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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10G |
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管理番号 | 1348409 |
審判番号 | 不服2017-2341 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-17 |
確定日 | 2019-01-31 |
事件の表示 | 特願2014-523971「スルホン分解と統合される酸化的脱硫の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/019513、平成26年10月30日国内公表、特表2014-528974〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2012年7月25日(パリ条約による優先権主張2011年7月31日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、出願後の手続きの経緯の概略は、以下のとおりである。 平成27年 4月28日 手続補正書提出 平成28年 6月20日付け 拒絶理由通知 平成28年 9月27日 意見書及び手続補正書提出 平成28年10月14日付け 拒絶査定 平成29年 2月17日 審判請求書提出 平成29年 2月27日付け 手続補正指令 平成29年 3月29日 手続補正書及び上申書提出 平成29年 4月 4日 手続補正書提出 平成30年 1月16日付け 当審における拒絶理由通知 平成30年 7月13日 意見書及び手続補正書提出 第2 本願発明 本願の請求項1?29に係る発明は、平成30年7月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物より該酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法であって、 a.炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液の存在下で、金属成分を有する有効量の固体塩基触媒組成物と接触させ、 ここで、苛性溶液は、固体塩基触媒組成物の金属成分のより活性な種への変換を促進し、固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含み、 接触は、一部の酸化硫黄化合物のSOx化合物への接触分解を促進するのに効果的な条件下で起こり; b.SOx化合物を炭化水素混合物より除去し;および c.酸化硫黄化合物の濃度の減少した炭化水素生成物を回収する ことを含む、方法。」 第3 当審における拒絶理由の概要 当審において、平成30年1月16日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)のうち、本願発明に対する拒絶理由は、以下のとおりである。 「[理由2] (新規性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [理由3] (進歩性)本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・引用文献等一覧 引用文献1:特開2008-95095号公報 引用文献2:特開昭49-52803号公報」 第4 当審の判断 1 引用文献の記載 (1) 引用文献1について 引用文献1には、「脱窒、脱硫、含酸素化合物の製造のための炭化水素基質の選択酸化方法」(発明の名称)について、次の記載がある。(当審注:下線は当審において付記したものである。以下同じ。) 「【特許請求の範囲】 ・・・(中略)・・・ 【請求項2】 (a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項14】 前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項19】 前記硫黄含有化合物は、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT、2,5-DMDBT)、4-アルキルジベンゾチオフェン(4-MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物の中から選択され、前記硫黄含有前駆体は、前記硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項23】 前記(b)脱硫および脱窒段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)よりなる群から選ばれた一つ以上の方法によって行われることを特徴とする、請求項2に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。 【請求項24】 前記濾過分離法は、前記(a)選択酸化段階で生成されて極性溶媒層に沈殿した前記硫黄または窒素含有前駆体を濾過装置または遠心分離機で分離することにより行われ、 前記選択吸着法は、活性炭繊維(active carbon fiber)、炭素ナノ管(carbonnano tube)、炭素分子篩(carbon molecular sieve);M/活性炭繊維、M/ナノ炭素管、M/炭素分子篩(M=Pd、Zn、Cu、Ni、Fe、Mn、Ti、Mg、Sr、Ba、Na、K);メソ多孔性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト;金属処理で活性化されたメソ多孔性アルミナ、金属処理で活性化されたシリカゲル、金属処理で活性化されたゼオライト;M/Al_(2)O_(3)、SiO_(2)、MCM-41(M=Y、La、Ni、Mo、Cr、W、V、Co、Cu)、ペロブスカイト(perovskite)、Y^(3+)添加によって安定させた金属酸化物;ZrO_(2)、CeO_(2)-ZrO_(2)、およびPrO_(2)-ZrO_(2)、MgO-MgAl_(2)O_(4)、MgAl_(2)O_(4)・xMgO、MgAl_(2)O_(4)・yAl_(2)O_(3)、Cs/ZSM-5、Ba/MCM-41、Zn-Al二重層状ヒドロキシド(DLH)、ヒドロタルサイト、AlGaPON、ZrGAPON、Mg_(0.819)Ga_(0.181)(OH)_(2)(CO_(3))の中から選ばれた一つ以上の吸着剤を用いて行われ、 前記溶媒抽出法は、N,N’ジメチルホルムアミド(DMF)、CH_(3)CN、DMF、DMSO、MeOH、t-BuOH、メチルエチルケトン(MEK)、CH_(3)COOH、ジメチルピロリドン、ジオキサン、スルホラン(sulfolane)、アルカリ金属、および炭酸ソーダ(NaHCO_(3)、Na_(2)CO_(3))水溶液の中から選ばれた溶媒を用いて行われ、 前記触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われ、 前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項23に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。 ・・・(中略)・・・ 【請求項26】 前記脱硫および脱窒はそれぞれ10ppm未満および5ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われ、 前記含酸素化合物は酸素を基準として2.2?2.7重量%以上生成されることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の炭化水素基質の選択酸化方法。