求項1】 支持体上に、無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分として含有する記録層を設けた感熱記録体において、該感熱記録層が下記一般式(1)で表される化合物1部に対して、下記一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物を0.01?1部含有することを特徴とする感熱記録体。
【化1】

(式中、R_(1)は炭素数1?4のアルキル基、アラルキル基、フェニル基或いは水素原子を表す。)
【化2】



(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた発色画像の保存安定性を有し、かつ発色感度にも優れた感熱記録体に関するものである。
【0002】
【従来技術】一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色の塩基性無色染料とフェノ-ル性化合物等の有機顕色剤とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダ-、充填剤、感度向上剤、滑剤及びその他の助剤を添加して得られた塗料を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サ-マルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レ-ザ-光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。感熱記録体は、ファクシミリ、コンピュ-タ-の端末プリンタ-、自動券売機、計測用レコ-ダ-等に広範囲に使用されている。近年、記録装置の多様化や高性能化の進展に伴って高速印字及び高速の画像形成も可能となってきており、感熱記録体の記録感度に対してより優れた品質が求められている。この要求を満たす方法として、染料と顕色剤にさらに増感剤を併用することが提案されている。例えば顕色剤がフェノ-ル系化合物からなる場合、p-ベンジルビフェニル(特開昭60-82382号)、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル(特開昭57-201691号)、ベンジルナフチルエ-テル(特開昭58-87094号)等が好適な増感剤として使用されている。しかし、増感剤等で記録感度を向上させた場合、記録画像の保存安定性が維持できないことが多い。具体的には、皮脂成分が付着したり、塩ビフィルム等のラップフィルムに含まれる可塑剤(DOP、DOA等)と接触すると画像濃度の著しい低下や消色が起こる等の欠点がある。さらに、レジ用紙やラベル、伝票類など用途が拡大するに伴い、包装材等に含まれる可塑剤、油脂類等に対して高い保存安定性が求められている。また、感熱記録体には、長期保存した後に印字すると発色濃度(再印字性)が低下することがあり、この問題への対応も求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、可塑剤等に対する高い安定性を有し、かつ高温高湿下に放置されても印字能力の低下が少なく再印字性の良好な感熱記録体を提供することを目的とする
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、支持体上に、無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分として含有する感熱発色層を設けた感熱記録体において、該感熱発色層が下記一般式(1)で表される化合物1部に対して、下記一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物を0.01?1部含有する感熱記録体に関する。
【0005】
【化3】

【0006】(式中、R_(1)は炭素数1?4のアルキル基、アラルキル基、フェニル基或いは水素原子を表す。)
【0007】
【化4】

【0008】一般に、染料前駆体と有機顕色剤が熱エネルギーによって融解し、混ざり合って発色体を形成する反応は、可逆反応であるために可塑剤等が画像と触れると消色してしまう。本発明では、一般式(1)で表される化合物に対し、一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物を特定の割合で感熱発色層中に含有することにより、画像安定性が高く、また再印字性の良好な感熱記録体が得られる。この理由は明らかでないが、染料前駆体および一般式(1)の化合物によって形成される発色体と、一般式(2)の化合物とが分子レベルで結合し、安定な発色体を形成するためと考えられる。」

(ウ)「【0009】
【発明の実施の形態】一般に感熱記録体は、無色ないし淡色の塩基性染料と顕色剤とをバインダーと共に各々分散し、必要に応じて増感剤や填料、紫外線吸収剤、耐水化剤及び消泡剤等の助剤を添加して塗料を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥することによって製造される。本発明では、一般式(1)で表される少なくとも1種類の化合物を有機顕色剤として含有する。一般式(1)において、R_(1)は増感効果を阻害しないような置換基であればよく、このような置換基としては炭素数1?4のアルキル基、アラルキル基、フェニル基或いは水素原子等が挙げられる。一般式(1)で表される化合物を具体的に例示すると以下に示す(1-1)?(1-11)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】さらに本発明では、一般式(2)で表される少なくとも1種類のウレアウレタン化合物を含有する。一般式(2)の化合物は、具体的に以下に例示することができる。
【0013】
【化7】

【0014】本発明において、一般式(2)で表される化合物は、特定の割合で含有されることにより安定効果を発揮すると考えられる。一般式(2)で表される化合物の含有量は、一般式(1)で表される顕色剤1部に対して少なすぎると安定効果が十分ではなく、多すぎても発色感度に支障がでる。本発明では、一般式(2)で表される化合物を一般式(1)で表される顕色剤1部に対して0.01?1部の割合で使用する。より好ましくは0.02?0.07部、さらには0.5部より少ないことが望ましい。本発明の感熱記録体に使用する無色ないし淡色の塩基性染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独または2種以上混合して使用してもよい。」

(エ)「【0023】
【実施例】以下に本発明の感熱記録体を実施例によって説明する。尚、説明中、部及び%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を表す。
【0024】実施例1
実施例1は、本発明の感熱記録体に、顕色剤として化合物(1-1)また、塩基性無色染料として3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ODB-2)、増感剤としてp-ベンジルビフェニル(PBB)、安定剤として化合物(2-2)を使用した例である。下記配合の顕色剤の分散液(A液)と塩基性無色染料分散液(B液)及び増感剤分散液(C液)をそれぞれ別にサンドグラインダーで平均粒子径1ミクロンになるまで湿式磨砕を行った。
A液(顕色剤分散液)
化合物(1-1) 6.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 18.8部
水 11.2部
B液(塩基性無色染料分散液)
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ODB-2) 2.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 4.6部
水 2.6部
C液(増感剤分散液)
p-ベンジルビフェニル(PBB) 4.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 18.8部
水 11.2部
D液(安定剤分散液)
化合物(2-2) 1.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 2.3部
水 1.3部
次いで下記の割合で分散液を混合、攪拌し、塗布液を調製した。
A液(顕色剤[化合物(1-1)]分散液) 36.0部
B液(塩基性無色染料[ODB-2]分散液) 9.2部
C液(増感剤[PBB]分散液) 34.0部
D液(安定剤[化合物(2-2)]分散液) 4.6部
カオリンクレー(50%分散液) 12.0部
上記各塗布液を50g/m^(2)の基紙の片面に塗布した後、乾燥を行い、このシートをスーパーカレンダーで平滑度が500?600秒になるように処理し、塗布量6.0g/m^(2)の感熱記録体を得た。
【0025】実施例2
実施例2は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。但し、分散液Dの調製に当たり、化合物2-2の代わりに化合物(2-1)を用いた。
実施例3
実施例3は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。但し、分散液Aの調製に当たり、顕色剤として化合物(1-2)を用いた。
実施例4
実施例4は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。但し、分散液Aの調製に当たり、顕色剤として化合物(1-6)を用いた。

