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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1347705 |
異議申立番号 | 異議2018-700474 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-11 |
確定日 | 2019-01-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6297070号発明「硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6297070号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6297070号に係る出願(特願2015-558990号、以下「本願」ということがある。)は、平成26年2月21日(パリ条約に基づく優先権主張:平成25年2月22日、米国(US))の国際出願日に出願人東レ・ダウコーニング株式会社及びダウ コーニング コーポレーションの両名(以下併せて「特許権者」ということがある。)によりされたものとみなされる国際特許出願であり、平成30年3月2日に特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、平成30年3月20日に特許掲載公報が発行されたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成30年6月11日に特許異議申立人山本美智子(以下「申立人」という。)により「特許第6297070号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取消すべきである。」という趣旨の本件異議申立がされた。 第2 本件特許の特許請求の範囲に記載された事項 本件特許の特許請求の範囲には、請求項1ないし請求項17が記載されており、そのうち請求項1には、以下のとおりの記載がある。 「(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、直鎖状のオルガノポリシロキサン、 (B)下記平均単位式: (R^(1)_(3)SiO_(1/2))_(c)(SiO_(4/2))_(d)(XO_(1/2))_(e) (式中、R^(1)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子で置換した基であり、但し、一分子中の少なくとも2個のR^(1)は前記アルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、cは正数であり、dは正数であり、eは0?0.4の数であり、かつ、c+d=1であり、c/dは0?10の数である。) で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分の質量比が1/99?99/1となる量}、 (C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1?10モルとなる量}、 (D)セリウム含有オルガノポリシロキサン{(D)成分中のセリウム原子が、本組成物全質量に対して質量単位で20?1,500ppmとなる量}、および (E)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒 から少なくともなる硬化性シリコーン組成物。」 (以下、上記請求項1に記載されたとおりの事項で特定される発明を「本件発明」という。) 第3 申立人が主張する取消理由 申立人は、本件異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第3号証を提示し、具体的な取消理由として、以下の理由が存するとしている。 ・本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。 ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:特許第4586967号公報 甲第2号証:特開2008-291148号公報 甲第3号証:特開2012-67290号公報 (以下、「甲第1号証」ないし「甲第3号証」をそれぞれ「甲1」ないし「甲3」と略していう。) 第4 当審の判断 当審は、 申立人が主張する上記取消理由につき理由がないから、本件の請求項1及び同項を引用する請求項2ないし17に係る発明についての特許はいずれも維持すべきもの、 と判断する。以下、詳述する。 1.各甲号証の記載事項及び記載された発明 上記取消理由は、本件特許が特許法第29条に違反してされたものであることに基づくものであるから、当該理由につき検討するにあたり、申立人が提示した甲1ないし甲3に記載された事項の摘示及び当該各事項に基づく甲1に係る引用発明の認定を行う。 なお、各記載事項に付された下線は、元々付されていたものを除き、当審が付したものである。 (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア.甲1の記載事項 甲1には、申立人が申立書第10頁第10行?第11頁第22行で主張するとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。 (a-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)下記一般式(1) 【化1】 (式中、R^(1)は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基、R^(2)は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、k,mは0又は正の整数であり、k+mがこのオルガノポリシロキサンの25℃の粘度を10?1,000,000mPa・sとする数である。) で表される一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で10?1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン、 (B)SiO_(2)単位、R^(3)_(n)R^(4)_(p)SiO_(0.5)単位及びR^(3)_(q)R^(4)_(r)SiO_(0.5)単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(但し、上記式において、R^(3)はビニル基又はアリル基、R^(4)は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、nは2又は3、pは0又は1で、n+p=3、qは0、rは3で、q+r=3である。) (C)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、 (D)白金族金属系触媒 を含有してなり、前記(B)成分は、前記(A)及び(B)成分の合計量に対して20?70質量%の量で配合されていると共に、(C)成分が、そのSiH基が(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計量当たり0.1?4.0のモル比となる量で配合されているシリコーンゴム組成物からなる透明な発光半導体被覆保護材。 【請求項2】 更に、(E)接着助剤を配合した請求項1記載の保護材。 