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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
管理番号 1347681
異議申立番号 異議2018-700595  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-19 
確定日 2018-12-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6297221号発明「交流電力システムおよび直流電力システムでの方法、そのための装置、ならびにその間のインターフェース装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6297221号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6297221号に係る出願は、2014年10月30日に国際出願され、平成30年3月2日にその発明について特許権の設定登録がなされ、同年3月20日に特許掲載公報が発行されたものであって、その後の手続の概要は以下のとおりである。

特許異議申立(請求項1ないし9 特許異議申立人中澤佳樹(以下、「特 許異議申立人1」という。)):平成30年 7月19日
特許異議申立(請求項1ないし9 特許異議申立人宮川貴浩(以下、「特 許異議申立人2」という。)):平成30年 9月10日

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
交流(AC)電力システム(102)を直流(DC)電力システム(103)に結合するように構成されたインターフェース装置(100)であって、追加の補助機器はなく、
AC電力をDC電力に変換するための少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)であって、前記少なくとも1つの変換器が、前記変換器を前記DC電力システムに結合するためのDC側、および前記変換器を前記AC電力システムに結合するためのAC側を含む少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)と、
トランス(109)であって、前記トランスを前記AC電力システムに結合するための1次側、および前記トランスを前記少なくとも1つの変換器に結合するための2次側を含むトランス(109)と、
前記トランスと前記AC電力システムの間の電流経路内に配置された回路遮断器(110)であって、前記電流経路が、前記AC電力システムを前記DC電力システムに結合するための複数の導体を含む多段階の電流経路を備え、前記回路遮断器は、前記回路遮断器の接点が開路すると、前記複数の導体のうち他の導体とは無関係に、前記電流経路の前記複数の導体のそれぞれにおいて電流の流れを制御可能なように停止するように構成される、回路遮断器(110)と、
前記インターフェース装置内で発生する障害を検知するように構成された障害検知ユニット(160)と、
前記障害検知ユニットと通信可能なように結合された制御/処理モジュール(150)と
を備え、
前記制御/処理モジュールが、少なくとも前記回路遮断器の開路に関して前記回路遮断器の動作を制御するように構成され、前記インターフェース装置内に障害が発生したと判定される場合、前記制御/処理モジュールが、前記回路遮断器の前記接点を開路するように構成され、
前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の障害が、前記複数の導体のうち1つの導体について、前記インターフェース装置の既定部分での電流経路で発生する場合、前記制御/処理モジュールは、障害が検知される前記導体について、選択された遅延期間だけ前記回路遮断器の前記接点の開路を遅延させて、前記既定部分とは異なる前記インターフェース装置の一部分で前記障害が発生した場合と比較して、選択された遅延期間だけ前記導体内の電流の流れの停止を遅れて実行し、その他の導体については遅延がないようにさらに構成され、前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の前記障害が、地絡に至る段階であり、前記選択された遅延期間が約20ms?100msの間であり、前記選択された遅延期間だけ遅延されて前記障害の検出の後に発行された命令を送信するように構成された前記制御/処理モジュールを介して前記遅延が実施され、前記インターフェース装置の前記既定部分が、前記トランスの前記2次側と少なくとも1つの変換器の前記AC側との間の電流経路である、インターフェース装置(100)。
【請求項2】
前記障害検知ユニットが、
前記少なくとも1つの変換器の前記DC側および/または前記少なくとも1つの変換器の前記AC側での電流を検知し、
前記AC電力システムと前記少なくとも1つの変換器の前記DC側との間において、前記少なくとも1つの変換器の前記DC側および/または前記少なくとも1つの変換器の前記AC側での電流の前記検知とは異なる位置で電流を検知する
ように構成された電流検知ユニット(161、162)を備える、請求項1に記載のインターフェース装置。
【請求項3】
前記電流検知ユニットが、
少なくとも1つの変換器の前記DC側および/または前記少なくとも1つの変換器の前記AC側での電流を検知するように構成された第1の電流センサ(161)と、
前記AC電力システムと前記少なくとも1つの変換器の前記DC側との間での、前記第1の電流センサとは異なる位置で電流を検知するように構成された第2の電流センサ(162)とを備える、請求項2に記載のインターフェース装置。
【請求項4】
前記障害検知ユニットが、前記電流検知ユニットによって検知される前記電流に基づいて差動電流を決定し、前記差動電流に基づいて、前記インターフェース装置内に障害があると判定するように構成される、請求項2または3に記載のインターフェース装置。
【請求項5】
前記障害検知ユニットは、既定の期間において前記差動電流の大きさが既定の差動電流閾値を超えるという条件で、前記インターフェース装置内に障害が存在すると判定するように構成される、請求項4に記載のインターフェース装置。
【請求項6】
交流(AC)電力システム(102)を直流(DC)電力システム(103)結合し、またはその逆方向に結合するように構成されたインターフェース装置(100)の制御/処理モジュール(150)で実行されるように構成されたコンピュータプログラム製品であって、前記インターフェース装置が、追加の補助機器をもたず、