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、炭化水素基質の選択酸化方法に関するものであり、より具体的には、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、揮発油または軽油などの輸送燃料油を含む炭化水素基質内でセタン価またはオクタン価増進剤として作用する有用な含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生産するうえ、脱窒と脱硫を同時に直接行う或いは少なくとも除去が容易な硫黄または窒素含有前駆体に変換させることが可能な、炭化水素基質の選択酸化方法に関する。」 「【背景技術】 【0002】 石油などの炭化水素基質には、例えばチオール、スルフィド、ジスルフィドのように、一般に不安定であり且つ熱処理方法または従来の水素処理工程によって容易に除去される硫黄元素および脂肪族有機硫黄などの硫黄化合物が存在する。 【0003】 このような硫黄化合物を除去するために通常用いられている従来の技術は、水素化脱硫工程または水素添加脱硫工程(hydrodesulfurization、以下「HDS」という)であるが、このようなHDS工程の技術は、全世界の精油会社間の熾烈な競争または学文的研究によって著しく発展されており、石油精油会社にとっては、ヨーロッパ、米国および日本で施行する厳しい大気汚染防止法規に符合するように硫黄を除去するために最も重要な工程になっている。 ・・・(中略)・・・ 【0006】 ところが、石油に存在する硫黄成分の化合物には、除去の容易な化合物だけでなく、除去が非常に困難または不可能な化合物、例えば一連のチオフェン系化合物およびそれらの縮合チオフェン誘導体なども含まれる。 【0007】 具体的に、縮合チオフェン誘導体のうち、ベンゾチオフェンやジベンゾチオフェン、4-メチルジベンゾチオフェン、および特に4,6-ジメチルベンゾチオフェンといったより縮合した硫黄化合物などが、ガソリン、ディーゼル燃料(diesel fuel) 、HDS中間留分(middle distillates)、重留分(heavier fractions)、および石油原油(petroleum crudes)の残渣物(residual bottoms)に存在する。このようなジベンゾチオフェンまたはそのアルキル誘導体はいわゆる分離し難い(refractory)硫黄化合物と呼ばれている。これは、高温(650℃)でも熱的に安定し、水素化脱硫工程または水素添加脱硫工程などの通常の精製工程によっても非常に除去され難いためである。 【0008】 このような理由により、硫黄含量をほぼゼロに低める目標は、現在最も発展した形態のHDS触媒技術によっても達成することが殆ど不可能である。これは、現在のHDS工程に含まれた根本的な化学原理では前述したように本質的に克服することが難しい問題があるためである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 かかる従来のHDS技術の問題点を克服するために、本発明は、従来の除去し難い(refractory)硫黄化合物を革新的に除去してほぼ硫黄のない超深度脱硫を達成し、これと同時に脱窒までも除去する効果を示す選択酸化方法を提示している。ひいては、オクタン価またはセタン価の損失を誘発する従来のHDS技術とは異なり、本発明に係る選択酸化方法は、アリリックまたはベンジリック炭化水素基質を選択的に酸化させてオクタン価またはセタン価を却って増進させる相乗的効果を同時に示すということに大きい意義がある。」 「【0013】 また、本発明の他の観点によれば、(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、(b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。」 「【0018】 このように選択酸化過程で産出されたスルホキシド/スルホンおよびN-オキサイド/インディゴ/オキシムなどは、二相(極性/非極性の溶媒)の酸化反応器内で極性溶媒相に分離/除去し、或いは第2段階で単純な熱分解(水素供与性溶媒あり、触媒なし)、従来の触媒および新塩基触媒を用いた接触脱硫/脱窒を行い、或いは従来の公知の簡単な分離方法(溶媒選択抽出、選択吸着剤、分留、酸化または非酸化二相分離法)を用いて脱硫と脱窒を行うことにより、硫黄または窒素成分が超深度(ultra-low)で存在するまたは全く存在しない(S-freeおよびN-free)留分を製造し、兼ねて有用な含酸素化合物(oxygenates)を合成して、今後の酸素含量に関する環境規制の強化に対応することが可能な石油留分清浄工程である。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 【0020】 本発明のある観点によれば、MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を選択酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる段階を含む、炭化水素基質の選択酸化方法を提供する。 【0021】 このような選択酸化段階によって揮発油オクタン価または軽油のセタン価を増進させる作用をする含酸素化合物を多量または所望の量に調節して生成させるうえ、除去が相対的に容易な硫黄または窒素含有前駆体への転換が起こるので、前記選択酸化工程の後に脱硫と脱窒のための後処理段階を順次行うことにより、超深度脱硫および脱窒を容易に達成することもできる。 【0022】 硫黄含有化合物が効果的に除去されるためには、酸化を妨害する立体影響を迂回するために脱アルキル化および/または異性化反応、すなわち4-および6-位置から他の位置へメチル基を移動させる反応が先行されなければならない。ところが、4,6-ジメチルジベンゾチアフェンのように従来のHDS技術において問題となる硫黄化合物は、構造的に硫黄原子を取り囲む4-および6-位置の2つのメチル基によって大きい立体影響を受けているから、脱硫が最も難しい化合物であるしかなく、従来のHDS技術の根本的な問題がこのような根本的な化学原理に起因するものと言える。要するに、従来のHDS技術によっては最も発展した形態のHDS触媒を使用しても硫黄含有量をほぼゼロに低めることが可能な実用的な工程を得ることができないという点から、従来のHDS技術は経済的にも技術的にも致命的な限界を持っているといえる。 【0023】 これに対し、HDS工程において4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの構造による立体影響とは異なり、基質分子の4-および6-位置にある2つのメチル基の電子提供機能は、下記表2に示すように、硫黄原子に電子密度を増加させる。よって、硫黄原子は親電子性攻撃、例えば酸化反応を受ける可能性が一層さらに多くなる。 【0024】 【表2】 【0025】 従って、酸化し難い硫黄化合物、DBTおよびそのアルキル誘導体は、選択的なスルホキシデーション工程に対して伝統的なHDS反応で観察されるのと正確に反対となる反応性傾向を示す。すなわち、4,6-ジメチルジベンゾチオフェンのように高温(460℃)でも安定し、従来のHDS技術によっては過酷条件ですら除去が最も難しかった硫黄化合物は、酸化性脱硫(oxidative desulfurization、以下「ODS」という)工程では脱硫が最も容易な基質になり、これを下記に図式的に示した。 【0026】 【化1】 【0027】 これをさらに具体的に考察すると、ビチオフェン系硫黄化合物系の場合は、硫黄化合物の電子密度がジフェニルスルフィド<チオフェノール<メチルフェニルスルフィドの順で増加し、結果として選択的な酸化反応のような親電子性攻撃は同一の傾向で進む。