【請求項3】 (E)成分の接着助剤が、下記一般式(3) 【化2】 (式中、R^(6)は、下記式(4) 【化3】 で表される有機基又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、少なくとも1個は式(4)の有機基であり、R^(7)は水素原子又は炭素数1?6の一価炭化水素基、sは1?6の整数である。) で表されるイソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物である請求項2記載の保護材。 【請求項4】 発光半導体素子が開口部を有するセラミック及び/又はプラスチック筐体内に配置された発光半導体装置で、その筐体内部が請求項1?3のいずれか1項記載の被覆保護材の硬化物で被覆保護された発光半導体装置。 【請求項5】 発光半導体素子が開口部を有するセラミック及び/又はプラスチック筐体内のリード電極上に配置された発光半導体装置で、その筐体内部が請求項1?3のいずれか1項記載の被覆保護材の硬化物で被覆保護された発光半導体装置。」 (a-2) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、付加硬化型のシリコーンゴム組成物に関するものであり、特にゴム的性質と強度特性が良好であり、表面のタック性が殆どないシリコーンゴムを与え、硬化物表面における埃付着が全くなく、かつ低弾性で耐クラック性に優れた発光半導体被覆保護材及びこれを用いて発光半導体素子を被覆してなる発光半導体装置に関するものである。」 (a-3) 「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 従って、本発明の目的は、伸び等のゴム的性質が損なわれることなく、硬度や表面タック性が向上した硬化物を形成し得る付加硬化型のシリコーンゴム組成物からなり、表面タック性がなく、かつ接着性に優れ、しかも耐衝撃性、光透過性に優れた発光半導体被覆保護材及びこれを用いて被覆され、発光効率の高い発光半導体装置を提供することにある。・・(中略)・・ 【発明の効果】 【0022】 本発明によれば、耐衝撃性に優れ、シリコーンエラストマーの欠点である表面タックによる埃の付着のない硬化物が得られる。また、本発明の発光半導体被覆保護材で被覆保護された発光半導体装置は、耐熱試験による変色も少なく、発光効率も高いため長寿命で省エネルギーに優れる発光半導体装置を提供することが可能となり、産業上のメリットは多大である。」 (a-4) 「【0045】 (E)接着助剤 本発明の組成物には、これを硬化して得られる硬化物の接着性を向上させるため、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するオルガノシラン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物などの接着助剤を任意成分として必要に応じて添加配合してもよい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物及び一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi-CH=CH_(2)基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基など)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2又は3種含有する、通常、ケイ素原子数4?30、特には4?20程度の、直鎖状又は環状構造のシロキサン化合物(オルガノシロキサンオリゴマー)が挙げられる。」 (a-5) 「【0053】 なお、本発明のシリコーンゴム組成物は、発光半導体被覆保護材として使用することができるが、上記のように接着助剤を配合することにより、得られた被覆保護材は、接着力が強いため樹脂硬化や実装時のIRリフローによる剥離を起こすことはない。また、その硬化物はデュロメータタイプAで70以上の硬さをもち、硬化物の表面に対する埃の付着もなく、低弾性特性を有することからセラミックやプラスチックの筐体との熱膨張係数の違いによる応力を吸収できるため、低温側-40℃、高温側120℃の熱衝撃試験を1,000サイクル行ってもクラックが発生することはない。 【0054】 本発明の組成物には、上述した(A)?(E)成分以外にも、必要に応じて、それ自体公知の各種の添加剤を配合することができる。例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填剤を、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部当り600質量部以下の範囲で適宜配合することができる。 【0055】 本発明のシリコーンゴム組成物は、上述した各成分を均一に混合することによって調製されるが、通常は、硬化が進行しないように2液に分けて保存され、使用時に2液を混合して硬化を行う。勿論、作業可能時間を長くするためにアセチレンアルコール系化合物、トリアゾール類、ニトリル化合物、リン化合物などの反応抑制剤を微量添加して1液として用いることができる。また、本発明のシリコーンゴム組成物に波長変更するための蛍光体や酸化チタン微粉末(TiO_(2))などのような光散乱剤等を添加することもできる。この組成物は、必要により加熱することにより直ちに硬化して、高い硬度と表面タックのない弾性硬化物を形成し、電気電子部品等の保護コート剤や、ポッティング、キャスティング、モールド剤等をはじめシリコーンゴムキーボードの表面コートなどのシリコーンの粘着性が問題となる汎用用途として広く使用することができる。なお、硬化条件は特に制限されるものではないが、通常、60?200℃、好ましくは80?180℃で5分?8時間、好ましくは10分?4時間程度で硬化することができる。 【0056】 なお、本発明の組成物は液状に調製することができ、特に発光半導体被覆保護材として用いる場合、液状であることが好ましく、25℃の粘度は10?1,000,000mPa・s、特には100?1,000,000mPa・s程度が好ましい。 【0057】 本発明の被覆保護材は、発光半導体を被覆保護するために使用される。この場合、発光半導体としては、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等を挙げることができる。発光半導体を被覆保護する態様は特に制限されるものではないが、図1,2に示されるように、開口部を有する筐体内に配置された発光半導体を覆って筐体内に被覆保護材を充填し、これを硬化させる等の方法を採用し得る。 【0058】 なお、本発明の被覆保護材の硬化条件は、室温(25℃)で72時間から200℃で3分間と、その作業条件に合わせて任意であり、生産性と発光素子や筐体耐熱性とのバランスから適宜選定することができる。」 (a-6) 「【実施例】 【0059】 以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示し、粘度は25℃の値である。更に、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。 【0060】 [実施例1] 下記式(i) 【化14】 で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の下記式(ii) 【化15】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(Pt濃度2質量%、以下同様)0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。 