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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F
管理番号 1348250
審判番号 不服2017-10181  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-07 
確定日 2019-02-05 
事件の表示 特願2016- 51986「光変調デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開,特開2017-167301,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成28年3月16日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月21日 拒絶理由通知(同年11月30日発送)
平成29年 1月27日 手続補正・意見書提出
同年 3月31日 拒絶査定(同年4月11日謄本送達)
同年 7月 7日 審判請求・手続補正
同年12月 4日 上申書提出
平成30年 7月18日 拒絶理由通知(同年7月24日発送)
同年 9月21日 手続補正・意見書提出
同年10月22日 拒絶理由通知(同年10月23日発送)
同年11月29日 手続補正・意見書提出

2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は,平成30年11月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と,
2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと,
を備え,
前記レンズの2つにはそれぞれ一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され,前記レンズの他の2つにはそれぞれ他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され,前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは,互いに間に角度を持って,伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されており,更に,
前記互いの間に角度を持った前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有し,
前記2つの偏波合成器は,それぞれに入射された前記2つの直線偏波光の一方を互いに離間する方向に反射するよう構成されている,
光変調デバイス。」

3 原査定の理由及び当審拒絶理由の概要
---< 引用例等一覧 >-------------------
1 特開2015-172630号公報
2 特開2015-169795号公報
3 特開2015-156015号公報
4 特開2015-31787号公報
5 特開2004-219756号公報
--------------------------------
(1)原査定(平成29年3月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
引用例1には,2つの光変調素子とそこから出力される光を受ける4つのレンズとを備え,各光変調素子からの光が伝搬方向に沿って互いの距離が離れるように構成されている光変調デバイスが開示されており,当該光変調デバイスに対して,引用例2に記載された,複数の光変調器と複数のレンズとを備えた光変調デバイスにおいて,光を所望の方向に出力させる方法(レンズの光軸を導波路の光軸からずらして配置する方法,または導波路の出力端を傾斜させる方法)を適用することは当業者が容易になし得たことであるから,請求項1?7に係る発明は特許法第29条第2項により特許を受けることができない,というものである。

(2)当審拒絶理由(平成30年7月18日付け)の概要は次のとおりである。
ある光軸に沿って伝搬する光を凸レンズに入力する際に,当該凸レンズの光軸と,前記伝搬する光の光軸とをずらすことにより,前記凸レンズから出射した直後の光の進行する方向を制御することは,引用例2ないし5にも記載されているように,従来から周知の技術であって,引用例1に記載された,偏波多重方式を採用した光送信装置10に対して,当該周知技術を適用することは,当業者が容易になし得たことであるから,請求項1?7に係る発明は特許法第29条第2項により特許を受けることができない,というものである。

(3)当審拒絶理由(平成30年10月22日付け)の概要は次のとおりである。
請求項2の記載における,「・・・長手方向に延伸する任意の線」とはどのような線を指すのか不明であり,特許を受けようとする発明が明確でないから,請求項2の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない,というものである。

