• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1347965
審判番号 不服2017-11281  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-28 
確定日 2019-01-07 
事件の表示 特願2015-514068「平面のアバランシェ・フォトダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日国際公開、WO2013/176976、平成27年 7月23日国内公表、特表2015-520950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年5月17日(パリ条約による優先権主張2014年5月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成27年12月 9日 :手続補正書の提出
平成28年 7月27日付け:拒絶理由通知(同年7月29日発送)
同年10月26日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 3月28日付け:拒絶査定(同年3月30日送達)
同年 7月28日 :審判請求書・手続補正書の提出


第2 平成29年7月28日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1-11を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正するものであり、補正後の請求項1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の半導体層と、
前記第1の半導体層に隣接する増倍層と、
前記第1の半導体層の反対側で、前記増倍層に直接隣接する電荷制御層と、
低ドープであり、又は意図的にはドープされておらず、前記増倍層の反対側で、前記電荷制御層に直接隣接する第2の半導体層と、
前記第1の半導体層の反対側で、前記第2の半導体層に直接隣接する勾配吸収層と、
前記第2の半導体層の反対側で、前記勾配吸収層に直接隣接して位置するブロッキング層と
を備えるアバランシェ・フォトダイオード。」

2 本件補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項2-11を削除して、補正前の請求項1を補正後の請求項1にするものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。
また、本件補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていることは明らかである。
よって、本件補正は適法になされたものである。


第3 本願発明
上記第2において検討したとおり、本件補正は適法になされたものであるから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される上記「第2」に記載したとおりのものである。


第4 引用文献の記載と引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-311455号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。
(1)「【0001】
本発明は、半導体受光素子に関し、特に、素子内部に利得構造を有するアバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode、以下、APDと記す)に関する。」
(2)「【0031】
電界緩和層は、増倍層と光ガイド層に挾まれて形成されて、増倍層に印加された高電界を緩和し、光ガイド層に高電界が印加されないようにする層であるので、電界緩和層での電圧降下を大きくするために高濃度(例えば、10の18乗代以上)にドープした半導体層で構成する。」
(3)「【0036】
図1は、本発明を適用した長波長帯APDの構造を示す斜視図である。本実施例1のAPDは、図1に示すように、n型又は半絶縁性のInP基板101上に下から順にInP基板に格子整合させて、層厚1.0μm、不純物濃度5.00×10^(18)cm^(-3)のSiドープn型InPバッファ層102、層厚0.4μmのアンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層(以下、組成値を省略してInAlAsと記す)103、層厚0.1μm、不純物濃度5.00×10^(18)cm^(-3)のBeドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層(以下、組成値を省略してInAlAsと記す)104、層厚0.5μm、組成波長1.2μmのアンドープInAlGaAs光ガイド層(第2の光ガイド層)105、層厚0.5μm、不純物濃度1.00×10^(18)cm^(-3)のBeドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層(以下、組成値を省略してInGaAsと記す)106、層厚0.5μm、不純物濃度5.00×10^(18)cm^(-3)、組成波長1.2μmのBeドープp型InAlGaAs光ガイド層(第1の光ガイド層)107、層厚0.7μm、不純物濃度5.00×10^(18)cm^(-3)のBeドープp型InPキャップ層108を積層した多層構造を有している。」
