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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1348426
審判番号 不服2016-16650  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2019-01-30 
事件の表示 特願2014-180320号「冷却回収システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月12日出願公開,特開2015- 28419号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,2008年9月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2007年9月7日,米国)を国際出願日とする特願2010-524203号の一部を,平成26年9月4日に新たな特許出願としたものであって,その経緯は,概ね次のとおりである。
平成26年10月 6日 手続補正書
平成27年 7月21日 拒絶理由通知書
平成28年 1月28日 意見書,手続補正書
平成28年 6月28日 拒絶査定
平成28年11月 7日 拒絶査定不服審判請求書,手続補正書
平成29年12月 8日 拒絶理由通知書
平成30年 6月12日 意見書,手続補正書

第2 本願発明について
本願の請求項1?11に係る発明は,平成30年6月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであるが,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
冷却コイルと,冷却回収コイルと,冷却流体の戻り配管と,を備える空調システムであって,
前記冷却コイルは,流体冷却器によって第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却された流体を受け取り,前記第1の温度は,前記流体が前記流体冷却器によって受け取られたときの前記流体の温度であり,前記流体は,液相流体であり,
前記冷却コイルは,空気処理ユニット内を移動する空気に接触するように構成され,これにより前記空気は冷却されると共に前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮され,前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの前記少なくとも一部の湿気の凝縮によって,前記流体が前記冷却コイルの流出口に達したときに前記流体は前記第2の温度よりも高い第3の温度になり,
前記冷却回収コイルは,前記冷却コイルによって排出されたほぼ前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために,流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有し,前記冷却回収コイルは,前記空気が冷却コイルに接触した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接触するように構成され,
前記冷却流体の戻り配管は,前記冷却回収コイルから出る前記流体を前記流体冷却器に戻すためのものであり,
前記空調システムは,複数の弁を運転するように構成され,前記複数の弁の運転によって,前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化され,これにより,前記空気が前記冷却コイルを出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記受け取られた空気から水分が除去される第1の温度まで前記空気の給気温度が低下され,前記複数の弁の運転によって,さらに,前記冷却回収コイルにおいて前記流体から,前記除湿されて冷却された空気に熱を伝達するように,前記冷却コイルによって前記冷却回収コイルに排出される前記流体の流量が連続的に変化され,これにより前記流体冷却器への冷却要求を低減させると共に,空調された空間における居住者の快適さの必要性を満たすため,プロセス冷房負荷の必要性を満たすため,及び,相対湿度を所定の値よりも低く維持するためのうちの一つ又は複数に必要とされる第2の温度まで前記空気の前記給気温度を上昇させる,空調システム。

第3 拒絶理由の概要
当審にて,平成29年12月8日付けで通知した拒絶理由の概要は,次のとおりである。すなわち,本願発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された次の引用文献に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特開2005-207712号公報
2 特開2002-61903号公報

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1について
(1) 引用文献1には,以下の事項が記載されている。
・「【請求項2】
吸気口と給気口とを有するチャンバ内に,冷水循環式の冷却コイルと,加熱コイルと,加湿器と,再熱コイルとを配設してなる空気調和装置であって,
前記再熱コイルに,前記給気口から供給される処理空気が導入される室内に配設された冷水循環式のドライコイルから排出される「冷水の返り」が供給されるように構成されていることを特徴とする空気調和装置。