AC電力をDC電力に変換するための少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)であって、前記少なくとも1つの変換器が、前記変換器を前記DC電力システムに結合するためのDC側、および前記変換器を前記AC電力システムに結合するためのAC側を含む少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)と、
トランス(109)であって、前記トランスを前記AC電力システムに結合するための1次側、および前記トランスを前記少なくとも1つの変換器に結合するための2次側を含むトランス(109)と、
前記トランスと前記AC電力システムの間の電流経路内に配置された回路遮断器(110)であって、前記電流経路が、前記AC電力システムを前記DC電力システムに結合するための複数の導体を含む多段階の電流経路を備え、前記回路遮断器は、前記回路遮断器の接点が開路すると、前記複数の導体のうち他の導体とは無関係に、前記電流経路の前記複数の導体のそれぞれにおいて電流の流れを制御可能なように停止するように構成される、回路遮断器(110)と、
前記インターフェース装置内で発生する障害を検知するように構成された障害検知ユニット(160)であって、前記制御/処理モジュールと通信可能なように結合された障害検知ユニット(160)と
を備え、
前記コンピュータプログラム製品は、前記制御/処理モジュールで実行されると、
少なくとも前記回路遮断器の開路に関して前記回路遮断器の動作を制御し、前記インターフェース装置内に障害が発生したと判定される場合、前記回路遮断器の前記接点が開路され、
前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の障害が、前記複数の導体のうち1つの導体について、前記インターフェース装置の既定部分での電流経路で発生する場合、障害が検知される前記導体について、選択された遅延期間だけ前記回路遮断器の前記接点の開路を遅延させて、前記既定部分とは異なる前記インターフェース装置の一部分で前記障害が発生した場合と比較して、選択された遅延期間だけ前記導体内の電流の流れの停止を遅れて実行し、その他の導体については遅延がないように構成されたコンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取り可能な手段を含み、
前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の前記障害が、地絡に至る段階であり、前記選択された遅延期間が約20ms?100msの間であり、前記選択された遅延期間だけ遅延されて前記障害の検出の後に発行された命令の送信を介して前記遅延が実施され、前記インターフェース装置の前記既定部分が、前記トランスの前記2次側と少なくとも1つの変換器の前記AC側との間の電流経路である、コンピュータプログラム製品。
【請求項7】
交流(AC)電力システム(102)を直流(DC)電力システム(103)結合し、またはその逆方向に結合するように構成されたインターフェース装置(100)で使用するための方法(300)であって、前記インターフェース装置が、追加の補助機器をもたず、
AC電力をDC電力に変換するための少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)であって、前記少なくとも1つの変換器が、前記変換器を前記DC電力システムに結合するためのDC側、および前記変換器を前記AC電力システムに結合するためのAC側を含む少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)と、トランス(109)であって、前記トランスを前記AC電力システムに結合するための1次側、および前記トランスを前記少なくとも1つの変換器に結合するための2次側を含むトランス(109)と、前記トランスと前記AC電力システムの間の電流経路内に配置された回路遮断器(110)であって、前記電流経路が、前記AC電力システムを前記DC電力システムに結合するための複数の導体を含む多段階の電流経路を備え、前記回路遮断器は、前記回路遮断器の接点が開路すると、前記複数の導体のうち他の導体とは無関係に、前記電流経路の前記複数の導体のそれぞれにおいて電流の流れを制御可能なように停止するように構成される、回路遮断器(110)と
を備え、
前記方法が、
前記インターフェース装置内で発生する障害を障害検知ユニットによって検知すること(301)と、
少なくとも前記回路遮断器の開路に関して前記回路遮断器の動作を制御すること(302)であって、前記インターフェース装置内に障害が発生したと判定される場合、前記回路遮断器の前記接点を開路することを含む制御することと、
前記インターフェース装置内の障害が、前記複数の導体のうち1つの導体について、前記インターフェース装置の既定部分での電流経路で発生すると検知される場合、障害が検知される前記導体について、選択された遅延期間だけ前記回路遮断器の前記接点の開路を遅延させること(303)であって、それにより、前記既定部分とは異なる前記インターフェース装置の一部分で前記障害が発生した場合と比較して、選択された遅延期間だけ前記導体内の電流の流れの停止を遅れて実行し、その他の導体については遅延がないようにすることと
を含み、
前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の前記障害が、地絡に至る段階であり、前記選択された遅延期間が約20ms?100msの間であり、前記選択された遅延期間だけ遅延されて前記障害の検出の後に発行された命令の送信を介して前記遅延が実施され、前記インターフェース装置の前記既定部分が、前記トランスの前記2次側と少なくとも1つの変換器の前記AC側との間の電流経路である、方法(300)。
【請求項8】
交流電力システム(102)を直流電力システム(103)に結合するように構成された変換器ステーション(100)であって、請求項1から5のいずれか一項に記載のインターフェース装置(100)を備える変換器ステーション(100)。
【請求項9】
交流(AC)電力システム(102)、および直流(DC)電力システム(103)を備える電力システム(100、102、103)であって、AC電力システムをDC電力システムに結合するように構成された、請求項1から5のいずれか一項に記載のインターフェース装置(100)を備える、電力システム(100、102、103)。」

