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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1348359
審判番号 不服2018-1575  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-05 
確定日 2019-01-24 
事件の表示 特願2013-191105「血流制限電気刺激システム及びその制御方法並びに医療用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月19日出願公開、特開2015- 33565〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月13日(優先権主張平成25年7月10日)の出願であって、平成29年8月14日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年10月24日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成30年1月5日付けで拒絶の査定がなされ、これに対して同年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成29年12月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。)
「加圧力を付与するために使用者の四肢の少なくとも何れか一つに巻き付けられるベルトと、電気刺激信号を発生させる電気刺激発生装置と、使用者の特定部位に装着されるとともに前記電気刺激発生装置で発生させた電気刺激信号の供給を受ける電極パッドと、前記ベルトにより付与される加圧力を制御して使用者の筋肉の血流を制限するとともに、前記電気刺激発生装置で発生させる電気刺激信号を制御して使用者の筋肉を電気的に刺激する制御装置と、を備える血流制限電気刺激システムであって、
前記制御装置は、所定の加圧力を付与する加圧動作と、前記加圧動作により付与された加圧力を所定の時間をかけて完全に除去する除圧動作と、を交互に繰り返すように前記ベルトにより付与される加圧力の制御を行うものであり、複数回の加圧動作を実現させる際に、各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く設定するものである、血流制限電気刺激システム。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2007-125254号公報
引用文献2.特開2011-212431号公報


第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)
(1)「【請求項2】
四肢のいずれかの所定の部位に巻付けることのできる長さとされたベルト、前記ベルトに設けられた気密とされたガス袋、前記ベルトに設けられた、四肢のいずれかの前記所定の部位に巻付けた状態で当該所定の部位に前記ベルトを固定する固定手段、を備えており、前記ガス袋に気体を充填することにより四肢の所定の部位に、当該所定の部位よりも下流側における血流を阻害するような所定の締付け力を与えられるようにされた緊締具、
と組合わせて用いられるものであり、前記締付け力の制御を行うようにされた加圧トレーニング装置であって、
所定の管を介して前記ガス袋に気体を送り込めるとともに、前記ガス袋から気体を抜くことができるようにされた圧力調整手段と、
前記締付け力を変化させるために、前記圧力調整手段を制御する制御手段と、を備えており、
前記制御手段は、前記緊締具が前記所定の部位に与える前記締付け力が、前記所定の部位よりも下流側における血流を阻害するための適切な圧力となるのに先立って、前記適切な圧力よりも低い範囲の上ピークと、直前の上ピークよりも低い圧力の下ピークを繰り返すようにして、前記圧力調整手段を制御するようになっている、
加圧トレーニング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、2番目以降の前記上ピークのときに前記緊締具が前記所定の部位に与える締付け力が、直前の前記上ピークのときに前記緊締具が前記所定の部位に与える締付け力と同じかそれを超えるようにして、前記圧力調整手段を制御するようになっている、
請求項2記載の加圧トレーニング装置。

【請求項11】
前記制御手段は、前記下ピークのときに前記緊締具が前記所定の部位に与える締付け力が、前記緊締具を前記所定の部位に取付けた際における締付け力である自然締付け力と略一致するようにして、前記圧力調整手段を制御するようになっている、
請求項1?5のいずれかに記載の加圧トレーニング装置。」
(2)「【0001】
