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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1348084
審判番号 不服2017-16673  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-09 
確定日 2019-02-12 
事件の表示 特願2015- 52203「イメージセンサー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開、特開2016- 96323、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月16日(パリ条約による優先権主張、2014年11月13日、米国)の出願であって、平成28年5月17日付けで拒絶理由通知が通知され、同年8月10日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月27日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月8日付けで同年4月24日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年11月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。
その後、当審において、平成30年8月17日付けで拒絶理由が通知され、同年10月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年8月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)本願の請求項1?9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された、以下の引用文献A?Gに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2014-049575号公報
B.特開2007-088057号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2009-252973号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2006-343399号公報
E.国際公開第2005/116763号(周知技術を示す文献)
F.特開2010-208035号公報(周知技術を示す文献)
G.特開2001-267544号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審において平成30年8月17日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

●理由1(新規性)
本件出願の請求項1、8に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された、以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2(進歩性)
本件出願の請求項1、4?7、8、9に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された、以下の引用文献1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.引用文献1:米国特許出願公開第2011/0108938号明細書
2.引用文献2:特開2013-175494号公報

第4 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年10月2日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1及び8に係る発明は、その請求項1及び8に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
感知層と、
前記感知層上に位置するフィルターユニットと、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記感知層上に設置される導電層と、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記導電層上に設置される反射層と、
を含み、
積層された前記導電層と前記反射層、及び前記フィルターユニットは、光導体構造を形成し、
前記導電層は導電ポリマー材料であることを特徴とするイメージセンサー。」

「【請求項8】
感知層と、
前記感知層上に設置されるフィルターユニットと、
前記フィルターユニットを囲み、前記感知層上に設置される遮光層と、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、前記遮光層上に設置される導電層と、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、前記導電層上に設置される反射層と、
を含み、
積層された前記導電層と前記反射層、及び前記フィルターユニットは、光導体構造を形成し、
前記導電層は導電ポリマー材料であることを特徴とするイメージセンサー。」

なお、本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0001] 1. Field
[0002] Embodiments of the present invention relate to image sensors, and in particular, to filters for image sensors.」
(「[0001]1.分野
[0002] 本発明の実施形態は、イメージセンサ、特に、イメージセンサのためのフィルタに関する。」)(審決注:翻訳文は合議体による。以下同じ。)

