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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1348051
審判番号 不服2018-3232  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-06 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 特願2014-507392「基板貼り合わせ装置および基板貼り合わせ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開,WO2013/145622〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)3月15日(パリ条約による優先権主張 平成24年3月28日,日本国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成26年 9月25日:手続補正書
平成28年 3月15日:手続補正書
平成28年 4月 4日:手続補正書
平成29年 1月31日:拒絶理由通知(起案日)
平成29年 4月 7日:意見書
平成29年 4月 7日:手続補正書
平成29年 8月 7日:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知(起案日)
平成29年10月13日:意見書
平成29年10月13日:手続補正書
平成29年12月11日:拒絶査定(起案日)
平成29年12月11日:補正の却下の決定(起案日)
平成30年 3月 6日:審判請求
平成30年 3月 6日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 平成30年3月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月6日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項11の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「【請求項11】
第1基板と第2基板とを互いに貼り合わせる基板貼り合わせ方法であって,
互いに位置合わせされた前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合する接合工程と,
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報に基づいて,前記第1基板と前記第2基板とを所定の接合条件で接合するか否かを判断する判断工程と,
を含み,
前記判断工程においては,前記第1基板および前記第2基板の接合の過程で少なくとも一方に生じる変形,前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方,前記接着領域および前記非接着領域の少なくとも一方に含まれる素子領域の数,および,前記第1基板および前記第2基板を接合したときの歩留り,の少なくとも一つを前記情報に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,接合するか否かを判断する基板貼り合わせ方法。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年4月7日の手続補正による特許請求の範囲の請求項13の記載は次のとおりである。
「【請求項13】
第1基板と第2基板とを互いに貼り合わせる基板貼り合わせ方法であって,
互いに位置合わせされた前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合する接合工程と,
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報に基づいて,前記第1基板と前記第2基板とを所定の接合条件で接合するか否かを判断する判断工程と,
を含む基板貼り合わせ方法。」

2 補正の適否
(1) 新規事項の追加について
ア 当初明細書等に記載された事項
本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「当初明細書等」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同じ。)