【請求項4】
前記冷却コイル及び/又は前記ドライコイルに供給される冷水が,冷凍機によって冷却されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の空気調和装置。」
・「【0001】
本発明は,処理対象となる空気の温湿度調整を行う空気調和装置に係り,特に,安定した温湿度制御,冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を実現すべく改良を施した空気調和装置に関する。」
・「【0002】
電子工業や精密機械工業の工場,食品保存用の貯蔵庫,実験用動物飼育室,バイオロジカルクリーンルームなどにおいては,温度・湿度などの室内環境を一定に保つ必要がある。このため,このような設備においては,室内の恒温・恒湿を目的とした空気調和装置が設置されている。
【0003】
このような空気調和装置として従来から実施されているものの一例を,図7を参照して以下に説明する。すなわち,図中,左側を空気取入口,右側を空気供給口とするハウジング(図示せず)の内部に,取入口側から,外気の塵埃を取り除くプレフィルタ1,中性能フィルタ2,循環する冷水によって空気を冷却する冷却コイル3,循環する温水によって空気を加熱する加熱コイル4,ボイラで発生させた蒸気を空気の通過過程に供給して加湿する蒸気式加湿器5,再熱コイル6,及び,処理空気をハウジング外へ吐出する送風機7が配設されている。
【0004】
また,前記冷却コイル3,加熱コイル4,蒸気式加湿器5及び再熱コイル6には,それぞれに供給される冷水,温水及び蒸気等の流量を制御するバルブ8,9,10,11が設けられている。また,加湿空気の供給口には,複数の温度及び湿度センサ12が取り付けられており,これらのセンサ12による検出値が温湿度制御器13に入力され,この温湿度制御器13によって,前記バルブ8?11の開度が調整され,供給空気の温度及び湿度があらかじめ定められた一定の値となるように,冷却コイル3内の冷水,加熱コイル4及び再熱コイル6内の温水,蒸気式加湿器5の蒸気の量が制御される構成となっている。

【0009】
そして,冷却された空気は,必要に応じて,再熱コイル6による再熱が行われ…,送風機7によって供給口から供給される。この再熱は,室内冷却負荷発生量が少ない場合,恒温・恒湿を達成するために必要であり,熱源としては,ボイラー運転による蒸気や温水が使われ,最近では,省エネルギー化を目的として,冷凍機において冷水を製造したことにより発生する冷却水の低温排熱を利用している例も多い…。

【0010】
しかしながら,冷却水の排熱を利用する方式においても,従来冷却塔から排出(放熱)する熱量を利用しているのみで,冷却コイル3から排出される冷水は,そのまま冷凍機に戻されていたため,冷凍機の負荷量としては大きなものとなり,従って,冷凍機の容量が大きくなり,エネルギー使用量も大きかった。

【0011】
本発明は,上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり,その目的は,安定した温湿度制御,冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を可能とした空気調和装置を提供することにある。」
・「【0012】
本発明は,冷却コイルから排出される「冷水の返り」,あるいは他の系統より排出される「冷水の返り」を再熱コイルの熱源として利用することにより,冷凍機に戻される「冷水の返り」温度を下げて冷凍機の負荷を下げ,冷凍機容量を小さくすると共に,省エネルギー化を図るものである。」
・「【0015】
上記のような構成を有する請求項1又は請求項2に記載の発明においては,空気調和装置内に配設された冷却コイル,あるいは処理空気が導入される室内に設置されたドライコイルからの「冷水の返り」を,再熱コイルの熱源として利用することにより,冷凍機に戻される「冷水の返り」温度を下げることができるので,冷凍機の負荷が低減され,冷凍機容量を小さくすることができると共に,省エネルギー化を図ることができる。」
・「【0018】