第3 特許異議申立人1による申立理由について

1.申立理由の概要

本件特許の請求項1ないし5、8、9に係る発明は、いずれも、「追加の補助機器はなく」の意義が明確でないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。よって、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また、本件特許の請求項6、7に係る発明は、いずれも、「追加の補助機器をもたず」の意義が明確でないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。よって、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

2.判断

本件特許の明細書【0008】の記載によれば、発明の課題は、「インターフェース装置内で発生することのある様々な障害を処理することに関して、AC電力システムとDC電力システムの間のインターフェース装置、たとえばAC電力システムとDC電力システムの間の変換器ステーション内の『メイン』交流遮断器の保護を改善するための手段を提供すること」である。そして、請求項1ないし9に記載された事項は、この課題を解決するための手段である。よって、「追加の補助機器はなく」もしくは「追加の補助機器をもたず」とは、この課題を解決するための手段として、たとえば、明細書【0007】の「補助抵抗器」や「補助交流遮断器」のように、請求項1ないし9に記載されてない機器は追加されないことを意味する。
したがって、「追加の補助機器」は、本件特許発明の課題を解決するために必須の構成要素ではなく、「追加の補助機器はなく」もしくは「追加の補助機器をもたず」の意義が明確でないとはいえないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第4 特許異議申立人2による申立理由について

1.申立理由の概要

本件特許の請求項1ないし3、6、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また、本件特許の請求項4、5、8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第1号証:国際公開2011/150963号公報
甲第2号証:特開昭56-58730号公報
甲第3号証:特開平6-36659号公報
甲第4号証:特開2014-93942号公報

2.甲第1号証

甲第1号証には、「INTERFACE ARRANGEMENT BETWEEN AC AND DC SYSTEMS USING GROUNDING SWITCH」「(当審訳)接地開閉器を用いるAC系統およびDC系統間のインターフェース装置」について、以下の記載がある。(下線は当審で付加した。)

(1)「The present invention is directed towards providing an arrangement for interfacing a Direct Current (DC) system with an Alternating Current (AC) system, which systems may both be power transmission systems.」(4頁32行?5頁2行)
「(申立人訳)本発明は、直流(DC)システムと交流(AC)システムとのインターフェースをとる装置を提供することに向けられており、システムは両方とも送電システムであってよい。」

(2)「In order to enable the DC system S2 to be coupled to the AC system S1, the arrangement 20 includes a converter 22 for conversion between AC and DC.」(5頁29?31行)
「(申立人訳)DCシステムS2がACシステムS1に結合されることを可能にするために、装置20は、ACとDCとの間の変換のための変換器22を含む。」