【0061】 この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、引張強度、硬度(A型スプリング試験機を用いて測定)及び伸び率を測定した。また表面のタック性を指触にて確認したほか、綿埃中に硬化物を置き、取り出し後、エアーにて表面の埃が取れるかを試験した。更に、アルミ皿(直径6cm,深さ0.6mm)に樹脂を封入し、硬化したサンプルを-50℃?150℃の冷熱サイクルに投入し、クラックを確認した。各測定結果を表1に示した。 【0062】 [実施例2] VFとして下記式(iii) 【化16】 を使用した以外は実施例1と同じ組成にてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。 【0063】 [実施例3] 実施例1で用いたVF70部、実施例1で用いたVMQ30部(VFとVMQの合計量として、SiVi結合を0.043mol/100g含有)、実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH結合を0.74mol/100g含有)4.3部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を混合し、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。 【0064】 [実施例4] 実施例1において、使用したVMQレジンをSiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びVi_(2)MeSiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の上記式(ii)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。 【0065】 [実施例5] 上記式(i)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位40モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位10モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の上記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。 【0066】 [比較例1] 上記式(iii)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の上記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表2に示した。 【0067】 [比較例2] 上記式(i)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の上記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表2に示した。 【0068】 [比較例3] 市販シリコーンワニスKJR-632(信越化学工業(株)製)を同様に硬化させて硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表2に示した。 【表1】 【0069】 【表2】 【0070】 [実施例6] 上記式(i)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、下記式(iv) 【化17】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン8部、下記式(v) 【化18】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、下記式(vi) 【化19】 で示される接着助剤0.3部及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。 【0071】 この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、アルミニウムに対する剪断接着強度、硬度(A型スプリング試験機を用いて測定)及び伸び率を測定した。また、表面のタック性を指触にて確認したほか、綿埃中に硬化物を置き、取り出した後、エアーにて表面の埃が取れるかを試験した。更に、アルミ皿(直径6cm,深さ0.6mm)に樹脂を封入し、硬化したサンプルを-50℃?150℃の冷熱サイクルに投入し、クラックを確認した。各測定結果を表3に示した。 【0072】 [実施例7] VFとして上記式(iii)を使用した以外は実施例6と同じ組成にてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例6と同様に測定した結果を表3に示した。 【0073】 [実施例8] 上記式(i)で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位40モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位10モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、上記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3部、上記式(iv)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、下記式(vii) 【化20】 で示される接着助剤0.2部及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて硬化物を形成し、実施例6と同様に測定した結果を表3に示した。 【0074】 [比較例4] 上記式(iii)で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、上記式(iv)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン8部、上記式(v)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、上記式(vi)で示される接着助剤0.3部及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例6と同様に測定した結果を表3に示した。 【0075】 [比較例5] 上記式(i)で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、上記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3部、上記式(iv)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、上記式(vii)で示される接着助剤0.2部及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例6と同様に測定した結果を表3に示した。 【0076】 【表3】 【0077】 表1?3の結果に示されているように、本発明によれば、耐衝撃性に優れ、シリコーンエラストマーの欠点である表面タックによる埃の付着のない硬化物が得られる。 【0078】 次に、透明半導体被覆保護材の実施例と比較例を示す。 実施例9?12と比較例6?8の被覆保護材の評価方法は下記の通りである。 [評価方法] シリコーン系ダイボンド材の調製 下記式(I) 【化21】 で表される末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体(粘度3Pa・s)100部、下記式(II) 【0079】 【化22】 で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度15mPa・s)2.5部、塩化白金酸2-エチルヘキシルアルコール変性溶液(Pt濃度2質量%)0.03部、エチニルシクロヘキシルアルコール0.05部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン7部及び平均粒径9μmの球状アルミナ微粉末400部を均一混合してシリコーンダイボンド材を調製した。 【0080】 発光半導体装置の作製方法 発光素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップを用いて、図1に示すような発光半導体装置を作製した。発光素子2をリード電極にシリコーン系ダイボンド材5を用い、180℃で10分間加熱して固定した。発光素子2とリード電極3,4を金線6にて接続させた後、被覆保護材7をポッティングし、180℃で1時間硬化し、発光半導体装置を作製した。 耐熱衝撃性の試験方法 作製した発光半導体装置を、低温側-40℃、高温側120℃の熱衝撃試験を1,000サイクル行って外観のクラックが発生した数を観察した。 表面埃付着性 作製した発光半導体装置に微粉末シリカをふりかけ表面に付着させた後、エアーを吹きかけることで半導体装置表面に付着した微粉末シリカを除去できるかどうか確認した。 【0081】 [実施例9] 下記式 【化23】 で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、 【化24】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン8部、 【化25】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、 【化26】 で示される接着助剤0.3部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、硬度(A型スプリング試験機を用いて測定)を測定した。この組成物を硬化させたものは無色透明なものであった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0082】 [実施例10] VFとして下記式 【化27】 を使用した以外は実施例9と同じ組成にてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。硬化物は無色透明であった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0083】 [実施例11] 実施例9において使用したポリシロキサン(VF)70部、VMQレジンとしてSiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びVi_(2)MeSiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)30部、下記式 【化28】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10部を使用した以外は、実施例9と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。硬化物は無色透明であった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0084】 [実施例12] 下記式 【化29】 で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位40モル%及びVi_(3)SiO_(0.5)単位10モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、下記式 【化30】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3部、 【化31】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、 【化32】 で示される接着助剤0.2部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。この硬化物は無色透明なものであった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0085】 [比較例6] 下記式 【化33】 で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、下記式 【化34】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン8部、 【化35】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、 【化36】 で示される接着助剤0.3部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。硬化物は無色透明であった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0086】 [比較例7] 下記式 【化37】 で示されるポリシロキサン50部に、SiO_(2)単位50モル%、(CH_(3))_(3)SiO_(0.5)単位42.5モル%及びViMe_(2)SiO_(0.5)単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、下記式 【化38】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3部、 【化39】 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、 【化40】 で示される接着助剤0.2部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、よく撹拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。硬化物は無色透明であった。このゴム組成物を用いて発光半導体装置を作製した。 【0087】 [比較例8] 市販シリコーンワニスKJR-632(信越化学工業(株)製)を同様に硬化させ、硬化物を形成し、実施例9と同様に測定した結果を表4に示した。硬化物は無色透明であった。このワニスを用いて発光半導体装置を作製した。 【0088】 実施例9?12及び比較例6?8のシリコーンゴム組成物及びワニスを用いて発光素子を封止し、特性を評価した。 上記実施例9?12及び比較例6?8の被覆保護材の評価結果を表4に示す。 【0089】 【表4】 【0090】 表4の結果に示されているように、本発明の発光半導体被覆保護材で被覆保護された発光半導体装置は、耐熱試験による変色も少なく、発光効率も高いため長寿命で省エネルギーに優れる発光半導体装置を提供することが可能となり、産業上のメリットは多大である。」 イ.