「【請求項31】
第1基板と第2基板とを互いに貼り合せる基板貼り合わせ方法であって,
前記第1基板および前記第2基板を互いに位置合わせして重ね合わせる位置合わせ工程と,
前記位置合わせされた前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合する接合工程と,
前記接合工程の前に,前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の凹凸状態を検出する検出工程と,
前記検出工程により検出された前記凹凸状態が所定の条件を満たすか否かを判断する判断工程と,
を含み,
前記凹凸状態が所定の条件を満たさないと前記判断工程で判断された場合,前記接合工程を行わないことを特徴とする基板貼り合せ方法。
【請求項32】
前記判断工程は,前記接合工程での前記第1基板および前記第2基板の接合の可否を判断する請求項31に記載の基板貼り合せ方法。
【請求項33】
前記検出工程は,前記第1基板の接合される面の前記凹凸状態を検出する請求項31または32に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項34】
前記検出工程は,前記第1基板の変形に起因する前記凹凸状態を検出する請求項31から33のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項35】
前記検出工程は,前記第1基板に付着した付着物に起因する前記凹凸状態を検出する請求項31から33のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項36】
前記検出工程は,前記第1基板の表面に配されたバンプの高さのばらつきに起因する前記凹凸状態を検出する請求項31から33のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項37】
前記検出工程は,前記第1基板の厚さむらに起因する前記凹凸状態を検出する請求項31から33のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項38】
前記検出工程は,前記第1基板の接合に関与する面に存在する突出部分を検出する請求項31から37までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項39】
前記検出工程は,前記突出部分の高さを検出する請求項38に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項40】
前記検出工程は,前記突出部分の広さを検出する請求項38または請求項39に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項41】
前記検出工程は,前記突出部分の突出方向を検出する請求項38から40のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項42】
前記判断工程は,前記突出部分の材料に基づいて接合の可否を判断する請求項38から41のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項43】
前記検出工程は,前記第1基板および前記第2基板を互いに重ね合わせたときに前記第1基板にかかる荷重の分布に基づいて前記凹凸状態を検出する請求項31から42のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項44】
前記第1基板を観察する観察工程を含み,
前記検出工程は,前記第1基板に対する光学系の合焦状態に基づいて前記凹凸状態を検出する請求項31から43のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項45】
前記検出工程は,前記第1基板を撮影した映像に基づいて前記凹凸状態を検出する請求項31から44のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項46】
前記検出工程は,前記第1基板を保持する保持部材への前記第1基板の保持状態における前記凹凸状態を検出する請求項31から45のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項47】
前記検出工程は,前記保持部材に静電力により吸着して保持された前記第1基板を流れる電流量に基づいて前記凹凸状態を検出する請求項46に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項48】
前記検出工程は,前記第1基板に印加した交流電圧のインピーダンスに基づいて前記凹凸状態を検出する請求項46に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項49】
前記検出工程は,負圧により前記第1基板を吸着して保持する前記保持部材における前記負圧の変動に基づいて前記凹凸状態を検出する請求項46に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項50】
前記検出工程は,前記第1基板に生じた前記凹凸状態が前記保持部材に起因するか否かを検出する請求項46に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項51】
前記接合工程を行う接合部に前記第1基板および前記第2基板をそれぞれ搬送する搬送工程を備え,
前記検出工程は,前記基板が前記接合部に搬入される前に前記凹凸状態を検出する請求項31から請求項50までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項52】
前記第1基板および前記第2基板を互いに位置合わせする前にそれぞれの位置を検出するプリアライメント工程を含み,
前記検出工程は,前記プリアライメント工程において前記凹凸状態を検出する請求項31から請求項51までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項53】
前前記第1基板および前記第2基板を重ね合わせる重ね合わせ工程を備え,前記検出工程は,前記重ね合わせ工程が前記第1基板および前記第2基板を重ね合わせたときに,前記第1基板および前記第2基板の接合面内に生じる圧力分布に基づいて前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の前記凹凸状態を検出する請求項31から請求項52までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項54】
前記検出工程は,前記第1基板および前記第2基板が互いに重ね合わされた後であって,前記接合工程において接合される前に,前記凹凸状態を検出する請求項31から請求項47までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項55】
前記判断工程は,前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の歩留りに基づいて,接合の可否を判断する請求項31から請求項48までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項56】
前記判断工程は,前記検出工程により検出された前記凹凸状態に基づいて,前記第1基板および前記第2基板を接合したときの接着領域および非接着領域の少なくとも一方大きさおよび位置の少なくとも一方を算出し,これに基づいて前記歩留りを算出する請求項55に記載の基板貼り合せ方法。
【請求項57】
前記判断工程は,前記接合工程における接合時に生じる前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の変形を見越して判断する請求項31から請求項56までのいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。」

「【0010】
なお,基板貼り合わせ装置100において貼り合わされる基板121は,シリコン単結晶ウエハ,化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハの他,ガラス基板等でもあり得る。また,貼り合わされる基板121の少なくとも一方は複数の素子を含む場合がある。更に,貼り合わされる基板121の一方または両方は,それ自体が既にウエハを重ね合わせて製造された積層基板123であってもよい。」

「【0086】
判断部116は,検出部114が検出した基板121の凹凸状態に基づいて,凹凸状態が所定の条件を満たすか否かを判断する。本実施例では,判断部116は,基板121の凹凸状態に基づいて,基板121の貼り合わせを実行すべきか否かを判断する。即ち,判断部116は,基板121の凹凸状態が甚だしい場合,重ね合わせまたは接合を試みることなく,搬送制御部118に指示して,接合を行うことなく当該基板121をFOUP120に戻させる。これにより,基板121の重ね合わせに多大な時間を要して基板貼り合わせ装置100のスループットが低下することが防止される。
【0087】
ここで,判断部116は,基板121の貼り合わせの可不可を判断するにとどまらず,当該基板121を貼り合わせた場合に,最終的に得られる製品の歩留りを予測して,予め定められた閾値よりも歩留りが悪くなると予測された場合に,当該基板121の貼り合わせを不可と判断してもよい。また,判断部116は,基板ホルダ150による基板121の吸着力,重ね合わせ部170において重ね合わせのために基板121に加わる負荷,接合部190において接合する場合に基板121にかかる荷重により基板121の突出部分が軽減または解消されるか否かを勘案して判断してもよい。」

