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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 H02J 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 取り消して特許、登録 H02J |
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管理番号 | 1348328 |
審判番号 | 不服2017-17514 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-27 |
確定日 | 2019-02-15 |
事件の表示 | 特願2016-230667「電気自動車の充電システムの制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-195757、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年11月28日(パリ条約による優先権主張 2016年4月20日 (KR)大韓民国)の出願であって、平成29年4月12日付けの拒絶理由通知に対して同年7月18日付けで手続補正がなされたが、同年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 補正の却下の決定 1.補正の却下の決定の結論 平成29年11月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 2.補正の却下の決定の理由 (1)本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、補正前の特許請求の範囲及び補正後の特許請求の範囲の記載は、それぞれ以下のとおりである。 ア.本件補正前の特許請求の範囲 「 【請求項1】 複数の電池の充電状態に関する情報を制御部に提供する電池管理部と、 前記複数の電池と連結される複数の電子接触器と、 系統から印加される交流電圧を直流電圧に変換して電池に供給するコンバータ部と、 前記複数の電池の初期充電を行う初期充電部と、 前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電し、前記複数の電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電し、前記複数の電池を電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御する前記制御部と、 を含む、電気自動車の充電システムの制御装置。 【請求項2】 前記制御部は、前記複数の電池が前記第1の電圧まで充電されると、前記複数の電池に連結された前記複数の電子接触器をターンオンする、請求項1に記載の電気自動車の充電システムの制御装置。 【請求項3】 前記制御部は、前記複数の電池のうち第1の電池に連結された第1の電子接触器をターンオンし、前記第1の電池が前記第1の電圧まで到達すると、前記第1の電子接触器をターンオフする、請求項1または2に記載の電気自動車の充電システムの制御装置。 【請求項4】 前記コンバータ部は、前記複数の電池の何れか1つ以上から供給される直流電圧を交流電圧に変換して系統に供給する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気自動車の充電システムの制御装置。 【請求項5】 前記複数の電子接触器と前記コンバータ部との間に配置され、過電流が電池に流入されることを防止する直流遮断器をさらに含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気自動車の充電システムの制御装置。 【請求項6】 前記コンバータ部と系統との間に配置され、過電流が系統に流入されることを防止する交流遮断器をさらに含む、請求項1乃至5の何れか一項に記載の電気自動車の充電システムの制御装置。」 イ.本件補正後の特許請求の範囲(下線は補正箇所を示す。) 「 【請求項1】 複数の電池の充電状態に関する情報を制御部に提供する電池管理部と、 前記複数の電池と連結される複数の電子接触器と、 系統から印加される交流電圧を直流電圧に変換して電池に供給するコンバータ部と、 前記複数の電池の初期充電を行い、ピーク電流を制限する初期充電部と、 前記複数の電池のうちの少なくとも1の電池が前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記少なくとも1の電池に連結された少なくとも1の電子接触器がターンオンされると前記少なくとも1の電池を電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電する制御部であって、 前記制御部が、前記複数の電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電し、前記複数の電池を電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御する前記制御部と、 を含む、電気自動車の充電システムの制御装置。」 (2)本件補正の適否の判断 本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正の目的について検討する。 まず、本件補正前の請求項1の「制御部」は、「前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電し、前記複数の電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電し、前記複数の電池を電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御」(以下、「補正前発明特定事項」という。)