甲1に記載された発明 上記甲1には、上記(a-1)ないし(a-6)の各記載(特に下線部参照)からみて、 「(A)下記一般式(1) 【化1】 (式中、R^(1)は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基、R^(2)は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、k,mは0又は正の整数であり、k+mがこのオルガノポリシロキサンの25℃の粘度を10?1,000,000mPa・sとする数である。) で表される一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で10?1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン、 (B)SiO_(2)単位、R^(3)_(n)R^(4)_(p)SiO_(0.5)単位及びR^(3)_(q)R^(4)_(r)SiO_(0.5)単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(但し、上記式において、R^(3)はビニル基又はアリル基、R^(4)は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、nは2又は3、pは0又は1で、n+p=3、qは0、rは3で、q+r=3である。) (C)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、 (D)白金族金属系触媒、 (E)接着助剤を含有してなり、前記(B)成分は、前記(A)及び(B)成分の合計量に対して20?70質量%の量で配合されていると共に、(C)成分が、そのSiH基が(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基の合計量当たり0.1?4.0のモル比となる量で配合されているシリコーンゴム組成物からなる透明な発光半導体被覆保護材。」 に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)甲2の記載事項 甲2には、申立人が申立書第11頁第25行?第16頁第14行で主張するとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。 (b-1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)下記一般式(1): R_(a)R^(1)_(b)SiO_((4-a-b)/2) (1) (式中、Rは各々独立にアルケニル基であり、R^(1)は各々独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換または置換の一価炭化水素基であり、aは0.0001?0.2の正数であり、bは1.7?2.2の正数であり、但しa+bは1.9?2.4である) で表される、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、 (B)下記一般式(2): R^(2)_(c)H_(d)SiO_((4-c-d)/2) (2) (式中、R^(2)は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換または置換の一価炭化水素基であり、cは0.7?2.2の正数であり、dは0.001?1の正数であり、但しc+dは0.8?3である) で表される、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 前記(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りケイ素原子に結合した水素原子が0.01?3個となる量、 (C)白金系触媒: 有効量、及び (D)下記a)、b)及びc)を150℃以上の温度で熱処理して得られた反応生成物:0.01?5質量部 a)25℃における粘度が10?10000mPa・sであるオルガノポリシロキサン: 100質量部 b)一般式: (R^(3)COO)_(n)M^(1) (式中、R^(3)は同種または異種の一価炭化水素基、M^(1)はセリウム又はセリウムを主成分とする希土類元素混合物、そしてnは3?4の正数である) で示されるセリウムのカルボン酸塩: セリウム量が上記a)成分100質量部に対して0.05?5質量部となる量、 c)一般式: (R^(4)O)_(4)M^(2) (式中、R^(4)は同種又は異種の一価の炭化水素基、M^(2)はチタン又はジルコニウムである) で表されるチタン若しくはジルコニウム化合物および/又はその部分加水分解縮合物: チタン若しくはジルコニウムの質量が上記b)成分のセリウムの質量に対して、0.1?5倍となる量、 を含有してなるシリコーンゲル組成物。 【請求項2】 請求項1記載のシリコーンゲル組成物を硬化してなる、JIS K2220で規定される針入度が10?200であるシリコーンゲル硬化物。」 (b-2) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、硬化して優れた耐熱性を与えるシリコーンゲル組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 シリコーンゲル組成物は、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、ケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、および白金系触媒を含有し、前記ケイ素原子に結合した水素原子のアルケニル基への付加反応により低架橋密度でゲル状の硬化物を与える付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である(例えば、特許文献1?3)。このシリコーンゲル組成物を加熱することにより硬化したシリコーンゲル硬化物は、耐熱性、耐候性、耐油性、耐寒性、電気絶縁性等に優れ、低弾性率かつ低応力であることにより、車載電子部品、民生用電子部品等の電子部品の保護に用いられている。シリコーンゲル硬化物の特徴である低弾性率かつ低応力であることは他のエラストマー製品には見られない。また、近年では、車載電子部品や民生用電子部品の高信頼性化などの要求から、封止に用いられるシリコーンゲル材料に対する耐熱性の要求が高まってきている。 【0003】 一般的なシリコーンゴムにおいて、耐熱性を向上させる手段としては、カーボン、酸化鉄等のフィラーを充填する方法が用いられているが、低粘度で、透明性を要求されるシリコーンゲル材料としては、フィラーの充填による手段は、透明性の低下、フィラーの沈降、粘度増大に伴う作業性の低下などのデメリットが発生するため、容易に受け容れられる手段ではない。 【0004】 そこで、従来よりも高温での耐熱性に優れたシリコーンゲル組成物の開発が望まれていた。 ・・(中略)・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、高温での耐熱性に優れ、高温での長期使用によっても低弾性率及び低応力を維持することができるシリコーンゲル硬化物を与えるシリコーンゲル組成物を提供することを目的とする。 ・・(中略)・・ 【発明の効果】 【0007】 本発明のシリコーンゲル組成物は、従来よりも高温での耐熱性に優れたシリコーンゲル硬化物を与えるものである。また、本発明の組成物を硬化することにより得られるシリコーンゲル硬化物は、200℃の雰囲気下に長期間保持してもシリコーンゲルの特徴である低弾性率および低応力を維持することができるため、ICやハイブリッドIC等の電子部品の保護用途で長期耐久性の向上が期待される。」 (b-3) 「【0028】 〔(D)成分〕 (D-a)成分に使用されるオルガノポリシロキサンは、従来公知の25℃における粘度が10?10000mPa・sのオルガノポリシロキサンであればよ・・(中略)・・い。