「【0091】
ステップS103において,基板121の突出部分が付着物により形成されたものではないと判断した場合(ステップS103:NO),判断部116は,検出された凹凸状態が基板自体の変形に起因するものと判断し,その状態で重ね合わせ部170が位置合わせを実行できるか否かを判断する(ステップS109)。」

「【0094】
ステップS110において,積層基板123における歩留りを予測する。歩留りは,例えば次のようにして予測できる。まず,検出部114が検出した基板121の凹凸状態に基づいて,当該基板121を貼り合わせた場合に対になる基板121と密着しないと予想される領域の位置および広さを算出する。次いで,算出された領域に含まれる素子数を計数することにより,最終的に得られる半導体装置の歩留りを予測することができる。
【0095】
これにより,積層基板123の歩留りが予め与えられた目標値に達すると判断した場合(ステップS110:YES),判断部116は,当該基板121の重ね合わせから接合に至る一連の処理を実行させる。一方,歩留りが目標値に達しないと判断した場合(ステップS110:NO),判断部116は,重ね合わせおよび接合に供することなく,当該基板121に対する処理を終了する。貼り合わせに適していないと判断された基板121は,後述するステップS107:NOの場合と同様に,まとめて破棄すべくFOUP120のひとつに蓄積してもよい。このように,重ね合わせ部170における位置合わせができないと予測される基板121を,重ね合わせをする前に取り除くことにより,基板貼り合わせ装置100のスループット低下を防止できる。
【0096】
上記ステップS110において,重ね合せにより基板121の凹凸状態が改善されるか否かをさらに考慮して,歩留りが予め与えられた目標値に達するか否かを判断してもよい。この場合に,判断部116は,重ね合わせ部170により基板121を重ね合わせに伴い,例えば基板121に掛かる数Nから十数Nの力により,基板121の凹凸状態が改善されるか否かを判断する。突出部分が付着物ではない場合には,重ね合わせ時の力により,少なくとも一方の基板121に生じていた凹凸が平坦に近づくように一方の基板121が変形するか否か,もしくは,少なくとも一方の基板121に生じていた凹凸が他方の基板121との間で相補関係になるように一方の基板121が変形するか否かを判断する。一方,突出部分が付着物である場合には,後述するように,付着物の形状,大きさ,材料等に基づいて,重ね合わせ時の力により付着物が潰れることによって,基板121の表面からの付着物の突出量が所定の値よりも小さくなるか否かを判断する。重ね合わせにより基板121の凹凸状態が改善されると予測した場合,判断部116は,重ね合わせにより凹凸状態が改善されることを前提として,歩留りが達成できるか否かを判断する。なお,基板121を重ね合わせする場合に,基板121が生じる音,基板121にかかる圧力の分布等をモニタすることにより,基板121の凹凸状態が改善されていることを確認してもよい。」

「【0107】
判断部116のよる上記の一連の判断手順においては,基板121の反り等,基板121全体に及ぶ大きな凹凸状態も判断の材料に加えてもよい。そのような範囲の大きな凹凸状態は,例えば,基板121の研磨処理等の前工程において検出された情報を取得することにより把握できる。このような基板121全体に及ぶ凹凸状態についても,重ね合わせおよび接合による状態の改善を考慮に入れて,判断部116が判断を下してもよい。」

イ 検討
(ア) 本件補正により追加された事項
上記1(1)及び(2)から,本件補正のうち,補正前の請求項13を補正後の請求項11とする補正は,本件補正前の請求項13に係る発明を特定する事項の一つである「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報に基づいて,前記第1基板と前記第2基板とを所定の接合条件下で接合するか否かを判断する判断工程」が,以下のaないしdに示す,少なくともいずれか一つを,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,「接合するか否かを判断する判断工程」であると特定することによって,特許請求の範囲を減縮しようとするものと認められる。
a 「前記第1基板および前記第2基板の接合の過程で少なくとも一方に生じる変形」
b 「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方」
c 「前記接着領域および前記非接着領域の少なくとも一方に含まれる素子領域の数」
d 「前記第1基板および前記第2基板を接合したときの歩留り」