上記のような構成を有する請求項4に記載の発明においては,冷却コイル及び/又はドライコイルに供給される冷水の冷却効率を向上させることができる。」
・「【0023】
本発明の空気調和装置によれば,安定した温湿度制御,冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を可能とした空気調和装置を提供することができる。」
・「【0025】
(1)第1実施形態
(1-1)構成
図1は,本発明に係る空気調和装置の構成を示す模式図である。すなわち,本実施形態の空気調和装置のハウジング(図示せず)内部には,空気取入口側から,プレフィルタ1,中性能フィルタ2,冷却コイル3,加熱コイル4,気化式加湿器20,再熱コイル21,第2の再熱コイル22,及び,処理空気をハウジング外へ吐出する送風機7が順次配設されている。また,空調空気が供給される室内Mには,ドライコイル30が設けられている。なお,このドライコイル30は,室内Mの湿度を落とさずに,温度(顕熱)のみを下げるために配設されている。」
・「【0039】
(2)第2実施形態
本実施形態は上記第1実施形態の変形例であって,空気調和装置内の冷却コイルの「冷水の返り」を,再熱コイルに供給するように構成したものである。
【0040】
(2-1)構成
本実施形態においては,図3に示したように,冷却コイル3には,冷凍機50から冷水を供給する冷却コイル側冷水供給ライン51が接続され,この冷却コイル側冷水供給ライン51には,第5のバルブ52が設けられている。
【0041】
また,前記冷却コイル3には,冷却コイル3から排出された「冷水の返り」を冷凍機50に戻すための冷却コイル側冷水戻りライン53が接続され,この冷却コイル側冷水戻りライン53には,第6のバルブ54が設けられている。さらに,この冷却コイル側冷水戻りライン53には,冷却コイル3から排出された「冷水の返り」を再熱コイル21に供給するための再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55が設けられ,この再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55には,第7のバルブ56が設けられている。
【0042】
また,前記再熱コイル21から前記冷凍機50には,再熱コイル側冷水戻りライン57が設けられ,再熱コイル21において,熱源として利用された「冷水の返り」を冷凍機50に戻すことができるように構成されている。
【0043】
(2-2)作用
以上のような構成を有する本実施形態の空気調和装置は以下のように作用する。なお,本実施形態における空気線図は,上記第1実施形態と同様に,図2に示したようになる。また,本実施形態は,冷却コイル3を稼働させる夏季に有効である。
【0044】
すなわち,上記第1実施形態で説明したように,夏季などの空気の除湿が必要な場合には,送風機7を作動させるとともに,冷却コイル側冷水供給ライン51の第5のバルブ52を開とする。すると,ハウジングの空気取入口から外気(34℃,60%RH)が流入する。流入した空気は,フィルタ1,2を介して塵埃が濾過された後,冷却コイル3によって冷却され(As?Bs),気化式加湿器20によって加湿された後(Bs?Ds,10.5℃,約100%RH),再熱コイル21に導入される。
【0045】
また,本実施形態においては,冷却コイル3から排出される「冷水の返り(18℃)」を,再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55を介して,再熱コイル21に供給することができるように構成されている。そのため,本実施形態においても,上記第1実施形態と同様に,再熱コイル21において,処理空気は冷却コイル3からの「冷水の返り」によって加温される(Ds?E,15℃)。そして,さらに,第2の再熱コイル22によって加温されて(E?F,19℃),室内Mに供給される。
【0046】
(2-3)効果
このように,本実施形態によれば,冷却コイルからの「冷水の返り」を,再熱コイルの熱源として利用することができるので,結果的に,冷凍機50に対して,冷凍機容量の低減と同時に省エネ効果が得られる。」
・「【図2】


・「【図3】


(2) 以上を踏まえると,引用文献1の前記記載及び図面の記載によれば,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「ハウジング内に冷却コイル3,再熱コイル21とを配設し,再熱コイル側冷水戻りライン57と,を備える空気調和装置であって,
前記冷却コイル3には,冷凍機50から冷水が供給される,第5のバルブ52が設けられた冷却コイル側冷水供給ライン51が接続され,前記冷却コイル3から排出された「冷水の返り」を前記冷凍機50に戻す,第6のバルブ54が設けられた冷却コイル側冷水戻りライン53が接続され,
前記冷却コイル3は,空気調和装置のハウジングの空気取入口から流入する空気を冷却し,これにより前記空気は冷却されると共に前記空気は除湿され,
前記再熱コイル21は,前記「冷水の返り」を受け取るために,第7のバルブ56が設けられた再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55によって前記冷却コイル3に接続されており,前記再熱コイル21は,前記冷却コイル3により冷却された空気を加温するように構成され,
前記再熱コイル側冷水戻りライン57は,前記再熱コイル21から出る前記「冷水の返り」を前記冷凍機50に戻すためのものであり,
前記空気調和装置は,前記第5?7のバルブ52,54,56を制御するように構成され,前記第5のバルブ52の制御によって,前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が制御され,これにより,前記空気が前記冷却コイル3を出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記空気から水分が除去される温度まで前記空気の温度が低下され,前記第6,7のバルブ54,56の制御によって,さらに,前記再熱コイル21において前記「冷水の返り」により,前記除湿されて冷却された空気を加温するように,前記冷却コイル3によって前記再熱コイル21に排出される前記「冷水の返り」の流量が制御され,これにより前記冷凍機50の負荷が低減されると共に,電子工業や精密機械工業の工場,食品保存用の貯蔵庫,実験用動物飼育室,バイオロジカルクリーンルームなどにおいて,温度・湿度などの室内環境を一定に保つために必要とされる温度まで前記空気の前記温度を上昇させる,空気調和装置。」