(3)「In this first embodiment of the invention, the arrangement 20 also includes a transformer 24 having a primary side with a first set of primary windings for being coupled to the AC system S1 and a secondary side with a second set of secondary windings coupled to the AC side of the converter. In this first embodiment, the secondary windings are more particularly connected to a number of parallel intermediate electrical connections 30, 32 and 34 interconnecting the transformer 24 with the converter 22.」(6頁9?18行)
「(申立人訳)本発明のこの第1の実施形態では、装置20はまた、ACシステムS1に結合される第1の一次巻線セットを有する一次側と、コンバータのAC側に結合される二次巻線の第二のセットを有する二次側とを有するトランス24を含む。この第1の実施形態では、二次巻線は、トランス24とコンバータ22とを相互接続する多数の並列中間電気接続30、32および34に接続されている。」

(4)「There is here a surge arrester unit 38, a filter unit 36 and a breaker assisting unit 28, which units are all connected between the parallel intermediate connections 30, 32 and 34 and ground.」(6頁25?29行)
「(当審訳)ここには、避雷器ユニット38、フィルターユニット36、遮断器支援ユニット28があり、これらのユニットは、すべて、並列中間接続30、32および34と地面との間に接続されている。」

(5)「In the present example the conductors 10, 12 and 14 of the AC system S1 and the intermediate connections are three and provided for transmissions of three phase AC voltages. For this reason the primary side of the transformer 24 includes three windings, which in this first embodiment are connected in a delta configuration. It should however be realized that it is also possible with a wye configuration. The primary side here lacks neutral point grounding. The primary side furthermore has three parallel connections to the AC system, one provided for each phase. In each of these connections there is a corresponding circuit breaker BR1, BR2 and BR3.」(7頁8?20行)
「(申立人訳)この例では、ACシステムS1の導体10、12および14および中間接続部は3つであり、三相交流電圧の伝送のために設けられている。このため、変圧器24の一次側は3つの巻線を含み、この第1の実施形態ではデルタ構成で接続されている。しかし、それはまた、Y字型の構成で可能であることを認識すべきである。この一次側は中立点接地を欠いている。さらに、1次側にはACシステムに対して3つの並列接続があり、1つは各相に対応している。これらの接続のそれぞれには、対応する回路遮断器BR1、BR2、BR3がある。」

(6)「The breaker assisting unit 28 in turn includes three parallel branches, where each branch is connected between ground and the AC side of the converter. Each branch includes a series connection of a switch SW1, SW2 and SW3 and an impedance element I1, I2 and I3, respectively.」(8頁24?29行)
「(当審訳)同様に、遮断器支援ユニット28は、3つの並列な分岐を含み、各分岐は、地面と変換器のAC側との間に接続されている。各分岐は、それぞれ、スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続を含んでいる。」

(7)「If a fault occurs in the DC system S2 or in the interface arrangement, this fault could be detected in the DC system S2, in the converter 22, at the intermediate connections or at the transformer and reported to the first control unit 40. Faults that occur may be pole to ground faults, single phase to ground faults, multiple phase to ground faults and phase-to-phase short circuit faults. The faults in relation to which the invention may be used therefore include short-circuit faults, like short circuit faults between phase or phases and ground, between pole and ground and between phases. In this way the first control unit 40 obtains a fault indication, step 42.

When such a fault occurs it is necessary to disconnect the DC system from the AC system S1. This should be done as soon as possible. However, this disconnection is often not possible to perform directly, because it may be necessary to await a zero-crossing of the fault current. The first control unit 40, when receiving such an indication first controls the switches SW1, SW2 and SW3 of the breaker assisting unit 28 to close and thereby the impedance elements I1, I2 and I3 are connected between the phases of the intermediate connections 30, 32 and 34 and ground, step 44.」(14頁10?15頁2行)
「(申立人訳)DCシステムS2またはインターフェース装置に障害が発生した場合、この障害は、DCシステムS2、コンバータ22、中間接続部または変圧器で検出され、第1の制御ユニット40に報告される可能性がある。地絡故障(当審訳:極地絡故障)、単相地絡故障、多相地絡故障、および相間短絡故障が発生する可能性があります。したがって、本発明が使用される可能性のある故障は、1つまたは複数の相と地面との間、地面と地面との間(当審訳:極と地面との間)および相間の短絡故障のような短絡故障を含む。このようにして、第1制御ユニット40は、障害表示を取得する(ステップ42)。