(中略)

【0027】実施例1?4及び比較例1で得られた感熱記録体について、下記の方法で評価を行った。その結果を表1に記す。
<感熱記録体の評価>作製した感熱記録体について、大倉電気社製のTH-PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.38mj/dotで印字した。記録濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定した。
<耐可塑剤性の評価>紙管に塩ビラップ(三井東圧製ハイラップKMA)を1重に巻き付け、この上に前記プリンター(0.38mj/dot)により記録した感熱記録体を貼り付け、更にこの上に塩ビラップを3重に巻き付けたものを23℃、50%RHの雰囲気下に4時間放置した後、画像部のマクベス濃度を測定した。
【0028】
【表1】

【0029】表1から明らかなように、一般式(1)で表される化合物に対し一般式(2)で表される化合物を特定の割合で使用した本発明は、高い画像保存性と優れた再印字性を有することが示される。」

(オ)「【0030】
【発明の効果】本発明の感熱記録体は、保護層を設けなくとも耐可塑剤性などに対して高い画像安定性を有するため実用性が高い。」

イ 甲第1号証に記載された発明
上記記載事項アに基づけば、甲第1号証には、請求項1に記載された発明として、以下の発明が記載されていると認められる。
「支持体上に、無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分として含有する記録層を設けた感熱記録体において、該感熱記録層が下記一般式(1)で表される化合物1部に対して、下記一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物を0.01?1部含有することを特徴とする感熱記録体。
【化1】

(式中、R_(1)は炭素数1?4のアルキル基、アラルキル基、フェニル基或いは水素原子を表す。)
【化2】

」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲第3号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開昭58-82788号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「2.特許請求の範囲
電子供与性無色染料と下記一般式(I)で表わされる電子受容性化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料

上式中Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表わす。」(第1頁左下欄第3?10行)

イ 「 従つて本発明の目的は、電子供与性無色染料と組合わせ使用したときの発色濃度が十分で、しかもその他の具備すべき条件を満足した感熱記録材料を提供することである。
本発明の目的は電子供与性無色染料と、下記一般式(I)で表わされる電子受容性化合物を含有することを特徴とする感熱記録材料により達成された。

上式中Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を表わす。
上記一般式(I)においてRで表わされる置換基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、等がある。
本発明に係るフエノール化合物の特徴として以下のことがあげられる。
(1) 電子供与性無色染料との組合わせにより、高濃度の発色像を与え、かつ発色前のカブリも非常に少い。
(2) 発色像が安定であり、経時、湿度、光等による退色が非常に少い。
(3) 昇華性がほとんどなく安定である。
(4) 合成が容易であり、高収率で高純度のものが得られる。また原材料も安価である。
上記一般式(I)におけるRがアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ置換アルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基、アルコキシ置換アラルキル基、アルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基のものが好ましい。
上記の置換基のうち特にアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基が好ましく、その例としては炭素数6から20のアルキル基、炭素数7から20のアラルキル基、炭素数8から25のアルキル置換アラルキル基があげられる。
次に本発明に係る電子受容性化合物の具体例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
(1) 4-ヒドロキシフエニル-4’-n-ブチルオキシフエニルスルホン
(2) 4-ヒドロキシフエニル-4’-n-ヘキシルオキシフエニルスルホン
(3) 4-ヒドロキシフエニル-4’-n-オクチルオキシフエニルスルホン
(4) 4-ヒドロキシフエニル-4’-n-デジルオキシフエニルスルホン
(5) 4-ヒドロキシフエニル-4’-n-ドデシルオキシフエニルスルホン
(6) 4-ヒドロキシフエニル-4’-ベンジルオキシフエニルスルホン
(7) 4-ヒドロキシフエニル-4’-p-イソプロピルベンジルオキシフエニルスルホン
(8) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-フエネチルオキシフエニルスルホン
(9) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-エトキシエチルオキシフエニルスルホン
(10) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-ブトキシエチルオキシフエニルスルホン
(11) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-フエノキシエチルオキシフエニルスルホン
(12) 4-ヒドロキシフエニル-4’-o-クロロベンゾイルオキシフエニルスルホン
(13) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-t-ブチルベンゾイルオキシフエニルスルホン
(14) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-t-オクチルベンゾイルオキシフエニルスルホン
(15) 4-ヒドロキシフエニル-4’-ラウリロイルオキシフエニルスルホン
(16) 4-ヒドロキシフエニル-4’-デカノイルオキシフエニルスルホン
(17) 4-ヒドロキシフエニル-4’-ミリストイルオキシフエニルスルホン
(18) 4-ヒドロキシフエニル-4’-ステアリルオキシフエニルスルホン
(19) 4-ヒドロキシフエニル-4’-β-フエノキシプロピオニルオキシフエニルスルホン
(20) 4-ヒドロキシフエニル-4’-ヘキサデシルスルホニルオキシフエニルスルホン
(21) 4-ヒドロキシフエニル-4’-デシルスルホニルオキシフエニルスルホン
(22) 4-ヒドロキシフエニル-4’-p-トルエンスルホニルオキシフエニルスルホン
(23) 4-ヒドロキシフエニル-4’-p-イソプロピルベンゼンスルホニルオキシフエニルスルホン
(24) 4-ヒドロキシフエニル-4’-(4-p-t-ブチルフエノキシブチルオキシ)フエニルスルホン
(25) 4-ヒドロキシフエニル-4’-(4-p-t-アミルフエノキシブチルオキシ)フエニルスルホン
(26) 4-ヒドロキシフエニル-4’-(5-p-t-ブチルフエノキシアミルオキシ)フエニルスルホン
(27) 4-ヒドロキシフエニル-4’-(6-p-t-ブチルフエノキシへキシルオキシ)フエニルスルホン
等。」(第2頁左上欄第11行?第3頁右上欄第14行)