本発明は、筋肉の増強に用いるトレーニング装置に関し、より詳しくは、運動機能に異常のない者のみならず運動機能に異常を有する者でも効率よく筋力増強を図れるという特徴を有する加圧トレーニングを実行するのに適した加圧トレーニング装置に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加圧トレーニングの効果をより向上させ、加圧トレーニングをより発展させるための技術を提供することをその課題とするものである。」
(4)「【0017】
図1に示したように、この実施形態の加圧トレーニングシステムは、緊締具100と、加圧トレーニング装置200とを備えて構成される。
【0018】
この実施形態における緊締具100は、図2、図3、図4に示したように、構成されている。図2は緊締具100の一実施形態を示す斜視図であり、図3、及び図4は緊締具100の使用形態を示す斜視図である。
なお、この実施形態における緊締具100は、図1に示したように複数、より詳細には4つとされている。緊締具100が4つとなっているのは、加圧トレーニング方法を実施する者の両手、両足に対して加圧を行えるようにするためである。この実施形態における、緊締具100のうち、緊締具100Aは腕用(腕に巻きつけて腕を加圧するためのもの。)、緊締具100Bは脚用(脚に巻きつけて脚を加圧するためのもの)である。なお、緊締具100の数は必ずしも4つである必要はなく、一つ以上であれば幾つでも構わない。腕用の緊締具100Aと脚用の緊締具100Bは、必ずしも同数である必要はない。複数人に対して一度に加圧トレーニングを行う場合には、緊締具100は4つを超える場合がある。
【0019】
この実施形態における緊締具100は、四肢のいずれかの筋肉の所定の部位の外周を囲むものであり、筋肉の所定の部位を締付けることで、筋肉の所定の部位に所定の締付け力を与えるものであり、且つ後述のようにして、腕又は脚の所定の部位に対して与える締付け力を変化させられるようにされている。この緊締具100は、この実施形態では、基本的に、ベルト110、ガス袋120及び固定部材130からなる。
ベルト110は、緊締具100が巻き付けられる所定の部位(所定の部位は、一般的には、腕の付け根の近辺又は脚の付け根近辺のうち、外部から締付けを行うことで血流の阻害を起こすに適切な位置である。以下、これを「締付け部位」という。)に巻き付けられるようなものであれば、その詳細を問わない。
この実施形態におけるベルト110は、必ずしもそうである必要性はないが、伸縮性を備えた素材からなる。より詳細には、ネオプレンゴムにより構成されている。
この実施形態によるベルト110の長さは、加圧トレーニング方法を実施する者の緊締具100の締付け部位の外周の長さに応じて決定すればよい。ベルト110の長さは締付け部位の外周の長さより長ければよいが、この実施形態におけるベルト110の長さは、締付け部位の外周の長さの2倍以上となるようにされている。この実施形態による腕用の緊締具100Aのベルト110の長さは、加圧トレーニングを行う者の腕の締付け部位の外周の長さが26cmであることを考慮して決定してあり、具体的には90cmとされている。また、脚用の緊締具100Bのベルト110の長さは、加圧トレーニングを行う者の脚の締付け部位の外周の長さが45cmであることを考慮して決定してあり、具体的には145cmとされている。
この実施形態によるベルト110の幅は、緊締具100の締付け部位の別に応じて適宜決定すればよい。例えば、腕用の緊締具100Aのベルト110であれば幅3cm程度、脚用の緊締具100Bのベルト110であれば幅5cm程度とすればよい。
【0020】
ガス袋120は、ベルト110に取付けられている。この実施形態におけるガス袋120は、ベルト110の一方の面に取付けられている。もっとも、ガス袋120のベルト110への取付け方はこれには限られず、内部を中空に構成したベルト110の内部に、ガス袋120を設けるなどしてもよい。
ガス袋120は、また、かならずしもそうである必要はないが、その一端部がベルト110の一端部(図2では、ベルト110の下端部。)付近に一致するようにしてベルト110に取付けられている。ガス袋120は、気密性を有する素材で形成された気密な袋である。この実施形態におけるガス袋120は、例えばマンシェットに用いられるゴム袋と同様の伸縮性を備えたゴムからなる。尚、ガス袋120の素材はこれに限定されず、気密性を保てる素材を適宜選択すれば足りる。
ガス袋120の長さは、必ずしもそうする必要はないが、この実施形態では、締付け部位の外周の長さとほぼ同じくされている。この実施形態では、腕用の緊締具100Aのガス袋120の長さは、25cmであり、脚用の緊締具100Bのガス袋120の長さは44cmとされている。
また、ガス袋120の幅は、緊締具100の締付け部位の別に応じて適宜決定すればよい。この実施形態では、必ずしもそうする必要はないが、腕用の緊締具100Aにおけるガス袋120の幅を3cm程度、脚用の緊締具100Bのガス袋120の幅を5cm程度としてある。