そこで,上記aないしdに示す,少なくともいずれか一つを,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,「接合するか否かを判断する判断工程」が,当初明細書等に記載された事項であるかについて,以下検討する。

(イ) 当初明細書等から導かれる技術的事項
上記アより,当初明細書等には,以下の事項が記載されているものと認められる。
a 判断部は,基板の凹凸状態に基づいて,凹凸状態が所定の条件を満たすか否かを判断するものであって,本実施例では,判断部は,基板の凹凸状態に基づいて,基板の貼り合わせを実行すべきか否かを判断し,ここで,判断部は,基板の貼り合わせの可不可を判断するにとどまらず,当該基板を貼り合わせた場合に,最終的に得られる製品の歩留りを予測し,予め定められた閾値よりも歩留りが悪くなると予測された場合に,当該基板の貼り合わせを不可と判断してもよいこと(【0086】,【0087】)。

b 検出部が検出した基板の凹凸状態に基づいて,当該基板を貼り合わせた場合に対になる基板と密着しないと予想される領域の位置および広さを算出し,次いで,算出された領域に含まれる素子数を計数することにより,最終的に得られる半導体装置の歩留りを予測し,これにより,積層基板の歩留りが予め与えられた目標値に達すると判断した場合,判断部は,当該基板の重ね合わせから接合に至る一連の処理を実行させ,一方,歩留りが目標値に達しないと判断した場合,判断部は,重ね合わせおよび接合に供することなく,当該基板に対する処理を終了すること。(【0094】,【0095】)。

c 上記bにおいて,重ね合せにより基板の凹凸状態が改善されるか否かをさらに考慮して,歩留りが予め与えられた目標値に達するか否かを判断してもよく,この場合に,判断部は,重ね合わせ部により基板を重ね合わせに伴い,基板の凹凸状態が改善されるか否かを判断し,重ね合わせにより基板の凹凸状態が改善されると予測した場合,判断部は,重ね合わせにより凹凸状態が改善されることを前提として,歩留りが達成できるか否かを判断すること(【0096】)。

(ウ) 判断
a 事案にかんがみ,まず始めに,上記イ(ア)bに示す事項,すなわち,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方」を,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,接合するか否かを判断する判断工程が,当初明細書等に記載されていたかについて検討する。

b 上記イ(イ)bのとおり,当初明細書等には,検出部が検出した基板の凹凸状態に基づいて,基板を貼り合わせた場合に対になる基板と密着しないと予想される領域の位置および広さを算出し,次いで,算出された領域に含まれる素子数を計数することにより,最終的に得られる半導体素子の歩留まりを予測し,これにより,積層基板の歩留まりが予め与えれた目標値に達すると判断できるか否かによって,接合するか否かを判断する判断工程が記載されているだけである。

c すなわち,当初明細書等には,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方」が包含する組合せのうち,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の広さ」のみを,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の広さ」の結果のみに基づいて,接合するか否かを判断する判断工程については,当初明細書等に記載されていない。

d そして,半導体素子の歩留まりは,非接着領域の「広さ」の単純な大きさだけでは予測することはできず,当該非接着領域が,素子形成領域に位置するのか,ダイシングライン等の非素子形成領域に位置するのかの,非接着領域の「位置」が,歩留まりの予測に必要であることは明らかである。
すなわち,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の広さ」のみを,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて算出し,次いで,算出した「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の広さ」のみに基づいて,最終的に得られる半導体素子の歩留まりを予測することはできないといえる。
してみれば,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の広さ」のみという組合せを包含する「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方」を,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,接合するか否かを判断する判断工程が,当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。

e したがって,補正により追加された上記イ(ア)bの事項は,当初明細書等には記載がなく,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。