(4)「【0039】
本実施例のAPDにおける、動作状態での内部電界強度分布を図4に示す。ここで、図4の縦軸は電界強度、横軸は多層構造の積層方向である。横軸の直下には、電界強度分布に対応させて多層構造を模式的に示してある。多層構造は、外部電圧印加により、アンドープInAlGaAs光ガイド層105からアンドープInAlAs増倍層103までが空乏化して、この部分に電界が印加される。InGaAs光吸収層106は不純物が高濃度に一様にドープされたp型層で形成されているため、外部電圧による電界が印加されない。同様に、不純物がドープされた、p型InAlGaAs光ガイド層107、p型InPキャップ層108、n型InPバッファ層102も電界が印加されない。電界強度は、図示の如く増倍層内が最も高い。アンドープInAlGaAs光ガイド層105は動作状態で電界が印加されるが、アンドープInAlGaAs光ガイド層105とアンドープInAlAs増倍層103との間にあるp型InAlAs電界緩和層104により、アンドープInAlAs増倍層103の高電界が緩和されるので、アンドープInAlGaAs光ガイド層105に印加される電界強度は低い。
【0040】
上記のように、本実施例のAPDは、ナローギャップ材料で構成されたp型InGaAs光吸収層106に電界が印加されないので、p型InGaAs光吸収層106におけるトンネル電流に起因した暗電流が抑制できる。また、アンドープInAlGaAs光ガイド層105は動作状態で弱電界強度の電界が印加されるが、組成波長1.2μmのアンドープInAlGaAs光ガイド層105のエネルギーバンドギャップはInGaAs光吸収層に比べて広いから、アンドープInAlGaAs光ガイド層105での暗電流の発生も抑制できる。」
(5)「【0042】
実施例2のAPDは、実施例1のAPDと異なり、p型InGaAs光吸収層106の不純物濃度に勾配を設けた不純物濃度分布になっている。この濃度勾配のある不純物濃度分布を除いたその他の多層構造部分については実施例1のAPDと同じ構成である。具体的には、p型InGaAs光吸収層106の不純物濃度は、アンドープInAlGaAs光ガイド層105とp型InGaAs光吸収層106の界面から、p型InAlGaAs光ガイド層107とp型InGaAs光吸収層106の界面に向けて、連続的にまたは階段状に増加する濃度分布になっている。」
(6)図1-4より、n型InPバッファ層102とアンドープInAlAs増倍層103、アンドープInAlAs増倍層103とp型InAlAs電界緩和層104、p型InAlAs電界緩和層104とアンドープInAlGaAs光ガイド層105、アンドープInAlGaAs光ガイド層105とp型InGaAs光吸収層106、p型InGaAs光吸収層106とp型InAlGaAs光ガイド層107、p型InPキャップ層108、p側電極112は、何れも直接隣接していることがみて取れる。

したがって、引用文献1には、実施例2に関して次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「下から順に、
Siドープn型InPバッファ層と、
前記Siドープn型InPバッファ層の上に隣接するアンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層と、
前記アンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層の上に直接隣接するBeドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層と、
前記Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層の上に直接隣接するアンドープInAlGaAs光ガイド層と、
前記アンドープInAlGaAs光ガイド層の上に直接隣接し、不純物濃度に勾配を設けた不純物濃度分布を有するBeドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層と、
前記Beドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層の上に直接隣接するBeドープp型InAlGaAs光ガイド層と、
p型InPキャップ層108と、p側電極112と、
を有しており、電界緩和層は、増倍層とアンドープInAlGaAs光ガイド層に挾まれて形成されて、増倍層に印加された高電界を緩和し、アンドープInAlGaAs光ガイド層に高電界が印加されないようにする層である、アバランシェフォトダイオード。」


第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