なお、ガス袋120には、ガス袋120内部と連通する接続口121が設けられており、例えば、ゴムチューブなどの適当な管により構成される接続管300を介して、加圧トレーニング装置200と接続できるようになっている。後述するように、この接続口121を通して、ガス袋120の中に気体(この実施形態では空気)が送り込まれ、またはガス袋120の中の気体が外部へ抜かれることになる。
固定部材130は、締付け部位に巻き付けた状態で、その状態を保つようにベルト110を固定するものである。この実施形態における固定部材130は、ベルト110におけるガス袋120が設けられている面のベルト110の他端部(図1では、ベルト110の上端部。)に設けられた面ファスナーである。この固定部材130は、ガス袋120が設けられていない側のベルト110の全面のどこにでも自在に固定できるようになっている。
ベルト110を締付け部位に巻き付け、固定部材130にてベルト110を固定した状態でガス袋120へ空気が送り込まれると、緊締具100が筋肉を締付け、加圧力を与えるのである。逆に、その状態でガス袋120内の空気が抜かれれば、緊締具100が筋肉に与える加圧力が小さくなる。緊締具100を固定した当初の状態で緊締具100が締付け部位に与える圧力が、本発明にいう自然締付け力に相当する。
【0021】
加圧トレーニング装置200は、ガス袋120に気体を送り込めるとともに、ガス袋120から気体を抜くことのできるものであればよい。また、加圧トレーニング装置200は、ガス袋120に気体を送込み、或いは気体を抜くことについての自動的な制御を行う。ガス袋120に気体を送り込めるとともに、ガス袋120から気体を抜くことのできるものであり、また、上述の自動的な制御を行えるようになっているのであれば、加圧トレーニング装置200の構成はどのようなものであってもよい。
【0022】
一例となる加圧トレーニング装置200の構成を概略的に示したのが、図5である。図5に示したように、加圧トレーニング装置200は、4つのポンプ210と、制御装置220とを備えて構成されている。なお、この実施形態では、加圧トレーニング装置200はケースを備えておりその内部にポンプ210と制御装置220を内蔵するようになっている。ケースの外側には、また、入力装置が設けられているが、その図示は省略する。
4つのポンプ210は、4つの緊締具100とそれぞれ対応付けられている。この実施形態では、ポンプ210が、本発明における圧力調整手段に相当する。
ポンプ210は、その周囲にある気体(この実施形態では、空気)を取り込み、これを後述のポンプ接続口211を介して外部へ送る機能を備えている。ポンプ210は、また、弁212を備えており、弁212を開放することで、ポンプ210内部の気体を外部へ排出できるようになっている。4つのポンプ210はともに、ポンプ接続口211を備えており、これに接続された接続管300と、接続口121を介して、ガス袋120へと接続されている。ポンプ210が気体を送れば、ガス袋120に気体が送り込まれ、ポンプ210が弁212を開放すればガス袋120から気体を抜くことができる。なお、弁212は必ずしもポンプ210に設けられている必要は無く、ポンプ210からガス袋120に至る経路のいずれかに設けられていれば足りる。
ポンプ210には、また、図示を省略の圧力計が内蔵されており、それによりポンプ210内の気圧を測定できるようになっている。ポンプ210内の気圧は、当然にガス袋120内の気圧に等しい。
【0023】
制御装置220は、ポンプ210を制御するものである。制御装置220は、弁212を閉じた状態でポンプ210を駆動させて空気を緊締具100のガス袋120へ送り、或いはポンプ210が備える弁212を開放してガス袋120内の空気を抜くという制御を行う。つまり、制御装置220は、弁212の開閉を含めたポンプ210の制御を行うものとなっている。」
(5)「【0032】
この実施形態で、どのように、締付け部位に与える締付け力を変化させるかということを、図8?図11を用いて説明する。
この実施形態で説明する加圧トレーニング装置200は、トレーニングモードで、準備モードと通常モードの2種類のモードを連続して実行する。なお、この実施形態では、加圧トレーニングを実行する者の腕に対して与えるべき締付け力(適正圧)は150?160mmHg、脚の適正圧は250?260mmHgであるものとする。また、腕、脚ともに、自然締付け力は50mmHgであるものとする。
【0033】
まず、準備モードでは、例えば、図8、図9に示したような締付け圧が腕又は脚に与えられるように、制御データによってポンプ210が制御される。なお、腕と脚はこの実施形態では同時に加圧されることがないようになっている。これには限られないが、この実施形態では、準備モードでも通常モードでも、まず腕が、次いで脚が加圧されるようになっている。