するものである。それに対して、本件補正後の請求項1の「制御部」は、「前記複数の電池のうちの少なくとも1の電池が前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記少なくとも1の電池に連結された少なくとも1の電子接触器がターンオンされると前記少なくとも1の電池を電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電する制御部であって、前記制御部が、前記複数の電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電し、前記複数の電池を電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御」(以下、「補正後発明特定事項」という。)するものである。 ここで、本件補正前の請求項1の「制御部」は、「前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」していることから、電流制御方式による充電を行う前に、すべての複数の電池を電圧制御により第1の電圧まで充電しているものである。 それに対して、本件補正後の請求項1の「制御部」は、「前記少なくとも1の電池を電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」していることから、必ずしもすべての複数の電池を電圧制御により第1の電圧まで充電しているわけではなく、複数の電池のうちの一部の電池のみを電圧制御により第1の電圧まで充電するものも含み、そうすると、電流制御方式による充電を行う前にすべての複数の電池が第1の電圧まで充電されているとは限らないから、前記補正後発明特定事項は、前記補正前発明特定事項を拡張するものである。 したがって、請求項1の前記補正は特許請求の範囲を減縮するものに該当しない。 また、請求項1の前記補正は、請求項の削除を目的とするものにも、誤記の訂正を目的するものにも、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 原査定の概要 平成29年7月28日付け拒絶査定の概要は以下のとおりである。 本願の請求項1ないし6に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開平9-103033号公報 2.特開2014-023361号公報 3.特開2013-226008号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2010-104230号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2014-239630号公報(周知技術を示す文献) 6.特開2014-235997号公報(周知技術を示す文献) 7.特開2015-177701号公報(周知技術を示す文献) 第4 本願発明 本件補正は、前記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。 したがって、本願請求項1ないし6に係る発明は(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年7月18日付けで補正された特許請求の範囲(前記「第2 補正の却下の決定」の「2.」の「(1)」の「ア.」を参照。)の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明1は次のとおりの発明である。 「 【請求項1】 複数の電池の充電状態に関する情報を制御部に提供する電池管理部と、 前記複数の電池と連結される複数の電子接触器と、 系統から印加される交流電圧を直流電圧に変換して電池に供給するコンバータ部と、 前記複数の電池の初期充電を行う初期充電部と、 前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電し、前記複数の電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電し、前記複数の電池を電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御する前記制御部と、 を含む、電気自動車の充電システムの制御装置。」 第5 引用文献、引用発明 1.引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、充電装置および方法に関し、特に、複数の電池を充電する場合、所定の充電量まで、1個ずつ電池の充電を行い、それ以降は、電池を並列に接続して、複数の電池を同時に充電する充電装置および方法に関する。」 イ.「【0020】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の充電装置の第1の実施例の構成例を示している。この構成例は、電流検出回路4(検出手段)、電圧検出回路5(検出手段)、および2個のスイッチ7-1,7-2(切替手段)を備える。電流検出回路4は、その時点で充電されているリチウムイオン電池などよりなる2次電池21-1もしくは2次電池21-2に流入する充電電流を測定し、その電流値を制御回路6に出力するようになされている。そして、電圧検出回路5は、その時点で充電されている電池21-1もしくは電池21-2の充電電圧を測定し、その電圧値を制御回路6に出力するようになされている。 【0021】整流平滑回路1は、交流電源から供給される交流電力を整流、平滑した後、定電流回路2(充電手段)および定電圧回路3(充電手段)に供給する。定電流回路2および定電圧回路3においては、充電電圧が低い場合、主に定電流回路2が動作し、定電流が出力され、充電電圧が高くなった後は、主に定電圧回路3が動作し、定電圧で充電が行われるようになされている。 