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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347985
審判番号 不服2018-2763  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-27 
確定日 2019-01-10 
事件の表示 特願2015-203213号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年3月17日出願公開、特開2016-34532号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月22日に出願した特願2006-79652号の一部を平成24年2月2日に新たな特許出願(特願2012-20773号)とし、さらにその一部を平成26年7月4日に新たな特許出願(特願2014-138282号)とし、さらにその一部を平成27年10月14日に新たな特許出願(特願2015-203213号)としたものであって、平成28年8月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月10日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月22日付けで、同年6月7日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成28年11月2日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A1?Dについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A1 特定の始動領域への遊技球の流入を契機として抽選が実行され、
A2 当該抽選において当選の種類として、通常遊技状態から特別遊技状態へ遊技状態が移行する第1の当たり当選と、前記第1の当たり当選よりも前記特別遊技状態が短期間で終了する第2の当たり当選と、を有し、
A3 当該抽選の結果を所定の図柄変動パターン演出によって報知する
A4 遊技機であって、
B 前記図柄変動パターン演出のモードとして、第1の図柄変動パターンモードと、第2の図柄変動パターンモードと、を設け、
C 前記第1の図柄変動パターンモードが起動している状態で、少なくとも前記抽選の結果として前記第2の当たり当選が決定された場合には、前記第2の図柄変動パターンモードに切り替える図柄変動パターンモード切替制御手段を有し、
D 前記第2の図柄変動パターンモードは、前記抽選の当選確率が向上する確変に当選する期待値が設定された図柄を複数有して構成される
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A1 特定の始動領域への遊技球の流入を契機として抽選が実行され、
A2 当該抽選において当選の種類として、通常遊技状態から特別遊技状態へ遊技状態が移行する第1の当たり当選と、前記第1の当たり当選よりも前記特別遊技状態が短期間で終了する第2の当たり当選と、を有し、
A3 当該抽選の結果を所定の図柄変動パターン演出によって報知する
A4 遊技機であって、
B 前記図柄変動パターン演出のモードとして、第1の図柄変動パターンモードと、第2の図柄変動パターンモードと、を設け、
C 前記第1の図柄変動パターンモードが起動している状態で、少なくとも前記抽選の結果として前記第2の当たり当選が決定された場合には、前記第2の図柄変動パターンモードに切り替える図柄変動パターンモード切替制御手段を有し、
D 前記第2の図柄変動パターンモードは、前記抽選の当選確率が向上する確変に当選する期待値が設定された図柄を複数有するとともに、前記期待値が0%に設定された前記図柄を含まない一方、前記期待値が100%に設定された前記図柄を含んで構成される
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「第2の図柄変動パターンモード」について、「前記期待値が0%に設定された前記図柄を含まない一方、前記期待値が100%に設定された前記図柄を含んで構成される」ことを付加して限定したものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0082】及び【0111】並びに図7の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2005-185343号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0045】
上記構成のパチンコ機10において、パチンコ球が始動口46に入賞すると、この入賞が有効の場合(保留が満杯ではない場合)、内部的に抽選が実行され、当たり/外れが決まる。ここで、当たりの場合は、確率変動(高確率/通常確率)の抽選も続けて実行されるようになっている。
【0046】
抽選結果(当たり/外れ、並びに確率変動結果)は、表示部43において図柄変動パターン演出を実行することで遊技者に報知され、当該図柄変動パターン演出の終了後から特別遊技(大役遊技)状態が開始される。
【0047】
特別遊技状態とは、変動入賞口44が所定時間(約30秒)開放されることであり、遊技盤32上のパチンコ球が極めて高い確率でこの変動入賞口44に入賞するため、遊技者は短期間で多くの賞球払出を受けることが可能となる。また、この変動入賞口44は、1回の開放時間内で、所定数(10個)のパチンコ球の入賞を限度として閉止する。すなわち、変動入賞口44は、1ラウンドとして、開放開始時から30秒間、或いは10個の入賞の何れか一方の先に満足した時点で閉止する。また、変動入賞口44が開放しているとき、その内部に設けたVゾーンに入賞することで、次の変動入賞口44の権利を得ることができ、最大複数ラウンド(15ラウンド)の遊技が可能となっており、遊技者にとって遊技な遊技状態となる(表1参照)。」