また、D-a)成分の粘度は、25℃における粘度が10?10000mPa・sであり、好ましくは50?1000mPa・sである。粘度が10mPa・s以下の場合、高温でのシロキサン蒸発量が多くなりやすく、質量変化が大きくなるため、耐熱性が低下しやすい。また、10000mPa・sを超えた場合、後述するセリウム化合物との混和が円滑に行われなくなるため、やはり耐熱性が低下しやすくなる。 【0029】 (D-b)成分としてのセリウムのカルボン酸塩は一般式: (R^(3)COO)_(n)M^(1) で示され、ここで、R^(3)は同種または異種の一価炭化水素基、M^(1)はセリウム又はセリウムを主成分とする希土類元素混合物であり、2-エチルヘキサン酸、ナフテン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などのセリウム塩が例示される。なお、このセリウムのカルボン酸塩はその取り扱いの容易さ、下記(D-c)成分のチタン若しくはジルコニウム化合物との相溶性の面から、有機溶剤溶液として使用されるのがよく、この有機溶剤としては、スタンダードソルベント、ミネラルスピリット、リグロイン、石油エーテルなどの石油系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が例示される。 (D-b)成分の添加量は、セリウム量が上記a)成分100質量部に対して0.05?5質量部となる量、好ましくは0.1?3質量部となる量である。セリウム量が0.05質量部未満の場合、期待される耐熱性が得られない。また、5質量部より多い場合、セリウム化合物がD-a)成分中で不均一となり、やはり所定の耐熱性が得られない。 【0030】 (D-c)成分としてのチタン化合物又はジルコニウム化合物は、一般式: (R^(4)O)_(4)M^(2) で示される。ここで、R^(4)は各々独立して一価炭化水素基、好ましくはイソプロピル基、n-ブチル基、ステアリル基、オクチル基などの炭素原子数1?30、好ましくは炭素原子数1?20のアルキル基であり、M^(2)はチタン又はジルコニウムである。かかる化合物には、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウムが例示されるが、その部分加水分解縮合物であってもよい。 (D-c)成分はチタン若しくはジルコニウム化合物自体が耐熱性の向上に寄与するわけではないが、(D-b)成分であるセリウム化合物を(D-a)成分であるオルガノポリシロキサン中に溶解させる助剤として作用するものである。(D-c)成分の量は、該成分中のチタン又はジルコニウムの質量が(D-b)成分中のセリウムの質量と比較して、0.01?5倍となる量であり、0.05?3倍となる量であるのが好ましい。0.01倍未満の場合は(D-b)成分のセリウム化合物の(D-a)成分であるオルガノポリシロキサンに対する均一な導入が困難になり、5倍より多すぎると逆に耐熱性が低下しやすくなる。 【0031】 (D)成分は(D-a)、(D-b)及び(D-c)成分を混合後、150℃以上の温度で熱処理することによって得られるものであるが、その加熱温度が150℃未満では均一な組成を得ることが難しく、310℃を超えると(D-a)成分の熱分解速度が大きくなるので、150?310℃で熱処理するのが好ましく、より好ましくは200?305℃、更に好ましく250?300℃熱処理する。 【0032】 (D-a)、(D-b)及び(D-c)成分の混合には、これら3種の成分を同時に混合してもよいが、(D-b)成分のカルボン酸塩が塊状となりやすいので、(D-b)成分と(D-c)成分を予め混合し均一な組成物とした後、(D-a)成分と混合することが好ましい。 【0033】 (D)成分は(A)成分100質量部に対して、0.01部?5質量部添加するが、好ましくは0.05?2質量部添加する。(D)成分の添加量が0.01質量部未満の場合、高温での耐熱性向上の効果が見られず、逆に5質量部を超えた場合、シリコーンゲルとしての透明性が低下するため、不適となる。」 (b-4) 「【0034】 〔その他の任意成分〕 本発明の組成物には、上記(A)?(D)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。 【0035】 反応抑制剤は、上記組成物の反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、エチニルシクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、組成物全体の0.001?5質量%である。 【0036】 無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、シリコーンゲル組成物に低粘度、且つ透明性を要求される場合は、無機質充填剤を配合しないのが好ましいが、配合しても本願組成物の20質量%以下、特に10質量%以下の量であるのが好ましい。」 (b-5) 「【0038】 〔シリコーンゲル硬化物の針入度〕 本発明の組成物から得られる硬化物は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度が10?200の範囲を満たすことが好ましく、更に好ましくは20?120、特に好ましくは30?100の範囲を満たすものである。この針入度が10より小さい場合には、低弾性率、低応力といったシリコーンゲル硬化物の特徴を発揮することが困難であり、200を超える場合には、シリコーンゲル硬化物としての形態を保持し難く、流動してしまう。 【実施例】 【0039】 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表し、「Vi」は「ビニル基」を表す。「粘度」は25℃における回転粘度計による測定値である。 【0040】 [実施例1] 粘度が100mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100部に、セリウムを主成分とする2-エチルヘキサン酸塩のターペン溶液(希土類元素含有量6質量%)10部(セリウム量として0.55部)とテトラn-ブチルチタネート2.1部(チタン質量が前記2-エチルヘキサン酸塩中のセリウム質量の0.3倍)を予め混合したものを充分攪拌しながら添加したところ、黄白色の分散液が得られた。これに窒素ガスを少量流通させながら、加熱してターペンを流出させ、次いで300℃で1時間加熱したところ、濃赤褐色でほぼ透明な均一組成物Iが得られた。 次に粘度が5,000mPa・sの両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン50部、粘度が100mPa・sの両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン50部、下記平均組成式(3): 【0041】 【化2】 【0042】 で表される粘度が45mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイロジェンシロキサン共重合体0.2部(このとき、上記両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンの合計中のケイ素原子結合アルケニル基1個あたりのケイ素原子結合水素原子の個数(以下、H/Viという)は0.80であった)、白金原子を1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部、エチニルシクロヘキサノール 0.05部、および上記組成物I 0.1部を均一に混合した後、得られた組成物を120℃で60分加熱硬化したところ、針入度85の硬化物を得た。