【0022】制御回路6は、スイッチ7-1,7-2に接続され、電流検出回路4および電圧検出回路5が測定した充電電流および充電電圧の値に基づいて、スイッチ7-1,7-2を制御し、充電する電池を選択するようになされている。また、制御回路6は、充電電流の値および充電電圧の値で充電状態を監視し、満充電になった場合、スイッチ7-1,7-2をオフにするようになされている。」 ウ.「【0024】最初に、ステップS1において、制御回路6は、電池21-1,21-2のうちの所定の充電量まで充電されていない電池を1個選択する。ここでは、2個の電池21-1,21-2とも、まだ充電されていないので、制御回路6は、スイッチ7-1をオン、スイッチ7-2をオフにし、電池21-1を選択する。 【0025】次に、ステップS2において、選択された電池21-1に対して、充電を開始し、充電電圧が規定の電圧(図3においては、4.2ボルト)に達するまで、定電流回路2によって規定の電流(図3においては、1アンペア)が出力され、定電流充電が行われる。充電の進行に伴って、充電電圧が高くなると、電池21-1に流入する電流値が降下し始め、定電流充電が困難になる。その結果、自動的に定電圧充電に切り替わり、ステップS3において、定電圧回路3が動作し、定電圧充電が開始される。 【0026】そして、ステップS4において、制御回路6は、電流検出回路4が供給する充電電流の値が予め設定されている基準値以下になったか否かを判断し、充電電流が基準値より大きい場合、ステップS3に戻り、定電圧充電を継続する。充電電流が基準値以下になった場合は、ステップS5に進む。 【0027】この構成例においては、2個の電池21-1,21-2を充電するので、充電電流が規定の電流値の2分の1(図3においては、0.5アンペア=1アンペア/2)になるまで、定電圧充電を行い、後に2個の電池を同時に充電するとき、全充電電流の値が規定の電流値(図3においては、1アンペア)を超えないようにする。」 エ.「【0029】ここでは、電池21-2が、まだ所定の充電量まで充電されていないので、ステップS1に戻り、制御回路6がスイッチ7-1をオフし、スイッチ7-2をオンに制御し、電池21-2を選択した後、電池21-2に対して、ステップS2乃至ステップS5の処理を行う。 【0030】2個の電池21-1,21-2を所定の充電量まで充電した後、ステップS6において、制御回路6は、スイッチ7-1,7-2を両方ともオンにし、これらの電池を並列に接続して、同時に定電圧で充電を行う。このとき、1個の電池を充電しているときの2倍の充電電流が流れるが、上述したように、個々の電池は、規定の充電電流の1/2の充電電流となる状態まで既に充電されている。従って、定電流回路2の容量を超える充電電流が流れるようなことは防止される。」 オ.図1によれば、スイッチ7-1,7-2は、それぞれ2次電池21-1、2次電池21-2に連結されている。また、図1によれば、充電装置は、整流平滑回路1、定電流回路2、定電圧回路3、電流検出回路4、電圧検出回路5、制御回路6、スイッチ7-1,7-2からなる。 (ア)上記イ.によれば、電流検出回路4及び電圧検出回路5は、2次電池21-1、2次電池21-2に流入する充電電流値、2次電池21-1、2次電池21-2の充電電圧値をそれぞれ制御回路6に出力している。 (イ)上記イ.によれば、整流平滑回路1は、交流電源から供給される交流電力を整流、平滑した後、定電流回路2及び定電圧回路3に供給する。 (ウ)上記イ.によれば、制御回路6は、スイッチ7-1,7-2に接続され、電流検出回路4および電圧検出回路5が測定した充電電流および充電電圧の値に基づいて、スイッチ7-1,7-2を制御し、充電する電池を選択するようになされている。また、制御回路6は、充電電流の値および充電電圧の値で充電状態を監視し、満充電になった場合、スイッチ7-1,7-2をオフにするようになされている。これらのことから、制御回路6は、スイッチ7-1,7-2に接続され、電流検出回路4及び電圧検出回路5が測定した充電電流及び充電電圧の値に基づいて充電状態を監視し、スイッチ7-1,7-2を制御する。 (エ)上記ウ.によれば、制御回路6は、スイッチ7-1をオン、スイッチ7-2をオフにし、電池21-1を選択する。また、選択された電池21-1に対して、充電を開始し、充電電圧が規定の電圧に達するまで、定電流回路2によって規定の電流が出力され、定電流充電が行われる。さらに、ステップS3で、定電圧回路3が動作し、定電圧充電が開始され、充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで、定電圧充電を行う。これらのことから、制御回路6がスイッチ7-1をオン、スイッチ7-2をオフにして電池21-1を選択し、選択された電池21-1を、定電流回路2によって規定の電圧まで定電流充電し、そして、定電圧回路3によって充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで定電圧充電している。 (オ)上記エ.によれば、制御回路6がスイッチ7-1をオフし、スイッチ7-2をオンに制御し、電池21-2を選択した後、電池21-2に対して、ステップS2乃至ステップS5の処理を行う。上記(エ)も考慮すると、電池21-1を充電した後、制御回路6がスイッチ7-1をオフ、スイッチ7-2をオンにして電池21-2を選択し、選択された電池21-2を、定電流回路2が規定の電圧まで定電流充電し、そして、定電圧回路3によって充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで定電圧充電している。 (カ)上記エ.によれば、制御回路6は、2個の電池21-1,21-2のそれぞれを充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで充電した後、スイッチ7-1,7-2を両方ともオンにし、電池21-1、電池21-2を同時に定電圧充電する。