イ 「[0021] Embodiments of the present invention include an image sensor having an array of pixels. At least one pixel may include a photosensitive element disposed in a substrate, a color filter disposed on the photosensitive element, and a micro-lens disposed on the color filter. A waveguide wall may surround the color filter. The waveguide wall may be a dielectric material including an oxide such as silicon dioxide (SiO_(2)). Alternatively, the waveguide wall may be an air gap. The refractive index of the waveguide wall may be less than the refractive index of the color filter. The color filter and waveguide wall surrounding the color filter form a waveguide structure, which confines light propagating in the color filter along the waveguide structure. Such confinement reduces light leakage through the waveguide wall surrounding the color filter to neighboring color filters. In other words, the light is guided in the waveguide. The image sensor may be back side illuminated or front side illuminated.
[0022] When light is incident on a micro-lens, the micro-lens focuses the light into the color filter. The waveguide structure formed by the color filter and the waveguide wall surrounding the color filter guides the light to the photosensitive element. The photosensitive element converts the light to an electrical signal.
[0023] One advantage of embodiments of the present invention is that the crosstalk between pixels may be reduced, because the light entering a color filter is confined in the waveguide formed by the color filter and the waveguide wall surrounding the color filter, and ideally no light escapes the waveguide to enter neighboring pixels. The result is an image sensor with improved capturing of colors. Another advantage is that the image sensor may be more sensitive to incident light because the light entering a color filter is confined in the waveguide, and ideally the light is entirely incident on the photosensitive element. Other features and advantages of the present invention will be apparent from the accompanying drawings and from the detailed description that follows.
…(略)…
[0025] In the illustrated embodiment, three photosensitive elements, which are shown as n-photodiodes 102, 104, and 106, are disposed in substrate 101. Generally, image sensor 100 includes several photosensitive elements arranged in a two dimensional array of rows and columns in substrate 101. For purposes of clarity, only photosensitive elements 102, 104, and 106 are illustrated. However, the array can include upwards of thousands of rows and/or columns, or more. Similarly, the array may have an arrangement other than columns and rows.
…(略)…
[0027] On another side of substrate 101, a passivation layer 112 of p^(+) silicon is disposed on substrate 101 and an optional anti-reflective material 114 is disposed on p^(+) layer of silicon 112. Generally, p^(+) layer of silicon 112 has an effect of enhancing the charge collection into n-type photodiodes 102, 104, and 106, and prevents dark current generation at the back surface. Note, in some embodiments, p^(+ )layer 112 is optional. A red filter 116, a green filter 118, and a blue filter 120 are disposed on anti-reflective material 114. A micro-lens 122 is disposed on filter 116, a micro-lens 124 is disposed on filter 118, and a micro-lens 126 is disposed on filter 120. A waveguide wall 130 is partially disposed in blue filter 120. A waveguide wall 132 is partially disposed in blue filter 120 and partially disposed in green filter 118. A waveguide wall 134 is partially disposed in green filter 118 and partially disposed in red filter 116. A waveguide wall 136 is partially disposed in red filter 116. In some implementations, waveguide walls are shorter (thinner) than color filters and are disposed in the color filters as illustrated in FIG. 1. In some implementations, waveguide walls can be substantially as tall (thick) as the color filters.」
(「[0021] 本発明の実施形態は、ピクセルのアレイを有するイメージセンサを含む。少なくとも1つの画素は、基板に配置された感光性素子、感光性素子上に配置されたカラーフィルタ、及びカラーフィルタ上に配置されたマイクロレンズを含むことができる。導波路の壁は、カラーフィルターを囲むことができる。導波路の壁は、二酸化ケイ素(SiO_(2))のような酸化物を含む誘電体材料であってもよい。あるいは、導波路の壁は、空気ギャップであってもよい。導波路壁の屈折率はカラーフィルタの屈折率よりも小さくすることができる。カラーフィルタ及び該カラーフィルタを囲む導波路の壁は、導波路構造を形成し、導波路構造に沿ってカラーフィルタ内を伝搬する光が閉じ込められる。このような閉じ込めは、隣接するカラーフィルタへのカラーフィルタを囲む導波路壁をとおしての光漏れを低減する。換言すれば、光は、導波路内を案内される。イメージセンサは、裏面照射型あるいは表面照射型であってもよい。
[0022] 光がマイクロレンズに入射すると、マイクロレンズはその光をカラーフィルタ内に集束させる。カラーフィルタによって形成された導波路構造及びカラーフィルタを囲む導波路壁は、光を感光性素子に導く。感光性素子は、その光を電気信号に変換する。
[0023] 本発明の実施形態の1つの利点は、画素間のクロストークを低減することができ、それは、カラーフィルタに入射した光は、カラーフィルタによって形成された導波路構造及びカラーフィルタを囲む導波路壁内に閉じ込められ、そして、理想的には、光が導波路から隣接画素に逃げることがないからである。その結果、色の改善されたイメージセンサとなる。別の利点は、カラーフィルタに入射した光が導波路内に閉じ込められ、そして、理想的には、光は感光性素子上に完全に入射するので、イメージセンサは、入射光に対してより感度が高くなることができる。本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面及び以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
…(略)…
[0025] 図示の実施形態では、3つの感光性素子、n型フォトダイオード102、104、及び106として示されているが、基板101に配置されている。一般的に、イメージセンサ100は、基板101上に行及び列の2次元アレイに配列された複数の感光性素子を含む。明確さの目的のために、感光性素子102、104、及び106のみが示されている。しかし、アレイは、数千以上の行及び/又は列、またはそれ以上の行及び/又は列含むことができる。同様に、アレイは、行及び列以外の配置を有していてもよい。
…(略)…
[0027] 基板101の他の側には、p^(+)シリコンの不活性化層112が基板101上に配置され、任意の反射防止材料114が、シリコンのp^(+)層112上に配置されている。一般的に、p^(+)層112は、n型フォトダイオード102、104、及び106への電荷収集を向上させる効果を有しており、裏面表面における暗電流の発生を防止する。なお、いくつかの実施形態では、p^(+)層112は任意である。赤カラーフィルタ116、緑カラーフィルタ118、及び青カラーフィルタ120が反射防止材料114上に配置されている。マイクロレンズ122はフィルタ116上に配置され、マイクロレンズ124はフィルタ118上に配置され、そして、マイクロレンズ126はフィルタ120上に配置されている。導波路壁130は、青色フィルタ120内に部分的に配置される。導波路壁132は、青色フィルタ120内に部分的に配置され、緑色フィルタ118内に部分的に配置される。導波路壁134は、緑色フィルタ118内に部分的に配置され、赤色フィルタ116内に部分的に配置されている。導波路壁136は、赤色フィルタ116内に部分的に配置されている。いくつかの実施形態では、図1に示すように、導波路壁はカラーフィルタよりも短く(薄い)、カラーフィルタ内に配置されている。いくつかの実施形態では、導波路壁は、カラーフィルタと実質的に同じ高さ(厚さ)としてよい。」)