遷移金属イオンを含む類似の均一触媒システムにおいて一連のチオフェン系誘導体、特に酸化し難いジベンゾチオフェン(DBT)、4-アルキルジベンゾチオフェン(4-MDBT)、および4,6-ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT)の選択的酸化にも下記の如く同一の化学原理が適用できる。 【0028】 また、酸素原子とは異なり、S原子は一般にその酸化状態を容易に拡張していろいろの酸化物を生成する。例えば、DBT誘導体は、下記反応式1に示すように、まず部分的に酸化してスルホキシドに転換された後、連続してスルホンに転換される。このような酸化程度によって沸点、分子極性、溶媒に対する溶解度などの物理、化学的性質が大きく異なるが、このような点を考慮し、簡単な物理的処理方法、分留、熱分解、溶媒選択抽出、吸着などの方法を用いて、酸化した生成物を容易に分離・除去することができる。一方、塩基などの触媒を用いて化学的分解を起して脱硫を行うことができる。これを下記に図式的に示す。 【0029】 【化2】 【0030】 このように転換された硫黄または窒素含有前駆体は、本発明で提示したいろいろの方法を順次行わせることにより、容易に脱硫または脱窒させることができる。よって、脱硫、脱窒、含酸素化合物の生成によるセタン価またはオクタン価の向上という目的または効果を一挙に達成することができるという点に本発明の意義がある。 【0031】 すなわち、本発明の選択酸化工程は、高い水素を多量使用しなければならないという従来のHDS工程の問題点を解決するために、非水素(non-hydrogen)工程であって、酸化的脱硫(oxidative desulfurization、ODS)工程の性格を帯びているが、親環境規制によって揮発油に2.0?2.7%の酸素含量が既に規定されており、軽油の酸素含量規制も近いうちに施行される緊迫な現時点を勘案するとき、炭化水素の無差別酸化の概念を代替して、却って制限された酸化を選択的に調節しながら揮発油のオクタン価と軽油のセタン価を増進させることが可能な含酸素化合物を生成させると同時に、超深度脱硫および脱窒を共に併行することができるという点に、本発明の最も大きい意義があると言える。」 「【0044】 本発明は、硫黄または窒素を除去すると同時に、セタン価またはオクタン価を向上させることが可能な含酸素化合物も共に生成させることを目的としているので、このような目的に鑑みたとき、内部に含まれている硫黄または窒素を除去する必要性、および含酸素化合物を生成する必要性がある炭化水素基質であれば、本発明に適用することができる。このような炭化水素基質の例には、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛を含むが、これに限定されない。 【0045】 このような炭化水素基質の中でも、(1)水添工程を経た脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素化合物を含むように改質された揮発油と、(2)水添工程を経た軽サイクル油、重サイクル油、重留分およびこれらの混合物、(3)水添工程によって脱硫、脱窒処理をし、選択酸化によって含酸素物を含むように改質されたディーゼルなどが、本発明を適用することが可能な好ましい炭化水素基質の例である。 【0046】 その中でも、特に改質された揮発油または酸素処理されたディーゼルの中から選択された輸送油に適用することもできる。この際、改質された揮発油は、水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理を行い、ベンジリックまたはアリリック炭化水素基質の調整された選択酸化によって2.0?2.7重量%の酸素(酸素含量環境規制)に該当する含酸素硫黄化合物を含むことができるように改質されたものである。前記酸素処理されたディーゼルは、水添工程によって超深度脱硫、脱窒処理をし、前記数値以上の酸素に該当する含酸素化合物を含むことができるように改質されたものに対しても本発明の選択酸化反応を適用することができる。」 「【0049】 本発明において、「硫黄含有化合物」の例には、ジアルキルジベンゾチオフェン(4,6-DMDBT、2,5-DMDBT)、4-アルキルジベンゾチオフェン(4-MDBT)、ジベンゾチオフェン(DBT)、アルキルベンゾチオフェン、ベンゾチオフェン(BT)、ジアルキルチオフェン、チオフェン、ジフェニルスルフィド、チオフェノール、メチルフェニルスルフィド、アルキルジスルフィド、およびこれらの混合物が含まれるが、これに限定されない。また、本発明において、「硫黄含有前駆体」とは、このような硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物を意味する。」 「【0055】 本発明において、脱硫および脱窒段階は、濾過分離法、分液法(fractionation)、選択吸着法(selective adsorption)、溶媒抽出法(solvent extraction)、触媒除去法(catalytic destruction)、選択的酸化法(selective oxidation)、および熱分解法(pyrolysis)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の方法によって行われ得る。」 「【0059】 また、触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物(eutectic mixture)、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる。」 「【0062】 本発明において、脱硫および脱窒は、それぞれ20ppm未満および10ppm未満で硫黄含有化合物および窒素含有化合物を除去するように行われることが実用的な面で好ましく、さらに好ましくは10ppm未満および5ppm未満、最も好ましくは5ppm未満および2.5ppm未満、究極的には0ppmにそれぞれ脱硫および脱窒させることが有利である。」 「【0105】 [実施例7:LCOの選択酸化] (1)「MC型触媒」および「O_(2)/CO_(2)酸化剤」を用いたLCOの選択酸化 前記と同一の条件で反応を行わせるが、但し、触媒としてMC型均一触媒を用い、酸化剤としてはO_(2)(30%)/CO_(2)(70%)酸化気体を用いて、酸化条件の下で1Lのオートクレーブ(15気圧)で選択酸化反応を行った。 (2)選択酸化によるS-またはN-成分前駆体および含酸素化合物の生成確認 前記実験で得られた酸化生成物をIR分析した結果、ほぼ100%に近い割合でS成分がスルホンに転換され、N-成分も除去が容易な前駆体に転換されたうえ、相当量の「カルボニル」生成物が生成されたことを確認した。 ・・・(中略)・・・ 【0107】 (4)塩基触媒存在の下における熱分解後処理 前記で得られた酸化物の別の一部分量(40mL)に対して、ヒドロタルサイト、Na/Al_(2)O_(3)、Na/K/活性炭素、Cs/ZSM-5、Ba/MCM-41などの塩基触媒5gを投入してから、450℃で1時間熱処理ユニットを用いて熱処理した。 その結果、脱硫率(>98%)および脱窒率(?100%)を達成し、これと同時に触媒として用いたMoを含み殆ど全ての金属が非常に高い水準(>95%)で除去される優れた効果を確認した。」 「【0110】 ・・・(中略)・・・ [実施例8:石油残渣油を水添処理したLCOと配合して選択酸化] (1)MC型触媒を用いた残渣油に対する選択酸化 後述するように、石油残渣油を水添処理したLCOと配合して基質試料とし、MC型触媒を用いて選択酸化を行ってから、酸化した生成物に対して塩基触媒で脱硫を行った。 