準備モードでは、緊締具100が締付け部位に与える締付け力が、適正圧よりも低い範囲の上ピークと、直前の上ピークよりも低い圧力の下ピークを繰り返すように締付け力が変化する。
図8は、腕についての準備モードにおいて緊締具100が締付け部位に与える締付け力を示している。
図8(A)では、2分30秒間隔で、上ピークと下ピークが繰り返される。加圧が行われている時間と、加圧が行われていない時間は、この実施形態では等しくされている。また、この例における準備モードは、35分実施される。上ピークと下ピークが繰り返される回数は、必ずしもこの限りではないが、この例では7回である。上ピークと下ピークはともに、基本的に、同じ締付け力を2回ずつ繰り返すようになっている。ただし、5回目の上ピークだけは、同じ締付け力を繰り返さないようになっている。このように、上ピークと、下ピークは、必ずしも規則的に繰り返される必要はない。この例では、上ピークは直前の上ピークと同じかそれよりも大きくなるようにされ、下ピークも同様とされている。下ピークは直前の上ピークよりも37.5mmHgだけ締付け力が小さくなるようにされている。ただし、下ピークは、直前の上ピークよりも30mmHg以上小さければよい。なお、締付け力の変化には、実際には数秒かかるため、締付け力が変化する際のグラフは垂直とはならないが、図8(A)では、簡単のためその部分のグラフをあえて垂直に記している。なお、以後も同様にグラフを記すこととする。
図8(B)では、2分30秒程度の上ピークと、1分15秒程度の下ピークを繰り返す例である。このように、加圧が行われている時間と、加圧が行われていない時間は、必ずしも等しい必要はない。この例における準備モードは、35分弱実施される。上ピークと下ピークが繰り返される回数は、この例では9回である。上ピークは直前の上ピークからの上がり幅が一定となるようにして徐々に上昇していく。この例では、下ピークは一定である。この例では、下ピークは、自然締付け力の50mmHgを保っている。この例では、下ピークの時間帯の少なくとも始めの時間帯では、弁212が完全に開放される。
図9は、脚についての準備モードにおいて緊締具100が締付け部位に与える締付け力を示している。
図9(A)では、2分30秒間隔で、上ピークと下ピークが繰り返される。加圧が行われている時間と、加圧が行われていない時間は、この実施形態では等しい。この例における準備モードは、35分実施される。上ピークと下ピークが繰り返される回数は、この例では7回である。上ピークと下ピークはともに、基本的に、同じ締付け力を2回ずつ繰り返すようになっている。最後の上ピークは、同じ締付け力を繰り返さないようになっている。この例では、上ピークは直前の上ピークと同じかそれよりも大きくなるようにされている。いずれの下ピークも自然締付け力に等しい。
図9(B)は、2分30秒程度の上ピークと、1分15秒程度の下ピークを繰り返す例である。この例における準備モードは、35分弱実施される。上ピークと下ピークが繰り返される回数は、この例では9回である。上ピークは直前の上ピークからの上がり幅が一定となるようにして徐々に上昇していく。この例では、下ピークは一定である。この例では、下ピークは、自然締付け力の50mmHgを保っている。」
(6)上記(5)【0033】及び図8(B)より、緊締具が締付け部位に与える締付け力が、自然締付け力の50mmHgから始まり、その後、加圧が行われて、上ピークとなり、その後、自然締付け力の50mmHgである加圧が行われていない下ピークに戻り、この上ピークと下ピークとが繰り返されるものであって、締め付け力の変化は数秒かかり、上ピークは直前の上ピークからの上がり幅が一定となるようにして徐々に上昇していくよう、圧力調整手段であるポンプが制御されていることが看取できる。

上記(1)乃至(6)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「四肢のいずれかの所定の部位に巻付けることのできる長さとされたベルト、前記ベルトに設けられた気密とされたガス袋、前記ベルトに設けられた、四肢のいずれかの前記所定の部位に巻付けた状態で当該所定の部位に前記ベルトを固定する固定手段、を備えており、前記ガス袋に気体を充填することにより四肢の所定の部位に、当該所定の部位よりも下流側における血流を阻害するような所定の締付け力を与えられるようにされた緊締具、
と組合わせて用いられるものであり、前記締付け力の制御を行うようにされた加圧トレーニング装置であって、
所定の管を介して前記ガス袋に気体を送り込めるとともに、前記ガス袋から気体を抜くことができるようにされた圧力調整手段と、
前記締付け力を変化させるために、前記圧力調整手段を制御する制御手段と、を備えており、