ウ 「[0035] In one embodiment, image sensor 100 operates as follows. Light is incident on micro-lens 126, which focuses light into blue filter 120. Blue filter 120 filters the incident light and passes the blue light. The waveguide formed by filter 120 surrounded by waveguide walls 130 and 132 guides and passes the blue light to photosensitive element 106, optionally through anti-reflective material 114 and p^(+) layer of silicon 112. Because the refractive index of blue filter 120 is greater than the refractive indices of waveguide walls 130 and 132, waveguide walls 130 and 132 may sufficiently bend the blue light so the blue light is confined within blue filter 120. Without waveguide walls 130 and 132, the blue light may escape blue filter 120 to enter the neighboring pixels.
[0036] This invention utilizes the effect of the total internal reflection which occurs at the interface between the waveguide wall and the color filter. When light is incident on the waveguide wall with an incident angle to the wall larger than a critical angle (θc), the light is reflected at the interface. …(略)…」
(「[0035] 一実施形態では、イメージセンサ100は、以下のように動作する。光がマイクロレンズ126に入射され、その光を青色フィルタ120内へと集束させる。青色フィルタ120は、入射光をフィルタリングし、青色光を透過する。導波路壁130と132で囲まれたフィルタ120によって形成された導波路は、必要に応じて、反射防止材料114とシリコンのp^(+)層112を介して、青色光を感光性素子106へと導き、通過させる。青色フィルタ120の屈折率は導波路130と132の屈折率より大きいので、導波路壁130及び132は青色光を十分に曲げることができる、それにより青色光は青フィルタ120内に閉じ込められる。導波路壁130と132がなければ、青色光は青色フィルタ120から逃げて隣接画素へ入るかもしれない。
[0036] 本発明は、導波路壁とカラーフィルタとの間の界面で生じる全反射の効果を利用している。光が、臨界角(θc)よりも大きい壁への入射角で、導波路壁に入射するときは、光はその界面で反射される。…(略)…」)

エ 「[0061] Image sensor 700 differs from image sensor 100 in that a metal wall (730B, 732B, 734B, 736B) is coupled to a waveguide wall (730A, 732A, 734A, 736A) between the waveguide wall (730A, 732A, 734A, 736A) and the corresponding photosensitive element (106, 104, 102). Layers 112 and 114 are optional. The waveguide wall (730A, 732A, 734A, 736A) may comprise dielectric material or may be an air gap between color filters.
[0062] Depending on the incident angle, light may propagate along the waveguide wall. Without a metal wall, light in the waveguide may arrive at the edge of the photosensitive element and introduce crosstalk to the neighboring photosensitive elements. The metal wall alters the condition of the waveguide such that light propagating along the waveguide wall will be absorbed or blocked by the metal wall, thus further reducing crosstalk. Light propagating in the center of the waveguide is not absorbed by the metal wall. However, the waveguide wall is not completely replaced by the metal wall, since the total internal reflection conditions may then cease to exist. Extending the metal walls the full length right up to the micro lenses may result in substantial light absorption and thus significantly reduce the light detected by the photosensitive element.」
(「[0061] イメージセンサ700は、金属壁(730B, 732B, 734B, 736B)が、導波路壁(730A, 732A, 734A, 736A)と対応する感光性素子(106, 104, 102)と間の導波路壁(730A, 732A, 734A, 736A)に結合されている点で、イメージセンサ100とは異なる。層112及び114は任意である。導波路壁(730A, 732A, 734A, 736A)は、誘電体材料を含んでもよく、または、カラーフィルタ間に空隙があってもよい。
[0062] 入射角に応じて、光は導波路壁に沿って伝播することができる。金属壁がない場合、導波路内の光は、感光性素子の端部に到達し、隣接する感光性素子へのクロストークを導入するかもしれない。金属壁は、導波路壁に沿って伝播する光が、金属壁によって吸収されまたはブロックされ、それにより更にクロストークを低減されるように、導波路の状態が変更される。導波路の中心を伝播する光は、金属壁によって吸収されない。しかしながら、導波路壁は、金属壁によって完全には置換しない、そうすると全反射条件が存在しなくなるかもしれないからである。金属壁を拡張して、その全長をマイクロレンズまでとすると、実質的に光吸収がもたらせられ、その結果、感光性素子によって検出される光が著しく減少するかもしれない。」)