【0111】 具体的に考察すると、まず、世界で産出される4種の原油のうち480℃以上に該当する残渣油を水添処理したLCO(0.07%S)と25:75の重量比で配合し、Co/Mn/HBr触媒の下でO_(2)/CO_(2)(35%/65%)酸化ガスを用いて標準酸化条件の下で選択酸化を行った。その結果、4種の残渣油(480℃以上)に含まれている硫黄成分は殆ど選択的に酸化して当該スルホンに転換され(85?95%選択度)、カルボニル基は10?30%程度観察された。このようなカルボニル基の殆ど全てベンジリックおよびアリリック炭化水素の酸化に起因するものと推定することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0115】 (3)熱分解後処理による脱硫(塩基触媒と選択的に水素供与性溶媒が存在する条件) かかる問題点を防止するために、選択酸化を経た残渣油を水素供与性溶媒および/または塩基触媒の共存の下で熱分解を行ったところ、次のような改善された脱硫結果を観察することができた。 【0116】 別のアラビアン原油を新しい基質留分として使用し、これをIBP?288℃、288?343℃、および343℃以上の残渣油に分留し、前記標準酸化条件の下でそれぞれ選択酸化を行った。酸化した各留分はKOHおよびNa_(2)O/Al_(2)O_(3)で処理し、次の結果を得た。 【0117】 【表13】 【0118】 【化10】 【0119】 また、最近知られた強い塩基物質を用いて脱硫過程を行った結果、窒素成分は全く検出することができず、脱硫はさらに改善された結果(98?100%)を確認できた。 【0120】 【表14】 【0121】 前述したように、KOHおよびNa_(2)O/Al_(2)O_(3)などの塩基で処理すると(場合によっては水素供与性溶媒が共存する条件の下で)、単純な熱分解処理に比べて一層向上した脱硫結果を得た。」 (2) 引用文献2について 引用文献2には、「炭化水素物質の脱硫法」(発明の名称)について、次の記載がある。 「2.特許請求の範囲 ・・・(中略)・・・ 〔2〕減少されたイオウ含有量の炭化水素物質を製造するに当り、 (1) 炭化水素物質中のイオウの少なくとも一部分を有機パーオキサイド、有機ハイドロパーオキサイド、有機過酸またはそれらの混合物から選択される酸化剤で、モリブデン金属の少なくとも一部分を溶解するために分子当り1乃至4個の炭素原子を有する少なくとも1種の飽和アルコールの存在下にモリブデン金属を少なくとも1種のパーオキシ化合物と相互反応させることから成る方法によつて調製されるモリブデン含有触媒の存在下に優先的に酸化すること、およびその触媒をそのイオウの選択的酸化を促進させるに十分な量で存在させること; (2) 上記の酸化されたイオウ含有炭化水素物質をそのイオウの少なくとも一部分をその炭化水素物質から除去するように処理すること;および (3) 減少されたイオウ含有量の炭化水素物質を回収すること; を特徴とする減少されたイオウ含有量の炭化水素物質の製造法。」 「その酸化されたイオウ含有炭化水素物質はイオウ減少段階、たとえば塩基処理段階、熱処理段階、溶剤精製段階、ハイドロ-脱硫段階および類似の段階によつてその炭化水素物質からイオウを除去するようにさらに加工される。そののちに、減少されたイオウ含有量を有する炭化水素物質が回収される。」(第3頁左上欄下から第2行?右上欄第5行) 2 引用発明の認定、引用文献に記載された事項 (1) 引用文献1に記載された発明、及び記載された事項 ア 引用文献1の上記【請求項2】によれば、「(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であることを特徴とする、炭化水素基質の選択酸化方法」が記載されている。 ここで、引用文献1の上記【請求項23】には、上記【請求項2】の(b)の「脱硫および脱窒を行う段階」について、「前記(b)脱硫および脱窒段階は、・・・(中略)・・・触媒除去法(catalytic destruction)、・・・(中略)・・・熱分解法(pyrolysis)・・・(中略)・・・の方法によって行われること」と記載されており、また、引用文献1の上記【請求項24】には、上記【請求項23】の「触媒除去法」、及び「熱分解法」について、それぞれ、「前記触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われ」、及び「前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われ」と記載されているから、引用文献1には、「(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であり、 前記(b)脱硫を行う段階は、触媒除去法(catalytic destruction)の方法によって行われ、 前記触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる、 炭化水素基質の選択酸化方法」、及び「(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄または窒素含有化合物を、脱硫および脱窒が容易な硫黄または窒素含有前駆体に転換させると同時に、ベンジリックまたはアリリック化合物を含酸素化合物に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄または窒素含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫および脱窒を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であり、 前記(b)脱硫を行う段階は、熱分解法(pyrolysis)の方法によって行われ、 前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われる、 炭化水素基質の選択酸化方法」の発明が記載されているといえる。 そして、上記「炭化水素基質」、及び「硫黄含有前駆体」については、引用文献1の【請求項14】、及び【請求項19】に記載のとおり、それぞれ、「前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質であること」、及び「硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であること」を意図しているといえるので、引用文献1には、 「(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄含有化合物を、脱硫が容易な硫黄含有前駆体に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であり、 前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質であり、 前記硫黄含有前駆体は、硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であり、 前記(b)脱硫を行う段階は、触媒除去法(catalytic destruction)の方法によって行われ、 前記触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる、 炭化水素基質の選択酸化方法」の発明(以下、「引用発明1」という。)