「【0049】
ここで、本実施形態では、前記当たりとして、大役と小役の2種類を設けており、上記特別遊技状態は、大役に当選したときとされている。言い換えれば、特別遊技と大役遊技とは、等価である。」

「【0050】
小役に当選した場合は、高確率が約束される一方、上記特別遊技状態とほぼ同様に遊技状態ではあるが、前記所定時間、所定数、所定ラウンドを変更して、遊技者にとって有利の度合いが低い(本実施形態では、ほとんど有利とならない)設定としている(小役遊技)。
【0051】
すなわち、小役遊技の場合には、変動入賞口44が0.4秒(これは、少なくと1個のパチンコ球が入賞可能な最低時間である)開放され、最大2ラウンドで終了する設定となっている(表1参照)。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?dについては本願補正発明のA?Dに対応させて付与した。)。

「a1 パチンコ球が始動口46に入賞すると、この入賞が有効の場合(保留が満杯ではない場合)、内部的に抽選が実行され(【0045】)、
a2 当たりの種類として、変動入賞口44が所定時間(約30秒)開放され、遊技盤32上のパチンコ球が極めて高い確率でこの変動入賞口44に入賞するため、遊技者が短期間で多くの賞球払出を受けることが可能となる特別遊技状態となる大役当選と、高確率が約束される一方、変動入賞口44が0.4秒開放され、最大2ラウンドで終了する小役当選と、を有し(【0047】、【0049】、【0050】、【0051】)、
a3 抽選結果(当たり/外れ、並びに確率変動結果)を、表示部43において図柄変動パターン演出を実行することで遊技者に報知する(【0046】)
a4 パチンコ機10(【0045】)。 」

イ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2005-52508号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0027】
図1は、本実施例におけるパチンコ遊技機1の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2にはガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域のほぼ中央位置には、各々が識別可能な識別情報としての特別図柄を可変表示可能に表示する可変表示装置4が設けられている。この可変表示装置4の下側には、普通可変入賞球装置(始動入賞口)6が配置されている。普通可変入賞球装置6の下側には、特別可変入賞球装置(大入賞口)7が配置されている。また、可変表示装置4の上部には、普通図柄表示器40が設けられている。」

「【0029】
可変表示装置4により行われる特図ゲームでは、特別図柄の可変表示を開始した後、一定時間が経過すると、特別図柄の表示結果を所定の順序で導出表示し、確定図柄(最終停止図柄)を停止表示する。そして、確定図柄の組合せが所定の大当り組合せ(大当りの停止図柄態様)である特定表示結果となったときに、このパチンコ遊技機1は、特定遊技状態(大当り遊技状態ともいう)となる。この大当り遊技状態においては、所定期間(例えば、29秒)が経過するまで、あるいは所定個数(例えば、10個)の入賞球が発生するまで、特別可変入賞球装置7が開成され、開成されている間、遊技盤2の表面を落下する遊技球を受け止める。そして、この開成サイクルを所定の上限回数(例えば、16回)まで繰り返すことができる。そして、大当たり遊技状態が終了した後には、確率変動制御(確変制御)あるいは時間短縮制御(時短制御)のいずれかが行われる特別遊技状態となる。なお、大当たり遊技状態や確率向上状態、時間短縮状態以外の遊技状態を通常遊技状態といい、特図ゲームにおける表示結果が大当たり組合せとなる確率が、電源投入直後などの初期設定状態と同一に制御される。
【0030】
図2は、この実施の形態で用いられる特別図柄の例を示す図である。図2(A)は通常遊技状態に制御されたときに用いられる特別図柄(通常特別図柄)の例を示している。また、図2(B)は特別遊技状態に制御されたときに用いられる特別図柄(特殊特別図柄)の例を示している。」