そして、上記イ.によれば、制御回路6は、満充電になると、スイッチ7-1、7-2をオフにする。 (キ)上記ア.によれば、充電装置は、複数の電池を充電する場合、所定の充電量まで、1個ずつ電池の充電を行い、それ以降は、電池を並列に接続して、複数の電池を同時に充電する。また、上記オ.によれば、充電装置は、整流平滑回路1、定電流回路2、定電圧回路3、電流検出回路4、電圧検出回路5、制御回路6、スイッチ7-1,7-2からなる。 以上の事項と図面とを総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「2次電池21-1、2次電池21-2に流入する充電電流値、2次電池21-1、2次電池21-2の充電電圧値をそれぞれ制御回路6に出力している電流検出回路4及び電圧検出回路5と、 2次電池21-1、2次電池21-2にそれぞれ連結されているスイッチ7-1,7-2と、 交流電源から供給される交流電力を整流、平滑した後、定電流回路2及び定電圧回路3に供給している整流平滑回路1と、 スイッチ7-1,7-2に接続され、電流検出回路4及び電圧検出回路5が測定した充電電流及び充電電圧の値に基づいて充電状態を監視し、スイッチ7-1,7-2を制御する制御回路6を含む 充電装置であって、 制御回路6がスイッチ7-1をオン、スイッチ7-2をオフにして電池21-1を選択し、選択された電池21-1を定電流回路2によって規定の電圧まで定電流充電し、そして定電圧回路3によって充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで定電圧充電し、電池21-1を充電した後、スイッチ7-1をオフ、スイッチ7-2をオンにして電池21-2を選択し、選択された電池21-2を定電流回路2によって規定の電圧まで定電流充電し、そして定電圧回路3によって充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで定電圧充電し、さらに、制御回路6が、2個の電池21-1,21-2のそれぞれを充電電流が規定の電流値の2分の1になるまで充電した後、スイッチ7-1,7-2を両方ともオンにし、電池21-1、電池21-2を同時に定電圧充電し、制御回路6は満充電になるとスイッチ7-1,7-2をオフにする 充電装置」 2.引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「【0094】 ステップS500において、コントローラ40は、すべての電池パックB-1?B-nを充電させる。具体的には、コントローラ40は、各電池パックB-1?B-nに設けられたリレーR-1?R-nをオフからオンに切り替えることにより、すべての電池パックB-1?B-nを電源34に接続する。これにより、電源34からの電力を、すべての電池パックB-1?B-nに供給することができ、すべての電池パックB-1?B-nを充電させることができる。 【0095】 電池パックB-1?B-nを充電するときには、例えば、定電流定電圧充電(CCCV充電)を行うことができる。定電流定電圧充電では、まず、定電流のもとで、電池パックB-1?B-nを充電し、各電池パックB-1?B-n(各単電池10)の電圧が所定電圧(充電終止電圧)に到達したときには、定電圧のもとで、電池パックB-1?B-nを充電する。」 したがって、上記記載事項及び図面の事項を総合勘案すると、引用文献2には、次の事項が記載されている。 ・コントローラ40によって、各電池パックB-1?B-nに設けられたリレーR-1?R-nをオフからオンに切り替え、すべての電池パックB-1?B-nを電源34に接続し、定電流定電圧充電(CCCV)における定電流のもとで、電池パックB-1?B-nを充電し、各電池パックB-1?B-nの電圧が所定電圧に到達したときには、定電圧のもとで、電池パックB-1?B-nを充電する。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア.引用発明は、制御回路6によって、電流検出回路4及び電圧検出回路5が測定した充電電流及び充電電圧の値に基づいて充電状態を監視している。また、充電電流及び充電電圧の値とは、2次電池21-1、2次電池21-2に流入する充電電流値及び2次電池21-1、2次電池21-2の充電電圧値のことである。これらのことから、引用発明の「充電電流及び充電電圧の値」は、本願発明1の「複数の電池の充電状態に関する情報」に相当する。 また、引用発明の「電流検出回路4及び電圧検出回路5」は、2次電池21-1、2次電池21-2に流入する充電電流値、2次電池21-1、2次電池21-2の充電電圧値をそれぞれ制御回路6に出力しているから、本願発明1の「電池管理部」に相当する。 イ.引用発明の「スイッチ7-1,7-2」は、2次電池21-1、2次電池21-2と連結しているから、本願発明1の「複数の電子接触器」に相当する。 ウ.引用発明の「交流電力」は、交流電源から供給された電力であるから、系統から交流電圧が印加された電力であることは明らかである。また、引用発明の「整流平滑回路1」は、交流電力を整流、平滑するものであるから、交流電圧を直流電圧に変換するものであることも明らかである。そして、引用発明は、「整流平滑回路1」で、交流電力を整流、平滑した後、定電流回路2及び定電圧回路3に供給し、さらに、定電流回路2及び定電圧回路3によって、電池21-1、電池21-2を充電しているから、「整流平滑回路1」は、交流電圧を直流電圧に変換して、電池21-1、電池21-2に供給しているともいえる。これらのことから、引用発明の「整流平滑回路1」は、本願発明1の「コンバータ部」に相当する。 エ.本願発明1は、「複数の電池の初期充電を行う初期充電部」を有しているのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点で相違する。 オ.