ウ 「実施例
(1) 試料1?3の作成
第1表に示した電子供与性無色染料5gを5%ポリビニルアルコール(ケン価度99%、重合度1000)水溶液50gとともにボールミルで一昼夜分散した。一方、同様に第1表に示した電子受容性化合物(フエノール類)20gを5%ポリビニルアルコール水溶液200gとともにボールミルで一昼夜分散し、両分散液を混合した後カオリン(ジヨージアカオリン)20gを添加してよく分散させ、さらにパラフインワツクスエマルジヨン50%分散液(中京油脂セロゾール#428)5gを加えて塗液とした。
塗液は50g/m^(2)の坪量を有する原紙上に固形分塗布量として6g/m^(2)となるように塗布し、60°Cで1分間乾燥の後線圧60kgW/cmでスーパーキヤレンダーをかけ塗布紙を得た。
(2) 試料4?6の作成
下記第1表に示した電子供与性無色染料5gを5%ポリビニルアルコール(ケン価度99%、重合度1000)水浴液50gとともにボールミルで一昼夜分散した。一方、同様に第1表に示した電子受容性化合物(フエノール類)20gを5%ポリビニルアルコール水溶液200gとともにボールミルで一昼夜分散し、さらに第1表に示した添加剤20gを5%ポリビニルアルコール水溶液とともにボールミルで一昼夜分散し、これら3種の分散液を混合した後カオリン(ジヨージアカオリン)20gを添加してよく分散させ、さらにパラフインワツクスエマルジヨン50g分散液(中京油脂セロゾール#428)5gを加えて塗液とした。
塗液は50g/m^(2)の坪量を有する原紙上に固形分塗布量として6g/m^(2)となるように塗布し、60°Cで1分間乾燥の後線圧60kgW/cmでスーパーキヤレンダーをかけ塗布紙を得た。
塗布紙は、フアクシミリにより加熱エネルギー4mJ/mm^(2)で加熱発色させ発色濃度を求めた。
発色した像は45°C、RH80%中に1週間保存し、未発色部分のカブリ増及び発色部分の像の残存率((処理後の濃度/処理前の濃度)×100)を求めることにより堅牢性の評価を行つた。さらに32,000luxの光の下に10時間保存して耐光性の評価を行つた。その結果を第1表に示す。
(3) 比較試料1?3の作成
試料1?6の作成に使用した処方と全く同一の処方で電子受容性化合物のみを第1表に示す本発明外の化合物に替えて同様の試験を行つた。結果を同じく第1表に示した。
第1表中のカブリ濃度は、0.13を越えると着しく商品価値を低下させる。また発色体の残存率も90%以上であることが好ましい。
この点からも、本発明の電子受容性化合物が極めてすぐれた感熱記録シートを与えることがわかる。

」(第4頁右下欄第13行?第6頁終行)

(3)甲第4号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開平10-217615号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】発色物質としての無色又は淡色のロイコ染料、加熱時に該染料と反応して発色せしめる顕色剤及び増感剤を含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色剤が一般式[1]
【化1】

で示される化合物であり、増感剤が一般式[2]
【化2】

(ただし、式中、R^(1)及びR^(2)は、水素又はメチル基である。)で示される化合物であることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】顕色剤が、4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンである請求項1記載の感熱記録材料。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱記録材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、地肌カブリが少なく、発色性に優れた感熱記録材料に関する。

(中略)

【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、発色濃度と発色感度が高く、発色性に優れ、しかも地肌カブリが少ない感熱記録材料を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、発色物質としてロイコ染料、顕色剤としてベンジルオキシヒドロキシジフェニルスルホン、増感剤としてジ(アリールオキシメチル)ベンゼンを用いた記録材料が、地肌カブリと発色性に優れることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)発色物質としての無色又は淡色のロイコ染料、加熱時に該染料と反応して発色せしめる顕色剤及び増感剤を含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、顕色剤が一般式[1]
【化3】

で示される化合物であり、増感剤が一般式[2]
【化4】

(ただし、式中、R^(1)及びR^(2)は、水素又はメチル基である。)で示される化合物であることを特徴とする感熱記録材料、(2)顕色剤が、4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンである第(1)項記載の感熱記録材料、及び、(3)増感剤が、1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼン、1,4-ジ(フェノキシメチル)ベンゼン、1,4-ジ(o-トリルオキシメチル)ベンゼン及び1,4-ジ(m-トリルオキシメチル)ベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である第(1)項又は第(2)項記載の感熱記録材料、を提供するものである。」

ウ 「【0011】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、感熱記録紙の性能は、次のようにして評価した。
(1)地肌カブリ
風乾後の感熱記録紙の地肌の濃度を、マクベス濃度計[RD-918型、マクベス社製]を用いて測定した。
(2)静的発色性
熱傾斜試験機[(株)東洋精機製作所製]を用い、サンプル加圧2kg/cm2、加熱時間5秒間、発色温度105℃の条件で発色を行ったのち、得られた画像の濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。
(3)動的発色性
感熱印字装置[(株)大倉電機製]を用い、印字電圧20V、パルス巾3msにて発色を行ったのち、得られた画像の濃度をマクベス濃度計を用いて測定した。
実施例1
3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン2.0重量部、10重量%ポリビニルアルコール水溶液4.3重量部及び水2.0重量部を混合し、サンドミル[五十嵐機械製造(株)製]を用いて3時間微粉砕して分散させ、発色物質分散液(A液)を調製した。また、4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン2.8重量部、10重量%ポリビニルアルコール水溶液12.0重量部及び水5.2重量部を混合し、同様にサンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させ、顕色剤分散液(B液)を調製した。さらに、1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼン2.8重量部、10重量%ポリビニルアルコール水溶液12.0重量部及び水5.2重量部を混合し、同様にサンドミルを用いて3時間微粉砕して分散させ、増感剤分散液(C液)を調製した。次いで、B液3.0重量部、C液3.0重量部、10重量%ポリビニルアルコール水溶液8.0重量部及びカオリン0.61重量部を混合し、顕色剤-増感剤分散液(D液)を調製した。A液0.58重量部及びD液10重量部を混合して、感熱発色層の塗布液を調製し、坪量65g/m^(2)の上質紙に、乾燥塗布量が約6g/m^(2)となるように塗布し、風乾して感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.06であり、静的発色性は1.08であり、動的発色性は1.10であった。
実施例2
実施例1におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに、1,4-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.06であり、静的発色性は1.04であり、動的発色性は1.04であった。
実施例3
実施例1におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに、1,4-ジ(o-トリルオキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.07であり、静的発色性は1.09であり、動的発色性は1.09であった。
実施例4
実施例1におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに、1,4-ジ(m-トリルオキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.06であり、静的発色性は1.08であり、動的発色性は1.11であった。
実施例5
実施例1におけるB液の4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンの代わりに、2-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.06であり、静的発色性は1.12であり、動的発色性は1.14であった。
実施例6
実施例5におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに1,4-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例5と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.07であり、静的発色性は1.02であり、動的発色性は1.05であった。
実施例7
実施例5におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに1,4-ジ(o-トリルオキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例5と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.07であり、静的発色性は1.14であり、動的発色性は1.13であった。
実施例8
実施例5におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりに1,4-ジ(m-トリルオキシメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例5と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.06であり、静的発色性は1.12であり、動的発色性は1.13であった。
比較例1
実施例1におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりにステアリン酸アミドを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.09であり、静的発色性は0.94であり、動的発色性は0.98であった。
比較例2
実施例5におけるC液の1,2-ジ(フェノキシメチル)ベンゼンの代わりにステアリン酸アミドを使用した以外は、実施例5と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.09であり、静的発色性は0.96であり、動的発色性は0.96であった。
比較例3
実施例1におけるB液の4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンの代わりに4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.10であり、静的発色性は0.97であり、動的発色性は0.99であった。
比較例4
実施例4におけるB液の4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホンの代わりに4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用した以外は、実施例4と同様にして感熱記録紙を得た。この感熱記録紙の評価を行ったところ、地肌カブリは0.10であり、静的発色性は0.99であり、動的発色性は1.00であった。実施例1?8及び比較例1?4の結果を、第1表に示す。
【0012】
【表1】