1 引用発明の「Siドープn型InPバッファ層」は、Siドープn型InPが半導体であるから、本願発明の「第1の半導体層」に相当する。
2 引用発明の「前記Siドープn型InPバッファ層の上に隣接するアンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層」は、本願発明の「前記第1の半導体層に隣接する増倍層」に相当する。
3 本願発明の「前記第1の半導体層の反対側で、前記増倍層に直接隣接する電荷制御層」と引用発明の「前記アンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層の上に直接隣接するBeドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層」、「電界緩和層は、増倍層とアンドープInAlGaAs光ガイド層に挾まれて形成されて、増倍層に印加された高電界を緩和し、アンドープInAlGaAs光ガイド層に高電界が印加されないようにする層である」とを対比する。
(1)引用発明の「アンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層」は「前記Siドープn型InPバッファ層の上に隣接する」ものであり、「Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層」は「前記アンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層の上に直接隣接する」ものであるから、「Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層」は、「Siドープn型InPバッファ層」の反対側で(すなわち、前記「第1の半導体層」の反対側で)前記増倍層に直接隣接する。
したがって、本願発明の電荷制御層と引用発明の電界緩和層とは、「前記第1の半導体層の反対側で、前記増倍層に直接隣接する」層である点で一致する。
(2)引用発明では、「下から順に、」電界緩和層と、アンドープInAlGaAs光ガイド層と、光吸収層とを有しており、引用発明の「p型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層」は、「増倍層とアンドープInAlGaAs光ガイド層に挾まれて形成されて、増倍層に印加された高電界を緩和し、アンドープInAlGaAs光ガイド層に高電界が印加されないようにする層であ」るから、光吸収層は、電界緩和層によって電界が緩和されているといえる。
よって、引用発明の電界緩和層は、増倍層に印加された高電界を緩和し、光吸収層の電界を緩和する層であるといえる。
次に、本願発明の「電荷制御層」の意味について検討する。
本願明細書の【0005】の「電荷制御層内の全電荷により、増倍を生じさせるのに十分なほど大きくしなければならない高電界InPアバランシェ領域と、トンネリングを回避するのに十分なほど小さくしなければならない低電界InGaAs吸収領域との両方で、電界の値が決まる。」という記載を参酌すると、「電荷制御層」とは、アバランシェ領域(すなわち、増倍層)の電界を増倍を生じさせるのに十分なほど大きいままとするとともに、光吸収層の電界をトンネリングを回避するのに十分なほど小さくする層のことといえる。
よって、引用発明の「電界緩和層」は、本願発明の「電荷制御層」に相当する。
(3)したがって、本願発明と引用発明とは「前記第1の半導体層の反対側で、前記増倍層に直接隣接する電荷制御層」を備える点で一致する。
4 本願発明の「意図的にはドープされておらず、前記増倍層の反対側で、前記電荷制御層に直接隣接する第2の半導体層」と引用発明の「前記Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層の上に直接隣接するアンドープInAlGaAs光ガイド層」とを対比する。
引用発明の「アンドープInAlGaAs光ガイド層」は「前記Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層の上に直接隣接する」ものであり、「Beドープp型In_(0.52)Al_(0.48)As電界緩和層」は「前記アンドープIn_(0.52)Al_(0.48)As増倍層の上に直接隣接する」ものである。
したがって、本願発明の第2の半導体層と引用発明のアンドープInAlGaAs光ガイド層とは、「意図的にはドープされておらず、前記増倍層の反対側で、前記電荷制御層に直接隣接する」層である点で一致する。また、InAlGaAsは半導体である。
よって、本願発明と引用発明とは、「意図的にはドープされておらず、前記増倍層の反対側で、前記電荷制御層に直接隣接する第2の半導体層」を備える点で一致する。
5 引用発明の「前記アンドープInAlGaAs光ガイド層の上に直接隣接し、不純物濃度に勾配を設けた不純物濃度分布を有するBeドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層」は、n型InPバッファ層の反対側にあるから、本願発明の「前記第1の半導体層の反対側で、前記第2の半導体層に直接隣接する勾配吸収層」に相当する。