引用発明の「定電流充電」とは、本願発明1の「電流制御方式」による充電に相当し、引用発明の「定電圧充電」とは、本願発明1の「電圧制御方式」による充電に相当する。 また、引用発明の電池21-1、21-2の充電が、「定電流充電」をした後に「定電圧充電」をする、所謂「定電流定電圧充電」であることに着目すると、引用発明の「制御回路6」は、「定電流充電」により「電池21-1、21-2」を規定の電圧まで充電して、その後「定電圧充電」により、「電池21-1、21-2」を満充電まで充電する制御をしているといえる。ここで、上記「規定の電圧まで充電」するとは、本願発明1の「満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電」することに相当する。 してみれば、本願発明1の「制御部」と引用発明の「制御回路6」は、電池を電流制御方式により満充に当たる第2の電圧に対して所定の割合まで充電するように制御し、電圧制御方式により前記第2の電圧まで充電するように制御している点で共通している。 ただし、「電流制御方式」による充電において、本願発明1は「複数の電池」を充電しているのに対し、引用発明は「複数の電池」のうち「選択された電池」を充電している点で相違する。 また、「電圧制御方式」による充電において、本願発明1は「複数の電池」を充電しているのに対し、引用発明は「複数の電池」のうち「選択された電池」を充電し、その後、「複数の電池」を充電している点で相違する。 さらに、上述の「電流制御方式」及び「電圧制御方式」による充電を行う前に、本願発明1においては、「前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」しているのに対し、引用発明は、そのような充電を行っていない点でも相違する。 カ.引用発明の「充電装置」は、電池21-1、電池21-2の充電を制御するものであるから、「充電システムの制御装置」ともいえる。 ただし、充電システム制御装置が、本願発明1は「電気自動車」の充電システム制御装置であるのに対し、引用発明は、その旨の特定がなされていない点で相違する。 そうすると、本願発明1と引用発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点1> 本願発明1は、「複数の電池の初期充電を行う初期充電部」を有しているのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。 <相違点2> 「電流制御方式」による充電において、本願発明1は「複数の電池」を充電しているのに対し、引用発明は「複数の電池」のうち「選択された電池」を充電している点。 <相違点3> 「電圧制御方式」による充電において、本願発明1は「複数の電池」を充電しているのに対し、引用発明は「複数の電池」のうち「選択された電池」を充電し、その後、「複数の電池」を充電している点。 <相違点4> 上述の「電流制御方式」及び「電圧制御方式」による充電を行う前に、本願発明1においては、「前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」しているのに対し、引用発明は、そのような充電を行っていない点。 <相違点5> 充電システム制御装置が、本願発明1は「電気自動車」の充電システム制御装置であるのに対し、引用発明は、その旨の特定がなされていない点。 (2)相違点についての判断 まず、前記相違点4について検討する。 原査定で引用された引用文献2には、コントローラ40によって、各電池パックB-1?B-nに設けられたリレーR-1?R-nをオフからオンに切り替え、すべての電池パックB-1?B-nを電源34に接続し、定電流定電圧充電(CCCV)における定電流のもとで、電池パックB-1?B-nを充電し、各電池パックB-1?B-nの電圧が所定電圧に到達したときには、定電圧のもとで、電池パックB-1?B-nを充電することが記載されてはいるものの、定電流定電圧充電を行う前に、「前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」を行うことについては記載も示唆もされていない。また、原査定で周知技術を示す文献として引用された引用文献4及び5に記載されているように、定電流定電圧充電を行う前に、初期充電を行うことは周知であると認められるが、初期充電を行い、さらに「複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」を行うことまでは周知とはいえない。そして、原査定で引用された他の文献にも、「前記複数の電池のそれぞれが前記初期充電部に連結されると初期充電を行い、前記複数の電池のそれぞれを電圧制御により満充電圧より少ない第1の電圧まで充電」を行うことについては記載されていない。 したがって、引用発明に基づいて、本願発明1の上記相違点4に係る発明特定事項を当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。 よって、上記相違点1、上記相違点2、上記相違点3及び上記相違点5について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-02-05 |
出願番号 | 特願2016-230667(P2016-230667) |
審決分類 |
P
1
8・
56-
WY
(H02J)
P 1 8・ 121- WY (H02J) P 1 8・ 572- WY (H02J) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小池 堂夫、角田 慎治、阿部 陽 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 鈴木 圭一郎 |
発明の名称 | 電気自動車の充電システムの制御装置 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |