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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1348086
審判番号 不服2016-15176  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-07 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2014- 79784「消費材」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月11日出願公開、特開2014-166184〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年10月24日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2009-533634号の一部を平成26年4月8日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成29年9月22日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成30年3月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する、甘味料の甘味を相加よりも増強するための甘味増強組成物であって、
スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせを少なくとも0.0001%含み、
前記少なくとも1つの甘味料または甘味料の組合せが、甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する甘味消費材に、
各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって、ナリンジンジヒドロカルコンについては2?60ppm、ルブソシドについては1.4?56ppm、ルブス抽出物については2?80ppm、モグロシドVについては0.4?12.5ppm、ラカンカ抽出物については2?60ppm、
ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される、
ただし、甘味料がエリスリトールである場合、甘味増強剤はルブス抽出物であり、
甘味料が、アセスルファムカリウム、アスパルテームまたはスクラロースである場合、甘味増強剤はラカンカ抽出物である、
前記甘味増強組成物。」

第3 拒絶の理由
平成29年9月22日に当審が通知した拒絶理由のうちの理由2及び理由3は、次のとおりのものである。
理由2(新規性) 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1?4のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性) 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1?4のいずれかに記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭57-54575号公報
引用文献2:特開平10-262599号公報
引用文献3:特開2003-164268号公報
引用文献4:特開平10-337164号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。

「2.特許請求の範囲
1 砂糖混合異性化液糖で甘味を付与するに際し、ステビオサイド及び該ステビオサイド100重量部に対して10?70重量部のレバウディオサイドAを含むステビア甘味料を砂糖混合異性化液糖中に配合された15?40重量%の砂糖に対して総ステビオサイドとして0.1?0.8重量%を添加共存させることを特徴とする砂糖混合異性化液糖の呈味改善法。」(1ページ左下欄4?12行)
「実施例 1
無水物としてぶどう糖39%、果糖34%、砂糖15%、その他糖類12%の砂糖混合異性化液糖135g(固形分換算)と総ステビオサイドとして純度90%を有し、ステビオサイド100部に対してレバウディオサイドA40部から成るステビア甘味料0.045gを飲料水に溶解し全量を1lとして20℃の恒湿恒温室で16名のパネラーにより官能試験を行なつた。
官能試験結果
清涼味とコク味が程良くバランスされた良い味であるとした者:16名
コク味はあるが清涼味に乏しいとした者 : 0名」(3ページ右下欄10?21行)

これらの記載によれば、引用文献1には、実施例1のステビア甘味料に係る、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ぶどう糖39%、果糖34%、砂糖15%、その他糖類12%の砂糖混合異性化液糖135g(固形分換算)と総ステビオサイドとして純度90%を有し、ステビオサイド100部に対してレバウディオサイドA40部から成るステビア甘味料0.045gを飲料水に溶解し全量を1lとしたものにおける、上記ステビア甘味料。」

2 引用文献3
引用文献3には、以下の事項が記載されている。(「・・・」は記載の省略を意味する。以下同じ。)
「【0075】実施例1
ステビア抽出物A1(ステビオサイドの重量割合26.8%、レバウディオサイドAの重量割合58.5%)10.0gとガラクトシル糖化合物として乳糖100gとを純水500mlで加温溶解した後、・・・
【0076】この液を濾過して浮遊固形物を除去した後、・・・、淡黄色粉末状の甘味料(以下、甘味料1という)11.2gを得た。
【0077】次に、・・・甘味料1中のレバウディオサイドAの重量割合(RA)、・・・、ステビオサイドの重量割合(ST)及び・・・を測定した。」
「【0108】甘味料1中の各成分の重量割合(ST、RA、ST-G1、ST-G2、RA-G1、RA-G2、RA-G3およびX)、〔(GRA+RA)/(X)〕の値および〔(GRA)/(RA)〕の値を第8表に示す。」
「【表8】


「【0129】応用例1
グラニュー糖30g、異性化糖170g、クエン酸3.0g、クエン酸ナトリウム0.20g、サイダーエッセンス0.20g、甘味料1の0.22g、および炭酸水を混合し、2リットルのサイダーを調製した。20名のパネラーによる呈味試験の結果、甘味料1を用いたサイダーはあっさりした甘味で残味の切れが良好なサイダーであった」

表8より、甘味料1(実施例1)のステビオサイドの重量割合(ST)が13.5%であり、レバウディオサイドAの重量割合(RA)が19.7%である。
よって、これらの記載によれば、引用文献3には、応用例1のサイダーにおける甘味料1に係る、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「グラニュー糖30g、異性化糖170g、クエン酸3.0g、クエン酸ナトリウム0.20g、サイダーエッセンス0.20g、甘味料1の0.22g、および炭酸水を混合した、2リットルのサイダーにおける、上記甘味料1であって、
上記甘味料1中のステビオサイドの重量割合(ST)が13.5%であり、レバウディオサイドAの重量割合(RA)が19.7%である、
上記甘味料1。」

3 引用文献4
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「【実施例4】[ミルクコーヒー]
【0042】コーヒー豆40gを650ミリリットルの熱水にて抽出してコーヒー抽出液とした。牛乳9.0g、乳化剤0.1g、水10.0g、砂糖6.6g、参考例3で得たキシロオリゴ糖1.5g、レバウディオサイドA0.003g、コーヒーフレーバー0.015g、にコーヒー抽出液を加えて全量を100ミリリットルとした。本品は、キシロオリゴ糖の添加により、コーヒーの持つ風味を失うことなく、適度な甘味とコクを付与された飲料であった。」

上記記載によれば、引用文献4には、レバウディオサイドAに係る、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「牛乳9.0g、乳化剤0.1g、水10.0g、砂糖6.6g、キシロオリゴ糖1.5g、レバウディオサイドA0.003g、コーヒーフレーバー0.015g、にコーヒー抽出液を加えて全量を100ミリリットルとしたミルクコーヒーにおける、上記レバウディオサイドA。」

第5 対比・判断
1 引用発明1に基づく新規性及び進歩性
(1)対比
引用発明1の「ステビオサイド」、「レバウディオサイドA」、「ぶどう糖」、「果糖」、「砂糖」は、それぞれ、本願発明の「ステビオシド」、「レバウディオシドA」、「グルコース」、「フルクトース」、「スクロース」に相当する。
引用発明1の「ステビア甘味料」は、ステビオサイド及びレバウディオサイドAから成るので、本願発明の「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する」「組成物」に相当する。
引用発明1の「ぶどう糖」、「果糖」、「砂糖」は、本願発明の「スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせ」に相当する。
引用発明1の、砂糖混合異性化液糖とステビア甘味料を「飲料水に溶解し全量を1Lとしたもの」は、飲料ということができるものであるから、本願発明の「甘味消費材」に相当する。
引用発明1の「ぶどう糖」、「果糖」、「砂糖」の、上記飲料中の合計濃度は、
{135g×(0.39+0.34+0.15)}/1L≒11.9%
であるから、本願発明の「少なくとも0.0001%含み」及び「甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する」に相当する。
引用発明1は、「ステビオサイド100部に対してレバウディオサイドA40部から成るステビア甘味料0.045gを飲料水に溶解し全量を1L」の飲料とするところ、上記飲料中の「ステビオサイド」の濃度は、
{0.045g×100/(100+40)}/1L≒32ppm
であり、同じく、「レバウディオサイドA」の濃度は、
{0.045g×40/(100+40)}/1L≒13ppm
である。ここで、本願発明の各甘味増強剤の「甘味検出閾値に近い濃度」が、具体的には「ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppm」であるから、引用発明1が、上記濃度でステビア甘味料を飲料水に溶解することは、本願発明の「各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって」「ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される」に相当する。
よって、本願発明と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する組成物であって、
スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせを少なくとも0.0001%含み、
前記少なくとも1つの甘味料または甘味料の組合せが、甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する甘味消費材に、
各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって、ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される、
組成物。」

[相違点1]
組成物が、本願発明は、「甘味料の甘味を相加よりも増強するための甘味増強組成物」であるのに対し、引用発明1は、「ステビア甘味料」である点。

(2)判断
ア.本願発明の組成物に係る「甘味料の甘味を相加よりも増強するための」、「甘味増強」という特定事項は、組成物の組成自体を具体的に特定するものではない。そして、上記「(1)対比」に示したとおり、本願発明に係る「組成物」と引用発明1の「ステビア甘味料」は、組成自体に相違するところがないから、両者は物として相違するものではない。
また、引用発明1の「ステビア甘味料」は、甘味料であるから、甘味を付与するために添加される「甘味増強」組成物といえ、甘味を増強する程度は、ステビオサイド及びレバウディオサイドAから成るステビア甘味料に内在する性質であるから、その性質が本願発明の組成物と相違することは考えられない。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、上記本願発明の「甘味料の甘味を相加よりも増強するための」が、組成物の用途を限定するものだとしても、甘味を単に増強するための用途と甘味を相加よりも増強するための用途は、実質上区別できないし、本願発明と引用発明1は、所定の甘味消費材に所定の濃度で添加される点で、具体的な使用態様にも差異がないから、両者の用途が相違するとはいえない。
したがって、本願発明は引用発明1である。
イ.仮に、引用文献1の「砂糖混合異性化液糖中の前記範囲内の砂糖に対してステビア甘味料を添加共存させることによって清涼味とコク味が程良くバランスされた良質の甘味が得られることを知見した。」(2ページ右上欄7?10行)との記載等に照らし、引用発明1のステビア甘味料が「甘味増強」組成物ではなく、この点が実質的な相違点であるとしても、甘味料を甘味増強のために用いることは通常のことであるから、引用発明1のステビア甘味料を「甘味増強」組成物とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
よって、本願発明は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明3に基づく新規性及び進歩性
(1)対比
引用発明3の「ステビオサイド」、「レバウディオサイドA」、「グラニュー糖」は、それぞれ、本願発明の「ステビオシド」、「レバウディオシドA」、「スクロース」に相当する。
引用発明3の「甘味料1」は、ステビオサイド及びレバウディオサイドAを含有するので、本願発明の「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する」「組成物」に相当する。
引用発明3の「異性化糖」は、果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)を主成分とする糖のことであり、そうすると、引用発明3の「グラニュー糖」、「異性化糖」は、本願発明の「スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせ」に相当する。
引用発明3の「サイダー」は、本願発明の「甘味消費材」に相当する。
そして、引用発明3の「グラニュー糖」、「異性化糖」の、上記サイダー中の合計濃度は、
(30g+170g)/2L≒10%
であるから、本願発明の「少なくとも0.0001%含み」及び「甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する」に相当する。
引用発明3のサイダー中の「ステビオサイド」の濃度は、
(0.22g×13.5/100)/2L≒15ppm
であり、同じく、「レバウディオサイドA」の濃度は、
(0.22g×19.7/100)/2L≒22ppm
である。ここで、本願発明の各甘味増強剤の「甘味検出閾値に近い濃度」が、具体的には「ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppm」であるから、引用発明3が、上記濃度で甘味料1を炭酸水に混合することは、本願発明の「各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって」「ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される」に相当する。
よって、本願発明と引用発明3との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する組成物であって、
スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせを少なくとも0.0001%含み、
前記少なくとも1つの甘味料または甘味料の組合せが、甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する甘味消費材に、
各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって、ステビオシドについては2?60ppm、およびレバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される、
組成物。」

[相違点2]
組成物が、本願発明は、「甘味料の甘味を相加よりも増強するための甘味増強組成物」であるのに対し、引用発明3は、「甘味料1」である点。

(2)判断
ア.上記「(1)対比」に示したとおり、本願発明に係る「組成物」と引用発明3の「甘味料1」は、組成自体に相違するところがないこと、引用発明3の「甘味料1」は、甘味料であるから、甘味を付与するために添加される「甘味増強」組成物といえること、を踏まえると、前記1(2)ア.で検討したのと同様に、相違点2は実質的な相違点ではなく、本願発明と引用発明3の用途が相違するともいえない。
したがって、本願発明は引用発明3である。
イ.仮に、引用発明3の甘味料1が「甘味増強」組成物ではなく、この点が実質的な相違点であるとしても、甘味料を甘味増強のために用いることは通常のことであるから、引用発明3の甘味料1を「甘味増強」組成物とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
よって、本願発明は引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用発明4に基づく新規性及び進歩性
(1)対比
引用発明4の「レバウディオサイドA」は、本願発明の「レバウディオシドA」に相当するとともに、本願発明の「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する」「組成物」に相当する。
引用発明4の「砂糖」は、本願発明の「スクロース」に相当するとともに、本願発明の「スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせ」に相当する。
引用発明4の「ミルクコーヒー」は、本願発明の「甘味消費材」に相当する。
そして、引用発明4の「砂糖」の、上記ミルクコーヒー中の濃度は、
6.6g/100mL≒6.6%
であるから、本願発明の「少なくとも0.0001%含み」及び「甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する」に相当する。
引用発明4のミルクコーヒー中の「レバウディオサイドA」の濃度は、
0.003g/100mL≒30ppm
である。ここで、本願発明の各甘味増強剤の「甘味検出閾値に近い濃度」が、具体的には「レバウディオシドAについては1?30ppm」であるから、引用発明4が、上記濃度でレバウディオシドAをミルクコーヒーに含有することは、本願発明の「各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって」「レバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される」に相当する。
よって、本願発明と引用発明4との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「ナリンジンジヒドロカルコン、モグロシドV、ラカンカ抽出物、ルブソシド、ルブス抽出物、ステビオシド、およびレバウディオシドAからなる群から選択される、少なくとも1種の甘味増強剤を含有する組成物であって、
スクロース、フルクトース、グルコース、高フルクトースコーンシロップ、コーンシロップ、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロースから選択される少なくとも1つの甘味料、またはこれらの組み合わせを少なくとも0.0001%含み、
前記少なくとも1つの甘味料または甘味料の組合せが、甘味検出閾値より高い濃度において、少なくとも2%スクロースと等甘味の濃度で存在する甘味消費材に、
各甘味増強剤が、前記消費材において、その甘味検出閾値に近い濃度であって、レバウディオシドAについては1?30ppmで存在するように添加される、
組成物。」

[相違点3]
組成物が、本願発明は、「甘味料の甘味を相加よりも増強するための甘味増強組成物」であるのに対し、引用発明4は、「レバウディオサイドA」である点。

(2)判断
ア.上記「(1)対比」に示したとおり、本願発明に係る「組成物」と引用発明4の「レバウディオサイドA」は、組成自体に相違するところがないこと、引用発明4の「レバウディオサイドA」は、甘味料の一種であるから、甘味を付与するために添加される「甘味増強」組成物といえること、を踏まえると、前記1(2)ア.で検討したのと同様に、相違点3は実質的な相違点ではなく、本願発明と引用発明4の用途が相違するともいえない。
したがって、本願発明は引用発明4である。
イ.仮に、引用発明4のレバウディオサイドAが「甘味増強」組成物ではなく、この点が実質的な相違点であるとしても、レバウディオサイドAを甘味増強のために用いることは通常のことであるから、引用発明4のレバウディオサイドAを「甘味増強」組成物とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
よって、本願発明は引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、あるいは、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明3であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、あるいは、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
さらに、本願発明は、引用発明4であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、あるいは、引用発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-23 
結審通知日 2018-08-24 
審決日 2018-09-04 
出願番号 特願2014-79784(P2014-79784)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A23L)
P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 藤原 直欣
紀本 孝
発明の名称 消費材  
代理人 矢後 知美  
代理人 葛和 清司  

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