4 引用例に記載された発明
(1)引用例1に記載された発明
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例1(特開2015-172630号公報)には,図1とともに以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
本発明は,光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの高速化を実現するための伝送方式として,偏波多重方式が知られている。偏波多重方式とは,偏波が互いに直交する信号光を合成した偏波多重光を利用して二つの独立したデータを一度に伝送する伝送方式である。
【0003】
偏波多重方式を採用した光送信装置では,所定の波長の光を変調する光変調器が搭載される。光変調器によって所定の波長の光が変調されて得られる2つの信号光は,互いに偏波を直交させた状態で合成され,偏波多重光として後段側の光伝送路へ出力される。
【0004】
このような光送信装置では,通信の高速化を更に促進するための技術が種々検討されている。例えば,互いに異なる複数の波長にそれぞれ対応した複数の光変調器を1つの基板に集積する技術が知られている。この技術では,互いに異なる2つの波長の光をそれぞれ変調する2つの光変調器が基板の幅方向に沿って並列に設けられる。
・・・(中略)・・・
【0006】
しかしながら,上述した従来の技術では,複数の光変調器を1つの基板に集積した装置を小型化しつつ,光学部品の損傷を防ぐ点までは考慮されていない。
【0007】
この点について説明する。複数の光変調器を1つの基板に集積するためには,基板の幅を増大することが考えられる。ただし,基板の幅が増大されると,装置全体の小型化が阻害される。さらに,基板の幅が増大されると,光変調器による光の変調に用いられる電気信号の伝搬距離が長くなるため,電気信号が減衰する。結果として,電気信号により光が変調されて得られる信号光の品質が劣化する。このような信号光の品質の劣化を回避するためには,基板の幅の増大を抑えることが好ましい。
【0008】
これに対して,複数の変調器の各々の後段に光路変換プリズムと呼ばれる光学部品を設け,複数の変調器の各々から出力される信号光の光路の間隔を基板の幅方向に沿って拡げる構造が考えられる。この構造では,基板の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズムよりも後段側に他の光学部品を配置するためのスペースが確保される。ただし,基板の幅が狭くなるほど,光路変換プリズムどうしが接触して破損する可能性が高まるという問題がある。
【0009】
開示の技術は,上記に鑑みてなされたものであって,複数の光変調器を1つの基板に集積した装置を小型化しつつ,光学部品の損傷を防ぐことを目的とする。」
「【0014】
図1は,実施例1に係る光送信装置の構成例を示す図である。図1に示す光送信装置10は,光源11-1,11-2と,接続部材12と,変調用基板13と,コリメートレンズ14-1,14-2と,コリメートレンズ15-1,15-2と,光路変換プリズム16と,光路変換プリズム17とを有する。また,光送信装置10は,偏波合成器18と,偏波合成器19と,筐体20と,集光レンズ21と,レンズホルダ22と,光ファイバ23と,集光レンズ24と,レンズホルダ25と,光ファイバ26とを有する。
【0015】
なお,図1において,変調用基板13の幅方向に沿ってy軸が定義され,変調用基板13の長手方向に沿ってx軸が定義されるものとする。また,変調用基板13の幅方向に沿って第2の光変調器132とは反対側が,y軸の正方向であり,変調用基板13の幅方向に沿って第1の光変調器131とは反対側が,y軸の負方向であるものとする。また,変調用基板13の長手方向に沿って光路変換プリズム16とは反対側が,x軸の正方向であり,変調用基板13の長手方向に沿って光路変換プリズム16の側が,x軸の負方向であるものとする。
【0016】
光源11-1,11-2は,互いに波長が異なる光を発する。具体的には,光源11-1は,波長λ1の光を発し,光源11-2は,波長λ1とは異なる波長λ2の光を発する。波長λ1の光及び波長λ2の光は,それぞれ,第1の波長の光及び第2の波長の光の一例である。
【0017】
接続部材12は,光源11-1,11-2と,変調用基板13とを光学的に接続する部材である。光源11-1から発せられる波長λ1の光は,接続部材12を介して,後述する変調用基板13上の第1の光変調器131へ入力される。光源11-2から発せられる波長λ2の光は,接続部材12を介して,後述する変調用基板13上の第2の光変調器132へ入力される。
【0018】
変調用基板13は,中継基板133と接続される基板であり,中継基板133から供給される電気信号を用いて光を変調するための基板である。変調用基板13には,第1の光変調器131と,第2の光変調器132とが,変調用基板13の幅方向に沿って,すなわち,y軸方向に沿って並列に設けられる。
【0019】
第1の光変調器131は,接続部材12を介して光源11-1から入力される波長λ1の光を変調する。具体的には,第1の光変調器131は,光変調部131a及び光変調部131bを有する。光変調部131aは,波長λ1の光が光カプラ等により分岐されると,分岐により得られる一方の波長λ1の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調する。以下では,光変調部131aにより波長λ1の光が変調されて得られる光を,第1の出力光と呼ぶ。光変調部131aは,第1の出力光をコリメートレンズ14-1へ出力する。
【0020】
光変調部131bは,分岐により得られる他方の波長λ1の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調する。以下では,光変調部131bにより波長λ1の光が変調されて得られる光を,第2の出力光と呼ぶ。光変調部131bは,第2の出力光をコリメートレンズ14-2へ出力する。
【0021】
