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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C12C
管理番号 1348415
審判番号 不服2018-1328  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 特願2013-182218「凍結乾燥ホップを原料に用いたビールテイスト飲料及びホップ香気の増強方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月16日出願公開、特開2015- 47135、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月3日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月20日:拒絶理由通知書
同年 6月30日:意見書、手続補正書
同年11月 6日:拒絶査定
平成30年 1月31日:審判請求書、手続補正書
同年10月29日:平成30年1月31日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶理由通知書
平成30年11月29日:意見書、手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成30年11月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
収穫後乾燥することなく凍結乾燥したホップを、原料として用いることを含む、6ppm以下のフムレノールを含むビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項2】
収穫後乾燥することなく凍結乾燥したホップの水分含有率が12重量%以下である請求項1に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項3】
凍結乾燥の条件が乾燥温度60℃以下、乾燥圧力100Pa以下である請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項4】
ビールテイスト飲料が、10?30ppmのリナロール、5?15ppmのゲラニオール、及び7.5?17ppmのシトロネロールを含む請求項1?3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項5】
凍結乾燥したホップは、麦汁煮沸工程終了後に添加される請求項1?4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。」

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1?6に係る発明は、当業者が以下の引用文献1?7に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2004-81113号公報
引用文献2.J.Inst.Brew.,1965年,vol.71,p.492-495
引用文献3.特開2008-92863号公報
引用文献4.特開2008-113646号公報
引用文献5.特開2009-148254号公報
引用文献6.J.Agric.Food Chem.,1986年,vol.34,p.763-770
引用文献7.ASBC Journal,1981年,vol.39,no.4,p.136-141

第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。)。

「【請求項1】
発酵麦芽飲料の製造に際して、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ若しくはその粉砕物を、ホップ原料として又は生ホップフレーバーとして用いることを特徴とする発酵麦芽飲料の製造方法。」

「【0008】
すなわち、本発明は、ビール若しくは発泡酒等の発酵麦芽飲料の製造に際して、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ若しくはその粉砕物を、ホップ原料として、或いは生ホップフレーバーとして用いて、新鮮ホップによる香味を付与した発酵麦芽飲料、及びその製造方法を提供することよりなるものである。本発明の方法により製造された発酵麦芽飲料は、新鮮生ホップの香気成分であるリナロール等を多量に含有し、ホップの酸化により生成する成分であるHDE(Humulene Diepoxide)等がごく少量に抑えられた、フローラル様、青草様の新鮮な香りを有し、かつ酸化等の劣化臭の感じられない芳香性の高い発酵麦芽飲料となる。」

「【0014】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1(収穫時凍結した生ホップとホップペレット(乾燥ホップペレット)の香味成分含有量の比較)
発酵麦芽飲料の製造において、通常使用されている乾燥ホップの調製に際しての乾燥処理によるホップ香味成分(リナロール)の減少を測定するために、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップと収穫後乾燥しペレット化したホップペレットのリナロール含有量についての成分分析を行った。結果を、表1に示す。・・・
表1に示されるとおり、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップの特徴は、水分が多いことは当然であるが、リナロール(Linalool)が非常に多いことにある。ホップ収穫後の通常の乾燥工程は、リナロールの大半を失う結果となっている。
【0015】
【表1】



これらの記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ若しくはその粉砕物を、ホップ原料として用いることを特徴とする発酵麦芽飲料の製造方法。」