2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には,以下の事項が記載されている。
・「【0001】
…本発明は,熱交換器に加湿手段としての機能若しくはケミカルガス除去手段としての機能,またはその両方の機能を備えた湿膜コイル型空気調和機に関する。」
・「【0002】
…電子工業や精密機械工業の工場,食品保存用の貯蔵庫,実験用動物飼育室,バイオロジカルクリーンルームなどにおいては,室内空気の温度,湿度,清浄度等の室内環境を,その室の目的に適合する状態に処理調整する空気調和機が不可欠である。この空気調和機は,主として,空気を加熱冷却するコイル,加湿する加湿器,清浄化するエアフィルタ及び送風機によって構成されている。」
・「【0019】

1-1.構成
まず,請求項1?4記載の発明に対応する実施の形態を,図1?図5を参照して説明する。すなわち,図中,左側を空気取入口,右側を空気供給口とするハウジング1の内部に,空気取入口側から,外気の塵埃を取り除くプレフィルタ2a及びフィルタ2,循環する温水によって空気を加熱する第1の加熱コイル3,循環する冷水によって空気を冷却する冷却コイル4,循環する温水によって空気を加熱する加熱コイル5,ハウジング1外へ空気を吐出す送風機6が配設されている。プレフィルタ2aとしては,比較的大きな粒子を捕集する粗塵用エアフィルタが用いられる。フィルタ2としては,例えば,中性能若しくはHEPAフィルタが用いられる。
【0020】第1の加熱コイル3,冷却コイル4,第2の加熱コイル5には,それぞれ温水及び冷水の流量を制御するバルブ7,8,9が設けられている。また,加湿空気の供給口には,供給空気の露点温度を検出する露点温度センサ10と,供給空気の乾球温度を検出する乾球温度センサ11とが取り付けられている。

【0023】そして,バルブ7,8及び露点温度センサ10は,制御器12に接続されている。また,バルブ8,9及び乾球温度センサ11は,制御器13に接続されている。制御器12は,露点温度センサ10によって検出される露点温度に基づいて,第1の加熱コイル3の温水の量を制御するように構成されている。制御器13は,乾球温度センサ11によって検出される乾球温度に基づいて,第2の加熱コイル5の温水の量を制御するように構成されている。冷却コイル4に対しては,露点温度センサ10及び乾球温度センサ11の検出値に基づいて,制御器12,13による制御が行われる構成となっている。なお,ポンプ72は,ケミカルガス除去を行なう場合は常時運転を行なうが,加湿のみを行なう場合は,制御器13に接続された露点温度センサ10の検出値に基づいてON,OFF制御が行なわれる構成となっている。」
・「【0024】1-2.作用
1-2-1.加熱加湿時

【0026】ハウジング1の空気取入口(A点)から流入した外気は,プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後,第1の加熱コイル3によって加熱されるとともに,上記のように水分を保持し,濡れ面となったプレートフィン30を通過する際に加湿される(B点)。これにより,図5のAwとBwとを結ぶ実線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。加熱加湿された空気は,さらに第2の加熱コイル5によって加熱され(D点),送風機6によって供給口から供給される。これにより,図5のBwとDwを結ぶ実線で示すように,絶対湿度は一定で,乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0027】なお,供給空気の絶対湿度が,室内設定温湿度を満たす値となるように,第1の加熱コイル3における温水の流量は,供給口に設置された露点温度センサ10によって検出される露点温度値に基づいて,制御器12がバルブ7の開度を比例制御することによって調節され,第2の加熱コイル5における温水の流量は,供給口に設置された乾球温度センサ11によって検出される乾球温度値に基づいて,制御器13がバルブ9の開度を比例制御することによって調節される。