第2の光変調器132は,接続部材12を介して光源11-2から入力される波長λ2の光を変調する。具体的には,第2の光変調器132は,光変調部132a及び光変調部132bを有する。光変調部132aは,波長λ2の光が光カプラ等により分岐されると,分岐により得られる一方の波長λ2の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調する。以下では,光変調部132aにより波長λ2の光が変調されて得られる光を,第3の出力光と呼ぶ。光変調部132aは,第3の出力光をコリメートレンズ15-1へ出力する。
【0022】
光変調部132bは,分岐により得られる他方の波長λ2の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調する。以下では,光変調部132bにより波長λ2の光が変調されて得られる光を,第4の出力光と呼ぶ。光変調部132bは,第4の出力光をコリメートレンズ15-2へ出力する。
【0023】
コリメートレンズ14-1,14-2は,変調用基板13と,光路変換プリズム16との間に設けられ,光変調部131a及び光変調部131bから入力される第1及び第2の出力光をそれぞれコリメートする。
【0024】
コリメートレンズ15-1,15-2は,変調用基板13と,光路変換プリズム17との間に設けられ,光変調部132a及び光変調部132bから入力される第3及び第4の出力光をそれぞれコリメートする。
【0025】
光路変換プリズム16は,コリメートレンズ14-1,14-2によりそれぞれコリメートされる第1及び第2の出力光の光路をy軸の正方向に移動させる。換言すれば,光路変換プリズム16は,第1及び第2の出力光の光路と,第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がる方向に,第1及び第2の出力光の光路を移動させる。
【0026】
光路変換プリズム17は,コリメートレンズ15-1,15-2によりそれぞれコリメートされる第3及び第4の出力光の光路をy軸の負方向に移動させる。換言すれば,光路変換プリズム17は,第1及び第2の出力光の光路と,第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がる方向に,第3及び第4の出力光の光路を移動させる。
【0027】
また,光路変換プリズム17は,変調用基板13の長手方向,すなわち,x軸方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に配設される。図1に示す例では,光路変換プリズム17は,光路変換プリズム16と光路変換プリズム17とが接触しないように予め設定された距離Sだけ,x軸の負方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に配設される。
【0028】
また,光路変換プリズム17は,x軸方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に,x軸方向から見て光路変換プリズム16の一部と重なり合うように配設される。x軸方向から見て光路変換プリズム17が光路変換プリズム16の一部と重なり合うことによって,y軸の正方向側に存在する光路変換プリズム16の端部からy軸の負方向側に存在する光路変換プリズム17の端部までの距離が最小化される。
【0029】
偏波合成器18は,光路変換プリズム16から出力される第1及び第2の出力光を偏波合成する。具体的には,偏波合成器18は,1/2波長板181と,PBC(Polarization Beam Combiner)プリズム182とを含む。1/2波長板181は,光路変換プリズム16から出力される第1及び第2の出力光のうちいずれか一方の出力光の偏波を他方の出力光の偏波に対して90度回転する。図1の例では,1/2波長板181は,光路変換プリズム16から出力される第2の出力光の偏波を第1の出力光の偏波に対して90度回転する。
【0030】
PBCプリズム182は,1/2波長板181により偏波が回転された一方の出力光と,他方の出力光とを偏波合成することによって,偏波多重光を生成する。
【0031】
偏波合成器19は,光路変換プリズム17から出力される第3及び第4の出力光を偏波合成する。具体的には,偏波合成器19は,1/2波長板191と,PBCプリズム192とを含む。1/2波長板191は,光路変換プリズム17から出力される第3及び第4の出力光のうちいずれか一方の出力光の偏波を他方の出力光の偏波に対して90度回転する。図1の例では,1/2波長板191は,光路変換プリズム17から出力される第4の出力光の偏波を第3の出力光の偏波に対して90度回転する。
【0032】
PBCプリズム192は,1/2波長板191により偏波が回転された一方の出力光と,他方の出力光とを偏波合成することによって,偏波多重光を生成する。
【0033】
筐体20は,接続部材12,変調用基板13,コリメートレンズ14-1,14-2,コリメートレンズ15-1,15-2,光路変換プリズム16,光路変換プリズム17,偏波合成器18及び偏波合成器19を収容する。筐体20の側壁には,筐体20の外部に配置され,光の変調に用いられる電気信号を発生する電気信号源(不図示)と,中継基板133とを電気的に接続するコネクタ20aが設けられる。
【0034】
集光レンズ21は,偏波合成器18により第1及び第2の出力光が偏波合成されて得られる偏波多重光を光ファイバ23に向けて集光する。
【0035】
レンズホルダ22は,筐体20の外部に固定され,集光レンズ21を保持する。レンズホルダ22は,例えばレーザ溶接により筐体20の外部に固定される。
【0036】
光ファイバ23は,集光レンズ21により集光される偏波多重光を後段側に伝送する。
【0037】
集光レンズ24は,偏波合成器19により第3及び第4の出力光が偏波合成されて得られる偏波多重光を光ファイバ26に向けて集光する。
【0038】
レンズホルダ25は,筐体20の外部に固定され,集光レンズ24を保持する。レンズホルダ25は,例えばレーザ溶接により筐体20の外部に固定される。
【0039】
光ファイバ26は,集光レンズ24により集光される偏波多重光を後段側に伝送する。
【0040】
次に,実施例1の光送信装置10による作用について説明する。光送信装置10の光源11-1から発せられる波長λ1の光は,接続部材12を介して,変調用基板13上の第1の光変調器131へ入力される。光源11-2から発せられる波長λ2の光は,接続部材12を介して,変調用基板13上の第2の光変調器132へ入力される。そして,第1の光変調器131へ入力される波長λ1の光が光変調部131a及び光変調部131bにより変調されることによって,第1及び第2の出力光が得られる。一方,第2の光変調器132へ入力される波長λ2の光が光変調部132a及び光変調部132bにより変調されることによって,第3及び第4の出力光が得られる。