【0013】第1表の結果より、顕色剤として一般式[1]で表されるベンジルオキシヒドロキシジフェニルスルホンを用い、増感剤として一般式[2]で表されるジ(アリールオキシメチル)ベンゼンを用いた実施例1?8の本発明の感熱記録紙は、地肌カブリの値が小さく、白色度に優れ、静的発色性の値と動的発色性の値がともに大きく、高濃度に発色することが分かる。これに対して、増感剤として一般式[2]で表される化合物の代わりにステアリン酸アミドを用いた比較例1、2の感熱記録紙、及び、顕色剤として一般式[1]で表される化合物の代わりに4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いた比較例3、4の感熱記録紙は、いずれも地肌カブリの値が大きく、静的発色性の値と動的発色性の値がともに小さく、白色度においても、発色性においても劣っている。」

エ 「【0014】
【発明の効果】本発明の感熱記録材料は、地肌カブリが少なく白色度に優れ、静的及び動的発色性にも優れて高濃度に発色する。」

3 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「無色ないし淡色の塩基性無色染料」及び「有機顕色剤」は、その機能からみて、本件特許発明1の「無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料」及び「電子受容性顕色剤」に相当する。
そして、甲1発明の「記録層」は、「無色ないし淡色の塩基性無色染料」及び「有機顕色剤」を主成分として含有するものであり、「感熱記録体」を構成するものである。したがって、甲1発明の「記録層」は、本件特許発明1の「感熱記録層」に相当し、本件特許発明1の「無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する」との要件を満たしている。

(イ)甲1発明は、「支持体上に、無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分として含有する記録層を設けた感熱記録体」である。甲1発明の層構成及び文言から理解される機能からみて、甲1発明の「支持体」は「記録層」を支持する部材であるから、本件特許発明1の「支持体」に相当する。

(ウ)甲1発明の「感熱記録体」は、支持体上に、記録層を設けてなるものである。そうすると、甲1発明の「感熱記録体」は、本件特許発明1の「感熱記録体」に相当するといえる。
そして、甲1発明の「感熱記録体」は、本件特許発明1の「支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた」とする要件を満たしている。

(エ)甲1発明の「一般式(1)で表される化合物」は、その化学構造からみて、スルホン化合物であるといえる。また、本件特許発明1の「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」も、その化合物名からみて、スルホン化合物であるといえる。したがって、甲1発明の「一般式(1)で表される化合物」と本件特許発明1の「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」とは、「スルホン化合物」である点で共通する。
また、甲1発明の「一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物」は、その化学構造からみて、本件特許発明1の「一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物」に相当する。
そして、甲1発明の「一般式(1)で表される化合物」及び「一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物」は、その機能からみて、記録層に「電子受容性顕色剤」として含有されているといえる。

(オ)甲1発明の「感熱記録層が下記一般式(1)で表される化合物1部に対して、下記一般式(2)で表されるウレアウレタン化合物を0.01?1部含有する」ことと、本件特許発明1の感熱記録層が「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する」こととは、感熱記録層が「スルホン化合物1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する」点で共通する。

(カ)以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤としてスルホン化合物及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、スルホン化合物1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体。
【化2】

」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]スルホン化合物が、本件特許発明1では、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンであるのに対し、甲1発明では、下記一般式(1)で表される化合物

である点。

イ 判断
(ア)上記[相違点]について検討すると、甲第1号証の記載事項(イ)には「一般式(1)で表される化合物を具体的に例示すると以下に示す(1-1)?(1-11)が挙げられる」と記載されており、特に段落【0011】には、(1-8)として以下の化合物が例示されている。化合物(1-8)は、その構造式からみて、本件特許発明1における「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」に該当する。

そうすると、甲第1号証には、甲1発明の一般式(1)で表される化合物を、「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」とすることが示唆されていたといえる。