なお、針入度は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度である(以下、同じ)。 【0043】 [実施例2] 下記平均組成式(4): 【0044】 【0045】 で示される粘度が800mPa・sのジメチルポリシロキサン100部、下記平均組成式(5): 【0046】 【化3】 【0047】 で表される粘度が18mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェン共重合体 7部(このとき、式(4)のジメチルポリシロキサン中のアルケニル基に1個に対し、H/Viは0.90であった)、白金原子を1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部、エチニルシクロヘキサノール0.01部、および組成物I 0.1部を均一に混合した後、得られた組成物を120℃で60分間加熱することにより硬化して、針入度90の硬化物を得た。 【0048】 [実施例3] 下記平均組成式(6): 【0049】 【化4】 【0050】 で表され、粘度が800mPa・sのジメチルポリシロキサン 100部、下記平均組成式(7): 【0051】 【化5】 【0052】 で表される粘度100mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェン共重合体0.9部(このとき、式(6)のジメチルポリシロキサン中のアルケニル基に1個に対し、H/Viは1.24であった。)、白金原子を1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部、エチニルシクロヘキサノール0.05部、および組成物I 0.1部を均一に混合した後、得られた組成物を150℃で30分硬化して、針入度65の硬化物を得た。 【0053】 [実施例4] 下記平均組成式(8): 【0054】 【化6】 【0055】 で表され、粘度が700mPa・sのジメチルポリシロキサン100部、実施例3中の式(7)で示される両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェン共重合体1.0部(このとき、式(8)のジメチルポリシロキサンのアルケニル基に1個に対し、H/Viは1.22であった。)、白金原子を1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部、エチニルシクロヘキサノール0.05部、および組成物I 0.1部を均一に混合した後、得られた組成物を150℃で30分硬化して、針入度70の硬化物を得た。 【0056】 [比較例1] 実施例1において、組成物Iを使用しないこと以外は同様にして、針入度85の硬化物を得た。 【0057】 [比較例2] 実施例2において、組成物Iを使用しないこと以外は同様にして、針入度90の硬化物を得た。 【0058】 [比較例3] 実施例3において、組成物Iを使用しないこと以外は同様にして、針入度65の硬化物を得た。 【0059】 [比較例4] 実施例4において、組成物Iを使用しないこと以外は同様にして、針入度70の硬化物を得た。 【0060】 [耐熱性試験] 上記実施例1?4および比較例1?4で得られた硬化物を用いて、150℃および200℃の恒温槽中に長期間放置した際の、針入度を表1に示す。 【0061】 【表1】 」 (3)甲3の記載事項 甲3には、申立人が申立書第16頁第17行?第22行で主張するとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。 (c-1) 「【発明が解決しようとする課題】 ・・(中略)・・ 【0014】 そこで本発明は、良好なレーザーマーキング性を有し、しかも、光を吸収することで暗所で発光する蓄光性蛍光体の特徴を生かして半導体装置の種別や製造者等の容易かつ明確な識別を可能とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。また、本発明は、これを用いて封止した半導体装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明は、前記の課題を解決するために以下のことを特徴としている。 【0016】 即ち、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、光を吸収して発光する成形体とする半導体封止用樹脂組成物であって、少なくともエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化触媒及び蓄光蛍光体が配合されていることを特徴とする。 【0017】 この半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、前記蓄光蛍光体が、母結晶としてアルミン酸塩化合物を含むことが好ましい。 【0018】 また、この半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、前記蓄光蛍光体が、組成物全体100質量部に対して3.0?9.0質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。 【0019】 また、本発明の半導体装置は、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止したことを特徴とする。 【発明の効果】 【0020】 本発明によれば、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成分として蓄光蛍光体を配合することにより、良好なマーキング性を有し、半導体装置の種別や製造者等の識別を、容易かつ明確に行うことができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物とすることができる。」 2.対比・検討 以下、本件発明と甲1発明と対比・検討する。 (1)対比 本件発明と上記甲1発明とを対比すると、甲1発明における「(A)下記一般式(1)(式及びその説明は省略)で表される一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で10?1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン」、「(B)SiO_(2)単位、R^(3)_(n)R^(4)_(p)SiO_(0.5)単位及びR^(3)_(q)R^(4)_(r)SiO_(0.5)単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(式の説明は省略、ただし、nは2又は3)」、「(C)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」及び「(D)白金族金属系触媒」は、それぞれ、本件発明における「(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、直鎖状のオルガノポリシロキサン」、「(B)下記平均単位式:(R^(1)_(3)SiO_(1/2))_(c)(SiO_(4/2))_(d)(XO_(1/2))_(e)(式の説明は省略、ただし、e=0であり、c/dが0は除く。)