【0041】
続いて,第1の光変調器131から出力される第1及び第2の出力光は,コリメートレンズ14-1,14-2によりコリメートされる。一方,第2の光変調器132から出力される第3及び第4の出力光は,コリメートレンズ15-1,15-2によりコリメートされる。
【0042】
続いて,コリメートレンズ14-1,14-2によりコリメートされた第1及び第2の出力光の光路は,光路変換プリズム16によりy軸の正方向に移動される。一方,コリメートレンズ15-1,15-2によりコリメートされた第3及び第4の出力光の光路は,光路変換プリズム17によりy軸の負方向に移動される。すなわち,コリメートレンズ14-1,14-2によりコリメートされた第1及び第2の出力光の光路と,コリメートレンズ15-1,15-2によりコリメートされた第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がる。このため,変調用基板13の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17よりも後段側に偏波合成器18及び偏波合成器19等の光学部品を配置するためのスペースが確保される。
【0043】
ただし,変調用基板13の幅が過度に狭くなるほど,光路変換プリズム16と光路変換プリズム17とが接触して破損する可能性が高まる。この点,実施例1の光送信装置10では,光路変換プリズム17が,変調用基板13の長手方向,すなわち,x軸方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に配設される。このため,変調用基板13の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズム16と,光路変換プリズム17との接触が回避される。
【0044】
続いて,光路変換プリズム16により光路が移動された第1及び第2の出力光は,偏波合成器18により偏波合成される。一方,光路変換プリズム17により光路が移動された第3及び第4の出力光は,偏波合成器19により偏波合成される。
【0045】
続いて,偏波合成器18により第1及び第2の出力光が偏波合成されて得られる偏波多重光は,集光レンズ21により光ファイバ23に向けて集光される。一方,偏波合成器19により第3及び第4の出力光が偏波合成されて得られる偏波多重光は,集光レンズ24により光ファイバ26に向けて集光される。
【0046】
上述したように,実施例1の光送信装置10は,波長λ1の光を変調する第1の光変調器131と,波長λ2の光を変調する第2の光変調器132とが幅方向に沿って並列に設けられた変調用基板13を有する。また,光送信装置10は,第1の光変調器131により波長λ1の光が変調されて得られる第1及び第2の出力光の光路を変調用基板13の幅方向に沿って第2の光変調器132とは反対側に移動させる光路変換プリズム16を有する。また,光送信装置10は,第2の光変調器132により波長λ2の光が変調されて得られる第3及び第4の出力光の光路を変調用基板13の幅方向に沿って第1の光変調器131とは反対側に移動させる光路変換プリズム17を有する。そして,光路変換プリズム17は,変調用基板13の長手方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に配設される。
【0047】
このため,実施例1によれば,変調用基板13の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズム16と,光路変換プリズム17との接触が回避される。結果として,実施例1によれば,第1の光変調器131と第2の光変調器132とを1つの変調用基板13に集積した光送信装置10を小型化しつつ,光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17の損傷を防ぐことができる。さらに,実施例1によれば,変調用基板13の幅を可及的に狭小化することができるので,変調用基板13上の第1の光変調器131及び第2の光変調器132による光の変調に用いられる電気信号の伝搬距離を短縮化することができる。結果として,実施例1によれば,第1の光変調器131及び第2の光変調器132から出力される出力光の品質の劣化を抑制することができる。
【0048】
また,実施例1の光送信装置10では,光路変換プリズム17は,変調用基板13の長手方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に,変調用基板13の長手方向から見て光路変換プリズム16の一部と重なり合うように配設される。
【0049】
このため,実施例1によれば,y軸の正方向側に存在する光路変換プリズム16の端部からy軸の負方向側に存在する光路変換プリズム17の端部までの距離が最小化される。結果として,実施例1によれば,第1の光変調器131と第2の光変調器132とを1つの変調用基板13に集積した光送信装置10を変調用基板13の幅方向に沿って小型化することができる。
【0050】
また,実施例1の光送信装置10では,レンズホルダ22及びレンズホルダ25が,レーザ溶接により変調用基板13の外部に固定される。
【0051】
このため,実施例1によれば,偏波多重光における偏波間の損失差が存在する場合に,レンズホルダ22又はレンズホルダ25の位置,及び,ファイバ23又はファイバ26の位置を調整することにより,偏波間の損失差を小さくすることができる。さらに,レーザ溶接の固定時にそれらの位置がずれた場合,追加溶接により,微調が可能である。結果として,実施例1によれば,偏波多重光における偏波間の損失差を各波長の光ごとに抑制することが可能である。
【0052】
また,実施例1の光送信装置10では,偏波合成器18は,1/2波長板181と,PBCプリズム182とを含む。また,偏波合成器19は,1/2波長板191と,PBCプリズム192とを含む。
【0053】
このため,実施例1によれば,偏波合成器18及び偏波合成器19を小型化することができ,結果として,光送信装置10を更に小型化することができる。」