6 本願発明の「前記第2の半導体層の反対側で、前記勾配吸収層に直接隣接して位置するブロッキング層」と引用発明の「前記Beドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層の上に直接隣接するBeドープp型InAlGaAs光ガイド層」とを対比する。
(1)引用発明の「Beドープp型InAlGaAs光ガイド層」は「前記Beドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層の上に直接隣接する」ものであり、「前記Beドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層はアンドープInAlGaAs光ガイド層の上に直接隣接する」ものであるから、前記「Beドープp型InAlGaAs光ガイド層」はアンドープInAlGaAs光ガイド層(すなわち「第2の半導体層」)の反対側で前記Beドープp型In_(0.53)Ga_(0.47)As光吸収層に直接隣接する。
したがって、本願発明のブロッキング層と引用発明のBeドープp型InAlGaAs光ガイド層とは、「前記第2の半導体層の反対側で、前記勾配吸収層に直接隣接して位置する」層である点で一致する。
(2)次に、本願発明の「ブロッキング層」の意味について検討する。
本願明細書には、「ブロッキング層」について定義又は説明はされていないが、ブロッキング層(電荷注入阻止層)とは、例えば、下記の特開平3-278482号公報(以下、「周知例1」という。)、特開平7-183567号公報(以下、「周知例2」という。)、及び、特開平4-211181号公報(以下、「周知例3」という。)に記載されているように、電極に対して、信号キャリアの走行方向には障壁とはならず、暗電流のキャリアの走行に対しては障壁となる、電極からのキャリアの注入を阻止するためのp型又はn型の半導体層(電子注入を阻止するためのp型半導体層、正孔注入を阻止するためのn型半導体層)のことである。
引用発明において、p型InAlGaAs光ガイド層は、p型のInAlGaAsからなり、Siドープn型InPバッファ層とで、増倍層と光吸収層とを挟む層であるといえるから、電子に対して障壁となる層、すなわち、電子注入阻止層(ブロッキング層)であることは明らかである(必要であれば、上記周知例2の[0043]を参照。)。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第2の半導体層の反対側で、前記勾配吸収層に直接隣接して位置するブロッキング層」を備える点で一致する。
・周知例1:特開平3-278482号公報
「【電荷注入阻止層】
上述した電極には、光吸収層又は増倍層から取り出す信号となるキャリアの走行方向には障壁とはならず、電極とはオーミック接合するが、前記信号となるキャリアの走行方向とは逆方向への暗電流のキャリアの走行に対しては障壁となるp型、又はn型の伝導性を有する電荷注入阻止層(ブロッキング層)を設けてもよい。
前記電荷注入阻止層を設けることにより電極からの不必要なキャリアの注入を阻止し得るので暗電流による雑音をさらに減らすことができる。
前記電荷注入阻止層は光吸収層又は増倍層と同様の材料に伝導性を制御し得る不純物を含ませた材料で形成することができる。」(19頁左上欄5-18行。下線は合議体が付加した。以下同じ。)
「第5図(a)に示した素子は、素子に電圧を印加するまたは信号を取り出すためのオーミック接触層、いわゆる電極1および6と、電極1からのキャリアの注入を阻止するためのブロッキング層(電荷注入阻止層)2と、電極6からのキャリアの注入を阻止するためのブロッキング層5と、それらに挟まれた、電極1側から本素子に入射した光に対して該光を吸収しフォトキャリアを発生し光電変換を行うための受光層3と、全体として4で示されている複数の誘電率変化層から構成されているアバランシェ領域(増倍層)と、から構成されている。」(19頁左下欄4-15行)
・周知例2:特開平7-183567号公報
「【0043】実施例1
図1は、本発明の光電変換装置の1態様を示す模式断面図であり、光吸収層104と、キャリア増倍層103とが電荷注入阻止層となるp型半導体層105とn型半導体層102とで挟まれており、p型半導体層105と電極106とが電気的に接続され、n型半導体層102と電極101とが電気的に接続されている。キャリア増倍層は3層の禁制帯幅傾斜層111、112、113により構成されている。p型半導体層又はn型半導体層は隣接する半導体層とショットキー接続されていても良い。また、禁制帯幅傾斜層は3層に限定されず、1層又は2層あるいは3層以上であってもよい。
【0044】電極101はEB(電子ビーム)蒸着装置で形成したCr電極である。
【0045】n型半導体層102は厚さ約500オングストロームのn型μc-Si:Hからなり、正孔注入を阻止するための正孔注入阻止層として機能するものである。キャリア増倍層103は1.4eVの禁制帯幅を示すa-SiGex :H膜100オングストローム上に禁制帯幅層が3.0?1.4eVまで連続的に変化するようにa-SiCx :H?a-SiGex :Hからなる組成においてCとGeとの含有量を変化させた膜100オングストロームを連続して形成した禁制帯幅傾斜層111、並びに111と同様の構成の層112、113から成り立っている。