したがって,他の補正事項については検討するまでもなく,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

ウ 結論
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(2) 独立特許要件について
上記(1)での検討のとおり,本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが,さらに進んで,仮に本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないものであるとして,独立特許要件について,以下,検討を進める。
上記補正は,補正前の請求項13に記載された発明を特定するために必要な事項である判断工程について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項13に記載された発明と補正後の請求項11に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項11に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載及び引用発明
(ア) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2007-214255号公報(平成19年8月23日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,貼り合わせSOI(Silicon on Insulator)ウェーハの製造方法に関し,特にSOIウェーハ裏面を機械的損傷等から保護し製造歩留まりを高めた貼り合わせSOIウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハに例えばシリコン酸化膜を介して活性層用ウェーハを貼り合わせ,この活性層用ウェーハを適宜な厚さのSOI層に形成した貼り合わせSOIウェーハは,高性能化した半導体デバイスの製造に好適な半導体基板として広く使用されるようになってきている。そして,例えばSRAMを含む高速動作のロジック回路が搭載される高速デバイス,あるいはパワートランジスタを含む高耐圧デバイスの基板材料としてその作製方法が種々に検討されている。ここで,上記SOIウェーハの量産製造では,上記半導体デバイスから要求される種々の技術事項に対処すると共に,SOIウェーハの製造歩留まりを向上させ製造コストを低減させることが強く求められる。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
貼り合わせのSOIウェーハは,上述したように2枚のバルクシリコンウェーハが基板材料として使用され,1枚のSOI基板製品として製造される。ここで,上記バルクウェーハはそのまま半導体デバイス用ウェーハとしても使用できるものであり,貼り合わせSOIウェーハは高価なものになり易い。そこで,上記SOIウェーハの量産製造において,その製造歩留まりを向上させること,および上記バルクウェーハ材料を有効に使用できるようにすることが,その製造コストを低減する上で極めて重要になる。このために,上述した支持基板用ウェーハ裏面に生じる機械的損傷等を簡便に防止できる方法の開発が大きな課題となっていた。また,上記2枚のバルクウェーハの支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハのシリコン酸化膜を介した接合においては,ウェーハの外周部において生じ易い未接合部分の面積を低減させその活性層であるSOI層の面積を広くすることが,半導体デバイスの収率を増加させるために大きな課題になっていた。
【0011】
本発明は,上述の事情に鑑みてなされたもので,貼り合わせSOIウェーハの製造工程において,そのSOI層の面積をできるだけ広くでき,その裏面の支持基板用ウェーハの損傷を簡便に防止することができる貼り合わせSOIウェーハの製造方法を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0016】
本発明の構成により,貼り合わせSOIウェーハの製造工程において,そのSOI層の面積を広くでき,その裏面の支持基板用ウェーハの機械的損傷等が簡便に防止でき,上記SOIウェーハの製造歩留まりが向上するようになる。」
「【0024】
次に,図2を参照して上記実施形態の効果について具体的に説明する。図2は,上記貼り合わせSOIウェーハの主な製造工程を説明する製造フローチャートである。
【0025】
図2に示すように,図1(a)に対応したステップS11において,上述した支持基板用ウェーハ11および活性層用ウェーハ12の準備がなされ,ステップS12において,熱酸化がなされて,支持基板用ウェーハ11全面と活性層用ウェーハ12全面にシリコン酸化膜が形成される。そして,図1(c)に対応したステップS13において,支持基板用ウェーハ11の表面のシリコン酸化膜の除去および平面研削・研磨がなされ,その表面が鏡面にされ高い平坦度にされる。
【0026】
ここで,上記支持基板用ウェーハ11表面の平面研削・研磨による鏡面研磨の後,上記ウェーハをセラミックスプレートから剥離する際にスクレイバーが必須になる。この時,本実施形態では支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13に被覆されていることから,従来の技術において生じていたスクレイバー起因のキズ,スクラッチの発生が防止される。
【0027】
次に,ステップS14において,その表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハ11の平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされる。ここで,上記平坦度および反りの測定は,上記鏡面研磨された表面が活性層用ウェーハ12との接合面になることから極めて重要となる。このような測定・検査において,これ等の測定装置あるいは検査装置の真空チャック跡のような痕跡損傷が生じ易い。しかし,この場合も,支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13に被覆されていることから,上記痕跡損傷が完全に防止される。
【0028】
次に,図1(d)に対応したステップS15において,支持基板用ウェーハ11の表面と活性層用ウェーハ12とが接着され上述したような1200℃,2時間程度のアニール処理がされ,両ウェーハの接合による貼り合わせがなされる。そして,ステップS16において,貼り合わされた両ウェーハにおける未接合部分の検査すなわちボイド検査が必須になる。本実施形態では,この場合も,支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13によりボイド検査装置による損傷から保護される。
【0029】
次に,図1(e)に対応したステップS17において,貼り合わせたウェーハの外周部の外周研削がなされる。この場合も外周研削装置の真空チャック跡のような痕跡損傷が生じ易いが支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13に被覆されていることから,上記痕跡損傷が完全に防止される。
更に,図1(f)に対応したステップS18において,活性層用ウェーハ12の平面研削・研磨がなされる。この場合にも,ステップS13で説明したのと同様に,支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13によりスクレイバー起因のキズ,スクラッチから保護される。
【0030】
次に,ステップS19において,SOI層15の厚さ測定,平坦度測定,外観検査およびパーティクル検査が必須になる。この場合も,ステップS14で説明したのと全く同じように,支持基板用ウェーハ11の裏面は,上記保護酸化膜13により上記測定装置および検査装置による損傷から保護される。
【0031】
そして,最後に,図1(g)に対応したステップS20において,上記SOIウェーハ製造工程を通して上記損傷から支持基板用ウェーハ11裏面を保護した上記保護酸化膜13はエッチング除去される。そして,その後の洗浄がなされて製品とし入庫される。」