、及び 「(a)MC型均一触媒および酸化剤の存在の下で炭化水素基質を酸化処理することにより、硫黄含有化合物を、脱硫が容易な硫黄含有前駆体に転換させる選択酸化段階と、 (b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階とを含む、炭化水素基質の選択酸化方法であって、 前記MC型均一触媒はCo/HBr、Mn/HBr、Co/Mn/HBr、およびCo/Mn/M’/HBrの中から選択され、前記M’はK、Rb、Mo、Fe、Zr、Hf、Mn、Ti、Ni、Ru、Cs、Nb、Mo、W、Ta、Sb、Re、Rh、Pr、Sm、およびCeの中から選択され、 前記酸化剤はO_(2)/CO_(2)混合気体であり、 前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質であり、 前記硫黄含有前駆体は、硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であり、 前記(b)脱硫を行う段階は、熱分解法(pyrolysis)の方法によって行われ、 前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われる、 炭化水素基質の選択酸化方法」の発明(以下、「引用発明2」という。) が、それぞれ記載されていると認められる。 イ 引用文献1の上記【0002】?【0003】、及び【0011】によれば、上記引用発明1、及び引用発明2は、炭化水素基質に対して脱硫することによって硫黄化合物を除去するためのものであり、上記脱硫は、同じく上記【0028】?【0030】の[反応式1]、及び【0118】の[反応式8]によれば、KOHや、Na/Al_(2)O_(3)などの塩基触媒によって行われることがわかる。ここで、当該脱硫においては、SO_(x)化合物への接触分解、及びSO_(x)化合物を炭化水素基質より除去することが行われていることは、当該反応式1等を見れば、当業者に自明である。 ウ 引用文献1の上記【0018】によれば、「このように選択酸化過程で産出されたスルホキシド/スルホンおよびN-オキサイド/インディゴ/オキシムなどは、・・・(中略)・・・第2段階で・・・(中略)・・・、従来の触媒および新塩基触媒を用いた接触脱硫/脱窒を行い、・・・(中略)・・・硫黄・・・(中略)・・・成分が超深度(ultra-low)で存在するまたは全く存在しない(S-free・・・(中略)・・・)留分を製造し、・・・(中略)・・・石油留分清浄工程である。」と記載されていることから、引用発明1の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」における「触媒除去法」は、硫黄または窒素成分が超深度(ultra-low)で存在するまたは全く存在しない(S-freeおよびN-free)留分を製造する石油留分清浄工程で用いられていることがわかる。 エ 引用文献1の【0110】?【0121】には、引用発明2の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」における「熱分解法」に関する実施例8において、酸化した留分(本願発明における「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物」に相当。)を、KOHおよびNa_(2)O/Al_(2)O_(3)の塩基で処理することによって、一層向上した脱硫結果を得ることが記載されている。ここで、当該「KOH」は、本願発明の「水酸化カリウムの苛性溶液」に相当し、当該「Na_(2)O/Al_(2)O_(3)」は、一般的には、「アルミン酸ナトリウム」、または「アルミン酸ソーダ」と呼称され、Al_(2)O_(3)(酸化アルミニウム、アルミナ)とNa_(2)O(酸化ナトリウム)との混合物であって、「酸化アルミニウムを含有する混合物」であるともいえる(必要であれば、特開2001-316113号公報の第2欄第23?26行、特公昭61-11890号公報の第9欄第23?25行等、参照されたい。)。 (2) 引用文献2に記載された事項 引用文献2の上記記載〔1(2)〕によれば、引用文献2には、塩基処理等により、酸化されたイオウ含有炭化水素物質を炭化水素物質から除去し、イオウ含有量の減少した炭化水素物質を回収することが記載されているといえる。(当審注:「イオウ」については、以降「硫黄」と表記する。) 3 対比・判断 (1) 引用発明1を主引用発明とする場合について。 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「炭化水素基質」であって、「前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質」は、本願発明の「液体炭化水素」に相当する。 イ 引用発明1の「硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であ」る「硫黄含有前駆体」は、本願発明の「酸化硫黄化合物」に相当するといえる。 ウ 引用発明1の「(a)」の「選択酸化段階」で、炭化水素基質に含まれる硫黄含有化合物が、硫黄含有前駆体に転換させられ、当該「選択酸化段階」後の「炭化水素基質」は、硫黄含有前駆体を含むものであるから、引用発明1の「(a)」の「選択酸化段階」の「炭化水素基質」は、本願発明の「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物」であるといえる。 エ 引用発明1の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」においては、上記2(1)イで述べたとおり、脱硫、すなわち、SO_(x)化合物への接触分解、及びSO_(x)化合物を炭化水素基質より除去することが行われていることから、本願発明の「SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去し」「酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法」の構成に相当するといえる。 してみると、両者は、 「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物より該酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法であって、 SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去する方法。」 である点で一致し、以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点1> SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去するにあたり、本願発明では、「炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液の存在下で、金属成分を有する有効量の固体塩基触媒組成物と接触させ、 ここで、苛性溶液は、固体塩基触媒組成物の金属成分のより活性な種への変換を促進し、固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含み、 接触は、一部の酸化硫黄化合物のSO_(x)化合物への接触分解を促進するのに効果的な条件下で起こり」という方法が用いられているのに対して、引用発明1では、「触媒除去法(catalytic destruction)によって行われ」、「前記触媒除去法は、t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上の塩基触媒の存在下で行われる」という方法が用いられている点。 <相違点2> 液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物より該酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法について、本願発明では、「酸化硫黄化合物の濃度の減少した炭化水素生成物を回収すること」と特定しているのに対して、引用発明1では、特定していない点。 以下、上記相違点について順に検討する。 <相違点1>について 引用発明1の「触媒除去法」では、「t-BuONa、NaOH、NaOH-KOH、CH_(3)CO_(2)Na、Li_(2)CO_(3)-NaCO_(3)-K_(2)CO_(3)の共融混合物、ラネーニッケル(Raney Ni)、ラネー鉄(Raney Fe)、Na/K、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、Li/MgO、Cs/SiO_(2)、MgFe_(2)O_(4)、[Ni(COD)_(2)Bipy]、商業用HDS触媒、商業用HDN触媒、ヒドロタルサイト、Ce/V/MgO・MgAl_(2)O_(4)、MgO・MgAl_(2)O_(4)(固溶体)、およびZn-Al二重層状ヒドロキシド(double layer hydroxides)の中から選ばれた一つまたは一つ以上塩基触媒の存在下で行われる」ものであって、当該「NaOH」は、本願発明の「水酸化ナトリウム」「の苛性溶液」に相当し、当該「ヒドロタルサイト」は、本願明細書の【0041】に、「ヒドロタルサイトなどの層状複水酸化物」と記載されていることもあり、本願発明の「層状複水酸化物」に相当することから、引用発明1の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」で、「前記(b)脱硫段階は、触媒除去法(catalytic destruction)、によって行われ、」「前記触媒除去法は、」「NaOH」、及び「ヒドロタルサイト」の「一つ以上塩基触媒の存在下で行われる」は、本願発明の「炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液の存在下で、金属成分を有する有効量の固体塩基触媒組成物と接触させ、」「固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含み、」における選択肢のうちの一部である苛性溶液が「水酸化ナトリウム」と、固体塩基触媒組成物が「層状複水酸化物」であるものを包含しているものである。 なお、引用発明1は、「苛性溶液」が「固体塩基触媒組成物の金属成分のより活性な種への変換を促進」するものであるのかどうか明示されていないが、NaOHなどの苛性溶液が金属を活性化することは、当業者に自明であって技術常識である(必要であれば、特公昭46-38763号公報の第3欄第39行?第4欄11行等、特表2008-522818号公報の【0014】?【0019】等、特表2010-520040号公報の【0008】等、参照されたい。)。 してみると、上記の点で相違点1は、実質的なものでない。 そして、上記相違点1における、引用発明1の「NaOH」、及び「ヒドロタルサイト」が、本願発明の「水酸化ナトリウム」「の苛性溶液」、及び「層状複水酸化物」に相当する点については、審判請求人が平成30年7月13日に提出した意見書において、何らの主張もなされていない。 また、引用発明1において、苛性溶液や固体塩基触媒組成物について、上記以外の本願発明における選択肢を採用することも、これらの苛性溶液や固体塩基触媒組成物についての他の選択肢がよく知られた塩基触媒であることから(例えば、特許第4637303号公報の【請求項8】、【請求項9】、特表2011-511791号公報の【0004】、特開2010-202624号公報の【0016】、特開2005-255599号公報の【0002】等、参照されたい。)、当業者が容易になし得るものである。 なお、上記相違点1における、塩基触媒として、「層状複水酸化物」や酸化アルミニウムの混合物以外の他の選択肢を採用することは当業者が容易になし得る点については、審判請求人が平成30年7月13日に提出した意見書において、何らの主張もなされていない。 そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても、【0031】、【0033】によれば、「硫黄濃度は留出燃料について10ppmwと低くし、ある実施態様にて、燃料オイルについて1重量%(W%)未満と、さらなる実施態様において0.1W%未満と低くすることができる。」、「ある実施態様において、予め処理された固体触媒組成物の苛性レベルを維持するのに連続的または断続的な方式で、付加的な苛性溶液が任意の注入口136を介して導入され得る(または注入口134を介する供給物と混合され得る)。・・・(中略)・・・硫黄濃度は留出燃料について10ppmwと低くし、ある実施態様にて、燃料オイルについて1重量%(W%)未満と、さらなる実施態様において0.1W%未満と低くすることができる。」と記載されているだけであって、具体的な苛性溶液や固体塩基触媒組成物の種類、及びその組合せに関する実施例・比較例等、言及がされてなく、また、「水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液」や、「酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含」む「固体塩基触媒組成物」は、本願出願時点において、当業者によく知られた塩基触媒であるものに過ぎず、なおかつ、それら各物質及び、それらの組合せが他の塩基触媒に比して酸化硫黄化合物の濃度をより減らすという技術常識は存在せず、それら各物質及び、それらの組合せについて、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 <相違点2>について 引用文献2には、上記2(2)で述べたとおり、塩基処理等により、酸化された硫黄含有炭化水素物質を炭化水素物質から除去し、硫黄含有量の減少した炭化水素物質を回収することが記載されており、このように、炭化水素混合物から酸化硫黄化合物等を除去した後の炭化水素生成物を回収することは周知技術に過ぎないものであって、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められ、上記相違点2は、実質的なものでないし、仮にそうでないとしても、引用文献2の上記記載を考慮するならば、当業者が容易になし得るものである。 したがって、本願発明と引用発明1との間に実質的な相違点を見出すことはできず、本願発明は引用発明1であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。仮に、本願発明と引用発明1との間に相違点があったとしても、本願発明は、引用発明1、引用文献1、2に記載されている事項、及び、技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (2) 引用発明2を主引用発明とする場合について。 本願発明と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「炭化水素基質」であって、「前記炭化水素基質は、 (1)揮発油、軽サイクルナフサ(LCN)、重サイクルナフサ(HCN)、重留分(middle distillate)、軽サイクル油(LCO)、重サイクル油(HCO)、およびクラリファイド油(CLO)の中から選択されたFCC(流動相接触クラッキング)の原料油およびその産品、 (2)水添工程(HDSおよびHDN)を経た前記(1)の炭化水素基質、 (3)重油、バンカーC油、または常圧または真空蒸留工程で生じた残渣油、 (4)原油から分離されたアスパルチン、 (5)精油工程を経ていない全体原油、 (6)オイルサンド(Tar sands)、サンド油(oil sands)または泥炭、 (7)水添工程を経た液化石炭およびH石炭(H-coal)、 (8)化学的に脱灰分/脱硫/脱窒過程を経た清浄な石炭、並びに (9)コックスまたは黒鉛の中から選ばれる一つ以上の炭化水素基質」は、本願発明の「液体炭化水素」に相当する。 イ 引用発明2の「硫黄含有化合物のスルホキシドまたはスルホンタイプの含酸素硫黄化合物であ」る「硫黄含有前駆体」は、本願発明の「酸化硫黄化合物」に相当するといえる。 