イ ここで,図1は以下のものである。


ウ 以上から,引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる。
「偏波多重方式を採用した光送信装置10であり,所定の波長の光を変調する光変調器が搭載され,光変調器によって所定の波長の光が変調されて得られる2つの信号光が,互いに偏波を直交させた状態で合成され,偏波多重光として後段側の光伝送路へ出力されるものであり,
光送信装置10は,光源11-1,11-2と,接続部材12と,変調用基板13と,コリメートレンズ14-1,14-2と,コリメートレンズ15-1,15-2と,光路変換プリズム16と,光路変換プリズム17とを有し,
また,光送信装置10は,偏波合成器18と,偏波合成器19と,筐体20と,集光レンズ21と,レンズホルダ22と,光ファイバ23と,集光レンズ24と,レンズホルダ25と,光ファイバ26とを有し,
変調用基板13の幅方向に沿ってy軸が定義され,変調用基板13の長手方向に沿ってx軸が定義され,
光源11-1,11-2は,互いに波長が異なる光を発するものであり,
光源11-1から発せられる波長λ1の光は,接続部材12を介して,後述する変調用基板13上の第1の光変調器131へ入力され,光源11-2から発せられる波長λ2の光は,接続部材12を介して,変調用基板13上の第2の光変調器132へ入力され,
第1の光変調器131は,光変調部131a及び光変調部131bを有し,光変調部131aは,波長λ1の光が光カプラ等により分岐された一方の波長λ1の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調されて得られる第1の出力光をコリメートレンズ14-1へ出力し,光変調部131bは,分岐された他方の波長λ1の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調して得られる第2の出力光をコリメートレンズ14-2へ出力し,
第2の光変調器132は,光変調部132a及び光変調部132bを有し,光変調部132aは,波長λ2の光が光カプラ等により分岐された一方の波長λ2の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調されて得られる第3の出力光をコリメートレンズ15-1へ出力し,光変調部132bは,分岐された他方の波長λ2の光を中継基板133から供給される電気信号を用いて変調されて得られる第4の出力光をコリメートレンズ15-2へ出力し,
コリメートレンズ14-1,14-2は,変調用基板13と,光路変換プリズム16との間に設けられ,光変調部131a及び光変調部131bから入力される第1及び第2の出力光をそれぞれコリメートし,
コリメートレンズ15-1,15-2は,変調用基板13と,光路変換プリズム17との間に設けられ,光変調部132a及び光変調部132bから入力される第3及び第4の出力光をそれぞれコリメートし,
光路変換プリズム16は,コリメートレンズ14-1,14-2によりそれぞれコリメートされる第1及び第2の出力光の光路をy軸の正方向に移動させて,第1及び第2の出力光の光路と,第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がる方向に,第1及び第2の出力光の光路を移動させ,
光路変換プリズム17は,コリメートレンズ15-1,15-2によりそれぞれコリメートされる第3及び第4の出力光の光路をy軸の負方向に移動させて,第1及び第2の出力光の光路と,第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がる方向に,第3及び第4の出力光の光路を移動させ,
光路変換プリズム17は,光路変換プリズム16と光路変換プリズム17とが接触しないように予め設定された距離Sだけ,x軸の負方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に配設され,また,光路変換プリズム17は,x軸方向に沿って光路変換プリズム16から離反する位置に,x軸方向から見て光路変換プリズム16の一部と重なり合うように配設され,
光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17により,コリメートレンズ14-1,14-2によりコリメートされた第1及び第2の出力光の光路と,コリメートレンズ15-1,15-2によりコリメートされた第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がるため,変調用基板13の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17よりも後段側に偏波合成器18及び偏波合成器19等の光学部品を配置するためのスペースが確保されるものであり,
偏波合成器18は,1/2波長板181と,PBC(Polarization Beam Combiner)プリズム182とを含んで,光路変換プリズム16から出力される第1及び第2の出力光を偏波合成し,
偏波合成器19は,1/2波長板191と,PBC(Polarization Beam Combiner)プリズム192とを含んで,光路変換プリズム17から出力される第3及び第4の出力光を偏波合成し,
集光レンズ21は,偏波合成器18により第1及び第2の出力光が偏波合成されて得られる偏波多重光を光ファイバ23に向けて集光するものである,
光送信装置10。」

(2)引用例2に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例2(特開2015-169795号公報)には,図1?3とともに以下の記載がある。
「【0027】
図2に示す光送信装置10は,光ファイバ11と,レンズ12と,基板13と,光分岐路14と,光変調器15-1,15-2と,導波路16-1?16-4とを有する。また,光送信装置10は,コリメートレンズ17-1?17-4と,保持部材18とを有する。また,光送信装置10は,波長板19と,PBC20と,レンズ21と,光ファイバ22とを有する。また,光送信装置10は,PD23-1,23-2と,配置部材24とを有する。
・・・(中略)・・・
【0034】
コリメートレンズ17-1?17-4は,例えばシリコンにより形成され,曲率が同一であるコリメートレンズである。コリメートレンズ17-1?17-4は,導波路16-1?16-4から出射される信号光及びモニタ光をコリメートする。具体的には,コリメートレンズ17-1は,導波路16-1から出射される信号光をコリメートする。コリメートレンズ17-2は,導波路16-2から出射されるモニタ光をコリメートする。コリメートレンズ17-3は,導波路16-3から出射される信号光をコリメートする。コリメートレンズ17-4は,導波路116-4から出射されるモニタ光をコリメートする。
【0035】
保持部材18は,例えば,シリコンにより形成され,コリメートレンズ17-1?17-4をy軸方向に沿ってアレイ状に保持する。具体的には,保持部材18は,導波路16-1?16-4のうち少なくとも一つの導波路の光軸からコリメートレンズ17-1?17-4のうち少なくとも一つのコリメートレンズの光軸が所定方向にずれた状態でコリメートレンズ17-1?17-4を保持する。本実施例1において,所定方向は,基板13の幅方向,すなわち,y軸方向である。保持部材18は,少なくとも一つの導波路の光軸から少なくとも一つのコリメートレンズの光軸がy軸方向にずれた状態で複数のコリメートレンズを保持することにより,コリメートレンズ17-1?17-4から信号光とモニタ光とを異方向に出射させる。例えば,y軸方向に沿ったPBC20の一側面側の位置にPD23-1,23-2が配置される場合を想定する。この場合,保持部材18は,複数のコリメートレンズを保持することにより,コリメートレンズ17-1及びコリメートレンズ17-3の各々から信号光をPBC20に向けて出射する。また,保持部材18は,複数のコリメートレンズを保持することにより,コリメートレンズ17-2及びコリメートレンズ17-4の各々からモニタ光をPD23-1,23-2に向けて出射する。なお,保持部材18によるコリメートレンズ17-1?17-4の保持態様の一例については,後述する。
【0036】
波長板19は,コリメートレンズ17-3から出射される信号光の偏波に対して,コリメートレンズ17-1から出射される信号光の偏波を90度回転する。PBC20は,偏波合成素子であり,波長板19により偏波が回転された信号光と,コリメートレンズ17-3から出射される信号光とを偏波合成し,信号光が偏波合成されて得られる偏波多重信号光をレンズ21へ出射する。レンズ21は,PBC20から出射される偏波多重信号光を集光する。光ファイバ22は,レンズ21により集光される偏波多重信号光を後段側へ伝送する。
【0037】
PD23-1,23-2は,受光素子であり,コリメートレンズ17-2及びコリメートレンズ17-4の各々から出射されるモニタ光をそれぞれ受光する。配置部材24は,y軸方向に沿ったPBC20の一側面側の位置にPD23-1,23-2を配置する。
【0038】
ここで,保持部材18によるコリメートレンズ17-1?17-4の保持態様の一例について説明する。図3は,実施例1における保持部材によるコリメートレンズの保持態様の一例を示す図である。図3に示す例では,導波路16-1と導波路16-2との間隔と,導波路16-3と導波路16-4との間隔とが異なるものとする。また,図3において,一点鎖線は,導波路16-1?16-4の各々の光軸及びコリメートレンズ17-1?17-4の各々の光軸を示す。
【0039】
図3に示すように,保持部材18は,信号光用の導波路の光軸からコリメートレンズの光軸がy軸の正方向にずれ,かつ,モニタ光用の導波路の光軸からコリメートレンズの光軸がy軸の負方向にずれた状態でコリメートレンズ17-1?17-4を保持する。詳細には,保持部材18は,信号光を導波する導波路16-1の光軸からコリメートレンズ17-1の光軸がy軸の正方向にずれた状態でコリメートレンズ17-1を保持する。また,保持部材18は,信号光を導波する導波路16-3の光軸からコリメートレンズ17-3の光軸がy軸の正方向にずれた状態でコリメートレンズ17-3を保持する。これに対して,保持部材18は,モニタ光を導波する導波路16-2の光軸からコリメートレンズ17-2の光軸がy軸の負方向にずれた状態でコリメートレンズ17-2を保持する。また,保持部材18は,モニタ光を導波する導波路16-4の光軸からコリメートレンズ17-4の光軸がy軸の負方向にずれた状態でコリメートレンズ17-4を保持する。このような保持態様によって,コリメートレンズ17-1,17-3の各々から信号光がPBC20に向けて出射され,かつ,コリメートレンズ17-2,17-4の各々からモニタ光がPD23-1,23-2に向けて出射される。つまり,保持部材18は,少なくとも一つの導波路の光軸から少なくとも一つのコリメートレンズの光軸がy軸方向にずれた状態で複数のコリメートレンズを保持することにより,コリメートレンズ17-1?17-4から信号光とモニタ光とを異方向に出射させる。」