(2)引用発明
引用文献1の図7から、基板101に配置されたフォトダイオード102、104、106と、前記フォトダイオード上に位置する赤カラーフィルタ116、緑カラーフィルタ118、青カラーフィルタ120からなるカラーフィルタと、接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記基板上に設置される金属壁730B、732B、734B、736Bと、接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記金属壁上に設置される導波路壁730A、732A、734A、736Aが見てとれる。
したがって、引用文献1には、図7に示されたイメージセンサ700に関し、図1のイメージセンサ100についての説明も参照すると、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板101に配置されたフォトダイオード102、104、106と、
前記フォトダイオード上に位置する赤カラーフィルタ116、緑カラーフィルタ118、青カラーフィルタ120からなるカラーフィルタと、
接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記基板上に設置される金属壁730B、732B、734B、736Bと、
接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記金属壁上に設置される導波路壁730A、732A、734A、736Aと、
を含み、
導波路壁とカラーフィルタとの間の界面で生じる全反射の効果を利用するイメージセンサ700であって、
導波路壁の屈折率はカラーフィルタの屈折率よりも小さく、
カラーフィルタ及びカラーフィルタを囲む導波路壁は導波路構造を形成し、導波路構造に沿ってカラーフィルタ内を伝搬する光を閉じ込め、
このような閉じ込めにより、カラーフィルタを囲む導波路壁をとおしての隣接するカラーフィルタへの光漏れが低減され、
金属壁により、導波路壁に沿って伝搬する光が、金属壁によって吸収されまたはブロックされ、それにより更にクロストークが低減されるように、導波路の状態が変更される、イメージセンサ700。」

第6 当審の判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。

ア 引用発明は、「基板101に配置されたフォトダイオード102、104、106」を含むから、本願発明1と引用発明は、「感知層」を含む点で一致する。

イ 引用発明の「赤カラーフィルタ116、緑カラーフィルタ118、青カラーフィルタ120からなるカラーフィルタ」は、本願発明1の「フィルターユニット」に相当し、また、「前記フォトダイオード上に位置する」から、本願発明1と引用発明とは、「前記感知層上に位置するフィルターユニット」を含む点で一致する。

ウ 引用発明の「金属壁730B、732B、734B、736B」は、本願発明1の「導電層」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記感知層上に設置される導電層」を含む点で一致する。

エ 引用発明は、「接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記金属壁上に設置される導波路壁730A、732A、734A、736A」を含み、「導波路壁とカラーフィルタとの間の界面で発生する全反射の効果を利用するイメージセンサ700」であって、「導波路壁の屈折率はカラーフィルタの屈折率よりも小さ」いものであるから、引用発明の「導波路壁」は、本願発明1の「反射層」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記導電層上に設置される反射層」を含む点で一致する。