「【0033】
本実施の形態の特殊特別図柄では、大当たり信頼度又は期待度(その可変表示が行われた際に、大当たりとなる確率)が、図柄「●」>図柄「▲」>図柄「■」>図柄「★」に設定されている。すなわち、どの図柄でリーチ表示態様となるかにより、大当たり信頼度が異なる。このため、遊技者は、どの特殊特別図柄でリーチ表示態様になるかにも興味を持つようになり、遊技興趣を向上させることができる。また、本実施の形態の特殊特別図柄では、確変信頼度又は期待度(その可変表示が行われた際に、特別遊技状態となる大当たりとなる確率)が、図柄「●」>図柄「▲」>図柄「■」>図柄「★」に設定されている。このため、遊技者は、どの特殊特別図柄で特定表示結果になるかにも興味を持つようになり、遊技興趣を向上させることができる。
【0034】
この実施の形態では、通常特別図柄の図柄番号が奇数である特別図柄を確変大当たり図柄とし、特図ゲームにおける可変表示の表示結果として各可変表示部にて同一の確変大当たり図柄が導出表示されて確定したときは確変大当たりとなる。特図ゲームの可変表示結果が確変大当たりとなったときには、大当たり遊技状態が終了した後に、所定回数(本実施形態では100回)の特図ゲームが実行されるまで継続して確変制御が行われる確率向上状態となる。確変制御が行われる確率向上状態では、特図ゲームにおける特別図柄の可変表示時間が通常遊技状態のときよりも短くなるとともに、表示結果が予め定められた特定表示結果となって大当たり遊技状態となる確率が、通常遊技状態よりも向上する。
【0035】
また、この実施の形態では、通常特別図柄の図柄番号が偶数である特別図柄を通常大当たり図柄とし、特図ゲームにおける可変表示の表示結果として各可変表示部にて同一の通常大当たり図柄が導出表示されて確定したときには通常大当たりとなる。特図ゲームの可変表示結果が通常大当たりとなったときには、大当たり遊技状態が終了した後に、所定回数(本実施形態では100回)の特図ゲームが実行されるまで継続して時短制御が行われ
る時間短縮状態となる。時短制御が行われる時間短縮状態では、各特図ゲームにて特定表示結果となって大当たり遊技状態となる確率は通常遊技状態と同一であるが、特図ゲームにおける特別図柄の可変表示時間が通常遊技状態のときよりも短くなる。さらに、この実施の形態では、特別遊技状態にて実行された特図ゲームの表示結果が大当たりとなったときには、その特図ゲームにおける大当たりの表示結果(確変大当たりあるいは通常大当たり)に応じて、さらに所定回数の特図ゲームが実行されるまで特別遊技状態に継続制御される。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(a?dについては本願補正発明のA?Dに対応させて付与した。)。

「b 通常特別図柄が用いられる通常遊技状態と、特殊特別図柄が用いられる特別遊技状態と、を設け(【0030】)、
c 大当たり遊技状態が終了した後には、確率変動制御(確変制御)あるいは時間短縮制御(時短制御)のいずれかが行われる特別遊技状態となるが、大当たり遊技状態や確率向上状態、時間短縮状態以外の遊技状態を通常遊技状態といい、特図ゲームにおける表示結果が大当たり組合せとなる確率が、電源投入直後などの初期設定状態と同一に制御され(【0029】)、
d 前記特殊特別図柄は、期待度(その可変表示が行われた際に、特別遊技状態となる大当たりとなる確率)が、図柄「●」>図柄「▲」>図柄「■」>図柄「★」に設定されているが(【0033】)、通常特別図柄は、図柄番号が奇数である特別図柄を確変大当たり図柄、図柄番号が偶数である特別図柄を通常大当たり図柄に設定されている(【0034】、【0035】)
パチンコ遊技機1(【0027】)。

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a1)?(d)は、本願補正発明のA1?Dに対応させている。

(a1)引用発明1の「a1 パチンコ球が始動口46に入賞すると、この入賞が有効の場合(保留が満杯ではない場合)、内部的に抽選が実行され」ることは、本願補正発明の「A1 特定の始動領域への遊技球の流入を契機として抽選が実行され」ることに相当する。