イ よって,引用例2には,「少なくとも一つの導波路の光軸から少なくとも一つのコリメートレンズの光軸がy軸方向にずれた状態で複数のコリメートレンズを保持することにより,コリメートレンズ17-1?17-4から信号光とモニタ光とを異方向に出射させる」ことが記載されている。

(3)引用例3に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例3(特開2015-156015号公報)には,図1,3とともに以下の記載がある。
「【0017】
図3を参照して以下で更に詳細に述べる1つ又は複数の実施形態では,例えば,第1のグループのファイバーの光軸は,第1のグループのコリメートレンズの光軸に対して変位される。ポートアレイとコリメートレンズアレイとの間のこの相対的な位置のずれにより,第1のグループの入力及び出力ビーム119は,y-z平面内で,かつ対称軸109に対して角度θ1をなして光学系105に入る(又は光学系105から出る)ように送出されることになる。例えば,図1に示す例示的な実施形態では,第1のグループのコリメートレンズの光軸は,第1のグループのファイバーの光軸に対して負のy方向に変位する。これにより,WSS-1からの入力及び出力ビーム119のグループが,全体として下降する方向θ1に沿って(すなわち,負のy方向に沿うy成分を有する全体的な方向に沿って)送出されることになる。
【0018】
同様に,第2のグループのファイバーの光軸は第2のグループのコリメートレンズの光軸に対して変位され,第2のグループの入力及び出力ビーム121が,対称軸109に対して角度θ2をなして光学系105に入る(又は光学系105から出る)ように送出される。例えば,図1に示す例示的な実施形態では,第2のグループのコリメートレンズの光軸は,第2のグループのファイバーの光軸に対して正のy方向に沿って変位する。これにより,WSS-2からの入力及び出力ビーム121のグループが,全体として上昇する方向θ2に沿って(すなわち,正のy方向に沿うy成分を有する全体的な方向に沿って)送出されることになる。」

イ よって,引用例3には,「第1のグループのファイバーの光軸は,第1のグループのコリメートレンズの光軸に対して変位されることにより,第1のグループの入力及び出力ビーム119は,y-z平面内で,かつ対称軸109に対して角度θ1をなして光学系105に入る(又は光学系105から出る)ように送出され,第2のグループのファイバーの光軸は第2のグループのコリメートレンズの光軸に対して変位され,第2のグループの入力及び出力ビーム121が,対称軸109に対して角度θ2をなして光学系105に入る(又は光学系105から出る)ように送出される。」ことが記載されている。