このような障害が発生すると、DCシステムをACシステムS1から切り離す必要があります。これはできるだけ早く行う必要があります。しかし、この断線は、故障電流のゼロクロスを待つ必要があるため、直接実行することはできません。第1制御部40は、このような指示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2、SW3を閉じるように制御する。(当審訳)それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の相と地面との間に接続される(ステップ44)。」

(8)「Since all switches SW1, SW2 and SW3 are closed the fault currents in the various phases are furthermore made symmetrical. The same current will also run in all three phases. In the first embodiment the closing of the switches is made immediately, which speeds up the symmetrization . It is also possible that the switches are closed sequentially. The symmetrization of the fault current has another advantage. It guarantees or ensures that the fault current flowing through the circuit breakers BR1, BR2 and BR3 will have zero-crossings,」(15頁16?26行)
「(申立人訳)全てのスイッチSW1、SW2及びSW3が閉成されているので、様々な相の故障電流は、さらに対称にされる。同じ電流が3つのフェーズすべてで実行されます。第1の実施形態では、スイッチの閉成が直ちに行われ、これにより対称化が高速化される。スイッチが順次閉じられることも可能である。事故電流の対称化は別の利点を有する。回路回路遮断器(当審訳:回路遮断器)BR1、BR2、BR3を流れる障害電流がゼロクロスすることを保証または保証し、」

(9)「If for instance, a monopole converter as shown in fig. 7 is combined with a delta connected primary side transformer connection as shown in fig. 1 without a breaker assisting unit and there occurs a pole to ground fault, then the fault current through the breakers will lack zero-crossings for many cycles, which makes it hard and sometimes even impossible to open the circuit breakers.」(15頁28行?16頁3行)
「(申立人訳)例えば、図5に示すモノポールコンバータの場合、図7に示すように、デルタ接続された一次側トランス接続と組み合わされる。1にブレーカ補助装置がなく、地絡が地絡した場合(当審訳:図7に示すモノポールコンバータが、ブレーカ補助装置なしに、図1に示す一次側がデルタ接続されたトランス接続と組み合わされ、極地絡故障が発生した場合)、ブレーカ(当審訳:ブレーカを通る故障電流)は多くのサイクルでゼロクロスがないため、サーキットブレーカを開くことが困難で、場合によっては不可能になることもあります。」

(10)「When the fault current has a zero-crossing, it is then possible to open the breakers BR1, BR2 and BR3. As the fault currents of the phases are symmetrical, this can be done at the same time in all phases. The first control unit 40 therefore controls the circuit breakers BR1, BR2 and BR3 to be opened, step 46.」(16頁7?12行)
「(申立人訳)事故電流がゼロ交差すると、回路遮断器BR1、BR2、BR3を開くことができます。相の故障電流は対称的であるため、これは全てのフェーズで同時に行うことができます。(当審訳)したがって、第1制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を開くように制御する(ステップ46)。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)甲第1号証には、「直流(DC)システムと交流(AC)システムとのインターフェースをとる装置」が記載されている(摘示事項(1))。

(b)DCシステムS2がACシステムS1に結合されることを可能にするために、装置20は、ACとDCとの間の変換のための変換器22を含む(摘示事項(2))。

(c)装置20はまた、ACシステムS1に結合される第1の一次巻線セットを有する一次側と、変換器のAC側に結合される二次巻線の第二のセットを有する二次側とを有するトランス24を含む。二次巻線は、トランス24と変換器22とを相互接続する多数の並列中間電気接続30、32および34に接続されている(摘示事項(3))。

(d)遮断器支援ユニット28は、並列中間接続30、32および34と地面との間に接続されている(摘示事項(4))。

(e)ACシステムS1の導体10、12および14および中間接続は3つであり、三相交流電圧の伝送のために設けられている。トランス24の1次側にはACシステムに対して3つの並列接続があり、1つは各相に対応している。これらの接続のそれぞれには、対応する回路遮断器BR1、BR2およびBR3がある。(摘示事項(5))。

(f)遮断器支援ユニット28は、3つの並列な分岐を含み、各分岐は、地面と変換器のAC側との間に接続されている。各分岐は、それぞれ、スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続を含んでいる(摘示事項(6))。