(a2)引用発明1の「a2 当たりの種類として、変動入賞口44が所定時間(約30秒)開放され、遊技盤32上のパチンコ球が極めて高い確率でこの変動入賞口44に入賞するため、遊技者が短期間で多くの賞球払出を受けることが可能となる特別遊技状態となる大役当選と」、「変動入賞口44が0.4秒開放され、最大2ラウンドで終了する小役当選と、を有」することは、本願補正発明の「A2 当該抽選において当選の種類として、通常遊技状態から特別遊技状態へ遊技状態が移行する第1の当たり当選と、前記第1の当たり当選よりも前記特別遊技状態が短期間で終了する第2の当たり当選と、を有」することに相当する。

(a3)引用発明1の「a3 抽選結果(当たり/外れ、並びに確率変動結果)を、表示部43において図柄変動パターン演出を実行することで遊技者に報知する」ことは、本願補正発明の「A3 当該抽選の結果を所定の図柄変動パターン演出によって報知する」ことに相当する。

(a4)引用発明1の「a4 パチンコ機10」は、本願補正発明の「A4 遊技機」に相当する。

そうすると、両者は、
「A1 特定の始動領域への遊技球の流入を契機として抽選が実行され、
A2 当該抽選において当選の種類として、通常遊技状態から特別遊技状態へ遊技状態が移行する第1の当たり当選と、前記第1の当たり当選よりも前記特別遊技状態が短期間で終了する第2の当たり当選と、を有し、
A3 当該抽選の結果を所定の図柄変動パターン演出によって報知する
A4 遊技機」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は
「B 前記図柄変動パターン演出のモードとして、第1の図柄変動パターンモードと、第2の図柄変動パターンモードと、を設け、
C 前記第1の図柄変動パターンモードが起動している状態で、少なくとも前記抽選の結果として前記第2の当たり当選が決定された場合には、前記第2の図柄変動パターンモードに切り替える図柄変動パターンモード切替制御手段を有し、
D 前記第2の図柄変動パターンモードは、前記抽選の当選確率が向上する確変に当選する期待値が設定された図柄を複数有するとともに、前記期待値が0%に設定された前記図柄を含まない一方、前記期待値が100%に設定された前記図柄を含んで構成される」のに対し、引用発明1はそのようなもではない点。

イ 判断
以下、上記相違点について検討する。

引用発明2の「b 通常特別図柄が用いられる通常遊技状態と、特殊特別図柄が用いられる特別遊技状態と、を設け」ることは、本願補正発明の「B 前記図柄変動パターン演出のモードとして、第1の図柄変動パターンモードと、第2の図柄変動パターンモードと、を設け」ることに相当する。

また、引用発明2の「c 大当たり遊技状態が終了した後には、確率変動制御(確変制御)あるいは時間短縮制御(時短制御)のいずれかが行われる特別遊技状態となるが、大当たり遊技状態や確率向上状態、時間短縮状態以外の遊技状態を通常遊技状態といい、特図ゲームにおける表示結果が大当たり組合せとなる確率が、電源投入直後などの初期設定状態と同一に制御される」ことは、通常遊技状態で大当たり遊技状態が終了した後に、特別遊技状態となることは明らかであり、そのための状態切替制御手段を有することも明らかであって、確変制御が行われる大当りを本願補正発明の「第2大当り」に対応させれば、これら引用発明2の構成は、本願補正発明の「C 前記第1の図柄変動パターンモードが起動している状態で、少なくとも前記抽選の結果として前記第2の当たり当選が決定された場合には、前記第2の図柄変動パターンモードに切り替える図柄変動パターンモード切替制御手段を有」することに相当する。