オ 引用発明は、「前記金属壁上に設置される導波路壁730A、732A、734A、736A」を含み、「導波路壁の屈折率はカラーフィルタの屈折率よりも小さく、カラーフィルタ及びカラーフィルタを囲む導波路壁は導波路構造を形成し、導波路構造に沿ってカラーフィルタ内を伝搬する光を閉じ込め、このような閉じ込めにより、カラーフィルタを囲む導波路壁をとおしての隣接するカラーフィルタへの光漏れが低減され、金属壁により、導波路壁に沿って伝搬する光が、金属壁によって吸収されまたはブロックされ、それにより更にクロストークが低減されるように、導波路の状態が変更される」ものであるから、「導波路構造に沿ってカラーフィルタ内を伝搬する光を閉じ込め、このような閉じ込めにより、カラーフィルタを囲む導波路壁をとおしての隣接するカラーフィルタへの光漏れが低減され」た導波路構造を、金属壁により、導波路の状態が変更された導波路構造としたものであるといえる。
したがって、引用発明において、積層された金属壁と導波路壁、及びカラーフィルタは、光パイプ構造、すなわち、光導体構造を形成するものであるといえる。
よって、本願発明1と引用発明とは、「積層された前記導電層と前記反射層、及び前記フィルターユニットは、光導体構造を形成する」点で一致する。

カ 引用発明の「イメージセンサー700」は、本願発明1の「イメージセンサ」に相当する。

キ すると、本願発明1と引用発明とは、
「感知層と、
前記感知層上に位置するフィルターユニットと、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記感知層上に設置される導電層と、
接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記導電層上に設置される反射層と、
を含み、
積層された前記導電層と前記反射層、及び前記フィルターユニットは、光導体構造を形成することを特徴とするイメージセンサー。」
である点で一致し、下記の点で相違する。
[相違点]本願発明1では「前記導電層は導電ポリマー材料である」のに対し、引用発明では前記導電層は「金属壁」である点。

(2)本願発明1は、上記相違点で相違するから、引用発明ではない。

(3)上記相違点に係る構成は、引用文献1の上記「第5」の1(1)の上記摘記箇所以外にも、当審拒絶理由で引用された引用文献2にも記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないから、引用発明において、引用文献1、2の記載を参照しても、上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本願発明1は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明であるから、 本願発明1と同様の理由により、引用文献1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

3 本願発明8について
本願発明8は、「接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記感知層上に設置される導電層」を含み、「前記導電層は導電ポリマー材料であることを特徴とする」という構成を備えるものである。
一方、引用発明は、「接触して、前記カラーフィルタを囲み、且つ、前記基板上に設置される金属壁730B、732B、734B、736B」を含むものである。

本願発明8と引用発明とを対比すると、引用発明の「金属壁730B、732B、734B、736B」は、本願発明8の「導電層」に相当する。
したがって、本願発明8と引用発明とは、「接触して、前記フィルターユニットを囲み、且つ、前記感知層上に設置される導電層」を含む点で一致するものの、引用文献1には、「金属壁730B、732B、734B、736B」を「導電ポリマー材料」とすることは記載されていない点で両者は相違する。

そして、当該「前記導電層は導電ポリマー材料であること」は、引用文献1の上記「第5」の1(1)の上記摘記箇所以外にも、当審拒絶理由で引用された引用文献2にも記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないから、引用発明において、引用文献1、2の記載を参照しても、「金属壁730B、732B、734B、736B」を「導電ポリマー材料」とすることは、当業者が容易になし得たということはできない。
したがって、本願発明8は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第7 原査定についての判断
平成30年10月2日付けの補正により、補正後の請求項1、8は、「前記導電層は導電ポリマー材料であることを特徴とする」という技術的事項を有するものとなった。
当該「前記導電層は導電ポリマー材料であることを特徴とする」は、原査定における引用文献A?C、E?Gには記載されていない。
また、引用文献D(特開2006-343399号公報)には、カラーフィルター用着色組成物として、導電ポリマーが開示されているものの、「接触して、フィルターユニットを囲み、遮光層上に設置される導電層」を含み、「前記導電層は導電ポリマー材料である」という技術的事項は開示されていない。
さらに、当該技術的事項は、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1?8は、原査定における引用文献A?Gに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-28 
出願番号 特願2015-52203(P2015-52203)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 聖和田邊 顕人  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 河合 俊英
恩田 春香
発明の名称 イメージセンサー  
代理人 磯野 富彦  

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