(g)DCシステムS2またはインターフェース装置に障害が発生した場合、この障害は、DCシステムS2、変換器22、中間接続またはトランスで検出され、第1の制御ユニット40に報告される。極地絡故障、単相地絡故障、多相地絡故障、および相間短絡故障が発生する。第1の制御ユニット40は、障害表示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2およびSW3を閉じるように制御し、それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の各相と地面との間に接続される(摘示事項(7))。

(h)事故電流がゼロ交差すると、第1の制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2、BR3を同時に開くように制御する(摘示事項(10))。

以上を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が記載されているものと認める。

「直流(DC)システムと交流(AC)システムとのインターフェースをとる装置であって、
DCシステムS2がACシステムS1に結合されることを可能にするために、ACとDCとの間の変換のための変換器22を含み、
ACシステムS1に結合される第1の一次巻線セットを有する一次側と、変換器のAC側に結合される二次巻線の第二のセットを有する二次側とを有するトランス24を含み、二次巻線は、トランス24と変換器22とを相互接続する多数の並列中間電気接続30、32および34に接続されており、
並列中間接続30、32および34と地面との間には、遮断器支援ユニット28が接続されており、
ACシステムS1の導体10、12および14および中間接続は3つであり、三相交流電圧の伝送のために設けられており、トランス24の1次側にはACシステムに対して3つの並列接続があり、1つは各相に対応しており、これらの接続のそれぞれには、対応する回路遮断器BR1、BR2およびBR3があり、
遮断器支援ユニット28は、3つの並列な分岐を含み、各分岐は、地面と変換器のAC側との間に接続されており、各分岐は、それぞれ、スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続を含んでおり、
DCシステムS2またはインターフェース装置に障害が発生した場合、この障害は、DCシステムS2、変換器22、中間接続またはトランスで検出され、第1の制御ユニット40に報告され、極地絡故障、単相地絡故障、多相地絡故障、および相間短絡故障が発生し、第1の制御ユニット40は、障害表示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2およびSW3を閉じるように制御し、それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の各相と地面との間に接続され、
事故電流がゼロ交差すると、第1の制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御するインターフェース装置。」

3.対比

そこで、本件特許発明1と甲第1号証発明とを対比する。

(1)インターフェース装置
甲第1号証発明は、「直流(DC)システムと交流(AC)システムとのインターフェースをとる装置」である。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「交流(AC)電力システム(102)を直流(DC)電力システム(103)に結合するように構成されたインターフェース装置(100)」である点で一致する。

(2)追加の補助機器
甲第1号証発明の「スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続」を含んでいる「遮断器支援ユニット28」は、本件特許発明1の各構成要素(変換器、トランス、回路遮断器、障害検知ユニットおよび制御/処理モジュール)ではなく、本件特許発明1の「追加の補助機器」に相当する。
したがって、本件特許発明1は、「追加の補助機器」はないのに対し、甲第1号証発明は、本件特許発明1にはない「スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続」を含んでいる「遮断器支援ユニット28」がある点で相違する。

(3)変換器
甲第1号証発明は、「DCシステムS2がACシステムS1に結合されることを可能にするために、ACとDCとの間の変換のための変換器22」を含む。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「AC電力をDC電力に変換するための少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)であって、前記少なくとも1つの変換器が、前記変換器を前記DC電力システムに結合するためのDC側、および前記変換器を前記AC電力システムに結合するためのAC側を含む少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)」を備える点で一致する。

(4)トランス
甲第1号証発明は、「ACシステムS1に結合される第1の一次巻線セットを有する一次側と、変換器のAC側に結合される二次巻線の第二のセットを有する二次側とを有するトランス24」を含む。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「トランス(109)であって、前記トランスを前記AC電力システムに結合するための1次側、および前記トランスを前記少なくとも1つの変換器に結合するための2次側を含むトランス(109)」を備える点で一致する。