(4)引用例4に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例4(特開2015-31787号公報)には,図4とともに以下の記載がある。
「【0019】
図4に示されるように,各光ファイバ11cと,各光ファイバ11cそれぞれに対応する各集光素子11dとの光軸は互いにずれている。具体的には,集光素子11dの光軸は光ファイバ11cの光軸に対してΔα(>0)だけずれており,また,そのずれ量Δαは,3個以上の光入出力ポート11において互いに等しい。これによって,3個以上の光入出力ポート11に均一な正の入出射角θ1が付与されている。なお,本実施形態では,3個以上の光ファイバ11cは間隔αでもって互いに等間隔に配置されており,これらに対応する3個以上の集光素子11dもまた,間隔αでもって互いに等間隔に配置されている。
【0020】
一方,各光ファイバ12cと,各光ファイバ12cそれぞれに対応する各集光素子12dとの光軸もまた,x軸方向に互いにずれている。但し,そのずれ量は集光素子11dのずれ量とは異なっており,例えば-Δαである。また,そのずれ量-Δαは,3個以上の光入出力ポート12において互いに等しい。これによって,3個以上の光入出力ポート12に均一な負の入出射角-θ1が付与されている。また,本実施形態では,3個以上の光ファイバ12cは間隔αでもって互いに等間隔に配置されており,これらに対応する3個以上の集光素子12dもまた,間隔αでもって互いに等間隔に配置されている。」

イ よって,引用例4には,「集光素子11dの光軸は光ファイバ11cの光軸に対してΔα(>0)だけずれていることによって,3個以上の光入出力ポート11に均一な正の入出射角θ1が付与され,集光素子12dとの光軸もまた,x軸方向に互いにずれており,そのずれ量は集光素子11dのずれ量とは異なっており,例えば-Δαであることによって,3個以上の光入出力ポート12に均一な負の入出射角-θ1が付与されている」ことが記載されている。

(5)引用例5に記載された事項
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された文献である引用例5(特開2004-219756号公報)には,図1とともに以下の記載がある。
「【0019】
光ファイバ13a?13cそれぞれの相互の位置関係は次のとおりである。すなわち,光ファイバ13aは,光ファイバ13aの端面において入出射される光の光路19aがレンズ15aにより所定の角度を屈折するように,レンズ15aの光軸から所定距離を平行移動した軸上に固定される。また,光ファイバ13bは,レンズ15bの光軸から所定距離を平行移動した軸上に固定されている。ここで,光路19aは,レンズ15bにおいて,レンズ15aにおける屈折とは逆の方向に所定の角度だけ屈折する。すなわち,光路19aは,レンズ15bによってコリメートされる。光ファイバ13bは,レンズ15bによってコリメートされた光路19aと光ファイバ13bの軸とが一致するように配置されている。なお,光路19aは,その途中でフィルタ21を通過する。フィルタ21としては誘電体多層膜フィルタが用いられ,特定波長の光のみがフィルタ21を透過し,他の波長の光はフィルタ21において反射する。
【0020】
光ファイバ13cは,レンズ15cの光軸から所定距離を平行移動した軸上に固定されている。ここで,フィルタ21において反射した光は,光路19bを通る。光路19bは,レンズ15cにおいて,レンズ15aにおける光路19aの屈折とは逆の方向に所定の角度屈折する。すなわち,光路19bはレンズ15cによってコリメートされる。光ファイバ13cは,レンズ15cによって屈折した光路19bと光ファイバ13cの軸とが一致するように配置されている。」

イ よって,引用例5には「光ファイバ13aは,光ファイバ13aの端面において入出射される光の光路19aがレンズ15aにより所定の角度を屈折するように,レンズ15aの光軸から所定距離を平行移動した軸上に固定され,光ファイバ13cは,レンズ15cの光軸から所定距離を平行移動した軸上に固定され,」「光路19bは,レンズ15cにおいて,レンズ15aにおける光路19aの屈折とは逆の方向に所定の角度屈折する」ことが記載されている。

(6)上記(2)?(5)から,光ファイバから出射した光を,集光レンズに対して,その光軸からずらして入射させることにより,当該光軸に対して所定の角度を持った方向に進行させることは周知技術といえる。

5 特許法第29条第2項についての当審の判断
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「光送信装置10」は,「所定の波長の光を変調する光変調器が搭載され,光変調器によって所定の波長の光が変調されて得られる2つの信号光が,互いに偏波を直交させた状態で合成され」るものであるから,「光変調器によって所定の波長の光が変調されて得られる2つの信号光」,すなわち,第1の光変調器131が出力する第1の出力光及び第2の出力光,並びに,第2の光変調器132が出力する第3の出力光及び第4の出力光は,いずれも直線偏波光であるといえる。
よって,引用発明に係る「第1の光変調器131」及び「第2の光変調器132」は,合わせて,本願発明1の「2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子」に相当する。

イ 引用発明においては,第1の光変調器131が出力する第1の出力光及び第2の出力光は,それぞれコリメートレンズ14-1及びコリメートレンズ14-2に出力され,また,第2の光変調器132が出力する第3の出力光及び第4の出力光は,それぞれそれぞれコリメートレンズ15-1及びコリメートレンズ15-2に出力されるから,当該構成は,本願発明1の「前記レンズの2つにはそれぞれ一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され,前記レンズの他の2つにはそれぞれ他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され」ることに相当し,また,引用発明のコリメートレンズ14-1及びコリメートレンズ14-2,並びにコリメートレンズ15-1及びコリメートレンズ15-2は,本願発明1の「2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズ」に相当する。