(イ)次に効果について検討する。
本件特許の明細書には、段落【0004】に「過酷な環境下における発色性能、特にバーコード読み取り適性が良好である感熱記録体を提供することを目的とする。」と記載されており、段落【0067】に「感熱記録層に顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を特定比で含有させた場合には、過酷な環境下における発色性能、特にバーコード読み取り適性に優れていることが分かる。」と記載されている。そして、段落【0066】の表1には、顕色剤としてBPS-MA3及びUU(合議体注:本件特許の明細書の段落【0045】の記載に基づけば、BPS-MA3は「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」であり、UUは「化学式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物」である。)を、本件特許発明1において特定する比で含有させた実験例である実施例1?5では、発色性能及び白紙部の耐熱性に優れ、バーコード読み取り適性が、いずれもBであったことが記載されている。また、BPS-MA3の代わりにBPS44(合議体注:本件特許の明細書の段落【0045】の記載に基づけば、BPS44は「4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン」である。)を用いた比較例3、TOMILAC KN(合議体注:本件特許の明細書の段落【0045】の記載に基づけば、TOMILAC KNは「4-ヒドロキシ-4'-n-プロポキシジフェニルスルホン」である。)を用いた比較例4では、バーコード読み取り適性がC又はDであったことが示されている。ここで、比較例3に用いられたBPS44及び比較例4に用いられたTOMILAC KNは、いずれも、甲第1号証における一般式(1)で表される化合物に包含される。
そして、本件特許の上記明細書の記載から把握されるように、電子受容性顕色剤として本件特許発明1における一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物とともに、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンとを含有する感熱記録体と、甲第1号証の一般式(1)で表される化合物であるものの4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンではない化合物とを含有する感熱記録体とでは、バーコード読み取り適性において効果の差が生じている。甲第1号証には、記載事項(ウ)に、「本発明では、一般式(1)で表される少なくとも1種類の化合物を有機顕色剤として含有する。一般式(1)において、R_(1)は増感効果を阻害しないような置換基であればよく、このような置換基としては炭素数1?4のアルキル基、アラルキル基、フェニル基或いは水素原子等が挙げられる。」との記載があるものの、一般式(1)で表される化合物の中から、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンを選択することにより、効果が優れたものとなることについて、何ら記載も示唆もされていない。
さらにすすんで、効果が優れたものとなることが、当業者にとって知られていたことであるかについて検討すると、甲第3号証には、電子供与性無色染料と組合わせて使用したときの発色濃度が十分な感熱記録材料が含有する電子受容性化合物であるフェノール化合物(第2頁左上欄第11?14行)として、「(6)4-ヒドロキシフエニル-4’-ベンジルオキシフエニルスルホン」(第2頁右下欄第5?6行)が挙げられている。また、「(1) 電子供与性無色染料との組合わせにより、高濃度の発色像を与え、かつ発色前のカブリも非常に少い。」(第2頁右上欄第11?13行)、「(2) 発色像が安定であり、経時、湿度、光等による退色が非常に少い。」(第2頁右上欄第14?15行)との特徴が挙げられることも記載されている。また、甲第4号証には、地肌カブリが少なく、発色性に優れた感熱記録材料に関し(段落【0001】)、顕色剤を、「4-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2-ベンジルオキシ-4'-ヒドロキシジフェニルスルホン」とすること(請求項2及び段落【0004】)が記載されている。しかしながら、甲第3号証及び甲第4号証からは、電子受容性顕色剤として、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンと、本件特許発明1の一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物とを、特定比で含有させた場合に、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン単独、あるいは、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホンに一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物以外の電子受容性顕色剤を併用した場合と比べて、バーコード読み取り適性が優れることを示唆する記載は見いだせない。
以上より、本件特許発明1が奏する効果は、当業者が予測することができたものとはいえないから、本件特許発明は、格別な効果を奏するものといえる。

(ウ)特許異議申立人の意見書における主張について検討する。
特許異議申立人は、新たに甲第8号証及び甲第9号証を提示し、「甲第8号証は、4-ヒドロキシフェニル-4’-ベンジルオキシフェニルスルホンを採用することによって、本件訂正発明と同様に、甲第3号証のような高温高湿下の条件、あるいは甲第8号証のような高温下の条件のどちらにも耐えうるような、地肌の白さに優れているものにできることを教示している。」、「また、甲第9号証においても、4-ヒドロキシフェニル-4’-ベンジルオキシフェニルスルホンが使用された実施例2が、4-イソプロポキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン(甲第1号証の実施例4の(1-6))が使用された比較例4と比べて地肌の耐熱性が優れていること(80℃で08に対して0.36)が示されている(表1)」とし、「本件訂正発明の効果は刊行物等に記載又は掲載されているものであって、出願時の技術水準から当業者が予測できたものであると判断される。」と主張している。
しかしながら、これらの記載は、いずれも、本件特許の比較例6と同様に、単に「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」を用いた場合の白紙部の耐熱性が優れることを示すものに過ぎない。本件特許の比較例6は、白紙部の耐熱性が「優」であるものの、バーコード読み取り適性は、いずれも「C」である。「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン」を用いた場合の白紙部の耐熱性が優れていることが知られていたとしても、「電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する」という構成により、バーコード読み取り適性が優れるものとなることが、当業者に予測することができたということはできない。
よって、特許異議申立人の意見は採用できない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、たとえ甲第3、4、8及び9号証に記載された事項を心得た当業者であっても、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1と同じく、「電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する」という構成を有するものである。
そうすると、本件特許発明2も、本件特許発明1と同じ理由により、たとえ甲第3、4、8及び9号証に記載された事項を心得た当業者であっても、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)甲第1号証
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は甲第1号証に記載された発明と同一であり、甲第1号証に対して新規性を有しないと主張している。
しかし、前記第4の3(1)ア(カ)に記載したとおり、本件特許発明1と甲1発明とは、前記[相違点]において実質的に相違している。
したがって、特許異議申立人の当該主張は採用できない。

(2)甲第2号証
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証には、「c2.一般式(1)で表される顕色剤1部に対して、一般式(2)で表される増感剤を0.01?2部の割合で使用する(甲第2号証の【0014】)」という構成が記載されており、「上記数値範囲を、一般式(2)で表される化合物(増感剤)1部に対する一般式(1)で表される化合物(顕色剤)の使用割合に直すと0.5?100となる。」とし、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は甲第2号証に記載された発明と同一であり、甲第2号証に対して新規性を有しないと主張している。
しかし、本件特許発明1は「4-ヒドロキシ-4'-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する」ことを要件としており、数値範囲が一致するとはいえない。
したがって、特許異議申立人の当該主張は採用できない。