【0029】1-2-2.冷却除湿時
次に,夏季などの空気の冷却除湿が必要な場合について,以下に説明する。まず,送風機6を作動させるとともに,冷却コイル4のバルブ8を開とする。ハウジング1の空気取入口(A点)から流入した外気は,プレフィルタ2a及びフィルタ2を介して塵埃が濾過された後,冬季加熱加湿時と同じように,第1の加熱コイル3により加湿とケミカルガス除去が行なわれる(B点)。これにより,図5のAsとBsとを結ぶ一点鎖線で示すように乾球温度及び相対湿度が推移する。なお,この場合はバルブ7が閉となっており,第1の加熱コイル3への温水は供給されない。
【0030】この後,空気は冷却コイル4によって冷却され(C点),送風機6によって供給口から供給される。これにより,図5のBsとCsを結ぶ一点鎖線で示すように,乾球温度及び相対湿度が推移する。この場合には,冷却コイル4におけるプレートフィン30の面の結露水が,均一な濡れ面を形成することから,非常に高いケミカルガス除去性能が得られる。
【0031】冷却コイル4における冷水の流量は,供給口に設置された露点温度センサ10及び乾球温度センサ11に基づいて,供給空気の絶対湿度が,室内設定温湿度を満たす値となるように,制御器12,13がバルブ8の開度を比例制御することによって調整される。なお,室内温度との関係で,さらに加熱が必要となる場合には,バルブ9が開とされて,上述と同様に,第2の加熱コイル5による加熱が行なわれる(D点)。これにより,図5のCsとDsを結ぶ一点鎖線で示すように,絶対湿度は一定で,乾球温度が上昇する顕熱変化が起こる。
【0032】また,冬季及び夏季以外の中間季においては,外気と室内設定温度に合わせて,露点温度センサ10の検出値に基づく第1の加熱コイル3及び冷却コイル4の流量制御,乾球温度センサ11の検出値に基づく冷却コイル4の流量制御及び第2の加熱コイル5の流量制御が行なわれる。」