で表されるオルガノポリシロキサン」、「(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン」及び「(E)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒」に相当するものといえる。 また、甲1発明における「シリコーンゴム組成物からなる透明な発光半導体被覆保護材」は、発光半導体を被覆保護する前の状態のシリコーンゴム組成物であり、硬化性を有するものと解するのが自然であるから、本件発明における「硬化性シリコーン組成物」に相当する。 してみると、本件発明と甲1発明とは、 「(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、直鎖状のオルガノポリシロキサン、 (B)下記平均単位式: (R^(1)_(3)SiO_(1/2))_(c)(SiO_(4/2))_(d)(XO_(1/2))_(e) (式中、R^(1)は、それぞれ独立に、炭素数1?12のアルキル基、炭素数2?12のアルケニル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数7?20のアラルキル基、またはこれらの基の水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子で置換した基であり、但し、一分子中の2個又は3個のR^(1)は前記アルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、cは正数であり、dは正数であり、eは0であり、かつ、c+d=1であり、c/dは0超?10の数である。) で表されるオルガノポリシロキサン、 (C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1?4.0モルとなる量}、および (E)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒 から少なくともなる硬化性シリコーン組成物。」 の点で一致し、下記の点で相違するものといえる。 相違点:本件発明では「(D)セリウム含有オルガノポリシロキサン{(D)成分中のセリウム原子が、本組成物全質量に対して質量単位で20?1,500ppmとなる量}」を有するのに対して、甲1発明では当該「(D)セリウム含有オルガノポリシロキサン」の含有につき開示されていない点 (2)相違点についての検討 上記相違点につき検討すると、上記甲2にも記載されている(摘示(b-2)等参照)とおり、硬化物の耐熱性の改善等を意図して、アルケニル基含有ポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金系触媒を含有する硬化性シリコーンゲル組成物において、さらにセリウムのカルボン酸塩を含有するポリシロキサンを適量添加使用することは、少なくとも本願出願前公知の技術であるものとはいえる。 しかしながら、甲1発明においては、甲1の記載(摘示(a-3)、(a-5)及び(a-6)参照)からみて、甲1発明の組成物からなる硬化物が、-50℃?150℃の冷熱サイクル試験において1000サイクル経過後にもクラックが発生しない程度の高い耐熱性を有するとともに硬度及び埃付着防止性に優れた硬化物が既に提供されているものと認められるから、甲1発明における「シリコーンゴム組成物からなる透明な発光半導体被覆保護材」につき、甲2の記載の上記公知技術を組み合わせて、さらに「(D)セリウム含有オルガノポリシロキサン{(D)成分中のセリウム原子が、本組成物全質量に対して質量単位で20?1,500ppmとなる量}」を添加使用すべきことを動機付ける事項が存するものとは認められない。 してみると、甲1発明において、甲2に記載の上記公知技術を組み合わせて、さらに「(D)セリウム含有オルガノポリシロキサン{(D)成分中のセリウム原子が、本組成物全質量に対して質量単位で20?1,500ppmとなる量}」を添加使用することは、組み合わせるべき動機を欠くから、当業者が適宜なし得ることということはできない。 また、甲3の記載を検討しても、上記の相違点につき論及しているものとは認められない。 したがって、上記相違点は、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることではない。 (3)本件発明の効果について 本件発明の効果について本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき検討すると、本件発明に係る硬化物の耐熱試験は、260℃雰囲気下500時間経過後という厳しい条件下における硬化物表面のクラックの発生有無、変色の有無、硬度変化、接着強度、半導体の信頼性などを確認するものである(本件明細書【0070】?【0078】)ところ、甲1発明では、上記のとおりの-50℃?150℃の冷熱サイクル試験との条件でクラックの発生有無などを確認しており、甲2では、硬化物の耐熱試験として150℃又は200℃の雰囲気下で1000時間経過後の針入度の変化を確認しているのみである(摘示(b-5)参照)から、仮に、甲1発明において、甲2の記載の上記公知技術を組み合わせるべき動機が存したとしても、甲1発明に甲2記載の公知技術を組み合わせた場合の効果に基づいて、当業者が本件発明の耐熱性に係る高い効果を予期し得るものとは認めることができない。 (4)本件発明に係る対比・検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.他の請求項に係る発明について 本件特許の請求項2ないし17に係る発明は、いずれも請求項1に係る本件発明を直接又は間接的に引用して記載しているものであるところ、上記2.で説示したとおりの理由により、本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 したがって、本件特許の請求項2ないし17に係る発明についても、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 4.当審の判断のまとめ 以上のとおり、本件の請求項1ないし17に係る発明は、いずれも、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。 よって、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものということはできないから、上記取消理由は、理由がなく、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件異議申立において特許異議申立人が主張する取消理由は理由がなく、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、取り消すことができない。 ほかに、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-12-27 |
出願番号 | 特願2015-558990(P2015-558990) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡▲崎▼ 忠 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 近野 光知 |
登録日 | 2018-03-02 |
登録番号 | 特許第6297070号(P6297070) |
権利者 | ダウ コーニング コーポレーション 東レ・ダウコーニング株式会社 |
発明の名称 | 硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 村山 靖彦 |