(イ) 引用発明

上記(ア)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「支持基板用ウェーハに活性層用ウェーハを貼り合わせた,貼り合わせSOIウェーハの製造方法であって,表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップと,次いで,支持基板用ウェーハの表面と活性層用ウェーハとが接着され,アニール処理がされ,両ウェーハの接合による貼り合わせがなされるステップと,貼り合わされた両ウェーハにおける未接合部分の検査すなわちボイド検査がされるステップと,を含む製造方法。」

ウ 対比
本件補正発明と,引用発明とを対比すると,以下のとおりとなる。

(ア) 引用発明の「支持基板用ウェーハ」と「活性層用ウェーハ」はそれぞれ,本件補正発明の「第1基板」又は「第2基板」に相当する。

(イ) 引用発明の「支持基板用ウェーハの表面と活性層用ウェーハとが接着され,アニール処理がされ,両ウェーハの接合による貼り合わせがなされるステップ」は,本件補正発明の「前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合する接合工程」に相当する。

(ウ) 引用発明の「支持基板用ウェーハに活性層用ウェーハを貼り合わせた,貼り合わせSOIウェーハの製造方法」は,「支持基板用ウェーハ」と「活性層用ウェーハ」とを互いに貼り合わせるものであるので,本件補正発明の「第1基板と第2基板とを互いに貼り合わせる基板貼り合わせ方法」に相当する。

(エ) 引用発明の「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」と,本件補正発明の「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報に基づいて,前記第1基板と前記第2基板とを所定の接合条件で接合するか否かを判断する判断工程」とは,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」を得る段階を含む工程である点で一致する。

したがって,本件補正発明と,引用発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点>
「第1基板と第2基板とを互いに貼り合わせる基板貼り合わせ方法であって,
前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合する接合工程と,
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報を得る段階を含む工程と,
を含む基板貼り合わせ方法。」