第5 対比及び判断
1 対比
(1) 本願発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「冷却コイル3」,「再熱コイル21」,「空気調和装置」は,それぞれ,本願発明の「冷却コイル」,「冷却回収コイル」,「空調システム」に相当する。
(2) 引用発明の「冷却コイル3」は,「冷凍機50から冷水が供給される…冷却コイル側冷水供給ライン51が接続され(る)」ところ,「冷凍機50」は,戻された「冷水の返り」をより低い温度まで冷却すること,「冷水」は「液相流体」であることは技術的に明らかである。
よって,引用発明は本願発明と同様に,「前記冷却コイルは,流体冷却器によって第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却された流体を受け取り,前記第1の温度は,前記流体が前記流体冷却器によって受け取られたときの前記流体の温度であり,前記流体は,液相流体であ(る)」ものである。
(3) 引用発明の「空気調和装置のハウジング」内の部分は,その機能に照らして,本願発明の「空気処理ユニット」に相当する。
そして,引用発明の「冷却コイル3」は,「空気調和装置のハウジングの空気取入口から流入する空気を冷却し,これにより前記空気は冷却されると共に前記空気は除湿され(る)」ものであるから,これにより,供給された「冷水」の温度が上昇し,「冷水の返り」の温度(第3の温度)は供給時の「冷水」の温度(第2の温度)より高くなることは明らかである。
よって,引用発明は本願発明と同様に,「前記冷却コイルは,空気処理ユニット内を移動する空気に接触するように構成され,これにより前記空気は冷却されると共に前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮され,前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの前記少なくとも一部の湿気の凝縮によって,前記流体が前記冷却コイルの流出口に達したときに前記流体は前記第2の温度よりも高い第3の温度にな(る)」ものである。
(4) 引用発明の「冷水の返り」,「再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55」は,その機能に照らして,それぞれ,本願発明の「前記冷却コイルによって排出されたほぼ前記第3の温度の前記流体」,「流体回収管路」に相当する。
そして,引用発明の「再熱コイル21」は,「前記「冷水の返り」を受け取るために,再熱コイル側「冷水の返り」供給ライン55によって前記冷却コイル3に接続されており,前記再熱コイル21は,前記冷却コイル3により冷却された空気を加温するように構成され(る)」ものであるから,引用発明は本願発明と同様に,「前記冷却回収コイルは,前記冷却コイルによって排出されたほぼ前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために,流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有し,前記冷却回収コイルは,前記空気が冷却コイルに接触した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接触するように構成され(る)」ものである。
(5) 引用発明の「再熱コイル側冷水戻りライン57」は,「前記再熱コイル21から出る前記「冷水の返り」を前記冷凍機50に戻すためのものであ(る)」から,本願発明の「冷却流体の戻り配管」に相当する。
(6) 引用発明の「空気調和装置」は,「前記第5?7のバルブ52,54,56を制御するように構成され,前記前記第5のバルブ52の制御によって,前記冷凍機50から前記冷却コイル3への前記冷水の流量が制御され,これにより,前記空気が前記冷却コイル3を出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記空気から水分が除去される温度まで前記空気の温度が低下され,前記第6,7のバルブ54,56の制御によって,さらに,前記再熱コイル21において前記「冷水の返り」により,前記除湿されて冷却された空気を加温するように,前記冷却コイル3によって前記再熱コイル21に排出される前記「冷水の返り」の流量が制御され(る)」ものである。