(5)回路遮断器
甲第1号証発明は、「トランス24の1次側にはACシステムに対して3つの並列接続があり、1つは各相に対応しており、これらの接続のそれぞれには、対応する回路遮断器BR1、BR2およびBR3があ」るものであり、「トランス」は、「直流(DC)システムと交流(AC)システムとのインターフェースをとる装置」の構成要素である。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「前記トランスと前記AC電力システムの間の電流経路内に配置された回路遮断器(110)であって、前記電流経路が、前記AC電力システムを前記DC電力システムに結合するための複数の導体を含む多段階の電流経路を備える、回路遮断器(110)」を備える点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、「前記回路遮断器は、前記回路遮断器の接点が開路すると、前記複数の導体のうち他の導体とは無関係に、前記電流経路の前記複数の導体のそれぞれにおいて電流の流れを制御可能なように停止するように構成される」ものであるのに対し、甲第1号証発明は、「回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御する」ため、そのような構成が不要である点で相違する。

(6)障害検知ユニットおよび制御/処理モジュール
甲第1号証発明は、「DCシステムS2またはインターフェース装置に障害が発生した場合、この障害は、DCシステムS2、変換器22、中間接続またはトランスで検出され、第1の制御ユニット40に報告される」ものである。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「前記インターフェース装置内で発生する障害を検知するように構成された障害検知ユニット(160)」と、「前記障害検知ユニットと通信可能なように結合された制御/処理モジュール(150)」とを備える点で一致する。

(7)回路遮断器の開路
甲第1号証発明は、「第1の制御ユニット40は、障害表示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2およびSW3を閉じるように制御し、それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の各相と地面との間に接続され、事故電流がゼロ交差すると、第1の制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御する」ものである。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「前記制御/処理モジュールが、少なくとも前記回路遮断器の開路に関して前記回路遮断器の動作を制御するように構成され、前記インターフェース装置内に障害が発生したと判定される場合、前記制御/処理モジュールが、前記回路遮断器の前記接点を開路するように構成され」る点で一致する。

(8)回路遮断器の開路の遅延
甲第1号証発明において検出される障害は、「極地絡故障、単相地絡故障、多相地絡故障、および相間短絡故障」である。
したがって、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、「前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の前記障害が、地絡に至る段階であ」る点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、「前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の障害が、前記複数の導体のうち1つの導体について、前記インターフェース装置の既定部分での電流経路で発生する場合、前記制御/処理モジュールは、障害が検知される前記導体について、選択された遅延期間だけ前記回路遮断器の前記接点の開路を遅延させて、前記既定部分とは異なる前記インターフェース装置の一部分で前記障害が発生した場合と比較して、選択された遅延期間だけ前記導体内の電流の流れの停止を遅れて実行し、その他の導体については遅延がないようにさらに構成され、前記選択された遅延期間が約20ms?100msの間であり、前記選択された遅延期間だけ遅延されて前記障害の検出の後に発行された命令を送信するように構成された前記制御/処理モジュールを介して前記遅延が実施され、前記インターフェース装置の前記既定部分が、前記トランスの前記2次側と少なくとも1つの変換器の前記AC側との間の電流経路である」のに対し、甲第1号証発明は、「第1の制御ユニット40は、障害表示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2およびSW3を閉じるように制御し、それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の各相と地面との間に接続され、事故電流がゼロ交差すると、第1の制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御する」ものである点で相違する。

そうすると、本件特許発明1と甲第1号証発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「交流(AC)電力システム(102)を直流(DC)電力システム(103)に結合するように構成されたインターフェース装置(100)であって、
AC電力をDC電力に変換するための少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)であって、前記少なくとも1つの変換器が、前記変換器を前記DC電力システムに結合するためのDC側、および前記変換器を前記AC電力システムに結合するためのAC側を含む少なくとも1つの変換器(104、105、108、140)と、
トランス(109)であって、前記トランスを前記AC電力システムに結合するための1次側、および前記トランスを前記少なくとも1つの変換器に結合するための2次側を含むトランス(109)と、
前記トランスと前記AC電力システムの間の電流経路内に配置された回路遮断器(110)であって、前記電流経路が、前記AC電力システムを前記DC電力システムに結合するための複数の導体を含む多段階の電流経路を備える、回路遮断器(110)と、
前記インターフェース装置内で発生する障害を検知するように構成された障害検知ユニット(160)と、
前記障害検知ユニットと通信可能なように結合された制御/処理モジュール(150)と
を備え、
前記制御/処理モジュールが、少なくとも前記回路遮断器の開路に関して前記回路遮断器の動作を制御するように構成され、前記インターフェース装置内に障害が発生したと判定される場合、前記制御/処理モジュールが、前記回路遮断器の前記接点を開路するように構成され、
前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の前記障害が、地絡に至る段階である、インターフェース装置(100)。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(1)本件特許発明1は、「追加の補助機器」はないのに対し、甲第1号証発明は、本件特許発明1にはない「スイッチSW1、SW2およびSW3とインピーダンス素子I1、I2およびI3との直列接続」を含んでいる「遮断器支援ユニット28」がある点。