<相違点>
・相違点1:本件補正発明の接合工程では「互いに位置合わせされた」前記第1基板と前記第2基板とを互いに接合しているのに対して,引用発明においては,その貼り合わせがなされるステップにおいて,支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを互いに位置合わせすることが明示されていない点。
・相違点2:本件補正発明は,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて,「前記第1基板と前記第2基板とを所定の接合条件で接合するか否かを判断する判断工程」を含み,「前記判断工程においては,前記第1基板および前記第2基板の接合の過程で少なくとも一方に生じる変形,前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方,前記接着領域および前記非接着領域の少なくとも一方に含まれる素子領域の数,および,前記第1基板および前記第2基板を接合したときの歩留り,の少なくとも一つを前記情報に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,接合するか否かを判断」するのに対して,引用発明においては,「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」の後に,当該測定及び外観検査によって得られた結果をどのように利用するかについて明示されていない点。

エ 判断
上記相違点について,判断する。
(ア) 相違点1について
2個の部材を貼り合わせるときに,互いに位置合わせをすることは技術常識である。しかも,引用文献1の【0011】には,「本発明は,・・・そのSOI層の面積をできるだけ広くでき・・・る貼り合わせSOIウェーハの製造方法を提供することを目的とする。」とある。
そして,支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを貼り合わせ,SOIウェーハを製造するときに,支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを互いに位置合わせすることで,SOI層の面積を広くできることは当業者が直ちに想起することである。
そうすると,引用発明の貼り合わせがなされるステップにおいて,支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを,お互いに位置合わせすること,すなわち,上記相違点1について本件補正発明の構成を採用することは,上記技術常識等に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(イ) 相違点2について
a 測定及び検査は,何らかの目的をもってなされるものであるから,引用発明において,「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」において測定された,平坦度および反りの測定結果もまた,何らかの目的に使用されていることは明らかである。

b 一方,引用文献1には,「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」について,上記イ(ア)のとおり,「ここで,上記平坦度および反りの測定は,上記鏡面研磨された表面が活性層用ウェーハ12との接合面になることから極めて重要となる。」(【0027】)と記載されており,表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度および反りの測定が,支持基板用ウェーハの鏡面研磨された表面と活性層用ウェーハとの接合のためであることが示唆されている。
そして,接合面の平坦度が低い場合,例えば,接合面の中央に深い凹部を有する場合,あるいは,反りが大きい場合に,このような接合面を有する部材を互いに接合した場合に,未接合部分の広さが大きなものとなることは,日常生活においても予測することである。

c 他方,上記イ(ア)のとおり,引用文献1には,「貼り合わせSOIウェーハは高価なものになり易い。そこで,上記SOIウェーハの量産製造において,その製造歩留まりを向上させること,および上記バルクウェーハ材料を有効に使用できるようにすることが,その製造コストを低減する上で極めて重要になる。」(【0010】)と記載されており,引用文献1には,製造歩留まりを向上し,かつ,製造コストを低減するという課題が示されている。
そして,貼り合わせ工程で,貼り合わせ界面に未接合部分が発生すると,当該未接合部分の存在が,SOIウェーハを用いた半導体デバイス製造プロセスにおいて,悪影響を及ぼすことから,ボイド検査によって未接合部分が検出されたウェーハは不良品として除外される原因ともなり得るところ,このように,未接合部分が存在するウェーハを除外する場合には,未接合部分が存在するウェーハの貼り合わせに用いられた支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハの2枚のウェーハが無駄となり,さらに,支持基板用ウェーハの表面と活性層用ウェーハとを接着し,アニール処理し,両ウェーハの接合による貼り合わせを行うという余分な処理を施したことにもなり,結果として,製造歩留まりが低下し,製造コストが増大する。したがって,貼り合わせSOIウェーハの製造において,製造歩留まりを向上し,製造コストを低減するために,貼り合わせ界面に未接合部分が存在するウェーハを製造することがないようにすることは,当業者において自明の課題といえる。