前記制御手段は、前記緊締具が前記所定の部位に与える前記締付け力が、自然締付け力の50mmHgから始まり、その後、加圧が行われて、上ピークとなり、その後、自然締付け力の50mmHgである加圧が行われていない下ピークに戻り、この上ピークと下ピークとが繰り返されるものであって、締め付け力の変化は数秒かかり、上ピークは直前の上ピークからの上がり幅が一定となるようにして徐々に上昇していくよう、前記圧力調整手段を制御するようになっている、
加圧トレーニング装置。」

2.引用文献2
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に高気圧トレーニング環境やリラクゼーション環境を実現するようにしたカプセル装置に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1?3に開示されている装置は、いずれも、単にトレーニングを目的として内部の気圧を加減制御するものであり、成長ホルモンの分泌を促進させるなどの健康を増進させるための工夫は何等なされていない。
【0008】
従って本発明の目的は、内部に高気圧トレーニング環境やリラクゼーション環境を実現すると共に、成長ホルモンの分泌を促進させ、健康を増進させることのできるカプセル装置を提供することにある。」
(3)「【0049】
EMS装置100は、その複数の(この変更態様では4つの)電極100aを皮膚表面に貼り付けて、微弱な電流を流すことにより、その刺激によって筋肉の収縮運動を促し、トレーニング及びエクササイズ効果を得る装置である。本実施形態におけるEMS装置100は、4つの電極100aを介して、2500Hzの中周波による干渉波電流を流すことが可能であり、さらに、この2500Hzの中周波電流を断続的に流して効果的に筋肉を刺激できるロシアンカレントをも流すことが可能である。本実施形態におけるEMS装置100によって、実際に被験者(23歳男性、31歳男性)の腹部に2500Hzの中周波による干渉波電流を約20分間印加すると、被験者の腰から上の体表面のサーモグラフィ画像は、体温が大幅に上昇していること示した。また、本実施形態におけるEMS装置100によって、実際に被験者(27歳男性)の腹部に2500Hzの中周波による干渉波電流を約20分間印加した場合と、EMS装置未使用の場合とにおいて腹部CTを撮像し、そのCT画像から腹直筋及び大腰筋の断面積を求めると、表1のごとくなった。」

上記(1)乃至(3)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「その複数の電極を皮膚表面に貼り付けて、微弱な電流を流すことにより、その刺激によって筋肉の収縮運動を促し、トレーニング及びエクササイズ効果を得る装置である、EMS装置。」


第5 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
(1)後者の「ベルト」は、四肢のいずれかの前記所定の部位に巻付けられるものであって、四肢の所定の部位に、当該所定の部位よりも下流側における血流を阻害するような所定の締付け力を与えられるようにされた緊締具を構成するものであるから、後者の「四肢のいずれかの所定の部位に巻付けることのできる長さとされたベルト」は、前者の「加圧力を付与するために使用者の四肢の少なくとも何れか一つに巻き付けられるベルト」に相当する。
(2)後者の「加圧トレーニング装置」は、「所定の部位よりも下流側における血流を阻害するような所定の締付け力を与えられるようにされた緊締具」と組み合わせて用いられ、「締付け力を変化させるために、前記圧力調整手段を制御する制御手段」を備えているから、後者の「加圧トレーニング装置」と、前者の「血流制限電気刺激システム」とは、「ベルトにより付与される加圧力を制御して使用者の筋肉の血流を制限する」との作用を奏する点で共通する。
そうすると、後者の「加圧トレーニング装置」と、前者の「血流制限電気刺激システム」とは、「血流制限システム」との概念で共通する。
(3)後者の「締付け力」は、四肢の所定の部位よりも下流側における血流を阻害するものであるから、後者の「締付け力」により、「加圧が行われて、上ピークとな」ることは、前者の「所定の加圧力を付与する加圧動作」に相当する。
また、後者の「締付け力」は、自然締付け力の50mmHgから始まり、その後、加圧が行われて、上ピークとなり、その後、自然締付け力の50mmHgである加圧が行われていない下ピークに戻るものであって、自然締付け力の50mmHgから始まり、自然締付け力の50mmHgに戻ることは、自然締付け力の50mmHgから上ピークまでに行われた加圧による締付け力が完全に除去されるといえ、また、締付け力の変化には数秒かかるものであるから、後者の「締付け力」の「自然締付け力の50mmHgである加圧が行われていない下ピークに戻る」ことは、前者の「加圧動作により付与された加圧力を所定の時間をかけて完全に除去する除圧動作」に相当する。