ウ 引用発明2の「(a)」の「選択酸化段階」で、炭化水素基質に含まれる硫黄含有化合物が、硫黄含有前駆体に転換させられ、当該「選択酸化段階」後の「炭化水素基質」は、硫黄含有前駆体を含むものであるから、引用発明2の「(a)」の「選択酸化段階」の「炭化水素基質」は、本願発明の「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物」であるといえる。 エ 引用発明2の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」においては、上記2(1)イで述べたとおり、脱硫、すなわち、SO_(x)化合物への接触分解、及びSO_(x)化合物を炭化水素基質より除去することが行われていることから、本願発明の「SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去し」「酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法」の構成に相当するといえる。 してみると、両者は、 「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物より該酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法であって、 SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去する方法。」 である点で一致し、以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点3> SO_(x)化合物を炭化水素混合物より除去するにあたり、本願発明では、「炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液の存在下で、金属成分を有する有効量の固体塩基触媒組成物と接触させ、 ここで、苛性溶液は、固体塩基触媒組成物の金属成分のより活性な種への変換を促進し、固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含み、 接触は、一部の酸化硫黄化合物のSO_(x)化合物への接触分解を促進するのに効果的な条件下で起こり」という方法が用いられているのに対して、引用発明2では、「熱分解法(pyrolysis)によって行われ」、「前記熱分解法は、ジヒドロナフタレン、テトラリン、デカリン、水添処理されたLCN、LCOおよびHCO、並びにこれらの中で水素供与性(H-doner)溶媒および/またはMgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われる」という方法が用いられている点。 <相違点4> 液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物より該酸化硫黄化合物の濃度を減らす方法について、本願発明では、「酸化硫黄化合物の濃度の減少した炭化水素生成物を回収すること」と特定しているのに対して、引用発明2では、特定していない点。 以下、上記相違点について順に検討する。 <相違点3>について 引用発明2の「熱分解法」では、「MgO・MgAl_(2)O_(4)、xAl_(2)O_(3)・yMgAl_(2)O_(4)(固溶体)、Cs/ZCM-5、Ba/MCM-41、Cs/SiO_(2)、Zn-Al二重層状ヒドロキシド、ヒドロタルサイトおよびヒドロタルサイト類似物質、Li/MgO、Li/MgO-CaO、Na/Al_(2)O_(3)、K/Al_(2)O_(3)、AlGaPON、ZrGaPON、Mg_(1-x)Ga_(x)(OH)_(2)CO_(3)などの塩基触媒の存在下で行われる」ものであって、当該「ヒドロタルサイト」は、本願明細書の【0041】に、「ヒドロタルサイトなどの層状複水酸化物」と記載されていることもあり、本願発明の「層状複水酸化物」に相当する。 また、引用発明2の「熱分解法」を採用した引用文献1の【0110】?【0121】の実施例8によれば、酸化した留分(本願発明における「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物」に相当。)を、KOHおよびNa_(2)O/Al_(2)O_(3)の塩基で処理することによって、一層向上した脱硫結果を得ることが記載されており、ここで、当該「KOH」は、本願発明の「水酸化カリウムの苛性溶液」に相当することから、引用発明2は、「KOH」の塩基で処理する態様を含んでいるといえる。 してみると、引用発明2の「(b)前記硫黄含有前駆体を除去することにより、炭化水素基質の脱硫を行う段階」で、「前記(b)脱硫段階は、熱分解法(pyrolysis)、によって行われ、」「前記熱分解法は、」「KOH」、及び「ヒドロタルサイト」の「一つ以上塩基触媒の存在下で行われる」は、本願発明の「炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物を、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液の存在下で、金属成分を有する有効量の固体塩基触媒組成物と接触させ、」「固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含み、」における選択肢のうちの一部である苛性溶液が「水酸化ナトリウム」と、固体塩基触媒組成物が「層状複水酸化物」であるものを包含しているものである。 なお、引用発明2は、「苛性溶液」が「固体塩基触媒組成物の金属成分のより活性な種への変換を促進」するものであるのかどうか明示されていないが、KOHなどの苛性溶液が金属を活性化することは、当業者に自明であって技術常識である(必要であれば、特公昭46-38763号公報の第3欄第39行?第4欄11行等、特表2008-522818号公報の【0014】?【0019】等、特表2010-520040号公報の【0008】等、参照されたい。)。 してみると、上記の点で相違点1は、実質的なものでない。 一方、引用発明2の「熱分解法」を採用した引用文献1の【0110】?【0121】の実施例8によれば、酸化した留分(本願発明における「液体炭化水素と酸化硫黄化合物との混合物」に相当。)を、KOHおよびNa_(2)O/Al_(2)O_(3)の塩基で処理することによって、一層向上した脱硫結果を得ることが記載されており、ここで、当該「Na_(2)O/Al_(2)O_(3)」は、本願発明の「酸化アルミニウム」「の混合物」に相当するものであり、上記実施例8に関する記載から、本願発明おける選択肢のうちの一部である「水酸化カリウムの苛性溶液」と「酸化アルミニウム」「の混合物」と、引用発明2とが同一であることを裏付けるものである。 また、引用発明2において、苛性溶液や固体塩基触媒組成物について、上記以外の本願発明における選択肢を採用することも、これらの苛性溶液や固体塩基触媒組成物についての他の選択肢がよく知られた塩基触媒であることから(例えば、特許第4637303号公報の【請求項8】、【請求項9】、特表2011-511791号公報の【0004】、特開2010-202624号公報の【0016】、特開2005-255599号公報の【0002】等、参照されたい。)、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても、【0031】、【0033】によれば、「硫黄濃度は留出燃料について10ppmwと低くし、ある実施態様にて、燃料オイルについて1重量%(W%)未満と、さらなる実施態様において0.1W%未満と低くすることができる。」、「ある実施態様において、予め処理された固体触媒組成物の苛性レベルを維持するのに連続的または断続的な方式で、付加的な苛性溶液が任意の注入口136を介して導入され得る(または注入口134を介する供給物と混合され得る)。