d 上記b,cの事情を踏まえると,「支持基板用ウェーハの表面と活性層用ウェーハとが接着され,アニール処理がされ,両ウェーハの接合による貼り合わせがなされるステップ」に先立つ,「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」において,平坦度および反りを測定するのは,当該測定に引き続いて行われる貼り合わせ工程において,貼り合わせ界面に未接合部分が存在するウェーハを製造することがないようにすることを目的としたものであると理解することが自然である。
すなわち,引用発明においては,「表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度測定および反り測定,そして外観検査がなされるステップ」において測定された平坦度および反りの測定結果に基づいて,当該支持基板用ウェーハを用いた貼り合わせSOIウェーハにおいて許容し得ない程度の広さを有する未接合部を発生させることが予測される場合には,当該予測に基づいて,次工程である貼り合わせ工程に進むことがないように判断することで,ウェーハの無駄や余分な処理による製造歩留まり低下や製造コストの増大を防いでいるものと当業者であれば理解するものである。
そして,引用発明の「未接合部分」は,本件補正発明の「非接着領域」に相当する。
してみれば,引用発明は,「前記第1基板および前記第2基板を接合した場合の接着領域および非接着領域の少なくとも一方の位置および広さの少なくとも一方」を,「前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方の接合面全体の平坦度を含む情報」に基づいて予測し,予測した結果に基づいて,「接合するか否かを判断する判断工程」を備えていると解されるから,相違点2は,実質的なものではない。

e また,仮に,引用文献1の記載と技術常識からは,上記dのように理解することができないとしても,上記cのとおり,貼り合わせSOIウェーハの製造において,製造歩留まりを向上し,製造コストを低減するために,貼り合わせ界面に未接合部分が存在するウェーハを製造することがないようにすることは,当業者において自明の課題であって,しかも,上記bのとおり,接合面の平坦度が低い場合,例えば,接合面の中央に深い凹部を有する場合,あるいは,反りが大きい場合に,このような接合面を有する部材を互いに接合した場合に,未接合部分の広さが大きなものとなることは,日常生活においても予測することであるから,貼り合わせ工程に先立って,表面が鏡面研磨にされた支持基板用ウェーハの平坦度および反りを測定するステップを有する引用発明において,当該測定結果の値が著しく劣悪で,未接合部分の広さが大きなものとなることが予測される場合に,貼り合わせ工程を中止して,ウェーハの無駄等を無くすことで,製造歩留まりを向上し,製造コストを低減することは,当業者が容易になし得たことである。
したがって,引用発明において,相違点2について本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ) 請求人の主張について
審判請求人(本願出願人)は,平成29年10月13日の意見書において,「引用発明は,未だ配線,素子等の構造物が形成されていないSOIウェーハの製造に関する。このため,引用発明において接合される基板には,素子,配線等の構造物の形成に伴う変形が生じていない。また,構造物が形成されていない基板を接合する引用発明においては,配線幅レベルの高精度な位置合わせは求められていない。更に,引用発明は,引用文献1の段落0010,0011に記載の通り,一旦開始された基板の接合を完遂することを前提とした歩留りの向上を目的としている。このため,引用発明は,開始した基板の接合プロセスを中断または中止することについて,何等,記載も示唆もしていない。よって,積層基板における位置ずれの抑制を解決課題とする本願発明を,当業者が,引用発明から想到する動機付けは存在しない。」と主張する。
しかしながら,本件補正発明において,第1基板と第2基板は,いずれも「配線,素子等の構造物が形成されて」いることは特定されていない。また,本願の発明の詳細な説明の「なお,基板貼り合わせ装置100において貼り合わされる基板121は,シリコン単結晶ウエハ,化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハの他,ガラス基板等でもあり得る。また,貼り合わされる基板121の少なくとも一方は複数の素子を含む場合がある。」(【0010】)との記載からも,貼り合わされる基板の双方に素子が含まれない態様を,本件補正発明が包含することは明らかである。
してみれば,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

(エ) 作用効果について
そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。

(オ) したがって,本件補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

オ 結論
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定,または,特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年3月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年4月7日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項13に記載された事項により特定される前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1,4ないし7,12,13,16ないし19,21,24,25に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2007-214255号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は,前記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明から「判断部」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに,他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(2)ウ,エに記載したとおり,引用発明に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび(結論)
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-15 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-04 
出願番号 特願2014-507392(P2014-507392)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 561- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘小川 将之  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 鈴木 和樹
飯田 清司
発明の名称 基板貼り合わせ装置および基板貼り合わせ方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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