【0046】光吸収層104は光を吸収しキャリアを発生させるための厚さ5000オングストロームのa-Si:H膜である。
【0047】p型半導体層105は約100オングストロームのp型μc-Si:Hからなり、電子注入を阻止するための電子注入阻止層として機能するものである。」
・周知例3:特開平4-211181号公報
「【0133】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
以下、図1、図4及び図5を用いて本発明の第1実施例について説明する。
【0134】図1は、本発明の光電変換装置の第1実施例を示す概略的縦断面構造図である。図1に図示される光電変換装置は、Cr電極401、該電極401より正孔注入を阻止するための厚さ約500Åのn型a-Si_(1- )Ge_( ):Hからなる電荷注入阻止層402、キャリア増倍を行うためのa-Si_(1- )Ge_( ):H?a-Si_(1- )C_( ):Hの組成を変化させた層を積層した増倍領域403、光が増倍領域まで侵入するのを阻止するための厚さ約200ÅのCrからなる遮光層404、光を吸収しキャリアを発生させるための厚さ約1μmのa-Si:Hからなる光吸収層405、光入射側の電極より電子注入を阻止するための厚さ約100Åのp型a-Si:Hからなる電荷注入阻止層406、酸化インジウムを主体とした透明電極407を有している。
【0135】Cr電極401、遮光層404及び透明電極407はEB蒸着で作成し、電荷注入阻止層402、増倍領域403、光吸収層405および電荷注入阻止層406の非晶質層はプラズマCVD法で作成した。非晶質層作成の際の原料ガスは、電荷注入阻止層402にはSiH_(4),GeH_(4),PH_(3)、H_(2)、増倍領域403にはSiH_(4),GeH_(4),CH_(4),H_(2)、光吸収層405にはSiH_(4),H_(2)、電荷注入阻止層406にはSiH_(4),B_(2)H_(6),H_(2)を用いた。
【0136】増倍領域403は原料ガスのうちCH_(4)とGeH_(4)のガス流量を連続的に変化させた厚さ200Åの組成変化層411,412,413の3つの層で形成した。
【0137】図1に示した第1実施例の光電変換装置のエネルギバンド構造は、理想的には図4及び図5に示すようなものである。
【0138】図4は第1実施例の光電変換装置が無バイアス状態にあるときエネルギ帯図、図5はキャリア増倍動作を行うためにバイアスを印加した状態にあるときのエネルギ帯図である。
【0139】図4及び図5は、n型a-Si_(1- )Ge_( ):H層402の禁制帯幅がEg4、a-Si_(1- )Ge_( ):H?a-Si_(1- )C_( ):H組成変化層411,412,413の3つの層からなる増倍領域403の最小禁制帯幅がEg2、増倍領域403の最大禁制帯幅がEg3、a-Si:H層405の禁制帯幅がEgl、p型a-Si:H層406の禁制帯幅がEg0であることを示している。404はCr電極に対応する。
【0140】また、図4において、伝導帯端、価電子帯端ともにエネルギの不連続点があるが、バイアス電圧が印加された状態では、図5を見てもわかるようにキャリアの走行する方向にエネルギ不連続による障壁がほとんどなく、キャリアの走行性を阻害していない。」
8 引用発明の「アバランシェフォトダイオード」は、本願発明の「アバランシェ・フォトダイオード」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。
「第1の半導体層と、
前記第1の半導体層に隣接する増倍層と、
前記第1の半導体層の反対側で、前記増倍層に直接隣接する電荷制御層と、
意図的にはドープされておらず、前記増倍層の反対側で、前記電荷制御層に直接隣接する第2の半導体層と、
前記第1の半導体層の反対側で、前記第2の半導体層に直接隣接する勾配吸収層と、
前記第2の半導体層の反対側で、前記勾配吸収層に直接隣接して位置するブロッキング層と
を備えるアバランシェ・フォトダイオード。」

よって、本願発明の構成はすべて引用文献1に示されており、本願発明は引用発明と同一ということとなる。
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-16 
結審通知日 2018-08-17 
審決日 2018-08-28 
出願番号 特願2015-514068(P2015-514068)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 571- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 元彦  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 村井 友和
近藤 幸浩
発明の名称 平面のアバランシェ・フォトダイオード  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