(2)引用文献2には、以下の事項が記載されている(括弧内に当審訳を示す。)。
「Hops (variety Eastwell Goldings) from the same growth were dried in a commercial oast, in experimental kilns without sulphur, and by freeze drying. When extracts from these three samples of hops were examined by ion exchange chromatography it was found that the freeze-dried material contained a substantial quantity of xanthohumol, a large part of which was lost during kilning.
Isoxanthohumol was found in all these hops but the quantity did not increase during kilning. Evidence is presented for the presence of further compounds similar to xanthohumol.」(492ページ冒頭)
(同じ生育からのホップ(品種Eastwell Goldings)を、工業用乾燥窯、硫黄を含まない実験用窯及び凍結乾燥により乾燥させた。これらの3つのホップサンプルからの抽出物をイオン交換クロマトグラフィーによって調べたところ、凍結乾燥物質はかなりの量のキサントフモールを含有し、その大部分が窯での乾燥中に失われることが見出された。
イソキサントフモールは、これらの全てのホップにおいて見出されたが、その量は、かまでの乾燥中に増加しなかった。キサントフモールに類似したさらなる化合物の存在について証拠が提示される。)

「Examination of the ethereal extracts of the methanol-soluble material by chromatography on modified cellulose paper indicated the presence of other chalkones, particularly in the extract from the freeze-dried hops.」(494ページ左欄5-10行)
(変性セルロース紙上のクロマトグラフィーによるメタノール可溶性物質のエーテル抽出物の検査は、特に凍結乾燥ホップからの抽出物中の他のカルコンの存在を示した。)

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
引用発明の「発酵麦芽飲料」は、本願発明1の「ビールテイスト飲料」に相当し、引用発明の「収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ」と、本願発明1の「収穫後乾燥することなく凍結乾燥したホップ」とは、「収穫後乾燥することなく処理をしたホップ」との限りで共通する。
よって、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
収穫後乾燥することなく処理をしたホップを、原料として用いることを含むビールテイスト飲料の製造方法。

[相違点1]
原料として用いられるホップが、本願発明1は「収穫後乾燥することなく凍結乾燥したホップ」であるのに対し、引用発明は「収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ」である点。
[相違点2]
製造されるビールテイスト飲料について、本願発明1は「6ppm以下のフムレノールを含む」のに対し、引用発明は、フムレノールの含有量が不明である点。

イ 判断
相違点1について検討すると、引用発明は、引用文献1の記載によれば、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ若しくはその粉砕物を、ホップ原料として用いることにより、新鮮ホップによる香味を付与した発酵麦芽飲料の製造方法を提供しようとするものであり(【0008】)、当該凍結した生ホップは水分を多く含むものである(【0014】、【0015】)。よって、引用文献1の記載を踏まえると、引用発明の「凍結した生ホップ」を「凍結乾燥したホップ」に変更する動機付けは認められない。
一方、引用文献2には、凍結乾燥したホップが記載され、キサントフモール含量が高く、他のカルコンの含量についても高かったことが記載されている。しかし、引用文献2は、収穫後乾燥することなく凍結乾燥することや、このように凍結乾燥したホップをビールテイスト飲料の製造原料として用いることの優位性までを示すものではないから、引用文献2を参照しても、引用発明の「凍結した生ホップ」を「凍結乾燥したホップ」に変更する動機付けは認められない。
また、凍結乾燥は、食品の技術分野において極一般的に用いられる乾燥方法であって、香りを保持しやすいことは周知である(引用文献3【0013】、引用文献4の要約、引用文献5の【0005】参照。)。
しかし、引用発明は、そもそもホップを乾燥させるものではないから、引用文献2に示され、また、周知でもある乾燥方法を適用する余地はない。
そして、引用文献6、7は、上記相違点1に係る本願発明1の技術事項を何ら開示するものではない。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成を採用することは、引用文献1?7の開示を参酌しても、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?5について
本願発明2?5も、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括
本願発明1?5は、引用文献1?7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第5 当審拒絶理由について
当審では、平成30年11月29日付けの手続補正書により補正される前の請求項6の記載が特許法36条6項2号の要件を満たしていない旨の拒絶理由を通知したが、上記手続補正書により、請求項6を削除する補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2013-182218(P2013-182218)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C12C)
P 1 8・ 537- WY (C12C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 莊司 英史
紀本 孝
発明の名称 凍結乾燥ホップを原料に用いたビールテイスト飲料及びホップ香気の増強方法  
代理人 鮫島 睦  
代理人 膝舘 祥治  
代理人 西下 正石  

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