(2)本件特許発明1は、「前記回路遮断器は、前記回路遮断器の接点が開路すると、前記複数の導体のうち他の導体とは無関係に、前記電流経路の前記複数の導体のそれぞれにおいて電流の流れを制御可能なように停止するように構成される」ものであるのに対し、甲第1号証発明は、「回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御する」ため、そのような構成が不要である点。

(3)本件特許発明1は、「前記障害検知ユニットによって検知される前記インターフェース装置内の障害が、前記複数の導体のうち1つの導体について、前記インターフェース装置の既定部分での電流経路で発生する場合、前記制御/処理モジュールは、障害が検知される前記導体について、選択された遅延期間だけ前記回路遮断器の前記接点の開路を遅延させて、前記既定部分とは異なる前記インターフェース装置の一部分で前記障害が発生した場合と比較して、選択された遅延期間だけ前記導体内の電流の流れの停止を遅れて実行し、その他の導体については遅延がないようにさらに構成され、前記選択された遅延期間が約20ms?100msの間であり、前記選択された遅延期間だけ遅延されて前記障害の検出の後に発行された命令を送信するように構成された前記制御/処理モジュールを介して前記遅延が実施され、前記インターフェース装置の前記既定部分が、前記トランスの前記2次側と少なくとも1つの変換器の前記AC側との間の電流経路である」のに対し、甲第1号証発明は、「第1の制御ユニット40は、障害表示を受けると、まず、ブレーカ補助装置28のスイッチSW1、SW2およびSW3を閉じるように制御し、それにより、インピーダンス素子I1、I2およびI3は、中間接続30、32および34の各相と地面との間に接続され、事故電流がゼロ交差すると、第1の制御ユニット40は、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を同時に開くように制御する」ものである点。

4.判断

そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)について
甲第2号証には、発電機の遮断装置において、事故発生時、電流偏移が多いと予測される相の遮断を遅らせることが記載されている。
しかしながら、甲第1号証発明は、障害発生時、ブレーカ補助装置のスイッチを閉じることにより、事故電流のゼロ交差を高速化するものであって、「遮断器支援ユニット28」を必須の構成要素とするものであり、甲第2号証に記載された技術とは課題を解決するための手段の方向性が異なるものである。
したがって、甲第1号証発明において、甲第2号証に記載された技術を適用して、本件特許発明1でいう「追加の補助機器」に相当する「遮断器支援ユニット28」を削除する動機付けがあるとはいえない。

相違点(2)について
同様に、甲第1号証発明において、甲第2号証に記載された技術を適用して、回路遮断器BR1、BR2およびBR3を異なる時点で開くように制御するようにする動機付けがあるとはいえない。

相違点(3)について
同様に、甲第1号証発明において、甲第2号証に記載された技術を適用して、地絡故障が発生した相の遮断を遅らせ、他の相の遮断を遅らせないようにする動機付けがあるとはいえない。

そして、甲第3号証は、電流の遮断時において遅延期間を約20ms?100msにすることが公知であることを主張するために引用されたものであり、甲第4号証は、障害検知ユニットとして、差動電流に基づいて障害の判定を行うものは公知の技術であることを主張するために引用されたものであって、上記判断を左右するものではない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件特許発明2ないし5、8、9は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を付加したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2ないし5、8、9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件特許発明6、7は、本件特許発明1を、それぞれ、コンピュータプログラム製品、方法として表現したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立人1および2の申立理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1ないし9に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-13 
出願番号 特願2017-523270(P2017-523270)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02M)
P 1 651・ 537- Y (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 関谷 隆一
國分 直樹
登録日 2018-03-02 
登録番号 特許第6297221号(P6297221)
権利者 アーベーベー シュヴァイツ アクツィエンゲゼルシャフト
発明の名称 交流電力システムおよび直流電力システムでの方法、そのための装置、ならびにその間のインターフェース装置  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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