・・・(中略)・・・硫黄濃度は留出燃料について10ppmwと低くし、ある実施態様にて、燃料オイルについて1重量%(W%)未満と、さらなる実施態様において0.1W%未満と低くすることができる。」と記載されているだけであって、具体的な苛性溶液や固体塩基触媒組成物の種類、及びその組合せに関する実施例・比較例等、言及がされてなく、また、「水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの苛性溶液」や、「酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物を含」む「固体塩基触媒組成物」は、本願出願時点において、当業者によく知られた塩基触媒であるものに過ぎず、なおかつ、それら各物質及び、それらの組合せが他の塩基触媒に比して酸化硫黄化合物の濃度をより減らすという技術常識は存在せず、それら各物質及び、それらの組合せについて、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 <相違点4>について 引用文献2には、上記2(2)で述べたとおり、塩基処理等により、酸化された硫黄含有炭化水素物質を炭化水素物質から除去し、硫黄含有量の減少した炭化水素物質を回収することが記載されており、このように、炭化水素混合物から酸化硫黄化合物等を除去した後の炭化水素生成物を回収することは周知技術に過ぎないものであって、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められ、上記相違点4は、実質的なものでないし、仮にそうでないとしても、引用文献2の上記記載を考慮するならば、当業者が容易になし得るものである。 したがって、本願発明と引用発明2との間に実質的な相違点を見出すことはできず、本願発明は引用発明2であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。仮に、本願発明と引用発明2との間に相違点があったとしても、本願発明は、引用発明2、引用文献1、2に記載されている事項、及び、技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 4 審判請求人の主張について (1) 審判請求人は、本願発明に関し、平成30年7月13日に提出した意見書において、以下のとおり主張している。 ア 「本願の請求項1に記載の『酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物』における『その混合物』とは、『?の別個の成分』と並列に記載しているところからも明らかなように、規定している各成分どうしの混合物ということを指し、個々の成分と規定していない他の化合物との混合物を指していないことは明らかと思料します。」(以下、「主張ア」という。) イ 「引用文献1に記載のNa_(2)O/Al_(2)O_(3)は本願発明の酸化アルミニウムとは異なる物質です。」(以下、「主張イ」という。) ウ 「本願発明は水素供与性溶媒を用いる方法ではありません。本願の方法では、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個の成分またはその混合物の成分を用いる方法であります。」(以下、「主張ウ」という。) (2) 主張アについて 審判請求人は、「その混合物」を、「酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウム」で規定されている成分どうしの混合物である旨主張してるが、本願明細書の記載をみる限り、「固体塩基触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個独立した成分またはそれらの混合物を包含する。」(【0019】)、「固体触媒組成物は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個独立した成分またはそれらの混合物を包含する。」(【0020】)、及び「スルホン分解帯での固体触媒は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミン酸亜鉛、ヒドロタルサイトなどの層状複水酸化物、および層状複水酸化マグネシウム/アルミニウムの別個独立した成分またはそれらの混合物を含んでもよい。」(【0041】)と、本願発明と同様の記載があるだけである。 ここで、「その」は、例えば、「酸化亜鉛」や「酸化アルミニウム」等を指す指示代名詞であると認められることから、当該「その混合物」を、「酸化亜鉛を含有する混合物」や、「酸化アルミニウムを含有する混合物」等と解釈できることは自然である。 してみると、本願明細書の記載等からみて、「その混合物」について、上記審判請求人が主張するような限定的解釈を採用することはできない。 (3) 主張イについて 引用文献1の上記実施例8の「Na_(2)O/Al_(2)O_(3)」は、塩基性触媒として知られており(必要であれば、特開平11-165069号公報の【0008】を参照されたい。)、そして、上記2(1)エで述べたとおり、Al_(2)O_(3)(酸化アルミニウム)とNa_(2)O(酸化ナトリウム)との混合物であって、「酸化アルミニウムを含有する混合物」であるともいえる。 したがって、引用文献1に記載の「Na_(2)O/Al_(2)O_(3)」は、確かに、本願発明の酸化アルミニウムとは異なるものの、本願発明における「その混合物」の一つである「酸化アルミニウムを含有する混合物」であるといえる。 (4) 主張ウについて 審判請求人は、引用文献1の上記実施例8における「水素供与性溶媒」について言及しているが、引用発明1は、上記2(1)で述べたとおり、引用文献1の【請求項2】、【請求項14】、【請求項19】、【請求項23】、【請求項24】の記載から認定しているのであって、当該実施例8に基づいて認定しているものではない。 したがって、上記主張ウは、引用発明1に基づかないことから、採用することができない。 仮に、上記主張ウが、引用発明2に基づいたものとして、以下検討する。 引用発明2の「熱分解法」を採用した引用文献1の【0110】?【0121】の実施例8によれば、「選択的に水素供与性溶媒が存在する」(【0115】)、「場合によっては水素供与性溶媒が共存する条件の下で」(【0121】)と記載されているように、当該「水素供与性溶媒」は、あくまでも追加構成要素であって、必須構成要素とするものでないことは、明らかである。 してみると、本願明細書の記載等からみて、「水素供与性溶媒」について、上記審判請求人が主張するような必須構成要素であるとの解釈を採用することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の事項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2018-08-20 |
結審通知日 | 2018-08-28 |
審決日 | 2018-09-10 |
出願番号 | 特願2014-523971(P2014-523971) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(C10G)
P 1 8・ 121- WZ (C10G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森 健一 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
國島 明弘 井上 能宏 |
発明の名称 | スルホン分解と統合される酸化的脱硫の方法 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 佐藤 剛 |
代理人 | 森住 憲一 |
代理人 | 山田 卓二 |