2 進歩性について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、「甲第2号証に対して進歩性を有しない。」と主張している。
しかし、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とは、上記1(2)に記載したとおり、数値範囲が一致するとはいえないものである。そして、その数値範囲を本件特許発明1における数値範囲とすることを、当業者が容易になし得たとする根拠を見いだせない。
したがって、特許異議申立人の当該主張は採用できない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載された取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項3?5に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3?5に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
感熱記録体
【技術分野】
【0001】
この発明は、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、「ロイコ染料」ともいう。)と電子受容性顕色剤(以下、「顕色剤」ともいう。)との発色反応を利用した感熱記録体であって、過酷な環境下における発色性能、特にバーコード読み取り適性が良好である感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録体は通常無色ないし淡色のロイコ染料とフェノール性化合物等の顕色剤とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後、両者を混合し、バインダー、充填剤、感度向上剤、滑剤及びその他の助剤を添加して得られた塗液を、紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したものであり、サーマルヘッド、ホットスタンプ、熱ペン、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色し、記録画像が得られる。感熱記録体は、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンタ、自動券売機、計測用レコーダー、スーパーマーケットやコンビニなどのレシート等の記録媒体として広範囲に使用されている。
近年、感熱記録体の用途は、各種チケット用、レシート用、ラベル用、銀行のATM用、ガスや電気の検針用、車馬券等の金券用などにも拡大してきており、これまで以上の過酷な条件、例えば、真夏の車内の高温状態などの環境下における画像部及び白紙部の保存性が必要とされてきている。
画像部の保存性を向上させる方法として、感熱記録層上に保護層を設けることは一般に知られている。しかし、感熱記録体上に保護層を設けた場合、保護層がサーマルヘッドから与えられた熱エネルギーを吸収してしまうため、発色性能、すなわち発色感度や画質、特にバーコード読み取り適性が劣るという問題がある。特に、発色感度が低下して印字部と白紙部の濃淡差(コントラスト)が小さくなると、バーコードを印字した場合に、目視は可能であっても読み取り機で読み取ることができず、バーコード読み取り適性が不十分になるという問題があった。
一方、特定の顕色剤と安定剤を組み合わせて用いることにより画像部の保存性を向上させた感熱記録体(特許文献1、2)や、特定の増感剤と安定剤を組み合わせて用いることにより画像部の保存性を向上させた感熱記録体(特許文献3)が開示されている。
さらに、特定の2種類の顕色剤を組み合わせて用いることにより、発色性能と画像部の保存性を向上させた感熱記録体(特許文献4)やウレア化合物又はウレアウレタン化合物とBPS系顕色剤などの2種の顕色剤を組み合わせて用いることにより保存安定性を高めた感熱記録体(特許文献5?8)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2003-154760
【特許文献2】 特開2001-347757
【特許文献3】 国際公開WO2004/002748
【特許文献4】 特開2006-264255
【特許文献5】 特開2002-178646
【特許文献6】 特開2002-178645
【特許文献7】 特開2000-143611
【特許文献8】 国際公開WO00/014058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感熱記録体が、近年用途が拡大してきている前述のラベル用、チケット用等の過酷な環境下で用いられる用途に使用される場合、画像部及び白紙部の保存性は不十分である。
さらに、上記の特定の2種類の顕色剤を組み合わせて用いた感熱記録体(特許文献4)等は、白紙部の耐熱性が劣るため、過酷な環境下で用いられる用途に使用される場合、白紙部が発色してしまいバーコード読み取り適性が不十分である。
また、ウレア化合物又はウレアウレタン化合物とBPS系顕色剤などの2種の顕色剤を組み合わせて用いた感熱記録体(特許文献5?8)においては、その組み合わせに用いる化合物、顕色剤により性能は大きく異なっている。
そこで、本発明は、過酷な環境下における発色性能、特にバーコード読み取り適性が良好である感熱記録体を提供することを目的とする。本発明において過酷な環境とは、例えば、高温及び/又は多湿条件をいい、高温とは、例えば、70℃以上をいい、多湿とは、例えば、80%RH以上をいう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、感熱記録層に特定の2種類の顕色剤を特定比で含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン(下式(化4)で表されるスルホン化合物)及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体を提供する。
【化4】

【化2】

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、過酷な環境下であっても、発色性能、特にバーコード読み取り適性が良好である感熱記録体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の感熱記録体は、支持体上に、無色ないし淡色のロイコ染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を設けてなり、該感熱記録層が、顕色剤として特定のスルホン化合物及び特定のウレアウレタン系化合物を特定比で含有する。
【0008】 (削除)
【0009】 (削除)
【0010】 (削除)
【0011】
本発明で用いられるウレアウレタン系化合物は下記一般式(化2)で表される。
【化2】

【0012】
本発明の感熱記録層が顕色剤として4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有すると、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホンのアラルキルオキシ基の酸素原子はアラルキル基からπ電子を取り込み電気陰性度が高くなるため、加熱溶融時に塩基性を呈する。
塩基性環境下においてはウレアウレタン系化合物はエノール型になりやすくなるため、特にウレアウレタン系化合物とロイコ染料との反応効率が高まり、電子移動錯体が生成しやすくなると共に逆反応が起こりにくくなる。その結果、得られる感熱記録体の発色性能、特にバーコード読み取り適性が良好であり、更に白紙部の耐熱性に優れるものと推測される。
【0013】
本発明で顕色剤として使用するウレアウレタン系化合物は、具体的には下式(化5)?(化7)で表される3種類であり、これらは単独又は2種類以上混合して用いてもよい
【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
本発明の感熱記録層は顕色剤として、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する。更に、該感熱記録層は、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対しウレアウレタン系化合物を、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上含有する。また、該感熱記録層は、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対しウレアウレタン系化合物を、好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、更に好ましくは0.5重量部未満含有する。
4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホンに対する一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物の含有比がこの範囲であることにより、過酷な環境下における感熱記録体の発色性能、特にバーコード読み取り適性が最も良好になる(後記実施例参照)。なお、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物が0.01重量部未満であると、バーコード読み取り適性が十分でないことがある。また、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対しウレアウレタン系化合物が1.1重量部を超えると、白紙部の白色度が低下することがある。
【0018】
本発明の感熱記録層は顕色剤として、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物以外の顕色剤を含有してもよい。但し、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を合計した含有量は、該感熱記録層中に含有させる全顕色剤(4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含む)の好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは100重量%、即ち該感熱記録層中に含有させる全顕色剤が4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物である。
【0019】
本発明で使用する4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物以外の顕色剤としては、例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウムなどの無機酸性物質、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4’-メチルジフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルフェニルスルホン、1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタン、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物、特開平8-59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5-ジ(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサペンタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3-ビス[α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、2,2’-チオビス(3-tert-オクチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)、WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、WO02/081229号あるいは特開2002-301873号公報記載の化合物、またN,N’-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p-クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4-(n-オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5-[p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの顕色剤は、単独又は2種以上混合して使用することもできる。1-[4-(4-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]-4-[4-(4-イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタンは、例えば、株式会社エーピーアイコーポレーション製商品名JKY-214として入手可能であり、特開2003-154760号公報記載のフェノール縮合組成物は、例えば、株式会社エーピーアイコーポレーション製商品名JKY-224として入手可能であり、国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物は、日本曹達(株)製商品名D-90として入手可能である。また、WO02/081229号等に記載の化合物は、日本曹達(株)製商品名NKK-395、D-100として入手可能である。この他、特開平10-258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。
【0020】
次に、本発明の感熱記録体の感熱記録層で使用される各種材料を例示するが、バインダー、架橋剤、顔料などは上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて設けられた感熱記録層以外の塗工層、すなわち保護層や下塗り層等にも使用することが可能である。
【0021】
本発明で使用するロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録紙分野で公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系化合物、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料前駆体は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0022】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0023】
<フルオラン系ロイコ染料>
3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-n-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔a〕フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ〔c〕フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-キシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイディノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2,4-ジメチル-6-〔(4-ジメチルアミノ)アニリノ〕-フルオラン
【0024】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6’-トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3’-フタリド〕、3,6,6’-トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン-9,3’-フタリド〕
【0025】
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス-〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド
【0026】
<その他>
3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3’-ニトロ)アニリノラクタム、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4’-ニトロ)アニリノラクタム、1,1-ビス-〔2’,2’,2’’,2’’-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジニトリルエタン、1,1-ビス-〔2’,2’,2’’,2’’-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2-β-ナフトイルエタン、1,1-ビス-〔2’,2’,2’’,2’’-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-2,2-ジアセチルエタン、ビス-〔2,2,2’,2’-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル〕-メチルマロン酸ジメチルエステル
【0027】
本発明で使用する増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2-ビス-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-ベンジルビフェニル、β-ベンジルオキシナフタレン、4-ビフェニル-p-トリルエーテル、m-ターフェニル、1,2-ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-α-ナフチルカーボネート、1,4-ジエトキシナフタレン、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステル、o-キシレン-ビス-(フェニルエーテル)、4-(m-メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4’-エチレンジオキシ-ビス-安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2-(4-メトキシ-フェノキシ)エチル]エーテル、p-ニトロ安息香酸メチル、p-トルエンスルホン酸フェニル、o-トルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホンアミドなどを例示することができる。これらの増感剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0028】
本発明で使用する顔料としては、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられ、要求品質に応じて併用することもできる。
【0029】
本発明で使用するバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、(メタ)アクリル酸及び、(メタ)アクリル酸と共重合可能な単量体成分(オレフィンを除く)からなるアクリル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉などの澱粉類、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カゼイン、アラビヤゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂などを例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することもできる。
感熱記録層中のバインダーの含有量(固形分)は5?25重量%程度が好ましい。
【0030】
本発明で使用する架橋剤としては、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム塩などのジルコニウム化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド、アルデヒド澱粉などの多価アルデヒド化合物、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを例示することができる。
【0031】
本発明で使用する滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。
【0032】
本発明においては、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、画像部の耐油性等を向上させる安定剤として、4,4′-ブチリデン(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2′-ジ-t-ブチル-5,5′-ジメチル-4,4′-スルホニルジフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等を添加することもできる。このほかにベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0033】
本発明の感熱記録層に使用するロイコ染料、顕色剤、増感剤、その他の各種成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ染料1重量部に対して顕色剤0.5?10重量部、増感剤0.1?10重量部、顔料0.5?20重量部、安定化剤0.01?10重量部、その他の成分0.01?10重量部程度を使用する。
【0034】
本発明において、ロイコ染料、顕色剤並びに必要に応じて添加する材料は、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗工液とする。この塗工液に用いる溶媒としては水あるいはアルコール等を用いることができ、その固形分は20?40重量%程度である。
【0035】
本発明の感熱記録体は、感熱記録層上に更に保護層を設けてもよい。
【0036】
この保護層は、主としてバインダーと顔料とから成る。
保護層に用いるバインダーとしては、上述の感熱記録層に使用可能なバインダーが適宜使用可能である。これらのバインダーは1種又は2種以上用いてもよい。
【0037】
下塗り層に用いる顔料としては、従来一般的に使用されている公知の顔料、具体例としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、タルク等の無機顔料などを使用することができる。これらの顔料は1種又は2種以上用いてもよい。
保護層中のバインダーの含有量(固形分)は好ましくは20重量%以上、20?80重量%程度がより好ましく、保護層が顔料を含む場合、顔料およびバインダーの含有量は、顔料100重量部に対しバインダーは固形分で30?300重量部程度が好ましい。
保護層の塗工液には必要に応じて、上述の感熱記録層に使用可能な架橋剤、滑剤、安定剤や、紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等の各種助剤を適宜配合してもよい。
【0038】
本発明の感熱記録体は、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を設けてもよい。
【0039】
この下塗り層は、主としてバインダーと顔料とから成る。
下塗り層に用いるバインダーとしては、上述の感熱記録層に使用可能なバインダーが適宜使用可能である。これらのバインダーは1種又は2種以上用いてもよい。
【0040】
下塗り層に用いる顔料としては、従来一般的に使用されている公知の顔料、具体例としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、タルク等の無機顔料などを使用することができる。これらの顔料は1種又は2種以上用いてもよい。
下塗り層中の顔料は、全固形分100重量部に対して、通常50?95重量部、好ましくは70?90重量部である。
下塗り層の塗工液には必要に応じて、分散剤、可塑剤、pH調整剤、消泡剤、保水剤、防腐剤、着色染料、紫外線防止剤等の各種助剤を適宜配合してもよい。
【0041】
本発明において、感熱記録層及び感熱記録層以外の塗工層を塗工する手段は特に限定されるものではなく、周知慣用技術に従って塗布することができる。例えばエアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ベントブレードコーター、ベベルブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーターなど各種コーターを備えたオフマシン塗工機やオンマシン塗工機が適宜選択され使用される。
感熱記録層及び感熱記録層以外の塗工層の塗工量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、感熱記録層の一般的な塗工量は固形分で2?12g/m^(2)程度である。また、下塗り層の一般的な塗工量は固形分で1?15g/m^(2)程度であり、保護層の一般的な塗工量は固形分で1?5g/m^(2)程度である。本発明では、保護層の塗工量を固形分で1?3g/m^(2)とすることが好ましい。
また、各層の塗工後にスーパーカレンダー掛けなどの平滑化処理を施すなど、感熱記録体分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例及び比較例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。各種分散液と塗工液を以下のように調製した
【0043】
[各塗工液の調製]
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、下塗り層用塗工液を調製した。
<下塗り層用塗工液>
焼成カオリン(BASF社製、商品名:アンシレックス90) 100.0部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン社製、
商品名:ST5526、固形分48%) 10.0部
水 50.0部
【0044】
下記配合の顕色剤分散液(A1液?A7液)、ロイコ染料分散液(B液)および増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5ミクロンになるまで湿式磨砕を行った。
【0045】
顕色剤分散液1(A1液)
4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン(日華化学社製、
商品名:BPS-MA3) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:PVA117、
固形分10%) 5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液2(A2液)
化学式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物(ケミプロ化成社製、
商品名:UU) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液3(A3液)
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(日華化学社製、
商品名:BPS44) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
顕色剤分散液4(A4液)
4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン(三菱化学社製、
商品名:TOMILAC KN) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部、
水 1.5部
顕色剤分散液5(A5液)
ジフェニルスルホン架橋型化合物(日本曹達社製、商品名:D90) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
【0046】
顕色剤分散液6(A6液)
化学式(化8)で表されるウレア系化合物(エーピーアイコーポレーション社製、
商品名:SU727) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
【化8】

【0047】
顕色剤分散液7(A7液)
4-ヒドロキシフェニル-4’-フェノキシフェニルスルホン(化学式(化9))
6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
【化9】