そうすると、後者の制御手段により「緊締具が所定の部位に与える締付け力」が、「上ピークと下ピークとが繰り返され」るよう制御することは、前者の「加圧動作」と、「除圧動作と、を繰り返すようにベルトにより付与される加圧力」の制御を行うことに相当する。
(4)後者の「上ピークは直前の上ピークからの上がり幅が一定となるようにして徐々に上昇していく」ことと、前者の「各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く」とは、「各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く」との概念で共通する。
(5)以上(1)乃至(4)を総合すると、後者の「制御手段」と、前者の「制御装置」とは、「所定の加圧力を付与する加圧動作と、前記加圧動作により付与された加圧力を所定の時間をかけて完全に除去する除圧動作と、を交互に繰り返すように前記ベルトにより付与される加圧力の制御を行うものであり、複数回の加圧動作を実現させる際に、各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く設定するものである」点で共通するといえることとなる。

したがって、両者は、
「加圧力を付与するために使用者の四肢の少なくとも何れか一つに巻き付けられるベルトと、前記ベルトにより付与される加圧力を制御して使用者の筋肉の血流を制限する、制御装置と、を備える血流制限システムであって、
前記制御装置は、所定の加圧力を付与する加圧動作と、前記加圧動作により付与された加圧力を所定の時間をかけて完全に除去する除圧動作と、を交互に繰り返すように前記ベルトにより付与される加圧力の制御を行うものであり、複数回の加圧動作を実現させる際に、各加圧動作における加圧力を直前の加圧動作における加圧力よりも高く設定するものである、血流制限システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「電気刺激信号を発生させる電気刺激発生装置と、使用者の特定部位に装着されるとともに前記電気刺激発生装置で発生させた電気刺激信号の供給を受ける電極パッド」と、ベルトにより付与される加圧力を制御して使用者の筋肉の血流を制限すると「ともに、前記電気刺激発生装置で発生させる電気刺激信号を制御して使用者の筋肉を電気的に刺激する制御装置」と、を備える血流制限「電気刺激」システムであるのに対し、引用発明1は、電気刺激発生装置と電極パッドと、これらを制御する制御装置を備えていない加圧トレーニング装置である点。


第6 判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明2の「電極」は、本願発明の「電極パッド」に相当する。
引用発明2の「EMS装置」は、微弱な電流を流すことにより、その刺激によって筋肉の収縮運動を促し、トレーニング及びエクササイズ効果を得る装置であって、電気刺激信号を発生させ、発生させた電気刺激信号を制御して使用者の筋肉を電気的に刺激するものといえるから、引用発明2の「EMS装置」は、上記相違点2に係る本願発明の「電気刺激信号を発生させる電気刺激発生装置」と、「前記電気刺激発生装置で発生させる電気刺激信号を制御して使用者の筋肉を電気的に刺激する制御装置」と、を備える「電気刺激システム」に相当する。
そして、引用発明1と引用発明2とは、トレーニング装置という技術分野に属する点で共通するとともに、引用発明1は、トレーニング効果をより向上させることを課題としており、引用発明2においては、トレーニング環境を実現するとともに、健康を増進させることを課題とするものであるから、トレーニング効果を向上させるとの課題を内在しているものといえる。
そうすると、引用発明1に、引用発明2を適用することは、当業者が容易になし得ることである。
また、引用発明1の加圧トレーニング装置に、引用発明2のEMS装置を適用する際して、両者はトレーニング効果の向上を課題としているものであるから、個々のトレーニング効果よりトレーニング効果を向上させるべく、ベルトにより付与される加圧力を制御して使用者の筋肉の血流を制限するとともに、電気刺激発生装置で発生させる電気刺激信号を制御して使用者の筋肉を電気的に刺激するようにして、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-20 
結審通知日 2018-11-21 
審決日 2018-12-12 
出願番号 特願2013-191105(P2013-191105)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 血流制限電気刺激システム及びその制御方法並びに医療用装置  
代理人 佐藤 宏樹  
代理人 佐藤 睦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

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