ウ 引用発明の「光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17により,コリメートレンズ14-1,14-2によりコリメートされた第1及び第2の出力光の光路と,コリメートレンズ15-1,15-2によりコリメートされた第3及び第4の出力光の光路との間隔が拡がるため,変調用基板13の幅が狭小化された場合であっても,光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17よりも後段側に偏波合成器18及び偏波合成器19等の光学部品を配置するためのスペースが確保される」ことと,本願発明1の「前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは,互いに間に角度を持って,伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されて」いることとは,「前記2つのレンズから出射した前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した前記2つの直線偏波光とは,互いの距離が離れるように構成されて」いる点で一致する。

エ 引用発明においては,「偏波合成器18は,1/2波長板181と,PBC(Polarization Beam Combiner)プリズム182とを含んで,光路変換プリズム16から出力される第1及び第2の出力光を偏波合成し」,また,「偏波合成器19は,1/2波長板191と,PBC(Polarization Beam Combiner)プリズム192とを含んで,光路変換プリズム17から出力される第3及び第4の出力光を偏波合成」するから,当該偏波合成器18および19を備えることと,本願発明1の「前記互いの間に角度を持った前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有」することとは,「前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有する」点で一致する。

オ 引用発明に係る「光送信装置10」は,光源11-1,11-2から発せられる光を第1,第2の各変調器131,132によって変調した信号を出力するものであるから,本願発明1に係る「光変調デバイス」に相当する。

カ 以上から,両者は以下の点で一致する。
「2つの直線偏波光をそれぞれ出力する2つの光変調素子と,
2つの前記光変調素子から出力される4つの直線偏波光のそれぞれを受ける4つのレンズと,
を備え,
前記レンズの2つにはそれぞれ一方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され,前記レンズの他の2つにはそれぞれ他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光が入射され,前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは,互いの距離が離れるように構成されており,更に,
前記前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有する,
光変調デバイス。」

キ 一方,両者は以下の点で相違する。
《相違点1》
本願発明1は,「前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは,互いに間に角度を持って,伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されて」いるのに対して,引用発明は,「光路変換プリズム16及び光路変換プリズム17により」,「前記2つのレンズから出射した前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した前記2つの直線偏波光とは,互いの距離が離れるように構成されて」はいるものの,「前記2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光と,前記他の2つのレンズから出射した直後の前記2つの直線偏波光とは,互いに間に角度を持って,伝搬するにつれて互いの距離が離れるように構成されて」はいない点。

《相違点2》
本願発明1は,「前記互いの間に角度を持った前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有する」のに対して,引用発明は,「前記前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光を,それぞれ偏波合成して1つの光ビームとして出力する2つの偏波合成器を有する」ものの,「前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光と他方の前記光変調素子からの前記2つの直線偏波光」が「互いの間に角度を持った」ものではない点。

《相違点3》
本願発明1は,「前記2つの偏波合成器は,それぞれに入射された前記2つの直線偏波光の一方を互いに離間する方向に反射するよう構成されている」構成を備えるが,引用発明においては,2つの偏波合成器18,19がそれぞれPBC(Polarization Beam Combiner)プリズム182,192を備えるものの,前記本願発明1に係る構成は備えない点。

(2)判断
事案に鑑み,まず相違点3について検討する。
ア 相違点3について
引用発明は,各偏波合成器18,19がそれぞれPBC(Polarization Beam Combiner)プリズム182,192を備えるが,前記4(1)イに摘記した引用例1の図1を参照すると,前記プリズム182,192は互いに同じ方向に配置されていることから,2つの偏波合成器18,19のそれぞれに入射した光と,偏波合成器をそれぞれ出射する光は,同じ間隔で進行するものとなっている。
また,引用例2ないし5の記載を見ても,相違点3に係る「2つの偏波合成器は,それぞれに入射された前記2つの直線偏波光の一方を互いに離間する方向に反射するよう構成」するものは見いだせない。
従って,相違点3は,当業者が周知技術を勘案しても,引用例1に基づいて容易になし得たこととはいえない。

(3)まとめ
よって,相違点1及び2について検討するまでもなく,本願発明1は,周知技術を勘案しても,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本願の請求項2?8について
ア 本願の請求項2?8は,請求項1を引用するものであるから,当該各請求項に係る発明は請求項1に係る発明特定事項を含むものである。
そして,前記(1)?(3)で検討したとおり,請求項1に係る発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,本願の請求項2?8に係る発明についても,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 特許法第36条第6項第2号についての当審の判断
平成30年10月22日付けの拒絶理由通知に対応して同年11月29日にされた手続補正により,請求項2における記載不備は解消された。

7 原査定についての判断
平成30年9月21日付け及び同年11月29日付けの手続補正により,補正後の請求項1?8は,「2つの偏波合成器は,それぞれに入射された前記2つの直線偏波光の一方を互いに離間する方向に反射するよう構成」を有するものとなった。当該構成は,原査定における引用例1及び2には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願請求項1?8に記載された発明は,当業者であっても,原査定における引用例1及び2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-22 
出願番号 特願2016-51986(P2016-51986)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 一石佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
古田 敦浩
発明の名称 光変調デバイス  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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