その制御内容からすると,引用発明の「第5?7のバルブ52,54,56」は本願発明の「複数の弁」に対応し,引用発明は本願発明と,「複数の弁を運転するように構成され,前記複数の弁の運転によって,前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が制御され,これにより,前記空気が前記冷却コイルを出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記受け取られた空気から水分が除去される第1の温度まで前記空気の給気温度が低下され,前記複数の弁の運転によって,さらに,前記冷却回収コイルにおいて前記流体から,前記除湿されて冷却された空気に熱を伝達するように,前記冷却コイルによって前記冷却回収コイルに排出される前記流体の流量が制御され(る)」点で共通するといえる。
そして,引用発明は当該制御により,「冷凍機50の負荷が低減され(る)」ものであるから,本願発明と同様に,「流体冷却器への冷却要求を低減させる」ものである。
さらに,引用発明は「電子工業や精密機械工業の工場,食品保存用の貯蔵庫,実験用動物飼育室,バイオロジカルクリーンルームなどにおいて,温度・湿度などの室内環境を一定に保つために必要とされる温度まで前記空気の前記温度を上昇させる」ものであるが,その趣旨に照らせば,引用発明の当該制御は,本願発明と同様に,「空調された空間における居住者の快適さの必要性を満たすため,プロセス冷房負荷の必要性を満たすため,及び,相対湿度を所定の値よりも低く維持するためのうちの一つ又は複数に必要とされる第2の温度まで前記空気の前記給気温度を上昇させる」制御といえる。
(7) そうすると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,相違するといえる。
(一致点)
「冷却コイルと,冷却回収コイルと,冷却流体の戻り配管と,を備える空調システムであって,
前記冷却コイルは,流体冷却器によって第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却された流体を受け取り,前記第1の温度は,前記流体が前記流体冷却器によって受け取られたときの前記流体の温度であり,前記流体は,液相流体であり,
前記冷却コイルは,空気処理ユニット内を移動する空気に接触するように構成され,これにより前記空気は冷却されると共に前記空気から少なくとも一部の湿気が凝縮され,前記冷却コイルにおける前記冷却及び前記空気からの前記少なくとも一部の湿気の凝縮によって,前記流体が前記冷却コイルの流出口に達したときに前記流体は前記第2の温度よりも高い第3の温度になり,
前記冷却回収コイルは,前記冷却コイルによって排出されたほぼ前記第3の温度の前記流体の少なくとも一部を受け取るために,流体回収管路によって前記冷却コイルの前記流出口に接続された流入口を有し,前記冷却回収コイルは,前記空気が冷却コイルに接触した後に前記空気処理ユニット内を移動する前記空気に接触するように構成され,
前記冷却流体の戻り配管は,前記冷却回収コイルから出る前記流体を前記流体冷却器に戻すためのものであり,
前記空調システムは,複数の弁を運転するように構成され,前記複数の弁の運転によって,前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が制御され,これにより,前記空気が前記冷却コイルを出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記受け取られた空気から水分が除去される第1の温度まで前記空気の給気温度が低下され,前記複数の弁の運転によって,さらに,前記冷却回収コイルにおいて前記流体から,前記除湿されて冷却された空気に熱を伝達するように,前記冷却コイルによって前記冷却回収コイルに排出される前記流体の流量が制御され,これにより前記流体冷却器への冷却要求を低減させると共に,空調された空間における居住者の快適さの必要性を満たすため,プロセス冷房負荷の必要性を満たすため,及び,相対湿度を所定の値よりも低く維持するためのうちの一つ又は複数に必要とされる第2の温度まで前記空気の前記給気温度を上昇させる,空調システム。」
(相違点)
本願発明は「複数の弁を運転するように構成され,前記複数の弁の運転によって,前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化され,…,前記複数の弁の運転によって,さらに,…,前記冷却コイルによって前記冷却回収コイルに排出される前記流体の流量が連続的に変化され(る)」のに対し,引用発明においては,「第5?7のバルブ52,54,56を制御するように構成され(る)」ものであるが,これらのバルブの制御により,流量が連続的に変化されるものであるか不明である点。