さらに、引用発明2の「d 前記特別遊技状態は、期待度(その可変表示が行われた際に、特別遊技状態となる大当たりとなる確率)が、図柄「●」>図柄「▲」>図柄「■」>図柄「★」に設定されている特殊特別図柄」「を有する」ことと、本願補正発明の「D 前記第2の図柄変動パターンモードは、前記抽選の当選確率が向上する確変に当選する期待値が設定された図柄を複数有するとともに、前記期待値が0%に設定された前記図柄を含まない一方、前記期待値が100%に設定された前記図柄を含んで構成される」こととは、「D’前記第2の図柄変動パターンモードは、前記抽選の当選確率が向上する確変に当選する期待値が設定された図柄を複数有する」点で共通する。
ここで、引用発明2において、図柄「●」、図柄「▲」、図柄「■」、図柄「★」の具体的な期待度は明示されていない(図2の「確変信頼度 ●>▲>■>★」の下方に「40/100 30/100 20/100 10/100」と記載されるが、発明の詳細な説明には対応する説明がなく、これらの数値が期待度か否か明確でない。)ところ、通常遊技状態において、図柄番号が奇数である特別図柄を期待値100%たる確変大当たり図柄とし、図柄番号が偶数である特別図柄を期待値0%たる通常大当り図柄としていることに鑑みれば、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態であり、かつ遊技興趣を向上させる特殊特別図柄を用いた演出状態において、遊技者の遊技意欲を削がないように、期待値が0%に設定された特殊特別図柄を含まない一方、期待値が100%に設定された特殊特別図柄を含んで構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、格別の発明性があるとは認められない。

そして、引用発明1の小役当選もその後は高確率状態になるのであるから、高確率状態であることをわかりやすく報知するとともに遊技の興趣向上のために、引用発明2の確率変動制御(確変制御)で用いられる特殊図柄を採用して、相違点に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。

そのうえ、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本願補正発明は、第2の図柄変動パターンモードにおいて、第2の当たり当選に当選する期待値が設定された図柄を複数有して構成されることのみならず、期待値が0%に設定された図柄を含まない一方、期待値が100%に設定された図柄を含んで構成される点に特徴を有しているのに対し、平成29年11月22日付けの補正却下で引用された特開2005-74021号公報に記載された発明では、図柄に期待値0%を含んで構成されるものであり、本願補正発明とは大きく異なる。図柄に期待値0%を含んで構成した場合、確変が発生する可能性が最初から全くないという不安感を残してしまい、遊技意欲が削がれる恐れがある、すなわち、特開2005-74021号公報に記載された発明には、本願補正発明のように期待値が0%に設定された図柄を含まない一方、期待値が100%に設定された図柄を含んで構成される点について開示も示唆もないと言え、よって、このような特開2005-74021号公報に基づく構成を同じく補正却下で引用された特開2005-185343号公報(引用文献1)や特開2005-253952号公報に記載された発明に取り入れたとしても、本願補正発明の効果のうちとりわけ(b)第2の図柄変動パターンモードにおける期待値が設定された図柄群には、期待値が100%に設定された図柄を含んで構成されるため、確変が発生するか否かが不確実としたスリル感のみならず、場合によっては確変が発生することを確実に把握できる安心感も遊技者に与えることができるという効果、(c)第2の図柄変動パターンモードにおける期待値が設定された図柄群には、期待値が0%に設定された図柄を含まない構成であるため、確変が発生する可能性が最初から全くないという不安感を払拭した遊技仕様を提供することができるという効果の双方を奏することはあり得ない旨主張する。

しかしながら、上記(3)イで検討したように、引用発明2において、図柄「●」、図柄「▲」、図柄「■」、図柄「★」の具体的な期待度は明示されていないところ、通常遊技状態において、図柄番号が奇数である特別図柄を期待値100%たる確変大当たり図柄とし、図柄番号が偶数である特別図柄を期待値0%たる通常大当り図柄としていることに鑑みれば、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態であり、かつ遊技興趣を向上させる特殊特別図柄を用いた演出状態において、遊技者の遊技意欲を削がないように、期待値が0%に設定された特殊特別図柄を含まない一方、期待値が100%に設定された特殊特別図柄を含んで構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず、格別の発明性があるとは認められない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年11月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由は、
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願遡及日前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

特開2005-185343号公報(引用文献1)
特開2005-253952号公報
特開2005-52508号公報(引用文献2)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「第2の図柄変動パターンモード」について、Dの「前記期待値が0%に設定された前記図柄を含まない一方、前記期待値が100%に設定された前記図柄を含んで」構成されるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-12 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2015-203213(P2015-203213)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 藤田 年彦
田邉 英治
発明の名称 遊技機  
代理人 横堀 芳徳  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 竹沢 荘一  

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