【0048】
ロイコ染料分散液(B液)
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(山本化成社製、
商品名:ODB-2) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
増感剤分散液(C液)
1,2-ビス-(3-メチルフェノキシ)エタン(三光社製、
商品名:KS232) 6.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)5.0部
水 1.5部
【0049】
次いで、下記の割合で各分散液を混合して感熱記録層塗工液1?9を調製した。
<感熱記録層塗工液1>
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、商品名:ミズカシルP-537、固形分25%)
17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0050】
<感熱記録層塗工液2>
顕色剤分散液(A1液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0051】
<感熱記録層塗工液3>
顕色剤分散液(A2液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0052】
<感熱記録層塗工液4>
顕色剤分散液(A3液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0053】
<感熱記録層塗工液5>
顕色剤分散液(A4液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0054】
<感熱記録層塗工液6>
顕色剤分散液(A5液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0055】
<感熱記録層塗工液7>
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A6液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0056】
<感熱記録層塗工液8>
顕色剤分散液(A1液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 7.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0057】
<感熱記録層塗工液9>
顕色剤分散液(A7液) 18.0部
顕色剤分散液(A2液) 18.0部
ロイコ染料分散液(B液) 18.0部
増感剤分散液(C液) 9.0部
シリカ分散液(水澤化学社製、ミズカシルP-537) 17.5部
完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA117)
25.0部
【0058】
次いで、下記割合からなる配合物を混合して保護層塗工液を調製した。
<保護層塗工液>
水酸化アルミニウム分散液(マーティンスベルグ社製、
商品名:マーティフィンOL、固形分50%) 9.0部
カルボキシ変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、商品名:KL318、
固形分10%) 30.0部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製、商品名:WS4030、
固形分25%) 4.0部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製、商品名:ハイドリンZ-7-30、
固形分30%) 2.0部
【0059】
[実施例1]
支持体(坪量47g/m^(2)の上質紙)の片面に、下塗り層用塗工液を、固形分で塗工量10.0g/m^(2)となるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗り層塗工紙を得た。
この下塗り層塗工紙の下塗り層上に、感熱記録層塗工液1を固形分で塗工量6.0g/m^(2)となるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、スーパーカレンダーで平滑度が500?1000秒になるように処理して感熱記録体を作製した。
【0060】
[実施例2]
感熱記録層塗工液1中の顕色剤分散液(A1液)の配合量を31.5部、顕色剤分散液(A2液)の配合量を4.5部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例3]
感熱記録層塗工液1中の顕色剤分散液(A1液)の配合量を25.5部、顕色剤分散液(A2液)の配合量を10.5部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[実施例4]
支持体(坪量47g/m^(2)の上質紙)の片面に、下塗り層用塗工液を、固形分で塗工量10.0g/m^(2)となるようにベントブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、下塗り層塗工紙を得た。
この下塗り層塗工紙の下塗り層上に、感熱記録層塗工液8を固形分で塗工量6.0g/m^(2)となるようにロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行い、スーパーカレンダーで平滑度が500?1000秒になるように処理して感熱記録層塗工紙を作製した。
次いで、この感熱記録層塗工紙の感熱記録層上に、保護層塗工液を、固形分で塗工量2.0g/m^(2)となるように、ロッドブレード法で塗工した後、乾燥を行ない、感熱記録体を作製した。
[実施例5]
感熱記録層塗工液8中の顕色剤分散液(A1液)の配合量を31.5部、顕色剤分散液(A2液)の配合量を4.5部にした以外は、実施例4と同様にして感熱記録体を作製した。
【0061】
[比較例1]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液2を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例2]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液3を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例3]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液4を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例4]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液5を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0062】
[比較例5]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液6を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例6]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液7を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例7]
感熱記録層塗工液1中の顕色剤分散液(A1液)の配合量を4.5部、顕色剤分散液(A2液)の配合量を31.5部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
[比較例8]
感熱記録層塗工液1の代わりに感熱記録層塗工液9を使用した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を作製した。
【0063】
作製した感熱記録体について、下記評価を行った。
<発色性能(印字濃度)>
作製した感熱記録体について、大倉電機社製のTH-PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.35mJ/dot、印字速度50mm/secで市松模様を印字した。
印字部の印字濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定し、発色性能(印字濃度)を評価した。
【0064】
<白紙部の耐熱性>
作製した感熱記録体について、80℃の環境下で24時間処理した後、23℃、50%RH環境下に3時間静置した。
非印字部(白紙部)の濃度をマクベス濃度計(RD-914、アンバーフィルター使用)で測定し、処理前後の値の差から地色発色値を算出し、下記の基準で非印字部(白紙部)の耐熱性を評価した。
地色発色値=(処理後の非印字部の濃度)-(処理前の非印字部の濃度)
優:地色発色値が0.1未満
良:地色発色値が0.1以上0.3未満
可:地色発色値が0.3以上0.5未満
不可:地色発色値が0.5以上
【0065】
<バーコード読み取り適性>
作製した感熱記録体について、下記2環境条件下で24時間処理した後、23℃、50%RH環境下に3時間静置した。
(1)80℃
(2)50℃90%RH
ゼブラ社製ラベルプリンタ140XiIIIを用い、印字レベル+10、印字速度15.2cm/秒(6インチ/秒)でバーコード(CODE39)を印字した後、印字されたバーコードをバーコード検証機(Honeywell社製、QCPC600、光源640nm)で読み取り試験を実施し、バーコード読み取り適性を評価した。評価結果をANSI規格のシンボルグレードで記した。
シンボルグレード:バーコードをバーと垂直方向に10分割して、各箇所1回ずつ読み取り試験を実施し、その平均値を(優)A、B、C、D、F(劣)の5段階評価で表す。
【0066】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0067】
表1から、感熱記録層に顕色剤として4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を特定比で含有させた場合には、過酷な環境下における発色性能、特にバーコード読み取り適性に優れていることがわかる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、該感熱記録層が、電子受容性顕色剤として4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン及び下記一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を含有し、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?1.1重量部含有する感熱記録体。
【化2】

【請求項2】 前記4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン1重量部に対し、一般式(化2)で表されるウレアウレタン系化合物を0.01?0.5重量部の割合で含有する請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】 (削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-16 
出願番号 特願2017-523011(P2017-523011)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B41M)
P 1 651・ 121- YAA (B41M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 樋口 祐介福田 由紀  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
登録日 2017-09-22 
登録番号 特許第6211744号(P6211744)
権利者 日本製紙株式会社
発明の名称 感熱記録体  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 下田 昭  
代理人 栗原 和彦  
代理人 下田 昭  
代理人 栗原 和彦  
代理人 赤尾 謙一郎  

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