2 判断
(1) 前記相違点について検討するに,引用発明は,「電子工業や精密機械工業の工場,食品保存用の貯蔵庫,実験用動物飼育室,バイオロジカルクリーンルームなどにおいて,温度・湿度などの室内環境を一定に保つために必要とされる温度まで前記空気の前記温度を上昇させる」ものであるところ,引用文献1によれば,「その目的は,安定した温湿度制御,冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を可能とした空気調和装置を提供することにある。」(【0011】)もので,「安定した温湿度制御,冷凍機容量の削減及び省エネルギー化を可能とした空気調和装置を提供することができる。」(【0023】)といった効果を奏するものである。
ところで,空気調和装置のハウジングの空気取入口から流入する外気の温度・湿度は変動するものであるから,安定した温湿度制御をするためには,変動する外気の温度・湿度(変動する負荷)に応じて冷却コイルへ冷水の流量を調整する必要があることがわかる。また,室内の設定温度・湿度が変更されるといったことも当然想定されることであって,そのためには,それに応じて冷却コイルへの冷水や再熱コイルへの冷水の返りの流量を調整する必要があることも,当業者が容易に理解することができる。
このように,引用文献1には,冷却コイルへの冷水や再熱コイルへの冷水の返りの流量を連続的に変化させることの示唆が認められる。
また,引用文献1には,制御バルブ8?11の開度調整により,供給空気の温度,湿度を定められた一定の値となるように,流量を制御する従来の空気調和機が記載されているところ(【0003】?【0009】,図7,8),従来の空気調和機においても外気の温度・湿度の変動や室内の設定温度・湿度の変更に応じて,このような制御を行っているものと解される。こうした従来の空気調和機を前提とした引用発明も同様に,第5?7のバルブ52,54,56の開度調整を行っていることが窺われる。
そして,引用文献2には,引用発明と同様の構成を備えた空気調和機において,バルブ8,9の開度を比例制御することで温度や湿度を制御する点が記載されている(前記第4・2)。
そうすると,引用発明において,第5?7のバルブ52,54,56の開度を制御することにより,冷却コイル3への冷水や再熱コイル21への冷水の返りの流量を連続的に変化させることについて,動機付けが十分に認められ,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用することによって,前記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものと認められる。
(2) 本願発明の奏する効果をみても,当業者であれば引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測可能な範囲内のものであって,格別ではない。
(3) 請求人の主張について
ア 請求人は,概ね,次のように主張している。すなわち,
・本願発明は「前記空調システムは,複数の弁を運転するように構成され,前記複数の弁の運転によって,前記流体冷却器から前記冷却コイルへの前記流体の流量が連続的に変化され,これにより,前記空気が前記冷却コイルを出るときに除湿されて冷却された空気を生成するように前記受け取られた空気から水分が除去される第1の温度まで前記空気の給気温度が低下され,前記複数の弁の運転によって,さらに,前記冷却回収コイルにおいて前記流体から,前記除湿されて冷却された空気に熱を伝達するように,前記冷却コイルによって前記冷却回収コイルに排出される前記流体の流量が連続的に変化され(る)」ことを発明特定事項としているところ,引用文献1の図3に示されるバルブ52,54,56は,それらが設けられているラインを開閉することはできる(即ち,完全開状態と完全閉状態のみ可能)が,上記発明特定事項で規定するような流量を連続的に変化させる機能については,引用文献1に記載も示唆もされていない。
・引用文献1の図3の構成において,バルブ52,54,56いずれかを連続的に変化させて水流を制限すると,冷凍機50への水流の流量が低下するため,条件によっては冷凍機50が機能しなくなる可能性がある。引用文献1の図3に示される構成においては,冷却コイル3への水流の流量が低下した際に冷凍機50への十分な水流を確保するためのバイパスラインが設けられていないため,当業者が,冷凍機50と冷却コイル3との間に設けられたバルブ52を連続的に変化させることには,阻害要因が存在する。引用文献1の図3の構成におけるバルブ54,56が,仮に連続的に変化する機能を有していたとしても,それらのバルブを連続的に変化させる必要性がないため,引用文献1には,上記発明特定事項について記載も示唆もされていない。
しかしながら,既に述べたように,引用文献1には,外気の温度・湿度,室内の設定温度・湿度の変更に応じた安定した温湿度制御するために,流量を連続的に変化させることの示唆が認められる。
そして,引用発明において,冷却コイル3への冷水の流量に応じて冷凍機50の能力を調整することが技術的に可能であることは明らかであるし,例えば,バイパスライン(引用文献1図3の第2の再加熱コイル22に係る流路参照)のような手段により対応可能であることも,当業者であれば容易に理解できるもので,流量を連続的に変化させることを妨げる事情ではない。
イ 請求人は,引用文献1の図7に示される従来の空気調和機の構成では,冷却コイル3と再熱コイル6との間のラインに設けられたバルブを調整する制御システムは設けられていないため,引用発明において第7のバルブ56を連続的に変化させることが当業者にとって容易であったとはいえない,引用文献1には,再熱コイルに温度の高い「冷水の返り」を選択的に供給するように構成する旨が記載されているから,引用文献1のバルブが,完全開状態と完全閉状態のみ可能であることを示唆するものである,などと主張する。
しかしながら,引用発明,従来の空気調和機とも,外気の温度・湿度の変動や室内の設定温度・湿度の変更に応じた安定した温湿度制御を行うことを企図しているものと認められ,構造・機能の類似性に照らして,従来の空気調和機に関する制御バルブの構成は,引用発明において十分に参考になるものである。
また,再熱コイルに温度の高い「冷水の返り」を選択的に供給することが,当然に,バルブの全開状態と完全閉状態のみ可能であることを意味するものではない。
ウ 請求人は,引用文献2に記載のフローシステムは,バルブ8,9が,加熱コイルと冷却コイルに流れる流体を,独立・分離して制御するものであるため,引用文献1に記載のシステムに組み合わせることは技術的にできない,仮に組み合わせることが技術的には可能であったとしても,引用文献2に記載のシステムは,あるコイルから他のコイルへ流れる流体を制御するものではないため,引用文献2にも,上記発明特定事項について記載も示唆もされていない,などと主張している。
しかしながら,既に述べたとおり,引用文献1には流量を連続的に変化させることの示唆が認められ,従来の空気調和機の構成を踏まえれば,引用発明において第5?7のバルブ52,54,56の開度調整を行っていることも窺われる。
そして,引用文献2に記載された空気調和機は,引用発明と同様の構成を備えており,構造・機能の類似性に照らして,十分に組み合わせ可能な技術である。引用文献2に上記発明特定事項のすべてに関し記載されていなくとも,流量を連続的に変化させることの示唆が認められる引用発明において,上記発明特定事項を備えることは,当業者にとって格別困難ではない。
(4) そうすると,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し,前記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものである。

3 以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-27 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-14 
出願番号 特願2014-180320(P2014-180320)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 莊司 英史
窪田 治彦
発明の名称 冷却回収システム及び方法  
代理人 野田 雅一  
代理人 池田 成人  
代理人 鈴木 英彦  
代理人 山口 和弘  
代理人 阿部 寛  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 山田 行一  

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